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明細書 :非破壊検査装置及びこの装置による検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3924626号 (P3924626)
登録日 平成19年3月9日(2007.3.9)
発行日 平成19年6月6日(2007.6.6)
発明の名称または考案の名称 非破壊検査装置及びこの装置による検査方法
国際特許分類 G01N  27/72        (2006.01)
G01N  27/82        (2006.01)
FI G01N 27/72
G01N 27/82
請求項の数または発明の数 10
全頁数 13
出願番号 特願2006-312092 (P2006-312092)
出願日 平成18年11月17日(2006.11.17)
優先権出願番号 2006244403
優先日 平成18年9月8日(2006.9.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年11月20日(2006.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】紀和 利彦
【氏名】塚田 啓二
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開2003-149208(JP,A)
特開2006-030004(JP,A)
国際公開第2006/109382(WO,A1)
河田知明 他,低周波磁場を用いた金属欠陥の2次元マッピング,電気学会基礎・材料・共通部門大会(CD-ROM),2006年 8月21日,p.262
石原雄大 他,低周波磁場欠陥検査手法の開発,電気学会全国大会講演論文集,2006年 3月,No.2 材料/マグネティックス,p.169
調査した分野 G01N 27/72-27/90
JSTPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
要約 【課題】金属体等の被検体中に存在する未知の欠陥の位置や形状をより高速に、かつ定量的に評価し、被検体の内部構造を可視化可能とした非破壊検査装置及びこの装置による検査方法を提供する。
【解決手段】被検体にパルス状の磁場を印加して、この磁場に応じて被検体に誘導された磁場をセンサで検出する非破壊検査装置及びこの装置による検査方法であって、センサによって得られた計測信号とバックグラウンド信号から誘導成分信号を生成し、フーリエ変換した誘導成分信号の振幅をフーリエ変換したバックグラウンド信号の振幅で規格化して被検体の応答特性を特定する振幅情報を生成し、フーリエ変換した計測信号の偏角とフーリエ変換したバックグラウンド信号の偏角の差から被検体の応答特性を特定する位相情報を生成することにより、被検体の内部構造を反映した応答特性の振幅情報及び位相情報を得る。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
所定のパルス状の電流を出力する電源回路と、
前記電流に基づいて磁場を生成する印加コイルと、
前記磁場によって被検体に誘導した誘導磁場を検出して電気信号として出力するセンサと、
前記電源回路からの前記電流の出力に応じた前記電気信号の解析を行う解析部と
を備えるとともに、
前記解析部には、
前記被検体で誘導された誘導磁場を前記センサで検出して得た電気信号である第1の信号と、前記被検体がない場合に前記印加コイルで生成された磁場を前記センサで検出して得たバックグラウンドの電気信号である第2の信号の情報を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された第1の信号の情報と第2の信号の情報とから前記被検体の応答特性を特定する振幅情報と位相情報を生成する応答特性特定手段と
を備えた非破壊検査装置において、
前記応答特性特定手段では、
前記第1の信号から前記第2の信号を減算して第3の信号を生成し、
この第3の信号をフーリエ変換するとともに、フーリエ変換された前記第3の信号の振幅を、フーリエ変換した前記第2の信号の振幅で規格化して前記振幅情報を生成し、
フーリエ変換した前記第1の信号における偏角とフーリエ変換した前記第2の信号における偏角の差から前記位相情報を生成する
ことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項2】
前記解析部は、
前記被検体に設定した複数の計測位置でそれぞれ前記振幅情報と前記位相情報を特定して前記記憶手段に記憶し、各計測位置での前記振幅情報と前記位相情報を用いて前記被検体の内部構造を特定する内部構造特定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記被検体は前記センサに対して移動可能とした移動手段に装着し、
前記解析部で前記移動手段を操作することにより前記被検体の複数の位置において前記振幅情報と前記位相情報を順次生成することを特徴とする請求項2記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記センサは、複数の検出部をアレイ状に配置して構成し、各検出部でそれぞれ前記第1の信号及び前記第2の信号の検出を行うことを特徴とする請求項2記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記センサから出力される電気信号から直流成分を消去するオフセット回路と、
このオフセット回路から出力された電気信号を増幅する増幅回路
を設けたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
解析部に入力される前記第1の信号及び前記第2の信号をそれぞれデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換回路を設けたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
前記アナログ・デジタル変換回路には、前記電源回路から出力する前記パルス状の電流の出力タイミングを示すトリガ信号を入力し、このトリガ信号をデジタル信号に変換して前記解析部に入力していることを特徴とする請求項6記載の非破壊検査装置。
【請求項8】
前記電源回路は、前記パルス状の電流をガウス関数波形として出力することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
【請求項9】
前記センサは、ホール素子、磁気抵抗素子、磁気インピーダンス効果素子、フラックスゲート又は、超伝導量子干渉素子のいずれか一種であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
【請求項10】
電源回路から出力したパルス状の電流によって生成したパルス状の磁場に対して被検体に誘導された誘導磁場をセンサで検出し、このセンサの出力信号を用いて解析装置で解析することにより前記被検体を検査する検査方法であって、
前記誘導磁場の検出に応じて前記センサから出力された第1の信号を記憶するステップと、
前記被検体がない場合の前記パルス状の磁場に応じて前記センサから出力された第2の信号を記憶するステップと、
前記電源回路から出力されるパルス状の電流の出力タイミングを示すトリガ信号に基づいて、前記第1の信号及び前記第2の信号を調整するステップと、
前記第1の信号から前記第2の信号を減算して誘導磁場成分だけを抽出した第3の信号を生成するステップと、
前記第3の信号をフーリエ変換するととともに、フーリエ変換された前記第3の信号の振幅をフーリエ変換した前記第2の信号の振幅で規格化して前記被検体の応答特性を特定する振幅情報を生成するステップと、
フーリエ変換した前記第1の信号における偏角とフーリエ変換した前記第2の信号における偏角の差から前記被検体の応答特性を特定する位相情報を生成するステップと
を有する検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に印加した交流磁場に対する被検体からの応答信号を検出して、被検体を検査する非破壊検査装置、及びこの装置による検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流磁場を利用した渦流探傷装置などの非破壊検査装置が知られている。渦流探傷装置は、一般的に、交流磁場を出力するためのコイルと、このコイルに所定の交流電流を通電するための電源回路と、前記コイルから出力した交流磁場に対する被検体の応答信号を検出するためのセンサと、このセンサで検出した応答信号を解析する解析部とを備えている。
【0003】
すなわち、渦流探傷装置では、コイルから所定の交流磁場を出力すると、ファラディの電磁誘導法則に基づいて被検体の表面に渦電流を発生させることができ、この渦電流によって被検体にはコイルで印加した交流磁場に反発する磁場が形成されることとなる。なお、以下において、特に言及しない限り、被検体は通電性を有しているものとする。
【0004】
渦流探傷装置では、被検体に生じた渦電流に基づく磁場の変動として計測される応答信号をセンサで検出し、この応答信号を解析することにより被検体における欠陥の有無を検知している。すなわち、被検体に欠陥が存在している場合には、欠陥によって渦電流の生成が阻害されるので、欠陥が存在しない場合と比較して応答信号が変化することを利用しているものである。
【0005】
なお、渦流探傷装置では、人工的に欠陥を形成した試験体を用いて、この試験体を被検体とした場合に得られる応答信号の情報をあらかじめ登録しており、この試験体における応答信号と、被検体における応答信号とを比較して、最も信号波形の似ている試験体の応答信号を特定することにより、被検体における欠陥の有無、及びその欠陥の形状などを判定している。
【0006】
しかしながら、被検体には、様々な形状や種類の欠陥が形成されるため、これら全ての欠陥を網羅した試験体における応答信号を得ることは現実的に困難であって、より近いと思われる試験体の応答信号の波形形状から欠陥を特定することにより、欠陥の位置や形状に関する正確な情報を得ることは現実問題として不可能であるとともに、欠陥を誤検出する可能性もあった。
【0007】
このような渦流探傷装置で構成された非破壊検査装置の一形態として、鋸波状の波形の交流磁場を出力して被検体の計測を行い、センサから出力された電気信号を高速フーリエ変換して周波数関数とすることにより複数種類の周波数の交流磁場を印加したことに相当する応答信号の検出を行う非破壊検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
特に、この非破壊検査装置では、得られた応答信号の情報から被検体の内部に生じている欠陥を三次元表示することも行っている。
【0009】
また、ロックインアンプ回路を用いることにより、周波数の異なる複数の交流磁場による被検体の応答信号を検出するとともに、各周波数に対する応答信号の同相信号と、この同相信号から位相を90度ずらした90度位相信号を生成して、これらの信号を用いて被検体における欠陥の有無だけでなく、被検体の材質の特定が可能であることが記載されている(例えば、特許文献2参照。)。

【特許文献1】特開2003-149208号公報
【特許文献2】特開2006-30004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、鋸波状の波形の交流磁場を用いて応答信号を検出し、この応答信号を高速フーリエ変換して周波数関数として欠陥の解析を行う場合には、各周波数での振幅が異なっているために欠陥の画像にゆがみが生じやすく、正確な形状を再現できないという問題点があった。
【0011】
しかも、応答信号の特性は被検体の材質によって異なるため、被検体に材質の異なる物質が混合されている場合には、欠陥の検出あるいは、画像化を行うことが困難であるという問題点があった。
【0012】
また、ロックインアンプ回路を用いて応答信号を検出する場合には、検出する周波数ごとにロックインアンプ回路を設ける必要があって、被検体に生じた欠陥の位置や形状をできるだけ正確に検出するためには100台以上のロックインアンプ回路が必要となって、非破壊検査装置が大型化するととともに、高コスト化するという問題点があった。
【0013】
さらに、ロックインアンプ回路の配設数に応じて応答信号の測定回数が増大することとなり、測定に要する時間が大きくなるという問題もあった。
【0014】
かかる従来の事情に鑑みて、本発明者らは、金属体等の被検体中に存在する未知の欠陥の位置や形状をより高速に、かつ定量的に評価し、被検体の内部構造を可視化可能とした非破壊検査装置を提供すべく研究開発を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の非破壊検査装置では、所定のパルス状の電流を出力する電源回路と、電流に基づいて磁場を生成する印加コイルと、磁場によって被検体に誘導した誘導磁場を検出して電気信号として出力するセンサと、電源回路からの電流の出力に応じた電気信号の解析を行う解析部とを備えるとともに、解析部には、被検体で誘導された誘導磁場をセンサで検出して得た電気信号である第1の信号と、被検体がない場合に印加コイルで生成された磁場をセンサで検出して得たバックグラウンドの電気信号である第2の信号の情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された第1の信号の情報と第2の信号の情報とから被検体の応答特性を特定する振幅情報と位相情報を生成する応答特性特定手段とを備えた非破壊検査装置において、応答特性特定手段では、第1の信号から第2の信号を減算して第3の信号を生成し、この第3の信号をフーリエ変換するとともに、フーリエ変換された第3の信号の振幅を、フーリエ変換した第2の信号の振幅で規格化して振幅情報を生成し、フーリエ変換した第1の信号における偏角とフーリエ変換した第2の信号における偏角の差から位相情報を生成することとした。
【0016】
さらに、本発明の非破壊検査装置では、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)解析部は、被検体に設定した複数の計測位置でそれぞれ振幅情報と位相情報を特定して記憶手段に記憶し、各計測位置での振幅情報と位相情報を用いて被検体の内部構造を特定する内部構造特定手段を備えること。
(2)被検体はセンサに対して移動可能とした移動手段に装着し、解析部で移動手段を操作することにより被検体の複数の位置において振幅情報と位相情報を順次生成すること。
(3)センサは、複数の検出部をアレイ状に配置して構成し、各検出部でそれぞれ第1の信号及び第2の信号の検出を行うこと。
(4)センサから出力される電気信号から直流成分を消去するオフセット回路と、このオフセット回路から出力された電気信号を増幅する増幅回路を設けたこと。
(5)解析部に入力される第1の信号及び第2の信号をそれぞれデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換回路を設けたこと。
(6)アナログ・デジタル変換回路には、電源回路から出力するパルス状の電流の出力タイミングを示すトリガ信号を入力し、このトリガ信号をデジタル信号に変換して解析部に入力していること。
(7)電源回路は、パルス状の電流をガウス関数波形として出力すること。
(8)センサは、ホール素子、磁気抵抗素子、磁気インピーダンス効果素子、フラックスゲート又は、超伝導量子干渉素子のいずれか一種であること。
【0017】
また、本発明の検査方法では、電源回路から出力したパルス状の電流によって生成したパルス状の磁場に対して被検体に誘導された誘導磁場をセンサで検出し、このセンサの出力信号を用いて解析装置で解析することにより被検体を検査する検査方法であって、誘導磁場の検出に応じてセンサから出力された第1の信号を記憶するステップと、被検体がない場合のパルス状の磁場に応じてセンサから出力された第2の信号を記憶するステップと、電源回路から出力されるパルス状の電流の出力タイミングを示すトリガ信号に基づいて、第1の信号及び第2の信号を調整するステップと、第1の信号から第2の信号を減算して誘導磁場成分だけを抽出した第3の信号を生成するステップと、第3の信号をフーリエ変換するととともに、フーリエ変換された第3の信号の振幅をフーリエ変換した第2の信号の振幅で規格化して被検体の応答特性を特定する振幅情報を生成するステップと、フーリエ変換した第1の信号における偏角とフーリエ変換した第2の信号における偏角の差から被検体の応答特性を特定する位相情報を生成するステップとを有することとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、センサによって得られた第1の信号と第2の信号、及び第1の信号からの第2の信号の減算によって得られる第3の信号をフーリエ変換して周波数関数とし、フーリエ変換された第3の信号の振幅をフーリエ変換した第2の信号の振幅で規格化して被検体の応答特性を特定する振幅情報を生成し、フーリエ変換した第1の信号の偏角とフーリエ変換した第2の信号の偏角の差から被検体の応答特性を特定する位相情報を生成することにより、被検体の内部構造を反映した応答特性の振幅情報及び位相情報を得ることができる。
【0019】
したがって、被検体中に存在する未知の欠陥の位置や形状をより高速に、かつ定量的に評価可能とすることができ、しかも、応答特性に位相情報が含まれることにより、被検体内の材質の違いも検出可能であって、被検体の内部構造をより詳細に可視化可能とした非破壊検査装置及びこの装置による検査方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の非破壊検査装置及びこの装置による検査方法は、印加コイルを用いて被検体に印加した磁場に応じて被検体に生じた渦電流をセンサによって磁場として検出し、この渦電流に基づいて生成されるいわゆる誘導磁場の発生状態から被検体内部を非破壊で検査し、被検体内部の欠陥を検出可能としているものである。
【0021】
ここで、最初に、被検体に印加した磁場に対する応答特性を表す応答関数が、印加した磁場の波形の畳み込み積分によって表せることを説明する。このことが本発明の原理となっている。
【0022】
まず、説明の便宜上、印加コイルによって生成した磁場をセンサで検出して得られるバックグラウンド信号をR(t)、所定位置に配置した被検体に生じた誘導磁場をセンサで検出して得られる計測信号をS(t)とする。なお、計測信号S(t)には、被検体に誘導磁場を生じさせるために印加した印加コイルによる磁場の影響が含まれている。バックグラウンド信号R(t)と計測信号S(t)は、印加コイルによる磁場印加のタイミングを合わせているものとする。
【0023】
センサ及びこのセンサに接続されている所要の回路の応答特性H(t)は、バックグラウンド信号R(t)と、印加コイルによって生成した磁場B(t)と次式の関係にある。ここで、τは積分を行うための変数である。
【0024】
【数1】
JP0003924626B1_000002t.gif
さらに、被検体の応答特性をG(t)とすると、この被検体の応答特性G(t)と計測信号S(t)とは次式の関係にある。ここで、τ’は積分を行うための変数である。
【0025】
【数2】
JP0003924626B1_000003t.gif
したがって、計測信号S(t)とバックグラウンド信号R(t)との差分S(t)-R(t)は次式で表される。
【0026】
【数3】
JP0003924626B1_000004t.gif
ここで、差分S(t)-R(t)をフーリエ変換して得られる振幅Aw(f)は、既知の畳み込み積分とフーリエ変換の関係により、H(t)、G(t)及びB(t)の周波数特性H(f)、G(f)及びB(f)を用いて次式で表される。
【0027】
【数4】
JP0003924626B1_000005t.gif
また、バックグラウンド信号R(t)をフーリエ変換して得られる振幅Ar(f)は、既知の畳み込み積分とフーリエ変換の関係により次式で表される。
【0028】
【数5】
JP0003924626B1_000006t.gif
したがって、差分S(t)-R(t)をフーリエ変換して得られた振幅Aw(f)と、バックグラウンド信号R(t)をフーリエ変換して得られた振幅Ar(f)との比A(f)(=Aw(f)/Ar(f))は、被検体の応答特性G(t)の周波数特性G(f)となる。この周波数特性G(f)は、被検体の周波数応答特性をあらわすものであり、しかもセンサ及びこのセンサに接続されている所要の回路の応答特性H(t)に依存しないものである。
【0029】
さらに、計測信号S(f)をフーリエ変換して偏角Ps(f)を求めるとともに、バックグラウンド信号R(t)をフーリエ変換して偏角Pr(f)を求めて、偏角の差P(f)=Ps(f)-Pr(f)を求めることにより応答特性を示す応答関数Dを次式で表すことができる。
【0030】
【数6】
JP0003924626B1_000007t.gif
ここで、周波数fは、被検体の表皮長tと次式で示される関係を有しており、周波数fが被検体の厚みに対応することとなっている。ここで、μは真空の透磁率であり、σは被検体の導電率である。
【0031】
【数7】
JP0003924626B1_000008t.gif
以上のように、被検体の応答特性を特定する振幅情報と位相情報を特定することにより、〔数6〕の式から被検体の内部構造がわかることとなる。特に、振幅情報は、第1の信号である計測信号S(t)から、第2の信号であるバックグラウンド信号R(t)を減算して生成した第3の信号をフーリエ変換して周波数の関数とし、フーリエ変換された第3の信号の振幅をフーリエ変換された第2の信号の振幅で規格化することにより容易に求めることができるととともに、位相情報はフーリエ変換した計測信号S(t)における偏角とフーリエ変換したバックグラウンド信号R(t)における偏角の差から容易に求めることができる。
【0032】
このようにして得られる被検体の応答特性を、被検体において複数の計測位置で特定し、特定された応答特性は解析部の記憶手段に記憶するとともに、記憶された応答特性を用いて被検体の所定の断面における等高線状の振幅分布図を生成することにより被検体の内部構造を特定することができる。
【0033】
以下、本発明の実施形態を添付する図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
本発明の非破壊検査装置は、図1に示すように、所定のパルス状の電流を出力する電源回路11と、パルス状の電流に基づいて磁場を生成する印加コイル12と、この印加コイル12で生成した磁場によって被検体13に誘導した誘導磁場を検出して電気信号として出力するセンサ14と、このセンサ14から出力された電気信号を解析する解析部15とで構成している。
【0035】
本実施形態では、被検体13は移動手段としての移動台車20に装着し、移動台車20を適宜移動操作することによって、印加コイル12で生成した磁場によって被検体13に誘導した誘導磁場をセンサ14で検出されない位置にまで移動可能としている。なお、被検体13は、印加コイル12の中心軸の延長線上に配置することが望ましい。移動台車20の移動操作は、本実施形態では解析部15からの操作制御に基づいて行っている。
【0036】
電源回路11は、出力する電流の波形を適宜の波形として出力可能としており、本実施形態では、パルス状の波形とした電流を出力可能としている。具体的には、株式会社エヌエフ回路設計ブロック社製のBP4610を使用している。
【0037】
印加コイル12は、本実施形態では直径約80cmとした円形状のコイルで構成している。具体的には、2枚の木製合板の間に長さ5cm程度の木片を直径約80cmの円形状に複数配置して固定し、固定された木片の周囲に電線を巻き付けて作製した。
【0038】
センサ14は、印加コイル12の中心軸の延長線上に配置した磁気抵抗素子で構成している。具体的には、ハネウェール社製のHMC2003を使用している。なお、センサ14は、磁気抵抗素子で構成する場合に限定するものではなく、磁気インピーダンス効果素子や、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子等のいずれかを使用してもよい。
【0039】
センサ14は、出力信号から地磁気の影響やセンサの特性に起因した直流成分を除去するオフセット調節回路16に接続し、このフセット調節回路16でオフセット調整された出力信号を信号増幅回路17に入力して増幅している。
【0040】
さらに、信号増幅回路17で増幅された出力信号はアナログ・デジタル変換回路18に入力してデジタル信号とし、このデジタル信号化された出力信号を解析部15に入力している。
【0041】
解析部15には出力信号だけでなく、電源回路11から出力したパルス状の電流の出力タイミングを示すトリガ信号を、アナログ・デジタル変換回路18を介して入力している。解析部15に入力されるトリガ信号もアナログ・デジタル変換回路18によってデジタル信号としている。
【0042】
解析部15は、本実施形態ではパーソナルコンピュータで構成している。解析部15には、ハードディスクに所要の処理を実行するためのプログラムを記憶させており、このプログラムをCPU(中央演算装置)に実行させて、図2に示すフローチャートに基づいて解析を行っている。
【0043】
解析部15で行った解析処理の結果は、解析部15に接続したディスプレイなどの表示装置19に表示可能としている。
【0044】
解析部15は、アナログ・デジタル変換回路18を介して入力されたセンサの出力信号、及び電源回路11から入力されたトリガ信号をメモリなどの記憶手段に一旦記憶させ、これらの信号を以下のステップを備えたプログラムで処理している。
【0045】
すなわち、解析部15は、まず、センサ14の出力信号及び電源回路11のトリガ信号の待ち受け状態であるスタンバイ状態として(ステップS1)、アナログ・デジタル変換回路18からのセンサ14の出力信号及び電源回路11のトリガ信号の入力を受付け、受け付けたセンサ14の出力信号及び電源回路11のトリガ信号をメモリに記憶させる。
【0046】
ここで、本実施形態の解析部15では、最初に、印加コイル12で生成した磁場によって被検体13に誘導された誘導磁場をセンサ14が検出しないように移動台車20によって被検体13を待避させた状態とし、この状態でセンサ14の出力信号をバックグラウンド信号として記録し(ステップS2)、次いで、解析部15では、移動台車20によって被検体13をセンサ14に近接させて配置して、被検体13に誘導された誘導磁場をセンサ14で検出して計測信号として記録している(ステップS3)。バックグラウンド信号と計測信号の記録は、どちらを先に行ってもよい。なお、誘導磁場は非常に小さいため、センサ14と被検体13との間隔寸法は1mm程度としている。
【0047】
バックグラウンド信号及び計測信号の計測時、解析部15には電源回路11のトリガ信号が入力されており、この電源回路11のトリガ信号を時間計測の基準信号として、解析部15に入力されたバックグラウンド信号及び計測信号の経時的な振幅データを解析部15のメモリに記録している。
【0048】
したがって、解析部15のメモリに記録されたバックグラウンド信号及び計測信号はそれぞれ時間関数の波形となっており、バックグラウンド信号をR(t)、計測信号をS(t)で表すこととする。また、バックグラウンド信号R(t)及び計測信号S(t)のそれぞれの基準時間をT及びT'で表すこととする。この基準時間T,T'は、電源回路11から出力されたパルス状の電流によって印加コイルにパルス状の磁場が発生した時刻を示すものであり、トリガ信号から特定されるものである。
【0049】
ここで、本実施形態では、電源回路から出力されたパルス状の電流の波形は図3に示すガウス関数波形とした。この場合、印加コイルでは幅3μsで、ピーク強度4μTのパルス状の磁場が生成され、このパルス状の磁場を30回印加して、バックグラウンド信号R(t)及び計測信号S(t)の計測では、それぞれの基準時間T,T'に基づいて調整しながら計測結果を積算して、積算結果を最終的なバックグラウンド信号R(t)及び計測信号S(t)とした。
【0050】
次いで、解析部15は、基準時間T,T'の情報を用いて、バックグラウンド信号R(t)と計測信号S(t)の基準時間のずれの調整を行い、時間調整を行ったバックグラウンド信号をR'(t)、及び時間調整を行った計測信号をS'(t)とする(ステップS4)。
【0051】
次いで、解析部15は、計測信号S'(t)からバックグラウンド信号R'(t)を取り除いた第3の信号である誘導成分信号W(t)を生成する(ステップS5)。すなわち、W(t)=S'(t)-R'(t)である。
【0052】
次いで、解析部15は、誘導成分信号W(t)を高速フーリエ変換(FFT)して、時間関数である誘導成分信号W(t)を周波数関数として、周波数関数で表される振幅をAw(f)とする(ステップS6)。すなわち、Aw(f)=|FFT[W(t)]|である。
【0053】
次いで、解析部15は、バックグラウンド信号R'(t)を高速フーリエ変換して、時間関数であるバックグラウンド信号R'(t)を周波数関数として、周波数関数で表される振幅をAr(f)とする(ステップS7)。すなわち、Ar(f)=|FFT[R'(t)]|である。
【0054】
次いで、解析部15は、振幅Aw(f)を振幅Ar(f)で除して規格化した振幅A(f)=Aw(f)/Ar(f)を求める(ステップS8)。このように誘導成分信号W(t)の周波数関数で表される振幅Aw(f)を、バックグラウンド信号R(t)の周波数関数で表される振幅Ar(f)で規格化することにより、印加コイル12で印加した磁場における各周波数成分の振幅のばらつきを補正でき、振幅のばらつきに起因したゆがみの発生を防止できる。
【0055】
一方で、解析部15は、計測信号S'(t)を高速フーリエ変換して、時間関数である計測信号S'(t)を周波数関数として、位相情報を表す偏角Ps(f)を算出する(ステップS9)。すなわち、Ps(f)=Arg(FFT[S'(t)])である。
【0056】
さらに、解析部15は、バックグラウンド信号R'(t)を高速フーリエ変換して、時間関数であるバックグラウンド信号R'(t)を周波数関数として、位相情報を表す偏角Pr(f)を算出する(ステップS10)。すなわち、Pr(f)=Arg(FFT[R'(t)])である。
【0057】
次いで、解析部15は、偏角Ps(f)と偏角Pr(f)との差である位相差P(f)を算出する(ステップS11)。すなわち、P(f)=Ps(f)-Pr(f)である。
【0058】
このようにして、被検体13の応答特性を特定する振幅情報であるA(f)、及び位相情報であるP(f)を求めた後、解析部15は、この振幅情報A(f)及び位相情報P(f)を所定の計測位置での情報としてメモリに記憶する(ステップS12)。
【0059】
その後、解析部15は、あらかじめ設定された全計測位置での振幅情報A(f)及び位相情報P(f)の算出終了の判定を行い(ステップS13)、全ての計測位置での計測が終了していない場合には、解析部15は、移動台車20を移動させてセンサ14が被検体13に対して所定位置となるようにし(ステップS14)、所定の計測位置での計測信号S(t)の計測を行い、振幅情報A(f)及び位相情報P(f)を求めている。なお、本実施形態ではバックグラウンド信号R(t)には変化が生じないので、バックグラウンド信号R(t)の再計測を行わず、計測信号S(t)のみを計測している。
【0060】
本実施形態では、被検体13における計測位置の調整を移動台車20の移動によって行っているが、移動台車20の移動出はなく、たとえば2軸移動ステージを介して被検体13を移動台車20に装着し、2軸移動ステージによって被検体13を移動させてもよいし、複数の検出部をアレイ状に配置してセンサを構成し、各検出部でそれぞれバックグラウンド信号R(t)及び計測信号S(t)を計測することにより、被検体13を移動させることなくバックグラウンド信号R(t)及び計測信号S(t)を計測してもよい。また、被検体13を移動させるのではなく、印加コイル12及びセンサ14を移動させてもよい。
【0061】
ステップS13において、解析部15があらかじめ設定された全計測位置での振幅情報A(f)及び位相情報P(f)の算出を終了したと判定した場合には、解析部15は、図4に示すように、表示装置19に被検体13の所定の断面部分における〔数6〕の式で表される応答関数Dに基づくグラフを表示する(ステップS15)。この解析部15による表示装置19へのグラフの表示による可視化が内部構造特定手段である。
【0062】
ここで、図4は、図5に示す形状の被検体における断面構造を示すグラフである。この被検体はアルミニウム板であって、長辺を100mm、短辺を50mmとし、厚さを3mmとした平板とし、裏面側に短辺と平行で長辺の中央を横断する深さ1mmの矩形溝を設けており、この矩形溝を横断する直線(図5(a)のX-X)に沿って計測を行った結果が図4である。図5(b)は、図5(a)のX-X断面図である。
【0063】
図4における点線部分は、図5(b)に示される被検体の実際の断面構造を現しており、再現した断面構造とよく一致していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る非破壊検査装置の概略模式図である。
【図2】本発明に係る非破壊検査装置の解析部における解析手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の非破壊検査装置で電源回路から出力した電流の波形の一例である。
【図4】本実施形態の非破壊検査装置で得られた被検体の断面構造を示すグラフである。
【図5】(a)図4のグラフ作成に用いた被検体の平面図、(b)(a)のX-X断面図である。
【符号の説明】
【0065】
11 電源回路
12 印加コイル
13 被検体
14 センサ
15 解析部
16 オフセット調節回路
17 信号増幅回路
18 アナログ・デジタル変換回路
19 表示装置
20 移動台車
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4