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明細書 :表面処理方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5219224号 (P5219224)
登録日 平成25年3月15日(2013.3.15)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
発明の名称または考案の名称 表面処理方法及びその装置
国際特許分類 B23P  17/00        (2006.01)
B24C   1/10        (2006.01)
C23G   3/00        (2006.01)
B08B   3/02        (2006.01)
B08B   3/10        (2006.01)
FI B23P 17/00 A
B24C 1/10 Z
C23G 3/00 Z
B08B 3/02 A
B08B 3/10 Z
請求項の数または発明の数 19
全頁数 23
出願番号 特願2009-531223 (P2009-531223)
出願日 平成20年9月2日(2008.9.2)
国際出願番号 PCT/JP2008/065724
国際公開番号 WO2009/031517
国際公開日 平成21年3月12日(2009.3.12)
優先権出願番号 2007228276
優先日 平成19年9月3日(2007.9.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月1日(2011.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】大橋 一仁
【氏名】塚本 眞也
【氏名】長谷川 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】100080621、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 寿一郎
審査官 【審査官】五十嵐 康弘
参考文献・文献 特開平06-047672(JP,A)
特開平07-313948(JP,A)
特開2005-161222(JP,A)
特開2005-168382(JP,A)
特開2007-075958(JP,A)
キャビテーション援用加工によるガラス表面の仕上げ加工,日本機械学会2003年度年次大会講演論文集(4),日本,日本機械学会,2003年 8月 5日,303-304
調査した分野 B23P 17/00
B08B 3/00- 3/14
B24C 1/00-11/00
C23G 1/00- 5/06
特許請求の範囲 【請求項1】
流路途中に設けた絞り部を介して流体を吸引することにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる表面処理方法において、前記絞り部を片端に有する流体供給流路の周りを略同心状に取り囲むようにして、該流体供給流路とは前記絞り部のみを介して連通する流体吸引流路を設け、該流体吸引流路内の流体を吸引手段で吸引することにより、前記絞り部の直下流に前記吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流を前記被処理面に対して略垂直に衝突させることにより、前記被処理面に表面処理を施すことを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記流体には微粒子を分散混入し、該微粒子に前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子を前記被処理面に対して略垂直に衝突させることを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記流体吸引流路内の流体を前記吸引手段で吸引するとともに、前記流体供給流路内の流体を圧送手段で圧送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記絞り部を予め閉じた状態で、前記流体供給流路内の流体を前記吸引手段により吸引を行って、前記流体供給流路内の内圧を前記流体吸引流路内の内圧よりも高くした後で、前記絞り部を開くことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項5】
前記流体の温度を、所定温度に制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表面処理方法。
【請求項6】
流体の流路途中に絞り部を設け、該絞り部を介して流体を吸引することにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる構造を備えた表面処理装置において、前記絞り部を片端に有すると共に該絞り部に流体を供給可能な流体供給流路と、該流体供給流路内とは前記絞り部のみを介して連通する流体吸引流路と、該流体吸引流路内の流体を吸引する吸引手段とを備え、前記流体吸引流路は、前記流体供給流路の周りを略同心状に取り囲むと共に、前記絞り部は、前記被処理面に対向配置したことを特徴とする表面処理装置。
【請求項7】
前記流体には微粒子を分散混入し、該微粒子に前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子を前記被処理面に対して略垂直に衝突させることを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
内部に前記流体供給流路を有し片端には前記絞り部を有する一重管体を設け、該一重管体の外側の前記流体吸引流路内に、前記被処理面を露出させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の表面処理装置。
【請求項9】
前記一重管体は、屈曲可能な自在管から成ることを特徴とする請求項8に記載の表面処理装置。
【請求項10】
内部に前記流体供給流路を有し片端には前記絞り部を有する内管と、該内管の外側面との間に前記流体吸引流路を有する外管とから成る一体的な二重管体を設け、前記絞り部近傍の流路内に、前記被処理面を露出させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の表面処理装置。
【請求項11】
前記外管は、絞り部から被処理面までの流路を覆うようにして延設することを特徴とする請求項10に記載の表面処理装置。
【請求項12】
前記絞り部から被処理面までの距離を一定に保持可能な距離保持手段を備えることを特徴とする請求項6から請求項11のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項13】
前記絞り部から被処理面までの距離を検出可能な距離センサを備えることを特徴とする請求項12記載の表面処理装置。
【請求項14】
前記被処理面の非処理部位には、マスク材を覆設することを特徴とする請求項6から請求項13のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項15】
前記絞り部は、前記被処理面上を自在に移動可能な構成とすることを特徴とする請求項6から請求項14のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項16】
前記絞り部の下流側開口部近傍に、複数の孔を有した多孔部材を配設することを特徴とする請求項6から請求項15のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項17】
前記絞り部の下流側開口部近傍に吸引キャビテーション流を所定方向に誘導する誘導部材を配設することを特徴とする請求項6から請求項16のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項18】
前記絞り部の下流側開口部近傍に流体旋回手段を配設することを特徴とする請求項6から請求項17のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項19】
前記絞り部に、該絞り部の孔径を可変する孔径可変手段を配設することを特徴とする請求項6から請求項18のうちのいずれか一項に記載の表面処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流路途中に設けた絞り部を介して流体を吸引あるいは吸引とともに噴射を行うことにより、キャビテーションを起こして気泡(以下、「キャビテーション気泡」とする)を発生させ、該キャビテーション気泡が圧潰して生じる衝撃力(以下、「圧潰衝撃力」とする)を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる表面処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属材料及び、プラスチック、ガラス、半導体等の非金属材料の表面に対し、研磨等の局部的な材料除去により加工を施し、あるいは圧力をかけて表面に圧縮応力を付与して疲労強度等の材料特性を向上させる表面改質を行い、あるいは付着している不純物を除去して洗浄する等の目的で、キャビテーション気泡を含む高圧の流体の噴流(以下、「噴射キャビテーション流」とする)を被処理物の表面(以下、「被処理面」とする)に向かって激しく噴射し、該被処理面にキャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させて、前記加工、表面改質、洗浄等の各種処理(以下、「表面処理」とする)を行う技術が知られている。該表面処理技術によると、これまでの、酸化性の強い腐食液を使用するウェットエッチングにおける環境汚染・装置腐食の問題、微細な研磨材等を高圧エアと一緒に強力に吹きつけるブラスト加工における厳しい作業環境・低強度部材への適用の困難性・表面粗化の問題、小さい穴に通した高圧水の噴流によって切断等を行うウォータジェット加工におけるポンプ等の大型化・高価な装置の問題、切削、研削、研磨等の機械加工における複雑な形状への適用困難性の問題等のいずれに対しても、十分に対応することができる。
【0003】
更に、本発明者等は、鋭意研究した結果、前記キャビテーション気泡を伴った流れを発生させるのに、加工液をポンプで吸引し、この吸引時の加工液の流動を、被加工面上に設けた絞り部によって局部的に制限することにより、該絞り部の下流側にキャビテーションを起こさせ、この際に発生するキャビテーション気泡を含む加工液の流れ(以下、「吸引キャビテーション流」とする)を被加工面に当てる表面処理技術について、開示している(例えば、非特許文献1参照)。該表面処理技術によると、前記噴射キャビテーション流を被加工面に向かって局所的に激しく噴射するこれまでの場合とは異なり、加工液の噴流による過大な局部圧の影響を最小限に止めることができ、被加工面の表面粗さを小さく維持しつつ、高精度で加工を施すことが可能となる。更に、加工液に微粒子を分散混入させることにより、キャビテーション気泡の圧潰衝撃力以外に、該圧潰衝撃力の作用した微粒子が被加工面に激しく衝突する際の衝突力が加わり、被加工面の加工効率を大きく向上させることができる。

【非特許文献1】大橋一仁、外3名「吸引キャビテーション流を用いたマイクロ加工法」、2005年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集、平成17年3月1日、P1307-1308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記吸引キャビテーション流を用いた表面処理技術においては、加工液を満たしたチャンバ内に板状の被加工物を浸漬すると共に、前記チャンバの左右側壁間には、前記被加工物の被加工面上に近接して幅広の可動部材を配置し、該可動部材下部と前記被加工面との間に狭い隙間を設けて絞り部としている。更に、前記チャンバには、可動部材を挟んで前後方向一側に吸込口を、前後方向他側に供給口を設け、該供給口と前記吸込口との間を外部管路によって連通した上で、吸引ポンプによって吸込口から外部管路内に加工液を吸引することにより、チャンバ内の加工液が絞り部内を通過して吸込口に向かって流動し、絞り部の直下流に吸引キャビテーション流が発生する。この状態で、前記可動部材を被加工面に沿って略平行に前後移動させながら、該被加工面に対して吸引キャビテーション流による加工を施すようにしている。
【0005】
このため、前記制御構成おいては、左右側壁の間隔を広げると加工液の流動状態が幅方向位置で大きく異なり、絞り部で発生する吸引キャビテーション流が安定化しないため、大型の被加工物への適用が難しい、という問題があった。更に、絞り部では、左右側壁近傍になると、せん断流により流れの乱れが大きくなり、吸引キャビテーション流による圧潰衝撃力や微粒子の衝突力が著しく増加するため、限られた範囲でしか同一条件による加工が施せず、被加工面全面にわたる均一な加工が困難である、という問題があった。
また、絞り部の直下流で発生した前記吸引キャビテーション流は、チャンバ内の加工液の流れの影響を受け、被加工面に沿って略平行に流れ、キャビテーション気泡、微粒子ともに被処理面に対して略平行に高速移動する。このため、キャビテーション気泡は被処理面近傍に接近すらできず、該被処理面に対してキャビテーション気泡の圧潰衝撃力を十分に作用させることができない。該圧潰衝撃力を受けた微粒子についても、前記被加工面に対して垂直ではなく斜めに衝突し、しかも、滞留することなく絞り部から高速で離れていくので、圧潰衝撃力が作用可能な微粒子の数自体も少ない。従って、被処理面に作用する、キャビテーション気泡の圧潰衝撃力、及び該圧潰衝撃力を受けた微粒子よる衝突力が十分とはいえず、高い処理効率が得にくい、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表面処理方法においては、流路途中に設けた絞り部を介して流体を吸引することにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる表面処理方法において、前記絞り部を片端に有する流体供給流路の周りを略同心状に取り囲むようにして、該流体供給流路とは前記絞り部のみを介して連通する流体吸引流路を設け、該流体吸引流路内の流体を吸引手段で吸引することにより、前記絞り部の直下流に前記吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流を前記被処理面に対して略垂直に衝突させることにより、前記被処理面に表面処理を施す方法である。
【0007】
本発明の表面処理方法においては、前記流体には微粒子を分散混入し、該微粒子に前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子を前記被処理面に対して略垂直に衝突させる方法である。
【0008】
本発明の表面処理方法においては、前記流体吸引流路内の流体を前記吸引手段で吸引するとともに、前記流体供給流路内の流体を圧送手段で圧送する方法である。
【0009】
本発明の表面処理方法においては、前記絞り部を予め閉じた状態で、前記流体供給流路内の流体を前記吸引手段により吸引を行って、前記流体供給流路内の内圧を前記流体吸引流路内の内圧よりも高くした後で、前記絞り部を開く方法である。
【0010】
本発明の表面処理方法においては、前記流体の温度を、所定温度に制御する方法である。
【0011】
本発明の表面処理装置においては、流体の流路途中に絞り部を設け、該絞り部を介して流体を吸引することにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる構造を備えた表面処理装置において、前記絞り部を片端に有すると共に該絞り部に流体を供給可能な流体供給流路と、該流体供給流路内とは前記絞り部のみを介して連通する流体吸引流路と、該流体吸引流路内の流体を吸引する吸引手段とを備え、前記流体吸引流路は、前記流体供給流路の周りを略同心状に取り囲むと共に、前記絞り部は、前記被処理面に対向配置したものである。
【0012】
本発明の表面処理装置においては、前記流体には微粒子を分散混入し、該微粒子に前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子を前記被処理面に対して略垂直に衝突させるものである。
【0013】
本発明の表面処理装置においては、内部に前記流体供給流路を有し片端には前記絞り部を有する一重管体を設け、該一重管体の外側の前記流体吸引流路内に、前記被処理面を露出させるものである。
【0014】
本発明の表面処理装置においては、内部に前記流体供給流路を有し片端には前記絞り部を有する内管と、該内管の外側面との間に前記流体吸引流路を有する外管とから成る一体的な二重管体を設け、前記絞り部近傍の流路内に、前記被処理面を露出させるものである。
【0015】
本発明の表面処理装置においては、前記外管は、絞り部から被処理面までの流路を覆うようにして延設するものである。
【0016】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部から被処理面までの距離を一定に保持可能な距離保持手段を備えるものである。
【0017】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部から被処理面までの距離を検出可能な距離センサを備えるものである。
【0018】
本発明の表面処理装置においては、前記被処理面の非処理部位には、マスク材を覆設するものである。
【0019】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部は、前記被処理面上を自在に移動可能な構成とするものである。
【0020】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部の下流側開口部近傍に、複数の孔を有した多孔部材を配設するものである。
【0021】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部の下流側開口部近傍に吸引キャビテーション流を所定方向に誘導する誘導部材を配設するものである。
【0022】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部の下流側開口部近傍に流体旋回手段を配設するものである。
【0023】
本発明の表面処理装置においては、前記絞り部に、該絞り部の孔径を可変する孔径可変手段を配設するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果としては、流路途中に設けた絞り部を介して流体を吸引することにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる表面処理方法において、前記絞り部を片端に有する流体供給流路の周りを略同心状に取り囲むようにして、該流体供給流路とは前記絞り部のみを介して連通する流体吸引流路を設け、該流体吸引流路内の流体を吸引手段で吸引することにより、前記絞り部の直下流に前記吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流を前記被処理面に対して略垂直に衝突させることにより、前記被処理面に表面処理を施すので、絞り部近傍における流体の流動状態は絞り部断面の円周方向位置によっても大きくは変化せず、絞り部の直下流には安定した吸引キャビテーション流を発生させることができ、被処理面全面にわたって均一な表面処理を施すことができると共に、大型の被処理物に対しても安定した表面処理を施すことができ、これにより、処理精度の向上、処理サイズの拡大を図ることができる。また、吸引キャビテーション流を被処理面に対して略垂直に衝突させるので、吸引キャビテーション流中のキャビテーション気泡を少なくとも被処理面近傍には接近させることができ、該被処理面にキャビテーション気泡の圧潰衝撃力を十分に作用させることができ、処理効率を向上させることができる。
【0025】
また、前記流体には微粒子を分散混入し、該微粒子に前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子を前記被処理面に対して略垂直に衝突させるので、被処理面が微粒子から受ける衝突力を増加させ、しかも、流体の流れの向きが大きく変わる被処理面近傍には、絞り部から流出した水流とその反転流に起因する渦が生じ、該渦に生じた淀みに前記微粒子が滞留するようになるため、圧潰衝撃力を受ける微粒子の数自体も増加させることができ、微粒子による衝突力を十分に高めて、処理効率を更に向上させることができる。
【0026】
また、前記流体吸引流路内の流体を吸引手段で吸引するとともに、前記流体供給流路内の流体を圧送手段で圧送することにより、吸引キャビテーション流を被処理面に対してより強く衝突させることができるため、表面処理速度や加工速度を向上させることができる。
【0027】
また、前記絞り部を予め閉じた状態で、前記流体供給流路内の流体を前記吸引手段により吸引を行って、前記流体供給流路内の内圧を前記流体吸引流路内の内圧よりも高くした後で、前記絞り部を開くことにより、高圧の吸引キャビテーション流を被処理面に対して衝突させることができるため、表面処理速度や加工速度を向上させることができる。
【0028】
また、前記流体の温度を、所定温度に制御することにより、キャビテーション気泡を発生し易い温度状態に制御してキャビテーション気泡を増加させて、表面処理効率を向上させることができる。
【0029】
また、流体の流路途中に絞り部を設け、該絞り部を介して流体を吸引することにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる構造を備えた表面処理装置において、前記絞り部を片端に有すると共に該絞り部に流体を供給可能な流体供給流路と、該流体供給流路内とは前記絞り部のみを介して連通する流体吸引流路と、該流体吸引流路内の流体を吸引する吸引手段とを備え、前記流体吸引流路は、前記流体供給流路の周りを略同心状に取り囲むと共に、前記絞り部は、前記被処理面に対向配置したので、絞り部近傍における流体の流動状態は絞り部断面の円周方向位置によっても大きくは変化せず、絞り部の直下流には安定した吸引キャビテーション流を発生させることができ、被処理面全面にわたって均一な表面処理を施すことができると共に、被処理物に対しても安定した表面処理を施すことができ、これにより、処理精度の向上、処理サイズの拡大を図ることができる。また、吸引キャビテーション流を被処理面に対して略垂直に衝突させるので、吸引キャビテーション流中のキャビテーション気泡を少なくとも被処理面近傍には接近させることができ、該被処理面にキャビテーション気泡の圧潰衝撃力を十分に作用させることができ、処理効率を向上させることができる。しかも、絞り部と被処理面とを対向配置させるだけの簡単な構造を設けるだけで、これらの効果を達成することができる。
【0030】
また、前記流体には微粒子を分散混入し、該微粒子に前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子を前記被処理面に対して略垂直に衝突させるので、被処理面が微粒子から受ける衝突力を増加させ、しかも、流体の流れの向きが大きく変わる被処理面近傍には、絞り部から流出した水流とその反転流に起因する渦が生じ、該渦に前記微粒子が滞留するようになるため、圧潰衝撃力を受ける微粒子の数自体も増加させることができ、微粒子による衝突力を十分に高めて、処理効率を更に向上させることができる。
【0031】
また、内部に前記流体供給流路を有し片端には前記絞り部を有する一重管体を設け、該一重管体の外側の前記流体吸引流路内に、前記被処理面を露出させるので、例えばチャンバ内に浸漬した被処理物の被処理面上に絞り部を近接した状態で一重管体を配置するだけの簡単な構造により、絞り部の直下流に発生した吸引キャビテーション流を被処理面に当てることができ、装置コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0032】
また、前記一重管体は、屈曲可能な自在管から成るので、被処理面が内部に露出した流体吸引流路の流路構成部材の形状に沿って一重管体を曲げることで、絞り部の直下流に発生した吸引キャビテーション流を被処理面の所定部位に当てることができ、前記流路構成部材が直線状ではなく屈曲していたり複雑な形状を呈する場合でも、迅速かつ精度良く所定部位に絞り部を移動して表面処理を施すことができ、高い処理効率及び処理精度を確保しつつ、処理対象の拡大を図ることができる。
【0033】
また、内部に前記流体供給流路を有し片端には前記絞り部を有する内管と、該内管の外側面との間に前記流体吸引流路を有する外管とから成る一体的な二重管体を設け、前記絞り部近傍の流路内に、前記被処理面を露出させるので、一重管体では、大型の被処理物を浸漬するのに大型のチャンバが必要となり、流体供給流路の周りを取り囲む流体吸引流路の断面積も著しく増加して、通常の吸引ポンプでは十分な吸引力が得られないような場合でも、流体供給流路と流体吸引流路を併設した二重管体の位置をチャンバ内で変えるだけで被処理面に表面処理を施すことができ、高い処理精度及び処理効率を確保しつつ、処理サイズの拡大を図ることができるのである。また、流体供給流路を構成する内管の外側面を流体吸引流路の形成にも利用することができ、部品数減少による部品コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。また、二重管体の流体吸引流路は内管と外管によって規定されるので、流体吸引流路の断面の形状・大きさを常に一定に維持して、流体吸引流路内における吸引キャビテーション流の変動を抑制することができる。
【0034】
また、前記外管は、絞り部から被処理面までの流路(以下、「処理流路」とする)を覆うようにして延設するので、該処理流路における吸引キャビテーション流が外部より受ける影響を最小限に止めることができ、しかも、この外管の延設長を変更することにより、前記処理流路の距離を、表面処理の種類・程度、流体・微粒子の種類、被処理物の機械的特性等に応じて適正距離に設定することができ、これにより、表面処理の処理効率及び処理精度の更なる向上を図ることができる。
【0035】
また、前記絞り部から被処理面までの距離を一定に保持可能な距離保持手段を備えるので、キャビテーション気泡の圧潰衝撃力や微粒子の衝突力を被処理面全体に均等に作用させることができ、均質な表面処理を施すことができる。
【0036】
また、前記絞り部から被処理面までの距離を検出可能な距離センサを備えるので、該距離センサからの距離信号に基づいて絞り部から被処理面までの距離を、より高い精度で適正値に保持することができ、処理効率及び処理精度を更に向上させることができる。
【0037】
また、前記被処理面の非処理部位には、マスク材を覆設するので、太陽電池パネル・プラズマディスプレイ等の電子部品・光学部品の表面への複雑な形状の微細加工、焼入れ部材の特定部位への圧縮応力付与等のように、高い加工精度の表面処理も施すことができ、処理対象の更なる拡大を図ることができる。
【0038】
また、前記絞り部は、前記被処理面上を自在に移動可能な構成とするので、被処理物側を動かすことなく管体側を動かすことで、絞り部の直下流に発生した吸引キャビテーション流を被処理面の所定部位に当てることができ、たとえ、被処理物が重量物や、破損しやすい物であるために移動が困難な場合でも、迅速かつ精度良く所定部位に管体の絞り部を移動させて表面処理を施すことができ、高い処理効率及び処理精度を確保しつつ、処理対象の拡大を図ることができるのである。
【0039】
また、前記絞り部の下流側開口部近傍に、複数の孔を有した多孔部材を配設することにより、キャビテーション気泡の発生部位を増加させ、キャビテーション気泡を発生効率を向上させて、表面処理効率を向上させることができる。
【0040】
また、前記絞り部の下流側開口部近傍に吸引キャビテーション流を所定方向に誘導する誘導部材を配設することにより、被処理物の特定部位に吸引キャビテーション流を誘導して、表面処理効率を向上させることができる。
【0041】
また、前記絞り部の下流側開口部近傍に流体旋回手段を配設することにより、被処理物に対して吸引キャビテーション流を所定方向に旋回させながら衝突させることができるため、表面処理ムラを防ぎ、均一に表面処理を行うことができる。
【0042】
また、前記絞り部に、該絞り部の孔径を可変する孔径可変手段を配設することにより、吸引キャビテーション流5による被加工部材6の被加工面6aへの影響範囲を連続的に調整することが可能となり、加工形状の制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に関わる表面処理装置の全体構成を示す構成模式図である。
【図2】一重管タイプの管体を備える処理部の側面断面図である。
【図3】二重管タイプの管体を備える処理部の側面断面図である。
【図4】自在管タイプの管体を備える処理部の側面一部断面図である。
【図5】自在管タイプの管体の絞り部近傍の側面一部断面図である。
【図6】アクチュエータを有する自在管タイプの管体を備える処理部の側面一部断面図である。
【図7】アクチュエータである支持部材近傍の側面一部断面図である。
【図8】本発明に関わる表面処理装置の全体構成の別実施形態を示す構成模式図である。
【図9】開閉バルブを備える絞り部の側面一部断面図である。
【図10】メッシュ部材を示す平面図である。
【図11】誘導部材を備える絞り部を示す側面断面図である。
【図12】流体旋回手段を備える絞り部を示す図であり、(a)は側面一部断面図、(b)は流体旋回手段を下方から見た状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1・50 表面処理装置
5 吸引キャビテーション流
6a・35a・44a 被処理面
7 微粒子
8 流体
9・43 一重管体
17 吸引手段
25・38 流体供給流路
26・39 流体吸引流路
27・45 絞り部
30 キャビテーション気泡
31 マスク材
33 二重管体
36 内管
37 外管
42 絞り部から被処理面までの流路
42a・52 距離
51 距離保持手段
54 距離センサ
55 圧送手段
60 多孔部材
61 誘導部材
63 流体旋回部材
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に関わる表面処理装置の全体構成を示す構成模式図、図2は一重管タイプの管体を備える処理部の側面断面図、図3は二重管タイプの管体を備える処理部の側面断面図、図4は自在管タイプの管体を備える処理部の側面一部断面図、図5は自在管タイプの管体の絞り部近傍の側面一部断面図、図6はアクチュエータを有する自在管タイプの管体を備える処理部の側面一部断面図、図7はアクチュエータである支持部材近傍の側面一部断面図、図8は本発明に関わる表面処理装置の全体構成の別実施形態を示す構成模式図、図9は開閉バルブを備える絞り部の側面一部断面図、図10はメッシュ部材を示す平面図、図11は誘導部材を備える絞り部を示す側面断面図、図12は流体旋回手段を備える絞り部を示す図であり、(a)は側面一部断面図、(b)は流体旋回手段を下方から見た状態を示す平面図である。
【0046】
まず、本発明に係わる表面処理方法を用いた表面処理装置1の全体構成について、図1、2により説明する。なお、本実施例では、部材表面を深さ方向に微細加工する場合について説明するが、微細加工以外に、前述した表面改質、洗浄等の表面処理についても、同様な構成を適用することができる。
【0047】
表面処理装置1は、発生した吸引キャビテーション流5を金属材料及び、プラスチック、ガラス、半導体等の非金属材料等の被加工部材6に当てて加工処理を行う処理部2と、該処理部2から加工液8を吸引して、前記被加工部材6の粗大な加工屑等の異物をろ過除去した後、加工液8中の微粒子7を調整してから前記処理部2に戻す加工液循環部3と、前記処理部2における管体9下端の絞り部27を横方向及び上下方向に移動可能な管体駆動部4とから構成される。
【0048】
このうちの加工液循環部3においては、チャンバ10に開口された吸込口11が、配管12を介して吸引ポンプ17の吸引ポートに連通され、該吸引ポンプ17の吐出ポートは、配管13を介して貯液タンク21内に連通されており、モータ18によって吸引ポンプ17を駆動させることにより、チャンバ10内の加工液8は、前記吸込口11から配管12内に勢いよく吸い込まれ、順に配管12、吸引ポンプ17、配管13を通り、該配管13途中部に設けたスクリーンフィルタ19によって粗大な加工屑等の異物が除去された後、前記貯液タンク21内に流入して貯留される。
【0049】
この貯液タンク21には、加工中や循環中に損失した微粒子7を補充するための粉末タンク20が併設されており、必要に応じて、該粉末タンク20に蓄えられた微粒子7を貯液タンク21内に投入する等して、加工液8への微粒子7の混合比を所定値に調整するようにしている。加工液8としては、通常は水を使用するが、水以外に洗浄用の有機溶剤等であってもよく、キャビテーション気泡の発生を抑制したり、被加工部材6・微粒子7・各流路・各装置等を変質させなければ、その種類を特に限定するものではない。微粒子7についても、通常はアルミナ・酸化ジルコニウム等の酸化物、炭化ケイ素等の炭化物等の硬質な微粒子を使用するが、比較的軟質な微粒子であっても、化学反応によって被加工部材6の表面を加工可能なもの、例えば、水中でガラスとの化学反応を伴った加工が可能な酸化セリウム等を使用することもでき、適用する表面処理の種類や処理の目的等に適した微粒子であれば、微粒子の種類・大きさ・形状・特性等は特に限定するものではない。なお、前記配管12の途中部には圧力計16が介設されており、該圧力計16によって、所定の吸引力となるように前記吸引ポンプ17を制御するものである。
【0050】
更に、前記貯液タンク21の下端は、自在に屈曲可能な配管14を介して、前記管体9内に開口された供給口15に連通されており、貯液タンク21内で微粒子7が所定の混合比に調整された加工液8が、貯液タンク21から流下して、配管14を通って供給口15から管体9内に流入し、処理部2に供給されるようにして、加工液循環構造が形成されている。
【0051】
前記管体駆動部4においては、管体9の上部に支持アーム24の一端が連結され、該支持アーム24の他端はアクチュエータ22に連結され、該アクチュエータ22は、制御装置29に接続されたモータ23に取り付けられており、制御装置29に記憶されたプログラムに従い、モータ23によってアクチュエータ22が駆動されて管体9が移動し、該管体9の下端に設けた絞り部27を、被加工部材6の被加工面6a上の所定位置まで移動制御できるようにしている。
【0052】
次に、前記処理部2について、図1、図2により説明する。
処理部2においては、前記チャンバ10の底板10a上に、平板状の被加工部材6が載置され、該被加工部材6の被加工面6aの上方で所定距離だけ離間した位置に、一重管タイプの前記管体9が配設されており、該管体9は、前記チャンバ10の側面を構成する筒板10bに平行に配置されている。
【0053】
このうちの管体9の内部には、流体供給流路25が形成され、該流体供給流路25は、前述のようにして微粒子7を所定の混合比で分散混入した加工液8によって満たされると共に、管体9の下端には、中央に絞り孔27bを穿孔した栓27aから成る絞り部27が嵌設されており、流体供給流路25内の加工液8が、細い絞り孔27bを通って下方に流下するようにしている。そして、該絞り孔27bの孔軸が前記被加工面6aに対して略垂直となるように、前記絞り部27は被加工面6aに対向配置されている。
【0054】
前記チャンバ10内で管体9の周囲には、流体吸引流路26が形成され、該流体吸引流路26も、前記加工液8によって満たされると共に、チャンバ10の上部は、貫通する管体9が横方向及び上下方向に移動できるようにゴム等の弾性材からなる蓋体10cによって液密に閉塞されている。これにより、加工液8を前記吸込口11から吸引ポンプ17によって吸引する際に、余分な空気が流体吸引流路26内に混入しないようにして、吸引ポンプ17による流体吸引流路26内の加工液8の吸引力を高めるようにしている。
【0055】
このような構成において、吸引ポンプ17を駆動すると、該吸引ポンプ17に配管12を介して連通された流体吸引流路26の内圧が負圧となり、前記絞り孔27bを介して、流体供給流路25内の微粒子7混入の加工液8が、被加工部材6の被加工面6aに向かって略垂直に吸い出される。すると、加工液8は絞り孔27を通過する際に流速が増大し、それに伴い圧力が低下し、該圧力が加工液8の飽和蒸気圧まで減少することによりキャビテーション気泡30が生じ、これにより、該キャビテーション気泡30を含む高速の加工液8の流れが、吸引キャビテーション流5として前記絞り部27の直下流に発生する。
【0056】
該吸引キャビテーション流5は、絞り孔27bから被加工面6aまで下降する間に、流速が低下して圧力が回復し、含まれていたキャビテーション気泡が圧潰して、前述した圧潰衝撃力が発生する。該圧潰衝撃力は、被加工面6aに対して略垂直に直接作用すると共に、吸引キャビテーション流5に乗り被加工面6aに向かって高速移動中の微粒子7にも作用し、該微粒子7を更に加速して被加工面6aに対して略垂直に激しく衝突させる。
【0057】
被加工面6a近傍まで下降してきた吸引キャビテーション流5の加工流は、徐々に外側に拡がりながら流れの向きを逆方向に変えて前記流体吸引流路26内を上昇していく。この上昇流と前記下降流との間に渦が発生し、該渦では流速が低下して淀みが生じ、該淀みには固体の微粒子7が滞留し、これにより、被加工面6a近傍の微粒子7の混合比が増加して、被加工面6aに衝突する微粒子7の数も増加させることとなる。
【0058】
すなわち、流路途中に設けた絞り部27を介して流体である加工液8を吸引することにより、キャビテーション気泡30を含む吸引キャビテーション流5を発生させ、該吸引キャビテーション流5内にて、前記キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力を前記絞り部27近傍の被処理面である被加工面6aに作用させる表面処理方法において、前記絞り部27を片端に有する流体供給流路25の周りを略同心状に取り囲むようにして、該流体供給流路25とは前記絞り部27のみを介して連通する流体吸引流路26を設け、該流体吸引流路26内の加工液8を吸引手段である吸引ポンプ17で吸引することにより、前記絞り部27の直下流に前記吸引キャビテーション流5を発生させ、該吸引キャビテーション流5を前記被加工面6aに対して略垂直に衝突させることにより、前記被加工面6aに表面処理である加工を施すので、絞り部27近傍における加工液8の流動状態は絞り部27断面の円周方向位置によっても大きくは変化せず、絞り部27の直下流には安定した吸引キャビテーション流5を発生させることができ、被加工面6a全面にわたって均一な表面処理を施すことができると共に、大型の被処理物である被加工部材6に対しても安定した表面処理を施すことができ、これにより、処理精度の向上、処理サイズの拡大を図ることができる。また、吸引キャビテーション流5を被加工面6aに対して略垂直に衝突させるので、吸引キャビテーション流5中のキャビテーション気泡30を少なくとも被加工面6a近傍には接近させることができ、該被加工面6aにキャビテーション気泡30の圧潰衝撃力を十分に作用させることができ、処理効率を向上させることができる。
【0059】
更に、前記表面処理方法を実施するための装置であって、流体である加工液8の流路途中に絞り部27を設け、該絞り部27を介して加工液8を吸引することにより、キャビテーション気泡30を含む吸引キャビテーション流5を発生させ、該吸引キャビテーション流5内にて、前記キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力を前記絞り部27近傍の被加工面6aに作用させる構造を備えた表面処理装置1において、前記絞り部27を片端に有すると共に該絞り部27に加工液8を供給可能な流体供給流路25と、該流体供給流路25内とは前記絞り部27のみを介して連通する流体吸引流路26と、該流体吸引流路26内の加工液8を吸引する吸引手段である吸引ポンプ17とを備え、前記流体吸引流路26は、前記流体供給流路25の周りを略同心状に取り囲むと共に、前記絞り部27は、前記被加工面6aに対向配置したので、前記表面処理方法による効果が得られると共に、絞り部27と被加工面6aとを対向配置させるだけの簡単な構造を設けるだけで、これらの効果を達成することができるのである。
【0060】
加えて、前記流体である加工液8には微粒子7を分散混入し、該微粒子7に前記キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力を作用させることにより、前記微粒子7を前記被処理面である被加工面6aに対して略垂直に衝突させるので、被加工面6aが微粒子7から受ける衝突力を増加させ、しかも、加工液8の流れの向きが大きく変わる被加工面6a近傍には、絞り部27から流出した水流とその反転流に起因する渦が生じ、該渦に前記微粒子7が滞留するようになるため、圧潰衝撃力を受ける微粒子7の数自体も増加させることができ、微粒子7による衝突力を十分に高めて、処理効率を更に向上させることができる。
【0061】
また、前述の如く、一重管タイプの管体9を被加工面6aの露出した流体吸引流路26内に配置するだけで、管体9の絞り部27から被加工面6aに向かって吸引キャビテーション流5を流すことができ、更には、前記管体駆動部4のアクチュエータ22を駆動することにより、チャンバ10の底板10aに載置された被加工部材6はそのままで、管体9のみを、被加工面6a上の所定の加工部まで移動したり、被加工面6a上にて定ピッチで走査させて、被加工面の部分加工や全面加工が行えるようにしている。
【0062】
すなわち、内部に前記流体供給流路25を有し片端には前記絞り部27を有する一重管体である管体9を設け、該管体9の外側の前記流体吸引流路26内に、前記被処理面である被加工面6aを露出させるので、例えばチャンバ10内に浸漬した被処理物である被加工部材6の被加工面6a上に絞り部27を近接した状態で管体9を配置するだけの簡単な構造により、絞り部27の直下流に発生した吸引キャビテーション流5を被加工面6aに当てることができ、装置コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0063】
更に、前記絞り部27は、前記被処理面である被加工面6a上を自在に移動可能な構成とするので、被処理物である被加工部材6側を動かすことなく管体9側を動かすことで、絞り部27の直下流に発生した吸引キャビテーション流5を被加工面6aの所定部位に当てることができ、たとえ、被加工部材6が重量物や、破損しやすい物であるために移動が困難な場合等でも、迅速かつ精度良く所定部位に管体9の絞り部27を移動させて表面処理を施すことができ、高い処理効率及び処理精度を確保しつつ、処理対象の拡大を図ることができるのである。
【0064】
もちろん、被加工部材6の移動が容易な場合等には、管体9側を固定し被加工部材6側を動かしたり、管体9側と被加工部材6側を同時に動かしてもよく、迅速かつ精度良く所定部位に管体9の絞り部27を位置させることができれば、その駆動構成を特に限定するものではない。
【0065】
また、本実施例の被加工面6aは、マスク材31によって所定のパターンでマスキングされており、マスキングした被加工面6a全面を、管体9により定ピッチで走査させると、前記マスク材31で覆われていない部位のみが吸引キャビテーション流5によって局部的に研磨除去され、マスク材で覆われている部位(以下、「非処理部位」とする)は吸引キャビテーション流5の影響を受けずにそのまま残り、その後、前記マスク材31を除去することにより、被加工面6aには所定の微細形状が得られる。
【0066】
なお、マスキングは、ポリエステル等の有機フィルムや、エッチング加工されたステンレスの薄板・ニッケルの電鋳品等の金属フィルム等をマスク材として貼付したり、フォトレジストや印刷マスクを施すことで、行うことができるが、キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力及び微粒子7の衝突力に耐えることができ、しかも所定の加工精度が得られるものであれば、マスキングの種類は特には限定されない。
【0067】
すなわち、前記被処理面である被加工面6aの非処理部位には、マスク材31を覆設するので、太陽電池パネル・プラズマディスプレイ等の電子部品・光学部品の表面への複雑な形状の微細加工、焼入れ部材の特定部位への圧縮応力付与等のように、高い加工精度の表面処理も施すことができ、処理対象の更なる拡大を図ることができる。
【0068】
次に、前記管体9の別形態について、図3により説明する。
この管体33は、前記管体9に相当する内管36と、前記チャンバ10に相当する外管37とから成る二重管タイプであって、管体33自体に、流体供給流路に加え流体吸引流路も併設したものである。
【0069】
該管体33は、内管36と、該内管36を略同心状に取り囲むようにして上部で支持固定する外管37とから一体的に構成されている。このうちの内管36には、前記管体9と同様に、内部に流体供給流路38が形成され、該流体供給流路38は微粒子7を分散混入した加工液8によって満たされると共に、内管36の下端には、前記絞り部27が嵌設されており、流体供給流路38内の加工液8が、絞り孔27bを通って下方に流下するようにしている。そして、該絞り孔27bの孔軸が前記被加工面35aに対して略垂直となるように、絞り部27は被加工面35aに対して対向配置されている。
【0070】
一方、前記外管37には、前記チャンバ10と同様、前記内管36の外側面との間に流体吸引流路39が形成され、該流体吸引流路39も加工液8によって満たされると共に、外管37の上部も図示せぬ蓋体によって液密に閉塞されており、加工液8を吸込口11から吸引ポンプ17によって吸引する際に、余分な空気が流体吸引流路39内に混入しないようにして、吸引ポンプ17による吸引力を高めるようにしている。
【0071】
ただし、外管37の下端については、前記チャンバ10とは異なり、被加工面35aに向かって開放され、かつ被加工面35aとの間には所定の隙間40が設けられており、絞り部27の直下流に発生した吸引キャビテーション流5を被加工面35aに当てながら、管体33が被加工面35a上を移動できるようにしている。更に、前記チャンバ10とは異なり、内管36と外管37とは互いに上下移動可能に上部で連結されているため、流体吸引流路39断面の形状・大きさは変化しない構成となっている。
【0072】
この際、外管37を構成する筒板37aは内管36の下端よりも下方に延設され、この延設部37bにより、絞り部27から被加工面35aまでの処理流路42が、外管37外側の加工液8から遮断されるようにしている。しかも、前記延設部37bの長さである延設長41は、内管36と外管37の上下相対位置の調整等によって変更可能な構成であり、該延設長41を調節することで、処理流路42の距離42aを、被加工面35aの加工に適したキャビテーション気泡30の圧潰衝撃力と微粒子7の衝突力とが得られる距離に、設定できるようにしている。
【0073】
このような構成において、吸引ポンプ17を駆動すると、内管36と外管37との間の流体吸引流路39の内圧が負圧となり、絞り孔27bを介して、流体供給流路38内の微粒子7混入の加工液8が、被加工部材35の被加工面35aに向かって略垂直に吸い出される。これにより、キャビテーション気泡30を含む高速の加工液8の流れが、吸引キャビテーション流5として前記絞り部27の直下流に発生する。
【0074】
そして、この発生した吸引キャビテーション流5は、延設部37bにより外管37外側の加工液8と遮断され外部からの影響をほとんど受けない処理流路42内を、高速で下降していき、前記管体9と同様にして、キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力と微粒子7の衝突力を、被加工面35aに強力に作用させることができる。この下降してきた吸引キャビテーション流5は、被加工面35aに当たると向きを逆方向に変え、形状・大きさが断面で一定の流体吸引流路39内を上昇していく。
【0075】
この状態で、管体駆動部4のアクチュエータ22を駆動すると、流体供給流路38と流体吸引流路39を併設した二重管タイプの管体33を、チャンバ34の底板34aに載置された被加工部材35の被加工面35a上にて、所定の加工部まで移動させたり、定ピッチで走査させることができ、被加工面35aの部分加工や全面加工を行うことができる。
【0076】
すなわち、内部に前記流体供給流路38を有し片端には前記絞り部27を有する内管36と、該内管36の外側面との間に前記流体吸引流路39を有する外管37とから成る一体的な二重管体である管体33を設け、前記絞り部27近傍の流路内に、前記被処理面である被加工面35aを露出させるので、一重管体では、大型の被処理物である被加工部材35を浸漬するのに大型のチャンバが必要となり、流体供給流路の周りを取り囲む流体吸引流路の断面積も著しく増加して、通常の吸引ポンプでは十分な吸引力が得られないような場合でも、流体供給流路38と流体吸引流路39を併設した管体33の位置をチャンバ34内で変えるだけで被加工面35aに表面処理を施すことができ、高い処理精度及び処理効率を確保しつつ、処理サイズの拡大を図ることができるのである。また、流体供給流路38を構成する内管36の外側面を流体吸引流路39の形成にも利用することができ、部品数減少による部品コストの低減、メンテナンス性の向上を図ることができる。また、管体33の流体吸引流路39は内管36と外管37によって規定されるので、流体吸引流路39の断面の形状・大きさを常に一定に維持して、流体吸引流路39内における吸引キャビテーション流5の変動を抑制することができる。
【0077】
もちろん、前記被加工部材35が大型であっても軽量なために移動が容易な場合等には、管体33側を固定し被加工部材35側を動かしたり、管体33側と被加工部材35側を同時に動かしてもよく、迅速かつ精度良く所定部位に管体33の絞り部27を位置させることができれば、その駆動構成を特に限定するものではない。
【0078】
更に、前記外管37は、絞り部27から被処理面である被加工面35aまでの流路である処理流路42を覆うようにして延設するので、該処理流路42における吸引キャビテーション流5が外部より受ける影響を最小限に止めることができ、しかも、この外管37の延設長41を変更することにより、前記処理流路42の距離42aを、表面処理の種類・程度、流体・微粒子の種類、被処理物である被加工部材35の機械的特性等に応じて適正距離に設定することができ、これにより、表面処理の処理効率及び処理精度の更なる向上を図ることができる。
【0079】
次に、前記管体9と同じ一重管タイプの別形態について、図4乃至図7により説明する。
この管体44は、屈曲可能な材料から構成される自在管タイプであって、前述の被加工部材6・35のような板状ではなく、Uパイプのように屈曲したパイプ状の被加工部材44の中に挿入し、該被加工部材44の内壁の形に沿って管体44を屈曲させながら進ませ、該内壁に表面処理を施すものである。
【0080】
図4、図5に示すように、該管体43は、ゴム・ビニール・プラスチック等を素材とするホース、及びステンレス等から成る複数の硬質部材を接続して多数の節点を設けたフレキシブルチューブといった屈曲可能な材料から構成される。そして、該管体43の内部には、前記管体9と同様に、流体供給流路46が形成され、該流体供給流路46は微粒子7を分散混入した加工液8によって満たされると共に、管体43の先端は蓋板43aによって閉塞され、該蓋板43a近傍に絞り部45が形成されている。
【0081】
該絞り部45は、前記絞り部27とは異なり、複数の小さい絞り孔45aが、管体43を構成する筒板43bで前記蓋板43aに対して平行な同一円周上に、等間隔で半径方向に開口されており、流体供給流路46に供給されてきた加工液8が、前記絞り孔45a・45a・・・を通って、被加工部材44の被加工面44aに向かい、管体43の半径方向に流出するようにしている。そして、この場合も、絞り孔45a・45a・・・の孔軸が被加工面44aに対して略垂直となるように、絞り部45は周囲の被加工面44aに対して対向配置されている。
【0082】
一方、被加工部材44内で管体43を除く空間には、流体吸引流路47が形成され、該流体吸引流路47は、加工液8によって満たされると共に、被加工部材44の途中部で前記絞り部45と離間した部位には、リング状の遮蔽板48が嵌設されている。これにより、流体吸引流路47内の加工液8を、図示せぬ吸引ポンプによって被加工部材44の絞り部45側から、矢印49で示す方向(以下、「吸引方向」とする)に吸引する際に、遮蔽板48よりも吸引上手側からは余分な加工液8が流体吸引流路47内に侵入しないようにして、吸引ポンプによる流体吸引流路47内の加工液8の吸引力を高めるようにしている。なお、前記遮蔽板48の中央にはガイド孔48aが穿孔され、該ガイド孔48aに前記管体43が摺動可能に支持されており、管体43をガイド孔48aから挿入して被加工部材44内を吸引方向に進ませることができる。
【0083】
このような構成において、図示せぬ吸引ポンプを駆動すると、流体吸引流路47内の加工液8が前記吸引方向に向かって吸引され、前記絞り孔45a・45a・・・を介して、流体供給流路46内の微粒子7入り加工液8が、被加工部材44の被加工面44aに向かって略垂直に吸い出される。これにより、キャビテーション気泡30を含む高速の加工液8の流れが、管体43の半径方向に拡がる吸引キャビテーション流50として、絞り部45の周囲に環状に発生する。
【0084】
該吸引キャビテーション流50は高速で流れていき、キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力と微粒子7の衝突力を、被加工面44aに強力に作用させる。なお、この際、被加工面44aに向かって側方に流れる吸引キャビテーション流50が、加工液8の吸引方向の流れによって大きく阻害されないように、吸引ポンプによる吸引力を制御して適正化するようにしている。
【0085】
すなわち、前記一重管体である管体43は、屈曲可能な自在管から成るので、被処理面である被加工面44aが内部に露出した流体吸引流路47の流路構成部材である被加工部材44の形状に沿って管体43を曲げることで、絞り部45の直下流に発生した吸引キャビテーション流50を被加工面44aの所定部位に当てることができ、被加工部材が直線状ではなく屈曲していたり複雑な形状を呈する場合でも、迅速かつ精度良く所定部位に絞り部45を移動して表面処理を施すことができ、高い処理効率及び処理精度を確保しつつ、適用対象の拡大を図ることができる。
【0086】
また、図6に示すように、前記管体43で絞り部45の近くには、アクチュエータ51を取り付け、該アクチュエータ51を外部より操作することにより、絞り部45から被加工面44aまでの処理流路の距離52を調整して、被加工面44aに当たる吸引キャビテーション流50が位置によって大きく変動しないようにしている。該アクチュエータ51としては、磁力等を使って被加工部材44外部より移動操作可能な図示せぬ可動部材や、図7に示すように、被加工部材44内壁に転動可能なローラ53aと、該ローラ53aに連結され伸縮可能なバネ等の弾性材を内装した伸縮部53bとから成る支持部材53等があるが、流体吸引流路47内の加工液8の流れを阻害することなく、処理流路の距離52を精度良く一定に制御可能なものであれば、その種類は特に限定されない。
【0087】
更に、管体43で絞り部45のごく近傍に、渦電流計等の距離センサ54を取り付け、該距離センサ54によって処理流路の実際の距離52を把握し、その距離信号に基づいて、前記アクチュエータ51を動作制御可能な構成とすることもできる。
【0088】
この場合は、管体43を被加工部材44内で吸引方向に進ませながら、距離センサ54からの距離信号に基づいてアクチュエータ51を駆動させ、処理流路の距離52を一定距離に制御しながら、被加工面の部分加工や全面加工を行うことができる。
【0089】
すなわち、前記絞り部45から被処理面である被加工面44aまでの距離52を一定に保持可能な距離保持手段であるアクチュエータ51を備えるので、キャビテーション気泡30の圧潰衝撃力と微粒子7の衝突力を被加工面44a全体に均等に作用させることができ、均質な表面処理を施すことができる。
【0090】
更に、前記絞り部45から被処理面である被加工面44aまでの距離52を検出可能な距離センサ54を備えるので、該距離センサ54からの距離信号に基づいて絞り部45から被処理面である被加工面44aまでの距離52を、より高い精度で適正値に保持することができ、処理効率及び処理精度を更に向上させることができる。
【0091】
次に、表面処理装置の別の実施形態について、図8により説明する。
表面処理装置50は、図8に示すように、前述した表面処理装置1の構成における加工液循環部3の一部が変更されたものである。すなわち、貯液タンク21と管体9内に開口された供給口15のそれぞれに連通する配管14の中途部にモータ56が接続されている圧送手段である圧送ポンプ55を介装している。このモータ56が接続されている圧送ポンプ55以外の構成部材は、前述した表面処理装置1と同様であるであるため、それら構成部材の説明は省略する。
【0092】
前述したように、加工液循環部3においては、チャンバ10に開口された吸込口11が、配管12を介して吸引ポンプ17の吸引ポートに連通され、該吸引ポンプ17の吐出ポートは、配管13を介して貯液タンク21内に連通されており、モータ18によって吸引ポンプ17を駆動させることにより、チャンバ10内の加工液8は、前記吸込口11から配管12内に勢いよく吸い込まれ、順に配管12、吸引ポンプ17、配管13を通り、該配管13途中部に設けたスクリーンフィルタ19によって粗大な加工屑等の異物が除去された後、前記貯液タンク21内に流入して貯留される。
【0093】
更に、加工液循環部3においては、前記貯液タンク21の下端が、自在に屈曲可能な配管14(14a)を介して圧送ポンプ55の吸引ポートに連通され、該吸引ポート55の吐出ポートは、配管14(14b)を介して前記管体9内に開口された供給口15に連通されており、モータ56によって圧送ポンプ55を駆動させることにより、貯液タンク21内の加工液8は、配管14(14a・14b)及び供給口15を介して管体9内に勢いよく送り込まれ、絞り部27を介して被加工部材6の被加工面6aに向かって略垂直に勢いよく噴き出される。
なお、前記配管14bの途中部には圧力計58が介設されており、該圧力計58によって、所定の吐出力となるように前記圧送ポンプ55を制御するものである。
【0094】
このように、表面処理装置50を構成することにより、吸引ポンプ17と圧送ポンプ55を同時に駆動すると、該吸引ポンプ17に配管12を介して連通された流体吸引流路26の内圧が負圧となり、前記絞り孔27bを介して、流体供給流路25内の微粒子7混入の加工液8が、被加工部材6の被加工面6aに向かって略垂直に吸い出されるとともに、流体供給流路25の上流側に配置された圧送ポンプ55に配管14bを介して連通された管体9の内圧が加圧され、前記絞り孔27bを介して、管体9内の微粒子7混入の加工液8が、被加工部材6の被加工面6aに向かって略垂直に勢いよく噴き出される。すると、加工液8は絞り孔27bを通過する際に流速が増大し、それに伴い圧力が低下し、該圧力が加工液8の飽和蒸気圧まで減少することによりキャビテーション気泡30が生じ、これにより、該キャビテーション気泡30を含む高速の加工液8の流れが、吸引キャビテーション流5として前記絞り部27の直下流に発生する。
【0095】
該吸引キャビテーション流5は、絞り孔27bから被加工面6aまで下降する間に、流速が低下して圧力が回復し、含まれていたキャビテーション気泡が圧潰して、前述した圧潰衝撃力が発生する。該圧潰衝撃力は、被加工面6aに対して略垂直に直接作用すると共に、吸引キャビテーション流5に乗り被加工面6aに向かって高速移動中の微粒子7にも作用し、該微粒子7を更に加速して被加工面6aに対して略垂直に激しく衝突させる。
【0096】
被加工面6a近傍まで下降してきた吸引キャビテーション流5の加工流は、徐々に外側に拡がりながら流れの向きを逆方向に変えて前記流体吸引流路26内を上昇していく。この上昇流と前記下降流との間に渦が発生し、該渦では流速が低下して淀みが生じ、該淀みには固体の微粒子7が滞留し、これにより、被加工面6a近傍の微粒子7の混合比が増加して、被加工面6aに衝突する微粒子7の数も増加させることとなる。
【0097】
すなわち、前記流体吸引流路25内の流体である加工液8を吸引手段である吸引ポンプ17で吸引するとともに、前記流体供給流路25内の加工液8を圧送手段である圧送ポンプ55で圧送することにより、吸引キャビテーション流5を被処理面である被加工面6aに対してより強く衝突させることができるため、表面処理速度や加工速度をさらに向上させることができる。
【0098】
次に、前記絞り部27の別形態について、図9により説明する。
絞り部57は、図9に示すように、絞り孔27bを穿孔した栓27aから成る絞り部57において、前記絞り孔27b内に、該絞り孔27bの開閉を行う開閉バルブ59を備えている。
【0099】
このように絞り部57を構成することにより、前記絞り部57の開閉バルブ59を予め閉じた状態で、前記流体供給流路25内の流体である加工液8を前記圧送手段である圧送ポンプ55により圧送を行って、前記流体供給流路25内の内圧を前記前記流体吸引流路内の内圧よりも高くした後で、前記絞り部57の開閉バルブ59を開くようにすることで、前述した開閉バルブ59を有しない絞り部27と比べ、流体吸引流路26の内圧がよりいっそう負圧の状態となり、前記絞り孔27bを介して、流体供給流路25内の微粒子7混入の加工液8が、被加工部材6の被加工面6aに向かって略垂直に勢いよく吸い出される。これにより、高圧の吸引キャビテーション流を被処理面に対して衝突させることができるため、表面処理速度や加工速度を向上させることができる。
【0100】
次に、前記絞り部の下流側開口部近傍に設ける部材である多孔部材、誘導部材及び流体旋回部材について、図10から図12により説明する。
【0101】
多孔部材は、図10に示すように、複数の孔を有したメッシュ部材60であり、該メッシュ部材60は、断面視四角状である線状部材を交差状に編み込んだものである。メッシュ部材60は、例えば、上述した絞り部27及び絞り部57が有する絞り孔27bの上流側開口部近傍に配設することが可能である。
このようなメッシュ部材60を、絞り部27、絞り部57の下流側開口部近傍に配設することにより、メッシュ部材60が有する複数の孔によりキャビテーション気泡30の発生部位を増加させ、キャビテーション気泡30の発生効率を向上させて、表面処理効率を向上させることができる。
なお、前述した屈曲可能である管体43に開口された絞り孔45aにおいても、該絞り孔45aを塞ぐようにメッシュ部材を配設して、上述した同様の効果を得ることは可能である。
また、メッシュ部材60を構成する断面視四角状である線状部材の表面に微小な突起を有するように構成することも可能であり、このような突起を設けることにより、さらにキャビテーション気泡30の発生部位(起点)を増加させ、キャビテーション気泡30の発生効率を向上させて、表面処理効率を向上させることができる。
【0102】
誘導部材61は、図11に示すように、その内部にテーパ状の貫通孔61aを有する円筒状部材であり、該貫通孔61aの上流側開口部(図11においては上側開口部)の直径は、絞り部27及び絞り部57の下流側開口部(図11においては下側開口部)の直径と同じとなるべく構成されている。また、該貫通孔61aの下流側開口部の直径は、貫通孔61aの上流側開口部の直径よりも大きくなっている。上述した絞り部27及び絞り部57が有する絞り孔27bの下流側開口部近傍に、誘導部材61の上面部が絞り部27及び絞り部57の下面部に当接するように配設して、絞り部27もしくは絞り部57と、誘導部材61とを一体的に固定することで、絞り孔27bから吐出される吸引キャビテーション流5を誘導部材61の貫通孔61aの内面であるテーパ部に沿って誘導することが可能となる。
このような誘導部材61を、絞り部27もしくは絞り部57の下流側開口部近傍に配設することにより、例えば、図11に示すような内部に貫通孔62aを有する円筒部材62の貫通孔62aの内面部を被処理面62bとして加工したい場合、誘導部材61の貫通孔61aの内径を、被加工部材である円筒部材62の貫通孔62aと同じ内径となるようにしておき、絞り孔27bから吸引キャビテーション流5を発生させると、該吸引キャビテーション流5は誘導部材60のテーパ部に誘導されて図11の矢印が示す方向に流れ、円筒部材62の貫通孔62aの内面部である被処理面62bを加工処理することが可能となる。
このように、前記絞り部の下流側開口部近傍に吸引キャビテーション流5を所定方向に誘導する誘導部材60を配設することにより、被処理部材の特定部位に吸引キャビテーション流を誘導して、表面処理効率を向上させることができる。
【0103】
流体旋回部材63は、図12(a)(b)に示すように、屈曲した複数の羽根部63aから成る円筒外形を有する部材であり、前記流体旋回部材63の外周部には軸受63bが固設されている。該軸受63bの外周部は、管体9の下端部に取り付け可能となっている。流体旋回部材63が管体9(絞り部27もしくは絞り部57)の下端部に固設された状態にて吸引キャビテーション流5が流れると、この吸引キャビテーション流5の流れに応じて流体旋回部材63は、回転自在となっている。このように構成することにより、絞り部27(絞り部57)から吐出された吸引キャビテーション流5は所定方向に旋回しながら、前記微粒子7を前記被処理面である被加工面6aに対して略垂直に衝突させるので、吸引キャビテーション流5の吐出ムラの発生防ぎ、前記被処理面に対して略均一に加工処理が行うことが可能となる。
【0104】
このように、前記絞り部27もしくは絞り部57の下流側開口部近傍に流体旋回手段である流体旋回部材63を配設することにより、被加工面6aに対して吸引キャビテーション流5を所定方向に旋回させながら衝突させることができるため、表面処理ムラを防ぎ、均一に表面処理を行うことができる。
【0105】
また、上述した表面処理装置1や表面処理装置50においては、処理部2のチャンバ10内に流体である加工液8の温度制御を行う温度制御手段を設けることも可能であり、例えば、該温度制御手段により加工液8を所定温度に加温することで、絞り孔27aにおけるキャビテーション気泡30の発生を促進して、キャビテーション気泡30増加させることができ、加工処理速度を向上させることができる。
すなわち、前記流体である加工液8の温度を、所定温度に制御することにより、キャビテーション気泡を発生し易い温度状態に制御してキャビテーション気泡を増加させて、表面処理効率を向上させることができる。
【0106】
また、絞り部27には、前述した絞り部57に開閉バルブ59を設ける代わりに、もしくは開閉バルブ59に加えて、例えば、写真用カメラの絞りのように、絞り孔27bの開閉機能と絞り孔27bの孔径の可変機能を有する孔径可変手段(図示せず)を絞り部27(絞り部57)の所定位置に設けることも可能である。この孔径可変手段を設けることにより、吸引キャビテーション流5による被加工部材6の被加工面6aへの影響範囲を連続的に調整することが可能となり、加工形状の制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、流路途中に設けた絞り部を介して流体を吸引あるいは吸引とともに噴射を行うことにより、キャビテーション気泡を含む吸引キャビテーション流を発生させ、該吸引キャビテーション流内にて、前記キャビテーション気泡の圧潰衝撃力を前記絞り部近傍の被処理面に作用させる全ての表面処理方法、及び該表面処理方法を実施するための全ての装置に適用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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