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明細書 :酸化物、電気導体、p型半導体、及びn型半導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5626946号 (P5626946)
公開番号 特開2010-053006 (P2010-053006A)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
発明の名称または考案の名称 酸化物、電気導体、p型半導体、及びn型半導体
国際特許分類 C01G  49/00        (2006.01)
C04B  35/00        (2006.01)
H01B   1/08        (2006.01)
C04B  35/40        (2006.01)
FI C01G 49/00 C
C01G 49/00 D
C04B 35/00 J
H01B 1/08
C04B 35/40
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2008-222351 (P2008-222351)
出願日 平成20年8月29日(2008.8.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 刊行物名 日本物理学会講演概要集「第63巻 第1号 第3分冊 第63回年次大会」 発行団体 社団法人日本物理学会 発行日 2008年2月29日
審査請求日 平成23年8月2日(2011.8.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】池田 直
【氏名】花咲 徳亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
審査官 【審査官】末松 佳記
参考文献・文献 特開2007-223886(JP,A)
特開昭52-101499(JP,A)
特開平05-213699(JP,A)
特開2001-085751(JP,A)
特開2003-286010(JP,A)
特開2007-106653(JP,A)
調査した分野 C01G 49/00-49/08
C04B 35/26-35/40
H01B 1/00- 1/24
Science Direct
CiNii
CAplus/REGISTRY(STN)
WPI
JSTPlus(JDreamIII)



特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で表され、
式(1)中のRの一部が正二価以下の元素により固溶置換されており、前記正二価以下の元素が、Caである酸化物。
(RM(RMO (1)
(式(1)中、Rは、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、mは1又は2であり、nは0以上の整数である。)
【請求項2】
前記式(1)中のMがFeである請求項1に記載の酸化物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸化物からなる電気導体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の酸化物からなるp型半導体。
【請求項5】
下記式(1)で表され、
式(1)中のRの一部が正四価以上の元素により固溶置換されており、前記正四価以上の元素が、Ceである酸化物。
(RM(RMO (1)
(式(1)中、Rは、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、mは1又は2であり、nは0以上の整数である。)
【請求項6】
前記式(1)中のMがFeである請求項に記載の酸化物。
【請求項7】
請求項5または6に記載の酸化物からなる電気導体。
【請求項8】
請求項5または6に記載の酸化物からなるn型半導体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気導体の電気物性を制御できる酸化物及び電気導体の電気物性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気導体のバンドギャップは、通常、伝導バンドと禁制バンドとを構成する結晶構造によって決定されている。このため、バンドギャップの大きさを変えることは困難である。
また、半導体材料は、Siや化合物半導体のように、特定のバンドギャップを持つ材料であるため、光吸収による応答では特定波長にしか応答できない。さらに、ドーピングにより広い範囲でのバンドギャップを制御することも不可能である。
また、特にエネルギーの低い赤外領域の波長帯域では、不安定あるいは毒性ある物質であるZnSeやCdSなどの化合物半導体が用いられていたが、作製方法が困難であったり、毒性の問題があるため使用が制限される問題がある。
従って、電気特性を容易に制御できる材料が求められている。
【0003】
新規な材料系として、例えば、非特許文献1は、二次元三角格子鉄複電荷酸化物であるLuFeの誘電性について報告している。LuFeは強誘電性であり、その発現原理は、フラストレートした電子相関による電荷秩序形成、例えば、Fe3+上の極性の電子配置といった作用機序によるものと考えられ、既知の誘電体と異なることを報告している。
また、非特許文献2において、LuFeに関する最近の第一計算原理では、メタリックな電導特性の存在を指摘している。尚、今までの電導特性は半導体的な挙動が報告されていた。

【非特許文献1】N.Ikeda,etal.Nature 436(2005)1136.
【非特許文献2】Xiang HJ,Whangbo MH,Phys.Rev.Lett.,98(2007)246403.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、バンドギャップ等の電気特性(半導体特性)を任意の値に制御できる酸化物及び電気特性を任意の値に制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の酸化物等が提供される。
1.下記式(1)で表され、式(1)中のRの一部が正二価以下の元素により固溶置換されており、前記正二価以下の元素が、Caである酸化物。
(RM(RMO (1)
(式(1)中、Rは、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、mは1又は2であり、nは0以上の整数である。)
2.前記式(1)中のMがFeである1に記載の酸化物。
.上記1または2に記載の酸化物からなる電気導体。
.上記1または2に記載の酸化物からなるp型半導体。
.下記式(1)で表され、式(1)中のRの一部が正四価以上の元素により固溶置換されており、前記正四価以上の元素が、Ceである酸化物。
(RM(RMO (1)
(式(1)中、Rは、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、mは1又は2であり、nは0以上の整数である。)
.前記式(1)中のMがFeであるに記載の酸化物。
.上記5または6に記載の酸化物からなる電気導体。
.上記5または6に記載の酸化物からなるn型半導体。
また、酸化物の製造方法は、以下の方法とすることができる。
a、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩を、混合した原料粉末を、酸素分圧が10-7~10-8気圧である雰囲気下において、1000℃~1400℃で、1時間~100時間焼成させた後、15~40℃の温度帯域にて急冷させる酸化物の製造方法。
e、Ti、Zr、Hf、Sn、Ta、Sb及びReからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩を、混合した原料粉末を、酸素分圧が10-7~10-8気圧である雰囲気下において、1000℃~1400℃で、1時間~100時間焼成させた後、15~40℃の温度帯域にて急冷させる酸化物の製造方法。
また、酸化物の電気特性を制御する方法は、以下の方法とすることができる。
記式(1)で表される酸化物のRの一部に、正二価以下の元素又は正四価以上の元素を固溶置換させることにより、酸化物の電気特性を制御する方法。
(RM(RMO (1)
(式中、Rは、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、mは1又は2であり、nは0以上の整数である。)
記正二価以下の元素又は正四価以上の元素の固溶置換量を調整することにより、前記酸化物のバンドギャップを制御する、上記の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、酸化物の電気特性を任意の値に制御する方法を提供できる。
また、毒性のない材料であって、遠赤外域から可視光域までバンドギャップの制御が可能な酸化物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の酸化物は下記式(1)で表され、式(1)中のRの一部が正二価以下の元素、又は正四価以上の元素により固溶置換されている。
(RM(RMO (1)
(式中、Rは、Sc、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Mg及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素であり、mは1又は2であり、nは0以上の整数である。)
【0008】
本発明者らは、式(1)で表される酸化物のバンドギャップが、正二価以下の元素、又は正四価以上の元素間の電荷数の競合に支配されているため、バンドギャップを調整できることを見出した。
従来、電気導体のバンドギャップは、伝導バンドと禁制バンドとを構成する結晶構造によって決定されるため、バンドギャップの大きさを変えることは困難であった。
一方、式(1)で表される酸化物のように電荷配置がクーロン力によって競合している物質の電気伝導では、正二価以下の元素の量、又は正四価以上の元素の量を調整し、クーロン力の競合を調整することによって、結果的に酸化物が持つ電気伝導度の温度変化等、バンドギャップの大きさに依存する物性を制御することができる。
また、本発明の酸化物は毒性が極めて低い。
【0009】
式(1)中のRは、Sc、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素である。好ましくはY、Lu、Ybである。特に、Y又はYbは焼成による合成において、より好適である。
Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素である。好ましくはFeおよびMnである。Feは価数の制御のしやすさの面でより好ましい。
mは1又は2である。
nは0以上の整数であり、0~10の整数が好ましく、特に0~6の整数が好ましい。
【0010】
本発明の酸化物は、式(1)中のRの一部が正二価以下の元素、又は正四価以上の元素により固溶置換されている。
酸化物に正二価以下の元素を固溶置換させることで、酸化物の電気特性を導電性からp型半導体性まで制御できる。
一方、酸化物に正四価以上の元素を固溶置換させることで、酸化物の電気特性を導電性からn型半導体性まで制御できる。
正二価以下の元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Na、K、Rb、Cs又はZnが挙げられる。好ましくは、Ca、Sr、Naである。さらに合成の容易さにおいて、Caがより好ましい。
正四価以上の元素としては、Ce、Ti、Zr、Hf、Sn、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Bi又はReが挙げられる。好ましくは、Ce、Ti、Zr、Snである。さらに合成の容易さにおいて、Ceがより好ましい。
【0011】
正二価以下の元素又は正四価以上の元素(A)の、Rに対する置換率X(R1-x:原子比)は、所望の電気特性が得られるように適宜調整すればよい。通常、0よりも大きく、0.3以下であり、好ましくは0.01~0.2、さらに好ましくは0.01~0.10である。
正二価以下の元素又は正四価以上の元素の、Rに対する置換率は、例えば、酸化物を合成するときの原料の仕込み比で調整することができる。
式(1)中のRの一部が、正二価以下の元素又は正四価以上の元素により固溶置換されていることは、X線回折によるピークのシフトすなわち格子定数の変化および置換元素の吸収端を用いたXAFS法により分析することにより確認できる。置換の確認はそれぞれの元素の吸収端をXAFS法により測定を行い、得られたスペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布曲線と、例えばLuFeのLu-K端のXAFSスペクトルから得られる動径分布曲線を比較することから確認できる。また置換率は、X線回折から得られる格子定数を置換量とプロットすることにより測定できる。
【0012】
本発明の酸化物は、例えば、原料の混合物を焼成することにより得ることができる。
酸化物の原料としては、例えば、式(1)のR又はM、正二価以下の元素又は正四価以上の元素を含む、酸化物、硫化物、硫酸塩、ハロゲン化物(塩化物、臭化物等)、炭酸塩等が挙げられる。
低温で完全に熱分解し、不純物が残存しないようにするため、上記元素の酸化物、炭酸塩を用いるのが好ましい。
出発原料は、予め十分に乾燥することが好ましい。
【0013】
出発原料しては、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩を、混合した原料粉末や、
Ce、Ti、Zr、Hf、Sn、Ta、Sb及びReからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩と、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より選択される1又は2以上の元素の酸化物及び/又は炭酸塩を、混合した原料粉末が好ましい。
【0014】
原料の混合は、物理混合法により行う。物理混合法は、特に制限はなく、ボールミル等、公知の装置を使用できる。
【0015】
得られた原料混合物を焼成することにより、本発明の酸化物が得られる。
原料混合物は、焼成前に取り扱いの良い形、例えば、ペレット状に一軸加圧成型し、さらにこれを冷間静水圧(CIP)等により成型してもよい。また、仮焼してもよい。
焼成条件は、使用する原料等により適宜調整すればよい。例えば、焼成温度は1000℃~1400℃が好ましく、1100℃~1300℃が特に好ましい。
また、焼成時間は、1時間~100時間が好ましく、特に、5時間~72時間が好ましい。
焼成する雰囲気としては酸素分圧を10-7~10-8気圧に調整することが好ましい。酸素分圧を調整するために、COとCOの混合ガスや、HとCOの混合ガスを使用することが好ましい。COとCOの混合ガスを用いる場合、CO/CO=1~10の範囲とすることにより、好適に酸素分圧を調整することができる。
焼成後、得られた酸化物を15~40℃の温度帯域にて急冷することにより、結晶構造の変化を抑制できるため、好ましい。例えば、降温速度を100℃/min~1000℃/min程度とすることが好ましい。
【0016】
得られた酸化物焼結体から、酸化物単結晶を作製しても良い。単結晶を作製する方法は下記の手法で製造できるが必ずしも下記に制限されることはない。
酸化物単結晶を作製する方法としては、例えば、光FZ(フローティングゾーン:浮遊帯域溶融)法が挙げられる。具体的に、赤外線集光加熱炉を用いて酸化物単結晶の育成を行う。酸化物焼結体を原料棒として、赤外線集光加熱炉の上軸に設置し、下軸には種結晶として別方法で作製した酸化物単結晶を設置する。尚、種結晶は、予め酸化物多結晶に対して光加熱帯域溶融を施して得た単結晶部分を切出したものを使用する。
原料棒と種結晶のそれぞれの先端を、炉中心になるように移動させて溶解接触させ、原料棒と種結晶とをそれぞれ互いに逆向きに回転させながら、結晶成長速度を調整しながらで酸化物単結晶の育成を行う。
結晶育成雰囲気は、酸素分圧を10-7~10-8気圧に調整することが好ましい。酸素分圧を調整するために、COとCOの混合ガスや、HとCOの混合ガスを使用することが好ましい。
焼成後、得られた酸化物を急冷することが好ましい。例えば、降温速度を100℃/min~1000℃/min程度とすることが好ましい。
【0017】
本発明の酸化物では、式(1)中のRの一部を正二価以下の元素、又は正四価以上の元素により固溶置換することにより、酸化物の電気物性を制御することができる。
図1は、実施の形態に係る電気導体の電気物性を制御する方法を示すフローチャートである。まず、式(1)の酸化物が含有する、正二価以下の元素又は正四価以上の元素の量を調整する(ステップS1)。そして、酸化物が有するバンドギャップに依存する電気伝導度を変更する(ステップS2)。
本発明では、正二価以下の元素又は正四価以上の元素の、Rに対する置換率を制御することにより、酸化物の半導体特性(電気特性)を任意の値に制御できる。例えば、遠赤外域から可視光域(0.1eV~2.5eV)までバンドギャップの制御が可能である。
式(1)の酸化物のように、電荷間クーロン力の競合による電荷秩序化を発生させる物質では、この特性を使用した電流制御素子、電圧信号記憶素子、誘電体素子、光感知素子、及び太陽電池等の開発が可能となる。
これらの電子素子において、電荷間競合を調整することで、実効的にバンドギャップや電気伝導度を変化させたことに等しい効果を得ることが出来る。これにより、電流制御素子、電圧信号記憶素子、誘電体素子、光感知素子及び太陽電池において、設計上必要な最適な特性を実現することが出来る。
【実施例】
【0018】
実施例1[酸化物の作製]
純度99.99%の酸化鉄粉末(株式会社高純度化学研究所製 Fe)、純度99.99%の酸化イッテリビウム粉末(株式会社高純度化学研究所製 Yb)及び純度99.99%の炭酸カルシウム(株式会社高純度化学研究所製 CaCO)を用いる。Feは600℃で12時間焼成したものを用意する。Yは大気中1000℃で脱炭酸を行ったものを用意する。原子比(Yb:Ca:Fe)が0.99:0.01:2となるように原料を秤量し、ボールミルを用いて5時間混合して粉末材料とした。
この混合物を大気中500℃で脱炭酸を行った。冷却後、さらにボールミルで5時間混合粉砕した。この粉末材料を直径10mmのラバーチューブに入れ、プレス機を用いて静水圧60MPaで3分間プレス成形して円柱状に固めた。
次いで、この円柱状に固めた粉末材料をラバーチューブから取り出し、電気炉に入れて大気中で800℃において10時間仮焼し、酸化物焼結体を得た。
この焼結体を管状電気炉に設置し、COとCOの混合ガス(CO/CO=1:体積比)として、炉の管内に、この混合ガスを200ml/minで供給した。熱処理温度は1200℃とし、熱処理時間は24時間とした。熱処理後、試料を取り出し、室温(25℃)で急冷し、本発明の酸化物を作製した。
【0019】
上記で得られた酸化物について、組成分析をICP発光分光分析装置(SII ナノテクノロジー社製、SPS 3100)を用いて評価した。その結果、酸化物の原子比(Yb:Ca:Fe)は、0.99:0.01:2.00であった。
【0020】
実施例2,3
原料の仕込み比を以下のように変更した他は、実施例1と同様にして、酸化物を作製した。
実施例2:原子比(Yb:Ca:Fe)=0.95:0.05:2
実施例3:原子比(Yb:Ca:Fe)=0.90:0.10:2
【0021】
実施例4-6
原料として、炭酸カルシウムのかわりに酸化セリウム(株式会社高純度化学研究所製)を使用し、原料の仕込み比を以下のように変更した他は、実施例1と同様にして、酸化物を作製した。
実施例4:原子比(Yb:Ce:Fe)=0.95:0.05:2
実施例5:原子比(Yb:Ce:Fe)=0.90:0.10:2
実施例6:原子比(Yb:Ce:Fe)=0.98:0.02:2
【0022】
上記実施例2-6において、得られた酸化物の組成及び置換を、実施例1と同様にして測定したところ、原料の仕込み比と同様であることが確認された。
図2に実施例6で作製した酸化物のX線粉末回折スペクトルを示す。X線回折によるピークシフトの解析の結果、この酸化物は、YbFe24で表される結晶の単一相であり、YbがCeにより固溶置換されていることが確認された。
【0023】
比較例1
炭酸カルシウムを添加せず、仕込み比を以下のように変更した他は、実施例1と同様にして、酸化物を作製した。
比較例1:原子比(Yb:Fe)=1:2
【0024】
[評価1]
実施例1-5及び比較例1で作製した酸化物について、バンドギャップを測定した。
各酸化物焼結体を円筒状に研磨加工した(円筒の直径は7mm、厚さは0.7mm)試料の底面及び上面に、導電性接着剤(銀ペースト)を用いて電極面を形成したものを測定試料とした。
この測定試料の誘電率の温度依存性を測定し、測定試料の誘電分散からバンドギャップを計算した。
尚、誘電率の測定方法は、特開2007-223886号に記載の方法に従った。
【0025】
図3に、試料の誘電率の温度変化を測定した例を示す。得られた結果から、各周波数の変極点Trを決定する。
図4は、変極点Trの逆数を横軸に、測定周波数を縦軸にプロットした図である。得られた値を下記式に近似し、Uを求める。
f=fexp(-U/kT)
(式中、fは周波数、fは定数、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。)
Uをエレクトロンボルト(eV)に換算することにより、バンドギャップが得られる。
【0026】
図5は、上述した実施例及び比較例で得た酸化物のバンドギャップQ及び電気伝導度ρを示すグラフである。尚、電気伝導度は、室温付近の電気抵抗から見積もった値である。
曲線C1は、バンドギャップQと正二価以下の元素又は正四価以上の元素の量Xとの関係を示しており、曲線C2は、室温の抵抗率ρとXとの関係を示している。このように、酸化物と正二価以下の元素又は正四価以上の元素とを含む電気導体において、正二価以下の元素又は正四価以上の元素の量Xを調整することにより、電気導体が有するバンドギャップ及び抵抗率ρ(電気伝導度)を制御することができる。
尚、比較例1(X=0)の酸化物のバンドギャップは1.8eV、電気伝導度は約0.2Ωcmである。実施例1(X=0.01)の酸化物のバンドギャップは1.55eV、電気伝導度は約0.2Ωcmである。
【0027】
[評価2]
実施例2で作製した誘電率測定試料に赤外光源を用いてスプリッターにより分光した光を照射し、その電流値を観察した。バンドギャップ0.31eV(波長4μm)の光を照射したところ電流変化が見られた。これはバンドギャップが0.2eVをもつ本試料Yb0.95Ca0.05Feが光を吸収し、電気抵抗が変化していることを示しており、バンドギャップが不純物添加により制御されたことを示している。
【0028】
一方、実施例2と同様の形状のSi単結晶測定試料を準備し、上記実施例2と同様の条件で0.31eV(波長4μm)の光を照射し、その電気特性を観察したところ、電流値の変化は見られなかった。これはSiのバンドギャップよりも小さい光を照射しても光の吸収がないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の酸化物は、電流制御素子、電圧信号記憶素子、誘電体素子、光感知素子及び太陽電池等において、設計上必要な最適な特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電気導体の電気物性の制御方法を示すフローチャートである。
【図2】実施例6で作製した酸化物のX線粉末回折スペクトルである。
【図3】誘電率の温度変化を測定した例を示す図である。
【図4】変極点Trの逆数を横軸に、測定周波数を縦軸にプロットした図である。
【図5】実施例及び比較例で得た酸化物のバンドギャップQ及び電気伝導度ρを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4