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明細書 :タンパク質のN末を酵素的に修飾する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5061351号 (P5061351)
登録日 平成24年8月17日(2012.8.17)
発行日 平成24年10月31日(2012.10.31)
発明の名称または考案の名称 タンパク質のN末を酵素的に修飾する方法
国際特許分類 C07K   1/13        (2006.01)
C12N   9/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P   1/00        (2006.01)
FI C07K 1/13 ZNA
C12N 9/00
C12N 15/00 A
C12P 1/00 Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 53
出願番号 特願2007-546539 (P2007-546539)
出願日 平成18年11月22日(2006.11.22)
国際出願番号 PCT/JP2006/323879
国際公開番号 WO2007/061128
国際公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
優先権出願番号 2005337537
優先日 平成17年11月22日(2005.11.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年11月19日(2009.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】西川 一八
【氏名】横川 隆志
【氏名】大野 敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】山本 匡子
参考文献・文献 SANNI,A. et al, Structure and expression of the genes encoding the alpha and beta subunits of yeast phenylalanyl-tRNA synthetase, J Biol Chem, 1988, Vol.263, No.30, p.15407-15
SHARMA,N. et al, Efficient introduction of aryl bromide functionality into proteins in vivo, FEBS Lett, 2000, Vol.467, No.1, p.37-40
KUNO,A. et al, Leucyl/phenylalanyl (L/F)-tRNA-protein transferase-mediated N-terminal specific labelling of a protein in vitro, Nucleic Acids Res Suppl, 2003, No.3, p.259-60
坂本健作ら、生きた細胞で超タンパク質をつくる-非天然アミノ酸をタンパク質に導入する方法化学,2005年3月25日,第60巻第4号第70-71頁
CHIN,J.W. et al, An expanded eukaryotic genetic code, Science, 2003, Vol.301, No.5635, p.964-7
ABRAMOCHKIN,G. et al, The leucyl/phenylalanyl-tRNA-protein transferase. Overexpression and characterization of substrate recognition, domain structure, and secondary structure, J Biol Chem, 1995, Vol.270, No.35, p.20621-8
調査した分野 C07K 1/00-19/00
C12N 9/00-99
C12N 15/00-90
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
Science Direct
Wiley InterScience
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)(イ)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、415位のトレオニンをアラニン又はグリシンに変異させた変異型のPheRSαサブユニット、並びに
(ロ)配列番号2で表されるアミノ酸配列、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が、置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表される変異型のPheRSβサブユニットからなる変異PheRSであって、
tRNAPheをフェニルアラニンアナログ化できる変異PheRSにより修飾フェニルアラニンをtRNAPheに結合させることにより修飾フェニルアラニルtRNAPheを調製し、
(2)N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質及び前記(1)で調製された修飾フェニルアラニルtRNAPheをロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素の存在下で処理する、
N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質の修飾方法。
【請求項2】
修飾フェニルアラニンが下記式(1)で表される請求項1記載の方法。
JP0005061351B2_000021t.gif 上記式1中、R2は、水素、水酸基又はメトキシ若しくはアセチル、R3は水素又は水酸基、そして、R4は、水素、ハロゲン、アジド基、ニトロ基、メトキシ若しくはアセチル又は水酸基である。
【請求項3】
修飾フェニルアラニンがpara-azido-phenylalanine又は蛍光標識されたフェニルアラニンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質が任意の蛋白質をペプチダーゼにて処理して調製された請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質を、以下(1)-(4)の存在下で処理することによる、N末アルギニン又はリジンを有するタンパク質の修飾方法。
(1)修飾フェニルアラニン、
(2)tRNAPhe
(3)(イ)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、415位のトレオニンをアラニン又はグリシンに変異させた変異型のPheRSαサブユニット、並びに
(ロ)配列番号2で表されるアミノ酸配列、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が、置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表される変異型のPheRSβサブユニットからなる変異PheRSであって、
tRNAPheをフェニルアラニンアナログ化できる変異PheRS(変異型フェニルアラニルtRNA合成酵素)、及び
(4)ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素
【請求項6】
修飾フェニルアラニンが下記式(1)で表される請求項記載の方法。
JP0005061351B2_000022t.gif 上記式1中、R2は、水素、水酸基又はメトキシ若しくはアセチル、R3は水素又は水酸基、そして、R4は、水素、ハロゲン、アジド基、ニトロ基、メトキシ若しくはアセチル又は水酸基である。
【請求項7】
修飾フェニルアラニンがpara-azido-phenylalanine又は蛍光標識されたPheである請求項記載の方法。
【請求項8】
N末にアルギニン又はリジン を有するタンパク質が任意の蛋白質をペプチダーゼにて処理して調製された請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(1)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、415位のトレオニンをアラニン又はグリシンに変異させた変異型のPheRSαサブユニット、並びに
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が、置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表される変異型のPheRSβサブユニットからなる変異PheRSであって、
tRNAPheをフェニルアラニンアナログ化できる変異PheRS。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、タンパク質の修飾又は修飾の技術分野に関する。更に本願発明は、タンパク質のN末の修飾又は標識する技術、並びに、タンパク質のN末に変異を与える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質に修飾を施すことにより、そのタンパク質の機能を改変又は増強する試みは種々行われている。例えば、血中に投与するタンパク質をPEG化することにより、血中滞在時間を延長させることなどが既になされている。
このような、タンパク質の修飾のため、タンパク質を合成時に、タンパク質中のアミノ酸に部位特異的にラベル化する技術として、アンバーサプレッションを用いて、ペプチド鎖中の任意の位置にラベルを導入する技術、C末端ラベル(修飾)する技術として、ピューロマイシン誘導体を用いてペプチド鎖のC末端にラベルを導入する方法、N末端ラベル(修飾)法として、αアミノ基を修飾した開始メチオニンを用いてペプチド鎖のN末端にラベルを導入する方法などが知られている。
このうち、N末端ラベル化タンパク質合成としては、(1)開始tRNAにメチオニンをチャージした後で、αアミノ基を目的のラベル化剤で修飾し、(2)修飾メチオニル開始tRNAを精製し、(3)大腸菌S30抽出液でタンパク質を合成する際に上記修飾開始tRNAを添加して合成する方法が知られている。具体的には、既に以下の方法が報告されている(特許文献1-3、及び非特許文献1-6)。

【特許文献1】米国特許第6210941号 Methods for the detection and isolation of proteins
【特許文献2】米国特許第6303337号 N-terminal and C-terminal markers in nascent proteins
【特許文献3】米国特許6306628号 Methods for the detectin,analysis and isolation of nascent proteins
【非特許文献1】Gite S.,at al.(2000)Anal.Biochem.279,218-225 Ultrasensitive fluorescence-based detection of nascent proteins in gels
【非特許文献2】Olejnik J.,et al.(2005)Methods,36,252-260N-terminal labeling of proteins using initiator tRNA
【非特許文献3】Kudlicki W et al.(1994)J.Mol.Biol.,244,319-331 Chaperone-dependent folding and activation of ribosome-bound nascent rhodanese.Analysis by fluorescence.
【非特許文献4】Tsalkova T.,et al.(1998)J.Mol.Biol.,278,713-723.Different conformations of nascent peptides on rinosomes.
【非特許文献5】McIntosh B.,et al.,(2000)Biochimie,82,167-174 Initiation of protein synthesis with fluorphore-Met-tRNA(f)and the involvement of IF-2
【非特許文献6】RamachandiranV.Et al.,(2000)J.Biol.Chem.,275,1781-1786 Fluorphores at the N-terminus of nascent chloramphenicol acethyltransferase peptides affect translation and movement through the ribosome.
【発明の開示】
【0003】
従来方法は、もっぱら、遺伝子組み換え法で調製されたタンパク質を更に分析するために分離マーカーとして使用する方法であり、アミノ酸が修飾されたタンパク質を大量に供給しようとするものではなかった。さらに、従来方法でN末端をラベルすると、大腸菌S30抽出液を使用しているため、反応液内には,開始tRNAも存在しているので、ラベル化効率(合成されたタンパク質のうち、ラベル化されたタンパク質の割合)が極めて低く、ラベルされたタンパク質を大量に入手しようとすることはできないという問題があった。
仮に翻訳反応系に存在する開始tRNAを除く方法や、上記非特許文献3に記載の開始コドンをアンバーコドンに変異させ、サプレッサーtRNAを用いる方法によったとしても、修飾タンパク質の出現率自体は向上しても、反応系を大規模にすることは非経済的であることから、非天然アミノ酸(修飾アミノ酸)をN末に有する修飾タンパク質又は標識タンパク質を、経済的に大量に供給することは困難であると考えた。
そこで、本願発明は、N末端を修飾したタンパク質を大量に提供することを第1の課題とする。
本願発明者等は、N末端を修飾したタンパク質を大量に供給するためには、N末修飾蛋白質を遺伝子組み換え法により調製するよりも、未修飾蛋白質を酵素処理することにより修飾できる方法を開発するほうが効率的であると考え、酵素処理による蛋白質のN末端を修飾する方法の開発を検討したところ、鋭意研究の結果、酵素的に任意の蛋白質のN末端を修飾できる方法を見出した。
本願発明者らは、既に、フェニルアラニン(Phe)を修飾した修飾フェニルアラニン(以下フェニルアラニンアナログと呼ぶこともある)を変異型フェニルアラニルtRNA合成酵素(PheRS)を用いてtRNAPheに結合し、修飾フェニルアラニルtRNAPheを調製している。そこで、フェニルアラニルtRNAPheからPheをN末端にアルギニン又はリジンを有するタンパク質に付加する能力を備えたロイシル/フェニルアラニル-tRNAタンパク質転移酵素(Leucyl/Phenylalanyl-tRNA-Protein transferase;以下LFPTと略することがある。)を用いることにより、本修飾フェニルアラニルtRNAPheから修飾フェニルアラニンを前記タンパク質のN末端に付加できるかどうか検討した。その結果、前記LFPTを用いることにより、タンパク質のN末端を修飾できることを見出した。
すなわち、本願発明は、LFPT及び修飾フェニルアラニルtRNAPheを用いるタンパク質のN末端の修飾方法に関する。
第1に、本願発明は、N末端にアルギニン又はリジンを有するタンパク質については、当該末端にロイシン又はフェニルアラニンを付加する能力を備えたロイシル/フェニルアラニル-tRNAタンパク質転移酵素(LFPT)を用いて、修飾フェニルアラニルtRNAPheから修飾フェニルアラニンをN末端アルギニン又はリジンに付加させることにより、N末に修飾されたフェニルアラニンを有するタンパク質を調製する方法を包含する。
第2には、本願発明は、任意のタンパク質を分解することにより、N末端にアルギニン又はリジンを有する蛋白質を調製し、前記と同様に、LFPTを用いて、修飾フェニルアラニるtRNAPheから修飾フェニルアラニンをN末端アルギニン又はリジンに付加させることにより、N末に修飾されたフェニルアラニンを有するタンパク質を調製する方法を包含する。
第3には、本願発明は、任意の蛋白質のN末側にアルギニン又はリジンを付加したタンパク質を調製し、前記と同様に、LFPTを用いて、修飾フェニルアラニルtRNAPheから修飾フェニルアラニンをN末端アルギニン又はリジンに付加させることにより、N末に修飾されたフェニルアラニンを有するタンパク質を調製する方法を包含する。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005-337537号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、PCR後のLFPT遺伝子増幅の確認:1%アガロースゲル電気泳動後、ゲルをエチジウムブロミドにより染色した。Mはマーカーを示し、レーン1はPCR産物を流した結果である。レーン1の矢印の付近(約700bp)に増幅したバンドがみられることから、目的とするLFPT遺伝子(705bp)の増幅が確認できた。
なお、マーカーは上から10,8,6,5,4,3.5,3,2.5,2,1.5,1,0.5kbpである。
図2は、mini-prep後、LFPT遺伝子確認のための制限酵素処理:回収したプラスミドを導入に利用した制限酵素により切断した。1%アガロースゲル電気泳動後、ゲルをエチジウムブロミドにより染色した。Mはマーカーを示し、レーン1~4が回収したプラスミドの制限酵素処理反応液を流した。矢印の付近(約700bp)に目的とするLFPT遺伝子に由来するバンドが確認できたので、目的遺伝子の導入が確認できた。
なお、マーカーは上から10,8,6,5,4,3.5,3,2.5,2,1.5,1,0.5kbpである。
3番のプラスミド溶液がもっともバンドがはっきり確認できたので、これを形質転換に用いた。
図3は、ER2566株でのLFPT発現と精製:ER2566株を形質転換し、発現を行った。破砕の後、Ni-NTA agaroseにより精製を行った。精製時の各サンプルを15%SDS PAGEにより分析した。Mはタンパク質マーカーを示し上から97.4,66.2,42.4,30,20kDaを示す。レーン1は不溶性画分、レーン2はS30画分、レーン3はNi-NTA agarose樹脂に結合しなかった画分、レーン4は樹脂の洗浄画分そしてレーン5は要出画分である。レーン1にLFPT(約27kDa)と思われるバンドが確認できることから、多くは不溶性画分にあるものと思われる。しかしレーン5でもLFPT(約27kDa)と思われるバンドが確認でき、発現したLFPTの一部は可溶性画分に存在し、且つヒスチジンタグを有しているものと考えられる。
なお、マーカーは上から97.4,66.2,42.4,30.0,20.0kDaである。
図4は、RIを用いたLFPTのアミノ酸転移反応の確認:LFPTの活性を確認する為に、放射性アミノ酸[14C]フェニルアラニンを利用し、アミノアシルtRNAを同一反応系にて調製しながら、アクセプタータンパク質への転移を測定した。反応後15%SDS PAGEにより分離し、イメージングプレートを用いて可視化した。Mはタンパク質分子量マーカーを示す。Cはアクセプタータンパク質にαカゼインを用いた場合、2はアクセプタータンパク質にジアミノペプチターゼであるTAGZymeによる処理を施しN末端にアルギニンを露出させたEGFPを用いた結果である。Cおよび2のどちらのレーンにおいても、[14C]フェニルアラニンに由来するバンドが確認できることから、アミノアシルtRNAを同一反応系にて調製しながら、LFPTの転移活性を確認することができた。
なお、マーカーは上から170,130,100,72,55,40,33kDaである。
図5は、様々なタンパク質へのLFPTによるアミノ酸転移の割合:LFPT活性の経時変化を確認する為に、放射性アミノ酸[14C]フェニルアラニンを利用し、アミノアシルtRNAを同一反応系にて調製しながら、アクセプタータンパク質への転移量を測定した。0、10、20および30分にサンプリングし、アクセプタータンパク質に転移した[14C]フェニルアラニンの量を測定した。ドナーであるフェニルアラニルtRNAの調製に大腸菌由来tRNAPheおよび大腸菌由来PheRSを用い、アクセプターとしてαカゼインを利用した場合にはLFPTによるアミノ酸転移が確認できた。また、ドナーであるフェニルアラニルtRNAの調製に酵母由来tRNAPheおよび酵母由来PheRSを用いた場合でも同様にLFPTによるアミノ酸転移が確認できた。アクセプタータンパク質としてN末端にアルギニン又はリジンを持たないスレオニルtRNA合成酵素(ThrRS)およびEGFPを用いた場合は転移が確認できないのに対し、TAGZymeによりN末端側処理をしたEGFPではLFPTによるアミノ酸転移が確認できた。
図6は、pTAGのクローニング:pET21a(+)と共発現可能なベクター(pTAG)の作製を示す。p15A由来の複製起点を持つpPROLarA122を母体とし、pET21a(+)由来のマルチクローニングサイト(MCS)を導入した。
図7は、pTAGFRSAとpETFRSBの構成:酵母由来PheRS αサブユニットはpTAGにNde IおよびNot Iにて導入し、酵母由来PheRS βサブユニットはpET21a(+)にNde IおよびNot Iにて導入した。これらベクターは異なった複製起点を持ち、また薬剤耐性遺伝子も異なる為、同一ホストに2つのプラスミドを保持することが可能である。
図8は、酵母PheRSの発現と精製:ER2566株を利用し、酵母由来PheRSの発現を行った。その後、Ni-NTA agaroseおよびPhenylsepharose HPカラムにて精製を行い、それぞれの画分をSDSPAGEにて分析を行った。Mはタンパク質マーカーを示し、上から97.4,66.2,42.4,30kDaを示す。レーン1は大腸菌由来PheRS、レーン3は細胞破砕後のS30画分、レーン4はNi-NTA agaroseによる精製後の画分、レーン5はPhenylsepharose HPカラム精製後のサンプルである。レーン3~5いずれのレーンにおいても、目的とする酵母由来PheRSの両サブユニットに相当するバンドが確認でき発現、および精製できていることが確認できた。
図9は、酵母PheRSのアミノアシル化活性測定:酵母由来PheRSの酵素活性の経時変化を確認する為に、放射性アミノ酸[14C]フェニルアラニンを利用し、アミノアシル化反応を測定した。0、5、10、15および20分にサンプリングした。酵素を入れなければアミノアシル化反応は起こらないが、酵素を加えることでアミノアシル化が見られ、回収した酵素はPheRS酵素機能を有していることが確認できた。
図10は、変異型PheRS(T415GとT415A)の発現と精製:ER2566株を利用し、酵母由来PheRSの発現を行った。その後、Ni-NTA agaroseにて精製を行い、それぞれの画分をSDSPAGEにて分析を行った。レーン1はT415Aの変異型PheRS発現菌体の破砕後のS30画分、レーン2はそのNi-NTA agaroseによる精製後の画分、レーン3はタンパク質マーカーを示し、上から97.4,66.2,42.4,30kDaを示す。レーン4はT415Gの変異型PheRS発現菌体の破砕後のS30画分、レーン5はそのNi-NTA agaroseによる精製後の画分。レーン2および5いずれのレーンにおいても、目的とする酵母由来PheRSの両サブユニットに相当するバンドが確認でき各変異型PheRSの発現、および精製が確認できた。
図11は、変異型PheRS(T415GとT415A)のアミノアシル化活性測定:変異型PheRSの酵素活性の経時変化を確認する為に、放射性アミノ酸[14C]フェニルアラニンを利用し、アミノアシル化反応を測定した。変異型PheRSのいずれも野生型と比較すれば弱いが、本来の基質であるフェニルアラニンを認識していることが確認できた。
図12は、パラ位に置換基をもつフェニルアラニンアナログを基質としたPheRSの非天然アミノ酸認識能の検索:三者複合体形成をゲル電気泳動により確認した結果を示す。
図13は、図12のつづき
図14は、図13のつづき
図15は、pET29aのcloning/expression regionの一部:ジアミノペプチターゼで消化した場合矢印のところで切断が起きる。切断中にアルギニンが出てきた場合、この部位で切断反応が終結するため、タンパク質N末端にアルギニンを提示した状態のタンパク質を調製することができる。
なお、矢印が切断部位、アンダーラインの部分が切断されるジペプチドを示す。
図16は、EGFPのTAGZyme消化:pET29にクローンされているEGFPのTAGZymeによる処理産物を15%SDS PAGEにより分析した結果を示す。Mはタンパク質分子量マーカーを示し、上から170、130,100、72、55、40、33kDaである。Cはアクセプタータンパク質としてαカゼインを用いた場合、レーン2はTAGZymeにより処理したEGFP,レーン3は処理しなかったEGFPである。レーン2と3を比較すると、TAGZyme処理により、分子量に違いが見られることから、EGFPはTAGZymeの基質となり、切断反応が起きていることが確認できた。また更なる分解物は見られないことから、N末端にアルギニンを提示した状態で切断反応が止まっていることが示唆される。
なお、マーカーは上から170,130,100,72,55,40,33kDaである。
図17は、TAGZyme消化EGFPへアミノ酸転移と蛍光化:フェニルアラニンアナログとしてアジドフェニルアラニンを選択し、変異型PheRSを利用し、ドナーであるアミノアシルtRNAを同一反応系にて調製しながら、アクセプタータンパク質への転移を測定した。反応後アジド基選択的蛍光修飾試薬により修飾反応を行い、その後12.5%SDS PAGEにより分離し、蛍光イメージャーにより可視化した。Cはアクセプタータンパク質にαカゼインを用いた場合、1はアクセプタータンパク質にジアミノペプチターゼであるTAGZymeによる処理を施しN末端にアルギニンを露出させたEGFPを用いた結果である。Cおよび1のどちらのレーンにおいても、アジド基選択的蛍光修飾試薬に由来する蛍光のバンドが確認できることから、アジドフェニルアラニルtRNAを同一反応系にて調製しながら、LFPTによりアジドフェニルアラニンを転移できることが確認できた。
図18は、pET-EGFPのN末端側の改変。:ジアミノペプチターゼによるN末端処理にかわり、Entrokinaseによるアルギニン又はリジンのN末端提示法を検討する為にpET-EGFPの改変を行った。上は改変前の開始コドンからの配列の一部を示し、下は改変後の開始コドンからの配列の一部を示してある。か異変後は開始コドンの下流にStrepTag配列を組み込み、且つさらに下流にEntrokinase切断サイト(EK site)を導入した。これによりEntrokinase処理によりアルギニンが露出する。
なお、上が改変前、下が改変後を表す。
図19は、EGFP改1がEntrokinaseにより切断されていることを10%SDS PAGEにより確認した。:EGFP改1のEntrokinaseの処理の有無による電気泳動の移動度の違いを確認した。Entrokinaseの処理により約2.2kDa変化する。Mはタンパク質分子量マーカーを示し、上から97、66、42および30kDaを示す。レーン1はEGFP改1をEntrokinaseにより処理したサンプル、Cは未処理のEGFP改1である。移動度に差が見られることから、Entrokinaseにより末端処理が施されていることが確認できた。なお、CBB染色した。
図20は、テトラメチルローダミン(TMR)蛍光化したEntrokinase消化EGFP改1の蛍光検出:アジドフェニルアラニンと変異型PheRSを利用し、ドナーであるアミノアシルtRNAを同一反応系にて調製しながら、アクセプタータンパク質への転移を測定した。反応後アジド基選択的蛍光修飾試薬により修飾反応を行い、その後SDS PAGEにより分離し、蛍光イメージャー(LAS3000)により可視化した。Cはアクセプタータンパク質にαカゼインを用いた場合、レーン1はアクセプタータンパク質にEntrokinaseによる処理を施しN末端にアルギニンを露出させたEGFP改1を用いた結果、レーン2は未処理のEGFP改1を用いた結果、レーン3はアクセプタータンパク質を反応に加えない場合を示す。レーン1において、アジド基選択的蛍光修飾試薬に由来するテトラメチルローダミンの蛍光のバンドが確認できることから、Entrokinaseによる処理を施しN末端にアルギニンを露出させたタンパク質はアクセプタータンパク質として利用できることがわかった。
図21は、Entrokinase消化EGFP改1のPEG修飾のPAGEによる確認。:アジドフェニルアラニンの導入後、PEGを有するアジド基修飾試薬をおこない、その産物を電気泳動した。アクセプタータンパク質として用いたEGFP由来の蛍光シグナルを蛍光イメージャー(LAS3000)により検出した。各レーンを比較するとPEGを有するアジド基修飾試薬を加えることにより、EGFPに由来するバンドが上にシフトしていること、また、修飾に用いたPEGの平均分子量の違いも移動度に反映されていることから、Entrokinaseにより処理したEGFP改1にLFPTによりアジドフェニルアラニンが転移し、その後アジド基選択的修飾試薬によりPEG修飾が導入できたと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
1.LFPTを用いる修飾フェニルアラニンをN末に有する修飾タンパク質の製造方法
1-1.LFPTの調製
LFPTは、ロイシル-tRNALeuもしくはフェニルアラニル-tRNAPheをドナーとし、tRNAに結合しているアミノ酸(ロイシンもしくはフェニルアラニン)を、アクセプターとするタンパク質へ転移させる酵素である。アクセプタータンパク質としてはN末端がアルギニン又はリジンである必要が有る。本酵素はタンパク質の管理に関係があると考えられている。
本願発明で用いるLFPTとしては、LFPT活性(ロイシル/フェニルアラニルーtRNAタンパク質転移酵素(Leucyl/Phenylalanyl-tRNA-Protein transferase活性)を有している限り、いかなる起源のLFPTであっても使用することができる。更に、天然型のLFPTを変異させた変異型LFPTであっても、前記LFPT活性を有する限り使用することができる。
具体的には、LFPTとしては、大腸菌由来のものを用いることができる。更にこれらのLFPTのアミノ酸配列(配列番号1)に対して、1~50個のアミノ酸、好適には、1~20個のアミノ酸、更に好適には1~10個のアミノ酸を、欠失、置換、又は付加から選ばれる1以上の変異を与えたアミノ酸配列を有し、且つ前記LFPT活性を有するアミノ酸配列で表される変異型LFPTが包含される。更に具体的には、大腸菌由来の配列番号1のアミノ酸配列で示されるLFPT及び該配列番号1で表されるアミノ酸配列に対して、1~50個のアミノ酸、好適には、1~20個のアミノ酸、更に好適には1~10個のアミノ酸を、欠失、置換、又は付加から選ばれる1以上の変異を与えたアミノ酸配列を有し、且つ前記LFPT活性を有するアミノ酸配列で表される変異型LFPTを挙げることができる。
1-2.修飾アミノ酸がtRNAに結合した修飾アミノ酸tRNA
本願発明で使用できる修飾アミノ酸が結合したtRNAとしては、修飾ロイシルtRNALeu、及び修飾フェニルアラニルtRNAPheを用いることができる。
また、本願発明では、修飾フェニルアラニンとしては、下記式(1)で表される化合物が含まれる。
【化1】
JP0005061351B2_000002t.gif
JP0005061351B2_000003t.gif 上記式1中、Rは、水素、水酸基又はメトキシ若しくはアセチル、Rは水素又は水酸基、そして、Rは、水素、ハロゲン、アジド基、ニトロ基、メトキシ若しくはアセチル又は水酸基である。
なお、好適には、上記式1中のRはOCH又はOH、RはOH、RはH、F、Cl、Br、I、N、NO、OCH又はOHである。
なお、修飾フェニルアラニンをフェニルアラニンアナログと、修飾ロイシンをロイシンアナログと呼ぶこともある。
1-2-1.修飾アミノ酸tRNAの調製
修飾ロイシルtRNALeu、及び修飾フェニルアラニルtRNAPheは、有機合成法などの従来から周知の方法で製造できるが、例えば、修飾ロイシン、又は修飾フェニルアラニンを、それぞれを基質とする変異型のアミノアシルtRNA合成酵素、具体的には、変異型LeuRS(Leu-tRNA Synthase;ロイシルtRNA合成酵素)又は変異型のPheRS(Phe-tRNA Synthase;フェニルアラニルtRNA合成酵素)を用いて、それぞれtRNALeu又はtRNAPheに結合させることにより調製することができる。
1-2-2.アミノアシルtRNA合成酵素
アミノアシルtRNA合成酵素は、すべての生物に存在する酵素で、タンパク質合成において、ATPの加水分解エネルギーを利用し、アミノ酸を活性化しトランスファーRNA(tRNA)に結合させる酵素である。原核生物では、20種類の天然アミノ酸に対応し、20種類のアミノアシルtRNA合成酵素が存在し、真核生物では、細胞質に存在するアミノアシルtRNA合成酵素20種類と、ミトコンドリアに存在するアミノアシルtRNA合成酵素20種がある。これらのアミノアシルtRNA合成酵素は、大きくは、クラス1とクラス2に分類され、クラス1は、アミノ酸配列中にHXGHというシグニチャー配列及びKMSKSのヌクレオチド結合領域(ロスマンフォールド)を有している。クラスIは、アルギニン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンに対するアミノアシルtRNA合成酵素が含まれる。
クラスIIは、これら特徴的配列を含んでおらず、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、リジン、フェニルアラニン、プロリン、及びセリンのそれぞれに対するアミノアシルtRNA合成酵素が含まれる。
それぞれのアミノ酸に対するアミノアシルtRNA合成酵素は、アミノ酸をtRNAに結合させる工程を触媒し、フェニルアラニルtRNA合成酵素(PheRS)を例に取れば、フェニルアラニン(Phe)+ATP+tRNAPhe+PheRS-> AMP+フェニルアラニルtRNAPhe(Phe-tRNAPhe)+PheRSと反応する。
これまでに、種々の生物種から、それぞれのアミノ酸についての、アミノアシルRNA合成酵素が採取され、報告されている。
本発明では、LFPTの基質は、ロイシルtRNALeu又はフェニルアラニルtRNAPheであることから、ロイシルtRNA合成酵素(LRS又はLeuRSと略すことがある)又はフェニルアラニルtRNA合成酵素(FRS又はPheRSと略すことがある)を利用する。
1-2-3.変異型アミノアシルtRNA合成酵素
修飾アミノ酸でtRNAをアミノアシル化できるように、アミノアシルtRNA合成酵素に変異を導入することができる。
本発明では、ロイシルtRNA合成酵素(LRS又はLeuRSと略すことがある)又はフェニルアラニルtRNA合成酵素(FRS又はPheRSと略すことがある)に、変異を導入して、修飾アミノ酸をtRNAに結合することができる変異型LeuRS又は変異型PheRSを利用することができる。
変異型PheRSとしては、酵母由来のPheRSの変異体を挙げることができる。酵母由来のPheRSは、2つのαサブユニット及び2つのβサブユニットからなっている。
変異型PheRSとしては、αサブユニットは、例えば、配列番号3であらわされるPheRSαサブユニットのTyr414、及び/又はThr415に変異を導入した変異型PheRS、好適には、415位のトレオニンをアラニン又はグリシンに変異させたPheRSを用いることができる。なお、PheRSのβサブユニットとしては、配列番号2で表される配列を用いることができる。
また、PheRSβサブユニットとしては、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が、置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表される変異型のPheRSβサブユニットを用い、PheRSαサブユニットとしては、(2)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が、置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表される変異型のPheRSαサブユニットを用いる、変異型PheRSであって、少なくとも、Tyr414、及び/又はThr415に変異が導入され、tRNAPheをフェニルアラニンアナログ化できる変異型PheRSを用いることもできる。
1-3.被修飾タンパク質(アクセプタータンパク質とも呼ぶ)の調製
(1)修飾フェニルアラニンまたは修飾ロイシンでN末を修飾しようとする対象タンパク質がN末にアルギニン又はリジンを有する場合は、そのタンパク質をLFPTの基質としてそのまま使用できる。
(2)修飾フェニルアラニンまたは修飾ロイシンでN末を修飾しようとする対象タンパク質のN末がアルギニン又はリジン以外の場合は、ペプチダーゼを作用させて、アルギニン又はリジンがN末となるようにして、対象タンパク質から被修飾タンパク質(アクセプタータンパク質)を調製することができる。ペプチダーゼとしては、例えば、エンドペプチダーゼ又はエキソペプチダーゼを用いることができる。エンドペプチダーゼとしては、エンテロキナーゼ(DDDDKXをDDDDKとXの間で切断する)、FactorXa(IE/DGRの後で切断する。なおアミノ酸配列中で/で表される部分は、/の前のアミノ酸又は/の後のアミノ酸いずれでも良いことを示す。以下同様。)、GeneaseI(PGAAHYの後で切断する)、SUMOプロテアーゼ(SUMOタンパク質を認識して切断する)などを用いることができる。またN末側からエキソペプチダーゼを作用させてアクセプタータンパク質を調製することも可能である。その場合は、アミノペプチダーゼ、ジアミノペプチダーゼなどを用いることができ、ジアミノペプチダーゼとしては、好適にはアルギニン又はリジンで消化反応が終結する酵素が望ましく、例えば、タグザイム(TAGzyme)を用いることができる。
(3)対象タンパク質のN末にアルギニン又はリジン以外の場合であって、対象タンパク質の全長を損なうことなく修飾フェニルアラニンまたは修飾ロイシンでN末を修飾しようとする場合は、対象タンパク質のN末上流側にアミノ酸配列を付加するように調製する。
例えば、対象タンパク質をコードする塩基配列の上流にMet-Xaa-Arg/Lysというアミノ酸をコードする塩基配列を付加させた、付加配列つきの対象蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子組み換え法により発現させて得た、Met-Xaa-Arg/Lys-対象タンパク質を、上記(2)の方法により、ジアミノペプチダーゼ、例えば、TAGZymeで処理することにより、対象タンパク質のN末にアルギニン又はリジンが付加された被修飾タンパク質(アクセプタータンパク質)を調製することもできる。あるいは、シグナルペプチドのシグナル切断位置の下流にアルギニン又はリジンを有するように遺伝子を設計し、発現後シグナルペプチドの切断に伴い成熟型タンパク質のN末としてアルギニン又はリジンを有するものを得ることができる。
2.LFPTを用いる修飾フェニルアラニン又は修飾ロイシンをN末に有する修飾タンパク質の製造法
上記1で調製されたLFPT、修飾フェニルアラニルtRNAPhe又は修飾ロイシル-tRNALeuの共存下で、N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質(アクセプタータンパク質)を処理することにより、アクセプタータンパク質のN末を前記修飾フェニルアラニン又は修飾ロイシンで修飾することができる。
更に、修飾フェニルアラニルtRNAPhe又は修飾ロイシルtRNAは、修飾フェニルアラニン又は修飾ロイシンをそれぞれ、tRNAPhe又はtRNALeuに変異型FRS又は変異型LRSでの存在下で結合させて調製でき、修飾フェニルアラニルtRNAPhe又は修飾ロイシルtRNALeuの調製とLFPTによる修飾フェニルアラニン又は修飾ロイシンの転移反応を同一工程(同一反応液)で行なうこともできる。これにより、修飾フェニルアラニルtRNAPheから修飾フェニルアラニンをタンパク質のN末に転移させることにより再生したtRNAPheを、再度修飾フェニルアラニン及び変異型FRSを用いて修飾フェニルアラニルtRNAPheに調製できるのでより効率的である。
例えば、(1)LFPT,tRNAPhe、変異型FRSの存在下で、N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質を処理することにより、N末を前記修飾フェニルアラニンで修飾することができ、(2)LFPT,tRNALeu及び変異型LRSでの存在下、N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質を処理することにより、N末を前記修飾ロイシンで修飾できる。
具体的には、例えば、修飾フェニルアラニンとしてpara-azido-phenylalanineを用いて、N末にアルギニン又はリジンを有するタンパク質(アクセプタータンパク質)のN末にpara-azido-phenylalanineを導入することができる。導入されたpara-azido-phenylalanineは、例えば、クロスリンカーとして利用できるほか、アジド基修飾試薬を利用し、ポリエチレングリコールを付加すること、更に、蛍光分子やビオチンなど標識分子を付加することなどが可能である。
[参考例1]
1.Leucyl/phenylalanyl-tRNA-protein transferaseの調製と活性確認
1-1.LFPT遺伝子の増幅
大腸菌ゲノムDNAよりLFPT遺伝子をPCR法(Polymerase Chain Reaction)により増幅させた。PCRに用いたプライマーは次のような配列である。プライマー1:GGGGCCATGGCCCGCCTGGTTCAGGCT、プライマー2:GGGGCTCGAGTTCTTGTGGTGAAAACAを用いた。PCR反応時の組成と反応条件を以下に示す。PCR反応液は、10×pyrobest buffer(キット添付)5μL、dNTP mix(キット添付)4μL、プライマー1(100pmol/μL)1μL、プライマー2(100pmol/μL)1μL、大腸菌ゲノムDNA 1μL、及びpyrobest DNA polymerase(5U/μL)0.5μLを、dHOで50μLとして調製した。PCR反応は、予備変性を98℃で4分、変性を98℃で10秒、アニーリングを55℃で30秒、及び伸長を72℃で1分間のサイクルを30サイクル行った。
PCR産物は5M NaCl水溶液を溶液の1/20量加え、エタノール沈殿を行った。沈殿を減圧乾燥し、DNA断片を回収した。
回収したDNA断片を、1%アガロースゲル電気泳動を行い、LFPT遺伝子の増幅を確認した。その結果を図1に示す。なお、図1中でMは:マーカー(上から10、8、6、5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1.2、1.03、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1kbp)を示す。
1はPCR反応後のサンプルを表し、矢印は増幅したLFPT遺伝子を示している。
図1より、LFPT遺伝子の予想される鎖長とほぼ同じところにバンドが検出されたのでLFPT遺伝子の増幅が確認できた。
1-2.pET22bへのクローニング
エタノール沈殿を行った残りのPCR産物をdHO 15μLに溶かし6×loading dyeを2μL加え、1%アガロースゲルで30分間電気泳動を行った。これを0.5μg/mLのエチジウムブロミドの溶液に10分間浸し、366nmの波長のUVで目的バンドを確認し、かみそりで切り出した。ゲル片からのDNA抽出にはEASYTRAPTMを用い、プロトコルに従い次の操作を行った。切り出したゲルの3倍量のNaI溶液を加え、55℃で数分間保温し、ゲルを溶解し10μLのガラスパウダーを加えてよく混合し室温に5分間放置してDNAを吸着させた後10,000rpmで10秒間遠心した。上清を除き、500μLの洗浄用緩衝液を加えてよく懸濁した後10,000rpmで10秒間遠心した(この操作は2回繰り返した)。上清をできるだけ取り除き、HO 20μLを加え、55度で5分間保温してDNAを抽出した後、10,000rpmで2分間遠心した。上清を回収した後もう一度抽出操作を繰り返し、回収した40μLのDNA溶液を55℃で5分間保温した後10,000rpmで2分間遠心し、上清を別のチューブに移した。
回収したDNA断片をpET22bベクターに組み込むために、Nco IとXho Iで消化した。反応液の組成は以下の通りで、37℃で一晩行った。消化反応液組成は、10×R buffer(制限酵素添付)3μL、回収したDNA断片19μL、Nco I(10U/μL)2μL、及びXho I(10U/μL)2μLをdHOで30μLにして調製した。pET22bも同様にしてNco IとXho Iで消化した。
各消化物を混合し、キャリアーとして酵母tRNA mixtureを0.1 A260unit加え、エタノール沈殿を行った。沈殿は減圧乾燥し、以下のように反応液を調製し、ライゲーション反応を行った。反応はニッポンジーンのLigation Packを使用し、16℃で2~3時間行った。なお、Ligation反応溶液は、10×Ligation buffer 2μL、DNA混合物として前記沈殿、BSA(kitに添付)2.5μL、T4 DNA Ligase 0.5μLをdHOで20μLとした。
ライゲーション反応後の溶液をJM109株コンピテントセル100μLに加え、氷上で5分間放置し、LB-amp培地のプレートに溶液を塗り広げ、37℃で一晩放置した。生えてきたコロニーをMini-prep.法を行って、プラスミドDNAを回収した。このプラスミドDNAをpET-LFPTと名付けた。
Mini-prep.法(アルカリ法)は以下の手順で行った。プラスミドDNAの調製はアルカリ法により以下の操作手順で行った。プレートに生えてきたコロニーを爪楊枝でつつき、アルミキャップ付き試験管の2mLのLB-amp(50μg/mLのampicillin)培地に植菌し、37℃で一晩振とう培養した。エッペンドルフチューブに菌体培養液を1.5mL分注し、10,000rpmで2分間遠心分離を行い、集菌した。培地をできるだけ取り除き、菌体を100μLのSolution Iに懸濁し、200μLのSolutionIIを加え、チューブを上下して穏やかに撹拌した。つぎに150μLのSolutionIIIを加え、さらに撹拌した後、150μLのフェノール:クロロホルム(1:1)溶液を加え、十分に懸濁し、12,000rpm×10分間遠心した。上層を回収し、エタノール沈殿した。遠心分離して得られた沈殿は30μLのTE Bufferに溶解させた。なお、Solution I(TE-Glucose Buffer)は、Tris-HCl(pH7.6)25mM、EDTA-Na(pH7.0)10mM、Glucose 50mMを含有する。
また、SolutionIIは、NaOH 0.2M、SDS1%であり、SolutionIII(100mL)は、5M酢酸カリウム60mL、氷酢酸11.5mL、dHO 28.5mLからなる。TE bufferは、Tris-HCl(pH8.0)10mM、及びEDTA(pH8.0)1mM、を含有する。
(結果)
pET22bとのライゲーション後、LFPT遺伝子が組み込まれたかを確認した。
結果を図2に示す。pET-LFPTをNco IとXho Iで消化した。これを1%アガロースゲル電気泳動した。
Mは、マーカー(上から10、8、6、5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1.2、1.03、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1kbp)を示す。
1~4は、pET-LFPTの消化反応後のサンプルを示す。バンドが予測と一致しているのでpET-LFPTプラスミドが構築できたことが確認できた。
1-3.発現
大腸菌ER2566株のコンピテントセルに調製したプラスミドDNAが1ng程度になるように加え、LB-ampプレートを用いて形質転換を行った。生えてきたコロニーを白金耳で突いて100mLのLB-amp培地に植菌し、37度で培養した。濁度(A600)が0.7になったら0.5MのIsopropyl-β-D-thiogalactopyranoside(IPTG)を培地の1/1000量加え(終濃度0.5mM)さらに室温で一晩振とうした。その後、培養液を50mLチューブと1.5mLチューブに移し、それぞれ4℃、6,000rpmで10分間遠心した。上清を取り除いた後、残りの培養液を同じ50mLチューブに加えさらに、4℃、6,000rpmで10分間遠心して上清を取り除き、菌体を-80℃で冷凍保存した。
1-4.Ni-NTA AgaroseカラムによるLFPTの精製
50mLのファルコンチューブに回収した菌体を15mLの上記Sonication Buffer(20mM Tris-HCl(pH7.6)、1mM MgCl、0.2M NaCl、6mM β-Mercaptoethanol、5%グリセリン)で懸濁し15分間超音波処理によって菌体を破砕した後、30,000xgで30分間遠心し(4℃)、この上清をS30とした。
Poly-Prep Chomatography Colum(BIO-RAD社製)にNi-NTA Agaroseを1mL充填し、Sonication Buffer 10mLで平衡化した後S30をロードした。その後Wash Buffer(20mM Tris-HCl(pH7.6)、1mM MgCl、0.2M NACl、6mM β-Mercaptoethanol、5%グリセリン、及び10mMイミダゾール)10mLで洗浄し、Elution Buffer(20mM Tris-HCl(pH7.6)、1mM MgCl、0.2M NaCl、6mM β-Mercaptoethanol、5%グリセリン、及び10mMイミダゾール)8mLで溶出した。それを15%SDS PAGEし、LFPTのバンドが確認できたので(図3)、溶出液をAmicon Ultraを用いて約400μLまで濃縮したものをLFPTとした。また精製したLFPTは-80℃に保存した。
1-5.RI標識を用いたLFPTの活性の測定
酵素の活性を測定するために以下の反応液を調製し37℃、30分間反応させた。反応液組成は、5×AAM(Tris-HCl(pH7.6)500mM、MgCl 50mM、KCl 200mM、及びATP 20mM)4μL、LFPT 2μL、tRNAPhe0.1 A260unit、14Cフェニルアラニン(394mCi/mmol)1μL、PheRS(0.1mg/mL)1μL、アクセプタータンパク質(α-カゼイン又はTAGZyme処理済EGFP)50pmolをdHOで20μLにして調製した。
反応液を15%SDS PAGEし、ゲルをバイオイメージングアナライザー BAS-2500を用いて画像分析した(図4)。
また、反応液を濾紙にスポットし、それを98℃の5%TCAで20分間洗った後4℃の5%TCAで5分間振とうした。これを3回繰り返した。エタノールで濾紙の水分を除き、充分に乾かした後液体シンチレーションカウンターにより濾紙に残る放射能を測定することにより[14C]Pheのα-カゼインへの取り込みを評価した(図5)。
[参考例2]
フェニルアラニルtRNA合成酵素の調製と活性確認
1-1.共発現用ベクターの作成
pETベクターとの共発現用ベクターの作製を行った。手順概略は図6に示す。
ベクターpET21-a(+)とpPROLar.A122の配列を基に、プライマー1(pET21-a(+)のT7 promoterに対応):5’-GGG GTA CCT AAT ACG ACT CAC TAT-3’、プライマー2(pET21-a(+)のT7 terminatorに対応):5’-GGG GTA CCC AAA AAA CCC CTC AAG-3’、プライマー3(pPROLar.A122MCSの上流に対応):5’-GGG GTA CCT CGA CAG TTC ATA GGT-3’、プライマー4(pPROLar.A122MCSの下流に対応):5’-GGG GTA CCG GAT ATA TTC CGC TTC-3’を設計した。なお、各プライマーは、KpnIの制限酵素認識部位を有している。
まずプライマー1および2を用いて以下の反応組成によりPCR反応(1)を行った。PCR反応液は、10×pyrobest buffer(キット添付)5μL、dNTP mix(キット添付)4μL、プライマー1(100pmol/μL)0.5μL、プライマー2(100pmol/μL)0.5μL、pET21-a(+)0.05μg、及びpyrobest DNA polymerase(5U/μL)0.5μLを、dHOで50μLにして調製した。PCR反応は、予備変性を95℃で2分、変性を95℃で10秒、アニーリングを55℃で30秒、及び伸長を72℃で1分間のサイクルを30サイクル行った。このPCR産物をPCR産物(1)とする。
同様にプライマー3および4を用いて以下の反応組成によりPCR反応(2)を行った。PCR反応液は、10×pyrobest buffer(キット添付)5μL、dNTP mix(キット添付)4μL、プライマー3(100pmol/μL)0.5μL、プライマー4(100pmol/μL)0.5μL、pPROLarA.122 0.05μg、及びpyrobest DNA polymerase(5U/μL)0.5μLを、dHOで50μLにして調製した。PCR反応は、予備変性を95℃で2分、変性を95℃で30秒、アニーリングを55℃で30秒、及び伸長を72℃で2分間のサイクルを30サイクル行った。このPCR産物をPCR産物(2)とする。
反応後、1%アガロースゲルで30分間電気泳動を行った。これを0.5μg/mLのエチジウムブロミドの溶液に10分間浸し、366nmの波長のUVで目的バンドを確認し、かみそりで切り出した。ゲル片からのDNA抽出にはEASYTRAPTMを用い、プロトコルに従い次の操作を行った。切り出したゲルの3倍量のNaI溶液を加え、55℃で数分間保温し、ゲルを溶解し10μLのガラスパウダーを加えてよく混合し室温に5分間放置してDNAを吸着させた後10000rpm×10sec遠心した。上清を除き、500μLの洗浄用緩衝液を加えてよく懸濁した後10000rpm×10sec遠心した(2回繰り返した)。上清をできるだけ取り除き、HO 20μlを加え、55℃で5分間保温してDNAを抽出した後、10000rpm×2分間遠心した。上清を回収した後もう一度抽出操作を繰り返し、回収した40μLのDNA溶液を55℃で5分間保温した後10000rpm×2分間遠心し、上清を別のチューブに移した。
EASYTRAPTMによる精製後のPCR産物(1)溶液の5分の1量と、PCR産物(2)溶液の全量を混ぜ合わせ、さらにキャリアーとして酵母tRNA mix 0.1 A260unitを加え、これをエタノール沈澱した。
回収した沈殿を、KpnIで消化した。反応液の組成は以下の通りで、37℃で一晩行った。消化反応液組成は、10×Kpn I buffer(制限酵素添付)2μL、回収したDNA断片、およびKpn I(10U/μL)3μLをdHOで20μLにして調製した。
消化反応後はエタノール沈殿を行った。沈殿は減圧乾燥し、以下のように反応液を調製し、ライゲーション反応を行った。反応はニッポンジーンのLigation Packを使用し、16℃で3hr行った。なお、Ligation反応溶液は、10×Ligation buffer 2μL、DNA混合物として前記沈殿、BSA(kitに添付)2.5μL、及びT4 DNA Ligase 0.5μLをdHOで20μLにして調製した。
ライゲーション反応後の溶液をXL-1 Blueコンピテントセル100μLに加え、氷上で5分間放置し、LB-amp培地のプレートに溶液を塗り広げ、37℃で一晩放置した。生えてきたコロニーをMini-prep.法を行って、プラスミドDNAを回収した。このプラスミドDNAをpTAGと名付けた。目的の配列を有するかは日立DNAシーケンサーSQ5500Eを用いて確認を行った。
1-2.pTAGFRSA及びpETFRSBの調製
酵母PheRS遺伝子をpTAGとpET21-a(+)にクローニングするために、酵母Saccharomyces cerevisiaeゲノムの全配列の中から、PheRSのαサブユニットとβサブユニットをコードする遺伝子配列を基に、プライマー5(α遺伝子-5’末端に対応。PstI及びNdeIの制限酵素部位を含む):5’-GGG GCT GCA GCA TAT GTC TGA CTT CCA ATT AGA-3’、プライマー6(α遺伝子-3’末端に対応。Pst I及びNot Iの制限酵素部位を含む。):5’-GGG GCT GCA GGC GGC CGC TTA TTC GTA CAA GTC TTC GT-3’、プライマー7(β遺伝子-5’末端に対応。Pst I及びNdeIの制限酵素部位を含む。):5’-GGG GCT GCA GCA TAT GCC TAC CGT CTC CGT GAA CAA-3’、プライマー8(β遺伝子-3’末端に対応、PstI及びNotIの制限酵素部位を含む。):5’-GGG GCT GCA GGC GGC CGC TAG GAA GAC TTC GGC CAT-3’を用い、PCR法によってDNA断片を増幅させた。
まずプライマー5および6を用いて以下の反応組成によりPCRを行いPheRSのαサブユニット遺伝子を増幅した。PCR反応液は、10×pyrobest buffer(キット添付)5μL、dNTP mix(キット添付)4μL、プライマー5(100pmol/μL)1μL、プライマー6(100pmol/μL)1μL、酵母ゲノムDNA 1μL、及びpyrobest DNA polymerase(5U/μL)0.5μLを、dHOで50μLにして調製した。PCR反応は、予備変性を95℃で2分、変性を95℃で10秒、アニーリングを55℃で30秒、及び伸長を72℃で1分間のサイクルを30サイクル行った。
またプライマー7および8を用いて上記と同様の反応組成およびプログラムにてPCRを行い、βサブユニット遺伝子の増幅を行った。
反応後、1%アガロースゲルで30分間電気泳動を行った。これを0.5μg/mlのエチジウムブロミドの溶液に10分間浸し、366nmの波長のUVで目的バンドを確認し、かみそりで切り出した。ゲル片からのDNA抽出にはEASYTRAPTMを用い、プロトコルに従い次の操作を行った。
回収したPheRSのαサブユニット遺伝子およびβサブユニット遺伝子を各ベクターに組み込むために、それぞれNdeIとNotIで消化した。反応液の組成は以下の通りで、37℃で一晩行った。消化反応液組成は、10×R buffer(制限酵素添付)2μL、回収したDNA断片沈殿、NdeI(10U/μL)1μL、及びNotI(10U/μL)1μLをdHOで20μLにして調製した。pET21-a(+)およびpTAGも同様にしてNdeIとNotIで消化した。
PheRSのαサブユニット遺伝子消化物はpTAG消化物と混合しエタノール沈殿処理をし、PheRSのβサブユニット遺伝子消化物はpET21-a(+)消化物と混合しエタノール沈殿処理を行った。沈殿は減圧乾燥し、以下のように反応液を調製し、それぞれライゲーション反応を行った。反応はニッポンジーンのLigation Packを使用し、16℃で2、3hr行った。なお、Ligation反応溶液は、10×Ligation buffer 2μL、DNA混合物として前記沈殿、BSA(kitに添付)2.5μL、T4 DNA Ligase 0.5μLをdHOで20μLとした。
ライゲーション反応後の溶液をXL-1 Blueコンピテントセル100μLに加え、氷上で5分間放置し、LB-amp培地のプレートに溶液を塗り広げ、37℃で一晩放置した。生えてきたコロニーをMini-prep.法を行って、プラスミドDNAを回収した。このプラスミドDNAをpTAGFRSAおよびpETFRSBと名付けた。目的の配列を有するかは日立DNAシーケンサーSQ5500Eを用いて確認を行った。それぞれのベクターの構成を図7に示す。
1-3.PheRSの発現
酵母PheRSを発現させるために、pETFRSBを大腸菌ER2566コンピテントセルに加え、形質転換を行った後、それをLB-ampプレート培地にコンラージ棒で塗り広げ、37℃で一晩放置した。プレート培地に生じたコロニーの1つを爪楊枝でつつき、LB-amp培地で37℃で培養しながら、600nmで培養液の濁度(OD600)を測定し、OD600が0.3~0.4になったら培養液を氷上で15分間冷やし集菌した。上清の培養液を取り除き、菌体に1×TSS(10g/L Bacto-tryptone、5g/L Bacto-yeast extract、10g/L NaCl、10% PEG 6000(w/v)、50mM MgCl、及び5%ジメチルスルホキシド)を加え、液体窒素で凍結させ-80℃で保存した。
pETFRSBをもつER2566コンピテントセルにプラスミドpTAGFRSAを加え上記と同様の方法で形質転換を行い、LB-50μg/mLampicillin・25μg/mL kanamycin(LB-ampkan)プレート培地にコンラージ棒で塗り広げ、37℃で一晩培養した。プレート培地に生じたコロニーを爪楊枝でつつきLB-ampkan培地に植菌し、37℃で培養しながらOD600が0.7~0.9になったところで培養液にIsopropyl-β-D(-)-thiogalactopyranoside(IPTG)を終濃度500μMになるように加え、さらに37℃で4hr培養し、発現させた。
1-4.酵母PheRSの精製
発現させた酵母PheRSを精製するために、得られた培養液の菌体をSonication Buffer(20mM Hepes-KOH(pH7.0)、1mM MgCl、0.2M NaCl、6mM β-Mercaptoethanol、及び5% グリセリン)で懸濁した後、Bioruptorで菌体を超音波破砕し遠心することでS30画分を得た。あらかじめ平衡化したNi-NTA agaroseカラムクロマトグラフィーに前記S30画分サンプルをロードし、前記Sonication BufferとWash Buffer(10mMイミダゾール含有Sonication Buffer溶液)を用いてUVモニターによりA280を観察しながらピークがなくなるまでカラムを洗い、Elution Buffer(250mM含有イミダゾールSonication Buffer溶液)でサンプルを溶出し、UVモニターでA280を観察しながらピークが現れた部分を回収した。得られたサンプルに等量のHG 3 Buffer(40mM HEPES-KOH(pH7.0)、2mM MgCl、3M(NHSO、10%Glycerol、12mM β-Mercaptoethanol、及び100μM pABSF)を加えて混ぜ合わせ、あらかじめHG 1.5 Buffer(20mM HEPES-KOH(pH7.0)、1mM MgCl、1.5M(NHSO、5%Glycerol、6mM β-Mercaptoethanol、及び50μM pABSF)で平衡化したPhenyl Sepharose H.P.カラム(樹脂量8ml)にロードし、UVモニターでのA280が0.03以下になるまでHG 1.5 Bufferを流速2mL/minで流した。次にHG 1.5 BufferとHG 0 Buffer(20mM HEPES-KOH(pH7.0)、1mM MgCl、5% Glycerol、6mM β-Mercaptoethanol、及び50μM pABSF)を用いて、流速2mL/minで150分間かけて1.5Mから0Mまでの硫酸アンモニウム直線濃度勾配をかけ、サンプルを溶出した。これらを10%SDS-ポリアクリルミドゲル電気泳動(PAGE)を行い、CBB染色液により目的のタンパク質を検出、検討した(図8)。図8レーン4および5より、推定分子量の位置にバンドが確認できたことから、酵母由来PheRSの発現、精製が確認できた。
1-5.酵母PheRSの活性測定
酵素の活性を測定するために14Cフェニルアラニンを使ってアミノアシル化反応を行った。下記の反応組成で酵素を除いた状態で反応液を30℃で5分程度保温した後、酵素を加え30℃でインキュベートし、0、5、10、15、20分の各時間で5%TCAを湿らせておいた濾紙にスポットし、5%TCAに浸した。各時間の反応液をスポットし終わったら、5%TCAをいったん捨て、新たな5%TCAをビーカーに加え10分間振とうした。これを2回繰り返したらエタノールを加えて軽く振とうし、電熱灯下で乾燥させた。その後、シンチレーターに浸し、液体シンチレーションカウンターでカウントを測定した。
アミノアシル化反応液組成は、5×AAM(Amino Acylation Mixture)10μL、酵母tRNAPhe0.05 A260unit、酵母PheRS 0.126μg、及び14Cフェニルアラニン1μLをdHOで50μLにして調製した。
5×AAM(Amino Acylation Mixture)は、Tris-HCl(pH7.6)500mM、MgCl 50mM、KCl 200mM、及びATP 20mMを含有した。
シンチレーターは、Dotite DPO 4g、Dotite POPOP 0.1gをトルエンで1Lに調製した。
結果を図9に示す。酵素が欠けた場合では受容が見られず、酵素を反応に加えた場合に受容が見られたことにより、発現したものはPheRSだと確定できた。
【実施例1】
【0006】
変異型フェニルアラニルtRNA合成酵素の調製と活性確認
1.変異型フェニルアラニルtRNA合成酵素(変異型PheRS)の調製
酵母変異型PheRSを調製するために、種々のPheRSのアミノ酸配列を比較し、フェニルアラニン結合部位を推測した。その中でα遺伝子の415位のトレオニンをアラニンまたはグリシンに変異させるため、pTAGFRSAの配列を基にプライマー9:5’-CTA CAA TCC TTA CGC TGA GCC ATC AAT G-3’およびプライマー10:5’-CAT TGA TGG CTC ACC GTA AGG ATT GTA G-3’で示される配列のDNAを設計した。
上記の2つのプライマーを用いてPCR法によりα遺伝子発現用プラスミドpTAGFRSAを改変した。反応液は、10×pyrobest buffer(酵素添付)5μL、dNTP mix(酵素添付)4μL、プライマー9(100pmol/μL)1μL、プライマー10(100pmol/μL)1μL、pTAGFRSA0.05μg、及びpyrobest DNA polymerase(5U/μL)0.5μLをdHOで50μLにして調製した。PCRプログラムは、予備変性を95℃で2分間、変性を95℃で30秒、アニーリングを50℃で1分間、及び伸長を72℃で10分間を行なうサイクルを16サイクルとした。
反応後、反応液にDpn I(10U/μL)を0.5μL加えて37℃で1時間保温し、テンプレートであるpTAGFRSAを切断した。DpnI処理後の反応液20μLをXL-1 blueコンピテントセルに加え、形質転換を行い、mini-prepによって目的のプラスミドを回収した。配列を確認することによって、pTAGFRSAのPheRSα遺伝子のThr415がAlaまたはGlyに変異したプラスミド(pTAGFRSAt415a、pTAGFRSAt415g)が調製できたことを確認した。
発現・精製は[参考例2]野生型酵母PheRSと同様の方法で行なった。
さらに、活性は[参考例2]の1-5と同様の方法で測定した。
結果をそれぞれ、図10及び図11に示す。
図10レーン2および5において、推定分子量の位置にバンドが確認できたことから、2種類の酵母由来変異型PheRSのどちらも発現、精製が確認できた。
また、図11より酵素が欠けた場合では受容が見られず、酵素を反応に加えた場合に弱いながらも受容が見られたことにより、各変異型PheRSはフェニルアラニンを基質として認識できる能力を持つことがわかった。
【実施例2】
【0007】
野生型PheRSと変異型PheRSが認識しうる非天然アミノ酸の検索
EF-TuとEF-Tsは複合体を形成し、(EF-Tu・EF-Ts)2のcomplexを形成し、このcomplexにGTPが接触すると、EF-Tsは解離し、アミノアシルtRNAが存在するとアミノアシルtRNA・EF-Tu・GTPの複合体を形成する。EF-TuはアミノアシルtRNAと結合し複合体形成をする能力を有するが、tRNAとは結合しない。アミノアシルtRNAと結合した複合体、未反応EF-Tu、未反応tRNA(アミノアシル化されなかったtRNA)をゲル電気泳動により分離し、その移動度の違いを利用しどれくらいのアミノアシルtRNAと結合した複合体が確認できるかでアミノアシル化を判定することができる。ゲル電気泳動で、早く流れるのが未反応tRNAで一番上に見えるのがEF-Tu等で、その間(ゲル結果では中間くらい)が複合体である。
具体的には、野生型PheRS(wtPheRS)と変異型PheRS(T415G及びT415A)が認識しうる非天然アミノ酸を三者複合体のゲル電気泳動による移動度の違いを利用して検索した。三者複合体の形成を調べるために、wtPheRSとT415A、T415Gを用いて反応液を調製し、37℃で20分間反応させた。反応液は5×Tu Buffer (Tris-HCl(pH7.6)250mM、MgCl 25mM、KCl 250mM、NHCl 250mM、及びβ-Mercaptoethanol 25mM)2μL、5mM GTP 2μL、10mM ATP 2μL、T.th.EF-Tu 100pmol、T.th.EF-Ts 10pmol、酵母tRNAPhe 0.036A260unit、wtPheRS(もしくは変異型PheRS(T415A、T415G))0.04μgおよびフェニルアラニンアナログ 1nmolを含みdHOで全量を10μLにした。
反応後、6×LS(BPB 0.25%、キシレンシアノール0.25%およびグリセリン30%)を2μL加え、1xTAM 6%PAGEを行った。泳動後、CBB染色液で染色し、十分脱色した後、0.3%メチレンブルー/1 M AcOH Buffer(pH4.7)で染色しバンドを検出した。
なお、1xTAMはTris塩基25mM、酢酸25mMおよび酢酸マグネシウム5mMを含む溶液である。
結果を図12から図14及び表1に示す。
【表1】
JP0005061351B2_000004t.gif
JP0005061351B2_000005t.gif
【実施例3】
【0008】
TAGZymeを用いたアクセプタータンパク質の調製、及びアクセプタータンパク質のN末の修飾
(1)TAGZymeを用いたN末端アルギニンEGFPの調製
TAGZymeとはQIAGEN社により製品化されているN末端特異的ジペプチド切断酵素(DAPaseと略すことがある)である。TAGZymeはN末端のジペプチド切断を行うが、stop pointと呼ばれる、リジン、アルギニン、プロリン、又はグルタミンがN末端に現れるとジペプチド切断が終了する(表2)。
【表2】
JP0005061351B2_000006t.gif
今回利用したEGFPはpET29にクローニングされているため、TAGZymeによるN末端特異的ジペプチド切断を行うとN末端にアルギニンがあらわれると考えられる(図15)。このTAGZyme消化EGFPを基質として用いることでアミノ酸転移反応が起こると考え、EGFPのTAGZymeによるN末端特異的ジペプチド切断を行なった。
反応液はDAPase(10U/ml)2.5μL、システアミン-HCl(20mM)5μL、1×TAGZyme Buffer(リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)20mMおよびNaCl 150mM)67.5μLを混合し室温で5分間放置した。そこにEGFP(約0.35μmol/μL)を5μL加え、37℃で1晩反応させ、SDS PAGEにて分析(図16)したところEGFPのバンドのシフトが起こり、バンドが2つに分かれたため、EGFPのジペプチド切断が確認できた。
(2)TAGZyme消化EGFPへのアミノ酸転移の確認
TAGZyme消化EGFPを基質として[参考例]1-5の操作手順で反応液を37℃で30分間反応させた後、15%SDS PAGEし、ゲルを、バイオイメージングアナライザーBAS-2500を用いて画像分析した(図4レーン2)。また、[参考例]1-5の操作手順でアミノ酸転移活性を測定した。液体シンチレーションカウンターによる放射能を測定結果からTAGZyme消化EGFPはα-カゼインと同程度アミノ酸転移が認められる(図5)。
(3)TAGZyme消化EGFPのテトラメチルローダミン(TMR)蛍光化
5×AAM 8μL、Leucyl/phenylalanyl-tRNA protein transferase 4μL、0.5mMアジドフェニルアラニン0.8μL、100A/ml tRNAPhe 1μL、0.1mg/mL変異型フェニルアラニル-tRNA合成酵素1μL、TAGzyme消化EGFP 50pmolを混合し、dHOで全量を40μLとした。37℃で30分間反応させ、その後上記の溶液19μLに、蛍光試薬(5mM TMR付きトリアリールホスフィン誘導体)1μLを加え37℃で1hr反応した。反応後12.5%SDS PAGEを行い、富士フィルム社製LAS3000でタンパク質の蛍光化を確認した(図17)。レーン1において蛍光によるバンドが確認できることから、TAGZymeにより処理したEGFPにLFPTによりアジドフェニルアラニンが転移し、その後アジド基選択的修飾試薬により蛍光修飾が導入できたと考えられる。
【実施例4】
【0009】
Entrokinaseを用いたアクセプタータンパク質の調製、及びアクセプタータンパク質のN末の修飾
(1)pET-EGFP(pET29にEGFP geneを組み込んだプラスミド)のQuik Change pET-EGFPのN末端側を図18のようになるように改変を行った。
Quik Change後このプラスミドでXL1-BLUEを形質転換し、キュアリングの後LB-Kanプレートに植菌、翌日プレートに生えたコロニーを小試(LB-Kan培地)で一晩培養、その後Mini-Prepを行い、プラスミドを回収した。このプラスミドのシーケンスを行ったところ図18の改変後のように改変されたことが確認できた。このプラスミドをpET-EGFP改1とする。
ER2566をpET-EGFP改1で形質転換し、LB-Kanプレートに植菌、翌日プレートに生えたコロニーを100mLのLB-Kan培地で培養、ODが0.6になったらIPTGを週濃度0.5mMとなるように加え、37℃で4時間振とう後回収した。この菌体を超音波破砕後、Ni-NTA Agaroseを用いて精製を行った。この精製されたタンパク質をEGFP改1とした。
(2)Entrokinaseを用いたN末端アルギニンEGFP改1の調製
EntrokinaseとはAsp Asp Asp Asp LysのLysの後ろを切断する特異的な酵素である。今回利用したEGFP改1はEntrokinaseによる切断を行うとN末端にアルギニンがあらわれると考えられる(図18)。そこでEGFP改1のEntrokinaseによる切断をEntrokinase Buffer(Tris-HCl(pH8.0)20mM、NaCl 50mMおよびCaCl 2mM)を用いて行なった。
まずStrep-Tactin Superflow樹脂50μLを2,000rpmで2分間遠心し、上清を取り除き、Entrokinase Buffer 1mLで樹脂の平衡化を行った後2,000rpmで2分間遠心し、上清を取り除いた。次に樹脂を50μLのEntrokinase Bufferで懸濁し、そこに約60μgのEGFP改1を良く混ぜた後、Ultrafree-MCに全量入れ。また樹脂をEntrokinase Buffer 300μLでWashし、2,000rpmで2分間遠心して樹脂から溶液を取り除いた。Washは三回行った。この樹脂をEntrokinase Buffer 300μLで懸濁、1.5mLチューブに移し、そこにEntrokinase(2mg/mL)を5μL加え、室温で1時間放置した。その後、Ultrafree-MCに全量戻し2,000rpmで2分間遠心し、溶液を回収した。溶液は遠心エバポレーターまたはVIVASPIN500-MAXIMUM SPIN SPEEDにより濃縮した。最後に、EGFP改1がEntrokinaseにより切断されていることを10%SDS PAGEにより確認した(図19)。レーンCとレーン1を比較するとEntrokinaseにより処理したEGFP改1(レーン1)の分子量が短くなっていると考えられ、Entrokinaseによる切断が確認できた。なお、Entrokinase消化EGFP改1は-80℃に保存した。
(3)Entrokinase消化EGFP改1のテトラメチルローダミン(TMR)蛍光化
5×AAM 4μL、Leucyl/phenylalanyl-tRNA protein transferase 2μL、0.5mMアジドフェニルアラニン0.4μL、100A/mL tRNAPhe0.5μL、0.1mg/mL変異型フェニルアラニル-tRNA合成酵素0.5μL、及びEntrokinase消化EGFP改1 約2μgを混合し、dHOで全量を20μLとした。
37℃で30分間反応させ、その後上記の溶液19μLに、蛍光試薬(5mM TMR付きトリアリールホスフィン誘導体)1μLを加え37℃で1時間反応した。反応後15%SDS PAGEを行い、富士フィルム社製LAS3000でタンパク質の蛍光化を確認した(図20)。レーン1と2を比較するとEntrokinaseにより処理したEGFP改1(レーン1)においてのみ蛍光分子によるバンドが確認でき、Entrokinaseにより処理したEGFP改1にLFPTによりアジドフェニルアラニンが転移し、その後アジド基選択的修飾試薬により蛍光修飾が導入できたと考えられる。
(4)Entrokinase消化EGFP改1のPEG修飾
上記(2)と同じ方法でアジドフェニルアラニン転移反応を行い、その後、溶液19μLに、5mMポリエチレングリコール(PEG)付きトリアリールホスフィン誘導体(GIF-0548またはGIF-0602)1μLを加え37℃で1時間反応した。反応後10%Native PAGEを行い、富士フィルム社製LAS3000でEntrokinase消化EGFP改1の蛍光を検出したところバンドのシフトが確認できた(図21)。
レーンを比較するとPEGを有するアジド基修飾試薬を加えることにより、EGFPに由来するバンドが上にシフトしていること、また、修飾に用いたPEGの平均分子量の違いも移動度に反映されていることから、Entrokinaseにより処理したEGFP改1にLFPTによりアジドフェニルアラニンが転移し、その後アジド基選択的修飾試薬によりPEG修飾が導入できたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本願発明の方法により、N末に修飾されたアミノ酸を有するタンパク質を大量に調製することができるようになった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
JP0005061351B2_000007t.gifJP0005061351B2_000008t.gifJP0005061351B2_000009t.gifJP0005061351B2_000010t.gifJP0005061351B2_000011t.gifJP0005061351B2_000012t.gifJP0005061351B2_000013t.gifJP0005061351B2_000014t.gifJP0005061351B2_000015t.gifJP0005061351B2_000016t.gifJP0005061351B2_000017t.gifJP0005061351B2_000018t.gifJP0005061351B2_000019t.gifJP0005061351B2_000020t.gif
図面
【図5】
0
【図6】
1
【図7】
2
【図9】
3
【図11】
4
【図15】
5
【図18】
6
【図1】
7
【図2】
8
【図3】
9
【図4】
10
【図8】
11
【図10】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図16】
16
【図17】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20