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明細書 :トランスデューサ及びこのトランスデューサを備えた計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734657号 (P4734657)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
発明の名称または考案の名称 トランスデューサ及びこのトランスデューサを備えた計測装置
国際特許分類 G01H  11/08        (2006.01)
G01H  13/00        (2006.01)
FI G01H 11/08 D
G01H 13/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2007-521368 (P2007-521368)
出願日 平成18年6月16日(2006.6.16)
国際出願番号 PCT/JP2006/312179
国際公開番号 WO2006/135067
国際公開日 平成18年12月21日(2006.12.21)
優先権出願番号 2005176856
優先日 平成17年6月16日(2005.6.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年4月24日(2009.4.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】米田 明
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】秋田 将行
参考文献・文献 特開昭56-114500(JP,A)
特開平6-308104(JP,A)
特開平8-237796(JP,A)
特開平8-292179(JP,A)
特表平9-508242(JP,A)
特開平10-104387(JP,A)
特開2000-287298(JP,A)
調査した分野 G01H 11/00-11/16
G01H 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
薄膜状とした電極と、
前記電極が一方の端部に装着されるとともに、前記電極と電気的に接続された筒状のケーシングと、
前記ケーシングの内側に面した前記電極の側面に装着した水晶、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、ニオブ酸リチウム、メタニオブ酸鉛、ロッシェル塩、酒石酸エチレンディアミン、酒石酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、タングステンブロンズ系結晶、タンタル酸リシウム、ポリフッ化ビニリデン、酸化亜鉛のいずれか1種からなる薄膜状の圧電体と、
前記ケーシングに挿入して先端を前記圧電体の側面に当接させた導線と、
前記導線が挿入された前記ケーシング内に液体状態で充填した後に硬化させた絶縁材と
からなるトランスデューサであって、
前記ケーシングを導線として、前記導線とともに同軸ケーブル状として前記圧電体に接続したトランスデューサ。
【請求項2】
前記圧電体は、厚み寸法を0.02mm以下とし、
前記導線は、Q値が100以下の金属製または合金製の線状体であって、径寸法を0.5mm以下とし
前記電極は、Q値が500以上の金属製または合金製の薄膜であって、膜厚寸法を0.01mm以下とし、
前記ケーシングは、径寸法を1.0mm以下とした
ことを特徴とする請求項1記載のトランスデューサ。
【請求項3】
2つの請求項1または請求項2に記載のトランスデューサと、
一方の前記トランスデューサに接続した発信器と、
他方の前記トランスデューサに接続するとともに前記発信器に接続したロックインアンプと、
前記発信器と前記ロックインアンプに接続した制御部と
を備え、
2つの前記トランスデューサで挟持した被測定体の共振周波数を計測するトランスデューサを備えた計測装置
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な試料における弾性定数などの物性値を計測するために用いるトランスデューサ、及びこのトランスデューサを備えた計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、合金、セラミックスなどの焼結体、あるいは合成樹脂材などの各種の材料では、その弾性定数や圧電定数などの物性値があらかじめ計測されており、所望の物性値を有する材料を目的に応じて選択可能となっている。
【0003】
しかし、研究室などにおいて各種の材料研究あるいは物性研究などを行っている場合には、物性値が未知の新材料が生成あるいは発見されており、この新材料の特性を知るために物性値の計測が必要となっている。
【0004】
このような物性値の一つである弾性定数や圧電定数を計測する際には、トランスデューサを用いた共振法による計測装置が利用されている。
【0005】
すなわち、トランスデューサは計測対象の試料に当接させる圧電体を備えており、この圧電体によって試料に所要の振動を入力するとともに、試料に入力した振動に対して生じた共振を別のトランスデューサで検出し、解析手段によって解析することにより所望の物性値を計測しているものであり、得られた物性値から試料の種類の特定までも行うことができる識別システムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
ここで、圧電体には、一般的にセラミック圧電体が用いられている。
【特許文献1】
特表2001-523332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の計測装置では、トランスデューサの圧電体にセラミック圧電体を用いていることによって、物性値の計測が可能な試料のサイズに制限が生じ、サイズが比較的小さい試料での計測が不可能であるという問題があった。
[0008]
すなわち、共振法を用いた計測における共振周波数は、計測される試料のサイズと反比例の関係があり、さらに、セラミック圧電体では、その厚み寸法を所定の厚み寸法よりも薄くした場合に性能低下を生じるので所定の厚み寸法以下にはできず、この厚み寸法条件からセラミック圧電体によって出力可能な周波数としては20MHz程度が上限となっていることから、計測可能な試料は少なくとも1mm程度以上の大きさが必要であるいう問題があった。
[0009]
本発明者は、地球内部における超高圧相の鉱物の研究を行っており、この超高圧相の鉱物からなる単結晶の物性値の計測する必要があるものの、このような単結晶においては数百μm程度のサイズの試料までしか作成することができないため、従来の計側装置では物性値を精度よく計測することができなかった。
[0010]
そこで、本発明者は、研究対象である超高圧相鉱物の単結晶のような1mmよりも小さいサイズの試料でも物性値を計測可能とするために研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトランスデューサでは、薄膜状とした電極と、電極が一方の端部に装着されるとともに、電極と電気的に接続された筒状のケーシングと、ーシングの内側に面した電極の側面に装着した水晶、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、ニオブ酸リチウム、メタニオブ酸鉛、ロッシェル塩、酒石酸エチレンディアミン、酒石酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、タングステンブロンズ系結晶、タンタル酸リシウム、ポリフッ化ビニリデン、酸化亜鉛のいずれか1種からなる薄膜状の圧電体と、ケーシングに挿入して先端を圧電体の側面に当接させた導線と、導線が挿入されたケーシング内に液体状態で充填した後に硬化させた絶縁材とからなるトランスデューサであって、ケーシングを導線として、ケーシングに挿入した導線とともに同軸ケーブル状として圧電体に接続した
【0012】
さらに、圧電体は、厚み寸法を0.02mm以下とし、導線、Q値が100以下の金属製または合金製の線状体であって、径寸法を0.5mm以下とし電極、Q値が500以上の金属製または合金製の薄膜であって、膜厚寸法を0.01mm以下とし、ケーシングは、径寸法を1.0mm以下とした
【0013】
本発明のトランスデューサを備えた計測装置では、2つの上記トランスデューサと、一方のトランスデューサに接続した発信器と、他方のトランスデューサに接続するとともに発信器に接続したロックインアンプと、発信器とロックインアンプに接続した制御部とを備え、2つのトランスデューサで挟持した被測定体の共振周波数を計測することとした。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、ケーシングを導線として、ケーシングに挿入した導線とともに同軸ケーブル状として圧電体に接続したことによって、ケーシングによる共振の影響を抑制でき、精度のよい振動の励起または検出を可能とすることができる。
【0015】
しかも、請求項1記載のトランスデューサでは、圧電体を、水晶、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、ニオブ酸リチウム、メタニオブ酸鉛、ロッシェル塩、酒石酸エチレンディアミン、酒石酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、タングステンブロンズ系結晶、タンタル酸リシウム、ポリフッ化ビニリデン、酸化亜鉛のいずれか1種としたことによって、圧電体を薄型化できるので圧電体自体による試料測定周波数帯における共振の発生を抑制でき
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載のトランスデューサにおいて、圧電体は、厚み寸法を0.02mm以下とすることにより精度よくより高周波の振動を励起または検出することができ、しかも、導線、Q値が100以下の金属製または合金製の線状体であって、径寸法を0.5mm以下とし、電極はQ値が500以上の金属製または合金製の薄膜であって、膜厚寸法を0.01mm以下とし、ケーシングは、径寸法を1.0mm以下とすることにより、導線において共振が生じることを抑制するとともに、導線が圧電体の振動を阻害することを抑制でき、より精度のよい振動の励起または検出を可能とすることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、2つの請求項1または請求項2に記載のトランスデューサと、一方のトランスデューサに接続した発信器と、他方のトランスデューサに接続するとともに発信器に接続したロックインアンプと、発信器とロックインアンプに接続した制御部とを備え、2つのトランスデューサで挟持した被測定体の共振周波数を計測する計測装置としたことによって、トランスデューサでは試料以外の共振の影響を抑制しながら精度のよい振動の励起または検出が可能であり、1mm以下の試料の弾性定数や圧電定数など物性値を計測可能な計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
[0019]
[図1]図1は本発明の実施形態に係る計測装置の概略構成図である。
[図2]図2は本発明の実施形態に係るトランスデューサの概略構成図である。
[図3]被測定体に加えた荷重の計測に用いるセミリジッド同軸ケーブルの説明図である。
符号の説明
[0020]
S 被測定体
11 発振器
12 励起側トランスデューサ
13 検出側トランスデューサ
14 ロックインアンプ
15 制御部
21 圧電体
22 導線
23 電極
24 ケーシング
25 絶縁材
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のトランスデューサ及びこのトランスデューサを備えた計測装置では、トランスデューサを、一方の端部に薄膜状の電極を装着した筒状のケーシングと、このケーシングの内側に面した電極の側面に装着した薄膜状の圧電体と、ケーシングに同軸状に挿入して圧電体に接続した導線と、ケーシング内に充填した絶縁材とで構成しているものである。
【0022】
このように、ケーシングと導線とを同軸状に配置して、導線をケーシングの一方の端部部分に設けた圧電体に接続することにより、ケーシングによる共振の影響を抑制でき、精度のよい振動の励起または検出を可能とすることができる。
【0023】
さらに、圧電体は、水晶(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、メタニオブ酸鉛(PbNb2O6)、ロッシェル塩(NaKC4H4O6・4H2O)、酒石酸エチレンディアミン(C6H14N2O6)、酒石酸カリウム(2(K2C4H4O6)・H2O)、第2リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)、タングステンブロンズ系結晶(NaxWO3)、タンタル酸リシウム(LiTaO3)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれか1種とすることにより圧電体を薄型化できるので圧電体自体による試料測定周波数帯における共振の発生を抑制でき、特に、圧電体の厚み寸法を0.1mm以下とすることにより高周波の振動を励起または検出することができ、1mm以下の試料の弾性定数や圧電定数など物性値を計測可能とすることができる。
【0024】
なお、圧電体は、上記の材料で構成する場合に限定されるものではなく、上記の材料の代替品となり得る単結晶または多結晶若しくはアモルファスの圧電体であれば何であってもよい。
【0025】
また、導線をQ値が100以下の金属製または合金製の線状体で構成した場合には、導線において共振が生じることを抑制でき、さらに、導線の径寸法を1.0mm以下とした場合には、圧電体に接続した導線の圧電体との接触面を小さくできることによって、導線が圧電体の振動を阻害することを抑制して、トランスデューサによる振動の励起の精度、または振動の検出の精度をさらに向上させることができる。
【0026】
また、電極をQ値が500以上の金属製または合金製の薄膜とし、膜厚寸法を0.01mm以下とした場合には、圧電体で生成した振動、または圧電体に伝達させる振動の電極による減衰を抑制できるので、トランスデューサの性能向上を図ることができる。
【0027】
ここで、Q値とは、弾性波の伝播において媒質による弾性波のエネルギー吸収の程度を示す指数であって、Q値が大きければ弾性波のエネルギー吸収が少なく、少ない損失で弾性波を伝搬させることができ、Q値が小さければ弾性波のエネルギー吸収が大きく、比較的短距離の伝播で弾性波を大きく減衰させることができる。
【0028】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態をさらに詳説する。図1は、本実施形態の計測装置の概略構成図である。
【0029】
本実施形態の計測装置は、所要の周波数とした電気信号を出力する発振器11と、この発振器11から出力された電気信号が入力される励起側トランスデューサ12と、この励起側トランスデューサ12と対向させて配置して被測定体Sを通過した振動を検出する検出側トランスデューサ13と、この検出側トランスデューサ13から出力された電気信号と発振器11から出力された電気信号とが入力されるロックインアンプ14と、このロックインアンプ14において増幅処理された信号を解析する制御部15とから構成している。
【0030】
本実施形態では、制御部15は発振器11の出力制御も行っており、発振器11から出力される電気信号の周波数を順次変えながら計測を行うことにより共鳴周波数の自動的な検出を可能としている。
【0031】
ロックインアンプ14は、所望の周波数となっている振動の検出精度を高めるために用いており、所望の周波数となっている振動の電気信号のみを増幅して出力し、この出力信号を制御部15で解析している。
【0032】
制御部15は、本実施形態ではパーソナルコンピュータで構成しており、このパーソナルコンピュータのハードディスクには計測プログラムを記憶させており、この計測プログラムを起動させることにより計測プログラムに基づいて発振器11を制御するとともに、ロックインアンプ14の出力信号の解析を行って、弾性定数や圧電定数など物性値を算出している。
【0033】
励起側トランスデューサ12及び検出側トランスデューサ13は、以下のように構成している。すなわち、図2に示すように、各トランスデューサ12,13は、一方の端部に薄膜状の電極23を装着した筒状のケーシング24と、このケーシング24の内側に面した電極23の側面に装着した薄膜状の圧電体21と、ケーシング24に同軸状に挿入して圧電体21に接続した導線22と、ケーシング24内に充填した絶縁材25とによって構成している。
【0034】
特に、電極23はケーシング24の一方の端部部分に装着して、ケーシング24の端部に設けた開口を閉塞しており、ケーシング24を電極23で有底筒形状としている。
【0035】
圧電体21は、本実施形態では、厚み寸法を0.1mm以下とした薄膜状のニオブ酸リチウム(LiNbO3)で構成している。以下において、この薄膜状としたニオブ酸リチウムを単に「LiNbO3」と表記する。このLiNbO3は、所定厚みの板状のLiNbO3を研磨して厚み寸法を0.1mm以下としているものであり、好ましくは0.05mm以下であって、特に本実施形態では0.02mmとしている。このようにLiNbO3をできるだけ薄く形成することにより圧電体21自体の共振の発生を抑制でき、精度のよい振動の励起または検出を可能とすることができる。
【0036】
本実施形態では、LiNbO3は単結晶LiNbO3のY-10°カットの平板状とした結晶体を研磨して所定厚みとしたものを用いており、Y-10°カットからなる結晶体を用いることによって、高周波縦波振動と横波振動を同時に励起または検出することができるので、高性能なトランスデューサとすることができる。なお、LiNbO3は、研磨によって形成する場合に限定するものではなく、例えば蒸着によって形成してもよい。
【0037】
また、圧電体21としては、LiNbO3だけでなく、水晶(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、メタニオブ酸鉛(PbNb2O6)、ロッシェル塩(NaKC4H4O6・4H2O)、酒石酸エチレンディアミン(C6H14N2O6)、酒石酸カリウム(2(K2C4H4O6)・H2O)、第2リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)、タングステンブロンズ系結晶(NaxWO3)、タンタル酸リシウム(LiTaO3)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれか1種を厚み寸法0.1mm以下の薄膜状として用いてもよく、さらにはこれら以外の圧電材料を用いてもよい。
【0038】
導線22は、Q値が100以下の金属製または合金製などの共振を生じにくい線材を用いることが望ましく、しかも導線22は径寸法を1.0mm以下の線材として、径寸法をできるだけ小さくすることが望ましい。このように、Q値が小さいとともに径寸法が小さい導線22を用いることによって、導線22自体の固有振動に基づく共振が発生することを抑制できるとともに、圧電体21に接続した導線22の圧電体21との接触面積を小さくして導線22によって圧電体21の振動を阻害することを防止できる。
【0039】
導線22の圧電体21への接続は、導線22の先端を圧電体21であるLiNbO3に当接させて、有底筒形状としたケーシング24の内部に液体状態の絶縁材25を注入して、この絶縁材25を硬化させることにより絶縁材25によって導線22の圧電体21への接続状態を保持させることによって行っている。
【0040】
本実施形態では、導線22にはφ0.5mmとした鉛線を用いており、可能であれば径寸法をさらに小さくすることが望ましい。
【0041】
電極23は、Q値が500以上の金属製または合金製などの薄膜で構成しており、特に、電極23は、100MHz程度の高周波領域において音波減衰の少なく、電極23自体の固有振動に基づく共振の発生が抑制された材料を用いることが望ましい。さらに、電極23は、膜厚寸法を0.01mm以下の薄膜としており、膜厚寸法はできるだけ小さくすることによって電極23において共振が発生することを抑制している。
【0042】
電極23と圧電体21とは、圧電体21を電極23に圧着させることにより接合させており、圧電体21の電極23への圧着後、電極23をケーシング24の一方の端部部分に装着している。
【0043】
電極23のケーシング24への装着も圧着によって行っており、ケーシング24への圧着後、有底筒形状としたケーシング24の内部に液体状態の絶縁材25を注入することにより、この絶縁材25によって、電極23をケーシング24の端部に保持している。電極23をケーシング24に装着する場合には、電極23に圧着した圧電体21がケーシング24の内部に位置するようにして装着している。
【0044】
なお、電極23への圧電体21の圧着後、圧電体21の研磨、あるいは電極23の研磨を行って、圧電体21のさらなる薄膜化、あるいは電極23のさらなる薄膜化を行ってもよい。特に、圧電体21は電極23に装着して研磨を行うことにより、研磨作業を行いやすくすることができる。または、圧電体21は、電極23に直接的に所要の原子または分子を蒸着させて形成してもよい。
【0045】
本実施形態では、電極23には0.005mmとしたチタニウム箔を用いており、可能であれば膜厚寸法をさらに小さくすることが望ましい。
【0046】
なお、電極23はチタニウム箔に限定するものではなく、アルミニウム、ジュラルミン、タングステンカーバイトなどで構成した薄膜であってもよいが、本実施形態では、耐久性と入手容易性からチタニウム箔を選択している。
【0047】
ケーシング24は、音波減衰の比較的大きい材料で構成して共振の発生を抑制することが望ましく、本実施形態ではステンレス製としている。特にケーシング24をステンレスで構成することにより、ケーシング24の一端に取り付けた電極23と電気的に接続することが可能であり、ケーシング24自体を電極23に接続した導線として利用することができる。
【0048】
筒状としたケーシング24は、被測定体Sである試料のサイズが1mmよりも小さいので、径寸法をできるだけ小さくすることによって励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とで被測定体Sを確実に挟持可能とすることができるので、本実施形態では、ケーシング24の径寸法はφ1.0mmとしている。
【0049】
特に、ケーシング24は径寸法をできるだけ小さくすることによって先端部に装着した電極23を小面積とすることができるので、被測定体Sに対してコヒーレントな振動を入力することができ、計測精度を向上させることができる。
【0050】
ケーシング24に充填する絶縁材25は、音波減衰の比較的大きい材料を用いて共振の発生を抑制することが望ましく、本実施形態ではエポキシを用いている。なお絶縁材25はエポキシに限定するものではなく、音波減衰の比較的大きい絶縁性材料であれば何であってもよい。
【0051】
このように各トランスデューサ12,13を同軸ケーブル状に構成することによって、導線22における高周波の電気信号の伝播において、電気信号の減衰を抑制し、かつ外部ノイズである電極23、ケーシング24、導線22の共振振動の影響を抑制しやすくすることができる。
【0052】
特に、各トランスデューサ12,13では、圧電体21の近傍にインピーダンス変換器を介設することによってS/N比を向上させることができ、測定能力の向上を図ることができる。
【0053】
このように構成した各トランスデューサ12,13は、それぞれ図示しないコネクタを介して発振器11、ロックインアンプ14に接続している。
【0054】
しかも、図1に示すように、本実施形態では、励起側トランスデューサ12は被測定体Sの下側に配置して、励起側トランスデューサ12で被測定体Sを支持するとともに、検出側トランスデューサ13は被測定体Sの上側に配置している。
【0055】
さらに、検出側トランスデューサ13は図示しないXYZステージに装着してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向にいずれも移動自在として、検出側トランスデューサ13を励起側トランスデューサ12側に降下させて被測定体Sを検出側トランスデューサ13と励起側トランスデューサ12とで挟持可能としている。
【0056】
このように構成した計測装置での計測方法について簡単に説明する。まず、計測装置では、検出側トランスデューサ13をXYZステージで上昇させて励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とを所定の間隔だけ離隔させた状態で、制御部15の制御により発振器11から所要の周波数の電気信号を順次出力してバックグラウンドを検出する。検出したバックグランド情報は制御部15で記憶している。
【0057】
次いで、計測装置では、電極23を上方に向けて配置した励起側トランスデューサ12上部の電極23に被測定体Sを載置し、XYZステージで検出側トランスデューサ13を降下させ、励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とで被測定体Sを挟んで固定する。
【0058】
このとき、特に検出側トランスデューサ13には、図3に示すようにセミリジッド同軸ケーブル30を接続し、後述するように、このセミリジッド同軸ケーブル30における歪量の計測から励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とで被測定体Sを挟んだ際に被測定体Sに加えられている荷重を計測可能としている。
【0059】
計測装置で計測する共振周波数は、被測定体Sに加えられている荷重によって変化することが知られており、荷重を計測することによって計測装置の計測精度の向上を図ることができる。
【0060】
励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とによる被測定体Sの挟持による固定後、計測装置は発振器11から所要の周波数の電気信号を順次出力して共振周波数の計測を行い、得られた結果に基づいて所要の物性値を算出している。
【0061】
本実施形態の計測装置では、ロックインアンプ14を設けていることにより共振周波数の検出精度を高めており、しかも各トランスデューサ12,13の性能向上が図られていることにより、被測定体Sのサイズが0.2mmよりも小さいものであっても物性値の計測を可能とすることができる。
【0062】
このように構成した計測装置では、前記した超高圧相鉱物の単結晶や焼結体における物性値計測だけでなく、隕石などの宇宙物質や粉体セラミックスなどの微小試料の物性値計測を可能とすることができる。
【0063】
また、本実施形態の計測装置では、被測定体Sの共振周波数を計測することから、既知の被測定体Sにおける内部欠陥の有無の検出も可能であって、1.0mm以下のベアリング球やハンダ球の検査装置として用いることもできる。
【0064】
あるいは、電子天秤における微小物質の質量の計測において共振周波数のズレを利用している場合には、本実施形態の計測装置を用いることによってより微小試料のコンパクトな質量計測センサを提供可能とすることができる。
【0065】
あるいは、温度や湿度で共振周波数に変化が生じることが知られている材料を利用した場合には、この材料の共振周波数を計測することによって温度や湿度を計測することができ、計測装置を小型化することによってコンパクトな温度センサまたは湿度センサを提供可能とすることができる。
【0066】
あるいは、本発明のトランスデューサをアコースティックエミッションセンサとして用いた場合には、より高周波の計測が可能なアコースティックエミッションセンサとすることができ、例えば地球科学分野における地震研究用などの岩石破壊実験において高周波成分の検出を可能として、高精度な研究を可能とすることができる。
【0067】
最後に、前述したセミリジッド同軸ケーブル30における歪量の計測から励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とによって被測定体Sに加えられた荷重を計測する荷重計測方法について説明する。
【0068】
図3に示すように、検出側トランスデューサ13は、セミリジッド同軸ケーブル30に接続するためのコネクタ35を介してセミリジッド同軸ケーブル30に接続している。
【0069】
このセミリジッド同軸ケーブル30は、コネクタ35を接続した先端側を鉛直下方に向けるとともに、所定の中途部で約90°湾曲させてほぼ水平状態とした水平領域36を設けている。検出側トランスデューサ13は、コネクタ35を介してセミリジッド同軸ケーブル30の先端に吊り下げ状態に装着している。図3中、37はセミリジッド同軸ケーブル30の基端を接続したインピーダンス変換器である。
【0070】
そして、セミリジッド同軸ケーブル30の水平領域36には、セミリジッド同軸ケーブル30の下側面に当接させて第1歪みゲージ31と第2歪みゲージ32とを配置し、セミリジッド同軸ケーブル30を挟んで第1歪みゲージ31に対向させて第3歪みゲージ33をセミリジッド同軸ケーブル30の上側面に当接させて配置し、セミリジッド同軸ケーブル30を挟んで第2歪みゲージ32に対向させて第4歪みゲージ34をセミリジッド同軸ケーブル30の上側面に当接させて配置している。
【0071】
第1歪みゲージ31と第2歪みゲージ32は、セミリジッド同軸ケーブル30の水平領域36の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて設けるとともに、第3歪みゲージ33と第4歪みゲージ34は、セミリジッド同軸ケーブル30の水平領域36の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて設けている。
【0072】
第1~4歪みゲージ31,32,33,34は互いにホイートストーンブリッジ接続して、このホイートストーンブリッジ接続からの出力信号を制御部15に入力して、制御部15で荷重換算を行っている。
【0073】
そして、荷重計算を行う場合には、計測装置は、まず、先端に検出側トランスデューサ13が装着され、水平領域36に第1~4歪みゲージ31,32,33,34が装着されたセミリジッド同軸ケーブル30を降下させて、検出側トランスデューサ13を被測定体Sに当接させる。
【0074】
検出側トランスデューサ13の被測定体Sへの当接にともなって、計測装置は、セミリジッド同軸ケーブル30の降下を停止するが、検出側トランスデューサ13が被測定体Sに当接したことを検出するタイミングと、セミリジッド同軸ケーブル30の降下が停止されるタイミングとの時間的なズレにより、セミリジッド同軸ケーブル30は検出側トランスデューサ13が被測定体Sに当接した直後に所定量だけ降下して停止する。
【0075】
この検出側トランスデューサ13が被測定体Sに当接した直後のセミリジッド同軸ケーブル30の降下によって、被測定体Sには所定量の荷重が作用し、このとき、セミリジッド同軸ケーブル30は、被測定体S及び被測定体Sを支持している励起側トランスデューサ12により検出側トランスデューサ13は降下できず、セミリジッド同軸ケーブル30の水平領域36における先端側が反り上がることとなる。
【0076】
この水平領域36のセミリジッド同軸ケーブル30の反り上がりにともなって、第1歪みゲージ31及び第2歪みゲージ32には引張応力が作用するとともに、第3歪みゲージ33及び第4歪みゲージ34には圧縮応力が作用して、この引張応力及び圧縮応力に対応した起電力が生じて出力信号が得られる。制御部15では、この出力信号を解析して荷重換算を行って荷重の計測を行っている。なお、制御部15には、出力信号の電力値と被測定体Sに加わる荷重との換算式をあらかじめ記憶させておき、制御部15ではこの換算式に基づいて荷重を算出している。
【0077】
このように被測定体Sに作用した荷重の計測手段を設けておくことにより、被測定体Sに加えられた荷重を加味した計測を可能とすることができるとともに、励起側トランスデューサ12と検出側トランスデューサ13とで被測定体Sを正確に保持できていることも検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
1mmよりも小さいサイズの試料でも物性値を計測可能な計測装置を提供できる。また、微小な物体の振動を正確に検出できることから、1.0mm以下のベアリング球やハンダ球の欠陥の検出装置、共振周波数のズレを利用した微小な物体の質量の計測装置、共振周波数のズレを利用した温度や湿度を計測装置、あるいはアコースティックエミッションセンサなどを構成できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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