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明細書 :二次元磁気特性測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4910149号 (P4910149)
公開番号 特開2008-224269 (P2008-224269A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
発明の名称または考案の名称 二次元磁気特性測定装置
国際特許分類 G01R  33/12        (2006.01)
FI G01R 33/12 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2007-059616 (P2007-059616)
出願日 平成19年3月9日(2007.3.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第30回日本応用磁気学会学術講演会 社団法人 日本応用磁気学会 2006年9月11日~14日
審査請求日 平成22年2月5日(2010.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】高橋 則雄
【氏名】中野 正典
【氏名】宮城 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100088993、【弁理士】、【氏名又は名称】板野 嘉男
【識別番号】100107917、【弁理士】、【氏名又は名称】笠原 英俊
審査官 【審査官】中村 和正
参考文献・文献 特開2005-069933(JP,A)
実開昭61-060180(JP,U)
中野 正典,西本 英彦,藤原 耕二,高橋 則雄,二次元磁気特性測定装置の改良,電気学会研究会資料,日本,電気学会,1998年11月17日,MAG-98-169,PP.81-91
調査した分野 G01R 33/12
特許請求の範囲 【請求項1】
コイルを巻いて四角形をした内側励磁コイルの周囲に内側励磁コイルの巻き方向と直交する方向にコイルを巻いて同じく四角形をした外側励磁コイルを配置し、内側励磁コイル中に試料を収容するとともに、内側及び外側励磁コイルに電流を流して試料中を各々の電流値で合成された方向に通行する磁束を発生させる二次元磁気特性測定装置において、内側及び外側励磁コイルを、二等辺三角形をした巻枠に対して底辺と平行に巻いて底辺同士を合せて四角形に形成したことを特徴とする二次元磁気特性測定装置。
【請求項2】
内側及び外側励磁コイルそれぞれの巻枠の底辺同士が接合、分離可能に構成される請求項1の二次元磁気特性測定装置。
【請求項3】
内側及び外側励磁コイルそれぞれの巻枠が底辺同士を合わせると正方形に形成される請求項1又は2の二次元磁気特性測定装置。
【請求項4】
試料の相対向する二辺にそれぞれ補助ヨークを接続するとともに、補助ヨークをそれぞれの辺の外側で内外に隣接する内側及び外側励磁コイルを貫通させて延出させ、補助ヨークの延出した部分から上下ヨークを渡し掛けた請求項1~3いずれかの二次元磁気特性測定装置。
【請求項5】
外側巻枠のそれぞれの頂点に内部と外部を連通する開口を形成し、一方の開口から吸気して外側巻枠の内部に冷却用の空気を流通させる請求項1~4いずれかの二次元磁気特性測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板が有する磁気異方性及び回転鉄損等を測定するための二次元磁気特性測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
けい素鋼板等の電磁鋼板において、圧延方向と異なる方向に磁束が通った場合の磁気特性を検討するためには、異方性を考慮した、所謂、二次元磁気特性測定が必要になる。この要請に応えて種々の二次元磁気特性測定装置が実用化されており、例えば、特許文献1に示されるものがある。しかしながら、この先行例のものは、試料に設定される測定区域が空気中に開放されているため、その高い磁気抵抗によって十分な磁束密度を上げられず、機能面において物足らない。
【0003】
そこで、本発明者等は、試料を完全に励磁コイルの中に閉じ込めるとともに、特殊なコイル及びヨークを用いてほぼ完全な閉磁路を構成できる非常に有用な測定装置を発表している(非特許文献1)。しかしながら、この装置では、励磁方向に直角な方向の閉磁路を形成するための補助ヨークを使用している関係で、磁力線が直進せずに左右の補助ヨークに向かって広がる(試料中の測定区域を通る磁力線を上方から見ると、入口側、出口側ともに外方に向かって湾曲しており、この湾曲の程度が大きい)という問題があった。このため、測定区域における磁束密度の均一性に欠け、測定精度が十分ではなかった。

【特許文献1】特開2005-69933号公報
【非特許文献1】岡山大学:二次元磁気特性測定装置の改良 社団法人電気学会 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような課題を解決したものであり、内側及び外側励磁コイルを試料の互いに異なる直交方向に巻くことで試料における磁束密度の分布をより均一化できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、コイルを巻いて四角形をした内側励磁コイルの周囲に内側励磁コイルの巻き方向と直交する方向にコイルを巻いて同じく四角形をした外側励磁コイルを配置し、内側励磁コイル中に試料を収容するとともに、内側及び外側励磁コイルに電流を流して試料中を各々の電流値で合成された方向に通行する磁束を発生させる二次元磁気特性測定装置において、内側及び外側励磁コイルを、二等辺三角形をした巻枠に対して底辺と平行に巻いて底辺同士を合せて四角形に形成したことを特徴とする二次元磁気特性測定装置を提供したものである。
【0006】
また、本発明は、以上の測定装置において、請求項2に記載した、内側及び外側励磁コイルそれぞれの巻枠の底辺同士が接合、分離可能に構成される手段、請求項3に記載した、内側及び外側励磁コイルそれぞれの巻枠が底辺同士を合わせると正方形に形成される手段、請求項4に記載した、試料の相対向する二辺にそれぞれ補助ヨークを接続するとともに、補助ヨークをそれぞれの辺の外側で内外に隣接する内側及び外側励磁コイルを貫通させて延出させ、補助ヨークの延出した部分から上下ヨークを渡し掛けた手段、請求項5に記載した、外側巻枠のそれぞれ頂点に内部と外部を連通する開口を形成し、一方の開口から吸気して外側巻枠の内部に冷却用の空気を流通させる手段を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の手段によると、内側及び外側励磁コイルをそれぞれの巻枠の底辺と平行に、つまり、直交させて巻いたことから、その中心の高磁束密度領域である測定区域を通過する磁束の左右への拡がりが少なくなり(湾曲の程度が小さい)、磁束密度の分布がより均一化する。その理由としては、磁路長は端側に行くほど短くなるが、それに対応して巻数も減少し、結局、コイル内の巻数に対する磁路長が等しくなるからと推察される。また、内側及び外側励磁子コイルの巻枠の底辺同士を合せて四角形にしたものであるから、試料の内側励磁コイルの中への挿入が容易になる。さらに、請求項2の手段によると、試料の内側励磁コイル内への出し入れが簡単になるし、請求項3の手段によると、内側及び外側励磁コイルともに試料に対して効率的な形状にできる。この他、請求項4の手段によると、ヨークを効率的に設けることができるし、請求項5の手段によると、励磁コイルの形状を小さくできるし、長時間の使用に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る測定装置の斜視図、図2はこれを分解した状態の斜視図であるが、この測定装置は、内側巻枠1に巻かれた内側励磁コイル2と、外側巻枠3に巻かれた外側励磁コイル4とを有している。これにおいて、内側巻枠1は、平面視二等辺三角形をした一方側巻枠1aと同じく二等辺三角形をした他方側巻枠1bの底辺同士を合わせた四角形に形成されている。この場合、内側励磁コイル2は、一方側励磁コイル1aと、他方側励磁コイル1bとに分けて巻かれているが、各々は一方側巻枠1aと他方側巻枠1bの底辺それぞれに平行に巻かれている。この内側励磁コイル2は、平角ポリエステル絶縁電線を内側巻枠1の外周に一層当たり複数ターン巻いて複層構造としたものである。
【0009】
外側巻枠3と外側励磁コイル4との関係も同様であり、前者は、一方側巻枠3aと他方側巻枠3bとで構成され、後者も、一方側励磁コイル4aと他方側励磁コイル4bとで構成されている。ただし、外側励磁コイル4は、中に内側励磁コイル2を収容できるようになっており、このとき、内側巻枠1と外側巻枠3の底辺は90°交差して直交する向きに配置されている。因みに、本例の場合、外側励磁コイル4を巻く外側巻枠3のそれぞれ一方側巻枠3aと他方側巻枠3bの斜辺が200mm程度の平面視正方形、厚みが40mm程度のものであり、内側巻枠1及び内側励磁コイル2はこれに合わせた大きさと形状(正方形)になっている。
【0010】
内側巻枠1と外側巻枠3は、それぞれ平面視二等辺三角形に形成されていることは上述したが、各々は内部が空洞でその底辺部分で分離できるようになっている。内側励磁コイル2の中には後述する試料5を収容しなければならず、外側励磁コイル4の中には内側励磁コイル2を収容しなければならないからである。このため、外側巻枠3の一方側巻枠3aと他方側巻枠3bの底辺の端を延ばしてここに非磁性体のボルト6を通し、このボルト6を締めると結合し、外すと分離できるようにしている。なお、内側励磁コイル2については、外側励磁コイル4の中にきっちり収まるような関係にしておくことで、殊更、結合構造は必要ではないが、必要な場合は外側巻枠3と同じ構造にすればよい。
【0011】
内側及び外側励磁コイル2、4で作られた磁束は、磁気抵抗が非常に小さい閉磁路を形成するヨークを通って戻って来るようにしてある。本発明では、内側励磁コイル2、外側励磁コイル4ともに、端辺は45°方向に方向転換させられて辺と直角(平行)になってコイルの端部は間隔が広がっており、この間にスリットを確保している。なお、内側励磁コイル2の端辺のスリットの位置と数は外側励磁コイル4のそれと一致させてあり、これらスリットに外側から補助ヨーク7a、7b、8a、8bを差し込んで第二補助ヨーク13aを介して試料5と接触させている。
【0012】
さらに、補助ヨーク7a、7b、8a、8bの延出部分に連結させてそれぞれ上下ヨーク11a、11b、12a、12bを内側及び外側励磁コイル2、4の辺に平行(直角)に架設している。したがって、上下ヨーク11a、11b、12a、12bは、内側及び外側励磁コイル2、4と共通に連結され、しかも、内側及び外側励磁コイル2、4に対して45°の方向に延びていることになり、この点で、内側及び外側励磁コイル2、4同士で連結されて各々コイルと平行に渡されている従来のものと異なっている。
【0013】
なお、これら第二補助ヨーク13a、補助ヨーク7、8及び上下ヨーク11、12は、磁束が飽和しないように十分に広い断面積を有していることはいうまでもない。図3は試料5、第二補助ヨーク13a、補助ヨーク7、8及び上下ヨーク11、12の接触状態を示す要部断面側面図であるが、試料5と第二補助ヨーク13a、補助ヨーク7、8、上下ヨーク11、12のいずれかの接触部分はわずかに離すことがある。これらには製作誤差や配置(組立)誤差が避けられず、このようなものを全面接触させると、偏接触して接触部分にのみ磁束集中が起こるから、このようにわずかにギャップを設けることで磁気抵抗を均等化させたのである。図4は図3のAーA相当断面図であるが、薄い鋼板を重ねて構成される第二補助ヨーク13aは縦に斜めに積層させている。そして、その傾斜のリードを補助ヨーク7、8のピッチPと一致させて補助ヨーク7、8が第二補助ヨーク13aのすべての鋼板と接触するようにして磁束の伝播効果を高めている。
【0014】
図5は試料5の平面図であるが、内側励磁コイル2の中には被測定対象である電磁鋼板の試料5が収容される。なお、本例では、外側励磁コイル4の巻き方向と直角な方向をy軸、内側励磁コイル2の巻き方向と直角な方向をx軸とし、試料5の圧延方向をy軸と一致させている。本例の試料5は、無方向性電磁鋼板を使用しており、二枚のガラスエポキシの試料支持板13に挟まれた状態でセットされる。この場合、試料5の厚みは1mm以下と薄いため、補助ヨーク7、8と十分な接触量を得るのが難しい。このため、図3に示すように、上下の試料支持板13の端の部分において、試料5と接触して十分な厚みを有する二枚の第二補助ヨーク13aを埋め込み、これと補助ヨーク7、8を接触させるようにしている。なお、磁気抵抗を均一化させるための接触部のギャップは、この第二補助ヨーク13aと試料5との間であってもよい。要は、磁路の一カ所に設ければよい。
【0015】
図6は試料5と試料支持板13の要部断面側面図であるが、試料5の中央には測定区域14が設定され、ここに磁束密度(B)を測定するBコイル15と、磁界の強さ(H)を測定するHコイル16が設置される。なお、これらBコイル15、Hコイル16ともに、y軸(x軸)に平行、直角にセットされる。本例のBコイル15は、測定区域14における試料5の表面と裏面に二個のプローブを40mm間隔で直交させたものに依っている。これ対して、Hコイル16は、JISで定められた2Hコイル法に依ったものであるが、上側の試料支持板13の測定区域14に相当する個所に窓を形成し、この中に電線を内側に所定ターン単層巻きしたものをHy 検出用とし、外側にこれと直交して同じ電線を所定ターン単層巻きしたものをHx 検出用として二枚重ねで設置している。
【0016】
以上により、内側及び外側励磁コイル2、4に電流を流すと、磁束が発生して試料5中を通過する。そこで、Bコイル15とHコイル16の電圧を測定すれば、磁気特性が調べられる。図7は磁束密度の振幅Bm と鉄損Wの関係を示す特性であるが、これを見ると、いずれの励磁角度(磁力線の方向のことで、内側励磁コイル2と外側励磁コイル4への電流の大きさを変えて調整する。仮に、内側励磁コイル2へ電流を流さないとすると、励磁角度は0°、内側励磁コイル2と外側励磁コイル4に等分に電流を流すとすると、励磁角度は45°ということになる)においても、振幅Bm が大きくなるに連れて鉄損Wはほぼ磁束密度の1.6乗から2乗で増大しているが、この増大曲線が励磁角度別に分離しており、かつ整然としていて乱れがない。このことは、磁束密度が均一化していることの表れであり、均一でない磁束密度下での測定では、各励磁角度における増大曲線の勾配は整然とはしておらず、しかも上下に入り乱れている。
【0017】
さらに、ホール素子を用いて測定区域14(40mm×40mm)内の磁界分布を直接調べる方法を行ってみた。図8は内側及び外側励磁コイル2、4の中心の周りの四点の平均値を基準として各測定点の誤差を表わしたもの、つまり、磁界の分布状態を示す特性であるが、これを見ても、測定区域14内では、内側及び外側励磁コイル2、4ともに磁界分布の誤差はほぼ3%以内に収まっていることがわかる。
【0018】
図9は内側及び外側励磁コイル2、4による磁界の方向の分布の状態を示す特性であるが、磁界の方向の算出は、どちらか一方の励磁コイル2、4に電流を流したときにその励磁コイル2、4の励磁する向きとホール素子の検出方向が等しいと仮定し、励磁コイル2、4と同一方向成分と直交成分の値から角度を算出したものである。この結果、励磁方向と磁界の向きの作る角度も3°以内となっており、向きにおいても高い均一度が得られていることがわかる。
【0019】
ところで、内側及び外側励磁コイル2、4に電流を流して磁束を発生させて測定を続けていると、内側及び外側励磁コイル2、4が熱を帯びてくる。特に、本発明では、内側励磁コイル2は外側励磁コイル4の中に密封される形態となることから、内側励磁コイル2でこれが顕著になり、電流を流すのが難しくなる位である。そこで、外側巻枠3の一方側及び他方側巻枠3a、3bのそれぞれ頂点に外部と内部が通ずる開口(図示省略)を形成し、一方の開口からブロワー等で吸気するようにしている。こうすれば、他方の開口から外気が吸引されて外側巻枠3の中を流通するから、内側励磁コイル2は稼働が可能な程度に冷却される。なお、これによると、外側励磁コイル4も内側からも冷却されることになって好ましいものになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る測定装置の斜視図である。
【図2】同じく分解した状態の斜視図である。
【図3】試料、補助ヨーク及びヨークの関係を示す要部断面側面図である。
【図4】図3のAーA相当断面図である。
【図5】本発明の測定装置で使用した試料の平面図である。
【図6】試料と試料支持板の断面図である。
【図7】本発明の測定装置で測定した磁束密度の振幅Bm と鉄損Wの関係を示す特性である。
【図8】本発明の測定装置による内側及び外側励磁コイルによる磁界分布の状態を示す特性である。
【図9】本発明の測定装置による内側及び外側励磁コイルによる磁界の方向の分布の状態を示す特性である。
【符号の説明】
【0021】
1 内側巻枠
1a 〃 の一方側巻枠
1b 〃 の他方側巻枠
2 内側励磁コイル
2a 〃 の一方側励磁コイル
2b 〃 の他方側励磁コイル
3 外側巻枠
3a 〃 の一方側巻枠
3b 〃 の他方側巻枠
4 外側励磁コイル
4a 〃 の一方側励磁コイル
4b 〃 の他方側励磁コイル
5 試料
6 ボルト
7a 補助ヨーク
7b 補助ヨーク
8a 補助ヨーク
8b 補助ヨーク
11a上ヨーク
11b上ヨーク
12a下ヨーク
12b下ヨーク
13 試料支持板
13a第二補助ヨーク
14 測定区域
15 Bコイル
16 Hコイル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8