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明細書 :線量計測方法及びこの線量計測方法に用いるファントム並びにX線撮影装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5207138号 (P5207138)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
発明の名称または考案の名称 線量計測方法及びこの線量計測方法に用いるファントム並びにX線撮影装置
国際特許分類 A61B   6/03        (2006.01)
H05G   1/36        (2006.01)
G01T   7/00        (2006.01)
H05G   1/26        (2006.01)
FI A61B 6/03 F
H05G 1/36 J
G01T 7/00 C
H05G 1/26 J
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2008-554044 (P2008-554044)
出願日 平成20年1月16日(2008.1.16)
国際出願番号 PCT/JP2008/050385
国際公開番号 WO2008/087952
国際公開日 平成20年7月24日(2008.7.24)
優先権出願番号 2007007379
優先日 平成19年1月16日(2007.1.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年12月17日(2010.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】勝田 稔三
【氏名】五反田 留見
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】井上 香緒梨
参考文献・文献 特開昭63-235881(JP,A)
特表平10-506298(JP,A)
特開2003-240858(JP,A)
特表2004-510466(JP,A)
特開2005-148033(JP,A)
登録実用新案第3096924(JP,U)
福居壽人,外4名,CT検査時の患者表面線量分布の測定 第3報—検査時の測定—,日本放射線技術学会雑誌,2001年 9月20日,vol.57,No.9,p.1029
調査した分野 A61B 6/00~6/14
G01T 1/00~7/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
X線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置のX線の線量をファントムに装着したフィルム型線量計で計測する線量計測方法において、
前記ファントムには、回転する前記X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または前記中心軸を横断する平面に沿って前記フィルム型線量計を配置し
前記ファントムは円柱形または楕円柱形とし、前記フィルム型線量計が配設される平面に沿って少なくとも第1の基体と第2の基体とに分割するとともに、この第1の基体と第2の基体とで前記フィルム型線量計を挟持固定することを特徴とする線量計測方法。
【請求項2】
前記ファントムには周面に沿ってフィルム型線量計を装着することを特徴とする請求項1に記載の線量計測方法。
【請求項3】
X線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置のX線の線量を計測する際に使用するファントムにおいて、
回転する前記X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または前記中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置し、
前記フィルム型線量計が配設される平面に沿って少なくとも第1の基体と第2の基体とに分割するとともに、この第1の基体と第2の基体とで前記フィルム型線量計を挟持固定することにより円柱形または楕円柱形となることを特徴とするファントム。
【請求項4】
ベッド上に横たわった被検者の体軸周りにX線源を回転させてX線による撮影を行うX線撮影装置において、
前記X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または前記中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置したファントムを用いて、前記X線源から照射されたX線の線量の検出及び/または線量較正され
前記フィルム型線量計は、前記X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または前記中心軸を横断する平面で分割されるファントムによって挟持固定されていることを特徴とするX線撮影装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置における線量計測方法、及びこの線量計測方法に用いるファントム、並びにX線撮影装置であって、特に、X線撮影装置がマルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィー、またはフラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーなどのように、ベッド上に横たわった被検者の体軸周りを回転するX線源を備えているものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピューテッド・トモグラフィー(以下、単に「CT」という)による検査では、人体を輪切り状とした画像を生成しているが、この画像を生成するための撮影においては、X線を照射するX線源を被検者である人体の体軸周りに回転させながらX線を照射している。
【0003】
したがって、人体には360°の方向からX線が照射されており、一般的な胸部X線撮影などよりもX線に長時間晒されることとなるので、X線による被ばくの問題が生じるおそれがあった。
【0004】
そこで、X線源からのX線の照射線量が適正レベルであるかを判断するために、あらかじめ照射線量が計測されている。特に、CTによる検査の場合には360°の方向からX線が照射されているため、このような場合の照射線量を計測するために、円柱形状としたアクリル材で形成したファントムが用いられている。
【0005】
この円柱形状のファントムには、所定位置にペンシル状の線量計を挿入可能とした挿入孔を設けており、この挿入孔にペンシル状の線量計を挿入してX線の照射線量を計測している(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このようなファントムを用いることによって、所定位置でのX線の照射線量を計測することは可能であるが、計測されるのは線量計が配置された所定の領域の照射線量だけであり、ピンポイント的な計測しかできなかった。
【0007】
そこで、平板状の蛍光ガラス線量計を用いて二次元的に照射線量を計測可能とした照射線量の計測方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。

【特許文献1】特開2005-185328号公報
【特許文献2】特開2006-047009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蛍光ガラス線量計を用いてX線の照射線量を計測した場合には、蛍光ガラス線量計が配置された領域の照射線量は正確に計測できるが、それ以外の領域の照射線量が知りたい場合には、蛍光ガラス線量計の配置を調整してX線の照射を再度行う必要があるという問題があった。
【0009】
特に、X線が照射されている全領域の照射線量を計測したい場合には、蛍光ガラス線量計の配置を蛍光ガラス線量計の厚み方向に、蛍光ガラス線量計の厚み分だけ順次移動させながら繰り返して計測を行う必要があり、極めて多大な時間を要するために、現実的には実行不可能であった。
【0010】
本発明者らは、このような現状に鑑み、X線が照射されている全領域の照射線量をより簡便に計測すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の線量計測方法では、X線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置のX線の線量をファントムに装着したフィルム型線量計で計測する線量計測方法において、ファントムには、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置した。
【0012】
さらに、本発明の線量計測方法では、ファントムを円柱形または楕円柱形とし、フィルム型線量計が配設される平面に沿って少なくとも第1の基体と第2の基体とに分割するとともに、この第1の基体と第2の基体とでフィルム型線量計を挟持固定することにも特徴を有し、ファントムの周面に沿ってフィルム型線量計を装着することにも特徴を有するものである。
【0013】
また、本発明のファントムでは、X線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置のX線の線量を計測する際に使用するファントムにおいて、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置することとした。
【0014】
さらに、本発明のファントムでは、フィルム型線量計が配設される平面に沿って少なくとも第1の基体と第2の基体とに分割するとともに、この第1の基体と第2の基体とでフィルム型線量計を挟持固定することにより円柱形または楕円柱形となることにも特徴を有するものである。
【0015】
また、本発明のX線撮影装置では、ベッド上に横たわった被検者の体軸周りにX線源を回転させてX線による撮影を行うX線撮影装置において、X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置したファントムを用いて、X線源から照射されたX線の線量の検出及び/または線量較正されているものである。
【0016】
さらに、本発明のX線撮影装置では、フィルム型線量計を、X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面で分割されるファントムによって挟持固定していることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、X線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置のX線の線量をファントムに装着したフィルム型線量計で計測する線量計測方法において、ファントムには、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置したことによって、フィルム型線量計での計測結果を、フィルム型線量計上の位置と空間的に同一と見なし得る地点の測定結果として補完して利用することができ、1回の計測によってX線が放射されている全領域の線量を計測することができる。
【0018】
そして、ファントムを円柱形または楕円柱形とし、フィルム型線量計が配設される平面に沿って少なくとも第1の基体と第2の基体とに分割するとともに、この第1の基体と第2の基体とでフィルム型線量計を挟持固定することによって、フィルム型線量計を安定的に固定することができる。
【0019】
請求項記載の発明によれば、請求項1に記載の線量計測方法において、ファントムの周面に沿ってフィルム型線量計を装着することによって、ファントムの周面に装着したフィルム型線量計でファントムに対して照射したX線の照射条件情報を取得できるので、より正確な線量の計測を可能とすることができる。
【0020】
請求項記載の発明によれば、X線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置のX線の線量を計測する際に使用するファントムにおいて、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置することによって、1回の計測によってX線が照射されている全領域の線量を計測することができるファントムを提供できる。
【0021】
そして、フィルム型線量計が配設される平面に沿って少なくとも第1の基体と第2の基体とに分割するとともに、この第1の基体と第2の基体とでフィルム型線量計を挟持固定することにより円柱形または楕円柱形としたことによって、フィルム型線量計を確実に固定できるファントムを提供できる。
【0022】
請求項記載の発明によれば、ベッド上に横たわった被検者の体軸周りにX線源を回転させてX線による撮影を行うX線撮影装置において、X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置したファントムを用いて、X線源から照射されたX線の線量の検出及び/または線量較正されることにより、撮影精度を向上させることができる。しかも、X線の線量を、X線が照射されている全領域にわたってあらかじめ計測可能なことから、被検者が想定外の量のX線に曝されることを確実に防止できる。
【0023】
そして、フィルム型線量計を、X線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面で分割されるファントムによって挟持固定していることによって、X線の線量を精度よく計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】マルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィーであるX線撮影装置の概略図模式図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるファントムの説明図である。
【図3】変形例のファントムの説明図である。
【図4】フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーであるX線撮影装置の概略図模式図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるファントムの説明図である。
【図6】変形例のファントムの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
11,41 X線源
12,42 円形軌道
12a,42a 中央開口
13,43 ベッド
20,50 フィルム型線量計
30,60 ファントム
30a,60a 第1基体
30b,60b 第2基体
31 固定具
31a 突出片
32 係合用凹部
61 突出片
62 嵌合孔
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の照射線量の計測方法では、マルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィー、またはフラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーなどのようにX線源を回転させながらX線による撮影を行うX線撮影装置におけるX線の線量を計測するものであり、1回の計測によってX線が照射されている全領域の線量を計測可能としているものである。
【0027】
すなわち、従来のようにペンシル型の線量計を用いて強度を計測するのではなく、シート状となったフィルム型線量計を用いて強度を計測することにより、1回の計測によって所定の領域の線量を計測可能としているものである。
【0028】
特に、フィルム型線量計は、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を含む平面、または中心軸を横断する平面に沿ってフィルム型線量計を配置することにより、フィルム型線量計で計測された所定の位置の計測結果は、フィルム型線量計上の位置と空間的に同一と見なし得る地点の測定結果として補完して利用することができるので、1回の計測によってX線が照射されている全領域の線量を計測することができる。
【0029】
しかも、フィルム型線量計を用いることによって、空間における分解能を著しく向上させることもできる。
【0030】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。図1は、X線撮影装置がマルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィーである場合の概略図模式図である。
【0031】
マルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィーでは、X線源11を円形軌道12に沿って回転させており、この円形軌道12の中央開口12aにベッド13を挿通状態に設けるとともに、このベッド13を中央開口12aに対して出し入れ状に進退移動させることによって、ベッド13上に横たわった被検者を中央開口に通して、被検者の断面画像を取得可能としている。
【0032】
X線撮影装置のX線の線量を計測する場合には、ベッド13上にフィルム型線量計20を装着したファントム30を配置して、被検者の全身撮影と同一のX線の照射条件でファントム30にX線を照射している。
【0033】
フィルム型線量計20は、ラジオクロミックフィルムとしており、所定の線量計測範囲での計測が可能な大きさとしている。図2に示すように、本実施形態では、フィルム型線量計20を矩形形状としているが、矩形形状に限定するものではなく、適宜の形状としてもよい。また、本実施形態では、フィルム型線量計20を照射線量の計測範囲をカバーする1枚のフィルム型線量計20で構成しているが、場合によっては複数枚のフィルム型線量計で計測範囲をカバーしてもよい。
【0034】
ファントム30は、図2に示すように、円柱体を中心軸方向に二分割した半円柱体の第1基体30aと第2基体30bとで構成している。第1基体30aと第2基体30bは、それぞれ半円柱体の中心軸を含む平面を有しており、この平面間にフィルム型線量計20を配置して第1基体30aと第2基体30bとで挟持している。
【0035】
第1基体30a及び第2基体30bは、人体におけるX線の減衰率に近い特性を有した素材で構成することが望ましく、従来のファントムと同様に、アクリルや軟性アクリルなどを用いて構成したり、あるいは第1基体30a及び第2基体30bを中空構造として水を充填したりして構成している。
【0036】
第1基体30a及び第2基体30bの大きさは、被検者の被検部位の大きさによって適宜の大きさとしてよく、本実施形態では、被検部位を一般的な大人の胴体と想定して、直径約30cm程度の円柱体を二分割した形状としている。第1基体30a及び第2基体30bの長さは30cm以上としている。なお、例えば、被検者が小児や未熟児であったり、腕や頭部などのような部分的な被検部位を診断したりする際には、第1基体30a及び第2基体30bにはより小さいものを使用した方が望ましく、直径約6~30cm程度の円柱体を二分割した形状のもとしてよい。
【0037】
図2中、31は第1基体30a及び第2基体30bの両端部にそれぞれ装着して第1基体30aと第2基体30bとを一体的に連結する固定具であり、第1基体30a及び第2基体30bの両端面の所定位置にそれぞれ設けた係合用凹部32に挿入する突出片31aを備え、この突出片31aを係合用凹部32に挿入することによって固定具31を介して第1基体30aと第2基体30bとを連結している。第1基体30aと第2基体30bとを一体的に連結する固定具は、この形態に限定する物ではなく、適宜の固定具で第1基体30aと第2基体30bとを一体的に連結してよい。
【0038】
第1基体30aと第2基体30bとで挟持されるフィルム型線量計20は、フィルム型線量計20自体の腰の強さによって撓みが生じなければ、図1に示すようにファントム30からはみ出す大きさとしてもよい。
【0039】
このようにフィルム型線量計20が装着されたファントム30を、図1に示すようにベッド13の所定位置に配置して、ファントム30にX線を照射している。このとき、ベッド13上のファントム30はベッド13の進退方向に沿わせて配置し、フィルム型線量計20を円形軌道12の中心軸、すなわち回転するX線源11の回転中心が位置する中心軸を含む鉛直平面上に位置させて、X線源11の回転中心が位置する中心軸をフィルム型線量計20上に位置させている。
【0040】
なお、X線源11の回転中心が位置する中心軸をフィルム型線量計20上に位置させることができるのであれば、フィルム型線量計20をX線源11の回転中心が位置する中心軸を含む鉛直平面上に必ずしも位置させる必要はないが、実際には、X線源11の回転中心が位置する中心軸を含む鉛直平面上にフィルム型線量計20を配置しないで、X線源11の回転中心が位置する中心軸をフィルム型線量計20上に位置させることが困難であるので、フィルム型線量計20をX線源11の回転中心が位置する中心軸を含む鉛直平面上に配置している。
【0041】
フィルム型線量計20へのX線の照射にともなって、フィルム型線量計20には線量分布に応じた濃淡の分布が生じ、この濃淡の分布からX線の線量の分布情報を得ることができる。特に、この線量の分布情報は濃淡として現れるため、視覚的に確認することができる。
【0042】
さらに、この線量の分布情報をスキャナ装置などによってパーソナルコンピュータなどの電子計算機に取り込み、濃度に応じた数値化を行うとともに、フィルム型線量計20上の中心軸まわりに分布情報を回転させることにより、三次元の線量の分布データとすることができる。ここで、濃度に応じた数値化とは、たとえばスキャナ装置でフィルム型線量計20の濃度を、あらかじめ設定した256段階あるいは1024段階などによって数値化することであり、このように数値化された分布情報に基づいて三次元の照射線量の分布データを生成している。
【0043】
したがって、第1基体30aと第2基体30bとで挟持されるフィルム型線量計20は、第1基体30a及び第2基体30bに形成されている平面のうちの少なくとも円形軌道12の中心軸を含む半分の領域の大きさとなっていれば、フィルム型線量計20上の中心軸まわりに照射線量の分布情報を360°回転させることにより三次元の分布情報として、三次元の照射線量の分布データを生成することができる。
【0044】
このようにして得られた分布データに基づいて、X線源11からのX線の照射線量が適正であることを確認でき、想定外のX線被ばくのおそれのないX線撮影装置とすることができる。なお、X線源11の較正を目的とした線量の計測を行う場合には、ファントム30には少なくとも1カ所に、X線の線量の大きさを検出可能な線量計を設け、この線量計の検出結果と、フィルム型線量計20による線量分布情報とから、X線源11からの照射線量を特定してもよい。
【0045】
本実施形態では、第1基体30aと第2基体30bとで構成されるファントム30を円柱体としているが、円柱体に限定するものではなく、ファントムは楕円柱体としてもよい。惰円柱体の場合にも、ファントムは中心軸を含む平面で二分割した第1基体と第2基体とで構成し、第1基体と第2基体の分割面間にフィルム型線量計を挟持している。
【0046】
なお、分割面の大きさは、図3に模式的に示すように、惰円柱体のファントム30'に対する分割面Pの形成形態によって異なり、必要に応じて適宜の大きさとしてよい。ここで、惰円柱体のファントム30'を用いた場合には、ファントム30'の形状をあらかじめ調整することにより、惰円柱体のファントム30'の中心軸を円形軌道12の中心軸に一致させやすくすることができるので、適宜の分割面Pを採用することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ファントム30を第1基体30aと第2基体30bとで構成しているが、第1基体30a及び第2基体30bをアクリル材で形成した場合、第1基体30a及び第2基体30bの重量が比較的大きくなりやすいため、力の弱い人には扱いにくい場合があるので、第1基体30a及び第2基体30bをさらに分割可能に構成してもよい。例えば、半円柱状となっている第1基体30a及び第2基体30bをそれぞれに分割して、4つの四分の一円柱状としてもよい。
【0048】
しかも、分割可能とした第1基体30a及び第2基体30bには、それぞれの分割面部分にさらにフィルム型線量計を挟持させることにより、線量の分布情報の検出精度を向上させてもよい。
【0049】
あるいは、第1基体30aと第2基体30bとを連結したファントム30の周面には、適宜の粘着テープなどを利用してフィルム型線量計を装着することもできる。このように、ファントム30の周面にフィルム型線量計を装着した場合には、円形軌道12に沿って回転するX線源11の回転角度を検出することができ、たとえば、X線源11が円形軌道12に沿って1回転していなかったり、あるいは1回転以上回転していたりするなどのX線の照射条件情報を検出でき、線量分布の検出精度を向上させる補正情報を得ることができる。
【0050】
次に、図4に示すように、X線撮影装置がフラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーである場合について説明する。
【0051】
フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーでも、X線源41を円形軌道42に沿って回転させており、この円形軌道42の中央開口42aにベッド43を挿通状態に設けている。なお、フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーでは、X線源41からX線を大きく拡散させて放射しているので、撮影時にベッド43を進退移動させる必要はなく、撮影位置の調整のためだけにベッド43を進退移動させている。
【0052】
X線撮影装置の線量を計測する場合には、ベッド43上にフィルム型線量計50を装着したファントム60を配置して、被検者の撮影と同一のX線の照射条件でファントム60にX線を照射している。
【0053】
フィルム型線量計50は、ラジオクロミックフィルムとしており、所定の線量計測範囲での計測が可能な大きさとしている。図5に示すように、本実施形態でも、フィルム型線量計50を矩形形状としているが、矩形形状に限定するものではなく、適宜の形状としてもよい。
【0054】
ファントム60は、図5に示すように、円柱体を二分割した第1基体60aと第2基体60bとで構成している。特に、第1基体60a及び第2基体60bは、回転するX線源41の回転中心が位置する中心軸を横断する平面で円柱体を分割した形状とし、第1基体60a及び第2基体60bには所定の傾斜平面を設けている。フィルム型線量計50はこの傾斜平面間に配置して第1基体60aと第2基体60bとで挟持している。ファントム60は円柱体に限定するものではなく、惰円柱体であってもよい。
【0055】
第1基体60a及び第2基体60bは、人体におけるX線の減衰率に近い特性を有した素材で構成することが望ましく、従来のファントムと同様に、アクリルや軟性アクリルなどを用いて構成したり、あるいは第1基体60a及び第2基体60bを中空構造として水を充填したりして構成している。
【0056】
第1基体60a及び第2基体60bの大きさは、本実施形態でも、被検部位を一般的な大人の胴体と想定して、直径約30cm程度の円柱体を二分割した形状としている。なお、例えば、被検者が小児や未熟児であったり、腕や頭部などのような部分的な被検部位を診断したりする際には、第1基体30a及び第2基体30bにはより小さいものを使用した方が望ましく、直径約6~30cm程度の円柱体を二分割した形状として、第1基体60aと第2基体60bを連結して形成される円柱体の中心軸が、回転するX線源41の回転中心と一致する大きさであることが望ましい。
【0057】
第1基体60a及び第2基体60bの長さは30cm以上として、フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーにおける一般的な撮影領域をカバー可能としている。すなわち、第1基体60a及び第2基体60bにそれぞれ設けた傾斜平面が、フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーにおける一般的な撮影領域を含むように構成しており、この傾斜平面に沿ってフィルム型線量計50を配設することによって必要十分な領域の線量の計測を可能としている。
【0058】
なお、本実施形態では、第1基体60aの傾斜平面には、所定位置に傾斜平面に対して突出状に突出片61を設け、一方、第2基体60bの傾斜平面には、突出片61と対向する所定位置に突出片61が嵌入される嵌合孔62を設けて、突出片61を嵌合孔62に嵌合させることによって第1基体60aと第2基体60bとを一体的に連結可能としている。
【0059】
なお、突出片61は、円柱状の連結ピンとして、第1基体60aの傾斜平面の所定位置に突出片61が挿入される嵌合孔を設けて、突出片61を介して第1基体60aと第2基体60bとを一体的に連結可能としてもよい。また、本実施形態では突出片61を円柱状としているが、円柱状に限定されるものではなく、適宜の形状としてよい。
【0060】
あるいは、第1基体60aと第2基体60bとを、突出片61と嵌合孔62とを嵌合させて連結するのではなく、第1基体60aと第2基体60bとにはそれぞれを貫く貫通孔を設けて、この貫通孔に第1基体60aから第2基体60bまでを貫く連結ボルトを挿入して、この連結ボルトの端部を第1基体60a及び第2基体60bからそれぞれ突出させて固定用のナットを装着することにより、連結ボルトを介して、第1基体60aと第2基体60bを一体的に連結してもよい。なお、連結ボルトは、X線の散乱を生じさせないように、アクリル材製や軟性アクリル材製とすることが望ましい。
【0061】
第1基体60aと第2基体60bとで挟持されるフィルム型線量計50には、所定位置に突出片61が挿通される貫通孔51を設けている。貫通孔51を複数設ける場合には、フィルム型線量計50上におけるX線源41の回転中心位置を挟んで対称となる位置を避けて貫通孔51を配置し、貫通孔51の位置に合わせて突出片61及び嵌合孔62を設けることによって、貫通孔51を設けたことにより計測できない領域の計測結果として、後述するように空間的に同一と見なし得る他の地点の測定結果で補完可能として、貫通孔51を設けたことによる未計測領域が生じることを防止している。
【0062】
また、フィルム型線量計50は、フィルム型線量計50自体の腰の強さによって撓みが生じなければ、図4に示すようにファントム60からはみ出す大きさとして、ファントム60の大きさに規制されることなく計測可能としてもよい。
【0063】
このようにフィルム型線量計50が装着されたファントム60をベッド43の所定位置に配置して、ファントム60にX線を照射している。このとき、ベッド43上のファントム60は、円柱体状のファントム60の中心軸を、円形軌道42の中心軸、すなわち回転するX線源41の回転中心が位置する中心軸に合わせて配置し、X線を照射している。
【0064】
フィルム型線量計50へのX線の照射にともなって、フィルム型線量計50には線量の分布に応じた濃淡の分布が生じ、この濃淡の分布から線量の分布情報を得ることができる。特に、この線量の分布情報は濃淡として現れるため、視覚的に確認することができる。
【0065】
さらに、この分布情報をスキャナ装置などによってパーソナルコンピュータなどの電子計算機に取り込み、濃度に応じた数値化を行うとともに、フィルム型線量計50上の位置と空間的に同一と見なし得る地点の測定結果としてフィルム型線量計50による計測値を用いて、1回の計測によってX線が照射されている全領域の線量を計測したこととしている。
【0066】
フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーの場合では、回転するX線源41の中心軸に対してフィルム型線量計50を横断させて配置しているため、フィルム型線量計50上の位置と空間的に同一と見なし得る地点とは、中心軸と平行な地点である。すなわち、フィルム型線量計50から得られた線量の分布情報を、中心軸と平行に移動させることにより、三次元の線量の分布データとすることができる。
【0067】
このようにして得られた線量の分布データに基づいて、X線源11からのX線の照射線量が適正であることを確認でき、想定外のX線被ばくのおそれのないX線撮影装置とすることができる。
【0068】
また、第1基体60aと第2基体60bとを連結したファントム60の周面には、適宜の粘着テープなどを利用してフィルム型線量計を装着することもできる。このように、ファントム60の周面にフィルム型線量計を装着した場合には、円形軌道42に沿って回転するX線源41の回転角度を検出することができ、たとえば、X線源41が円形軌道42に沿って1回転していなかったり、あるいは1回転以上回転していたりするなどのX線の照射条件情報を検出でき、線量の計測の精度を向上させる補正情報を得ることができる。
【0069】
なお、本実施形態のファントム60では、ファントム60の両端部分において、線量を計測できない領域が生じるため、図6に示すように、ファントム60'の両端にはフィルム型線量計を挿入可能としたスリット65を設け、このスリット65に所定形状としたフィルム型線量計で形成した補助フィルム型線量計21を配設して、この補助フィルム型線量計21で線量を補助的に計測してもよい。ここで、スリット65は、スリット65の一つの面を、円柱状となっているファントム60'の中心軸を含む平面として、この面に補助フィルム型線量計21を配設している。
【0070】
このように、回転するX線源41の回転中心が位置する中心軸を横断させてフィルム型線量計50をファントム60に装着することによって、フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーにおいては初めて高精度・高分解能での線量計測を可能とすることができるものである。
【0071】
本実施形態では、フラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーにおいて、回転するX線源41の回転中心が位置する中心軸を横断させてフィルム型線量計50をファントム60に装着した場合について説明したが、図1のように、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を含む鉛直平面上に位置させてフィルム型線量計を装着したファントムを用いてもよい。同様に、マルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィーにおいて、回転するX線源の回転中心が位置する中心軸を横断させてフィルム型線量計を装着したファントムを用いてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、基本的に分割面によって分割されたファントムの分割面にフィルム型線量計を挟んでいるが、ファントムの所定位置にフィルム型線量計を挿入可能なスリットを設けて、このスリットにフィルム型線量計を挿入して使用してもよい。ただし、ファントムは比較的重いために、大きなスリットを形成した際にはスリット部分からの破損が生じるおそれがあるとともに、小型にした方が持ち運びを含めた取り扱い性を向上させることができるために、ファントムは分割面によって少なくとも2つ以上に分割可能としている。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明では、通常、ピンポイント的にしか線量を計測できなかったマルチ・ディテクター・コンピューテッド・トモグラフィー、またはフラット・パネル・コンピューテッド・トモグラフィーなどのX線撮影装置において、空間的な高分解能での線量分布の検出を可能とすることができ、X線撮影装置での想定外のX線被ばくのおそれを解消できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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