TOP > 国内特許検索 > ウジムシ治療用のカバードレッシング > 明細書

明細書 :ウジムシ治療用のカバードレッシング

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4998999号 (P4998999)
公開番号 特開2009-066040 (P2009-066040A)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
公開日 平成21年4月2日(2009.4.2)
発明の名称または考案の名称 ウジムシ治療用のカバードレッシング
国際特許分類 A61F  13/02        (2006.01)
FI A61F 13/02 340
A61F 13/02 310A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2007-235196 (P2007-235196)
出願日 平成19年9月11日(2007.9.11)
審査請求日 平成22年8月3日(2010.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】三井 秀也
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
審査官 【審査官】二ッ谷 裕子
参考文献・文献 欧州特許第01020197(EP,B1)
実開平02-123222(JP,U)
実開昭62-133616(JP,U)
実開平05-084319(JP,U)
特開平08-107909(JP,A)
特表2005-501078(JP,A)
特表2005-518355(JP,A)
調査した分野 A61F 13/00 - 13/02
A61K 9/70
特許請求の範囲 【請求項1】
患部を取り囲んで被覆するためのメッシュ部を有する基材、又は患部を取り囲む貫通孔を有する基材に該貫通孔を覆うメッシュ状シートを固定してメッシュ部を形成した基材と、
該基材の該メッシュ部を除いた部位に形成された粘着剤層とを有し、
該基材の厚さが15~2000μmであり、且つ該メッシュ部の目開きが0.5~1.5mmである、ウジムシ治療用のカバードレッシング。
【請求項2】
患部を取り囲む貫通孔を有する基材に該貫通孔を覆うメッシュ状シートを固定してメッシュ部を形成した基材を有し基材の片面にメッシュ状シートが固定され、基材の反対面に粘着剤層を有する請求項1に記載のカバードレッシング。
【請求項3】
該粘着剤層が剥離層で被覆されている、請求項1又は2に記載のカバードレッシング。
【請求項4】
該基材が不織布である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカバードレッシング。
【請求項5】
該不織布の素材が、ポリエステル、セルロース、ポリオレフィン、ポリアミド、又はこれらの併用物である、請求項4に記載のカバードレッシング。
【請求項6】
該不織布の素材が、ポリエステルである、請求項4又は5に記載のカバードレッシング。
【請求項7】
該メッシュ状シートの素材が、ポリアミド、又はポリエステルである、請求項1~6のいずれか1項に記載のカバードレッシング。
【請求項8】
該粘着剤層がアクリル系粘着剤からなるものである、請求項1~7のいずれか1項に記載のカバードレッシング。
【請求項9】
該貫通孔の面積が1cm以上、1000cm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のカバードレッシング。
【請求項10】
該メッシュ部がウジムシ治療対象の患部を取り囲むように形成され、用時にウジムシが活動する閉鎖空間を形成するものである、請求項1~9のいずれか1項に記載のカバードレッシング。
【請求項11】
メッシュ状シートと該メッシュ状シートに積層された粘着剤層とを有し、
少なくともウジムシ治療対象の患部を取り囲む粘着剤非積層部が形成されており、
該メッシュ状シートの厚さが15~2000μmであり、且つメッシュの目開きが0.5~1.5mmである、
ウジムシ治療用のカバードレッシング。
【請求項12】
該粘着剤層が剥離層で被覆されている、請求項11に記載のカバードレッシング
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ウジムシ治療に用いられるカバードレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中で非常に多くの患者が糖尿病で苦しんでいる。厚生労働省の調査によると、糖尿病が強く疑われる人と糖尿病の可能性を否定できない人とを合わせると、我が国だけで1370万人いると推定されている。糖尿病は非常に危険な病気であるとはいえ、なかなかその症状は自覚されず、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症及び糖尿病性腎症に代表される合併症を発症して初めて自覚される場合が多い。上記合併症の内、糖尿病性神経障害は比較的早期から出現する。神経障害の症状は、手足のしびれや痛み、感覚の鈍磨、下痢や便秘を繰り返す、立ちくらみ、味覚が鈍くなる、発汗異常、尿が勢いよく出ない、勃起障害など、実にさまざまな形で全身に現れる。神経障害を放置するとやがて悪化し、痛みや熱さなどの感覚が失われる。そのため、怪我や火傷に気付かず、それを悪化させて潰瘍や壊疽へと進行させてしまう例が多い。特に足の病変には注意が必要である。
【0003】
糖尿病患者の15%に、軽微なものも含めて足潰瘍が発生する。実際、我が国において、糖尿病患者の入院の16~23%は足の病変によるものである。糖尿病歴20年以上の患者の半数は足神経症を発症し、その殆どの患者が肢切断を余儀なくされている。そして、肢切断した患者の3分の1は、3年以内に反対側の肢の切断を生じる。足の病変の治療は糖尿病患者の生活の質に大きく関係するため、その有効な治療法に対する需要と関心は非常に高い。
【0004】
創傷の治療にウジムシが有効であることは、何世紀も前から認識されていた。事実、例えば、オーストラリアの原住民は、数千年前から創傷を清浄にするためにウジムシを使っていたことが知られている。また、戦争中従軍した医師は、ウジムシが湧いた負傷兵の創傷の回復が著しく早いことに気が付いた。第一次世界大戦中フランスに駐留していたアメリカの外科医であるウィリアム・S・ベア(William S.Baer)は、その戦争中の体験を基に慢性骨髄炎の治療にウジムシを用いた。その治療効果のめざましさから、ウジムシ治療の科学的価値・治療上の価値が認識され、その研究と治療はアメリカとヨーロッパの多くの国で続行された。しかし、第二次世界大戦以降ウジムシ治療は様々な原因から、あまり顧みられなくなっていった(例えば、非特許文献1参照)。
抗生物質抵抗性の感染性潰瘍の出現などが契機となり、1990年代に入ってウジムシ治療は再び脚光を浴びるようになった。それと共に、ウジムシ治療が多くの難治性の傷をデブリードメン(即ち、創傷から壊死組織や異物を取り除くこと)するのに確かにより効果的で、そのために創傷の治癒が促されるということが明らかにされてきた(例えば、非特許文献2~6参照)。それ以降現在までに、ウジムシ治療の有効性、簡便性、及び低い毒性が世界中の多くの創傷治療の専門家によって急速に受け入れられてきた。我が国においても、数年前よりウジムシ治療が実施されるようになり、この治療法に対する期待と関心は非常に高い。ウジムシ治療は、特に糖尿病による創傷回復の障害を持った患者に向いているが、その他に、褥創、やけど、静脈潰瘍、癌性潰瘍など様々な領域に無菌のウジムシが利用されている。
【0005】
実際のウジムシ治療の方法は、非常に簡単である。即ち、生理的食塩水で創傷を洗浄した後、ウジムシを患者の創傷に置くだけである。ウジムシが成長して蛹になると乾燥した環境を好むようになり、患部から逃げようとするため、ウジムシの交換を1週間に2回行う必要がある。交換したウジムシは医療廃棄物として廃棄される。
【0006】
創傷周囲の皮膚を、ウジムシの分泌する消化酵素、感染し壊死した創傷からの排液、ウジムシが知覚の鈍磨していない皮膚の上を這い回るために起こるむずがゆさから保護する必要がある。また、可能な限り長時間、ウジムシが創傷から逃げないようにする必要がある。これらの目的のために、様々なドレッシングが利用されてきた。
【0007】
最も広く利用されている古典的な方法は、次のものである。即ち、創傷周囲の皮膚を粘着性親水コロイドシートで覆うか、創傷の大きさの穴をくりぬいた親水コロイドシートを創傷の上に置く(非特許文献7参照)。さらに、亜鉛華軟膏を露出した皮膚の残りの部分に塗ることにより皮膚を保護出来る。次に若い2~4mm大のウジムシを創傷に置く。ナイロンネット、ダクロンシフォンか他の同様の繊細な穴の多い材質のものをその上に接着するか、上をテープで止めるか、或いはその両方により、最下層のケージ型ドレッシングが完成する。最後に、簡単な薄いガーゼの包帯(2番目のドレッシング)で最下層のドレッシングを覆う。このガーゼの包帯は、治療期間中、滲出物や液化し壊死した組織を吸収する役目を果たす。この2番目のドレッシングは、必要な時に、ウジムシを逃がすことなく容易に取り替えることが出来る。
【0008】
或いは、ウジムシが袋の中に既に閉じ込められたドレッシングもウジムシ治療に利用されている(例えば非特許文献8参照)。そのようなドレッシングの例として、バイオバッグ(Polymedics社、ベルギー)が挙げられる。バイオバッグには、ウジムシがポリビニルアルコール、即ち空気の自由に出入りできる高分子化合物でできた四角い小袋の中にヒートシールされている。ウジムシの分泌物はバイオバッグから自由に流れ出て、創傷に達する。バイオバッグは、液化され壊死した創傷の排液を吸収して中のウジムシに栄養を与える。このドレッシングは、着脱が簡単で不快感を減らし、ウジムシが逃亡する機会を減らすという利点を持っている上、ウジムシを創傷の上に開放していないという精神的な満足感を与える。しかし、このようなドレッシングは、ウジムシが直接創傷と接触しないため、患部を自由に這い回れるウジムシを使った治療と比べて効果的でないという議論がある(例えば、非特許文献9参照)。

【非特許文献1】W.フライシュマン他,「マゴットセラピー ウジを使った創傷治療」,大阪公立大学共同出版会(2006),p17~25
【非特許文献2】Mumcuoglu KY.他,Int J Dermatol,1999 Aug;38(8):623-627
【非特許文献3】Mumcuoglu KY.,Am J Clin Dermatol,2001;2(4):219-227
【非特許文献4】Sherman RA.他,Arch Phys Med Rehabil,2001 Sep;82(9):1226-1229
【非特許文献5】Sherman Ra.,Eur Tiss Repair Soc Bull,2000;7:97-98
【非特許文献6】Sherman RA.,Diabetes Care,2003 Feb;26(2):446-451
【非特許文献7】Sherman RA.,Plast Reconstr Surg,1997;100(2):451-456
【非特許文献8】Grassberger M.他,Dermatol,2002;204(4),306
【非特許文献9】Thomas S.他,Br J of Nurs.,2002;11:S21-S28
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような、創傷治療におけるウジムシ治療の重要性を鑑み、本発明の目的は、ウジムシ治療の効果を最大限引き出し、使用が簡便で、且つコスト性に優れたカバードレッシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために、ウジムシを患部に直接接触させ、該ウジムシが患部から逃げないようにするために用いられるカバードレッシングに着目し鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである:
[1]患部を取り囲んで被覆するためのメッシュ部を有する基材、又は患部を取り囲む貫通孔を有する基材に該貫通孔を覆うメッシュ状シートを固定してメッシュ部を形成した基材と、該基材の該メッシュ部を除いた部位に形成された粘着剤層とを有するウジムシ治療用のカバードレッシング。
[2]患部を取り囲む貫通孔を有する基材に該貫通孔を覆うメッシュ状シートを固定してメッシュ部を形成した基材であって、基材の片面にメッシュ状シートが固定され、基材の反対面に粘着剤層を有する上記[1]に記載のカバードレッシング。
[3]該粘着剤層が剥離層で被覆されている、上記[1]又は[2]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[4]該基材が不織布である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[5]該不織布の素材が、ポリエステル、セルロース、ポリオレフィン、ポリアミド、又はこれらの併用物である、上記[4]に記載のカバードレッシング。
[6]該不織布の素材が、ポリエステルである、上記[4]又は[5]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[7]該メッシュ状シートの素材が、ポリアミド、又はポリエステルである、上記[1]~[6]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[8]該粘着剤層がアクリル系粘着剤からなるものである、上記[1]~[7]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[9]該貫通孔の面積が1cm以上、1000cm以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[10]該メッシュ部がウジムシ治療対象の患部を取り囲むように形成され、用時にウジムシが活動する閉鎖空間を形成するものである、上記[1]又は[2]のいずれかに記載のカバードレッシング。
[11]メッシュ状シートと該メッシュ状シートに積層された粘着剤層とを有し、少なくともウジムシ治療対象の患部を取り囲む粘着剤非積層部が形成されているウジムシ治療用のカバードレッシング。
[12]該粘着剤層が剥離層で被覆されている、上記[10]又は[11]のいずれかに記載のメッシュ。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウジムシ治療用カバードレッシングは、従来のカバードレッシングと比較して、使用が簡便であり、持続時間が長く、且つ低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ウジムシ治療に用いられるカバードレッシングを提供する。
【0013】
本明細書において、「ウジムシ治療」とは、創傷等の治療のために生きたウジムシを利用する療法を意味しており、例えば以下の文献:W.フライシュマン他,「マゴットセラピー ウジを使った創傷治療」,大阪公立大学共同出版会(2006)、又は以下のインターネットホームページ:「マゴット治療ホームページ」(http://www.icn-jp.com/~maggot/index.html)などに記載されている治療法である。「ウジムシ療法」は、「マゴット治療」、「マゴットセラピー」、「無菌ウジ療法(Maggot Debridement Therapy;MDT)」又は「ウジ療法」などと呼ばれることもある。
【0014】
本明細書において、「ドレッシング」とは、ウジムシ治療を行うために患部を覆うためのものであり、患部からのウジムシの逃走を物理的に遮断する目的、及び滲出物や液化し壊死した組織などを吸収する目的で患部を覆うものである。本明細書において、「カバードレッシング」とは特に、貼付材であるドレッシングを意味する。通常、患部にウジムシを置いた後、その上からカバードレッシングを貼付けることにより、患部からのウジムシの逃走を物理的に遮断する。
【0015】
本発明のカバードレッシングは、ウジムシ治療が実施されるあらゆる場面において使用され得る。ウジムシ治療は、例えば、糖尿病による創傷、褥創、やけど、静脈潰瘍、癌性潰瘍などの治療に適用されているため、本発明のカバードレッシングについてもこれらの場面で使用されるが、これらに限定されるわけではない。ウジムシ治療は、現在、特に糖尿病による創傷の治療がその対象となっているため、本発明のカバードレッシングについても同様に、糖尿病による創傷の治療の場面で使用されることが特に想定される。
【0016】
本発明のカバードレッシングを用いたウジムシ治療は、ウジムシを治療対象の患部に置いた後、該カバードレッシングを貼付して患部をメッシュ部によって被覆することによってなされる。即ち、カバードレッシングの粘着剤層によってウジムシ治療対象の患部が取り囲まれ、該粘着剤層が該対象の皮膚に粘着して、該メッシュ部で患部を覆うことによってウジムシが活動する閉鎖空間を形成する。
【0017】
従って、ウジムシ治療中のウジムシは、メッシュにて覆われた態様で存在する。また、メッシュ部は、患部全体を覆う大きさ、形状であればよく、患部の大きさに応じて適宜その大きさ、形状を選択すればよい。本発明の一つの実施態様において、メッシュ部の面積は1cm以上、1000cm以下である。
【0018】
本発明のカバードレッシングの態様を大別すれば、下記3態様が挙げられる。
(態様1)
患部を取り囲んで被覆するためのメッシュ部を有する基材と、該基材の該メッシュ部を除いた部位に形成された粘着剤層とを有するウジムシ治療用のカバードレッシングであって、該メッシュ部がウジムシ治療対象の患部を取り囲むように形成され、用時にウジムシが活動する閉鎖空間を形成しうるものであるカバードレッシング。
(態様2)
患部を取り囲む貫通孔を有する基材に該貫通孔を覆うメッシュ状シートを固定してメッシュ部を形成した基材と、該基材の該メッシュ部を除いた部位に形成された粘着剤層とを有するウジムシ治療用のカバードレッシングであって、該メッシュ部がウジムシ治療対象の患部を取り囲むように形成され、用時にウジムシが活動する閉鎖空間を形成しうるものであるカバードレッシング。
(態様3)
メッシュ状シートと該メッシュ状シートに積層された粘着剤層を有し、少なくともウジムシ治療対象の患部を取り囲む粘着剤非積層部が形成されているウジムシ治療用のカバードレッシング。
【0019】
態様1及び2における、本発明のカバードレッシングの基材としては、一般に医療用貼付剤の基材として使用されているものを使用すればよく、例えば不織布、織布、編布、穿孔フィルム、又は和紙などが挙げられる。これらの基材は必要に応じて、周知の撥水剤にて撥水処理して使用しても構わない。更に基材は、伸縮性若しくは非伸縮性であっても良い。通気性若しくは透湿性に優れ、且つ伸縮性が良好な基材が好ましく適用出来る。一般に不織布は、高い通気透湿性を有すると同時に、粘着材が不織布層内部に浸透することで、不織布層との界面が大きくできるため、水分が容易に不織布層に移行し水蒸気として放散される効果が高い。それゆえ、不織布を皮膚に直接貼付しても、汗などの水分を速やかに放散するため、接着力の低下やかぶれが少ない。また、不織布は柔軟性や伸縮性にも優れている。従って、態様1及び2における、本発明のカバードレッシングの基材としては、不織布を用いることが特に好ましい。
また、該基材の厚さは、特に限定されないが、一般的には15~2000μmである。
態様3はメッシュ状シート自体が基材を構成するものであり、基材の素材としては後述のメッシュ状シートの項で説明するものが用いられる。
【0020】
前記不織布、織布、編布、又は穿孔フィルムの素材としては、医療用粘着テープの基材として通常用いられるものであれば特に制限はないが、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、レーヨン若しくは銅アンモニアレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエチレン若しくはポリオレフィンなどのポリオレフィン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、若しくはナイロン612などのポリアミド系繊維、又はこれらの混合物が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、若しくはポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維は、医療用具に使用される電子滅菌に対して耐性が高く、好ましく用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレートは、強度や寸法安定性が高い点でより好ましく使用される。
【0021】
該基材の形状及び大きさは、該カバードレッシングが通常の体の動きに対応可能に密着して剥がれることが通常あり得ないもの乃至は剥がれが極めて少ないものであれば、特に限定されないが、不必要な部分及び大きさを持たないことが好ましい。適度の形状を有する基材を用いることにより、該基材の片面に接着している粘着剤層と皮膚との接触面が必要十分の面積となり、治療対象の患者の健康な皮膚にかぶれ等の不都合が生じにくい。基材の形状及び大きさの例としては、メッシュ部の周囲を20mm~100mmの範囲内で任意の形状に広げた周囲を有するものが挙げられる。
【0022】
本発明のカバードレッシングは、該基材の片面に粘着剤層を設けることにより、粘着テープとして使用される。粘着剤層に用いられる粘着剤は特に限定されるものではないが、通常の医療用粘着シートに用いられるものであればよく、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤など適当な粘着剤を1種若しくは2種以上を用いることができる。特に皮膚への刺激性を考慮すればアクリル系粘着剤を用いるのが望ましい。また、基材にアクリル系粘着剤層が接着して形成されている場合に、基材の応力緩和性はより一層向上される。これらの粘着剤は、例えばロールによる塗布などの従来公知の方法により、該基材上に塗布され粘着剤層が形成される。このとき、粘着剤層の厚さとしても特に限定されるものではないが、概ね10~150μm、好ましくは20~100μmに形成するのが良い。
【0023】
次にメッシュについて説明する。
態様1及び3においては、基材自体にメッシュ部が形成されるものである。
態様2においては、基材とメッシュ部とが別個に形成されているものであり、メッシュ部を基材面に形成し、それと同一側に、さらに粘着剤層を形成するか、基材のメッシュ部を形成したとは反対面に粘着剤層を形成したものである。後者についてさらに説明する。即ち、メッシュ部は、基材の粘着剤層を設けたとは反対側面にて基材と固定して貫通孔をカバーする態様で設けられる。メッシュ部は、ウジムシの逃走をより完全に防止するために、その辺縁部が基材の少なくとも貫通孔の周辺部に間隙無く固定、好ましくは接着されていることが好ましい。
【0024】
ウジムシ治療中、ウジムシはタンパク質分解酵素を含むアルカリ性の液体を分泌し、また、感染し壊死した創傷から排液が排出される。該液体がドレッシング外部へ適切に除去されないと、治療中のウジムシが溺れて死亡するため、この性質はウジムシ治療において非常に重要である。本発明のカバードレッシングにおいては、これらの液体は、メッシュ部の隙間を通じてカバードレッシング外部へ除去される必要がある。従って、メッシュ部の網目は廃液を外部へ除去するに充分な間隔が開いているべきである。更に、メッシュ部の網目サイズは、ウジムシが網目から逃走しないようなものである必要がある。治療に用いられるウジムシは、患部に最初に置かれる時には、通常2mm~4mm程度の大きさであるため、メッシュ部の目開きは、通常約0.5~1.5mm、好ましくは約0.5~1.2mmである。
【0025】
該メッシュ部は、カバードレッシングを剥がすことなくウジムシの状態を観察出来るよう、透明又は半透明であることが好ましい。また、メッシュ部は、ウジムシ治療中にメッシュが破れてしまうことがない程度に、充分丈夫でなければならない。
【0026】
該メッシュ状シートの素材は、医療用のメッシュ状シートとして通常用いられるものであれば特に制限はない。具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、若しくはナイロン612などのポリアミド、又はPTFE、DacronTM、若しくはMarlexTMなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン7などが用いられ、特に好ましくはポリアミド又はポリエステルである。
【0027】
態様1において、メッシュ部は、例えば基材へのパンチングなどによって形成することができる。
態様2において、メッシュ部は、基材にメッシュ状シートを固定することによって形成することが出来る。
該メッシュ状シートと基材との固定は、通常接着によって行われ、接着は、使用されるメッシュ状シートの素材と基材とを接着するために当該分野(即ち、医療用粘着テープ作製分野)で通常利用される任意の手段によってなされる。例えば、適切な成分からなる両面テープを用いて接着すれば良い。接着剤としてはアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが使用され、基材とメッシュ状シートとの組み合わせによって適宜選択すればよい。例えば、基材及びメッシュ状シートがポリエステル系繊維である場合、アクリル系粘着剤/不織布/アクリル系粘着剤の3層からなる両面テープなどが好適に使用され得る。また、接着は熱融着によっても行うことが出来る。
【0028】
態様2において、メッシュ状シートと基材との接着面は、接着が剥がれてウジムシが逃走してしまうことがないような形状及び大きさである必要がある。該形状及び大きさは、その目的を満足する限り特に制限されないが、例えば、貫通孔の外縁と、貫通孔の外縁を5mm~30mmの範囲内で任意の形状に広げた閉曲線とで囲まれる部分全体が接着面である場合が挙げられる。
【0029】
態様3においては、メッシュ状シート自体を基材とし、メッシュ部に相当する部分を残して、粘着材層を形成することによって、メッシュ部が形成される。
【0030】
本発明のカバードレッシングにおいて、粘着剤層表面の汚染を防ぐために、使用するまで粘着剤層表面を剥離層にて被覆しておくことが好ましい。剥離層としては、医療用として皮膚に毒性や刺激性を示す物質を使用していない限り特に制限はなく、医療用粘着テープのために通常用いられているものを使用することが出来る。剥離層の例としては、グラシン紙、ポリラミ紙、プラスチックフィルムなどにシリコーン処理などで離型性を付与した市販の一般的な剥離紙を挙げることが出来る。
【0031】
本発明のカバードレッシングにおける一つの実施態様を図1に示した。図1において、1は基材、2は粘着剤層、3は基材自体に設けられたメッシュ部、5は剥離層である。当該図は態様1に関するものである。図1に示すように、該カバードレッシングにおいて、基材1の片面には粘着剤層2が接着して形成されており、更に粘着剤層2は剥離層5によって被覆されている。該カバードレッシングの使用時に剥離層5を剥がして、露出した粘着剤層2をウジムシ治療対象の患部周辺に粘着させる。また、該カバードレッシングにおいては、基材1自体にメッシュ部3が設けられていることに注意されたい。
【0032】
図2は、本発明のカバードレッシングの別の実施態様である。図2において、1は基材、2は粘着剤層、3はメッシュ状シート、4は基材とメッシュ状シートとの接着部、5は剥離層である。当該図は態様2に関するものである。図2に示すように、該カバードレッシングにおいて、基材1は貫通孔を有し、該貫通孔を覆うメッシュ状シートが固定されてメッシュ部3を形成している。基材1とメッシュ部3は、基材とメッシュ状シートとの接着部4を介して接着されており、メッシュ部3の辺縁部は基材1の表面の少なくとも貫通孔の周辺部に間隙無く接着されている。また、基材1の片面には粘着剤層2が接着して形成されており、更に粘着剤層2は剥離層5によって被覆されている。該カバードレッシングの使用時に剥離層5を剥がして、露出した粘着剤層2をウジムシ治療対象の患部周辺に粘着させる。
【0033】
図3は、本発明のカバードレッシングの別の実施態様である。図3において、3はメッシュ状シート、2は粘着剤層、5は剥離層である。当該図は態様3に関するものである。図3に示すように、該カバードレッシングにおいて、メッシュ状シート3の片面に粘着剤層2が積層され、且つ少なくともウジムシ治療対象の患部を取り囲む粘着剤非積層部が形成されている。粘着剤層2は剥離層5によって被覆されており、該カバードレッシングの使用時に剥離層5を剥がして、露出した粘着剤層2をウジムシ治療対象の患部周辺に粘着させる。
【0034】
本発明のカバードレッシングを用いたウジムシ治療は、実際には、例えば以下のようにして行う:
1.生理食塩水を用いて、創傷を洗浄する。
2.創傷周囲をデュオアクティブ(登録商標)などで覆う。
3.清潔な刷毛でウジムシを創傷に置く。患部1cmあたり約7~8匹が好ましい。
4.創傷に、ウジムシが成長しても動けるように隙間を持たせて、本発明のカバードレッシングを貼付する。
5.患部からの排出液を吸収するために、カバードレッシングの周りを吸水パッド(例えば、紙オムツ)で覆う。
6.更に、包帯で覆う(必須ではない)。
7.1週間に2回ウジムシを取替え、約2~4週間この治療を続行する。成長したウジムシは、医療廃棄物として廃棄する。紙オムツは適宜交換する。治療期間は、創傷の重篤度に依存して短縮又は延長することができる。
8.ウジムシの取替え時に、創傷の改善を確認する必要がある。そのために、創傷の細菌検査、及び全身の感染データ(白血球、CRPなど)などを適時検討する。
【0035】
図4は、本発明のカバードレッシング(態様1又は2)を患部に適用した状態の斜視図である。ウジムシ治療対象の患部にウジムシを置いた後、カバードレッシングが剥離層を有する場合はそれを剥がして粘着剤層を露出させてから、患部周辺の皮膚にカバードレッシングを貼り付ける。ここで、メッシュ部が患部を内側に保持し、メッシュ部と基材とが連関してウジムシが活動する閉鎖空間を形成しており、ウジムシの逃走を物理的に遮断している。態様3のカバードレッシングについても同様に、メッシュ部が患部を内側に保持するよう、患部周辺の皮膚にカバードレッシングを貼り付ければ良い。
【0036】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳しく説明するが、下記実施例は単なる例示であって、本発明を何ら制限するものでないことは当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0037】
実施例1:ウジムシ治療用カバードレッシングの作製
本発明のカバードレッシングの実施態様の一つを作製した。その上面図及び断面図を図5に示す。該カバードレッシングは、メッシュ状シート、両面テープ、不織布、粘着剤層、及び剥離紙をその構成要素としている。各構成要素は、具体的には以下の通りである:
メッシュ状シート:ポリエステル100%、打ち込み本数は縦101本、横99本(±3%)、東レ社製;
両面テープ:アクリル系粘着剤/不織布/アクリル系粘着剤の3層構造、総厚0.11mm、リンテック社製TL-202;
不織布:ポリエステル100%、40g/m2、デュポン社製など;
粘着剤層:アクリル系粘着剤、25g/m
剥離紙:晒クラフト紙、ポリラミネート、シリコーンコート、リンテック社製;
【0038】
比較例1:実施例1のカバードレッシングと従来のドレッシングとの比較
ウジムシ治療のために従来広く用いられてきた非特許文献7のカバードレッシング(以下、「従来のドレッシング」とも称する)と、実施例1のカバードレッシング(以下、「本発明のドレッシング」とも称する)とを比較した。比較は、従来のドレッシングと本発明のドレッシングでそれぞれ20例ずつテストを行い、ドレッシングの処理に要する時間及び持続時間を測定して平均した。その比較結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
JP0004998999B2_000002t.gif

【0040】
ドレッシングの処理に要する時間及びドレッシングの持続時間の比較から、本発明のドレッシングは、従来のドレッシングよりも、格段に簡便なウジムシ治療を達成していることが分かる。処理に要する時間が短いことは、ドレッシングの操作中にウジムシが逃走しないという利点にも繋がる。また、1日当たりのコストの比較から、低コスト性も達成していることが分かる。これらの利点は、ウジムシ治療の更なる普及のために、非常に重要であると言える。
【0041】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明のカバードレッシングにおいて、様々な修正及び変更がなされ得ることは当業者にとって明らかであろう。従って、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内であれば、本発明はこの発明の修正及び変更を包含する意図である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のカバードレッシングの構成を示す図である。当該図は態様1に関する。領域を区別するため、適宜ハッチングを施している。
【図2】本発明のカバードレッシングの構成を示す図である。当該図は態様2に関する。領域を区別するため、適宜ハッチングを施している。
【図3】本発明のカバードレッシングの構成を示す図である。当該図は態様3に関する。領域を区別するため、適宜ハッチングを施している。
【図4】本発明のカバードレッシングを患部に適用した状態の斜視図である。領域を区別するため、適宜ハッチングを施している。
【図5】実施例1のカバードレッシングの設計図を示す。領域を区別するため、適宜ハッチングを施している。
【符号の説明】
【0043】
1 基材
2 粘着剤層
3 メッシュ部
4 基材とメッシュ状シートとの接着部
5 剥離層
6 ウジムシ治療対象の患部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4