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明細書 :水循環式環境調節システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4892733号 (P4892733)
公開番号 特開2008-256227 (P2008-256227A)
登録日 平成24年1月6日(2012.1.6)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成20年10月23日(2008.10.23)
発明の名称または考案の名称 水循環式環境調節システム
国際特許分類 F24F   5/00        (2006.01)
F25D   9/00        (2006.01)
F24J   3/08        (2006.01)
F24J   3/06        (2006.01)
F24J   2/00        (2006.01)
F24J   2/42        (2006.01)
F25B  27/00        (2006.01)
F25B  30/06        (2006.01)
FI F24F 5/00 101A
F24F 5/00 101Z
F25D 9/00 B
F24J 3/08
F24J 3/06
F24J 2/00 A
F24J 2/42 F
F25B 27/00 P
F25B 30/06 T
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2007-095942 (P2007-095942)
出願日 平成19年3月31日(2007.3.31)
審査請求日 平成22年1月12日(2010.1.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】米谷 俊彦
【氏名】田中丸 重美
【氏名】宮下 晃一
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】西山 真二
参考文献・文献 特開昭59-032728(JP,A)
特開2005-337590(JP,A)
特開平07-174367(JP,A)
特開2003-004336(JP,A)
特公平1-13021(JP,B2)
登録実用新案第358574(JP,Z1)
特開2005-201463(JP,A)
特開2005-221101(JP,A)
特開昭60-185032(JP,A)
特開2008-20160(JP,A)
調査した分野 F24F 5/00
F24J 3/06 - 3/08
F25B 27/00
F25B 30/06
F25D 9/00
E04B 1/74
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の高度に基端を設け、この第1の高度よりも低い第2の高度に折返部を設けて折り返し、前記基端に隣接させて先端を設けた導水管と、
この導水管の前記先端から前記基端に水を送給する給水器と
を備え、
前記導水管は、前記基端を前記先端よりも高い位置に配置して、前記給水器で前記基端に水を送給することにより、前記導水管に沿って水を循環させ、
所定の位置に、気温よりも低い温度の低温領域に配設して水を冷却する蓄冷部を設けるとともに、この蓄冷部の下流側に構造物の内部空間に配設してこの内部空間を冷却する冷却部を設けた水循環式環境調節システム。
【請求項2】
前記蓄冷部または前記蓄冷部よりも下流側の前記導水管には、一方の端部を吸気口とし、他方の端部を排気口として空気を送通させる通気管を挿通もしくは並設させるとともに、前記排気口を前記構造物の内部空間内に設けたことを特徴とする請求項1に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項3】
前記吸気口部分には、空気を集める集風手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項4】
前記冷却部は前記折返部に設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項5】
前記低温領域は地中であって、前記導水管を傾斜面に沿って設けたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項6】
前記低温領域は、気温よりも低い温度の池、川、湖、沼、海、氷室、蓄雪室、貯水槽のいずれか一つとしたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項7】
第1の高度に基端を設け、この第1の高度よりも低い第2の高度に折返部を設けて折り返し、前記基端に隣接させて先端を設けた導水管と、
この導水管の前記先端から前記基端に水を送給する給水器と
を備え、
前記導水管は、前記基端を前記先端よりも高い位置に配置して、前記給水器で前記基端に水を送給することにより、前記導水管に沿って水を循環させ、
所定の位置に、気温よりも高い温度の高温領域に配設して水を加温する蓄熱部を設けるとともに、この蓄熱部の下流側に構造物の内部空間に配設してこの内部空間を加温する加温部を設けた水循環式環境調節システム。
【請求項8】
前記高温領域は地中であって、前記導水管を傾斜面に沿って設けたことを特徴とする請求項7に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項9】
前記高温領域は、気温よりも高い温度の池、川、湖、沼、海、温泉、高温廃熱体、高温廃熱室、貯水槽のいずれか一つとしたことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項10】
前記給水器は、太陽熱で生成した水蒸気で駆動することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項11】
前記給水器は、風を受けて回転する風車の回転力で駆動することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システム。
【請求項12】
前記給水器は、太陽電池パネルを用いた太陽光発電システム、または風力発電システムで生成した電力で駆動することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水を熱媒体として循環させて所定の構造物の内部空間を冷却または加温する水循環式環境調節システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の環境調節システムは通常、ポンプにより水等の冷媒を凝縮器と蒸発器との間で循環させ、冷房の際は、蒸発器での液状冷媒の蒸発により空気中の熱を奪って冷気を作り、その冷気を送風機で室内に送り、蒸発した冷媒(冷媒蒸気)は凝縮器で外気に熱を放出して液化冷媒に戻るというサイクルを行っている。逆に暖房の際には、凝縮器での冷媒蒸気の液化により熱を空気中に放出して暖気を作り、その暖気を送風機で室内に送り、液化した冷媒は蒸発器で外気により暖められて冷媒蒸気に戻るというサイクルを行っている。
【0003】
このような環境調節システムは、冷媒の循環のためにモータ等でポンプを作動させる必要があるとともに、冷気や暖気を送風機で室内に送る必要があるため、電力等の作動エネルギーの供給が不可欠であった。
【0004】
一方、近年、自然エネルギーとしての地熱を利用した環境調節システムが提案されている(特許文献1参照)。この環境調節システムは、地中に熱交換パイプを鉛直に埋設し、この熱交換パイプの上端開口部を建物の床板の蓄熱室内に設け、この蓄熱室から建物の天井裏まで立設した通気パイプを天井下で開口させるとともに、その通気パイプ内に電動ファンを設けたものである。そして、夏期の冷房の際は、電動ファンで蓄熱室から冷気を吸い上げて天井下から室内に送るとともに、その吸い上げによる減圧で、地中で冷やされた熱交換パイプ内の冷気を吸い上げて蓄熱室に補充している。冬期の暖房の際は、電動ファンで蓄熱室に天井下から吸い込んだ室内の空気を送り、その増圧で蓄熱室内の空気を、地中で暖められた熱交換パイプ内に通して暖めてから室内に送っている。
【0005】
あるいは、自然エネルギーとしての地熱と太陽熱とを利用した環境調節システムも提案されている(特許文献2参照)。この環境調節システムは、地中に熱交換パイプを水平に埋設し、この熱交換パイプの一端を外気に開放するとともに、切換弁を介して他端を建物内への通気パイプに接続し、さらに建物外に太陽光によって暖められるソーラーウォールを設けて、前記切換弁を介してソーラーウォールを建物内への通気パイプに接続し、この通気パイプ内に電動ファンを設けたものである。そして、夏期の冷房の際は、地中で冷やされた熱交換パイプを切換弁で通気パイプに接続し、電動ファンで熱交換パイプ内の冷気を室内に送っている。冬期の暖房の際は、ソーラーウォールを切換弁で通気パイプに接続して電動ファンでソーラーウォール内の暖気を室内に送っている。
【0006】
これらの環境調節システムは、冷媒の循環のためにモータ等でポンプを作動させる必要はないものの、冷気や暖気を電動ファンで室内に送る必要があるため、電力の供給は不可欠であり、それゆえ近年の省エネルギーの要請に沿うものではなかった。
【0007】
一方、自然エネルギーとしての地熱と太陽熱とを利用した他の環境調節システムも提案されている(特許文献3参照)。この環境調節システムは、地中に熱交換パイプを埋設し、この熱交換パイプの一端を外気に開放するとともに他端を建物内へ導き、また建物の屋根上に太陽光によって暖められるダクトを傾斜させて設け、このダクトの一端を外気に開放するとともに他端を建物内へ導いたものであり。そして、夏期の冷房の際には、屋根上のダクト内で暖められた空気を外気に放出することで建物内の空気をそのダクト内に吸出し、これによる減圧で、地中で冷やされた熱交換パイプ内の冷気を吸い出して建物内に送っている。
【0008】
この環境調節システムでは、地中で冷やされた熱交換パイプ内の冷気を、ダクトで建物内を減圧することで吸い出して建物内に供給するものであるため、建物の出入り口の開閉等による建物内の圧力変化の影響を受けやすく、建物内の冷房を充分に行えなかった。
【0009】
このような中で、本発明者らは、傾斜地にその斜面に沿って埋設されて地温により冷却される地中流路と、地中流路の上端部に接続された外気取り入れ口と、構造物の内部空間に設けられて地中流路の下端部に接続された空気吐出口を備え、地中流路内の空気をその地中流路で冷却するととともに、その地中流路内を下降流動させて空気吐出口から構造物の内部空間に吐出させ、その地中流路内の空気の下降流動に伴って外気取り入れ口から外気がその地中流路内に取り入れられるようにした環境調節システムを発明した。
【0010】
この環境調節システムでは、ポンプやモータなどの駆動装置が一切不要であり、電力の供給が困難な山間地等で効果的に利用可能となっているものである。

【特許文献1】特開2005-201463号公報
【特許文献2】特開2005-221101号公報
【特許文献3】特開昭60-185032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らの発明の環境調節システムは、ポンプやモータなどの駆動装置の換わりに、傾斜地における勾配を利用して空気を効果的に流動させているため、環境調節システムの稼働効率が傾斜地の勾配の影響を受けやすいという問題を有していた。
【0012】
本発明者らは、このような傾斜地の勾配の大きさによる影響を受けにくい環境調節システムを提供すべく研究開発を行い、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の水循環式環境調節システムでは、第1の高度に基端を設け、この第1の高度よりも低い第2の高度に折返部を設けて折り返し、基端に隣接させて先端を設けた導水管と、この導水管の先端から基端に水を送給する給水器とを備え、導水管は、基端を先端よりも高い位置に配置して、給水器で基端に水を送給することにより、導水管に沿って水を循環させ、所定の位置に、気温よりも低い温度の低温領域に配設して水を冷却する蓄冷部を設けるとともに、この蓄冷部の下流側に構造物の内部空間に配設してこの内部空間を冷却する冷却部を設けた。
【0014】
請求項2記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1に記載の水循環式環境調節システムにおいて、蓄冷部または蓄冷部よりも下流側の導水管には、一方の端部を吸気口とし、他方の端部を排気口として空気を送通させる通気管を挿通もしくは並設させるとともに、排気口を構造物の内部空間内に設けた。
【0015】
請求項3記載の水循環式環境調節システムでは、請求項2に記載の水循環式環境調節システムにおいて、吸気口部分に空気を集める集風手段を設けた。
【0016】
請求項4記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1~3のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システムにおいて、冷却部を折返部に設けた。
【0017】
請求項5記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1~4のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システムにおいて、低温領域を地中とし、導水管を傾斜面に沿って設けた。
【0018】
請求項6記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1~5のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システムにおいて、低温領域を、気温よりも低い温度の池、川、湖、沼、海、氷室、蓄雪室、貯水槽のいずれか一つとした。
【0019】
請求項7記載の水循環式環境調節システムでは、第1の高度に基端を設け、この第1の高度よりも低い第2の高度に折返部を設けて折り返し、基端に隣接させて先端を設けた導水管と、この導水管の先端から基端に水を送給する給水器とを備え、導水管は、基端を先端よりも高い位置に配置して、給水器で基端に水を送給することにより、導水管に沿って水を循環させ、所定の位置に、気温よりも高い温度の高温領域に配設して水を加温する蓄熱部を設けるとともに、この蓄熱部の下流側に構造物の内部空間に配設してこの内部空間を加温する加温部を設けた。
【0020】
請求項8記載の水循環式環境調節システムでは、請求項7に記載の水循環式環境調節システムにおいて、高温領域を地中とし、導水管を傾斜面に沿って設けた。
【0021】
請求項9記載の水循環式環境調節システムでは、請求項7または請求項8に記載の水循環式環境調節システムにおいて、高温領域を、気温よりも高い温度の池、川、湖、沼、海、温泉、高温廃熱体、高温廃熱室、貯水槽のいずれか一つとした。
【0022】
請求項10記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1~9のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システムにおいて、太陽熱で生成した水蒸気で給水器を駆動することした。
【0023】
請求項11記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1~9のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システムにおいて、風を受けて回転する風車の回転力で給水器を駆動することとした。
【0024】
請求項12記載の水循環式環境調節システムでは、請求項1~9のいずれか1項に記載の水循環式環境調節システムにおいて、太陽電池パネルを用いた太陽光発電システム、または風力発電システムで生成した電力で給水器を駆動することとした。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水循環式環境調節システムでは、給水器によって水を循環可能とした導水管で水を循環させる一方で、導水管に設けた蓄冷部または蓄熱部で水を冷却または加温し、この冷却または加温された水で構造物の内部空間を冷却または加温することにより、傾斜地を利用することなく水を循環させることができ、水循環式環境調節システムをどのような場所にでも設置することができる。
【0026】
しかも、一方の端部を吸気口とし、他方の端部を排気口として空気を送通させる通気管を導水管の蓄冷部または蓄熱部に挿通もしくは並設させることにより、通気管内を移動する空気の冷却または加温の効率を向上させることができ、構造物の内部空間内に設けた排気口から冷気または暖気を送給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、第1実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。この水循環式環境調節システムは、水を循環させる循環流路を構成する導水管11と、この導水管11の先端11bから基端11aに水を送給する給水器12とで構成している。
【0028】
特に、導水管11は、基端11aと先端11bを所定の高さに配置し、導水管11が折り返される折返部11cを、基端11aと先端11bを配置した第1の高度よりも低い第2の高度に設け、しかも、基端11aは先端11bよりも高い位置に配置することにより、基端11aと先端11bの差圧を利用して導水管11に沿って水を循環させることができる。先端11bに達した水は、給水器12で基端11aに送給している。導水管11で送流させる水は、水道水などの比較的清浄な水が望ましいが、清浄であれば何でってもよい。
【0029】
導水管11は、地中に埋設している。この地中に埋設された部分は蓄冷部11dであって、地熱との熱交換によって導水管11の内部の水を冷却している。なお、蓄冷部11dの導水管11は熱伝導性の高い金属製パイプを用いることが望ましい。蓄冷部11dは、地中に埋設して構成するだけでなく、池、川、湖、沼、海、氷室、蓄雪室、貯水槽などの気温よりも低い温度となった低温環境を利用することができる。本実施形態では、導水管11は、地下約2m程度の深さに埋設している。導水管11はできるだけ深く埋設する方が望ましい。
【0030】
また、導水管11には、蓄冷部11dの下流側に、蓄冷部11dで冷却された水によって冷却を行う冷却部11eを設けており、この冷却部11eは所定の構造物13の内部空間に配設しており、この内部空間を冷却部11eで冷却している。構造物13は、一般的な家屋、養豚場や養鶏場、あるいは工場や高層ビルなどの建屋であってもよいし、ビニールハウスなどの恒温施設などであってもよい。本実施形態では、ビニールハウスなどの栽培施設を想定している。構造物13の内部空間において、冷却部11eは、冷却効率を高めるように適宜の形状に配設してよい。
【0031】
なお、冷却部11eの導水管11は熱伝導性の高い金属製パイプを用いることが望ましい。また、冷却部11eと蓄冷部11dとの間には、金属よりも熱伝導性の低い例えばプラスチック管などを介設し、さらに周囲を断熱して、冷却部11eと蓄冷部11dの間で導水管11自体を介した熱伝導が生じることにより、熱効率の低下が生じることを抑制することが望ましい。
【0032】
給水器12は、図2に示すように、太陽熱で水蒸気を生成する水蒸気生成部12-1と、この水蒸気生成部12-1で生成した水蒸気で進退駆動されるピストン12-2aを備えたポンプ部12-2とで構成している。
【0033】
水蒸気生成部12-1は、導水管11の先端11bに達した水が送給される貯水タンク12-1aと、この貯水タンク12-1aの上部に設けて貯水タンク12-1a内の水を太陽熱で加熱して水蒸気を生成する蒸発室12-1bを有している。蒸発室12-1bには、ポンプ部12-2に水蒸気を送給する水蒸気送給管12-1cを連通連結している。
【0034】
ポンプ部12-2は、導水管11の先端11bに達した水が送給される第1シリンダ室12-2bと、水蒸気送給管12-1cを介して水蒸気生成部12-1から送給される第2シリンダ室12-2cと、第1シリンダ室12-2bと第2シリンダ室12-2cとの間に摺動自在に設けたピストン12-2aで構成しており、第1シリンダ室12-2bには、ピストン12-2aで押送されることにより第1シリンダ室12-2bから導水管11の基端11aに水を送給する給水管12-2dを設けている。さらに、第2シリンダ室12-2cには、所定のタイミングで第2シリンダ室12-2c内の水蒸気を外部に放出するリリーフ弁12-2eを設けている。
【0035】
給水器12では、水蒸気生成部12-1で生成した水蒸気によって第2シリンダ室12-2c内を加圧し、この第2シリンダ室12-2c内の加圧によってピストン12-2aを第1シリンダ室12-2b側に押送することにより、給水管12-2dを介して第1シリンダ室12-2b内の水を導水管11の基端11aに送給している。
【0036】
そして、所定のタイミングでリリーフ弁12-2eを開弁することにより第2シリンダ室12-2cを減圧してピストン12-2aを後退させ、その後、リリーフ弁12-2eを閉弁している。このリリーフ弁12-2eの開閉制御は、本実施形態では、リリーフ弁12-2eに設けた図示しないタイマー部で行っており、所定時間間隔で所定時間だけ開弁することとしている。タイマー部の動作に要する電力は、太陽光発電システムでまかなうことができる。
【0037】
給水器12は、上記の形態に限らず、例えば、図3に示すように、導水管11の先端11bの上方に吸引部12-3を設け、この吸引部12-3で導水管11の先端11bの水を吸引し、給水管12-4を介して導水管11の基端11aに水を送給してもよい。
【0038】
吸引部12-3は、貯水タンク12-3aと、導水管11の先端11bから貯水タンク12-3aに水を吸引する吸引管12-3bと、貯水タンク12-3a内の水を太陽熱で加熱して生成した水蒸気を排出させるリリーフ弁12-3cと、給水管12-4との連通状態を開閉制御する開閉弁12-3dを備えている。図3中、12-3eは、貯水タンク12-3a内の水を太陽熱で加熱して水蒸気を生成するための太陽光の集積装置である。
【0039】
この吸引部12-3では、リリーフ弁12-3c及び開閉弁12-3dをそれぞれ閉弁状態として貯水タンク12-3a内の水を太陽熱で加熱して水蒸気を生成し、貯水タンク12-3a内を高圧状態とする。
【0040】
次いで、吸引部12-3は、リリーフ弁12-3cを開弁して貯水タンク12-3a内の水蒸気をリリーフ弁12-3cから排出した後にリリーフ弁12-3cを閉弁し、貯水タンク12-3aに水をかけたり、冷風をあてたりして冷却し、貯水タンク12-3a内を減圧状態とする。
【0041】
貯水タンク12-3a内が減圧状態となることにより、吸引管12-3bを介して導水管11の先端11bから貯水タンク12-3aに水が吸引され、その後、開閉弁12-3dを開弁にすることにより、給水管12-4を介して貯水タンク12-3aから導水管11の基端11aに水を送給している。
【0042】
給水器12は、さらには、風車で構成して、風を受けて回転する風車の回転力で適宜のモータを駆動させて導水管11の先端11bから基端11aへ水を送給したり、あるいは風を受けて回転する水車として、この水車を回転させて導水管11の先端11bから基端11aへ水を送給したりしてもよい。
【0043】
または、給水器12は、太陽電池パネルを用いた太陽光発電システム、または風力発電システムで生成した電力で適宜の給水ポンプを駆動させることにより、導水管11の先端11bから基端11aへ水を送給したりしてもよい。
【0044】
上記した給水器12は1つだけでなく複数並列して設けることにより、導水管11の先端11bから基端11aへ水を連続的に供給することができる。
【0045】
このように、本実施形態の環境調節システムでは、導水管11と給水器12とによって水を導水管11に沿って循環可能とし、導水管11には蓄冷部11dと冷却部11eとを設けて、所定の構造物13の内部空間に冷却部11eを設けることにより、内部空間を冷却することができる。
【0046】
特に、この環境調節システムは、導水管11の基端11aと先端11bの差圧を利用して熱媒体である水を循環させるとともに、気温よりも低い地熱を利用して水を冷却することにより、冷却手段を自然エネルギーだけで駆動させることができるので、極めて省エネルギーの環境調節システムとすることができる。
【0047】
しかも、蓄冷部11dでは、導水管11内の水が冷却されることにより水の比重が大きくなり、水自体に沈降作用を生じさせることができるので、導水管11内において比較的大きな流速を得ることができる。
【0048】
さらに、冷却部11eは折返部11cに設けることにより、冷却部11eで造物13の内部空間を冷却する換わりに加熱された水に比重の減少が生じ、水自体に上昇作用を生じさせることができるので、導水管11内において比較的大きな流速を得ることができる。
【0049】
このような環境調節システムにおいて、図1に示すように、蓄冷部11dまたは蓄冷部11dよりも下流側の導水管11に、一方の端部を吸気口14aとし、他方の端部を排気口14bとして空気を送通させる通気管14を挿通もしくは並設させるとともに、排気口14bを構造物13の内部空間内に設けた場合には、蓄冷部11dまたは蓄冷部11dよりも下流側の導水管11で冷却された空気を冷気として排気口14bを構造物13の内部空間内に放出でき、内部空間の冷却効率を向上させることができる。特に、排気口14bは、鉛直上方に向けて開口するよりも、図1に示すように斜め上方に向けて開口し、通気管14をできるだけ折り曲げないで冷気を放出させるようにすることが望ましい。
【0050】
なお、本実施形態では、排気口14bには、通気管14の長手方向に沿って複数設けている。
【0051】
一方、吸気口14a部分には漏斗状に開口させた集風フード14cを設け、この集風フード14cを常に風上側に向けるようにした集風手段を設けることにより、通気管14内の通気量を増大させて、構造物13の内部空間の冷却効率をさらに向上させている。
【0052】
また、このように通気管14を設ける環境調節システムの場合には、傾斜地に設けるとともに、傾斜地の傾斜面に沿って導水管11及び通気管14を設けることにより、通気管14では、導水管11の蓄冷部11dまたは蓄冷部11dよりも下流側の導水管11によって冷却された空気の比重が大きくなることにより、空気自体に下り勾配で傾斜した通気管14に沿った沈下の流れを生じさせることができるので、通気管14内で空気の停留が生じることを防止して、冷気を円滑に送給できる。
【0053】
図1中、16は構造物13の排気口であって、排気口16には加熱板17を装着して排気される気体をさらに加熱し、より強い上昇気流を生じさせることによって廃棄効率を向上させ、排気口14b及び散気管15からの冷気の引き込み効率を向上させることもできる。
【0054】
本実施形態では、冷却部11eの下流側の導水管11を再び地中に埋設しているが、必ずしも埋設する必要はなく、地上に沿って配設して、先端11bを基端1aに隣接させてもよい。ここでは、蓄冷部11dを形成するために掘った溝に冷却部11eの下流側の導水管11も埋設することにより、導水管11を保護している。また、冷却部11eの下流側の導水管11が地上で邪魔となることを防止している。
【0055】
なお、本実施形態の環境調節システムでは、図1に示したように、構造物13の内部空間内に、導水管11の冷却部11eを配置するとともに、通気管14から冷気を送給して内部空間を冷却しているが、図4に示すように、導水管11を構造物13の内部空間内には配置せず、導水管11を挿通もしくは並設させた通気管14から構造物13の内部空間に冷気を送給するだけとしてもよい。
【0056】
なお、図4の実施形態では、排気口14bには、複数の開口15aを設けた散気管15を装着して、通気管14から送給された冷気を効率よく放出可能としている。
【0057】
図5は、第2実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。この水循環式環境調節システムも、水を循環させる循環流路を構成する導水管21と、この導水管21の先端21bから基端21aに水を送給する給水器22とで構成している。
【0058】
特に、導水管21は、基端21aと先端21bを所定の高さに配置し、導水管21が折り返される折返部21cを、基端21aと先端21bを配置した第1の高度よりも低い第2の高度に設け、しかも、基端21aは先端21bよりも高い位置に配置することにより、基端21aと先端21bの差圧を利用して導水管21に沿って水を循環させることができる。先端21bに達した水は、給水器22で基端21aに送給している。
【0059】
導水管21は、地中に埋設している。この地中に埋設された部分は蓄熱部21dであって、地熱との熱交換によって導水管21の内部の水を加温している。なお、蓄冷部21dの導水管21は熱伝導性の高い金属製パイプを用いることが望ましい。蓄熱部21dは、地中に埋設して構成するだけでなく、池、川、湖、沼、海、温泉、高温廃熱体、高温廃熱室、貯水槽などの気温よりも高い温度となった高温環境を利用することができる。本実施形態では、導水管21は、温度が約10℃程度となっている地下約2m以下の深さに埋設している。導水管21はできるだけ深く埋設する方が望ましい。
【0060】
また、導水管21には、蓄熱部21dの下流側に、蓄熱部21dで加温された水によって加温を行う加温部21eを設けており、この加温部21eは所定の構造物23の内部空間に配設しており、この内部空間を加温部21eで加温している。構造物23は、一般的な家屋、養豚場や養鶏場、あるいは工場や高層ビルなどの建屋であってもよいし、ビニールハウスなどの恒温施設、小さな犬小屋などであってもよい。本実施形態でも、ビニールハウスなどの栽培施設を想定している。構造物23の内部空間において、加温部21eは、冷却効率を高めるように適宜の形状に配設してよい。
【0061】
なお、加温部21eの導水管21は熱伝導性の高い金属製パイプを用いることが望ましい。また、加温部21eと蓄熱部21dとの間には、金属よりも熱伝導性の低い例えばプラスチック管などを介設し、加温部21eと蓄熱部21dの間で導水管21自体を介した熱伝導が生じることにより、熱効率の低下が生じることを抑制することが望ましい。
【0062】
給水器22は、本実施形態では、風車で構成して、風を受けて回転する風車の回転力で適宜のモータを駆動させて導水管21の先端21bから基端21aへ水を送給している。給水器22は、前述したように適宜に構成してよい。
【0063】
このように、本実施形態の環境調節システムでは、導水管21と給水器22とによって水を導水管21に沿って循環可能とし、導水管21には蓄熱部21dと加温部21eとを設けて、所定の構造物23の内部空間に加温部21eを設けることにより、内部空間を加温することができる。
【0064】
特に、この環境調節システムは、導水管21の基端21aと先端21bの差圧を利用して熱媒体である水を循環させるとともに、気温よりも低い地熱を利用して水を冷却することにより、冷却手段を自然エネルギーだけで駆動させることができるので、極めて省エネルギーの環境調節システムとすることができる。
【0065】
本実施形態では、環境調節システムを傾斜地に設けたことにより、100m程度の比較的長い導水管21を容易に地下に埋設することができ、蓄熱部21dの長さをできるだけ長くして、熱効率の向上を図るとともに、設置コストが高騰することを抑制できる。
【0066】
他の実施形態として、図6に示すように、導水管21と給水器22は、水を循環させて地熱により高温の水を生成する一方で、この導水管21に一方の端部を吸気口24aとし、他方の端部を排気口24bとして空気を送通させる通気管24を挿通し、この通気管24を通る空気を加温して、導水管21よりも高度の高い位置に設けた構造物23'の内部空間に導水管21で加温された暖気を放出するようにしてもよい。図6中、25は排気口24bに接続した散気管であり、複数の放出口25aを備えている。また、図6中24cは、吸気口24aに設けた漏斗状に開口した集風フードである。
【0067】
通気管24の中途部にはバッファ部24dを設け、加温された空気が高速となって構造物23'の内部空間に吹き込むことを抑制している。
【0068】
また、導水管21には、より深く埋設した深埋設部21fを設けて、水を安定的に加温可能としている。すなわち、地表近くの地中は、温度変化が比較的大きいため、深く埋設することにより、温度変化の影響を受けにくくしているものである。
【0069】
前述したように、本発明の環境調節システムでは、差圧を利用して水を循環させているので、傾斜地だけでなく、平地にも設置可能であり、駐車場、マンホール内部、道路、空き地、隣接する農地や休耕田などの2m以下の低温の地温を利用することにより水を冷却することができる。
【0070】
また、この環境調節システムでは、通気管14によって外気を取り込んで建物を冷却することもできるため、新鮮な森の空気などの自然の空気を室内に取り込むこともできる
【0071】
以下において、図面に基づいて、本発明の具体的な実施形態を簡単に説明する。
【0072】
図7は、犬小屋に水循環式環境調節システムを設けた場合であり、水を循環させる循環流路を構成する導水管31の一部を犬小屋の地下に埋設して、給水器32で導水管31の先端32bから基端32aに水を送給して水の循環を生じさせている。これにより、夏季の場合には犬小屋内を冷却でき、冬季には犬小屋内を加温できる。
【0073】
図7中、34は導水管31に並設した通気管34であって、通気管34の吸気口34aから吸引した空気を導水管31で冷却または加温して、犬小屋内に設けた排気口34bから冷気または暖気を送出可能としている。34cは、吸気口34aに設けた漏斗状に開口した集風フードである。34dは、通気管34中を通過する空気に揮発性の防虫剤を散布する散布器である。
【0074】
図8は、戸建ての家屋に水循環式環境調節システムを設けた場合であり、水を循環させる循環流路を構成する導水管41の一部を家屋の地下に埋設して、給水器42で導水管41の先端42bから基端42aに水を送給して水の循環を生じさせている。これにより、夏季の場合には家屋内を冷却でき、冬季には家屋内を加温できる。
【0075】
図8中、45は水を一時的に貯留するタンクであり、断熱材などを用いて高温状態を維持可能としている。46は流量を調整するバルブである。
【0076】
図9は、図8の戸建ての家屋に設けた水循環式環境調節システムに空気流通機能を付与した実施形態の一例であり、導水管41と給水器42とで水を循環させるとともに、導水管41には、通気管44を適宜配設して、排気口44bから冷気あるいは暖気を放出可能としている。夏季の場合には天井側の排気口44bから冷気を放出し、冬季には床側の排気口44bから暖気を放出可能としている。
【0077】
図9中、46は室内の空気を排出する排気管である。44cは、通気管44の吸気口44aに設けた漏斗状に開口した集風フードである。
【0078】
図10は、マンションに水循環式環境調節システムを設けた場合であり、導水管51と給水器52とで水を循環させるとともに、導水管51には、通気管54を適宜配設して、排気口54bから冷気を放出可能としている。
【0079】
図10中、56は室内の空気を排出する排気管である。54cは、通気管54の吸気口54aに設けた漏斗状に開口した集風フードである。57は水を一時的に貯留するタンクであり、断熱材などを用いて高温状態を維持可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係る水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図2】給水器の説明図である。
【図3】給水器の説明図である。
【図4】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図5】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図6】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図7】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図8】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図9】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【図10】他の実施形態の水循環式環境調節システムの概略模式図である。
【符号の説明】
【0081】
11 導水管
11a 基端
11b 先端
11c 折返部
11d 蓄冷部
11e 冷却部
12 給水器
12-1 水蒸気生成部
12-1a 貯水タンク
12-1b 蒸発室
12-1c 水蒸気送給管
12-2 ポンプ部
12-2a ピストン
12-2b 第1シリンダ室
12-2c 第2シリンダ室
12-2d 給水管
12-2e リリーフ弁
13 構造物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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