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明細書 :がん細胞特異的遺伝子発現法を用いた血管新生阻害薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4843767号 (P4843767)
公開番号 特開2007-063190 (P2007-063190A)
登録日 平成23年10月21日(2011.10.21)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
発明の名称または考案の名称 がん細胞特異的遺伝子発現法を用いた血管新生阻害薬
国際特許分類 A61K  48/00        (2006.01)
A61K  38/17        (2006.01)
A61K  35/76        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 48/00 ZNA
A61K 37/12
A61K 35/76
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 22
出願番号 特願2005-251732 (P2005-251732)
出願日 平成17年8月31日(2005.8.31)
審査請求日 平成20年7月18日(2008.7.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】廣畑 聡
【氏名】三好 亨
【氏名】土井 正行
【氏名】小川 弘子
【氏名】二宮 善文
個別代理人の代理人 【識別番号】100098464、【弁理士】、【氏名又は名称】河村 洌
【識別番号】100149630、【弁理士】、【氏名又は名称】藤森 洋介
【識別番号】100154449、【弁理士】、【氏名又は名称】谷 征史
【識別番号】100117112、【弁理士】、【氏名又は名称】秋山 文男
審査官 【審査官】宮坂 隆
参考文献・文献 国際公開第03/059257(WO,A1)
特表2003-519630(JP,A)
特表2002-517999(JP,A)
国際公開第03/033514(WO,A1)
Biochem. Biophys. Res. Commun.,2005年 6月 2日,Vol.333,pp.292-8
調査した分野 A61K 48/00
A61K 35/76
A61K 38/17
A61P 35/00
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
hTERTプロモーターの下流に配列番号1の塩基配列からなるRGD-α3NC1遺伝子を含むウイルスベクターを含有する抗腫瘍であって、1回の投与量が、ウイルス量で1×109~1×1012pfu/kgであり、7~14日毎に1回の間隔で少なくとも2回以上投与されることを特徴とする抗腫瘍薬
【請求項2】
ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである請求項1記載の抗腫瘍薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、がん細胞特異的に血管新生を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する血管新生阻害薬に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、がん患者は増加の一途を辿っており、死亡原因の第一位であり(27万人、全体の3割)がん患者は136万人に及ぶ(平成8年実態調査)。ちなみに、平成5年では90万人患者、23万人死亡者であることからも増加の様子がわかる。現在がんの治療方法としては、外科手術、放射線療法や、抗がん剤での治療が主である。また、がん特異的遺伝子治療も新規治療方法として注目を浴びている(特許文献1)。また、国民医療費の概況(厚生省実施平成14年)によると、がん患者の直接医療費が日本で2兆2171億円である。また、2004年現在での新規がん患者数は世界7主要国で200万人であり、そのうち100万人が死亡しているのが現状である。したがって、より有効な治療方法が切望されている。
【0003】
がん細胞が分裂し、がん組織が大きくなるためには、酸素や栄養素をがん細胞全体にいきわたらせることが必須であり、そのためには、血管を新たにつくりだし栄養を補給・獲得する必要がある。つまり、がんの成長はがん組織の血管新生を伴うのでがん組織に血管が到達しないとがんは大きくなることができない。このようながんの特徴を利用した治療方法として、血管新生を阻害する手法が研究されている(特許文献2および3)。すなわち、血管新生を阻害することにより、がんが大きくなるのを止める、あるいは遅らせることができ、がんを長期間そのままの状態で維持させることができる。これをがん休眠療法と呼ぶ。このがん休眠療法は、たとえば手術が不可能な患者にも使用が可能であるという利点を有する。しかしながら、血管新生というものは、たとえば怪我の治癒過程に必須の事象であり、血管新生阻害を全身で行なうと、正常細胞においても血管新生が阻害され、怪我の治癒に支障をきたすなどの様々な副作用(悪事象)が起きる危険性がある。
【0004】
また、血管新生阻害作用を有することが非特許文献1において報告されているヒトα3鎖IV型コラーゲンのカルボキシル端の非コラーゲンドメイン(NC1)を治療に利用する場合、NC1がグッドパスチャー(Goodpasture)症候群の自己抗原認識部位であることから、全身性投与は自己抗原発現の発現を起こし、腎臓や肺に重篤な障害を与えてしまうという点からも望ましくない。
【0005】
このような現状の中、本発明者らはNC1を用いたがん細胞特異的遺伝子治療を試みたが、通常の遺伝子導入では効率が悪く、抗がん効果の確認には至らなかった(非特許文献2)。
【0006】

【特許文献1】特表2003-511032号公報
【特許文献2】特開2000-201686号公報
【特許文献3】特表2004-517117号公報
【非特許文献1】プチクラーク(Petitclerc)ら、J.Biol.Chem., 275(11):8051-8061, 2000
【非特許文献2】文部科学省編集・発行、「平成14年度がん研究に係わる特定領域研究(がん特定)研究報告集録」、平成15年3月31日、p.133およびp.172
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、正常細胞に副作用を及ぼすことなくがん細胞の増殖を阻害する血管新生阻害薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点に鑑み鋭意検討した結果、がん細胞特異的に遺伝子発現を誘導するプロモーターと血管新生を阻害する遺伝子を組み込んだベクターを使用することで、がん細胞特異的に血管新生を阻害し、がん細胞の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、がん細胞特異的に発現するプロモーターの下流に血管新生阻害遺伝子を含むベクターを含有する血管新生阻害薬に関する。
【0010】
前記血管新生阻害薬は1回の投与量が好ましくは、ウイルスベクターの場合ウイルス量で1×109~1×1012pfu/kg、非ウイルスベクターの場合1μg~100g/kgであり、間欠的に少なくとも2回以上投与されることが好ましい。
【0011】
前記血管新生阻害薬の投与は毎日1回~30日毎に1回が好ましく、7~14日毎に1回がより好ましい。
【0012】
前記血管新生阻害薬は、前記血管新生阻害遺伝子が配列番号1の塩基配列からなるRGD-α3NC1であることが好ましい。
【0013】
前記血管新生阻害薬は、前記プロモーターがhTERTプロモーターであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の血管新生阻害薬を使用することにより、がん細胞特異的に血管新生阻害遺伝子を発現させることができ、正常細胞における血管新生の阻害、自己免疫反応などの副作用を回避し、がん細胞のみの増殖を抑制することが可能である。
【0015】
また、本発明の血管新生阻害薬は、間欠投与をおこなうことにより、さらに効率のよい治療が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、がん細胞において特異的に発現し、正常細胞では発現しない性質を有する遺伝子のプロモーター領域を血管新生阻害遺伝子の上流に組み込むことにより、その血管新生阻害遺伝子を正常細胞では発現させず、がん細胞において特異的に発現させることが可能となるという知見に基づく。この血管新生阻害遺伝子のうち、RGD-α3NC1は自己免疫疾患の自己抗原でもあり、標的とするがん細胞以外の細胞での自己抗原発現を避ける目的でも、本発明は合目的である。
【0017】
本発明で使用される血管新生阻害遺伝子は、血管新生阻害作用を有するものであれば特に制限することなく使用できる。具体的には、タムスタチン(α3NC1)、RGD-α3NC1、エンドスタチン、アンジオスタチン、アレスチン、TSP-1、TSP-2、ADAMTS1、キャンスタチン、コンドロモジュリン、バゾスタチン、バゾヒビンおよびTIMPなどがあげられ、血管新生阻害効果および内皮細胞特異性の点からRGD-α3NC1が好ましい。また、これら遺伝子の塩基配列において数個の塩基が置換、欠失または付加された配列も、血管新生阻害効果が損なわれていない限り、本発明の血管新生阻害遺伝子として使用することができる。
【0018】
ここで、α3NC1とは、ヒトα3鎖IV型コラーゲンのカルボキシル端の非コラーゲンドメインであるアミノ酸番号1439-1670領域のタンパク質である(プチクラークら、J.Biol.Chem., 275(11):8051-8061, 2000)。
【0019】
また、RGD-α3NC1とは、α3NC1のアミノ端にRGD配列を含む4つのG-X-Yからなるコラーゲン領域(PGLKGKRGDSGSP配列(配列番号2))を付加したアミノ酸配列を有する蛋白質であり、その塩基配列は配列番号1に示すとおりである。
【0020】
本発明で使用されるプロモーターは、がん細胞特異的に遺伝子発現を誘導し得るものであり、正常細胞と区別化が可能、つまりがん細胞にのみ遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限することなく使用できる。具体的には、ヒトテロメラーゼ遺伝子(hTERT)のプロモーター、ヒト前立腺がん特異抗原(PSA)のプロモーターおよびヒトアルファプロテイン(AFP)のプロモーターなどの腫瘍マーカーとなり得る分子のプロモーター領域や、異常な細胞分裂、細胞増殖が起きるときに働く、たとえば細胞周期に関する遺伝子プロモーターなどがあげられ、多くの種類のがん細胞に広範に特異的にプロモーター活性を示し、かつ正常細胞には活性が非常に限られているという点からhTERTのプロモーターが好ましい。これらのプロモーター領域としては、プロモーター活性を有する限り、種々の長さのものが使用でき、たとえば、hTERTのプロモーター領域としては、-378~+77、-181~+77および-378~+10などがあげられる。また、これらプロモーターの塩基配列においては、数個の塩基が置換、欠失または付加された配列も、がん細胞特異的に遺伝子発現を誘導し得る限り、本発明のプロモーター領域として使用することができる。
【0021】
本発明で使用されるベクターとしては、アデノウイルスベクターやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクター、プラスミドベクター、ファージベクターなどがあげられ、安全かつ効率的に目的遺伝子の導入が可能なものであれば、特に制限されるものではない。
【0022】
これらベクターの中でも、アデノウイルスベクターは、風邪ウイルスとしてごくありふれたものであり、一般に利用されているものであれば、どのようなものでも使用することができるが、ウイルス増殖の観点から自己複製できないものを使用することが好ましい。そのようなアデノウイルスベクターとしては、たとえば人為的にE1AおよびE3領域を欠失させたもの、アデノキメラウイルス、改良型アデノウイルスベクターなど市販されているものを使用することができる。
【0023】
自己複製ができないアデノウイルスベクターを使用する場合、相当する欠失領域を有するパッケージング細胞を用いて相同組換えを行なう必要がある。パッケージング細胞としては、E1AおよびE3領域を有するHEK293細胞(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団製)などがあげられる。
【0024】
本発明のベクターは、その他、製造過程で有用となる制限酵素切断部位などの付加的な塩基配列、公知の薬物耐性遺伝子、GFP遺伝子およびルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子、FLAGタグ、Hisタグ、Mycタグ、V5タグなどを含有することができる。
【0025】
本発明の血管新生阻害薬において使用されるベクターは以下に例示する方法により得ることができる。
(1)がん細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域、たとえばhTERTを含むプラスミドを適当な制限酵素で切断し、プロモーター領域を切り出す工程、
(2)血管新生阻害遺伝子、たとえばRGD-α3NC1を含むプラスミドのプロモーター領域を適当な制限酵素で切断し、かわりに(1)で得られるがん細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域を適当なリガーゼで連結する工程、
(3)(2)で得られるプラスミドを適当な制限酵素で切断して目的遺伝子を含む発現コンストラクトを得、適当なベクターに組み込む工程、および
(4)(3)で得られるベクターを宿主細胞にパッケージングし、増幅させ、遠心分離により組換えベクター(たとえば、hTERT/RGD-α3NC1)を精製する工程
を含む方法。
【0026】
本発明の血管新生阻害薬を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターの場合は、単に細胞と接触させ感染させるだけで導入することができ、非ウイルスベクターの場合は、リポフェクション法、HVJリポソーム法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法などを使用することができる。
【0027】
本発明の血管新生阻害薬は、単独で使用してもよく、また他の医薬成分やがんに対する治療、たとえば化学療法や放射線療法などと組み合わせて使用することもできる。
【0028】
本発明の血管新生阻害薬の投与経路としては、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。たとえば、経口投与、経気管投与または非経口経路があげられ、非経口経路としては、たとえばがん組織内直接投与、経静脈的投与などが挙げられ、効率、安全性、患者への負担、副作用などの点から、可能であればがん組織内直接投与が望ましい。
【0029】
本発明の血管新生阻害薬は、単回投与より、間欠投与を行なう方が治療効果の観点から好ましい。
【0030】
本明細書において、「間欠投与」とは、遺伝子治療を繰り返し行なうことを意味し、たとえば、1回の投与量は好ましくは、ウイルスベクターの場合ウイルス量で1×109~1×1012pfu/kg、非ウイルスベクターの場合1μg~100g/kgであり、間欠的に少なくとも2回以上投与することが好ましい。投与間隔は特に制限されるものではないが、毎日1回~30日毎に1回が好ましく、副作用の観点から7~14日毎に1回がより好ましい。
【0031】
しかしながら、投与量は、前記範囲に限定されるものではなく、投与形態、投与経路、患者の状態(体重、年齢、病状など)などに応じて適宜選択される。
【0032】
本発明の血管新生阻害薬の剤形としては、従来から使用されている種々の剤形のうち、投与経路に適したものを適宜選択することができる。たとえば、カプセル剤、噴霧剤、注射剤または点滴剤などの液剤、ゲル、またはリポソーム製剤など、通常ベクターを含有する製剤において多用される剤形を制限なく使用でき、効率および安全性の点から液剤が好ましい。さらに、本発明の血管新生阻害薬は、液剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
【0033】
本発明の血管新生阻害薬は、活性成分のみならず、剤形に合わせて通常使用される医薬用の担体を使用することができる。そのような担体としては、製剤の剤形に応じて通常使用される、賦形剤、安定化剤、充填剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、希釈剤などを添加することができる。
【0034】
安定化剤としては、たとえば、ヒト血清アルブミンや通常のL-アミノ酸、糖類、セルロース誘導体などがあげられ、これらは単独でまたは界面活性剤などと組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明を以下の実施例によりさらに詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
培養細胞株の購入先および、培養条件
ヒト前立腺癌DU145細胞およびPC3細胞ならびにヒト線維肉腫HT1080細胞およびヒト肺癌H1299細胞は、ATCC(American Type Culture Collection)から購入した。DU145細胞、PC3細胞、HT1080細胞およびH1299細胞は、10%牛胎児血清(FBS、JRH、Bioscience,Lenexa、KS)、100U/mlペニシリンおよび100U/mlストレプトマイシンを添加したDMEMまたはRPMI1640(シグマ、セントルイス、MO)を用いて培養した。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC細胞、Clonetics、サンディエゴ、カリホルニア)は、EGM-2で培養した。ヒト包皮角化細胞(HFK細胞;カスケード バイオロジクス(Cascade Biologics)、オレゴン、米国)は、10%FBS、100U/mlペニシリンおよび100U/mlストレプトマイシンを添加したK110-TypeII培池(Kyokuto製薬、東京、日本)で培養した。ヒト皮膚繊維芽細胞(HSF細胞)は、成人ボランティアから供給され、10%FBS、100U/mlペニシリンおよび100U/mlストレプトマイシンの入ったDMEMで培養した。ヒト胎児腎細胞HEK293細胞は財団法人ヒューマンサイエンス振興財団より購入し10%FCSの入ったMEMで培養した。
全ての実験は継代数3~6の細胞を用いた。継代はPBS(-)+0.02%EDTAで細胞を培養皿からはがした後、約10%細胞密度になるように細胞を新たな培養皿にまくことで行ない、細胞培養はCO2インキュベーター(37℃、95%湿度、3%CO2濃度)を用いた。統計解析は対応の無いt検定テストにより行ない、P値<0.05を統計的有意とした。
【0037】
[試験例1]
各細胞におけるhTERTmRNAの発現量の比較
各細胞は6cm培養皿を使用し90%細胞密度になるまで培養後、PBS(-)で2回洗浄した。全RNA量は、RNA-Stat60(テル-テスト フレンズウッド(Tel-Test, Friendswood)、テキサス、米国)を取り扱い説明書に従って培養細胞から抽出した。hTERTmRNAの定量は、リアルタイムRT-PCRによりLightCycler機器(ロッシュ ダイアグノスティクス製)を用いてLightCycler TeloTAGGG hTERT定量化キット(ロッシュ ダイアグノスティクス製)により行なった。hTERTシグナルは、コントロールとしてポルホビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)mRNAの割合により標準化し、DU145細胞におけるhTERTのmRNA発現レベルを1として他の細胞と比較した。各細胞の結果は、3つの独立した実験からの平均±SDで示す(図1)。レーン1~6はそれぞれDU145細胞、HT1080細胞、PC3細胞、H1299細胞、HSFおよびHFK示す。
【0038】
がん細胞株においては、細胞の種類によってhTERTmRNA発現量に差はあるものの、いずれの細胞株においてもhTERTmRNAは発現している(図1、レーン1~4)。一方、正常細胞株においては、hTERTmRNA発現は確認されなかった(図1、レーン5および6)。この結果、hTERTの発現はがん細胞株に特異的であることが確認された。
【0039】
[実施例1]
(A)プラスミドの構築
ルシフェラーゼ発現プラスミドであるpGL3-Basicベクター(プロメガ社製)にhTERTプロモーターを組み込んだベクターpGL3-378(図2参照、金沢大学 京哲先生より提供:(参考文献)高倉ら、Cancer Research, 59:551-557, 1999)と、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの下流に、5′側にBM40シグナルペプチドとFLAGタグおよび3′側にpolyAを付加したRGD-α3NC1cDNAを有するベクター(pCMV/RGD-α3NC1)(図2参照、バンダービルト大学ビリーハドソン教授より提供:(参考文献)プチクラークら、J.Biol.Chem., 275(11):8051-8061, 2000)とを以下の条件にて組み合わせた。
【0040】
hTERTプロモーター領域(ジーンバンク、No.AB016767の-378から+77に相当)をpGL3-378からMluI/HindIII切断部位にて37℃で3時間反応させて切り出した後、pCMV/RGD-α3NC1のCMVプロモーター領域のMluI/HindIII切断部位にT4DNAリガーゼで14℃一晩反応させて置き換え、hTERTプロモーター領域およびRGD-α3NC1を含むプラスミド(phrk8)を作製した(図2参照)。
【0041】
(B)アデノウイルス組換え体の調製
前記(A)で得られたプラスミドphrk8からMluI/XhoI切断部位よりhTERTプロモーターおよびRGD-α3NC1遺伝子を37℃2時間反応させて切り出し、アデノウイルスゲノムからE1領域とE3領域を除いたコスミドベクター(pAFC3)のMluI/XhoI部位へ連結(16℃、2時間)した(図3参照)。得られたライゲーション産物は、インビトロパッケージングキット(ニッポンジーン社製)を用いて添付のプロトコールに従い、λファージにパッケージング後、E.coliに感染させ作製した、発現ユニットを連結したpAFC3をHEK293細胞へリポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)でトランスフェクションし、増殖させ、遠心分離法にてウイルス成分を取り出すことで組換えアデノウイルスベクターhTERT/RGD-α3NC1を作製した。
【0042】
ネガティブコントロールとして、がん細胞を含む全ての細胞において一定の発現量をもたらすことが知られているCAGプロモーターを有し、その下流にレポーター遺伝子としてlacZ遺伝子を持つアデノウイルスCAG/lacZ(clone、AxCALacZ、理化学研究所製)も同様にHEK293細胞にリポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)でトランスフェクションし増殖させ、遠心分離法にてウイルス成分を取り出すことで組換えアデノウイルスベクターCAG/lacZを分離精製した。
【0043】
(C)細胞への遺伝子導入
DU145細胞を、24ウェルプレートに培養液500μl中5×104~1×105細胞数/ウェルの濃度で培養した。24時間後この細胞にプラスミドpCMV/RGD-α3NC1または組換えアデノウイルスベクターCAG/lacZもしくはhTERT/RGD-α3NC1を以下の手順で導入した。
【0044】
プラスミド
1.0μgのpCMV/RGD-α3NC1をリポフェクトアミン2000(1μl)(インビトロジェン社)とマイクロチューブ内で混合し、各ウェルにそれぞれ全量を加え遺伝子を導入した。さらに一晩静置し、翌日に培養上清を新しい培地に交換した。
【0045】
アデノウイルスベクター
CAG/lacZまたはhTERT/RGD-α3NC1(1×109pfu)を感染効率(MOI:multiplicity of infection)100で感染させた。なお、MOIはCAG/lacZとDU145細胞とを用い、既知の方法にしたがいLacZの濃度により最適値を求めた。
【0046】
[試験例2]
(A)RGD-α3NC1の発現の確認
前記実施例1の(C)で得られた各DU145細胞を48時間培養したのち、培養上清を採取し、遠心分離(3000rpm、10分間)により浮遊細胞を除去した。このようにして得られたpCMV/RGD-α3NC1、hTERT/RGD-α3NC1またはCAG/lacZを導入したDU145細胞の培養上清は、それぞれ以下CM-NC1、CM-RGD-α3NC1およびCM-lacZと表わす。
【0047】
培養上清中のRGD-α3NC1は、以下の手順でウエスタンブロット法により確認した。各上清に2×サンプルバッファー(シグマ社)を加え、100℃で5分間加熱した。サンプルは各12μlずつ各レーン(レーン1~3は、それぞれCM-NC1、CM-RGD-α3NC1およびCM-lacZに対応)に流した。12%ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動を200V、20mAで1時間行なった後にゲル中のタンパク質をニトロセルロースメンブレンに20Vで一晩転写した。転写後に、25℃で1時間、0.1%Tween20を含むPBS(PBS-T)に終濃度5%となるように加えたスキムミルクで非特異反応を抑えた。ニトロセルロースメンブレンは、一次抗体(マウス抗FLAG M2抗体(シグマ社)またはラット抗ヒトα3(IV)コラーゲンモノクローナル抗体(H31)(重井医学研究所より購入)で室温(25℃)にて1:100の濃度比にて1時間反応させた。過剰な抗体をPBS-T液中で5分間、3回洗い落とした後、二次抗体で反応させた。二次抗体としては、西洋ワサビ過酸化酵素で標識したウサギ抗マウスIgG抗体(ジャクソン社)または西洋ワサビ過酸化酵素で標識したウサギ抗ラットIgG抗体(ジャクソン社)を用いた。反応は1:2000の濃度比で25℃1時間行ない、反応後に過剰な抗体を一次抗体のときと同様に、PBS-Tにて5分間、3回洗浄した。
【0048】
反応物は化学発光法であるECL(enhanced chemiluminescence)法にて、キット(ECLプラス、アマシャム社)を使用し、キット添付のプロトコールに従い、プラスチック製ラップフィルムを机上に敷き、その上にブロッティング膜のタンパク質吸着側が上側になるように置き、溶液Aと溶液Bとを1:1で混合し(発光用混合液)、ブロッティング膜に対して約0.125ml/cm2になる量を加え1分間反応させた。キムワイプで膜上の余分な混合液を取り除き、膜を充分に包める程度の大きさの新しいプラスチック製ラップフィルムにタンパク質吸着側の面が下側になるようにブロッティング膜を置いた。次に、化学発光をLAS-1000ミニ(富士フィルム社製)にてメンブレンを撮影した。-25℃の状態でカメラを作動させ、10秒後、30秒後、1分後、5分後にそれぞれ撮影し、画像をコンピューターに取り込んだ。
【0049】
30秒後の結果を図4Aに示す。レーン1~3は、それぞれCM-RGD-α3NC1、CM-NC1およびCM-CAG/lacZを示す。RGD-α3NC1は、28kDaタンパク質としてマウス抗FLAG M2抗体で検出した。CM-RGD-α3NC1(レーン1)ではCM-NC1(レーン2)と比較して発現量は弱いが、発現を確認できた。
【0050】
(B)hTERT/RGD-α3NC1感染DU145細胞におけるRGD-α3NC1の発現量の経時変化
前記実施例1の(B)と同様にしてhTERT/RGD-α3NC1をDU145細胞に感染させた。感染直後、感染後24時間、感染後48時間および感染後72時間の全4回細胞上清を前記(A)と同様にして採取し、マウス抗FLAG M2抗体で検出した。
【0051】
結果を図4Bに示す。レーン1~4は、それぞれ感染直後、感染後24時間、感染後48時間および感染後72時間に採取された細胞上清に対応する。RGD-α3NC1の発現量は時間と共に増加しつづけることが72時間後まで確認できた。
【0052】
(C)hTERT/RGD-α3NC1を感染させた各種細胞におけるRGD-α3NC1の発現
前記実施例1の(B)と同様にしてhTERT/RGD-α3NC1をDU145細胞(レーン1)、PC3細胞(レーン2)、HT1080細胞(レーン3)、H1299細胞(レーン4)、HSF細胞(レーン5)またはHFK細胞(レーン6)に感染させた。感染から48時間に細胞上清を前記(A)と同様にして採取し、マウス抗FLAG M2抗体で検出した。
【0053】
結果を図4Cに示す。RGD-α3NC1は正常細胞であるHSF細胞やHFK細胞からのCM中からは検出されず(レーン5および6)、がん細胞株からのみ検出された(レーン1~4)。この結果から、hTERT/RGD-α3NC1によるRGD-α3NC1の発現はがん細胞特異的であることが証明された。
【0054】
[試験例3]
CM-RGD-α3NC1による細胞増殖および細胞生存率への影響
(A)各種細胞に対するCM-RGD-α3NC1の影響
各細胞を96ウェルプレート(7000細胞個/ウェル)で24時間培養した。その後細胞培養液を前記試験例2の(A)で得られたCM-RGD-α3NC1と交換し、48時間培養した。細胞増殖の定量化はBrdUアッセイキット(オンコジーン社)を用いキットに添付のBrdU使用プロトコールに従い測定した。CM-RGD-α3NC1の代わりにCM-lacZで処置した各細胞と比較して相対的なパーセンテージとして検討した。実験はそれぞれn=3で行ない、結果はそれらの平均±SDで示した。
【0055】
結果を図5に示す。レーン1~7は、それぞれDU145細胞、PC3細胞、H1299細胞、HT1080細胞、HUVEC、HFKおよびHSFを示す。血管新生阻害剤に感受性を示すと予想される内皮細胞であるHUVEC細胞(レーン5)の増殖が他細胞株と比較してCM-RGD-α3NC1処置により抑制されたことが明らかとなった。これにより、RGD-α3NC1が内皮細胞に特異的に増殖抑制をかけることが証明された。
【0056】
(B)各上清による細胞増殖および細胞生存率への影響
前記(A)と同様にHUVEC細胞を、CM-lacZ(レーン1)、CM-RGD-α3NC1(レーン2)またはCM-RGD-α3NC1からRGD-α3NC1を除去したCM-RGD-α3NC1ΔFLAG(レーン3)で処理し、DU145細胞をCM-lacZ(レーン1)またはCM-RGD-α3NC1(レーン2)で処理した。細胞増殖の定量化は前記(A)と同様に行なった。細胞生存率は、MTTアッセイ(ケミコン)を用いて決定した。実験はそれぞれn=3で行ない、結果はそれらの平均±SDで示した。
【0057】
細胞増殖の結果を図6に、細胞生存率の結果を図7に示す。
【0058】
CM-RGD-α3NC1は有意にHUVECの増殖を抑制した(図6(A)、レーン2)が、CM-RGD-α3NC1ΔFLAGは増殖の抑制を引き起こさなかった(図6(A)、レーン3)。この結果により、内皮細胞であるHUVECの増殖を抑制するのは、RGD-α3NC1そのものであり、上清中のほかの成分ではないことが明らかになった。これに対し、DU145細胞の増殖はCM-RGD-α3NC1によって抑制されなかった(図6(B)、レーン2)。これらの結果より、RGD-α3NC1が、がん細胞ではなく、内皮細胞の増殖を抑制することが示された(図6(A)および(B))。
【0059】
また、CM-RGD-α3NC1はHUVEC細胞の生存率をも有意に低下させた(図7(A)、レーン2)、一方、CM-RGD-α3NC1ΔFLAGはHUVEC細胞の生存率に影響を与えなかった(図7(A)、レーン3)これにより、内皮細胞であるHUVECの生存率を低下させるのは、RGD-α3NC1そのものであり、上清中の他の成分ではないことが明らかとなった。一方で、がん細胞であるDU145細胞の生存率にはRGD-α3NC1が影響を及ぼさないことが明らかとなった(図7(B)、レーン2)。
【0060】
なお、CM-RGD-α3NC1ΔFLAGは、CM-RGD-α3NC1をFLAG M2抗体アフィニティーゲル(シグマ社)と共に2時間4℃で反応させ、ゲルと結合した上清中のRGD-α3NC1を遠心分離(4000rpm、2分、4℃)し、RGD-α3NC1を除去することにより作製した。
【0061】
[試験例4]
各細胞における細胞表面インテグリンαvβ3の発現
αvβ3インテグリンの発現はフローサイトメトリーで行なった。操作はすべて氷上で行なった。1%BSA含有PBS溶液1mlに各細胞(1×106)を懸濁し、これにLM609(αvβ3に対する抗体、ケミコン)10μlずつ添加し、30分~1時間インキュベートした。陰性コントロールとしてはフローサイトメトリー用のFITC結合抗マウスIgG1(BDファーミンゲン社)を用いた。1%BSA含有PBS溶液1mlで2回洗浄し、遠心分離は300g、5分、4℃で行なった。その後、回収した細胞を再度1%BSA含有PBS溶液1mlに懸濁し、抗マウスFITC抗体を10μl添加し、30~45分インキュベートした。陰性コントロールにおいては、洗浄後回収した細胞を、1%BSA含有PBS溶液100μlに懸濁し、抗マウスFITC抗体は40μl添加した。1%BSA含有PBS溶液1mlで2回洗浄し、遠心分離は300g、5分、4℃で行なった。その後、回収した細胞を再度1%BSA含有PBS溶液10mlに懸濁し、フローサイトメトリーにより、抗体購入時に添付されているプロトコールに従いFL1で蛍光を検出した。
【0062】
10,000個の細胞をカウントした結果をヒストグラムとして図8に示す。灰色のヒストグラムはアイソタイプの一致したIgG1コントロールで得られた非特異的な蛍光を表し、黒線のヒストグラムは特異的な蛍光を表す。HUVEC細胞は他の細胞株と比較して増殖抑制にかかわるタンパク質である細胞表面インテグリンαvβ3を発現していることが示された(図8(G))。この結果は、RGD-α3NC1の細胞増殖抑制作用には細胞表面インテグリンがかかわっていることを示唆する。
【0063】
[試験例5]
CM-RGD-α3NC1による内皮細胞の管腔形成抑制
HUVEC細胞(5,000個/ウェル)を、マトリジェルを敷いた96ウェルプレートにて37℃で24時間培養することにより管腔形成させた後、CM-lacZ、CM-RGD-α3NC1またはCM-RGD-α3NC1ΔFLAGをHUVEC細胞に加え、それぞれ24時間37℃でインキュベートし、光学顕微鏡で観察した(図9(A)~(C))。弱拡大での視野内の管腔形成の分岐数を数えた。結果は、3つの独立したウェルを数え、平均±SDで示す(図9(D))。CM-RGD-α3NC1(レーン2)はコントロール(CM-lacZ(レーン1)およびCM-RGD-α3NC1ΔFLAG(レーン3))に比べ有意に管腔形成を低下させた。*はp<0.05を示す。
【0064】
この結果から、RGD-α3NC1がHUVEC細胞の管腔形成を強く抑制することが明らかとなった。
【0065】
[実施例2]
DU145細胞を移植したBALB/Cヌードマウスの作製におけるインビボでのhTERT/RGD-α3NC1遺伝子治療
【0066】
(A)腫瘍モデルの作製
6~8週齢の雌BALB/cヌードマウス(日本SLC株式会社から購入)の皮下にDU145細胞(1×106個)を接種した。腫瘍の大きさは、バーニアカリパス(Vernier calipers)で3~4日おきに計測した。腫瘍が35~50mm3の平均容積に達したマウスをモデルマウスとして以下の実験に使用した。
【0067】
(B)各組織におけるRGD-α3NC1の検出
前記(A)で作製したモデルマウス(各群n=5)に1×109pfuのhTERT/RGD-α3NC1またはCAG/lacZを腫瘍内に注入した。10日後に腫瘍、肝臓、腎臓、肺を切り出し、7μmの切片を作製した。アセトン固定(25℃、10分)後、非特異反応を1%ウシアルブミン含有PBSにより25℃で1時間ブロックした後に、一次抗体と共に4℃で一晩処理し、PBSで10分×3回過剰な抗体を洗い落とした。その後、二次抗体で25℃、2時間処理し、PBSで10分×3回過剰な抗体を落とした。一次抗体には、ウサギポリクローナル抗-FLAG抗体(シグマ)、ラット抗-CD31モノクローナル抗体(BDバイオサイエンス社)または、H31をそれぞれ、1:100、1:100、1:10の濃度で用いた。二次抗体には、ヤギFITC-蛍光標識抗ウサギIgG抗体(モレュラープローブ社)を1:200の濃度でおよびロバCy3蛍光標識抗ラットIgG抗体を1:500の濃度で用いて二重染色を行なった。二次抗体処理後、切片をPERMAFLUORTM(ベックマン)で封入し、蛍光顕微鏡にて観察した。
【0068】
hTERT/RGD-α3NC1治療腫瘍切片およびCAG/lacZ治療腫瘍切片の二重染色蛍光顕微鏡写真をそれぞれ図10(A)および図10(B)に示す。図中、FITCシグナル(緑)がRGD-α3NC1(符号b)を、またCy3シグナル(赤)がCD31(符号c、赤)染色陽性領域として内皮細胞を示している。hTERT/RGD-α3NC1治療腎臓切片の二重染色顕微鏡写真を図11(A)に、近接する切片のヘマトキシリン・エオジン染色を図11(B)に示す。RGD-α3NC1(符号b)は腫瘍内にのみ発現しており(図10(A))、腎臓(図11(A))など他の臓器には見られなかった。また、CAG/lacZを用いた場合には、腫瘍においてもRGD-α3NC1(符号b)の発現は見られず、さらにhTERT/RGD-α3NC1治療群(図10(A))と比較して、内皮細胞を示すCD31(符号c)染色陽性領域が多く確認された(図10(B))。さらに、hTERT/RGD-α3NC1で治療したマウスの腎臓には細胞浸潤などの炎症のあとは観察されなかった(図11(B))。したがって、RGD-α3NC1による自己免疫疾患の兆候はなく、このことからもRGD-α3NC1が腎臓において発現されていないことを示唆する。
【0069】
(C)単回投与および間欠投与
前記(A)で作製したモデルマウス(各群n=5)の腫瘍内に、hTERT/RGD-α3NC1(1×109pfu)、CAG/lacZ(1×109pfu)または溶媒(PBS)を打ち込み、投与0日とした。単回投与治療では、この後腫瘍の大きさを随時計測し、投与20日まで観察した。また、間欠投与では、同様に初回の投与を行なったのち、さらに7日毎に合計4回の投与を実施し、4回目の治療後は、新たな追加投与は実施しなかった。間欠投与治療においても、初回投与から随時腫瘍の大きさを計測し、観察した。腫瘍の容積は以下の計算式に基づき算出し、それぞれ投与0日との相対的なパーセンテージとして表した。
容積=長さ×幅の二乗×0.52
【0070】
なお腫瘍の大きさが1000mm3を超えた段階で動物愛護の倫理的理由により、これ以上の苦痛を与えないようにペントバルビタール麻酔にてマウスを処理して観察終了とした。
【0071】
単回投与治療におけるhTERT/RGD-α3NC1治療群の投与20日の腫瘍の大きさは、PBS治療群およびCAG/lacZ治療群と比較して有意に小さく、腫瘍の成長を抑制した(図12A)。その抑制効果は、投与10日まで持続し、その後の成長率は他の治療群と同様であった(図12A)。
【0072】
間欠投与治療におけるhTERT/RGD-α3NC1治療群の投与20日の腫瘍の大きさは、PBS治療群およびCAG/lacZ治療群と比較して有意に小さく、腫瘍の成長を抑制した(図12B)。特に、間欠投与はがん細胞の休眠状態を成し遂げた。*はp<0.05を示す。
【0073】
間欠投与開始60日後のマウスの生存率を表1に示す。
【0074】
【表1】
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【0075】
前述したように、腫瘍の大きさが1000mm3を超えた段階でマウスをペントバルビタール処理したが、PBS治療群では全例処理され、CAG/lacZ治療群では1匹しか残らなかったのに対して、hTERT/RGD-α3NC1治療群では全例が60日間生存した。
【0076】
(D)hTERT/RGD-α3NC1処置による腫瘍血管新生抑制の免疫染色法による評価
腫瘍内の血管新生は免疫染色法にて検討した。前記(B)と同様にモデルマウスにhTERT/RGD-α3NC1を投与し、投与10日に腫瘍を切り出し、凍結保存した。クリオスタット(ライカ社製)にて6μmの切片としてアセトン固定した。凍結腫瘍切片は、抗CD31抗体で前記(B)の方法にて染色し、二次抗体を含む一連の発色反応には、MAX-POキット(ニチレイ社製)を用い、光学顕微鏡により観察した(図12A、B、C)。微小血管密度の定量分析は異なる5視野(×200)で陽性に染色されている細胞をカウントすることにより行なった(図13D)。
【0077】
PBS処置群(図13(A))およびCAG/lacZ治療群(図13(B))では、腫瘍の中に血管内皮細胞のマーカーであるCD31陽性細胞が多数観察され、腫瘍における活発な血管新生(符号e)を示している。一方、hTERT/RGD-α3NC1治療群では、腫瘍中のCD31陽性細胞は非常に少なかった(図13(C))。微小血管密度の定量分析の結果を図13(D)に示す。hTERT/RGD-α3NC1処置したグループの腫瘍切片で有意に血管が少なかった。*はp<0.05を示す。RGD-α3NC1が発現した結果、がん組織での血管新生阻害効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】各細胞におけるhTERTのmRNAの発現量を示すグラフである。レーン1~6はそれぞれDU145細胞、HT1080細胞、PC3細胞、H1299細胞、正常線維芽細胞(HSF)および正常皮膚角化細胞(HFK)を示す。
【図2】hTERTプロモーターとRGD-α3NC1とを含有するプラスミドの製造方法を示すスキームである。図中、BM40SPはBM40シグナルペプチドを意味する。
【図3】本発明の組換えアデノウイルスベクターの一実施様態を示す概略図である。図中、BM40SPおよびAd DNAは、それぞれBM40シグナルペプチドおよびアデノウイルスゲノムDNAを意味する。
【図4A】DU145細胞の細胞上清中に分泌されたタンパク質のウエスタンブロットの写真である。レーン1~3は、それぞれhTERT/RGD-α3NC1、pCMV/RGD-α3NC1およびCAG/lacZを導入したDU145細胞を示す。
【図4B】hTERT/RGD-α3NC1を導入したDU145細胞におけるRGD-α3NC1の分泌量の経時変化を示すウエスタンブロットの写真である。レーン1~4はそれぞれhTERT/RGD-α3NC1の感染直前、感染後24時間、48時間および72時間で採取したDU145細胞の培養上清を示す。
【図4C】hTERT/RGD-α3NC1を感染させた各細胞におけるRGD-α3NC1の分泌を示すウエスタンブロットの写真である。レーン1~6はそれぞれDU145細胞、PC3細胞、HT1080細胞、H1299細胞、HSFおよびHFKを示す。
【図5】hTERT/RGD-α3NC1感染DU145細胞の培養上清の、各細胞増殖に対する効果を示すグラフである。各細胞の細胞増殖は、lacZで処理した細胞との相対的な%として示す。レーン1~7は、それぞれDU145細胞、PC3細胞、H1299細胞、HT1080細胞、HUVEC、HFKおよびHSFを示す。
【図6】細胞の細胞増殖を示すグラフである。(A)は、CM-lacZ(レーン1)、CM-RGD-α3NC1(レーン2)およびCM-RGD-α3NC1ΔFLAG(陰性コントロール:レーン3)で処理したHUVEC細胞を示し、(B)は、CM-lacZ(レーン1)およびCM-RGD-α3NC1(レーン2)で処理したDU145細胞を示す。
【図7】MTTアッセイにより評価した細胞の細胞生存率を示すグラフである。(A)は、CM-lacZ(レーン1)、CM-RGD-α3NC1(レーン2)およびCM-RGD-α3NC1ΔFLAG(陰性コントロール:レーン3)で処理したHUVEC細胞を示し、(B)は、CM-lacZ(レーン1)およびCM-RGD-α3NC1(レーン2)で処理したDU145細胞を示す。
【図8】各細胞における細胞表面インテグリンの発現を示すヒストグラムである。灰色のヒストグラムはアイソタイプの一致したIgGコントロールで得られた非特異的な蛍光を表わし、黒色のヒストグラムは特異的な蛍光を示す。各グラフ(A)~(G)は、それぞれ順にDU145細胞、PC3細胞、H1299細胞、HT1080細胞、HSF、HFKおよびHUVECを示す。
【図9】hTERT/RGD-α3NC1感染DU145細胞に由来するhTERT/RGD-α3NC1による内皮細胞の血管形成の抑制を示す顕微鏡写真である。(A)はCM-lacZ、(B)はCM-RGD-α3NC1および(C)はCM-RGD-α3NC1ΔFLAGで処理した細胞を示し、形成された管腔を符号aで示す。(D)は、(A)~(C)の弱拡大での視野内の管腔形成の分岐数を計測した結果を、3つの試料の平均±SDで示す。レーン1~3が、それぞれ(A)~(C)に対応する。
【図10】がん細胞移植ヌードマウスの腫瘍切片の、抗FLAG抗体および抗CD31抗体による二重染色の顕微鏡写真である。(A)はhTERT/RGD-α3NC1治療を行なったものであり、RGD-α3NC1(符号b、緑)が観察される。(B)はコントロールとしてPBSを替わりに注入したものであり、内皮細胞がCD31(符号c、赤)染色陽性領域として観察される。
【図11】hTERT/RGD-α3NC1治療を行なったヌードマウスの腎の顕微鏡写真である。(A)は、抗FLAG抗体およびH31抗体による二重染色を行なったものであり、(B)は(A)に近接する切片のヘマトキシリン・エオジン染色を行なったものである。
【図12A】hTERT/RGD-α3NC1による単回治療の腫瘍容積に及ぼす効果を示すグラフである。腫瘍容積は、それぞれのグループやプロットにおいて治療開始時との相対的な%として表わした。*はp<0.01を示す。
【図12B】hTERT/RGD-α3NC1による間欠治療の腫瘍容積に及ぼす効果を示すグラフである。腫瘍容積は、それぞれのグループやプロットにおいて治療開始時との相対的な%として表わした。*はp<0.01を示す。
【図13】がん細胞移植ヌードマウスの凍結腫瘍切片の抗CD31抗体染色の光学顕微鏡写真である。(A)~(C)は、それぞれPBS、CAG/lacZおよびhTERT/RGD-α3NC1による治療を示し、形成された微小血管を符号eで示す。(D)は、(A)~(C)の弱拡大での5つの視野内の微小血管の数を計測した結果を、平均±SDで示す。レーン1~3が、それぞれ(A)~(C)に対応する。
【符号の説明】
【0079】
a 管腔
b RGD-α3NC1
c CD31
d 糸球体
e 微小血管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図12A】
7
【図12B】
8
【図4A】
9
【図4B】
10
【図4C】
11
【図9】
12
【図10】
13
【図11】
14
【図13】
15