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明細書 :多孔質炭素材料及び燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5326090号 (P5326090)
公開番号 特開2010-150094 (P2010-150094A)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成22年7月8日(2010.7.8)
発明の名称または考案の名称 多孔質炭素材料及び燃料電池
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI C01B 31/02 101B
H01M 4/96 M
H01M 4/90 Y
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2008-331221 (P2008-331221)
出願日 平成20年12月25日(2008.12.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 Post Conference of Carbon 2008,Kyoto、第35回炭素材料学会年会にて発表
審査請求日 平成23年12月5日(2011.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
発明者または考案者 【氏名】後藤 和馬
【氏名】石田 祐之
【氏名】藤井 英司
【氏名】川端 浩二
個別代理人の代理人 【識別番号】100114535、【弁理士】、【氏名又は名称】森 寿夫
【識別番号】100075960、【弁理士】、【氏名又は名称】森 廣三郎
【識別番号】100126697、【弁理士】、【氏名又は名称】池岡 瑞枝
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開2004-210583(JP,A)
特開2003-192316(JP,A)
特開2007-137755(JP,A)
特開2010-100516(JP,A)
特開2006-052115(JP,A)
特開2006-272266(JP,A)
特開2007-001810(JP,A)
特開2008-047472(JP,A)
特開2008-114217(JP,A)
Tamas SZABO et al.,Magnetically modified single and turbostratic stacked graphenes from tris(2,2'-bipyridyl)iron(II) ion-exchanged graphite oxide,The Journal of Physical Chemistry B,Published on Web 5 August 2008,Vol.112, No.46, pp.14461-14469
A. MASTALIR et al.,Synthesis and catalytic application of Pd nanoparticles in graphite oxide,Carbon,Available online 8 July 2008, Vol.46,pp.1631-1637
調査した分野 C01B31/00-31/36
H01M4/90
H01M4/96
H01M8/10
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamII)
Science Direct
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
薄片化した炭素の表面に金属粒子を添着させてなる多孔質炭素材料であって、
グラファイトを液相酸化させて生成した酸化グラファイトを含有したアルカリ性の溶液に、前記金属を含有した2種類以上のアンミン錯体またはエチレンジアミン錯体を添加することによりイオン交換によって前記金属を前記酸化グラファイトに導入し、前記金属が導入された酸化グラファイトを濾別して乾燥させた後、窒素ガス中で200~400℃に加熱して焼成することにより薄片化するとともに、
2種類以上の金属をそれぞれ1重量%以上含有し、
窒素ガス吸着測定において比表面積が380~464m2/gで、平均細孔直径が15~25nmとした多孔質炭素材料。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔質炭素材料で生成した触媒を備えた燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、陽イオン交換した酸化グラファイトで形成される層状化合物からなる多孔質炭素材料及び多孔質炭素材料を用いた燃料電池に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、あるいはパラジウム(Pd)などの貴金属あるいは遷移金属は、触媒作用を有していることから触媒材料としてよく用いられている。特に、昨今では燃料電池における触媒として期待されており、需要も高まっている。さらに、白金の場合には水素吸蔵性を有していることも知られており、単なる触媒として使用されるだけでなく、水素吸蔵を目的として使用されることもある。
【0003】
このように触媒や水素吸蔵材などとして用いられる金属は、気体あるいは液体との反応性を高めるためにできるだけ表面積を大きくしている方が望ましく、所定の基材に微細化した金属を担持させて使用している。
【0004】
具体的には、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブなどの炭素材料に所望の金属を担持させた金属担持炭素材料が提案されている。この金属担持炭素材料では、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブなどの炭素材料を、所定の金属を含有した金属成分含有溶液に接触させることにより、所定の担持位置に金属を担持させている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブを用いるのでなはなく、酸化グラファイトを用い、酸化グラファイトを多孔質化して所望の金属の酸化物を担持させた炭素材料も提案されている。すなわち、グラファイト酸化物に対して長鎖有機アミンや長鎖界面活性剤などを用いて層間を予備拡張し、次いで所望の金属酸化物を導入して不活性雰囲気中で焼成することにより、金属酸化物で架橋された多孔質炭素材料を生成するものである(例えば、特許文献2参照。)。特に、この多孔質炭素材料では金属酸化物として酸化チタンを用い、導入された酸化チタンによる光触媒材料として有望であった。

【特許文献1】特開2006-052115号公報
【特許文献2】特開2006-272266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今、クリーンな電力源としての燃料電池に対する期待の高まりから、小型の燃料電池の開発が行われているが、燃料電池を小型化するためには、触媒の性能をさらに向上させる必要があり、しかもその触媒はできるだけ低コストで製造する必要があった。
【0007】
しかしながら、カーボンナノホーンやカーボンナノチューブなどを用いた金属担持炭素材料ではコスト高となりやすく、安価な触媒の提供が困難であった。一方、酸化グラファイトを用いた場合には材料コストを削減することはできるが、現状では光触媒などの特定用途において有効な材料しか知られておらず、所望の特性を有する安価な触媒を提供することが困難となっていた。
【0008】
本発明者らはこのような現状に鑑み、高性能な触媒を安価に提供すべく研究開発を行って本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多孔質炭素材料は、薄片化した炭素の表面に金属粒子を添着させてなる多孔質炭素材料であって、グラファイトを液相酸化させて生成した酸化グラファイトを含有したアルカリ性の溶液に、金属を含有した2種類以上のアンミン錯体またはエチレンジアミン錯体を添加することによりイオン交換によって金属を酸化グラファイトに導入し、金属が導入された酸化グラファイトを濾別して乾燥させた後、窒素ガス中で200~400℃に加熱して焼成することにより薄片化するとともに、2種類以上の金属をそれぞれ1重量%以上含有し、窒素ガス吸着測定において比表面積が380~464m2/gで、平均細孔直径が15~25nmであるものである。

【0013】
さらに、本発明の燃料電池では、上記の多孔質炭素材料で生成した触媒を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、グラファイトを液相酸化させて酸化グラファイトを生成する工程と、酸化グラファイトを含有させたアルカリ性の溶液に金属錯体を添加してイオン交換によって酸化グラファイトに金属錯体中の金属を導入する工程と、金属が導入された酸化グラファイトを濾別して乾燥させる工程と、乾燥させた酸化グラファイトを空気中または不活性ガス中で焼成する工程とによって多孔質炭素材料を製造することにより、安価なグラファイトから極めて容易に多孔質炭素材料を製造できることにより、安価な多孔質炭素材料を提供できる。
【0015】
しかも、製造された多孔質炭素材料は、窒素ガス吸着測定において比表面積が380~464m2/g以上で、平均細孔直径が15~25nmとなって、比表面積が極めて大きくなっていることから、金属による触媒作用あるいは水素吸蔵作用を向上させることができ、そのうえ、金属を1重量%以上含有させることができることによっても、金属による触媒作用あるいは水素吸蔵作用を向上させることができる。

【0016】
また、上記の多孔質炭素材料で生成した触媒を備えた燃料電池では、触媒を低コスト化できることから安価な燃料電池を提供可能とすることができるだけでなく、触媒中の金属の含有量を調整することにより高効率な燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の多孔質炭素材料では、安価なグラファイトを酸化させることにより酸化グラファイトを生成し、この酸化グラファイトの陽イオン交換性を利用して陽イオン化した金属を導入し、金属が導入された酸化グラファイトを焼成することによりグラファイト層表面に金属または金属微粒子が存在する多孔質炭素材料を生成している。

【0018】
多孔質炭素材料では、グラファイト層の薄膜が広がって多孔質化しているので、比表面積を大きくすることができるとともに、薄膜化されたグラファイト層の表面に広く分布する金属を触媒として効果的に機能させることができる。
【0019】
さらに、炭素表面の金属が水素吸蔵性を有する場合には、多孔質化した炭素の水素吸蔵性と相まって、水素吸蔵性の高いハイブリッドの多孔質炭素材料とすることができる。
【0020】
また、酸化グラファイトに導入する金属を白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)をはじめとする触媒作用を有する所要の金属とすることにより、多孔質炭素材料は固体高分子形燃料電池(PEFC)、りん酸形燃料電池(PAFC)、アルカリ電解質形燃料電池(AFC)などとして知られている燃料電池の触媒として用いることができる。なお、酸化グラファイトに導入する金属は、上記金属に限定するものではなく、触媒として用いられる金属であれば何であってもよい。
【0021】
以下において、具体的な実施形態について詳説する。
【0022】
<第1実施形態>
(1)酸化グラファイトの生成
酸化グラファイトは、グラファイト(和光純薬)を発煙硝酸や塩素酸カリウムによって酸化させて生成しており、具体的には既知のBrodie法で行った。
【0023】
(2)酸化グラファイトへの金属の導入
2-1)
0.2gの酸化グラファイトを10mlのイオン交換水に分散させ、15分間程度超音波洗浄した後、0.1規定濃度の水酸化ナトリウム溶液でpH9に調整した。なお、水酸化ナトリウム溶液の代わりに、適当な濃度のアンモニア水を用いてもよい。説明の便宜上、酸化グラファイトが分散されたpH9の溶液をグラファイト液と呼ぶ。
【0024】
2-2)
0.2gの塩化テトラアミン白金(II)水和物を50mlのイオン交換水に溶解させ、グラファイト液を加えて24時間攪拌した。このとき、酸化グラファイトには、陽イオン交換によって陽イオンの白金が導入されることとなる。
【0025】
2-3)
攪拌後、濾過を行って酸化グラファイトを濾別し、空気中で約60℃に加温して乾燥させ、白金が導入された酸化グラファイトを生成した。
【0026】
(3)焼成
白金が導入された酸化グラファイトを、200℃以上の温度で焼成して、多孔質炭素材料を生成した。焼成は、空気中で行ってもよいし、真空中で行ってもよいし、所定の不活性ガス中で行ってもよい。焼成時間は数分でも十分であるが、金属の結晶化を考慮すると、できるだけ長い方が好ましく、生産性との兼ね合いから適宜の時間とすることができる。
【0027】
窒素ガス吸着測定によってそれぞれの比表面積を確認したところ、グラファイトの比表面積は8.0m2/gで、酸化グラファイトの比表面積は6.5m2/gであった。空気中で200℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は398m2/gで、空気中で300℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は227m2/g、空気中で400℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は121m2/gであった。一方、不活性ガスである窒素ガス中で200℃-30分の焼成を行った場合の比表面積は380m2/g、窒素ガス中で400℃-30分の焼成を行った場合の比表面積は464m2/gであった。窒素ガス中での焼成では、空気中での焼成でみられた焼成温度上昇による比表面積の低下現象が起こらなかった。
【0028】
多孔質炭素材料は、窒素ガス吸着測定において、焼成前の酸化グラファイトの状態で比表面積が6.5m2/gであるため、焼成によって比表面積が30m2/g以上になっていれば十分であり、十分な大きさの比表面積が得られることがわかる。また、このとき、多孔質炭素材料における平均細孔直径は、Vを全細孔容積、AをBET比表面積として、4V/Aによって計測可能であって、400℃で焼成された多孔質炭素材料において約15~25nmであり、5~50nmであればよい。
【0029】
図1は、(ア)酸化グラファイト、(イ)焼成前の酸化グラファイト、(ウ)空気中で200℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料、(エ)空気中で300℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料、(オ)空気中で400℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料のX線回折パターンを示したグラフである。焼成された酸化グラファイトでは、2θ=22~28°に面指数(002)のグラファイト層のピークが現れ、さらに、結晶化した白金のピークも現れることから、白金含有グラファイト多孔体となっていることがわかる。また、より高温で焼成することにより、白金粒子の結晶化が促進されていることがわかる。このことは、焼成温度の制御によって、白金の粒子状態を制御できることを示している。
【0030】
さらに、多孔質炭素材料の窒素吸脱着等温線を計測したところ、図2に示すように、メソ孔を有するポーラスな構造を有していることが確認された。
【0031】
また、空気中で400℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料を電子顕微鏡で観察したところ、図3に示すように、最大で5nm程度の白金微粒子が観察された。なお、最小のものは観察できないサイズとなっており、微粒子状となっていることが確認された。
【0032】
また、多孔質炭素材料の重量分析を行ったところ、白金の含有量が20~22重量%程度であることがわかった。なお、多孔質炭素材料における白金の含有量は、酸化グラファイトへの白金の導入量を調整することにより制御可能であり、1重量%以上含有させることが可能である。
【0033】
なお、酸化グラファイトへの白金の導入量を調整する場合には、酸化グラファイトの酸化の度合いを調整したり、白金錯体によるイオン交換量を調整したりすることによっても容易に調整でき、任意の量の白金ナノ粒子を導入させることができる。特に、酸化グラファイトの酸化の度合いを調整して、酸化の度合いを高めることにより、さらに多くの白金を導入することができる。
【0034】
<第2実施形態>
塩化テトラアミン白金(II)水和物の代わりにビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物([Pt(en)2]Cl2)を用いて、Brodie法により生成された酸化グラファイトに白金を導入した。なお、ビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物は以下のようにして合成した。
【0035】
1)2gのテトラクロロ白金(II)酸カリウム(K2[PtCl4])を100mlの水に溶解させ、二等分した。説明の便宜上、二等分した一方をA液、他方をB液と呼ぶ。
【0036】
2)A液を沸騰させながら約1gのエチレンジアミンを加えた。このとき、ピンク色のマグヌス類塩([Pt(en)2][PtCl4])が生じるが、溶解するまで加熱攪拌を行った。
【0037】
3)マグヌス類塩が溶解した後、室温まで冷却し、0.5Mの塩酸で中和した。
【0038】
4)中和されたA液にB液を加えることによりマグヌス類塩を生じさせ、濾過するとともに水で洗浄して沈殿物を濾別した。
【0039】
5)濾別された沈殿物を100mlの水で洗い流しながら懸濁させて懸濁液を生成し、この懸濁液に2.5gのエチレンジアミンを加えて沸騰させながら攪拌することにより、沈殿物を溶解させた。説明の便宜上、沈殿物が溶解された溶液をC液と呼ぶ。
【0040】
6)C液を濾過して得られた濾液を結晶が析出するまで加熱蒸発させ、エタノールとアセトンを1:1で混合した混合液を約500ml加えて、白色のビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物の沈殿を生じさせた。
【0041】
7)沈殿したビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物を吸引濾過し、乾燥させて粉末状のビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物を生成した。
【0042】
ビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物による酸化グラファイトへの白金の導入は、上述した塩化テトラアミン白金(II)水和物による酸化グラファイトへの白金の導入の代わりに、ビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物をそのまま用いて行っており、説明は省略する。
【0043】
ビス(エチレンジアミン)白金(II)塩化物によって白金が導入された酸化グラファイトの焼成は、塩化テトラアミン白金(II)水和物の場合と同様に、200℃以上の温度による1時間以上の焼成であり、焼成によって多孔質炭素材料を生成した。焼成は、空気中で行ってもよいし、真空中で行ってもよいし、所定の不活性ガス中で行ってもよい。
【0044】
焼成によって、空気中で200℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は257m2/g、空気中で300℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は380m2/gであった。一方、真空中で200℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は141m2/g、真空中で300℃-2時間の焼成を行った場合の比表面積は365m2/gで、空気中で焼成を行う方が比表面積を大きくすることができる。
【0045】
図4は、(ア)酸化グラファイト、(イ)焼成前の酸化グラファイト、(ウ)真空中で200℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料のX線回折パターンを示したグラフであり、焼成された酸化グラファイトでは、2θ=22~28°に面指数(002)のグラファイト層のピークが現れ、空気中で200℃-2時間の焼成を行った酸化グラファイトでは、結晶化した白金のピークも現れた。
【0046】
また、塩化テトラアミン白金(II)水和物の場合と同様に、多孔質炭素材料はメソ孔を有するポーラスな構造を有していることが確認された。
【0047】
<第3実施形態>
0.2gのヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物を50mlのイオン交換水に溶解させ、第一実施形態の場合と同じグラファイト液を加えて24時間攪拌して、酸化グラファイトの層間にルテニウム錯体を導入した。
【0048】
その後、濾過を行って酸化グラファイトを濾別し、空気中で約60℃に加温して乾燥させた後、200℃以上の温度で焼成して、多孔質炭素材料を生成した。
【0049】
窒素ガス中で400℃-30分焼成した場合には、比表面積が523m2/gであり、また、熱重量分析で25重量%のルテニウムが含有されていることが確認できた。さらに、この多孔質炭素材料を電子顕微鏡で観察したところ、図5に示すように、平均2nm程度の金属微粒子が存在していることが確認できた。ルテニウムについても、酸化グラファイトの酸化度を変えることによりさらに導入量を増やすことができた。
【0050】
<第4実施形態>
テトラアンミンパラジウム(II)塩化物1水和物をイオン交換水に溶解させて、第一実施形態の場合と同じグラファイト液を加えて攪拌して、酸化グラファイトの層間にパラジウム錯体を導入した。
【0051】
その後、濾過を行って酸化グラファイトを濾別し、空気中で加温して乾燥させた後、200℃以上の温度で焼成して、多孔質炭素材料を生成した。
【0052】
図6は、窒素ガス中で400℃-30分焼成した場合の多孔質炭素材料の電子顕微鏡写真であって、平均10nm程度のパラジウム微粒子が存在していることが確認できた。
【0053】
<第5実施形態>
酸化グラファイトに銅のアンミン錯体を導入して、焼成することにより、図7の電子顕微鏡写真に示すように、銅の微粒子を含有した多孔質炭素材料を生成することができた。なお、この場合、上述した実施形態のように均一な金属微粒子の分散はみられないが、ある程度かたまって微粒子が存在している。銅のアンミン錯体の代わりにニッケルのアンミン錯体を用いても、同様にニッケルの微粒子を含有した多孔質炭素材料を生成することができた。
【0054】
上述した実施形態では、それぞれ酸化グラファイトに白金、ルテニウム、パラジウム、銅、ニッケルのみを導入しているが、これら以外の貴金属や遷移金属を導入して、所望の金属を含有した多孔質炭素材料を生成してもよく、特に、1種類だけでなく2種類以上の金属を含有する多孔質炭素材料を生成することもできる。
【0055】
また、酸化グラファイトに金属を導入する際に、アンミン錯体またはエチレンジアミン錯体を用いているが、その他の錯体を用いてもよい。
【0056】
<燃料電池の触媒としての実施形態>
燃料電池では、水素やメタノールなどの燃料を化学反応させて水素イオンと電子に分解しているいわゆる燃料極(負極)を、白金(Pt)あるいはルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)等を含有する多孔質炭素材料を用いて形成し、これらの金属を触媒として水素イオンと電子の分解を生じさせている。
【0057】
燃料極は、上述した方法で製造することにより金属を含有した多孔質炭素材料に所要のバインダを混合してペースト状とし、所定形状の成形を行って、焼成することによって形成し、所定位置に外部接続用の電極を取り付けている。
【0058】
なお、ペースト状とする際には、金属を含有している多孔質炭素材料だけでなく、金属を含有していない多孔質炭素材料を混合してもよく、この場合、比表面積の異なる多孔質炭素材料を混合することにより、燃料極の見かけ上の比表面積を調整してもよい。また、1つの多孔質炭素材料に複数種類の金属を含有させるのでなく、それぞれ異なる種類の金属を含有した多孔質炭素材料を混合してもよい。
【0059】
このようにして形成した燃料極は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、りん酸形燃料電池(PAFC)またはアルカリ電解質形燃料電池(AFC)に好適に用いることができる。
【0060】
特に、この場合の燃料極は、多孔質炭素材料であるので水素吸蔵性を示すため、ハイブリッドの多孔質材料として燃料電池に好適に用いることができ、燃料電池の高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(ア)酸化グラファイト、(イ)焼成前の酸化グラファイト、(ウ)空気中で200℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料、(エ)空気中で300℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料、(オ)空気中で400℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料のX線回折パターンを示したグラフである。
【図2】多孔質炭素材料の窒素吸脱着等温線のグラフである。
【図3】多孔質炭素材料の電子顕微鏡写真である。
【図4】(ア)酸化グラファイト、(イ)焼成前の酸化グラファイト、(ウ)空気中で200℃-2時間の焼成を行った多孔質炭素材料のX線回折パターンを示したグラフである。
【図5】第3実施形態の多孔質炭素材料の電子顕微鏡写真である。
【図6】第4実施形態の多孔質炭素材料の電子顕微鏡写真である。
【図7】第5実施形態の多孔質炭素材料の電子顕微鏡写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図3】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6