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明細書 :超音波モータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5039974号 (P5039974)
登録日 平成24年7月20日(2012.7.20)
発行日 平成24年10月3日(2012.10.3)
発明の名称または考案の名称 超音波モータ
国際特許分類 H02N   2/00        (2006.01)
FI H02N 2/00 C
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2007-508187 (P2007-508187)
出願日 平成18年3月15日(2006.3.15)
国際出願番号 PCT/JP2006/305149
国際公開番号 WO2006/098375
国際公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
優先権出願番号 2005073236
優先日 平成17年3月15日(2005.3.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月5日(2009.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】神田 岳文
【氏名】鈴森 康一
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】安池 一貴
参考文献・文献 特開平02-294280(JP,A)
特開平01-177878(JP,A)
特開平04-133676(JP,A)
調査した分野 H02N 2/00
特許請求の範囲 【請求項1】
中空部を有する筒状として、外周面には周方向に沿って複数の電極を設けるとともに、内周面にも電極を設けて、前記の各電極に所定の電圧を印加することにより基端に対して先端を軸線回りの円形軌跡に沿って振動させる圧電体からなる振動子と、
この振動子と同軸上に配置して、基端を前記振動子の先端に当接させたロータと、
一端に軸受を介して前記ロータを回転自在に支持するとともに他端を前記振動子の基端側に装着する筒状のケーシングと、
前記ロータと前記軸受との間に設けて前記ロータの基端を前記振動子の先端に押圧させる付勢体と
を備え、
前記振動子の振動にともなって前記ロータを軸線方向に回転させる超音波モータにおいて、
前記ロータの基端には、前記振動子側に向けて拡開状としたテーパ面と、同テーパ面の内側で前記振動子側に向けて突出した前記振動子の前記中空部に挿入する円錐体状の挿入体とを設け、前記テーパ面に前記振動子の先端縁を当接させ、前記円錐体状の挿入体の周面に前記振動子における前記中空部の先端縁を当接させたことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記テーパ面と前記振動子の外周面とのなす角と、前記円錐体の周面と前記振動子の内周面とのなす角を同じ角度としたことを特徴とする請求項1記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記振動子の内周面には、前記圧電体よりも高硬度とした筒状の芯材を設けるとともに、この芯材の前記振動子における先端側の端部は前記振動子の先端から突出させて突出端部とし、この突出端部における外周面の先端縁を前記テーパ面に当接させたことを特徴とする請求項1記載の超音波モータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型の振動子を駆動源とする超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波モータは、高トルク出力であることに加え構造が比較的単純であるため、ミリメートルオーダまたはそれ以下の高出力マイクロモータとして有力視されており、昨今では、カメラに内蔵してオートフォーカスにおけるレンズの焦点距離の調整に用いられたりしている。
【0003】
超音波モータは、用途に応じて多種多様な形態が提案されており、特に高トルク出力が得られる超音波モータとして、撓み振動する筒型の振動子を用いた超音波モータが知られている。
【0004】
筒型の振動子を駆動源とする超音波モータでは、振動子の先端を振動子の長手方向と直交する方向に撓ませており、振動子の撓む向きを移動させることにより振動子の先端端面に進行波を励起させることにより撓み振動を生じさせているものである。
【0005】
このような振動子を用いた超音波モータでは、撓み振動する振動子の節部分をワイヤで吊って固定したり、節部分にOリングを装着したりして振動子を固定し、振動子の両端から駆動力を取出し可能としている(例えば、非特許文献1参照。)。

【非特許文献1】Takeshi MORITA, Minoru Kuribayashi KUROSAWA and Toshiro HIGUCHI著「Cylindrical Micro Ultrasonic Motor Utilizing Bulk Lead Zirconate Titanate(PZT)」 Japanese Journal of Applied Physics、Vol.38、1999年、p.3347-3350
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような超音波モータは各種の用途に用いられているが、利用範囲を拡大させるためにミリオーダーサイズとした超小型の超音波モータが求められているものの、従来の超音波モータをスケールダウンによって小型化すること、加工精度の関係上、極めて困難であるという問題があった。
【0007】
しかも、撓み振動を行う振動子を用いた超音波モータの場合には、小型化された振動子の確実な固定が極めて困難であって、固定が不十分となることによって撓み振動のエネルギーが散逸されることとなり、十分な出力特性の超音波モータを提供することが困難となっていた。
【0008】
本発明者らはこのような現状に鑑み、所望の出力特性を有しながら、取扱いやすい小型の超音波モータを提供すべく研究開発を行って本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波モータでは、中空部を有する筒状として、外周面には周方向に沿って複数の電極を設けるとともに、内周面にも電極を設けて、前記の各電極に所定の電圧を印加することにより基端に対して先端を軸線回りの円形軌跡に沿って振動させる圧電体からなる振動子と、この振動子と同軸上に配置して、基端を前記振動子の先端に当接させたロータと、一端に軸受を介して前記ロータを回転自在に支持するとともに他端を前記振動子の基端側に装着する筒状のケーシングと、前記ロータと前記軸受との間に設けて前記ロータの基端を前記振動子の先端に押圧させる付勢体とを備え、前記振動子の振動にともなって前記ロータを軸線方向に回転させる超音波モータにおいて、前記ロータの基端には、前記振動子側に向けて拡開状としたテーパ面と、同テーパ面の内側で前記振動子側に向けて突出した前記振動子の前記中空部に挿入する円錐体状の挿入体とを設け、前記テーパ面に前記振動子の先端縁を当接させ、前記円錐体状の挿入体の周面に前記振動子における前記中空部の先端縁を当接させた。
【0010】
さらに、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)前記テーパ面と前記振動子の外周面とのなす角と、前記円錐体の周面と前記振動子の内周面とのなす角を同じ角度としたこと。
(2)前記振動子の内周面には、前記圧電体よりも高硬度とした筒状の芯材を設けるとともに、この芯材の前記振動子における先端側の端部は前記振動子の先端から突出させて突出端部とし、この突出端部における外周面の先端縁を前記テーパ面に当接させたこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中空部を有する筒状として、外周面には周方向に沿って複数の電極を設けるとともに、内周面にも電極を設けて、各電極に所定の電圧を印加することにより基端に対して先端を軸線回りの円形軌跡に沿って振動させる圧電体からなる振動子と、この振動子と同軸上に配置して、基端を振動子の先端に当接させたロータと、一端に軸受を介してロータを回転自在に支持するとともに他端を振動子の基端側に装着する筒状のケーシングと、ロータと軸受との間に設けてロータの基端を振動子の先端に押圧させる付勢体とを備え、振動子の振動にともなってロータを軸線方向に回転させる超音波モータとしたことによって、小型の超音波モータを精度よく形成できる。
【0012】
特に、本発明の超音波モータでは、一端に軸受を介してロータを回転自在に支持するとともに他端を振動子の基端側に装着する筒状のケーシングを設けていることにより、このケーシングを利用して所定位置への超音波モータの配置を行いやすくすることができ、超音波モータの取扱い性を向上させることができる。
【0013】
さらに、ロータの基端には、振動子側に向けて拡開状としたテーパ面を設け、このテーパ面に振動子の先端縁を当接させたことによって出力トルクを増大させることができ、小型でありながら高トルク出力の超音波モータとすることができる。
【0014】
また、ロータの基端に設けられたテーパ面の内側に振動子の中空部に挿入する挿入体を設けた場合には、筒状とした振動子の軸線上にロータの回転軸を容易に配置でき、ロータを容易に適正位置に配置できる。
【0015】
また、挿入体は振動子側に向けて突出した円錐体として、この円錐体の周面に振動子における中空部の先端縁を当接させた場合には、振動子先端の回転運動を、ロータ基端のテーパ面と円錐体の周面とで受けることができ、出力トルクをさらに増大させることができる。
【0016】
特に、テーパ面と振動子の外周面とのなす角と、円錐体の周面と振動子の内周面とのなす角を同じ角度とすることによって、振動子とテーパ面との接触状態と、及び振動子と円錐体の周面との接触状態とが可及的に等しくなるようにすることができ、いずれか一方に偏って振動子とロータ基端とが接触することを抑制できるので、ロータを効率よく回転させることができる。
【0017】
また、振動子の内周面には、圧電体よりも高硬度とした筒状の芯材を設け、この芯材の振動子における先端側の端部を振動子の先端から突出させて突出端部とし、この突出端部における外周面の先端縁をテーパ面に当接させた場合には、ロータの基端部が太径となることを防止でき、さらに小型化された超音波モータとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る超音波モータの分解組立図である。
【図2】図2は本発明の実施形態に係る超音波モータの縦断面図である。
【図3】図3は図2のX-X断面図である。
【図4】図4は本発明の実施形態に係る超音波モータが装着される基板の説明図である。
【図5】図5は変容例の超音波モータの要部説明図である。
【図6】図6は参考例の超音波モータの要部説明図である。
【図7】図7は変容例の超音波モータの要部説明図である。
【図8】図8は変容例の超音波モータの要部説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10 振動子
11 振動部
12 台座部
13 中空部
14-1 第1電極
14-2 第2電極
14-3 第3電極
14-4 第4電極
14-5 内部電極
20 ロータ
21 当接部
22 テーパ面
23 挿入体
30 ケーシング
31 軸受
32 コイルバネ
33 挿通孔
34 軸受支持壁
35 環状凹部
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の超音波モータは、図1の分解組立図、及び図2の縦断面図に示すように、筒状とした圧電体で構成した振動子10と、この振動子10の先端に基端を当接させながら振動子10の軸線上に配置した棒状のロータ20と、一端に軸受31を介してロータ20を回転自在に軸支するとともに他端を振動子10の基端側に装着可能とした筒状のケーシング30と、ロータ20と軸受31との間に設けてロータ20の基端を振動子10の先端に押圧させる付勢体であるコイルバネ32とで構成している。
【0021】
振動子10は、本実施形態では所定の内径の空洞部を有する円筒状としたチタン酸ジルコン酸鉛製セラミックスで構成している。特に、本実施形態では、振動子10は、最初に、直径1.3mm、長さ3.4mmとした円柱状のチタン酸ジルコン酸鉛製セラミックスである円柱基体とし、この円柱基体の一方の端部側を直径0.8mm、長さ2.2mmの円柱状に研削して円柱基体に細径の振動部11を形成し、次いで、円柱基体の中心軸に沿って内径0.4mmの貫通孔を穿設して中空部13を設けた円筒状としている。振動子10は、細径の振動部11の形成にともなって相対的に太径となった台座部12を有している。
【0022】
その後、振動部11と台座部12とが形成された円筒状のチタン酸ジルコン酸鉛製セラミックスである円筒基体には、めっきなどによって全表面に金属膜を製膜しており、円筒基体の外表面を被覆した金属膜を、円筒基体の周方向に沿って複数に分離している。本実施形態では、円筒基体の外周面において円筒基体の長手方向に沿ってレーザビームを走査させることにより金属膜を分離しており、特に、図2のX-X断面図である図3に示すように、振動子10には、円筒基体の周方向に沿って第1電極14-1と、第2電極14-2と、第3電極14-3と、第4電極14-4の4つの電極を形成している。
【0023】
また、円筒基体の振動部11側の端部である先端の金属膜と、円筒基体の台座部12側の端部である基端の金属膜も除去して、円筒基体の内周面に設けた金属膜と、円筒基体の外周面に設けた第1~4電極14-1~4と電気的に分離させて、円筒基体の内周面に設けた金属膜を内部電極14-5としている。
【0024】
本実施形態では、円筒基体の外周面には、第1~4電極14-1~4の4つの電極を設けているが、電極の数は4つに限定するものではなく、さらに多数の電極を設けてもよい。また、本実施形態では、第1~4電極14-1~4、及び内部電極14-5はニッケル金属膜で構成しているが、ニッケル金属膜以外の導電膜で各電極14-1~5を形成してもよい。さらに、本実施形態では、振動子10をチタン酸ジルコン酸鉛製セラミックスで形成しているが、他の圧電材料で形成してもよい。
【0025】
ロータ20は、本実施形態では、所定の径寸法を有するSUS製の円柱体で構成し、一端の端部を基端として、振動子10の先端に当接させる当接部21を設けている。
【0026】
当接部21は、振動子10の振動部の径寸法よりも大きくした径寸法を有する円柱体とし、この円柱体の振動子10側の底面には、図1に一部切欠させて示すように、振動子10側に向けて拡開したすり鉢状のテーパ面22を設けている。ロータ20は、このテーパ面22において、図2に示すように、振動子10の振動部11における外周面の端縁と当接するようにしている。
【0027】
さらに、当接部21における振動子10側の底面には、テーパ面22の内側に、円筒状の振動子10の中空部13に挿入する挿入体23を設けている。
【0028】
しかも、挿入体23は、振動子10側に向けて突出させた円錐体とし、この円錐体の周面24において、図2に示すように、振動子10の振動部11における中空部13の端縁と当接するようにしている。
【0029】
特に、円錐体の周面24と振動子10の内周面とのなす角は、テーパ面22と振動子10の外周面とのなす角と同じ角度としている。
【0030】
このように、円錐体の周面24と振動子10の内周面とのなす角と、テーパ面22と振動子10の外周面とのなす角を同じ角度とすることにより、円錐体の周面24とテーパ面22とがそれぞれ振動子10と当接する際に、一方が他方よりも強く当接することを抑制して、ほぼ同等の当接状態とすることができる。
【0031】
ロータ20に装着する軸受31は、本実施形態では四フッ化エチレン樹脂製の円筒体で構成し、円筒体とした軸受31の中空部31aにロータ20を挿通させて軸受31をロータ20に装着している。
【0032】
四フッ化エチレン樹脂製の軸受31は、表面の摩擦抵抗が小さいことによって、軸受31を介してロータ20を円滑に回転させることができ、軸受31として機能させることができる。
【0033】
軸受31にロータ20を挿通させる前に、ロータ20は円筒状となったコイルバネ32に挿通させ、その後、ロータ20を軸受31に挿通させており、図2に示すように、ロータ20の当接部と軸受31との間でコイルバネ32を挟持状態に保持し、コイルバネ32の付勢によってロータ20の基端の当接部21を振動子10の先端に押圧させている。本実施形態では、小型が容易なためにコイルバネ32を用いているが、弾性体であれば何を用いてもよく、コイルバネ32の代わりに皿バネや、円筒状としたゴムチューブなどを用いることもできる。
【0034】
ケーシング30は、本実施形態ではガラス製の円筒体としており、一方の端部にはロータ20を挿通させる挿通孔33を設けた軸受支持壁34を備え、他方の端部には内周面に環状凹部35を備え、環状凹部35に振動子10の台座部12を嵌挿可能としている。本実施形態では、ケーシング30は、外径1.8mm、内径1.0mm、長さ5.8mmとしており、環状凹部35部分の内径は1.3mmとしている。
【0035】
ケーシング30は、ガラス製に限定するものではなく、以下の条件を満たすものであれば何であってもよい。
(1)振動子10に生じさせた撓み振動でケーシング30に撓みが生じて、目的とする撓み振動モードの減殺を生じさせないこと。
(2)振動子10と電気的に絶縁されていること。
(3)軽量であること。すなわち、密度が小さいこと。
【0036】
なお、ケーシング30の材料特定にあたっては、12種類の材料について有限要素法によるモーダル解析を行った。その結果を表1に示す。同表中、ヤング率、ポアソン比、及び密度は、「理科年表」(国立天文台編)によるものである。また、モーダル解析結果は、ケーシング30の最大変位を振動部先端の変位で割った値としている。同表の判定欄はモーダル解析結果が設計条件、即ち、振動モードの条件に合うかどうかを示し、同結果が0.2未満のものを○、0.2以上0.4未満のものを△、0.4以上のものを×としており、○が最も好ましく、△、×の順に悪化する。
【0037】
【表1】
JP0005039974B2_000002t.gif

【0038】
モーダル解析の結果、ケーシング30は、ヤング率が約3N/m2以上の材料であることが好ましく、望ましくは約5N/m2以上であった。ヤング率が約5N/m2より小さいほど、振動子10の撓み振動に共振してケーシング30が振動し、撓み振動による駆動力が減殺されるとともに、ケーシング30を介して振動の伝播が生じるおそれがあった。この場合、ポアソン比の大小とは相関が見られず、絶縁性の材料についてのみ比較をすると石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスについては上記した条件を満たしていた。
【0039】
ケーシング30に生じた振動は、ケーシング30の弾性変形であることから、各材料について、ヤング率を密度で割った値により比較を行った結果を表2に示す。表2では、表1に示した材料と同じものについて、ヤング率を密度で割った値について降順に並べている。絶縁性の材料について比較を行うと、表1と同様の結果が得られる。しかし、金属材料も含めて比較を行った場合には、ヤング率を密度で割った値で条件を満たすかどうか判断できるとはいえない。
【0040】
【表2】
JP0005039974B2_000003t.gif

【0041】
超音波モータでは、コイルバネ32及び軸受31を順次装着したロータ20をケーシング30内に挿入し、ロータ20の先端をケーシング30の軸受支持壁34に設けた挿通孔33に挿通させ、さらに、ケーシング30内に振動子10を挿入してケーシング30の環状凹部35を振動子10の台座部12に嵌着して一体化している。超音波モータでは、ケーシング30から突出させたロータ20の先端を出力軸している。
【0042】
ロータ20の基端に設けた当接部21には、振動子10側に向けて拡開したすり鉢状のテーパ面22を設けていることにより、ロータ20を振動子10の軸線上に容易に配置することができる。
【0043】
さらに、テーパ面22の内側に振動子10の中空部13に挿入する挿入体23を設けた場合には、この挿入体23によってロータ20が振動子10の規制を受けることにより、振動子10の軸線上にロータ20を配置させやすくすることができる。
【0044】
ケーシング30は、振動子10への嵌着によって装着を行っていることにより、極めて容易にケーシング30の装着を行うことができ、極めて微小な超音波モータを精度よく形成することができる。
【0045】
ケーシング30を振動子10に嵌着する際には、ケーシング30が嵌着された振動子10の台座部12が全てケーシング30で被覆されるのではなく、図2に示すように、台座部12の下端はケーシング30で被覆されないように台座部12の長さまたは環状凹部35の長さを設定している。
【0046】
このように、台座部12の下端はケーシング30から露出させて、露出した第1~4電極14-1~4を外部接続端子としている。
【0047】
そして、例えば図4に示すように、超音波モータが立設される基板40には、第1電極14-1と電気的に接続する第1基板電極40-1と、第2電極14-2と電気的に接続する第2基板電極40-2と、第3電極14-3と電気的に接続する第3基板電極40-3と、第4電極14-4と電気的に接続する第4基板電極40-4を輪状に設けている。
【0048】
超音波モータを基板40に立設する場合には、第1~4基板電極40-1~4にそれぞれ半田ペーストを塗布し、次いで、第1基板電極40-1上に第1電極14-1を、第2基板電極40-2上に第2電極14-2を、第3基板電極40-3上に第3電極14-3を、第4基板電極40-4上に第4電極14-4を配置して、半田ペーストの半田をリフローさせて電気的に導通可能としている。
【0049】
なお、超音波モータは基板40に直接的に立設させる場合だけでなく、基板40上に適宜のソケット(図示せず)を設けて、このソケットに装着してもよい。
【0050】
本実施形態では、第1基板電極40-1にはV0sinωtの電位信号を、第2基板電極40-2には-V0cosωtの電位信号を、第3基板電極40-3には-V0sinωtの電位信号を、第4基板電極40-4にはV0cosωtの電位信号を入力している。なお、内部電極14-5は、第1~4基板電極40-1~4への電圧印加にともなって、等価的に0Vとなっている。
【0051】
それぞれの電位信号は、第1~4基板電極40-1~4を介して第1~4電極14-1~4に入力され、第1~4電極14-1~4では各電位信号に基づく電位が印加されることによって、振動子10に物理的な変形を生じさせることができる。
【0052】
特に、振動子10には、基板40に接続された基端側を厚肉の台座部12とし、先端側を薄肉の振動部11としていることによって、振動子10では、基端に対して先端を軸線回りの円形軌道に沿ってω/2πの周波数で回転させる撓み振動を生じさせることができる。
【0053】
ロータ20は、コイルバネ32の付勢によって当接部21を振動子10の先端に押圧されており、振動子10の先端の撓み振動にともなって、撓み振動の回転方向と逆方向に回転し、所定のトルクの出力を得ることができる。
【0054】
ロータ20基端の当接部21には、図1及び図2に示すようにテーパ面22と円錐体状の挿入体23を設けるのではなく、図5に示すように、テーパ面22のみを設けてもロータ20を十分に回転させることができる。
【0055】
このように、当接部21にテーパ面22のみを設けた場合には、円錐体状の挿入体23を設けない分だけロータ20を小型化しやすく、超音波モータをさらに小型化すべく振動子10、ロータ20、ケーシング30、軸受31、コイルバネ32をそれぞれスケールダウンした際にも、テーパ面22を精度よく形成することができるので、当接部21を振動子10に確実に当接させて所望の出力を得ることができる。
【0056】
なお、図6に示すように、ロータ20基端の当接部21には、円錐体状の挿入体23のみを設けてもよい。
【0057】
ただし、円錐体状の挿入体23を介してロータ20を回転駆動させる場合には、ロータ20をケーシング30に正しく組み付けやすい一方で、大きな出力トルクが得られない傾向があった。
【0058】
すなわち、V0=25V、コイルバネ32のバネ定数を0.01N/mmとして、このコイルバネ32でロータ20に5mNの予圧を与えた状態でのロータ20の起動トルクを測定したこところ、図5に示すように、ロータ20基端の当接部21に円錐体状の挿入体23のみを設けた場合には、0.61μNmであったのに対して、図5に示すように、ロータ20基端の当接部21にテーパ面22のみを設けた場合には、1.0μNmであった。
【0059】
テーパ面22は、振動子10が最も大きく撓む振動子10の先端外周縁と当接していることによって、振動子10の先端外周縁とテーパ面22との接触部分の単位時間当たりの変位量を大きくすることができるので、起動トルクを向上させることができているものと思われる。
【0060】
さらに、図1及び図2に示すように、ロータ20基端の当接部21にテーパ面22と、円錐体状の挿入体23とを設けて、振動子10の先端外周縁をテーパ面22に当接させるとともに、振動子10の中空部13の先端内周縁を挿入体23の円錐体の周面24に当接させた場合には、起動トルクは1.7μNmであった。
【0061】
この場合には、ロータ20と振動子10とが2箇所で接触していることにより、ロータ20により大きな起動トルクを生じさせることができているものと思われる。
【0062】
なお、テーパ面22は、振動子10における振動部11の外周面となす角が30~60°となるようにして当接させることが望ましく、また、挿入体23における円錐体の周面24は、振動子10における中空部13の内周面となす角が30~60°となるようにして当接させることが望ましい。
【0063】
なお、30°よりも小さくした場合には、ロータ20基端の当接部21の大きさが長さ方向に大きくなりやすく、当接部21の重量が増大することによりロータ20が回転しにくくなって、ロータ20から出力される回転量が低下するおそれがある。
【0064】
一方、60°よりも大きくした場合には、テーパ面22及び周面24での振動子10端縁の滑りが生じるおそれがあり、振動子10の撓み振動をロータ20の回転運動に変換する変換効率が低下するおそれがある。
【0065】
さらに、前述したように、円錐体の周面24と振動子10における中空部13の内周面とのなす角と、テーパ面22と振動子10における振動部11の外周面とのなす角を同じ角度としておくことにより、円錐体の周面24とテーパ面22とがそれぞれ振動子10と当接する際にそれぞれ同等の当接状態とすることができ、ロータ20を円滑に回転させることができるので、効率よくトルクを取り出すことができる。
【0066】
なお、円錐体の周面24と振動子10における中空部13の内周面とのなす角、及びテーパ面22と振動子10における振動部11の外周面とのなす角は、それぞれ40~50°程度が最も望ましい。
【0067】
本実施形態では、ロータ20基端の当接部21には、円錐体状の挿入体23を設けているが、挿入体23は円錐体形状に限定するものではなく、例えば、図7に示すように、半球体状に形成してもよく、適宜の形状としてよい。
【0068】
また、変容例として、図8に示すように、筒状とした振動子10の内周面には、振動子10を構成する圧電体よりも高強度とした筒状の芯材15を設け、しかも、芯材15は振動子10の先端よりもロータ20側に突出させて設けて、振動子10から突出した芯材15の突出部分を突出端部15'とし、この突出端部15'部分にロータ20を当接させてもよい。
【0069】
特に、突出端部15'の外周面の先端縁を前記テーパ面に当接させることにより、ロータ20の当接部21を小径とすることができるので、ロータ20を小型化しやすくすることができ、超音波モータのさらなる小型化を可能とすることができる。
【0070】
芯材15には、アルミナセラミックスや窒化珪素セラミックスなどの構造用セラミックスなどを用いることができる。なお、芯材15は、筒状とした振動子10の内周面に設ける場合だけでなく、外周面に設けてもよい。この場合、振動子10は、台座部12を振動部11寄りも必ずしも太径に形成する必要はなく、振動子10を囲繞する構造用セラミックスに所要の台座部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
小型で高出力の超音波モータを提供できるので、カメラにおけるレンズの位置制御だけでなく、時計などの民生用電気機器製品における鼓動装置や、内視鏡手術などに関連した小型化が必要な医療機器の駆動装置、さらには産業用製造機械の駆動装置、あるいはマイクロロボット用駆動アクチュエータとして利用できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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