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明細書 :セラミック固相発泡体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5352809号 (P5352809)
登録日 平成25年9月6日(2013.9.6)
発行日 平成25年11月27日(2013.11.27)
発明の名称または考案の名称 セラミック固相発泡体及びその製造方法
国際特許分類 C04B  38/02        (2006.01)
F27D   1/00        (2006.01)
FI C04B 38/02 K
F27D 1/00 N
請求項の数または発明の数 14
全頁数 15
出願番号 特願2007-533269 (P2007-533269)
出願日 平成18年8月30日(2006.8.30)
国際出願番号 PCT/JP2006/317040
国際公開番号 WO2007/026728
国際公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
優先権出願番号 2005248927
優先日 平成17年8月30日(2005.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年7月10日(2009.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】岸本 昭
【氏名】東和田 剛司
【氏名】小幡 真子
個別代理人の代理人 【識別番号】100078662、【弁理士】、【氏名又は名称】津国 肇
【識別番号】100113653、【弁理士】、【氏名又は名称】束田 幸四郎
【識別番号】100116919、【弁理士】、【氏名又は名称】齋藤 房幸
審査官 【審査官】押見 幸雄
参考文献・文献 特開平09-309752(JP,A)
特開昭59-152254(JP,A)
特開平04-219378(JP,A)
特開2003-133663(JP,A)
調査した分野 C04B 38/00-38/10
F27D 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
セラミック固相発泡体であって、セラミック固相発泡体が、緻密な気孔壁からなり、1個の孤島、複数の孤島が均一に分散した孤島状団塊又は連続曲線状にパターニングされた閉気孔を有し、それにより5~60%の気孔率を有する場合でも気体の透過を遮断することを特徴とするセラミック固相発泡体。
【請求項2】
閉気孔の気孔率が30~50%である、請求項記載のセラミック固相発泡体。
【請求項3】
セラミック固相発泡体のマトリックスが、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、チタニア、サイアロン、ムライト及びコーディエライトからなる群から選択される1種以上のセラミックである、請求項1又は2記載のセラミック固相発泡体。
【請求項4】
セラミック固相発泡体のマトリックスが、さらに、イットリア、カルシア、マグネシア及び希土類酸化物からなる群から選択されるセラミックを1種以上含有する、請求項1~のいずれか1項記載のセラミック固相発泡体。
【請求項5】
セラミック固相発泡体のマトリックスが、さらに、シリカ、アルミナ、酸化銅、チタニア、酸化マンガン、マグネシア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、酸化ゲルマニウムからなる群から選択され、マトリックスとは異なる1種以上のセラミックを含有する、請求項1~のいずれか1項記載のセラミック固相発泡体。
【請求項6】
請求項1~記載のセラミック固相発泡体を用いた気密性に富む断熱部品、遮音部品又は電気部品。
【請求項7】
セラミックマトリックス粉末を含むシートを作製し、その上に発泡剤を1個の孤島、複数の孤島が均一に分散した孤島状団塊又は連続曲線状にパターニングして載置し、セラミックス粉末中に発泡剤を内包させる工程、セラミックマトリックス粉末と予備成形又は有機バインダーを使用して固形化させた発泡剤とを一体成形して成型体を得る工程、及び一体成形した成型体をセラミックマトリックスの焼結温度に加熱保持して、それによりセラミックマトリックスを焼結させ、次いで焼結したセラミック焼結体中で発泡剤を発泡させる工程、を含むことを特徴とするセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項8】
セラミックマトリックスが、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、チタニア、サイアロン、ムライト及びコーディエライトからなる群から選択される1種以上のセラミックである、請求項記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項9】
セラミックマトリックスが、さらに、イットリア、カルシア、マグネシア及び希土類酸化物からなる群から選択されるセラミックを1種以上含有する、請求項又は記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項10】
セラミックマトリックスが、さらに、シリカ、アルミナ、酸化銅、チタニア、酸化マンガン、マグネシア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、酸化ゲルマニウムからなる群から選択され、マトリックスとは異なる1種以上のセラミックを含有する、請求項のいずれか1項記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項11】
発泡剤が、炭化ケイ素、炭酸塩、及び昇華性の固体からなる群から選択される1種以上である、請求項10のいずれか1項記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項12】
焼結温度で加熱保持する時間が1~24時間である、請求項11のいずれか1項記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項13】
焼結温度で加熱保持する時間が2~10時間である、請求項12記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
【請求項14】
焼結温度への昇温を不活性ガス雰囲気中で行い、焼結温度での加熱保持を大気中で行う、請求項13のいずれか1項記載のセラミック固相発泡体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック固相発泡体及びその製造方法に関し、具体的には、超塑性を利用してセラミック焼結体中に緻密な気孔壁からなる閉気孔を高い気孔率で存在させたセラミック固相発泡体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気体は熱を伝えにくいため、独立気泡を多数含有する固体は優れた断熱効果を有し、断熱部材として好適に使用されている。発泡スチロールをはじめとする高分子発泡体は、温度を高めてポリスチレンを軟化させると同時に、含有させた発泡ガスを気化させて製造する。発泡金属も、製造温度がより高温であることを除いては、溶融させ軟化させた金属に気泡を導入する点で、高分子発泡体と同様に製造される。
【0003】
一方、セラミック材料は、一般に焼結法と呼ばれるセラミック材料の融点以下の温度で焼結して製造されるため、発泡体の製造方法は、高分子材料や金属と全く異なっている。セラミック発泡体の製造方法として、セラミック製造時の成形圧力と焼成温度を制御して焼結する部分焼結法(非特許文献1)や炭素などの造孔剤を添加して成形し、昇温して造孔剤を飛散させてその痕跡を残存させたまま焼結する造孔剤導入法(非特許文献2)が検討されてきた。これらの方法では、気孔内部と周囲温度とのガス交換が容易な開気孔が形成されるため、単位体積当たりの表面積が大きくなり、触媒担体やガスセンサとして利用されている(非特許文献3)。
【0004】
しかし、これらの方法はいずれも、気孔導入後に焼結を行っているため、不完全焼結にならざるを得ない。すなわち、焼結は気孔の排除を伴い、焼結を完了させると気孔率が低減するので、気孔率を高い割合で保持するためには焼結を途中で中断させる必要がある。また、断熱部材としての特性を高めるためにセラミック発泡体に閉気孔を導入しようとすると、気孔率が低下してしまうという欠点があった。さらに、気孔率を高くするにつれて、セラミック粒子同士の結合が不十分となり、機械的強度は著しく低下してしまうという問題があった。
【0005】
近年、液相を介して製造するセラミック発泡体の研究が多く行われている。例えば、セラミックスラリーに合成樹脂発泡体を浸漬して合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着させた後、乾燥、焼成し、合成樹脂発泡体を熱分解又は焼却するセラミック多孔体(特許文献1)、シリカとアルミナ等の他のセラミック成分との混合粉末をアンモニア化処理し、これを成形後、1650℃程度の高温で加熱して発泡させるシリカ質発泡体(特許文献2)、バインダー樹脂水溶液とセラミック粉末とのスラリー前駆組成物を成形後発泡温度に加熱、乾燥して発泡粉末凝集成型体を作製し、これをセラミック粉末材料に適した温度、雰囲気で焼結してセラミック発泡体を製造する方法(特許文献3)が挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらの液相を介する方法は、前駆体スラリー溶液やゾルに気泡を導入することは容易であるものの、スラリーを固化させる時点で有機物が飛散するため、気泡を独立気泡として残したまま高い気孔率を保持することはできない。焼結過程で気孔が排除されるため、上記した気泡導入後に焼結させる固相法と同様に、気孔率は不可避的に低下してしまう。
【0007】
また、高分子材料や金属材料、ガラスでは、融点以上の温度に加熱して溶融状態で気泡を導入して発泡体を製造することも行われている。しかし、セラミックは、これらの材料に比較して融点が著しく高い。このため、耐火物として使用するセラミックを融点以上の温度に加熱してセラミックを溶融させ及び溶融状態で気泡を導入する方法は非現実的であり、このような方法を多孔質セラミックに応用することは実用上不可能であった。また、セラミックは融点以下の温度では塑性変形能が小さく、発泡剤を用いてセラミックを発泡させることもできない。
【0008】
以上のように、従来のセラミック発泡体は、焼結工程を必須の製造工程とするため、焼結前に発泡させる方法に限定され、緻密な気孔壁からなる閉気孔を高い気孔率で有する発泡焼結体を製造することはできなかった。

【非特許文献1】A.Diaz, S.Hampshire, J-F.Yang, T.Ohji, and S.Kanzaki, “Comparison of Mechanical Properties of Silicon Nitrides with Controlled Porosities by Different Fabrication Routes”, J.Am.Ceram.Soc., 88〔3〕698-706(2005)
【非特許文献2】R.Barea, M.I.Osendi, P.Miranzo, and J.M.F.Ferreira, “Fabrication of Highly Porous Mullite Materials”, J.Am.Ceram.Soc., 88〔3〕777-779(2005)
【非特許文献3】S.L.Suib, “Sorption, catasysis, and separation by design”, Chemical Innovation, 30〔3〕27-33(2000)
【特許文献1】特開平5-238848号公報
【特許文献2】特開平7-144934号公報
【特許文献3】特開2001-335809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術が抱える課題を解決し、緻密な気孔壁からなる閉気孔を高い気孔率で有するセラミック固相発泡体を提供すること、及びこのセラミック固相発泡体を実用的な方法で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討した結果、セラミック焼結体を焼結後の固相のまま発泡させることにより、ガス遮断性や強度特性に優れる、緻密な気孔壁からなる閉気孔を多数存在させることができる固相発泡法を知見して、本発明を完成するに至った。
【0011】
特に、セラミックを焼結温度に加熱保持すると、焼結されたセラミック焼結体は超塑性現象を発現すること、及びこの超塑性を利用すると、焼結温度のような高温で発泡する発泡剤を内包させたセラミックを焼結後に発泡させる固相発泡が可能になり、緻密な気孔壁からなる閉気孔を高い気孔率で有するセラミック固相発泡体を製造できる。すなわち、セラミック粉末に高温発泡剤を内包させて成型体を成形し、この成型体を焼結させて外皮が緻密なセラミック焼結体を製造したのち、引き続き焼結温度でセラミック焼結体を保持すると、セラミック焼結体の超塑性現象により、内包された発泡剤から生成するガスの圧力によりセラミック焼結体が固相状態で容易に発泡する。
【0012】
ここで、「緻密な気孔壁」とは、発泡により生じたセラミック固相発泡体において、気孔を取り巻くセラミック部分(気孔壁)が緻密であることを意味する。すなわち、焼結成型体としての固相発泡体の外皮であるセラミック部分が緻密であることに加え、固相発泡体内部の気孔と気孔との間のセラミック部分も緻密であることを意味する。また「緻密」とは、セラミックマトリックス粉末と発泡剤とを一体成形する際の成型圧力に依存するが、気孔壁のセラミック部分の相対密度が、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上であることを意味する。
【0013】
したがって、本発明は、セラミック固相発泡体であって、セラミック固相発泡体が緻密な気孔壁からなる閉気孔を有するセラミック固相発泡体である。
【0014】
本発明のセラミック固相発泡体は、次に述べるように、セラミックマトリックス粉末とそれに内包した発泡剤とを一体成形し、この成型体を焼結及び発泡させることから、内包させる発泡剤に量により閉気孔の気孔率を広い範囲、例えば70~80%以下の範囲で所望する気孔率に制御することができる。しかしながら、本発明のセラミック固相発泡体の有する気密性、断熱性、及びそれによる信頼性の効果を享受するには、緻密な気孔壁からなる閉気孔の気孔率は5~60%であることが好ましく、高温強度をも考慮すると、30~50%であることがより好ましい。
【0015】
本発明はまた、セラミックマトリックス粉末中に発泡剤を内包させる工程、セラミックマトリックス粉末と発泡剤を一体成形して成型体を得る工程、及び一体成形した成型体をセラミックマトリックスの焼結温度に加熱保持して、それによりセラミックマトリックを焼結させ、次いで焼結したセラミック焼結体中で発泡剤を発泡させる工程、を含むセラミック固相発泡体の製造方法である。発泡剤は、予備成形又は有機バインダーを使用して固形化させた発泡剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、セラミック成型体を焼結して緻密な気孔壁を有するセラミックを形成すると同時にセラミックの超塑性現象及び内部の高温発泡材料から発生する気体のガス圧力を利用して、緻密な気孔壁からなる閉気孔を高い気孔率で有するセラミック発泡体を固相のままで製造することができる。特に、気孔壁が緻密であるために、ガス遮断性に優れるとともに、強度にも優れた気密性、信頼性の高いセラミック固相発泡体を提供することができる。また、本発明のセラミック固相発泡体は、大気圧下で、セラミックの焼結温度近辺の温度で製造することができるため、実用性の高い製造方法である。このため、比強度が大きく信頼性のある断熱材料として、エンジン部材や工業炉部材等の断熱部品として好適に使用することができる。加えて、高温強度に優れる軽量化材料として、大気突入時に1200℃程度の温度に曝される宇宙往還機の断熱部材、気密性、信頼性に高い原子炉炉壁部材などの、高温での気密特性・断熱特性の双方が要求される分野において革新的な材料を提供することができる。
【0017】
特に、工業炉では、塩素を含む物質を燃焼するとダイオキシン類の発生が問題となり、1000℃以上の高温でこれらの物質を燃焼する必要があった。しかしながら、従来のセラミック多孔体を使用する断熱材料は開気孔が無数に存在し、この開気孔に塩素を含む気化成分がトラップされる。このため、断熱材料の温度が低下し、例えば1000℃以下の温度に保持されると、断熱材料の開気孔にトラップされた塩素によりダイオキシン類が生成し、あるいは生成したダイオキシン類の外部への流出の制御が困難であった。しかるに、本発明のセラミック固相発泡体は緻密な外皮を有するため、これを使用する断熱部品のみならず、劇毒物反応容器は、原料物質のトラップを抑え、かつ生成物の流出を抑制できるので、発生物を完全に制御することができるゼロエミッションに対応できる気密材料といえる。
【0018】
さらに、これまで実用化されていたセラミック多孔体は、気孔の大部分が開気孔であったため、遮音効果がなく、また電気特性も大気中の湿度の影響を受けやすいといった欠点があった。本発明のセラミック固相発泡体は、気孔が閉じた閉気孔であることを特徴としており、遮音効果の高い遮音部品として外壁のみならず、断熱性、気密性が要求されるエンジン部材として、また湿度により電気特性が変化しにくい多孔体電気部品として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】成型体を1600℃において8時間加熱保持したときのセラミック固相発泡体の形状を示す写真である((a)実施例1、(b)実施例2、(c)実施例3)。
【図2】実施例1を1600℃において加熱保持したときの、セラミック固相発泡体の発泡高さの保持時間依存性を示す図である。
【図3】3mm角に切り分けた発泡剤ペレットを種々のパターンでセラミックマトリックス上に載置したのち発泡させた実施例5~6のセラミック固相発泡体の形状を示す写真である((a)実施例5、(b)実施例6)。
【図4】発泡剤を孤島状にパターニングしたパターン化シートを使用した実施例7のセラミック固相発泡体の形状を示す写真である。
【図5】発泡剤を孤島状にパターニングしたパターン化シートを使用した実施例7のセラミック固相発泡体の断面形状を示す写真である。
【図6】発泡剤を連続曲線状にパターニングしたパターン化シートを使用した実施例8のセラミック固相発泡体の形状を示す写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明のセラミック固相発泡体は、高温で発泡する発泡剤を内包させたセラミック成型体を焼結させて気孔壁が緻密なセラミック焼結体を作製したのち、引き続き焼結温度でセラミック焼結体を保持して、セラミック焼結体の超塑性現象及び発泡剤から生成するガスの圧力を利用するので、緻密な気孔壁からなる閉気孔を高い気孔率で有する。閉気孔の気孔率は、セラミックマトリックス中に内包させる発泡剤の種類、量を制御することにより、5~60%を得ることができる。特に、セラミック発泡体ではこれまで実現されていなかった、閉気孔の気孔率が30~50%と極めて高い気孔率を有するセラミック固相発泡体を得ることができる。
【0022】
セラミックマトリックスは、焼結温度に保持することにより超塑性現象を発現する、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、チタニア等、あるいはこれらの複合セラミックであるサイアロン、ムライト、コーディエライト等を1種以上使用することができる。また、これらのセラミックの特性を向上させるために、第2成分、第3成分として、イットリア、カルシア、マグネシア、希土類酸化物、例えば酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、等から選択されるセラミックを、セラミックマトリックに対して10モル%以下の量で添加したマトリックスを使用することできる。例えば、3モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、「3YSZ」という。)を好適に使用することもできる。
【0023】
また、セラミック固相発泡体の超塑性現象を発現しやすくする助剤として、シリカ、アルミナ、酸化銅、チタニア、酸化マンガン、マグネシア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、酸化ゲルマニウムからなる群から選択され、マトリックスとは異なる1種以上のセラミック成分を、マトリックス総量に対して10重量%以下で含有させることができる。これらのセラミックマトリックス成分とは異なるセラミック成分を添加することにより、焼結時のセラミックの粒成長を抑制できるので、超塑性現象を促進でき、発泡性能を高めることができる。
【0024】
本発明のセラミック固相発泡体の製造方法は、セラミックマトリックス粉末中に発泡剤を内包させる工程、セラミックマトリックス粉末と発泡剤とを一体成形して成型体を得る工程、及び一体成形した成型体をセラミックマトリックスの焼結温度に加熱保持して、それによりセラミックマトリックを焼結させ、次いで焼結したセラミック焼結体中で発泡剤を発泡させる工程を含む。
【0025】
セラミックマトリックスは、焼結温度に保持することにより超塑性現象を発現する、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、チタニア等、あるいはこれらの複合セラミックであるサイアロン、ムライト、コーディエライト等を1種以上使用することができる。また、これらのセラミックの特性を向上させるために、第2成分、第3成分として、イットリア、カルシア、マグネシア、希土類酸化物、例えば酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、等から選択されるセラミックを、セラミックマトリックに対して10モル%以下の量で添加したマトリックスを使用することできる。また、セラミック固相発泡体の超塑性現象を発現しやすくする助剤として、シリカ、アルミナ、酸化銅、チタニア、酸化マンガン、マグネシア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、酸化ゲルマニウム等からなる群から選択され、マトリックスとは異なる1種以上のセラミックを、マトリックス総量に対して10重量%以下で含有させて、超塑性現象を促進し、発泡性能を高めることができる。
【0026】
本発明の製造方法で使用する発泡剤は、予備成形又は有機バインダーを使用して固形化させた成型体であることが好ましい。すなわち、本発明においては、セラミック粉末を焼結温度に保持して焼結したのち、焼結温度に引き続き保持することにより、セラミック焼結体の超塑性現象を利用して、保持した焼結温度で発泡剤から発生するガスの圧力により、セラミック焼結体を固相状態で発泡させる。このため、発生するガスの圧力を大きくするため、発泡剤は粉体を固形化させた成型体としての大きさを有することが好ましい。成型体は、1個の成型体をセラミックマトリックス中の所定の位置に配置した後、あるいは小さな成型体を複数個、セラミックマトリックス中の所定の位置に分散させて配置した後、セラミック粉末と一体成形することができる。さらに、小さな成型体を、セラミックマトリックス粉末中に均一に分散させた後、セラミック粉末と一体成形することもできる。したがって、固形化発泡剤の成型体の大きさは、例えば、0.003cm程度の容積を有するものであれば本発明の方法に好適に使用することができる。また、有機バインダーとして、例えばメチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)を使用することができる。なお、成型体の形状は特に限定されず、発泡体は、ウィスカー、繊維を成型体にしたものであってもよい。
【0027】
発泡剤の材料としては、セラミック粉末の成型体を焼結する段階では発泡せず、セラミック焼結体を焼結温度に引き続き保持する段階で発泡する発泡剤であることが必要である。このような発泡剤として、炭化ケイ素、炭酸塩、例えば炭酸バリウム、昇華性の固体、例えば塩化バナジウム等から選択される1種以上を使用することができる。とりわけ、炭化ケイ素は、後述するように、発泡剤(SiC)の分解反応により生成するセラミック物質(シリカ)がマトリックスの超塑性変形能力を高めるので好ましい。発泡剤の使用量は、セラミック固相発泡体の目的とする閉気孔の気孔率に依存するが、セラミックマトリックス100重量部に対して、好ましくは2~30重量部であり、より好ましくは3~10重量部である。
【0028】
焼結温度で加熱保持する温度は、セラミックマトリックスを焼結するのに適した温度を採用することができる。すなわち、使用するマトリックスとしてのセラミック組成、粉体の粒子径に依存して、好適な温度範囲が選択される。また、焼結温度で加熱保持する時間は、発泡剤の使用量、セラミックマトリックスの超塑性特性にも依存するが、1~24時間であることが好ましく、2~10時間であることがより好ましい。本発明における発泡は、発泡剤からのガス発生、焼結体内の内圧上昇、焼結体外皮の膨張による内圧(発泡駆動力)低下、発泡終了のサイクルで行われる。発泡剤からのガス発生は、焼結温度での保持時間が概ね6時間以内に終了するが、セラミック焼結体の超塑性変形は時間を要し、焼結温度での保持時間が24時間程度まで変形が継続する場合があるからである。
【0029】
本発明のセラミック固相発泡体は、セラミック粉末を焼結させて気孔壁が緻密なセラミック焼結体を作製したのち、引き続き焼結温度でセラミック焼結体を保持すると、セラミック焼結体の超塑性現象により、高温発泡剤から生成するガスの圧力によりセラミック焼結体が固相状態で発泡したものである。すなわち、本発明のセラミック固相発泡体は、発泡剤の酸化分解反応により生成するCOガス又はCOガス等のガス圧を駆動力として、気孔壁が緻密なセラミック焼結体の内圧を高め、超塑性状態にあるセラミック焼結体の外皮を膨張させて形成される。
【0030】
発泡剤として炭化ケイ素(SiC)を例にとると、SiCの分解反応は周囲の酸素濃度に依存して、以下の反応をとると考えられる。
酸化雰囲気 SiC+3/2O → SiO(s)+CO(g)・・・(1)
還元雰囲気 SiC+ O → SiO (g)+CO(g)・・・(2)
酸化雰囲気では、酸素1.5モルからCO1モルが生成するので、焼結体は発泡しない。しかし、還元雰囲気(減圧下)では、酸素1モルに対し、ガス2モルが生成し、しかも焼結が完了すると、セラミック焼結体の表面は緻密化され密閉状態が形成され、この段階で発生したガスが超塑性状態のセラミック焼結体を膨張させるので、セラミック焼結体は発泡する。
【0031】
なお、SiCを発泡剤として発泡させた気孔内壁はガラス状白色固体で覆われており、X線回折によるとブロードなピークを示す非晶質ハローであることが判明した。したがって、発泡時の気化生成物は降温時に固化し、気孔内部は減圧となっていることが示唆される。気体の熱伝導率は気体分子量に依存して大きくなることから、固化成分が再気化する温度までは高い断熱性が期待できる。
【0032】
また、本発明のセラミック固相発泡体を用いて、所望の用途である断熱部品、遮音部品、電気部品等を作製するには、発泡後に所定の寸法形状になるように、発泡剤を内包したセラミックマトリックス粉末成型体の寸法形状を定める。また、セラミックマトリックス粉末成型体を、これら部品の所定の寸法形状を有する成型ダイス中で焼結、発泡させることにより作製することもできる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、実施例は本発明の例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
実施例1
セラミックマトリックスとして3モル%イットリア安定化ジルコニア(3YSZ)を、発泡剤として炭化ケイ素を使用した。炭化ケイ素粉末(イビデン株式会社製、β-SiC、Grade-UF)0.5gを、直径10mmの成型器に投入し、常温で30MPaの圧力で1分間一軸加圧して、直径10mm、厚さ0.05mmのペレットを得た。次に、3YSZ(トーソー株式会社製、商品番号:TZ-3Y)4gを2gずつ2組に分け、直径20mmの成型器中に、3YSZ粉末、SiC成型体、3YSZ粉末の順に投入し、常温で30MPaの圧力で1分間一軸加圧成形し、次に、200MPaで1分間静水圧加圧して、直径20mm、厚さ5mmの成型体を得た。成型体を、高速昇温炉(カンタルスーパー炉)を用いて、大気中で、800℃/hの昇温速度で1600℃まで加熱し、この温度で2~8時間保持して、セラミック固相発泡体を得た。得られたセラミック固相発泡体は、300℃/hで常温まで冷却した。
【0035】
得られたセラミック固相発泡体について、以下の試験を行い、特性を評価した。
(1)発泡性能
スケールを用いて、セラミック固相発泡体の厚さと焼結前の成型体の厚さとの差を測定し、これを発泡高さとして発泡性能を評価した。
(2)高温での機械的性質
熱間静水圧加圧装置を用いて、アルゴン雰囲気中で1600℃、195MPaの静水圧を付加したときに、セラミック固相発泡体が破壊するか否かを調査した。
(3)熱伝導率の測定
熱伝導率測定装置(ドイツ国Netzsch社製、型式番号:LFA457)を使用して、レーザフラッシュ法に基づく熱伝導率を常温で測定した。
(4)気孔率及び密度の測定
アルキメデス法に従って、セラミック固相発泡体の嵩密度を測定した。例えば、セラミック固相発泡体の嵩密度が4.8g/cmであり、公知文献に記載された同セラミックの理論密度が6.0g/cmである場合、相対密度は、4.8/6.0=80%となり、したがって、気孔率は100-80=20%となる。
【0036】
図1(a)に、成型体を1600℃、8時間加熱保持したときのセラミック固相発泡体の形状を示し、図2に、1600℃において加熱保持したときのセラミック固相発泡体の発泡高さの保持時間依存性を示す。2時間保持後の発泡高さは3.6mmであるが、8時間保持後の発泡高さは5.1mmであり、セラミックの焼結完了後の保持により、発泡が進んでいることがわかる。また、図1(a)において膨らんでいる固相発泡体の殻に相当する外皮(気孔壁)部分の密度は6.05g/cmであり、これから外皮部分の相対密度は99%以上となり、外皮部分は緻密であることを示している。すなわち、実施例1の固相発泡体は、焼結後の緻密化のあとにガス圧力により外皮が膨らんだことを示している。また、8時間保持後の固相発泡体の密度は4.39g/cmであり、気孔率は29.3%であった。アルゴンを媒体として、195MPaの静水圧を印加しながら焼結温度の1600℃まで昇温したが、セラミック固相発泡体は形状を保持しており、破断することはなかった。したがって、セラミック固相発泡体は、良好な高温での機械的性質を有している。
【0037】
実施例2
本発明のセラミック固相発泡体において、発泡は発泡剤の酸化分解反応により生成するガスの内圧を駆動力とするが、大気中で焼結温度に加熱保持する場合、発泡剤の酸化分解反応は焼結温度への昇温時にも進行すると考えられる。そこで、1600℃の焼結温度までの昇温中は炉内雰囲気をアルゴンガスとし、焼結温度での保持時に炉内雰囲気を空気に切り替えたこと及び焼結温度での加熱保持時間を8時間としたことを除いては、実施例1と同様にして、セラミック固相発泡体を製造した。図1(b)に、実施例2のセラミック固相発泡体の形状を示す。8時間保持後の発泡高さは5.5mmであり、実施例1の大気(空気)中での昇温、保持に較べて、発泡高さは増加し、また閉気孔の気孔率も38.9%と増加している。したがって、焼結温度への昇温時に発泡剤の酸化分解を抑制するために炉内雰囲気を不活性ガスにすることにより、セラミック固相発泡体の発泡性能を高め、閉気孔の気孔率をより向上させることができる。
【0038】
実施例3
セラミックマトリックスとして、3モル%イットリア安定化ジルコニア(3YSZ)にSiOを5重量%添加した3YSZを使用したこと及び焼結温度での加熱保持時間を8時間としたことを除いて、実施例1と同様にしてセラミック固相発泡体を製造した。図1(c)に、実施例3のセラミック固相発泡体の形状を示す。8時間保持後の発泡高さは6.5mmであり、セラミックマトリックスが3YSZ単独の実施例1よりも発泡高さが増加している。また閉気孔の気孔率は42.2%であった。これは、5重量%のSiOの添加が、セラミック固相発泡体の超塑性現象をより発現しやすくする助剤として機能していることを示す。
【0039】
実施例4
発泡剤として、約0.01gの圧密発泡剤小片(大きさ0.003cm)14個を、5個、4個、5個の3組に分け、これらを1gずつの3YSZ粉末の間に挟む形状、すなわち、3YSZ粉末/5個の発泡剤/3YSZ粉末/4個の発泡剤/3YSZ粉末/5個の発泡剤/3YSZ粉末の順に成型器に敷き詰めて一軸加圧して成型体を得たこと及び焼結温度での加熱保持時間を8時間としたことを除いて、実施例1と同様にして、セラミック固相発泡体を製造した。得られたセラミック固相発泡体の閉気孔の気孔率は7.8%、相対密度は92.2%であった。この固相発泡体の熱伝導率は2.6W/m・Kであった。比較のために、同じ条件で作製した相対密度100%のセラミック焼結体の熱伝導率は3.72W/m・Kであった。したがって、本発明のセラミック固相発泡体は、緻密なセラミック焼結体に対して熱伝導率が70%であり、相対密度の減少以上に熱伝導率を減少させることができる。
【0040】
実施例5、実施例6
セラミックマトリックスとして3モル%イットリア安定化ジルコニア(3YSZ)を、発泡剤として炭化ケイ素を使用した。炭化ケイ素粉末(イビデン株式会社製、β-SiC、Grade-UF)0.5gを、直径10mmの成型器に投入し、常温で30MPaの圧力で1分間一軸加圧して、直径10mm、厚さ0.05mmのペレットを得た。カミソリを使用してこのペレットを約3mm角の小片(重量:約0.07g、大きさ:0.00045cm)に切り分けた。切り分けた。次に、3YSZ(トーソー株式会社製、商品番号:TZ-3Y)4gを2gずつ2組に分け、直径20mmの成型器中に、3YSZ粉末、SiC小片、3YSZ粉末の順に投入した。SiC小片は3YSZ上にパターンをなすようにピンセット等で位置決めして複数個配置した。以下実施例1と同様に、一軸加圧成形、静水圧加圧、熱処理、冷却により、実施例5、実施例6のセラミックス固相発泡体を得た。発泡体には図3(a)及び(b)に示すとおり、SiC小片を載置した位置に複数の閉気孔が生成した。
【0041】
実施例7
発泡剤位置を制御するため、3YSZシートを作製しその上に発泡剤をパターニングして載置した。まず、有機バインダーであるメチルセルロース水溶液(3重量%)と3YSZ粉末を混合し泥奬(スラリー)を作製し、これをガラス棒で引き伸ばし、乾燥させて3YSZシートを作製した。次に、発泡剤であるβ-SiC粉末も同様にしてスラリーを作製し、このスラリー状のβ-SiC発泡剤を、3YSZシート上に固定した所望の場所を抜き取り加工してパターンを形成した銅板マスク(厚さ0.2mm)上に流し込み、引き伸ばした後、マスクを取り除き乾燥させた。このようにして、3YSZシート上に発泡剤であるβ-SiCが、高さ0.2mmで3個x3個=9個、孤島状団塊にパターニングされたパターン化シートを作製した。次に、パターン化シートを円状に切り取り、3YSZ粉末、パターン化シート、3YSZ粉末、パターン化シート、3YSZ粉末の順に直径20mmの成型器に投入し、実施例1と同様にして、一軸加圧成形、静水圧加圧、熱処理、冷却により、図4に示すセラミックス固相発泡体を得た。このセラミックス固相発泡体は、図4に示すとおり、配置したSiCのパターンに応じた孤立閉気孔が形成されており、また図5に示す切断試料の断面から明らかなように、セラミックス固相発泡体は、表面のみならず、内部にもSiCパターンに応じた閉気孔が均一に生成している。
【0042】
実施例8
銅板マスクの抜き取り形状を逆S字状の連続曲線とした以外は実施例7と同様にして、図6に示すセラミックス固相発泡体を得た。
【0043】
したがって、発泡剤を所望のパターンで配置することにより、複数の、場合により内部にも存在する独立閉気孔、あるいは連続管状閉気孔を有するセラミック固相発泡体を形成することができる。これらのセラミック固相発泡体は、切削加工なしで一段で形成することができるので、工業上のメリットが大きい。
【0044】
実施例9
セラミックマトリックスとして超塑性付与剤を添加したアルミナを、発泡剤として炭化ケイ素を使用した。炭化ケイ素粉末(イビデン株式会社製、β-SiC、Grade-UF)0.5gを、直径10mmの成型器に投入し、常温で30MPaの圧力で1分間一軸加圧して、直径10mm、厚さ0.05mmのペレットを得た。一方、マトリックスとしてのアルミナ(住友化学株式会社、商品番号:AKP-30)粉末に、エタノールを媒体として超塑性付与剤としての3YSZを10mol%湿式混合した。得られた混合粉末4gを2gずつ2組に分け、直径20mmの成型器中に、混合粉末、SiC成型体、混合粉末の順に投入し、以下実施例1と同様にして、一軸加圧成形、静水圧加圧、熱処理、冷却により、セラミックス固相発泡体を得た。得られた固相発泡体の密度は3.77g/cmであり、気孔率は10%であった。
【0045】
実施例10
超塑性付与剤として、マグネシアを30mol%を湿式混合したことを除いて、実施例9と同様にして、セラミックス固相発泡体を得た。得られた固相発泡体の密度は3.30g/cmであり、気孔率は15%であった。
【0046】
なお、セラミックマトリックスとしてアルミナを使用した実施例9及び10は、3モル%イットリア安定化ジルコニア(3YSZ)をマトリックスとする実施例1~6よりも高温強度が大きい。また、湿潤雰囲気下での強度も高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のセラミック固相発泡体は、ガス遮断性、強度に優れた気密性、信頼性の高いセラミック固相発泡体である。このため、信頼性のある断熱材料、高温強度に優れる軽量化材料のほか、原料物質のトラップを抑え生成物の流出を抑制できる気密材料として、更には、遮音材料や、湿度により電気特性が変化しにくい多孔体電気部品として利用することができる。加えて、本発明のセラミック固相発泡体は、大気圧下、セラミックの焼結温度近辺の温度で製造することができるため、実用性の高い製造方法であり、産業上の利用可能性が高い。
図面
【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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