TOP > 国内特許検索 > ひずみ測定方法及びひずみ測定装置 > 明細書

明細書 :ひずみ測定方法及びひずみ測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4910135号 (P4910135)
公開番号 特開2008-039530 (P2008-039530A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
公開日 平成20年2月21日(2008.2.21)
発明の名称または考案の名称 ひずみ測定方法及びひずみ測定装置
国際特許分類 G01B  21/32        (2006.01)
FI G01B 21/32
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2006-212662 (P2006-212662)
出願日 平成18年8月3日(2006.8.3)
審査請求日 平成21年7月13日(2009.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】内田 真
【氏名】多田 直哉
【氏名】清水 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】櫻井 仁
参考文献・文献 特開昭51-140656(JP,A)
特開平05-018899(JP,A)
特開昭63-241405(JP,A)
特開平06-235618(JP,A)
特開2003-207432(JP,A)
調査した分野 G01B 21/00~21/32
G01B 11/00~11/30
G01B 5/00~ 5/30
G01B 7/00~ 7/34
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体に生じたひずみを測定する測定方法であって、
前記被検体に生じている凹状の窪みの形状を第1のタイミングで測定するステップと、
この第1のタイミングから所定時間後の第2のタイミングで前記窪みの形状を測定するステップと、
前記第1のタイミングにおける前記窪みの形状から、前記第2のタイミングにおける前記窪みの形状への形状変化の変化量から前記ひずみを算出するステップと
からなるひずみ測定方法。
【請求項2】
前記窪みは前記被検体に形成した圧痕であることを特徴とする請求項1記載のひずみ測定方法。
【請求項3】
前記被検体に前記圧痕を形成するステップと、
前記圧痕の形成後に、この圧痕の形成にともなって前記被検体に生じた残留応力を除去する残留応力除去処理を行うステップと
を有することを特徴とする請求項2記載のひずみ測定方法。
【請求項4】
前記圧痕は多角錐状の窪みとして多角錐面を有し、
前記圧痕における前記多角錐面の頂点の移動量に基づいて前記ひずみを算出していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のひずみ測定方法。
【請求項5】
前記多角錐面の各頂点は、前記多角錐面をそれぞれ前記多角錐面を含む仮想平面に置き換えて形成される仮想上の窪みの形状から決定した頂点としていることを特徴とする請求項4記載のひずみ測定方法。
【請求項6】
被検体に形成した多角錐状の窪みを用いて前記被検体に生じたひずみを測定するひずみ測定装置であって、
前記被検体にひずみが生じる前後で前記窪みの形状をそれぞれ測定する窪み形状測定手段と、
この窪み形状測定手段で測定された前記窪みの形状における形状変化の変化量から前記ひずみを算出する演算手段と
を備え、
前記窪み形状測定手段では、多角錐状の前記窪みにおける多角錐面の頂点の位置を測定し、前記演算手段では前記頂点の位置の変化量から前記ひずみを算出しているひずみ測定装置。
【請求項7】
前記窪み形状測定手段では、
前記多角錐面をそれぞれ前記多角錐面を含む仮想平面に置き換えて、
この仮想平面を用いて前記窪みの形状を仮想し、
仮想された窪みの形状から前記多角錐面の頂点の位置を特定することにより前記多角錐面の頂点の位置を測定していることを特徴とする請求項6記載のひずみ測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみ測定方法及びひずみ測定装置に関するものであり、微小なひずみも精度よく測定可能としたひずみ測定方法及びひずみ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体である材料のひずみを測定する必要がある場合には、被検体に抵抗ひずみ計を装着してひずみの測定が行われている。
【0003】
抵抗ひずみ計を用いた場合には、被検体には抵抗ひずみ計を装着するための領域が必要であるために、微小な領域の多点測定を行うことが困難であった。
【0004】
そこで、昨今では、被検体の表面の所定位置に圧痕対を形成し、圧痕対間の間隔変動をレーザー光の干渉を利用して測定するひずみ計測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、このひずみ計測装置では、被検体に圧痕を形成していればよいので、被検体の表面における圧痕の占有面積を小さくすることができ、微小な領域のひずみを測定することができる。
【0005】
あるいは、被検体の表面には、所定間隔で複数の小径の孔、あるいはけがき線を設け、隣接した小径間の間隔寸法の変動、あるいは隣接したけがき線間の間隔寸法の変動からひずみを測定する測定方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。小径間の間隔寸法あるいはけがき線間の間隔寸法は、適宜の撮像装置で小径あるいはけがき線の配設面を撮像し、画像解析を行って間隔寸法の測定を行っており、測定された間隔寸法を解析してひずみの測定を行っている。

【特許文献1】特開平06-235618号公報
【特許文献2】特開平10-170234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被検体の表面に形成した2つの圧痕間の間隔寸法を利用してひずみの測定を行う場合には、最低でも所定間隔だけ離隔させた2つの圧痕が必要であって、この間隔寸法よりも小さい局所的なひずみを測定できないという不具合があった。
【0007】
しかも、1組の圧痕対を利用したひずみの測定では、圧痕対を結ぶ直線に沿った方向のひずみしか測定することができず、その直線とは異なる方向のひずみを評価することができないため、被検体に生じたひずみを正確に測定するためには、少なくとも3つの圧痕を設けて3組の圧痕対からひずみを評価する必要があり、被検体の表面に測定用の圧痕を設けるための比較的大きな領域が必要となるという不具合があった。
【0008】
さらに、圧痕対を利用したひずみの測定では、被検体の表面の面方向のひずみしか評価することができず、被検体の厚み方向のひずみを評価することができなかった。
【0009】
本発明者らはこのような現状に鑑み、より微小な領域のひずみを測定可能とするだけでなく、被検体の表面の面方向のひずみとともに被検体の厚み方向のひずみも測定可能とすべく研究開発を行って、本発明をなすに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被検体に生じたひずみを測定する測定方法では、被検体に生じている凹状の窪みの形状を第1のタイミングで測定するステップと、この第1のタイミングから所定時間後の第2のタイミングで窪みの形状を測定するステップと、第1のタイミングにおける窪みの形状から、第2のタイミングにおける窪みの形状への形状変化の変化量からひずみを算出するステップとを有するものである。
【0011】
さらに、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)窪みは被検体に形成した圧痕であること。
(2)被検体に圧痕を形成するステップと、圧痕の形成後に、この圧痕の形成にともなって被検体に生じた残留応力を除去する残留応力除去処理を行うステップとを有すること。(3)圧痕は多角錐状の窪みとして多角錐面を有し、圧痕における多角錐面の頂点の移動量に基づいてひずみを算出していること。
(4)多角錐面の各頂点は、多角錐面をそれぞれ多角錐面を含む仮想平面に置き換えて形成される仮想上の窪みの形状から決定した頂点としていること。
【0012】
また、本発明のひずみ測定装置では、被検体に形成した多角錐状の窪みを用いて被検体に生じたひずみを測定するひずみ測定装置であって、被検体にひずみが生じる前後で窪みの形状をそれぞれ測定する窪み形状測定手段と、この窪み形状測定手段で測定された窪みの形状における形状変化の変化量からひずみを算出する演算手段とを備え、窪み形状測定手段では、多角錐状の窪みにおける多角錐面の頂点の位置を測定し、演算手段では頂点の位置の変化量からひずみを算出することとした。
【0013】
さらに、窪み形状測定手段では、多角錐面をそれぞれ多角錐面を含む仮想平面に置き換えて、この仮想平面を用いて窪みの形状を仮想し、仮想された窪みの形状から多角錐面の頂点の位置を特定することにより多角錐面の頂点の位置を測定していることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、被検体に生じたひずみを測定する測定方法において、被検体に生じている凹状の窪みの形状を第1のタイミングで測定するステップと、この第1のタイミングから所定時間後の第2のタイミングで窪みの形状を測定するステップと、第1のタイミングにおける窪みの形状から、第2のタイミングにおける窪みの形状への形状変化の変化量からひずみを算出するステップとを有することによって、1つの窪みから被検体に生じたひずみを測定することができ、微小な領域におけるひずみを測定可能とすることができとともに、被検体の厚み方向におけるひずみを測定可能とすることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載のひずみ測定方法において、窪みを被検体に形成した圧痕としたことによって、変形が生じる前の窪みの形状をほぼ一定とすることができ、変形後の形状変化の範囲を容易に想定できるので、窪み形状の測定の効率化を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載のひずみ測定方法において、被検体に圧痕を形成するステップと、圧痕の形成後に、この圧痕の形成にともなって被検体に生じた残留応力を除去する残留応力除去処理を行うステップとを有することによって、圧痕の形成による影響がひずみの測定結果に及ぶことを抑止できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項2または請求項3に記載のひずみ測定方法において、圧痕は多角錐状の窪みとして多角錐面を有し、圧痕における多角錐面の頂点の移動量に基づいてひずみを算出していることによって、窪みにおける形状変形の変形量の演算を極めて容易に行うことができ、ひずみの測定結果の出力を高速化できる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載のひずみ測定方法において、多角錐面の各頂点は、多角錐面をそれぞれ多角錐面を含む仮想平面に置き換えて形成される仮想上の窪みの形状から決定した頂点としていることによって、多角錐面の頂点を正確に特定でき、測定誤差を小さくして測定精度を向上させることができる。
【0020】
請求項記載の発明によれば、被検体に形成した多角錐状の窪みを用いて被検体に生じたひずみを測定するひずみ測定装置であって、被検体にひずみが生じる前後で窪みの形状をそれぞれ測定する窪み形状測定手段と、この窪み形状測定手段で測定された窪みの形状における形状変化の変化量からひずみを算出する演算手段とを備え、窪み形状測定手段では、多角錐状の窪みにおける多角錐面の頂点の位置を測定し、演算手段では頂点の位置の変化量からひずみを算出することによって、1つの窪みから被検体に生じたひずみを測定可能としたひずみ測定装置を提供できる。特に、このひずみ測定装置では、被検体の厚み方向におけるひずみを測定可能とすることができる。
【0021】
請求項記載の発明によれば、請求項記載のひずみ測定装置において、窪み形状測定手段では、多角錐面をそれぞれ多角錐面を含む仮想平面に置き換えて、この仮想平面を用いて窪みの形状を仮想し、仮想された窪みの形状から多角錐面の頂点の位置を特定することにより多角錐面の頂点の位置を測定していることによって、多角錐面の頂点を正確に特定でき、測定誤差を小さくして測定精度を向上させたひずみ測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のひずみ測定方法及びひずみ測定装置では、被検体に設けられた単一の凹状の窪みを用い、被検体に生じた変形によって生じる窪みの形状変化の変化量を測定して、この変化量から被検体に生じたひずみを測定しているものである。
【0023】
このように単一の窪みを用いることによって、従来のように2つの圧痕を用いた圧痕対によるひずみの測定よりも省スペースでひずみの測定を行うことができ、しかも、圧痕対を結ぶ直線方向の一次元的なひずみの計測だけでなく、三次元のひずみ及び剪断ひずみを測定できる。
【0024】
被検体は、金属体に限定されるものでなく、凹状の窪みの形状を保持可能であれば、プラスチックなどの合成樹脂材や、半導体基板などの結晶体材、あるいは木材などであってもよく、脆性破壊が生じない範囲でのセラミックス材であってもよい。
【0025】
凹状の窪みは、被検体の加工処理時に生じたキズなどを利用することもできるが、最も簡単には被検体に圧子を押しつけて形成した圧痕とすることができる。圧痕を用いる場合には、被検体は圧痕の形成が可能なように塑性変形性を有している必要がある。
【0026】
このように、窪みとして圧痕を用いた場合には、被検体に変形が生じる前の形状を一定形状とすることができるとともに、変形後の形状変化の範囲を想定可能であることから、窪み形状の測定の効率化を図ることができる。
【0027】
特に、被検体が金属体などの場合には、被検体への圧痕の形成後に被検体の焼き鈍しによる残留応力除去処理を行って、圧痕の形成にともなって被検体に生じた残留応力を除去しておくことが望ましい。残留応力除去処理を行っておくことにより、圧痕の形成による残留応力など影響が被検体の変形に及び、変形状態が残留応力がない場合の変形状態と異なることを抑制して、被検体に生じたひずみをより正確に測定できる。
【0028】
窪み形状の測定には共焦点顕微鏡を用いることができる。なお、共焦点顕微鏡を用いて窪み形状を測定する場合に限定するものではなく、超音波やレーザーを用いた表面形状の計測装置を用いて窪み形状の測定を行ってもよい。また、被検体の形状が大きい場合には、窪み部分に樹脂材料などを充填して窪み形状の型取りを行って窪みの形状を転写し、転写された窪みの形状を用いて測定を行ってもよい。
【0029】
被検体に生じたひずみを測定する場合には、図1に示すフローチャートのように、まず、被検体に設けられている窪みの形状を共焦点顕微鏡などで所定の第1のタイミングで測定しておく(ステップS1)。
【0030】
次いで、この第1のタイミングから所定時間後の第2のタイミングで先の窪みの形状を共焦点顕微鏡などで再度測定する(ステップS2)。
【0031】
次いで、第1のタイミングでの窪みの形状から第2のタイミングでの窪みの形状に変化した場合における窪みにおけるひずみを算出する(ステップS3)。窪みにおけるひずみの算出は、例えば、ひずみを評価するひずみパラメータを導入して有限要素法などの解析手段を用いてひずみパラメータを特定することにより行うこともできるし、後述するように第1のタイミングでの窪みの形状から第2のタイミングでの窪みの形状への変化量から適宜の算出式に基づいて算出することによって行うこともできる。
【0032】
次いで、被検体のひずみを、窪みのひずみから所定の換算式を用いて算出する(ステップS4)。
【0033】
このように、窪みに生じたひずみに基づいて被検体に生じたひずみを算出することにより、単一の窪みから被検体に生じたひずみを算出できる。
【0034】
特に、被検体に生じたひずみにより変動しない基準辺を被検体にあらかじめ設定し、第1のタイミングと第2のタイミングで基準辺の位置が不変であるとした場合には、窪みに生じたひずみだけでなく回転を測定することができる。
【0035】
さらに、窪み形状を多角錐状とした場合には、窪みを複数の多角錐面で構成でき、窪みにおける形状変形の変形量を多角錐面の頂点の移動量で評価することによって、ひずみ及び回転の評価を極めて容易に行うことができる。
【0036】
ここで、被検体における任意の点(x,y,z)の変位は、次式で示されるように一次関数で近似されるものとしている。
【0037】
【数1】
JP0004910135B2_000002t.gif

【0038】
例えば、図2に示すように被検体Aに形成する圧痕Bを三角錐形状とした場合、圧痕Bの4つの頂点(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)、(x4,y4,z4)は、次式で表される。図2(a)は被検体Aに形成した圧痕Bの平面図、図2(b)は図2(a)のX-X断面図である。
【0039】
【数2】
JP0004910135B2_000003t.gif

【0040】
【数3】
JP0004910135B2_000004t.gif

【0041】
【数4】
JP0004910135B2_000005t.gif

【0042】
【数5】
JP0004910135B2_000006t.gif

【0043】
これらの式から、Uxは以下のように表される。
【0044】
【数6】
JP0004910135B2_000007t.gif

【0045】
同様に、Uyは以下のように表される。
【0046】
【数7】
JP0004910135B2_000008t.gif

【0047】
同様に、Uzは以下のように表される。
【0048】
【数8】
JP0004910135B2_000009t.gif

【0049】
数6~8から、a0~a3,b0~b3,c0~c3はそれぞれ次式によって求められる。
【0050】
【数9】
JP0004910135B2_000010t.gif

【0051】
【数10】
JP0004910135B2_000011t.gif

【0052】
【数11】
JP0004910135B2_000012t.gif

【0053】
したがって、次式を得ることができる。
【0054】
【数12】
JP0004910135B2_000013t.gif

【0055】
したがって、三角錐形状の圧痕Bの変位は次式で表すことができる。
【0056】
【数13】
JP0004910135B2_000014t.gif

【0057】
したがって、変位勾配テンソルは次式で表すことができる。
【0058】
【数14】
JP0004910135B2_000015t.gif
これにより、三角錐形状の圧痕Bのひずみεij及び回転wijは次式で求めることができる。
【0059】
【数15】
JP0004910135B2_000016t.gif

【0060】
このようにして得られた圧痕Bのひずみεij及び回転wijを用いるとともに、所定の換算式から、被検体Aに生じたひずみ及び回転を算出することができる。
【0061】
具体的には、たとえば、被検体の面方向に作用した負荷によって圧痕にひずみが生じた際に、負荷方向の圧痕のひずみをεin-1、負荷方向と垂直な方向の圧痕のひずみをεin-2、被検体の厚み方向の圧痕のひずみをεin-3とすると、負荷方向の被検体のひずみε1、負荷方向と垂直な方向の被検体のひずみε2、厚み方向の被検体のひずみをε3は、被検体が弾性変形している場合には次式によって算出できる。
【0062】
【数16】
JP0004910135B2_000017t.gif

【0063】
また、被検体が塑性変形している場合には次式によって算出できる。
【0064】
【数17】
JP0004910135B2_000018t.gif

【0065】
このように、圧痕Bに設けた頂点を利用してひずみを測定する場合には、圧痕Bは多角推形状であることが望ましく、特に、図2に示すように三角錐形状とすることにより、最も少ない計算量でひずみを算出できる。なお、圧痕Bは、三角錐形状に限定するものではなく、四角錐形状や五角錐形状であってもよい。
【0066】
特に、圧痕Bは、圧痕内部に頂点を設けておくことにより、この頂点の位置を利用して被検体の厚み方向のひずみを算出できるので、圧痕は錐形状であることが望ましい。
【0067】
さらに、圧痕を形成する圧子において、先端部分に平坦面を設けた部分錐形状の圧子とすることにより、図3に示すように、圧痕B'の内部に複数の頂点を設けてもよい。このように圧痕B'の内部に設けた複数の頂点を利用して、被検体Aの厚み方向のひずみ及び/または回転をより正確に算出できる。図3(a)は被検体Aに形成した圧痕B'の平面図、図3(b)は図3(a)のY-Y断面図である。
【0068】
図4は、本実施形態のひずみ測定装置の概略模式図であり、本実施形態のひずみ測定装置は、加圧された高温の液体が送給される金属製の送給配管10に生じるひずみを測定している。
【0069】
送給配管10には、所定位置にひずみ計測用の圧痕bを形成しており、特に、送給配管10への圧痕bの形成後、送給配管10には焼鈍処理を施して、圧痕bの形成にともなって送給配管10に生じた残留応力を除去している。本実施形態では、圧痕bは三角錐形状としており、送給配管10の上側面に所定間隔で設けている。
【0070】
ひずみ測定装置は、送給配管10に設けた圧痕bの窪みの形状を測定する窪み形状測定手段である走査型共晶点レーザー顕微鏡11と、この走査型共晶点レーザー顕微鏡11で測定した圧痕bの窪みの形状からひずみを算出する演算手段であるパーソナルコンピュータで構成した演算部12とを備えている。説明の便宜上、以下においては、「走査型共晶点レーザー顕微鏡」を単に「顕微鏡」と称する。
【0071】
顕微鏡11は、本実施形態では、送給配管10と平行に設けた支持杆13に吊下げ状態に装着して、顕微鏡11の対物レンズを送給配管10の圧痕bに対向させている。すなわち、顕微鏡11の後端部には、支持杆13に吊下げ状態に装着するための吊下部14を設けて、この吊下部を介して支持杆13に吊下げ状態に装着している。
【0072】
支持杆13は、温度変動による膨脹あるいは収縮の変動が小さい素材で構成することが望ましく、本実施形態では、送給配管10自体が温度管理された環境下に設けられていることにより、温度による支持杆13の変形が生じにくいことから、スチール製のH鋼を用いている。
【0073】
吊下部14には、支持杆13の上部平面に当接さえた転動ローラ15,15を回動自在に装着しており、図示しない駆動モータで転動ローラ15を回転させることにより吊下部14を支持杆13の長手方向に沿って移動可能とし、吊下部14に沿って顕微鏡11を移動可能としている。
【0074】
さらに、吊下部14には、支持杆13に設けた位置決め用のマーク(図示せず)を検出する位置決め用センサ16を設けており、位置決め用センサ16によるマークの検出によって顕微鏡11の移動を停止させて、顕微鏡11による圧痕bの測定を行っている。
【0075】
位置決め用センサ16は、光学センサであっても磁気センサであってもよく、適宜のセンサを用いてよい。例えば、光学センサを位置決め用センサ16として用いる場合には、マークには反射材を用いることができ、マークによる反射光を位置決め用センサ16で検出している。また、磁気センサを位置決め用センサ16として用いる場合には、マークには磁石を用いることができ、マークによる磁気を位置決め用センサ16で検出している。
【0076】
パーソナルコンピュータで構成した演算部12は、送給配管10に生じたひずみを測定するひずみ測定プログラムを記憶しており、このひずみ測定プログラムを実行させることにより、後述するようにひずみの測定を行っている。
【0077】
特に、演算部12は、ひずみ測定プログラムに基づいて顕微鏡11だけでなく吊下部14及び位置決め用センサ16も制御して、ひずみ測定を自動的に行っている。
【0078】
以下において、図5のフローチャートに基づいて、ひずみ測定プログラムによるひずみ測定について説明する。
【0079】
なお、演算部12の記憶部には、第1のタイミングとして送給配管10の使用を開始した直後における各圧痕bの形状をあらかじめ記憶しているものとし、説明の便宜上、あらかじめ記憶されている圧痕bの形状を「初期形状」と呼ぶこととする。ここで、初期形状として記憶されているデータは、三角錐形状とした圧痕bにおける4つの頂点の座標データであって、顕微鏡11によって検出されたものである。
【0080】
演算部12は、あらかじめ設定されているひずみの測定タイミングに達したことを検出すると(ステップT1)、顕微鏡11を第1番目に測定する圧痕b上に移動させる(ステップT2)。なお、このタイミングが第2のタイミングである。移動の終了の判定は、位置決め用センサ16による所定のマークの検出によって行っている(ステップT3)。
【0081】
圧痕b上の所定位置に顕微鏡11を配置すると、演算部12は顕微鏡11による圧痕bの測定を行う(ステップT4)。
【0082】
顕微鏡11で測定された圧痕bの画像データは演算部12に入力され(ステップT5)、演算部12では、入力された画像データを用いて、三角錐形状の圧痕bを構成している3つの三角錐面の方程式及び底面の方程式を最小二乗法などにより特定して、これらの平面の方程式で特定される仮想平面で圧痕bが形成されるものとする(ステップT6)。
【0083】
次いで、演算部12は、ステップT6の仮想平面情報である各平面の方程式から圧痕bの形状を仮想して(ステップT7)、仮想された圧痕bの形状情報から圧痕bを構成している三角錐面の頂点の位置を特定している(ステップT8)。
【0084】
ここで、ステップT7における圧痕bの形状の仮想とは、各平面の方程式から、平面の交わりによって特定される辺の方程式を特定して、三角錐形状の圧痕bの6本の辺の方程式を特定することである。この6本の辺の方程式が特定されることにより圧痕bの形状が特定されることとなる。
【0085】
そして、ステップT8における三角錐面の頂点の位置の特定とは、6本の辺の方程式の中から互いに交差する3本の辺の方程式を利用して三角錐面の頂点の座標データを特定することである。
【0086】
このように、仮想的な平面を利用して三角錐形状となっている圧痕bの頂点の座標データを求めることにより、顕微鏡11で測定された圧痕bの画像データから直接的に頂点の座標データを特定するよりも明確に特定できるので、測定誤差を小さくして測定精度を向上させることができる。
【0087】
演算部12は、特定された圧痕bの4つの頂点の座標データと、初期形状の頂点の座標データとから、前述した算出式に基づいて圧痕bのひずみ及び回転を算出する(ステップT9)。ここで、支持杆13が送給配管10に対して基準辺として用いることにより回転を算出することができる。本実施形態では、支持杆13を基準辺としているが、送給配管10自体に基準辺を設けてもよい。
【0088】
圧痕bのひずみ及び回転の算出後、演算部12は所定の換算式によって換算を行って、被検体である送給配管10に生じたひずみ及び回転を算出している(ステップT10)。算出されたひずみ及び回転はメモリなどの記憶手段に記憶して、1つの圧痕bに対するひずみ及び回転の測定を終了している。
【0089】
所定の圧痕bに対するひずみ及び回転の測定後、演算部12は全ての圧痕bに対するひずみ及び回転の測定が終了したかを判定し(ステップT11)、未測定の圧痕bが有る場合には、演算部12はステップT2に戻って顕微鏡11を次に測定する圧痕b上に移動させる。一方、全ての圧痕bに対するひずみ及び回転の測定が終了していた場合には、演算部12は顕微鏡11を所定の待機位置に移動させて待機状態としている(ステップT12)。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係るひずみ測定方を説明するフローチャートである。
【図2】(a)は圧痕の平面図、(b)は(a)のX-X断面図である。
【図3】(a)は変容例の圧痕の平面図、(b)は(a)のY-Y断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るひずみ測定装置の説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係るひずみ測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
b 圧痕
10 送給配管
11 走査型共晶点レーザー顕微鏡
12 演算部
13 支持杆
14 吊下部
15 転動ローラ
16 位置決め用センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4