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明細書 :流動調整装置、マイクロリアクター及びそれらの用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5145559号 (P5145559)
登録日 平成24年12月7日(2012.12.7)
発行日 平成25年2月20日(2013.2.20)
発明の名称または考案の名称 流動調整装置、マイクロリアクター及びそれらの用途
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
G01N  35/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
B81B   1/00        (2006.01)
FI B01J 19/00 321
G01N 35/08 A
G01N 37/00 101
B81B 1/00
請求項の数または発明の数 16
全頁数 19
出願番号 特願2007-503721 (P2007-503721)
出願日 平成18年2月17日(2006.2.17)
国際出願番号 PCT/JP2006/302803
国際公開番号 WO2006/088120
国際公開日 平成18年8月24日(2006.8.24)
優先権出願番号 2005044660
優先日 平成17年2月21日(2005.2.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月5日(2009.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】阪田 祐作
【氏名】武藤 明徳
【氏名】タラダ・バスカル
個別代理人の代理人 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
【識別番号】100114535、【弁理士】、【氏名又は名称】森 寿夫
【識別番号】100075960、【弁理士】、【氏名又は名称】森 廣三郎
審査官 【審査官】谷水 浩一
参考文献・文献 特開2004-358453(JP,A)
特開2004-050401(JP,A)
特開2004-305938(JP,A)
特開2004-181298(JP,A)
調査した分野 B01J 19/00
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-99/00
F16K 13/10
G01N 35/08
G01N 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された流動調整部とを備え、該流動調整部の流路内に移動可能な粒子が1個だけ含まれており、交互流形成されることを特徴とする流動調整装置。
【請求項2】
前記導入流路の等価円直径が0.01~2mmである請求項1記載の流動調整装置。
【請求項3】
前記流動調整部の流路内において、前記粒子が周期的に揺動することが可能である請求項1又は2記載の流動調整装置。
【請求項4】
前記粒子が、球状である請求項1~3のいずれか記載の流動調整装置。
【請求項5】
前記流動調整部における流路の下面又は上面が湾曲している請求項1~4のいずれか記載の流動調整装置。
【請求項6】
磁界又は電界を印加することによって前記粒子を強制的に動かせる請求項1~5のいずれか記載の流動調整装置。
【請求項7】
液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された反応流路とを備えたマイクロリアクターにおいて、前記合流部の下流かつ前記反応流路の上流の位置に流動調整部が配置され、該流動調整部の流路内に移動可能な粒子が1個だけ含まれており、交互流形成されることを特徴とするマイクロリアクター。
【請求項8】
前記反応流路の等価円直径が0.01~2mmである請求項7記載のマイクロリアクター。
【請求項9】
前記流動調整部における流路の断面積が前記反応流路の断面積よりも大きく、前記粒子の寸法が、流動調整部の流路内で移動することが可能でありながら反応流路内に入ることができない寸法である請求項7又は8記載のマイクロリアクター。
【請求項10】
前記反応流路が周期的に屈曲している請求項7~9のいずれか記載のマイクロリアクター。
【請求項11】
前記反応流路が上下方向に屈曲している請求項7~10のいずれか記載のマイクロリアクター。
【請求項12】
前記反応流路の下流に断面積の大きい分離部を備え、該分離部の上部と下部それぞれに分離後の液を導出するための流路が繋がっている請求項7~11のいずれか記載のマイクロリアクター。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか記載のマイクロリアクターを用いた化学反応方法であって、互いに相溶しない複数の液体が前記複数の導入流路に導入され、前記反応流路において交互流が形成されて化学反応が進行することを特徴とする化学反応方法。
【請求項14】
前記粒子が周期的に揺動することによって交互流が形成される請求項13記載の化学反応方法。
【請求項15】
前記マイクロリアクターが、前記反応流路の下流に断面積の大きい分離部を備え、該分離部の上部と下部それぞれに分離後の液を導出するための流路が繋がっていて、密度の低い液体が上部の流路から導出され、密度の高い液体が下部の流路から導出される請求項13又は14記載の化学反応方法。
【請求項16】
請求項7~12のいずれか記載のマイクロリアクターを用いた抽出方法であって、互いに相溶しない複数の液体が前記複数の導入流路に導入され、前記反応流路において交互流が形成されて抽出が進行することを特徴とする抽出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部とを備えた流動調整装置に関する。また、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された反応流路とを備えたマイクロリアクターにおいて、前記反応流路内における流動状態を調整することのできるマイクロリアクターに関する。さらに、そのような流動調整装置やマイクロリアクターの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化学反応プロセスにおいては、スケールアップによる効率化が求められていた。しかしながら最近では、環境負荷の軽減、省資源及び省エネルギーの要求などから、反応器のスケールを小さくしたマイクロリアクターが注目されるようになってきている。特に、微細加工技術や微量分析技術の進展に伴って現実味を一段と帯びてきている。
【0003】
反応器を小さくすることによって、以下のような効果が得られることが知られている。(1)マイクロリアクターはその寸法の小ささゆえに反応空間が狭い。そのため分子の拡散距離が短く、混合や抽出などの分子移動が速やかに起こり、反応や抽出に要する時間を短縮することができる。(2)単位体積あたりの表面積が大きいので、液体と液体あるいは液体と固体の界面での反応や分子移動が効率的に行われる。(3)流路(チャネル)内の液体の熱容量が小さいので速やかな熱交換が可能であり、均一な反応温度を維持することが容易であるとともに、速やかに加熱したり冷却したりすることも容易である。
【0004】
以上のように、マイクロリアクターはこれまでの大きな反応装置には見られない特徴を有しており、化学薬品のスクリーニングのための合成反応試験などにおいて大きな期待が寄せられている。さらに、新しい化学プロセスの開発のためにも役立つと期待されている。また、一部のファインケミカルの分野では、マイクロリアクターを用いて工業的に製品を製造することも期待されている。
【0005】
しかしながら、反応場を小さくしていくと、従来のマクロなスケールでの反応とは異なった流動現象が発現する。例えば、流路の径を非常に小さくした場合には、レイノルズ数が小さくなり、層流が支配的になる。したがって、マクロなスケールにおける機械的撹拌による乱流発生とは大きく異なった流動現象が発現することになる。しかも、体積に対する表面積が大きくなるために表面張力の影響も大きくなる。したがって、マクロなスケールでの反応とは大きく異なった流動状態が発現することになるので、それを確実に制御することが重要である。
【0006】
マイクロリアクターにおいて、反応液の混合を促進するための方法は多数提案されている。例えば、特許文献1には、それぞれ多数の流路に分割された複数の反応物を反応室に供給して混合させる方法が記載されている。特許文献2には、超音波振動子によって撹拌混合する方法が記載されている。また、特許文献3には、流路中の凹部でカーボンナノチューブからなる微小な撹拌子を回転させて撹拌し、層流から乱流に変化させて反応時間を短縮することが記載されている。しかしながら、上記方法を採用する場合には、流路の形態を複雑にしたり、混合のための振動子や撹拌子を配置したりすることが必要であり、装置設計上必ずしも容易ではなかった。また、互いに相溶しない液体を細かく分散させ過ぎた場合には、再度液体を分離させて回収することが困難になる可能性がある。
【0007】
互いに相溶しない2種類の液体をマイクロリアクターで混合して反応させた後に、溶媒の再利用や生成物の精製や分析のことを考慮すれば、反応後に両液を再度分離させて回収することが好ましい。特許文献4には、2つの導入口から導入された2種類の反応液を合流させた後、層流状態で接触させながら界面反応を行わせ、その後分離させて2つの回収口から回収する方法が記載されている。この方法では、二相流で取り扱いがなされるが、再現性良く分離回収するのは必ずしも容易ではないと考えられる。また、非特許文献1には、比重の異なる2液を合流させた後、セトラー部(プール)において2液を分離させて回収する方法が記載されている。しかしながら、その回収性は流路中での流動状態の影響を大きく受ける。ポンプの性能や流速などにより、流動状況は変化しやすいので、再現性良く取り扱うことは容易ではなかった。
【0008】
一方、非特許文献2及び非特許文献3には、互いに相溶しない2種類の液体を、流路内において交互に流して反応させる方法が記載されている。このような方法によれば、層流支配の状況において、再現性良く交互流を形成させることが可能であり、2種類の液間の比界面積を大きくすることができる。しかしながら、微量の液を交互に供給することのできる特殊なポンプを用いる必要があり、装置を小型化、簡略化する上で障害となっていた。
【0009】

【特許文献1】特表平9-512742号公報
【特許文献2】特開平11-347392号公報
【特許文献3】特開2004-321063号公報
【特許文献4】特開2004-181298号公報
【非特許文献1】武藤明徳、外3名、「セトラーを備えた合流型微小チャンネルマイクロリアクタと銅イオンの抽出特性」、化学工学論文集、2004年3月、第30巻、第2号、p.159-163
【非特許文献2】岡本秀穂、「マイクロ反応化学に関する実用化の動向」、化学装置、株式会社工業調査会、2004年9月、第46巻、第9号、p.74-80
【非特許文献3】岡本秀穂、外2名、「New methods for increasing productivity by using microreactors of planar pumping and alternating pumping types」、ケミカルエンジニアリングジャーナル(Chemical Engineering Journal)、2004年8月、第101巻、第1-3号、p.57-63
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部とを備えた流動調整装置によって、流動状態を調整し、再現性のよい流動状態を実現することを目的とするものである。また、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された反応流路とを備えたマイクロリアクターにおいて、前記反応流路内における流動状態を調整し、再現性のよい流動状態を実現することのできるマイクロリアクターを提供することを目的とするものである。さらに、そのような流動調整装置やマイクロリアクターを用いた化学反応方法及び抽出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された流動調整部とを備え、該流動調整部の流路内に移動可能な粒子が1個だけ含まれており、交互流が形成されることを特徴とする流動調整装置を提供することによって解決される。
【0012】
このとき、前記導入流路の等価円直径が0.01~2mmであることが好ましい。また、前記流動調整部の流路内において、前記粒子が周期的に揺動することが可能であることが好ましく、前記粒子が球状であることも好ましい。さらに、前記流動調整部における流路の下面又は上面が湾曲していることが好ましい。磁界又は電界を印加することによって前記粒子を強制的に動かせることも好ましい。
【0013】
また上記課題は、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された反応流路とを備えたマイクロリアクターにおいて、前記合流部の下流かつ前記反応流路の上流の位置に流動調整部が配置され、該流動調整部の流路内に移動可能な粒子が1個だけ含まれており、交互流が形成されることを特徴とするマイクロリアクターを提供することによって解決される。
【0014】
このとき、前記反応流路の等価円直径が0.01~2mmであることが好ましい。また、前記流動調整部の流路内において、前記粒子が周期的に揺動することが可能であることが好ましく、前記粒子が球状であることも好ましい。さらに、前記流動調整部における流路の断面積が前記反応流路の断面積よりも大きく、前記粒子の寸法が、流動調整部の流路内で移動することが可能でありながら反応流路内に入ることができない寸法であることも好ましい。
【0015】
上記マイクロリアクターにおいて、前記流動調整部における流路の下面又は上面が湾曲していることが好ましい。磁界又は電界を印加することによって前記粒子を強制的に動かせることも好ましい。前記反応流路が周期的に屈曲していること、上下方向に屈曲していることが、いずれも好ましい。また、前記反応流路の下流に断面積の大きい分離部を備え、該分離部の上部と下部それぞれに分離後の液を導出するための流路が繋がっていることも好ましい。
【0016】
また、上記課題は、上記マイクロリアクターを用いた化学反応方法であって、互いに相溶しない複数の液体が前記複数の導入流路に導入され、前記反応流路において交互流が形成されて化学反応が進行することを特徴とする化学反応方法を提供することによっても解決される。このとき前記粒子が周期的に揺動することによって交互流が形成されることも好ましい。また、前記マイクロリアクターが、前記反応流路の下流に断面積の大きい分離部を備え、該分離部の上部と下部それぞれに分離後の液を導出するための流路が繋がっていて、密度の低い液体が上部の流路から導出され、密度の高い液体が下部の流路から導出されることも好ましい。
【0017】
さらに、上記課題は、前記マイクロリアクターを用いた抽出方法であって、互いに相溶しない複数の液体が前記複数の導入流路に導入され、前記反応流路において交互流が形成されて抽出が進行することを特徴とする抽出方法を提供することによっても解決される
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部とを備えた流動調整装置によって、流動状態を調整し、再現性のよい流動状態を実現することができる。また、液体が導入される複数の導入流路と、該複数の導入流路が合流する合流部と、該合流部の下流に配置された反応流路とを備えたマイクロリアクターにおいて、簡便な方法によって、前記反応流路内における流動状態を調整し、再現性のよい流動状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例で使用したマイクロリアクターの概略を示した分解斜視図である。
【図2】図1のマイクロリアクターをネジ留めしたものを上方から見た概略図である。
【図3】流動調整部を側方から見た模式図である。
【図4】流動調整部を上方から見た模式図である。
【図5】並行二相流が形成されている状態の模式図である。
【図6】交互流が形成されている状態の模式図である。
【図7】基板の形状を示した図である。
【図8】合流板の形状を示した図である。
【図9】連結板の形状を示した図である。
【図10】「直線型」の反応板の形状を示した図である。
【図11】「さざ波型」の反応板の形状を示した図である。
【図12】「大波型」の反応板の形状を示した図である。
【図13】「のこぎり型」の反応板の形状を示した図である。
【図14】連結板の形状を示した図である。
【図15】分離板の形状を示した図である。
【図16】接触時間τ[秒]と抽出百分率E[%]との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0020】
10 基板
11,12 導入口
13,14 導出口
20 合流板
23 合流部
30,50 連結板
40 反応板
41 反応流路
60 分離板
61 分離部
70 裏面板
80 流動調整部
82 粒子
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施例で使用したマイクロリアクターの概略を示した分解斜視図である。この例では、7枚の板状コンポーネントを隙間なく重ねて、全体をネジ留めして使用する。板状コンポーネントは、基板10、合流板20、連結板30、反応板40、連結板50、分離板60、裏面板70から構成されている。図1中の矢印は液の流れを示したものである。図1ではネジとネジ孔は記載を省略している。また、ネジ留めしたものを上方から見た概略図が図2である。裏面板70の側から12本のネジ71を用いて7枚の板状コンポーネントを固定している。
【0022】
以下、これらの図を使用して本発明を説明する。以下の説明では、マイクロリアクターを例にして説明しているが、本発明はマイクロリアクターに限定されるものではない。すなわち、流動調整部の下流側の構成は特に限定されるものではなく、反応流路を備えないものであっても構わない。以下の説明中で、マイクロリアクターを例として説明している文章は、流動調整装置の構成についての説明でもある。
【0023】
本発明のマイクロリアクターは、液体が導入される複数の導入流路21,22と、該複数の導入流路21,22が合流する合流部23と、該合流部23の下流に配置された反応流路41とを備えたものである。図1の例では、導入口11から導入された液体は導入流路21を通って合流部23へ導かれ、導入口12から導入された液体は導入流路22を通って合流部23へ導かれ、2種類の液体が合流部23で合流し、流路24を流れる。ここでは2種類の液体を合流させているが、3種類以上の液体を合流させても構わない。その場合には、1箇所の合流部23で一度に合流させても構わないし、複数箇所の合流部で段階的に合流させても構わない。
【0024】
導入流路21の寸法は特に限定されないが、層流支配の領域で安定に流動させるためには、等価円直径で2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。一方、流路内に液体を導入するための圧力の上昇を防止したり、容易に分離回収したりするためには、流路の寸法は、等価円直径で0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましい。ここで、等価円直径とは、導入流路21の断面積と等しい面積を有する円の直径のことである。
【0025】
導入される液体は特に限定されないが、本発明においては互いに相溶しない複数の液体が導入されることが好ましい。このような場合には、流路内において、それぞれの液体の間で形成される界面の状況を調整することができ、本発明のマイクロリアクターを採用する意義が大きい。2種類の液体を供給する際の流量比は特に限定されないが、流動状態を安定にするためには1/9~9/1であることが好ましく、2/8~8/2であることがより好ましい。また、導入される液体の密度が異なる場合には、図1に示すマイクロリアクターであれば、密度の低い液体が上側の導入口11から導入され、密度の高い液体が下側の導入口12から導入されることが好ましい。こうすることによって合流部23での流動状態を安定化させて、流路24において安定な並行二相流を形成することが容易となる。
【0026】
本発明のマイクロリアクターにおいては、合流部23の下流かつ反応流路41の上流の位置に流動調整部80が配置される。図1の例において、流動調整部80を側方から見た模式図を図3に、上方から見た模式図を図4に、それぞれ示す。流動調整部80は、合流板20、連結板30及び反応板40を貫いて形成された円筒状の流路81と、その中に含まれる粒子82から構成される。液体は流路24から流路81を経て反応流路41へ流れ込む。粒子82は、流路81の内部で移動が可能であり、それによって流動調整部80の下流にある反応流路41における流動状態が調整される。
【0027】
本発明のマイクロリアクターにおいては、反応流路41における流動状態が調整されるが、その流動状態は特に限定されない。反応流路41において、並行二相流が形成されても良いし、交互流が形成されても良い。流路の寸法や形状や向き、供給される液体の量比、流速などによって形成される状態は異なる。流路90内で油相91及び水相92からなる並行二相流が形成されている状態の模式図を図5に、交互流が形成されている状態の模式図を図6にそれぞれ示す。
【0028】
並行二相流が形成される場合には、分離再回収する場合の分離性が良好であり、後の精製や分析の工程が簡略化される。後の実施例でも示すように、反応流路41の形状や流速などによっては、流動調整部80を有することによって再現性良く並行二相流が形成される。この場合の粒子82の動きは必ずしも明らかではないが、定常的な流動状態を維持するのに適した位置まで移動し、そこに静止しているものと考えられる。
【0029】
また、後の実施例で示されるように、交互流が形成される場合には、並行二相流が形成される場合よりも抽出率を大きくすることができた。交互流のピッチが流路径よりもはるかに大きな場合であっても、並行二相流の場合よりも抽出率が大きいことは、接触する界面までの分子移動の距離を考えれば驚きである。レイノルズ数が小さく、層流が支配的である微細な流路内での交互流において、分子移動に有利な特別な流動状態が発現していると考えられる。例えば、各相内において循環流が発生して撹拌と同じような効果が得られ、結果として界面近郷の境膜厚みが減少して界面における分子移動速度が増加するような現象が生じていると推定することができる。
【0030】
交互流が形成される場合には、比較的寸法の揃った液滴が得られるので、反応あるいは抽出の後に液体を分離回収する際に、分離しやすく回収が容易である。また、超音波振動などの物理的な方法を使用する場合や、複雑に分岐された流路を使用する場合と比べて液滴の寸法の制御が容易なので、反応速度や抽出速度の経時的変動が起こりにくい、再現性の良好なデータを得ることが容易である。このことは、特に連続操作を行うときに非常に重要である。
【0031】
形成される交互流のピッチは必ずしも均一でなくても良いが、実質的に均一なピッチの交互流であることが、反応や抽出の再現性が良好であり、好ましい。好適なピッチの長さは、流路の断面積や、反応の種類などによって異なる。反応あるいは抽出の後の分離回収性の観点からは、ピッチは0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましい。一方、反応あるいは抽出の速度の観点からは、ピッチは30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。ここでいうピッチとは、反応流路41の中で、液滴の先端部から、次に流れてくる同じ種類の液滴の先端部までの距離のことを言い、図6においてLで示されるものである。
【0032】
並行二相流を形成させるにしても、交互流を形成させるにしても、流動調整部80の流路81内の粒子82は、容易に移動できる形態であることが好ましい。球状、回転楕円体、円筒状など、転がり可能な形状が好適に採用されるが、最適には球状である。寸法は特に限定されないが、流路81の断面積が反応流路41の断面積よりも大きく、粒子82の寸法が、流路81内で移動することが可能でありながら反応流路41内に入ることができない寸法であることが好適である。こうすることによって、粒子82が反応流路41内に流れ込むことなく、流動調整部80における流路81内で移動することが可能である。また、反応流路41の入り口に狭い部分を設けて粒子82が反応流路41内に流れ込むことを防止することもできる。
【0033】
反応流路41の寸法は特に限定されないが、層流支配の領域で安定に流動させるためには、等価円直径で2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。一方、流路内に液体を導入するための圧力の上昇を防止したり、容易に分離回収したりするためには、流路の寸法は、等価円直径で0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましい。ここで、等価円直径とは、反応流路41の断面積と等しい面積を有する円の直径のことである。
【0034】
粒子82の等価球直径は、反応流路41の等価円直径の0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることがより好ましく、1.7倍以上であることがさらに好ましい。このような粒子82を使用することによって、粒子82による流れの遮蔽効果が十分に発揮され、流動状態の調整がなされやすくなる。一方、粒子82の等価球直径は、反応流路41の等価円直径の5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2.5倍以下であることがさらに好ましい。ここで、等価球直径とは、粒子82の体積と等しい体積を有する球の直径のことである。具体的には、粒子82の等価球直径は、0.01~10mmであることが好ましい。粒子82の等価球直径は、より好適には0.05mm以上であり、さらに好適には0.1mm以上である。一方、粒子82の等価球直径は、より好適には5mm以下であり、さらに好適には2mm以下である。粒子82の個数は特に限定されるものではないが、好適には1個である。
【0035】
規則正しい交互流を発生させたい場合には、粒子81が周期的に揺動することが可能であることが望ましい。このような周期的な揺動を可能にするために、流動調整部80における流路81の下面83又は上面84が湾曲していることが好ましい。図3の例では、流路81の下面83及び上面84が湾曲していて、下面83の上に粒子82が載っている。粒子82の密度が流れる液体の密度よりも高ければ、粒子82は下面83の上に載るが、流路81から反応流路41へ流れ込む液の流れに引きずられて反応流路41側に引っ張られる。このとき、密度や極性の異なる2種類の液体が流れているときには、主として一方の液体が反応流路41に流入しているときの粒子82の位置と、主として他方の液体が反応流路41に流入しているときの粒子82の位置とが異なり、結果として、形成される交互流のピッチに対応した粒子82の揺動が発現することになると考えられる。逆に、粒子82の密度が流れる液体の密度よりも低ければ、粒子82は上面84の下に接することになり、上面84に接触したままで揺動することになる。
【0036】
揺動によって規則正しい交互流を効果的に形成させるためには、図4のように、流動調整部80の流路81内において、流路24よりも反応流路41に近い位置に粒子82が配置されることが好ましい。反応流路41側に配置するためには、流路81に勾配をつけたり、溝を形成したりする方法を採用しても良い。そのような方法を採用しなくても、予め吸引したり傾けたりして反応流路41側に粒子82を配置してから液を流すだけでも十分である。また、何もしなくても流れに従って反応流路41の入り口近傍に粒子82が移動する場合もある。
【0037】
所定寸法のマイクロリアクターの中で長い流路長を得るためには、反応流路41は屈曲していることが好ましい。特に、揺動によって規則正しい交互流を効果的に形成させるためには、反応流路41が周期的に屈曲していることが好ましい。この場合、反応流路41の周期的な屈曲と共鳴するような形で、屈曲のピッチと同じピッチで規則正しい交互流が発生しやすくなる。また、交互流を発生させるためには、反応流路41が上下方向に屈曲していることも好ましい。密度の異なる複数の液体が反応流路41中を上下しながら流れることによって、交互流の発生を誘起しやすいようである。規則正しい交互流をより効果的に形成させるためには反応流路41が周期的に上下方向に屈曲していることが、特に好適である。
【0038】
また、磁界又は電界を印加することによって粒子82を強制的に動かせることも可能である。こうすることによって、規則正しい交互流を得ることが容易になる。例えば、磁石に引き寄せられる材料からなる粒子82を用いて、磁界の強度や向きを変えることによって粒子82を移動させることができる。特に、両側に電磁石を配置して交互にオン・オフを繰り返せば、流動調整部80内において周期的に粒子82を移動させることができる。多数のマイクロリアクターを並列的に配置して、外部からまとめて磁界をかけることも可能なので、装置の構成をそれほど複雑化しなくてもよい。また、粒子82として電荷を帯びたものを使用する場合には、電界を印加することによって粒子82を移動させることも可能である。粒子82の質量と帯電量を考慮すれば、粒子82の寸法が小さい場合に有用な場合が多い。
【0039】
流路の素材は特に限定されず、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックなどを使用することができ、加工性、耐薬品性、液体との親和性などを考慮して選択される。また、粒子82の素材も特に限定されず、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックなどを使用することができる。比重や、耐薬品性や、液体との親和性などを考慮して選択される。比重を軽くするために中空の粒子を使用することもできる。また。耐薬品性や液体との親和性を調整するために表面処理をしたり表面にコーティングを施したりしたものを使用することもできる。本発明のマイクロリアクターのように、微細な流路内で液体を流動させる場合においては、表面張力の影響を大きく受けやすいので、複数の液体のそれぞれと、これらの素材との親和性は重要な点であると考えられる。
【0040】
本発明のマイクロリアクターは、反応流路41の下流に断面積の大きい分離部61を備え、分離部61の上部と下部それぞれに分離後の液を導出するための流路63,64が繋がっていることが好ましい実施態様である。こうすることによって、反応流路41を通過した流体が分離部61中で上下に分離され、密度の低い液体が上部の流路63から導出され、密度の高い液体が下部の流路64から導出される。一つのマイクロリアクターの内部において液の分離操作まで可能になるので、後の精製や分析の操作が容易になる。
【0041】
分離部61の断面積は、反応流路よりも大きければよいが、好適には5倍以上、より好適には10倍以上、さらに好適には20倍以上である。液量の増加を防止してマイクロリアクターの寸法を小さくするためには、分離部61の断面積は反応流路の500倍以下であることが好ましく、200倍以下であることがより好ましく、100倍以下であることがさらに好ましい。また、分離性能の面からは分離部61の断面の幅よりも高さの方が大きいほうが好ましく、好適には高さが幅の2倍以上、より好適には5倍以上、さらに好適には10倍以上である。また通常、高さは幅の500倍以下である。分離部61の体積が大きいほど分離部61内に滞留する時間が長くできるので分離性能は向上しやすい。したがって、分離部61の体積が、合流部23から分離部61までの全体積の10~90%を占めることが好適である。分離部61の体積が占める割合が小さすぎると、分離性能が低下するおそれがあり、より好適には20%以上であり、さらに好適には40%以上である。一方、分離部61の体積が占める割合が大きすぎると、必要な液量が増加したり装置寸法が大きくなるので、より好適には80%以下である。
【0042】
以上のように、本発明のマイクロリアクターは、互いに相溶しない複数の液体を用いて反応流路41において効率良く、また再現性良く化学反応や抽出を進行させるのに好適に使用される。例えば、一方の液体中に含まれている反応剤を他方の液体中に拡散させて化学反応を進行させたり、化学反応することによって生成した化合物を抽出して反応剤と分離したりすることができる。また、複数の液体の界面での化学反応を進行させることもできる。しかも、反応や抽出を行った後に分離してそれぞれの液体を回収することも容易なので、例えば触媒を回収して触媒の溶解した溶液をそのまま再度反応に用いるようなことも実施可能である。さらに、油相中に含まれている親水性化合物を水相に抽出する場合や、水相中に含まれている疎水性化合物を油相に抽出する場合のように、化学反応を伴わない純粋な抽出操作に対しても使用することができる。この場合、本発明でいう反応流路41では化学反応は進行せず抽出のみが進行することになるが、本発明は、そのような実施態様をも含むものである。
【0043】
本発明のマイクロリアクターによれば、複雑な装置を必要とせず、少量の試薬によって、化学反応を進行させることができるから、薬品のスクリーニングのための合成反応試験などにおいて特に好適に適用される。また、安定した流動状態を提供することも容易なので、再現性の良いデータ取得が可能であり、反応や抽出なども含めた多様な化学プロセスにおける条件設定などにも役立つと期待される。また、医薬品、色素、電子材料などの一部のファインケミカルの分野では、本発明のマイクロリアクターを用いて工業的に製品を製造することも可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を使用して本発明を説明する。まず、本実施例で使用したマイクロリアクターの仕様と、行った化学反応について説明する。
【0045】
図1に示される構成のマイクロリアクターを使用して試験を行った。板状コンポーネントは、基板10、合流板20、連結板30、反応板40、連結板50、分離板60、裏面板70から構成されており、以下それぞれについて、図7~15を用いて説明する。図7~15はいずれも図1における右方向からみた板状コンポーネントの形状を示した図である。これらの板状コンポーネントの周囲には、それぞれ合計12個の貫通孔が開けられていて(図示を省略)、7枚の板状コンポーネントを隙間なく重ねて、全体をネジ留めして、図2のような状態で使用した。
【0046】
基板10は、長さ60mm、幅30mm、厚さ10mmのステンレス板からなるものであり、その形状は図7に示すとおりである。2つの導入口11,12と2つの導出口13,14とが設けられ、それぞれに繋がる直径2mmの貫通孔15,16,17,18が設けられている。
【0047】
合流板20は、長さ60mm、幅30mm、厚さ0.5mmのステンレス板にY字型のスリットが形成されたものであり、その形状は図8に示すとおりである。導入流路21,22の幅は0.25mmであり、合流部23の下流の流路24の幅は0.5mmである。上流側の端部には直径2mmの貫通孔25,26が開けられており、導入口11,12と繋がっている。下流側の端部には直径2mmの貫通孔27が開けられており、連結板30の貫通孔31と繋がって流動調整部80の一部を構成する。貫通孔28,29は分離板60で分離された液体が、導出口13,14へ流れるためのものである。
【0048】
連結板30は、長さ60mm、幅30mm、厚さ1mmの石英ガラス板であり、その形状は図9に示すとおりである。直径2mmの貫通孔31,32,33,34が開けられている。貫通孔31は、合流板20の貫通孔27及び反応板40の貫通孔42と繋がって流動調整部80の一部を構成する。流動調整部80の内部にガラス球からなる粒子82を1個入れた。貫通孔33,34は分離板60で分離された液体が、導出口13,14へ流れるためのものである。貫通孔32は行き止まりである。
【0049】
反応板40は、長さ60mm、幅30mm、厚さ0.5mmのステンレス板に幅が0.5mmのスリットが形成されたものであり、当該スリットが反応流路41を構成する。スリットの形状を変えて、「直線型(図10)」「さざ波型(図11)」「大波型(図12)」「のこぎり型(図13)」の4種類の反応板40を試験に使用した。反応流路41の上流側の端部には直径2mmの貫通孔42が開けられており、連結板30の貫通孔31と繋がって流動調整部80の一部を構成する。反応流路41の下流側の端部には直径2mmの貫通孔43が開けられており、連結板50の貫通孔52に繋がっている。貫通孔44,45は分離板60で分離された液体が、導出口13,14へ流れるためのものである。
【0050】
連結板50は、長さ60mm、幅30mm、厚さ1mmの石英ガラス板であり、その形状は図14に示すとおりである。連結板30と同じ形のものであり、直径2mmの貫通孔51,52,53,54が開けられている。貫通孔52は、分離板60の貫通孔65に繋がる。貫通孔53,54は分離板60で分離された液体が、導出口13,14へ流れるためのものである。貫通孔51は行き止まりである。
【0051】
分離板60は、長さ60mm、幅30mm、厚さ0.5mmのステンレス板に15mm角の正方形の分離部61が打ち抜かれているものであり、その形状は図15に示すとおりである。分離部61の上流側に幅1mmのスリットからなる流路62が形成され、その上流側の端部には直径2mmの貫通孔65が開けられている。貫通孔65は、連結板50の貫通孔52と繋がっている。分離部61の下流側には上下2箇所に幅1mmのスリットからなる流路63,64が形成され、その下流側の端部には直径2mmの貫通孔66,67が開けられている。貫通孔66は導出口13へと繋がっていて、貫通孔67は導出口14へと繋がっている。分離部61の体積は0.113mLである。裏面板70は、長さ60mm、幅30mm、厚さ3mmの石英ガラス板である。
【0052】
上記マイクロリアクターを使用して、以下の化学反応を行った。油相として、銅イオンを含有する錯体である、ビス[リン酸-ジ-(2-エチルヘキシル)]銅(II)が0.002mol/L溶解したヘキサン溶液を用いた。水相として、塩酸が1.0mol/L溶解した水溶液を用いた。油相と水相とが接触することによって塩化銅(II)が生成し、それが水相に溶解する。化学式は以下に示すとおりである。すなわち、反応が進行するに従って、銅(II)イオンが油相から水相へと抽出されることになる。反応流路41内での流動状態については、分離部61越しに観察することが可能である。
【0053】
【化1】
JP0005145559B2_000002t.gif

【0054】
導入口11から油相を、導入口12から水相を、それぞれマイクロシリンジポンプを用いて供給した。合流板20、反応板40、分離板60をこの順番に通過させてから、導出口13から油相を、導出口14から水相を、それぞれ回収し、原子吸光分光光度計で銅イオン濃度を測定した。下記式(1)に従って抽出百分率E[%]を求めた。
【0055】
E=[Ca・Va/(Ca・Va+Co・Vo)]×100 [%] (1)
Ca:水相の銅(II)イオン濃度[mol/L]
Co:油相の銅(II)イオン濃度[mol/L]
Va:回収された水相の体積[L]
Vo:回収された油相の体積[L]
【0056】
2種類の液が接触している流路の体積は、合流部23から分離部61までの体積の合計である。反応板40の種類によって流路の体積(Vr)は異なり、「直線型」が0.168mL、「さざ波型」が0.174mL、「大波型」が0.199mL、「のこぎり型」が0.172mLである。下記式(2)に従ってマイクロリアクター内での接触時間τ[秒]を求めた。
【0057】
τ=t・Vr/(Va+Vo) [秒] (2)
t:回収液の採取時間[秒]
Vr:マイクロリアクターの流路の体積[L]
Va:回収された水相の体積[L]
Vo:回収された油相の体積[L]
【0058】
実施例1
「直線型」、「さざ波型」、「大波型」及び「のこぎり型」の4種類の反応板40を使用し、流速を変化させ、ガラス球導入時及び未導入時について、反応流路41内での流動状態を観察した。このとき、油相と水相の導入体積比は1:1に固定して、ガラス球の直径は1.21mmのものを使用した。また、いずれの場合にも、油相と水相は、良好に分離されて回収された。その結果を表1にまとめて示す。表1に記載された流量は、油相又は水相の一方についての流量である。
【0059】
【表1】
JP0005145559B2_000003t.gif

【0060】
表1に示されるように、「直線型」及び「大波型」の反応板40を使用し、ガラス球を導入しない場合には、ピッチの長い交互流が主として形成されたが、場合によっては並行二相流が形成される場合もあって、再現性が不十分であった。これに対し、ガラス球を導入することによって、広い範囲の流速に亘って、並行二相流が再現性良く形成されることがわかった。一方、「さざ波型」及び「のこぎり型」の反応板40を使用し、ガラス球を導入しない場合には、ピッチの長い交互流が主として形成されたが、場合によっては並行二相流が形成される場合もあって、再現性が不十分であった。これに対し、ガラス球を導入することによって、広い範囲の流速に亘って、6mmの短いピッチの交互流が再現性良く形成されることがわかった。この6mmというのは、「さざ波型」の場合には正弦波の1周期分の長さに相当し、「のこぎり型」の場合には屈曲から屈曲までの直線部分の長さに相当するものである。したがって、このような周期的な屈曲が、安定的な短いピッチの交互流の形成に役立っていることが推定される。
【0061】
実施例2
実施例1で使用したマイクロリアクターの場合、流動調整部80の中の粒子82の動きを直接観察することは、分離板60に遮られて困難である。そのため、流動調整部80に粒子82を導入すると同時に、連結板50の貫通孔52の中にも同じ粒子を導入して試験を行った。貫通孔52の中の粒子は、ガラス製の裏面板70を通して観察が可能である。交互流が形成されているときの貫通孔52の中の粒子の動きを観察したところ、油相が貫通孔52に流入しているときの粒子の位置と、水相が貫通孔52に流入しているときの粒子の位置とが異なり、結果として、形成される交互流のピッチに対応した粒子の揺動が観察された。液体の密度、粘度、粒子との親和性などにより粒子の位置が変動することがわかり、同様の現象が流動調整部80の中の粒子82でも発現しているものと推定される。
【0062】
実施例3
実施例1と同じ構成のマイクロリアクターを用い、「さざ波型」の反応板40を使用する場合において、マイクロリアクター全体を横倒しにしたところ、短いピッチの規則正しい交互流を形成することができず、ガラス球を導入せずに試験した場合と同様の結果となった。このことより、マイクロリアクターの向きを図1のようにすることによって、図3に示されるように、流動調整部80における流路81の下面83の湾曲の上に粒子82が載ることになり、重力と流れのバランスによって揺動が容易になっていることが推定される。また、反応流路41における縦方向の屈曲が交互流の発生に寄与していることも考えられる。
【0063】
またさらに、「さざ波型」の反応板40を使用する場合において、予め横倒しにして流動調整部80の流路81において、合流板20に近い側に粒子82を配置してから、図1のような向きに戻して試験すると、短いピッチの規則正しい交互流を形成することができず、実施例1においてガラス球を導入せずに試験した場合と同様の結果となった。この後、導出口13,14からアスピレーター吸引してガラス球を反応板40に近い位置に移動させてから再度試験を行ったところ、実施例1と同様に規則正しいピッチの交互流が形成された。このことから、流動調整部80の流路81内において、流路24よりも反応流路41に近い位置に粒子82が配置されることが好ましいことがわかった。
【0064】
実施例4
「さざ波型」の反応板40を使用する場合において、接触時間τ[秒]と抽出百分率E[%]との関係を示したグラフを図16に示す。ガラス球を導入しない場合には、流動状態に再現性が乏しく、並行二相流になる場合と長いピッチの交互流になる場合とがあるので、それぞれの場合からデータを取得した。ピッチが約6mmの短い交互流が形成されたデータはガラス球を導入した試験からデータを取得した。試験方法は実施例1と同様である。
【0065】
図16からわかるように、接触時間(τ)を同じにした場合の抽出百分率(E)は、短いピッチの交互流が一番高く、長いピッチの交互流がそれに続き、並行二相流が最も低かった。22~56mmといった長いピッチであっても、並行二相流よりも抽出百分率が高いのは驚きである。このことから、化学反応や抽出を行う場合に、交互流、特に短いピッチの交互流を形成することの利益が明らかである。
【0066】
実施例5
「さざ波型」の反応板40を使用する場合において、ガラス球の寸法を変化させた以外は実施例1と同様の試験を行った。ガラス球の直径が0.95mm、1.07mm、1.21mm及び1.62mmのものを使用した。流動調整部80の流路81の内径は2.0mmなので、いずれもその中で移動することが可能な寸法のものである。反応流路41の等価円直径が0.56mmなので、ガラス球の直径は、それぞれその1.68倍、1.90倍、2.14倍及び2.87倍である。観察された流動状態を表2にまとめて示す。表2に記載された流量は、油相又は水相の一方についての流量である。
【0067】
【表2】
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【0068】
表2の結果から導入されるガラス球の寸法が流動状態に影響を与えることがわかった。例えば、短いピッチの交互流を再現性良く形成するためには、適度に流れを遮蔽する寸法の粒子82を使用するのが好ましいようである。
【0069】
実施例6
「さざ波型」の反応板40を使用する場合において、水相と油相の流量比を変化させた以外は、実施例1と同様の試験を行った。水相の流量を0.065mL/分に固定して、油相の流量をその0.2倍、0.5倍、1倍、2倍及び5倍にしたときの流動状態を観察した。また、油相の流量を0.065mL/分に固定して、水相の流量をその0.2倍、0.5倍、1倍、2倍及び5倍にしたときの流動状態を観察した。これらの結果を表3にまとめて示す。
【0070】
【表3】
JP0005145559B2_000005t.gif

【0071】
表3の結果から、水相と油相の流量比が1:1に近いほうが交互流を発生させやすいことがわかった。また、ガラス球を導入した場合には、比較的広い範囲の流量比でも短いピッチの交互流が形成されていることがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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