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明細書 :癌診断キットおよび癌診断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283085号 (P5283085)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
発明の名称または考案の名称 癌診断キットおよび癌診断方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
G01N 33/574 A
C07K 14/47
C07K 16/18
請求項の数または発明の数 15
全頁数 22
出願番号 特願2009-532105 (P2009-532105)
出願日 平成20年7月18日(2008.7.18)
国際出願番号 PCT/JP2008/063002
国際公開番号 WO2009/034779
国際公開日 平成21年3月19日(2009.3.19)
優先権出願番号 2007236048
優先日 平成19年9月12日(2007.9.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年5月19日(2011.5.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】小野 俊朗
【氏名】中山 睿一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 Science, (2006), 314, [5797], p.268-274
NCBI Entrez Nucleotide, ACCESSION No. NM_032573
NCBI Entrez Nucleotide, ACCESSION No. NM_201435
Biotherapy, (2004), 18, [suppl.1], p.55
日本癌治療学会誌, (2004), 39, [2], p.790
調査した分野 C12N 15/00-15/90
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号3に示される塩基配列の第2146~3044位の部分配列を含んでいるプライマーを備えており、該プライマーは、配列番号1に示される塩基配列の第2146~2481位の部分配列からなるオリゴヌクレオチドではない、癌を診断するためのキット。
【請求項2】
配列番号4に示されるアミノ酸配列の部分配列からなりかつ配列番号4に示されるアミノ酸配列の第668~684位を含むポリペプチドを備えており、該ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチドではない、癌を診断するためのキット。
【請求項3】
CCDC62-2タンパク質と特異的に結合するがCCDC62-1タンパク質と結合しない抗体を備えている、癌を診断するためのキット。
【請求項4】
上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、腎癌、前立腺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
請求項1に記載のキットを用いて、配列番号3に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程を包含することを特徴とする癌診断を補助するデータを提供する方法。
【請求項7】
請求項3に記載のキットを用いて、配列番号4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するポリペプチド測定工程を包含することを特徴とする癌診断を補助するデータを提供する方法。
【請求項8】
請求項2に記載のキットを用いて、被験体由来の試料において、配列番号4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する抗体測定工程を包含することを特徴とする癌診断を補助するデータを提供する方法。
【請求項9】
上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いられることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の癌診断を補助するデータを提供する方法。
【請求項10】
胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、腎癌、前立腺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いられることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の癌診断を補助するデータを提供する方法。
【請求項11】
上記プライマーが、配列番号7および8のいずれかに示される塩基配列からなる、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
上記ポリペプチドが、配列番号4に示されるアミノ酸配列の第366~684位からなる、請求項2に記載のキット。
【請求項13】
上記抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列の第366~684位からなるポリペプチドによって惹起される、請求項3に記載のキット。
【請求項14】
上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いられることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、腎癌、前立腺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いられることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な癌診断技術に関するものであり、より詳細には、CCDC62の発現または抗CCDC62抗体の存在を指標とする癌診断キットおよび癌診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌に対する効果的な検査法、診断法および治療法を確立するためには、対象となる癌に高頻度で発現しかつ抗原性が強い癌抗原を見出すことが必要である。しかし、消化器癌、特に胃癌、大腸癌には、検査、診断あるいは治療に有用な癌抗原が少ない。それゆえ、消化器癌の検査、診断あるいは治療に有用な癌抗原を開発することは極めて重要である。
【0003】
ヒト癌の検査、診断あるいは治療には、副作用の観点から、種々の癌において発現しているが、正常組織では精巣に限局している癌・精巣抗原(Cancer-Testis抗原、以下「CT抗原」と記す)が最も有用と考えられている。現在までに、約40個のCT抗原が同定、報告されている。しかしながら、これらのCT抗原のすべてが癌患者に対して強い免疫原性を有しているわけではなく、癌の診断、検査のマーカー、あるいは癌治療に有望なCT抗原は限られている。
【0004】
現在報告されている代表的なCT抗原としては、MAGE(非特許文献1参照)、SSX(非特許文献2参照)、NY-ESO-1(非特許文献3参照)が挙げられる。MAGEおよびNY-ESO-1は欧米を中心に臨床応用され、一定の効果が得られた例もある(例えば、NY-ESO-1の臨床応用については非特許文献4参照)。このように、癌治療等への応用に現在最も有望とされているものはNY-ESO-1といえる。

【非特許文献1】van der Bruggen P, Traversari C, Chomez P, Lurquin C, De Plaen E, van den Eynde B, Knuth A, Boon T.A gene encoding an antigen recognized by cytolytic T lymphocytes on a human melanoma. Science 254: 1643-1647, 1991.
【非特許文献2】Gure AO, Tureci O, Sahin U, Tsang S, Scanlan MJ, Jager E, Knuth A, Pfreundschuh M, Old LJ, Chen YT. SSX: a multigene family with several members transcribed in normal testis and human cancer. Int. J. Cancer 72: 965-971, 1997.
【非特許文献3】Chen YT, Scanlan, MJ, Sahin U, Tureci O, Gure AO, Tsang S, Williamson B, Stockert E, Pfreundschuh M, Old LJ. A testicular antigen aberrantly expressed in human cancers detected by autologous antibody screening. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 1914-1918, 1997.
【非特許文献4】Jager E, Gnjatic S, Nagata Y, Stockert E, Jager D, Karbach J, Neumann A, Rieckenberg J, Chen YT, Ritter G, Hoffman E, Arand M, Old LJ, Knuth A. Induction of primary NY-ESO-1 immunity: CD8+ T lymphocyte and antibody responses in peptide-vaccinated patients with NY-ESO-1+ cancers. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 12198-12203, 2000.
【非特許文献5】Stockert E, Jager E, Chen YT, Scanlan MJ, Gout I, Karbach J, Arand M, Knuth A, Old LJ. A survey of the humoral immune response of cancer patients to a panel of human tumor antigens. J. Exp. Med. 187: 1349-1354, 1998.
【非特許文献6】Kurashige T, Noguchi Y, Saika T, Ono T, Nagata Y, Jungbluth AA, Ritter G, Chen YT, Stockert E, Tsushima T, Kumon H, Old LJ, Nakayama E. NY-ESO-1 expression and immunogenicity associated with transitional cell carcinoma: correlation with tumor grade. Cancer Res. 61: 4671-4674, 2001.
【非特許文献7】Nakada T, Noguchi Y, Sato S, Ono T, Saika T, Kurashige T, Gnjatic S, Ritter G, Chen YT, Stockert E, Nasu Y, Tsushima T, Kumon H, Old LJ, Nakayama E. NY-ESO-1 mRNA expression and immunogenicity in advanced prostate cancer. Cancer Immunity 3: 10, 2003.
【非特許文献8】Sugita Y, Wada S, Fujita S, Nakata T, Sato S, Noguchi Y, Jungbluth AA, Yamaguchi M, Chen YT, Stockert E, Gnjatic S, Williamson B, Scanlan MJ, Ono T, Sakita I, Yasui M, Miyoshi Y, Tamaki Y, Matsuura N, Noguchi S, Old LJ, Nakayama E, Monden M. NY-ESO-1 expression and immunogenicity in malignant and benign breast tumors.Cancer Res. 64: 2199-2204, 2004.
【非特許文献9】Fujita S, Wada H, Jungbluth AA. Sato S, Nakata T, Noguchi Y, Doki Y, Yasui M, Sugita Y, Yasuda T, Yano M, Ono T, Chen YT, Higashiyama M, Gnjatic S, Old LJ, Nakayama E, Monden M. NY-ESO-1 expression and immunogenicity in esophageal cancer.Clin. Cancer Res. 10: 6551-6558, 2004.
【非特許文献10】Nakamura, S, Nouso K, Noguchi Y, Higashi T, Ono T, Jungbluth AA, Chen YT, Old LJ, Nakayama E, Shiratori Y. Expression and immunogenicity of NY-ESO-1 in hepatocellular carcinoma. J. Gastroenterol. Hepatol. 21: 1281-1285, 2006.
【発明の開示】
【0005】
しかし、本発明者らが、様々な上皮系腫瘍の患者についてNY-ESO-1に対する抗体産生能を調べたところ、膀胱癌で7%(9/124、非特許文献6参照)、前立腺癌で4.6%(10/218、非特許文献7参照)、乳癌で1.6%(1/62、非特許文献8参照)、食道癌で3.9%(2/51、非特許文献9参照)、肝臓癌で2.2%(2/92、非特許文献10参照)であり、何れの癌種においても抗体産生能がそれほど高くない。このように、過去に報告されているCT抗原は、上皮系腫瘍患者の血清中に抗体が存在する頻度が極めて低い。
【0006】
また、過去に報告されているCT抗原が胃癌や大腸癌などの消化器癌において発現している例はまれであり、しかも消化器癌患者における抗体産生の頻度もきわめて少ない。例えば、大腸癌患者のNY-ESO-1、MAGE、SSXに対する抗体産生能は何れも0%であることが報告されている(非特許文献5参照)。また、本発明者らが58例の大腸癌患者血清を用いて調べたNY-ESO-1に対する抗体産生能は0%であった(未発表)。さらに、本発明者らの胃癌患者血清を用いた予備的解析においても、NY-ESO-1に対する抗体を証明できていない。
【0007】
このように、胃癌や大腸癌などの消化器系癌を含む上皮系腫瘍の診断に有用な癌抗原を見出すことは容易ではなく、それゆえ消化器系癌の診断に有用な癌抗原の開発が非常に強く望まれている。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、消化器癌を始めとする上皮系腫瘍の検査、診断あるいは治療に有用な癌抗原(好ましくはCT抗原)を用いる新規な癌診断技術を提供することにある。
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、正常精巣由来のcDNAライブラリーと胃癌患者血清とを用いたSEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法を実施し、陽性クローン中のCCDC62がCT抗原であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るキットは、癌を診断するためのキットであって、配列番号1もしくは3に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るキットは、癌を診断するためのキットであって、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドを備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るキットは、癌を診断するためのキットであって、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えていることを特徴としている。
【0013】
上記本発明に係るキットは、上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いられることが好ましく、胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、腎癌、前立腺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いられることがより好ましい。
【0014】
本発明に係る癌診断方法は、配列番号1もしくは3に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程を包含することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る癌診断方法は、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するポリペプチド測定工程を包含することを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る癌診断方法は、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体が被験体由来の試料中に存在するレベルを測定する抗体測定工程を包含することを特徴としている。
【0017】
上記本発明に係る癌診断方法は、上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いられることが好ましく、胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、腎癌、前立腺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いられることがより好ましい。
【0018】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】SEREX法の概略を示す図である。
【図2】ヒト正常組織におけるCCDC62 mRNAの発現解析結果を示す図である。(a)は、RT-PCRによる解析結果を示し、(b)は、リアルタイムRT-PCRによる解析結果を示す。
【図3】各種癌組織におけるCCDC62-2 mRNAの発現を、RT-PCRにより解析した結果を示す図である。(a)は肺癌における解析結果を示し、(b)は大腸癌における解析結果を示し、(c)は前立腺癌における解析結果を示す。
【図4】種々の抗原と肺癌患者血清との反応性をファージプラークアッセイ法で解析した結果を示す図である。
【図5】癌患者における、CCDC62-2タンパク質に対する液性免疫応答を調べた結果を示す図である。(a)は、ELISA法を用いて解析した結果を示し、(b)は、ウェスタンブロット法を用いて解析した結果を示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者らは、特定の胃癌患者血清を用いて、正常精巣由来のcDNAライブラリーに対するSEREX法を実施した。その結果、陽性クローンがCCDC62発現クローンであること、ならびに胃癌患者の血清中に抗CCDC62抗体が存在することを見出した。すなわち、CCDC62が胃癌患者における癌抗原であることを見出した。さらに、CCDC62の発現解析を行い、CCDC62がヒト正常組織では精巣のみに強く発現していること、一方、癌組織および癌細胞株において発現が認められることを確認した。これらの知見に基づいて、CT抗原であるCCDC62を用いる本発明を完成させるに至った。
【0021】
SEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法は、患者血清中に存在する抗体が認識する抗原遺伝子を、癌組織由来のcDNA発現ライブラリーの中から同定する方法であり(Sahin U, Tureci O, Schmitt H, Cochlovius B, Johannes T, Schmits R, Stenner F, Luo G, Schobert I, Pfreundschuh M. Human neoplasms elicit multiple specific immune responses in the autologous host. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995 Dec 5;92(25):11810-3.)、癌抗原のスクリーニング方法として優れていることが知られている。ただし、本発明は、自己の癌組織由来のcDNAライブラリーではなく正常精巣由来のcDNAライブラリーを用いることによって初めて成し得たものである。
【0022】
以上のように、ヒトのCCDC62の配列は知られているが、CCDC62について、疾患との関連性について何ら報告されていない。CCDC62の癌での発現および癌患者血清中の抗CCDC62抗体の存在は、本発明者らが初めて見出したものである。
【0023】
配列番号1には、ヒトCCDC62遺伝子のtranscript variant 1の塩基配列が示されており、配列番号2には、ヒトのCCDC62遺伝子のtranscript variant 1によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列が示されている。また、配列番号3には、ヒトCCDC62遺伝子のtranscript variant 2の塩基配列が示されており、配列番号4には、ヒトのCCDC62遺伝子のtranscript variant 2によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列が示されている。なお、ヒトCCDC62遺伝子の塩基配列は、transcript variant 1がNM_032573として、transcript variant 2がNM_201435として、GenBankに登録されている。
【0024】
〔1.癌診断方法〕
本発明は、癌診断方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被験体由来の試料におけるCCDC62の発現レベルを測定し、このレベルをコントロール(例えば、正常レベル)と比較することにより癌を診断する方法である。すなわち、本実施形態に係る癌診断方法は、ポリヌクレオチド測定工程またはポリペプチド測定工程を包含している。CCDC62の発現レベルは、当該分野において公知の手法を用いて転写産物(mRNA)量または翻訳産物(タンパク質)量を測定することにより決定することができる。
【0025】
また、別の実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被験体由来の試料における抗CCDC62抗体のレベルを測定し、このレベルをコントロール(例えば、正常レベル)と比較することにより癌を診断する方法である。すなわち、本実施形態に係る癌診断方法は、抗体測定工程を包含している。抗CCDC62抗体のレベルは被験体由来の血清における抗CCDC62抗体のレベルを測定することにより決定することができる。
【0026】
本発明の癌診断方法の適用対象となる被験体は特に限定されるものではなく広く動物一般を含むが、ヒトであることが好ましい。被験体がヒトである場合、癌患者や癌を有する疑いのある患者のみでなく、健常人も被験体となり得る。
【0027】
本発明の癌診断方法に用いられる被験体由来の試料としては、被験体から得られたもの(すなわち、被験体から分離されたもの)であれば特に限定されない。例えば、血液(血清、血漿、血球等)、尿、糞便、喀痰、腹水、腹腔洗浄液、生検組織、外科的に切除された検体などを挙げることができる。
【0028】
正常レベルとは、正常健康個体(健常人)におけるCCDC62のmRNAの発現レベル、CCDC62のタンパク質の発現レベル、あるいは抗CCDC62抗体のレベルを意味する。正常レベルは、比較すべき被験体由来の試料(すなわち、本発明のポリヌクレオチド測定工程、ポリペプチド測定工程または抗体測定工程において用いられる試料)と同一の正常細胞、組織、体液を試料として用いて測定されたものであることが好ましい。また、正常レベルは正常な健康個体からなる集団の平均を用いることがより好ましい。
【0029】
本明細書中において使用される場合、「診断」は、「判定」だけでなく「検査」、「検出」および「予測」も包含される。すなわち、癌を診断するとは、被験体が癌を有しているか否かの判定または予測、進行度合いの判定または予測、治療効果の判定または予測を行うことが意図され、より好ましくは、被験体が癌を有しているか否かの検査/検出/予測、進行度合いの検査/検出/予測、治療効果の検査/検出/予測を行うことが意図される。
【0030】
また、診断の対象となる癌の種類は特に限定されるものではないが、上皮系腫瘍または皮膚癌であることが好ましい。上皮系腫瘍としては、例えば、胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣上皮癌、前立腺癌などを挙げることができる。また、皮膚癌としては、悪性黒色腫を挙げることができる。
【0031】
(1)mRNAレベルを指標とする癌診断方法
一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被験体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、配列番号1もしくは3に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程を包含するものであればよい。なお、ポリヌクレオチドにはDNAおよびRNAの両方が含まれる。
【0032】
本実施形態では、ポリヌクレオチド測定工程において、CCDC62のmRNAレベルを測定すればよい。
【0033】
mRNAレベルを測定する方法としては、特定のmRNAレベルを測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いられる。例えば、CCDC62のmRNAまたはこれらのcDNAの塩基配列あるいはその相補配列の一部からなるポリヌクレオチドであって、CCDC62のいずれかのmRNAまたはcDNAに部位特異的に結合(ハイブリダイズ)するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法が挙げられる。上記プライマーやプローブは、CCDC62のmRNAまたはそのcDNAと部位特異的塩基対を形成するものであれば、mRNAを測定/検出するための様々な修飾がされたものであってよい。
【0034】
上記プライマーとして使用するポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは3に示される塩基配列またはその相補配列に基づいて設計されるものであれば限定されない。例えば、配列番号5~8のいずれかに示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。これらのポリヌクレオチドは、本発明者らが実際にRT-PCRを実施した際に用いたプライマーであり、CCDC62のcDNAを特異的に増幅させるものであることが実証されている。上記プローブとして使用するポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは3に示される塩基配列に基づいて設計されるものであれば限定されない。なお、目的のmRNA(cDNA)を特異的に増幅させるプライマーとして利用可能なポリヌクレオチドは当該mRNA(cDNA)を特異的に検出するためのプローブとして使用可能であることは当該分野において周知である。
【0035】
上述のmRNAまたはcDNAに部位特異的に結合するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いてmRNAを測定する公知の方法としては、例えば、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、コンペティティブPCR法、in Situ ハイブリダイゼーション法、in Situ PCR法、DNAアレイ法などを挙げることができる。
【0036】
例えば、上記RT-PCR法は、試料から調製したトータルRNAやmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型に目的領域をPCRで増幅する方法である。さらに、リアルタイムRT-PCR法は、cDNAを鋳型に目的領域をPCR増幅する際に、リアルタイムモニタリング用試薬を用いて増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングし、解析する方法である。リアルタイムモニタリング試薬としては、例えば、SYBR(登録商標:Molecular Probes社)Greenや、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社)プローブ等が挙げられる。
【0037】
例えば、上記DNAアレイ法は、支持体上にCCDC62のcDNAまたはそのフラグメントを固定化し、試料から調製したmRNAまたはcDNAとインキュベートする。この際、上記mRNAまたはcDNAを蛍光標識等することにより、支持体上に固定化したDNAと試料から調製したmRNAまたはcDNAとのハイブリダイゼーションを検出し、試料中のmRNAレベルを測定することができる。
【0038】
上記比較工程においては、ポリヌクレオチド測定工程で測定した試料中のCCDC62のmRNAレベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、上述のように、比較すべき被験体由来の試料(すなわち、本実施形態のポリヌクレオチド測定工程において用いられる試料)と同一の正常細胞、組織、体液を試料として用いて、同一の方法で測定されたものであることが好ましい。正常レベルは、正常な健康個体に由来する試料をポリヌクレオチド測定工程と同時に測定されることにより得られてもよく、背景データとして蓄積されているデータが用いられてもよい。被験体由来の試料におけるmRNAレベルが正常レベルより高い場合に、被験体は癌を有していると判定することが可能である。正常レベルより高い場合とは、好ましくは2倍高いレベルであり、より好ましくは3倍高いレベルである。
【0039】
(2)タンパク質レベルを指標とする癌診断方法
一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被験体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するポリペプチド測定工程を包含するものであればよい。
【0040】
本実施形態では、ポリペプチド測定工程において、CCDC62タンパク質のレベルを測定すればよい。
【0041】
タンパク質の発現レベルを測定する方法としては、特定のタンパク質レベルを測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いられる。例えば、CCDC62タンパク質に特異的に結合する抗体を使用する方法を挙げることができる。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。また、完全な抗体分子でもよく特異的に結合し得る抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント等)でもよい。
【0042】
抗体を用いてタンパク質レベルを測定する公知の方法としては、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA法(酵素免疫検定法)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法などを挙げることができる。これらの中でも、より感度がよく、簡便という点から、ELISA法が好ましい。
【0043】
上記比較工程においては、ポリペプチド測定工程で測定した試料中のCCDC62タンパク質のレベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、上述のように、比較すべき被験体由来の試料(すなわち、本実施形態のポリペプチド測定工程において用いられる試料)と同一の正常細胞、組織、体液を試料として用いて、同一の方法で測定されたものであることが好ましい。正常レベルは、正常な健康個体に由来する試料をポリペプチド測定工程と同時に測定されることにより得られてもよく、背景データとして蓄積されているデータが用いられてもよい。被験体由来の試料におけるタンパク質レベルが正常レベルより高い場合に、被験体は癌を有していると判定することが可能である。正常レベルより高い場合とは、好ましくは2倍高いレベルであり、より好ましくは3倍高いレベルである。
【0044】
(3)抗体レベルを指標とする癌診断方法
一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被験体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体が被験体由来の試料中に存在するレベルを測定する抗体測定工程を包含するものであればよい。
【0045】
本実施形態では、抗体測定工程において、抗CCDC62抗体のレベルを測定すればよい。なお、抗CCDC62抗体のレベルの測定に用いる試料は、血清であることが好ましいが、抗体レベルの測定が可能な試料であれば特に限定されない。
【0046】
抗体のレベルを測定する方法としては、特定の抗原に対する抗体力価のレベルを測定する方法や、目的の抗体に対する抗体を用いる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いられる。例えば、抗原であるCCDC62タンパク質を用いたELISA法、タンパク質アレイを挙げることができる。抗体の力価測定に用いる抗原タンパク質は、生体試料から精製して取得することも可能であるが、組換えタンパク質として取得することが好ましい。組換えタンパク質は、CCDC62遺伝子を挿入した発現ベクターを宿主に導入して発現させ、精製することにより取得することができる。
【0047】
上記比較工程においては、抗体測定工程で測定した試料中の抗CCDC62抗体のレベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、正常な健康個体に由来する試料(好ましくは血清)を抗体測定工程と同時に測定されることにより得られてもよく、背景データとして蓄積されているデータが用いられてもよい。被験体由来の試料における抗CCDC62抗体のレベルが正常レベルより高い場合に、被験体は癌を有していると判定することが可能である。正常レベルより高い場合とは、好ましくは2倍高いレベルであり、より好ましくは3倍高いレベルである。

〔2.キット〕
本発明は、癌診断に用いられるキットを提供する。本発明に係るキットは、上述した診断法を実施するに必要な試薬または器具が備えられていればよい。本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは試薬または器具の各々を使用するための指示書が備えられている。本明細書中にてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に試薬などが内包されている状態が意図される。「指示書」は、紙またはその他の媒体に印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD-ROMなどのような電子媒体に記録されていてもよい。本発明に係るキットは、癌の診断に適用するために必要な試薬または器具があわせて備えられていてもよい。
【0048】
一実施形態において、本発明に係るキットは、上記mRNAレベルを指標とする癌診断方法に適用され得るキットであり得る。本実施形態に係るキットは、被験体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号1もしくは3に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えているものであればよい。配列番号1もしくは3に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、CCDC62のmRNAを測定するために使用するプライマー、プローブを挙げることができる。本キットはCCDC62のmRNA発現レベルの測定に好適に用いることができる。
【0049】
本実施形態に係るキットは、CCDC62のmRNA測定用のRT-PCRキットまたはCCDC62のmRNA測定用のリアルタイムRT-PCRキットを構成することができる。また、ユーザーの選択によりRT-PCRまたはリアルタイムRT-PCRの何れかを選択できるキットとすることもできる。この場合、本実施形態に係るキットは、CCDC62のmRNAをRT-PCRにより増幅するためのプライマーセットを備えていればよく、当該プライマーセット以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、組織または細胞からRNAを調製するための試薬、逆転写酵素、逆転写反応に用いる緩衝液、耐熱性DNAポリメラーゼ、PCR用試薬、リアルタイムPCR用試薬、PCR用チューブ、PCR用プレートなどを備えていることが好ましい。
【0050】
別の実施形態において、本発明に係るキットは、上記タンパク質レベルを指標とする癌診断方法に適用され得るキットであり得る。本実施形態に係るキットは、被験体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えているものでもよい。本キットはCCDC62タンパク質のレベル測定に好適に用いることができる。
【0051】
さらなる実施形態において、本発明に係るキットは、上記抗体レベルを指標とする癌診断方法に適用され得るキットであり得る。本実施形態に係るキットは、被験体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号2もしくは4に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドを備えているものでもよい。この場合、本実施形態に係るキットは抗CCDC62抗体の力価レベルの測定に好適に用いることができる。また、本実施形態に係るキットは、抗CCDC62抗体に対する抗体を備えているものでもよい。このような抗体を作製する技術は当該分野において周知である。
【0052】
本実施形態に係るキットはELISA用キットとして構成され得る。このようなキットには、CCDC62タンパク質に特異的に結合する抗体あるいはCCDC62タンパク質が予めELISA用プレートに固定化(固相化)された状態でキットに含まれていることが好ましい。さらに、CCDC62タンパク質に特異的に結合する抗体が固相化されたELISA用プレートとCCDC62タンパク質が固相化されたELISA用プレートとの両方を備えるキットであれば、CCDC62タンパク質のレベルと抗CCDC62抗体のレベルとの両方を測定できるキットとすることができる。
【0053】
上記ELISA用プレート以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、標識された二次抗体、発色用試薬、洗浄用緩衝液などを備えていることが好ましい。
【0054】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0055】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、核酸の抽出、切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定、等一般の遺伝子組換えに必要な方法は、特に記載のない限り、各操作に使用する市販の試薬、機器装置等に添付されている説明書や、実験書(例えば「Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 3rd Ed(Sambrookら(2001), Cold Spring Harbor Laboratory Press)」)に基本的に従った。
【0057】
〔実施例1:SEREX法による胃癌患者血清中の抗体が認識する抗原の解析〕
SEREX法は、図1に概略を示したように、癌患者から摘出した癌組織から直接mRNAを抽出し作製したcDNA発現ライブラリーから、癌患者の血清を用いて癌抗原を検索する方法である。本実施例1では、胃癌の診断に有用な癌・精巣抗原を単離すべく、正常精巣由来のcDNAライブラリーと胃癌患者血清とを用いたSEREX法を実施した。
【0058】
(1)胃癌患者血清
原発巣および肝転移巣共に縮小傾向を示した胃腺癌患者から血清を得た。なお、この血清は、正常精巣から得たタンパク質画分と強く反応することを予め確認したものを選択した。血清をTBS(Tris-Buffered Saline)で10倍に希釈した後、E.coli Y1090/Y1089のアフィニティーカラム(BioDynamics Lab Inc., Tokyo)を用いて抗バクテリア抗体(大腸菌およびファージに対する非特異的抗体)の吸収処理を行った。
【0059】
(2)cDNA発現ライブラリーの作製
Quick Prep Micro mRNA purification kit (Stratagene, La Jolla, CA, USA)を用いて、正常精巣Total RNA(BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA, USA)からmRNAを精製した。5μgのmRNAよりcDNAを合成し、γZAP Express vector(Stratagene)に組み換えてファージにパッケージングし、cDNA発現ライブラリーを作製した。
【0060】
(3)正常精巣cDNAライブラリーの免疫スクリーニング
150mmプレートあたり約4,000個のファージを蒔き、6~8時間培養した。IPTGで誘導した蛋白質を直径135mmニトロセルロースメンブラン(Schleicher & Schuell, Dassel, Germany)に転写した後、抗バクテリア抗体を吸収した胃癌患者血清(TBSで200倍に希釈)とさらに15時間反応させ、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, Pa., USA)で検出した。この時、抗体産生細胞に由来するIgGクローンを除去するために、メンブランを予め二次抗体のみで処理した。陽性クローンを単離し、それぞれ直径82mmあるいは47mmのメンブランを用いて2次、3次スクリーニングを行い、単クローン化した。
【0061】
(4)インサートcDNAの塩基配列の決定
陽性クローンをin vivoエキシジョンによりpBK-CMVプラスミドにした後、インサートcDNAの塩基配列を解析し(ABI PRISM R310 Genetic Analyzer; PE Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)、遺伝子データベース(http://www.ncbi.nih.gov/BLAST/Blast.cgi)によるホモロジー検索を行った。
【0062】
(5)結果
約20万クローンをスクリーニングした結果、表1に示した55個の陽性クローンを単離した。
【0063】
【表1】
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【0064】
ホモロジー検索の結果、23種類の遺伝子を同定した(OY-ST-1~23)。これらのうち、データベースによる正常組織発現の検索により、4種類の遺伝子は精巣特異的であった(表1)。他の19種類の遺伝子については正常組織に広範囲に発現しているか、あるいは発現のデータは得られなかった。
【0065】
精巣特異的に発現する遺伝子として、OY-ST-3(G kinase anchoring protein 1(GKAP1))が2クローン得られた。GKAP1については、本発明者らによって現在出願中である(現在未公開)。また、OY-ST-6(synaptonemal complex protein 1, SYCP1(SCP-1))が1クローン得られた。SCP-1(OY-ST-6)はSEREX法が開発された初期に発見された代表的ながん・精巣抗原(CT抗原)の一つであるが、その免疫原性は弱いことが知られている(Tureci, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998)。
【0066】
OY-ST-18は2クローン単離され、ホモロジー検索の結果、CCDC62(coiled-coil domain containing 62)であったが、各クローンはそれぞれtranscript variant 1(CCDC62-1, NM_032573:配列番号1)およびtranscript variant 2(CCDC62-2, NM_201435:配列番号3)であった。なお、CCDC62がヒト癌を含む疾患に関連するという報告はない。
【0067】
〔実施例2:CCDC62の発現解析〕
CCDC62(variant 1)特異的プライマーとして、
C62-1-S(sense: 5'-TCCCCGGCAAGTGAGCTAAT-3'、配列番号5)
C62-1-AS(antisense: 5'-ATACATCCCCATTCCCGAGG-3'、配列番号6)
CCDC62(variant 2)特異的プライマーとして、
C62-2-S(sense: 5'-AAGTCAGAGGTCCCAGAAGA-3'、配列番号7)
C62-2-AS(antisense: 5'-CTATGCAGGGGTTCTTTCTC-3'、配列番号8)
を、DNA合成機で合成した。ヒト正常組織由来cDNA(MTC panel, BD Biosciences Clontech)および各種癌由来cDNAをRT-PCRによって増幅し、遺伝子の発現を解析した。
【0068】
癌組織は、手術あるいは生検によって得られた組織の提供を受けた。なお、実施例1および2に用いた癌患者または健常人由来の試料は、すべて、あらかじめ担当医により口頭および文書で直接提供者に説明し、インフォームドコンセントを得たものについてのみ提供を受けた。癌患者または健常人由来の試料は匿名化を行い、個人情報は厳重に保護したうえで研究に用いた。本研究の内容およびインフォームドコンセントのための説明文書および同意文書については、岡山大学大学院医歯薬学研究科「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」倫理委員会の承認を受けている。
【0069】
癌細胞株として、11種類の肺癌細胞株、8種類の悪性黒色腫細胞株、3種類の前立腺癌細胞株を用いた。悪性黒色腫細胞株については米国スローン・ケタリング癌研究所で樹立されたものであり、当該研究所から本発明者らが入手したものである。これら以外の細胞株は、癌研究に一般に用いられているものであり、通常、公知の細胞保存機関等から入手可能である。
【0070】
癌組織および癌細胞株については、それぞれtotal RNAを抽出し(RNeasy; Qiagen, Hilden, Germany)、MMLV逆転写酵素とoligo(DT)15プライマーによりcDNAを合成した(Ready-To-Go You-Prime First-Strand Beads; Amersham Biosciences, Buckinghamshire, UK)。CCDC62についてのRT-PCRは、変性を94℃で1分間、アニーリングを60℃で1分間、および伸長を72℃で1.5分間からなるサイクルを35サイクル行った。PCR産物はアガロースゲル電気泳動で解析した。合成したcDNAについて同時にG3PDH遺伝子の増幅を確認した。
【0071】
CCDC62-1 mRNAおよびCCDC62-2 mRNAについて、14種類の正常組織における発現を、CCDC62-1特異的プライマーまたはCCDC62-2特異的プライマーを用いて解析した。その結果、精巣にのみ強い発現が確認された(図2の(a))。また、ヒト正常組織におけるCDCC62遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCR法によって定量的に解析した。cDNAは、2μgのtotal RNAよりランダムプライマーで合成した(High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kits, Applied Biosystems, Foster City, CA)。CCDC62特異的TaqManプローブ(TaqMan Gene Expression Assays, Applied Biosystems)を用いてABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)で定量的に解析した。用いたTaqManプローブはCCDC62の2種類のスプライスバリアント (CCDC62-1およびCCDC62-2)に共通する配列に特異的なプローブである(AssayID: Hs00261486)。内在性コントロールとして、G3PDHを用いた(TaqMan Pre-Developed Assay Reagents, Applied Biosystems)。CCDC62の発現は、キャリブレーターとして用いた正常精巣に対する発現の比として表した。精巣に強い発現が確認され、これは同様に解析した代表的なCT抗原であるNY-ESO-1と同等の発現であった(図2の(b))。
【0072】
各種の癌組織におけるCCDC62-1 mRNAおよびCCDC62-2 mRNAの発現を解析した結果、CCDC62-1の発現は認められなかった。CCDC62-2について各種の癌組織における発現を、特異的プライマーを用いてRT-PCR法で解析した結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
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【0074】
CCDC62-2 mRNAは、口腔癌、食道癌、胃癌、乳癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌、腎癌に発現が観察された(図3)。特に、胃癌では8/117(7%)、肺癌では5/19(26%)、前立腺癌では3/9(33%)の発現が確認された。また、肺癌および前立腺癌に由来する癌細胞株においても、発現が確認された。さらに、悪性黒色腫では3/8(38%)の高発現が確認された。
【0075】
〔実施例3:肺癌患者血清のSEREX同定抗原に対する反応性〕
CCDC62-1、CCDC62-2、およびもう1種類の同定されたCT抗原であるGKAP1クローンと肺癌患者血清との反応性を、ファージプラークアッセイ法で解析した(図4)。
【0076】
【表3】
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【0077】
調べた29人の肺癌患者血清のうち、4人がCCDC62-2に陽性であった。さらに、2人がGKAP1に陽性であった。CCDC62-1に対してはすべての患者血清が反応しなかった(表3)。また、これらの抗原は、調べた7人の健常人血清とは全く反応しなかった。
【0078】
〔実施例4:癌患者のCCDC62-2タンパク質に対する液性免疫応答の解析〕
CCDC62-2タンパク質のC-末端(アミノ酸残基366-684)コードするcDNAをpGEX-6P-1発現ベクターに導入した。これを大腸菌BL21株に形質転換した。IPTGで誘導して得られたGST融合CCDC62-2タンパク質を、GSTrap FFカラム(Amersham Biosciences)を用いて精製した。
【0079】
ELISA法により癌患者のCCDC62-2に対する液性免疫応答を解析した(図5の(a))。具体的には、GST融合組換えCCDC62-2タンパク質(1μg/ml)を96wellプレートに吸着させ(100ng/well)、5% FCS/PBSで1時間ブロッキングした後、血清(100μl)を加えて2時間反応させた。プレートを洗浄した後、パーオキシデース標識抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)と1時間反応させた。基質(1,2-phenylenediamine dihydrochlolide)で発色させた後、191人の癌患者血清および41人の健常人血清について吸光度を測定した。抗体価を400倍希釈血清で評価し、健常人のOD値(490nm)の平均の4SD以上を陽性とした。その結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
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【0081】
191人中13人(6.8%)が抗体陽性であった。健常人は、調べた41人すべて陰性であった。胃癌患者では104人中6人(5.8%)が、肺癌患者では76人中5人(6.6%)、大腸癌患者では11人中2人(18%)が抗体陽性であった。
【0082】
胃癌及び肺癌患者血清についてウェスタンブロット法により検討した(図5の(b))。具体的には、組換えCCDC62-2タンパク質をSDS-PAGEにより分離した後に、ニトロセルロース膜上に転写し、100倍に希釈したELISA陽性および陰性癌患者血清と反応させた。反応後のタンパク質を、パーオキシデース標識抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)で検出することによって、血清中抗体がCCDC62-2タンパク質に特異的であるかを解析した。その結果、ELISA陽性患者血清中の抗体はCCDC62-2タンパク質に特異的であることが確認された。
【0083】
本発明により、胃癌、大腸癌などの消化器癌の診断に有効なCT抗原を用いた新規な癌診断キットおよび癌診断方法を提供することができる。当該CT抗原は、消化器癌に限定されず、乳癌、頭頸部癌、肺癌、腎癌、前立腺癌などの他の上皮系腫瘍や、悪性黒色腫などの皮膚癌の診断にも有効に利用することができる。
【0084】
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、癌の検査または診断(癌の存在の有無、進行度合の決定、または癌患者の予後判定など)、癌予防または癌治療(例えば癌ワクチン)などに用いるための、癌抗原遺伝子、ベクター、タンパク質、抗体、細胞傷害性T細胞(CTL)などのパネルを提供することができる。これらを単独でまたは組み合わせて用いることにより、あるいはキットとして用いることにより、癌の悪性度、癌の組織型、治療効果または予後の判定が可能になる。CCDC62を用いることにより、精度の高い癌の検査または診断を行うことができる。さらに、本発明者らがすでに同定しているCT抗原(例えば、OY-TES-1、RFX4、AKAP3、XAGE-1、GKAP1)と組み合わせることにより、さらに広範な癌種に応用し得る。
【0086】
本発明は癌の診断に用いるものであり、癌を対象とした医学、医療の発展に寄与するだけでなく、臨床検査薬産業、試薬産業、医療機器産業等において利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4