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明細書 :insituhybridization法及び自動insituhybridization装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4538627号 (P4538627)
公開番号 特開2005-261235 (P2005-261235A)
登録日 平成22年7月2日(2010.7.2)
発行日 平成22年9月8日(2010.9.8)
公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
発明の名称または考案の名称 insituhybridization法及び自動insituhybridization装置
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2004-075416 (P2004-075416)
出願日 平成16年3月16日(2004.3.16)
審査請求日 平成19年1月12日(2007.1.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】山田 健人
【氏名】高松 めぐみ
【氏名】藤本 純一郎
【氏名】安江 博
【氏名】近藤 裕道
個別代理人の代理人 【識別番号】110000176、【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 野地澄晴編、「別冊実験医学 ザ・プロトコール シリーズ ポストゲノム研究時代の免疫染色・in situハイブリダイゼーション」,株式会社羊土社, (2002), p.128-151
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、
前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーター配列及び前記mRNAと相補的な配列を有するプライマー並びに逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、前記mRNAに対するcDNAを得る工程と、
前記試料中で、前記逆転写反応によって得られたcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、前記cDNAに対するcRNAプローブを得る工程と、
前記試料中で、前記cRNAプローブと前記cDNAをハイブリダイズさせる工程と、
ハイブリダイズした前記cRNAプローブを検出する工程と、
を備えることを特徴とするin situ hybridization法。
【請求項2】
試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、
前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、前記mRNAに相補的な配列を有する第1のプライマー及び逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、前記mRNAに対する第1のcDNAを得る工程と、
前記試料中で、前記第1のcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーター配列及び前記第1のcDNAに相補的な配列を有する第2のプライマー並びにDNAポリメラーゼを用いてDNA合成反応を行い、前記第1のcDNAに相補的な配列を有する第2のcDNAを得る工程と、
前記試料中で、前記第2のcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、cRNAプローブを得る工程と、
前記試料中で、前記cRNAプローブと前記mRNAをハイブリダイズさせる工程と、
ハイブリダイズした前記cRNAプローブを検出する工程と、
を備えることを特徴とするin situ hybridization法。
【請求項3】
試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、
前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、前記mRNAと相補的な配列を有する第1のプライマー及び逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、前記mRNAに対するcDNAを得る工程と、
前記試料中で、前記cDNAに相補的な配列を有する第2のプライマー、及びRNAポリメラーゼのプロモーター配列と前記cDNAの一部の配列とを有する第3のプライマーを用いて、遺伝子増幅反応により前記cDNAを増幅させる工程と、
前記試料中で、前記遺伝子増幅反応によって得られた前記cDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、前記cDNAに対するcRNAプローブを得る工程と、
前記試料中で、前記cRNAプローブと前記cDNAをハイブリダイズさせる工程と、
ハイブリダイズした前記cRNAプローブを検出する工程と、
を備えることを特徴とするin situ hybridization法。
【請求項4】
試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、
前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、前記mRNAに相補的な配列を有する第1のプライマー及び逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、前記mRNAに対する第1のcDNAを得る工程と、
前記試料中で、RNAポリメラーゼのプロモーター配列と前記第1のcDNAに相補的な配列とを有する第2のプライマー、及び前記mRNAに相補的な配列を有する第3のプライマーを用いて、遺伝子増幅反応により前記第1のcDNAに相補的な配列を有する第2のcDNAを増幅させる工程と、
前記試料中で、前記遺伝子増幅反応によって得られた前記第2のcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、前記第2のcDNAに対するcRNAプローブを得る工程と、
前記試料中で、前記cRNAプローブと前記mRNAをハイブリダイズさせる工程と、
ハイブリダイズしたcRNAプローブを検出する工程と、
を備えることを特徴とするin situ hybridization法。
【請求項5】
前記cDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させるとき、ジゴキシゲニンと結合したヌクレオチド3リン酸を用いることにより、前記cRNAプローブをジゴキシゲニンでラベルし、
ジゴキシゲニンを標識として、前記ハイブリダイズしたcRNAプローブを検出することを特徴とする請求項1または3に記載のin situ hybridization法。
【請求項6】
前記第2のcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させるとき、ジゴキシゲニンと結合したヌクレオチド3リン酸(dig-NTP)を用いることにより、前記cRNAプローブをジゴキシゲニンでラベルし、
ジゴキシゲニンを標識として、前記ハイブリダイズしたcRNAプローブを検出することを特徴とする請求項2または4に記載のin situ hybridization法。
【請求項7】
前記RNAポリメラーゼのプロモーターが、SP6,T3,T7,及びN4からなる群より選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のin situ hybridization法。
【請求項8】
前記cRNAプローブを検出する工程の前に、
1本鎖特異的RNA分解酵素で処理する工程を行うことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のin situ hybridization法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の発現を解析するためのin situ hybridization法及びそれを自動で行う自動in situ hybridization装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の発現を検出するための方法として、in situ hybridizationがよく用いられる。In situ hybridizationは、標識を用いてラベルした核酸プローブを、解析目的の遺伝子から転写されたmRNAにハイブリダイズさせることにより、対象となるmRNAを検出するために行われる。
【0003】
検出のための核酸プローブは、通常in vitroで合成される(例えば、非特許文献1参照)。例えば、標識RNAプローブを合成する場合、RNAポリメラーゼのプロモーターを有する適当なベクターを用いて、目的の配列を有するDNAを、そのプロモーターの下流に挿入し、ジゴキシゲニン標識ヌクレオチド3リン酸(dig-NTP)を用いたin vitroの転写系で標識プローブを合成する。また、PCRで標識プローブを合成する場合、増幅させる配列をベクターに組み込み、その挿入配列の両側のプライマーを合成し、ジゴキシゲニン標識デオキシヌクレオチド3リン酸(dig-dNTP)を用いてPCRを行うことにより標識プローブを作製することができる。

【非特許文献1】メソッズ(Methods)2001年23巻4号303—312頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記標識プローブを作製するには、クローニングやプラスミド増幅などの組換えDNA操作が必要であり、時間・費用・労力などのコストがかかる。その上、実際にin situ hybridizationを行ってみると、プローブとして選んだ配列がうまく機能しないこともあり、その場合、再びプローブ作製をやり直す必要性が生じる。
【0005】
一方、最近in situ hybridization に対し、発現検出に組換えDNA操作を必要としないin situ RT-PCRという方法が開発された。これによって、プライマーとしてオリゴヌクレオチドを用いて、試料上で対象mRNAを逆転写し、PCRで増幅させることで、遺伝子発現を検出することができるようになった。しかし、この方法は、遺伝子発現は検出できるものの、発現検出の定量性に乏しい。
【0006】
そこで、本発明は、組換えDNA操作を必要とせず、定量性良く発現検出が可能なin situ hybridization法及びそれを自動で行う自動in situ hybridization装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のin situ hybridization法は、試料上でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、前記試料中で、ハイブリダイゼーション用のプローブを合成することを特徴とする。
【0008】
本発明のin situ hybridization法の一実施形態は、試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーター配列及び前記mRNAと相補的な配列を有するプライマー並びに逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、前記mRNAに対するcDNAを得る工程と、前記試料中で、前記逆転写反応によって得られたcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、前記cDNAに対するcRNAプローブを得る工程と、前記試料中で、前記cRNAプローブと前記cDNAをハイブリダイズさせる工程と、ハイブリダイズした前記cRNAプローブを検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のin situ hybridization法の異なる一実施形態は、試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、前記mRNAに相補的な配列を有する第1のプライマー及び逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、前記mRNAに対する第1のcDNAを得る工程と、前記試料中で、前記第1のcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーター配列及び前記第1のcDNAに相補的な配列を有する第2のプライマー並びにDNAポリメラーゼを用いてDNA合成反応を行い、前記第1のcDNAに相補的な配列を有する第2のcDNAを得る工程と、前記試料中で、前記第2のcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、cRNAプローブを得る工程と、前記試料中で、前記cRNAプローブと前記mRNAをハイブリダイズさせる工程と、ハイブリダイズした前記cRNAプローブを検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のin situ hybridization法のさらに異なる一実施形態は、試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、前記mRNAと相補的な配列を有する第1のプライマー及び逆転写酵素を用いて逆転写反応をさせ、前記mRNAに対するcDNAを得る工程と、前記試料中で、前記cDNAに相補的な配列を有する第2のプライマー、及びRNAポリメラーゼのプロモーター配列と前記cDNAの一部の配列とを有する第3のプライマーを用いて、遺伝子増幅反応により前記cDNAを増幅させる工程と、前記試料中で、前記遺伝子増幅反応によって得られた前記cDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、前記cDNAに対するcRNAプローブを得る工程と、前記試料中で、前記cRNAプローブと前記cDNAをハイブリダイズさせる工程と、ハイブリダイズした前記cRNAプローブを検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のin situ hybridization法のさらに異なる一実施形態は、試料中でmRNAを検出するためのin situ hybridization法であって、前記試料中で、前記mRNAを鋳型にして、前記mRNAに相補的な配列を有する第1のプライマー及び逆転写酵素を用いて逆転写反応をさせ、前記mRNAに対する第1のcDNAを得る工程と、前記試料中で、RNAポリメラーゼのプロモーター配列と前記第1のcDNAに相補的な配列とを有する第2のプライマー、及び前記mRNAに相補的な配列を有する第3のプライマーを用いて、遺伝子増幅反応により前記第1のcDNAに相補的な配列を有する第2のcDNAを増幅させる工程と、前記試料中で、前記遺伝子増幅反応によって得られた前記第2のcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、前記第2のcDNAに対するcRNAプローブを得る工程と、前記試料中で、前記cRNAプローブと前記mRNAをハイブリダイズさせる工程と、ハイブリダイズしたcRNAプローブを検出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記いずれかのin situ hybridization法において、前記cDNAまたは前記第2のcDNAを鋳型にして、前記RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させるとき、ジゴキシゲニンと結合したヌクレオチド3リン酸を用いることにより、前記cRNAプローブをジゴキシゲニンでラベルし、ジゴキシゲニンを標識として、前記ハイブリダイズしたcRNAプローブを検出してもよい。
【0013】
また、上記いずれかのin situ hybridization法において、前記RNAポリメラーゼのプロモーターが、SP6,T3,T7,及びN4からなる群より選択されてもよい。
【0014】
また、上記いずれかのin situ hybridization法において、前記cRNAプローブを検出する工程の前に、1本鎖特異的RNA分解酵素で処理する工程を行ってもよい。
【0015】
さらに、本発明の自動in situ hybridization装置は、上記いずれかのin situ hybridization法を自動で行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、組換えDNA操作を必要とせず、定量性良く発現検出が可能なin situ hybridization法及びそれを自動で行う自動in situ hybridization装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook & D.W.Russell (Ed.), Molecular Cloning: a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0018】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0019】
特に、本発明で用いられるin situ hybridization法は、当業者の間では極めて広く用いられている手法であり、特に説明が無い部分であっても、当業者はルーティンに行っている処理を適用することができるのは言うまでもない。また、現在、各研究者の経験などに従って、様々な改良方法が見いだされており、本発明は、そうした全ての方法に適用でき、本発明の特徴部分以外の方法によって本発明が限定されることはない。
【0020】
==試料==
本発明を適用する試料の由来は何でもよく、代表的な生物種として、植物、線虫、ショウジョウバエ、ホヤ、アフリカツメガエル、ニワトリ、ウズラ、マウス、ラット、ブタ、ヒト、等が挙げられるが、これらに限定されない。
試料は、これら生物の一部であってもよく、全部であってもよい。例えば、組織や器官などを取り出して試料にしてもよく、胚をそのまま試料にしてもよい。また、細胞や組織を培養したものでもよい。
また、試料の由来はこれらの生物種の発生段階に関しても特に限定されることはなく、例えば動物の場合、卵割期にある卵(egg)、胚(embryo)、胎仔(fetus)、成体(adult)等のいずれであってもよい。
【0021】
==試料の固定・試料作製==
まず、上記試料を固定する。固定方法は、試料を直接固定液に漬けてもよいし、還流固定してもよい。
固定液は何でもよく、例えば、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液、ホルマリンやそれらの混合液が用いられ、特に4%ホルムアルデヒド水溶液が最もよく用いられる。
試料は、組織の場合、切片でも、ホールマウント(whole-mount)でもよい。切片の場合は、凍結切片、パラフィン切片、レジンなどを包埋剤に用いたプラスティック切片など、いずれでもよい。培養細胞の場合、スライドグラスに細胞を培養し、そのスライドグラスを試料としてもよく、培養皿に培養した細胞をそのまま用いてもよい。
【0022】
==前処理==
まず、前処理として、固定した切片あるいはホールマウントの試料に対し、脱パラフィン処理や再水和処理など適宜処理を行う。その後、プローブがmRNAにアクセスしやすいように、mRNAに結合するタンパク質を分解して、mRNAを露出させるためのタンパク質分解処理が行われる。タンパク質分解処理に用いられるタンパク質分解剤としては特に限定されないが、proteinaseKが好ましく、サーモリジンがもっとも好ましい。タンパク質分解剤の濃度は、proteinase Kは0.5~10μg/ml、サーモリジンは10~5000μg/mlの範囲にあることが好ましいが、これに限定されない。また複数のタンパク質分解剤を混合して用いてもよい。タンパク質分解処理の処理時間は5~30分間、処理温度は37~50℃が好ましいが、これらの数値には限定されず、実際には、予め、タンパク質分解剤の種類と濃度、処理時間、処理温度、を含めたいくつかの条件を試して、最適化するのが好ましい。その後、オプションとして、グリシンを用いたクエンチン化や無水酢酸を用いたアセチル化など、一連の前処理を行ってもよい。
【0023】
==プローブのin situでの合成==
試料の前処理後、プローブをin situで合成する。即ち、以下に述べる反応は全て、試料中で行われる。例えば、試料が切片の場合、各反応はスライドグラスに溶液を滴下し、洗いは染色瓶などで行うことができ、試料がホールマウントの場合は、各反応を微小遠心チューブなどで行うことができる。
【0024】
プローブは、センス鎖であってもアンチセンス鎖であってもよい。プローブをセンス鎖にした場合、mRNAを逆転写して合成したアンチセンスcDNAにプローブをハイブリダイズさせることにより、対象である遺伝子発現を検出する。また、プローブをアンチセンス鎖にした場合は、mRNAにプローブをハイブリダイズさせることにより、遺伝子発現を検出する。プローブcRNAの平均長は、100~300 baseであることが好ましい。
【0025】
以下、具体的なプローブ作製方法を述べる。
まず、検出対象のmRNA(センス鎖)を鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーター配列及びmRNAと相補的な配列を有するプライマー並びに逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、mRNAに対するアンチセンスcDNAを合成する。逆転写反応によって得られたアンチセンスcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、アンチセンスcDNAに対するセンスcRNAプローブを得ることができる。
【0026】
他のプローブ合成法として、遺伝子増幅反応を用いて、cRNAの濃度を高めることが考えられる。まず、検出対象のmRNAを鋳型にして、mRNAと相補的な配列を有するプライマー(第1のプライマー)及び逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、mRNAに対すアンチセンスcDNAを得る。このアンチセンスcDNAに相補的な配列を有するプライマー(第2のプライマー)、及びRNAポリメラーゼのプロモーター配列とmRNAと相補的な配列とを有するプライマー(第3のプライマー)を用いて、遺伝子増幅反応により、センス、アンチセンス両方のcDNAを増幅させる。こうして遺伝子増幅反応によって得られたアンチセンスcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、アンチセンスcDNAに対するセンスcRNAプローブを得ることができる。この場合、第1のプライマーは、非特異的なランダムヘキサマーでもよく、RNAポリメラーゼのプロモーターの付加の無いプライマーでもよい。また、第1のプライマーは、第3のプライマーと同じでも構わない。
【0027】
次にアンチセンスcRNAプローブの作製方法を述べる。まず、検出対象のmRNA(センス鎖)を鋳型にして、mRNAと相補的な配列を有するプライマー(第1のプライマー)並びに逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、mRNAに対するアンチセンスcDNA(第1のcDNA)を合成する。次に、逆転写反応によって得られたアンチセンスcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーター配列とアンチセンスcDNAに相補的な配列を有するプライマー(第2のプライマー)並びにDNAポリメラーゼを用いてDNA合成反応を行い、アンチセンスcDNAに相補的な配列を有するセンスDNAを得ることができる。このセンスcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、センスcDNAに対するアンチセンスcRNAプローブを得ることができる。
【0028】
さらに、ここでも遺伝子増幅反応を用いて、cRNAの濃度を高めることができる。検出対象のmRNA(センス鎖)を鋳型にして、mRNAに相補的な配列を有するプライマー(第1のプライマー)及び逆転写酵素を用いて逆転写反応を行い、mRNAに対するアンチセンスcDNA(第1のcDNA)を合成する。次に、RNAポリメラーゼのプロモーター配列とアンチセンスcDNAに相補的な配列とを有するプライマー(第2のプライマー)、及びmRNAに相補的な配列を有するプライマー(第3のプライマー)を用いて、遺伝子増幅反応によりアンチセンスcDNAに相補的な配列を有するセンスcDNA(第2のcDNA)を増幅させる。この遺伝子増幅反応によって得られたセンスcDNAを鋳型にして、RNAポリメラーゼのプロモーターから転写させ、センスcDNAに対するアンチセンスcRNAプローブを得ることができる。この場合も、第1のプライマーは、非特異的なランダムヘキサマーでもよく、第3のプライマーと同じでも構わない。
【0029】
以上のいずれの場合においても、逆転写酵素、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼは市販のものを用いることができる。cRNAプローブをラベルする標識は、ジゴキシゲニンやビオチンなど、抗体で特異的に認識できるものであっても、放射性同位元素であってもよいが、転写反応に用いられる反応系にdig-NTPを添加することにより、cRNAプローブをジゴキシゲニンで標識するのが好ましい。また、RNAポリメラーゼのプロモーターには、SP6,T3,T7,N4等のプロモーターがあるが、これら以外のものでもよい。
【0030】
後述の実施例において、遺伝子増幅反応は、PCRを用いたが、例えばRNAポリメラーゼを利用した核酸増幅法や、ICAN(TAKARAの登録商標)などの鎖置換増幅法のような核酸増幅法を利用してもよい。
【0031】
==ハイブリダイゼーション==
試料に対し、プレハイブリダイゼーション、及びハイブリダイゼーションを行う。プレハイブリダイゼーションは、例えばSSC、ホルムアミドを含む溶液中で、37℃、30~60分間行われる。各試薬の濃度は0.1~2 x SSC、1~50 % ホルムアミドが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。ハイブリダイゼーションは、例えばSSC、SDS、ホルムアミドを含む溶液中で、37℃、一晩行われる。各試薬の濃度は、0.1~2 x SSC, 0.05~1 % SDS, 1~50 % ホルムアミドが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。
【0032】
==検出反応==
ハイブリダイゼーションの後、試料を洗い、各標識に適した検出反応を行う。例えば、放射線同位元素でラベルされたプローブの場合、エマルジョンを用いて現像する。標識がビオチンやジゴキシゲニンの場合、HRP、アルカリホスファターゼ、β-GALなどの酵素を結合した抗ビオチン抗体や抗ジゴキシゲニン抗体を用い、その酵素に対する基質を用いて発色させることにより検出する。この抗体を用いた検出過程では、一次抗体と二次抗体を用いた間接抗体法やABC法など様々な方法によって、シグナルの増幅をすることができる。
【0033】
==自動in situ hybridization装置==
現在、自動in situ hybridization装置の開発が進んでおり、かなり安定した装置として入手可能である。これらの装置に、本発明のプローブ合成処理を行わせることは、当業者には容易に行える。
【実施例】
【0034】
以下、本発明のin situ hybridization法を用いてin situでmRNAを検出した実施例を詳細に記載する。なお、特に記載のない試薬は、SIGMA-ALDRICH社製である。また、特に記載のない場合は、室温で反応を行った。
【0035】
<実施例1>
本実施例では、成獣ブタ脳に対し、β-チューブリンの発現を本発明のin situ hybridization(ISRH)を用いて検出した。その際、従来のRNAプローブを用いたin situ hybridization(ISH)によって得られた結果と比較した。以下、実験手順を順を追って記載する。なお、従来のRNAプローブとしては、DIG標識センスcRNAプローブを用いた。
【0036】
{実験手順}
1)成獣ブタ脳を灌流固定し、シランコートスライドグラス(MJ Research社)を用いて、パラフィン切片を作製した。
2)パラフィン切片を60℃で30分間加温した。
3)キシレンで10分間、2回、攪拌し、脱パラフィン操作を行った。
4)100 %エタノールで5分間3回、続いて90 %エタノール、80 %エタノール、70 %エタノールおよび50%エタノールで各5分間づつ行い再水和を行った。
5)25 mM MgCl2/TBSで10分間洗浄した。
6)400 μg/ml サーモリジン (protease type X, P-1512, Sigma-Aldrich社)で10分、37℃にてタンパク質分解処理を行った。
7)室温で、25 mM MgCl2/TBSを用いて5分間、3回洗浄した。
8)1 x RT Buffer、0.16 mM dNTP、2.4 μM プライマー(配列番号1:T7-ブタTubulin-antisense)、4 U 逆転写酵素Transcriptor (Roche社, 03531295)、40 U RNasin (Promega社)の組成を有する反応溶液で50℃、60分間、逆転写反応を行った。
プライマー配列:TAATACGACTCACTATAGGGCACATGCGTTTTATTAGGATAGG(配列番号1)
9)25 mM MgCl2/TBSで5分、2回洗浄した。
10)1 x Labeling Buffer、 0.1 mM Digoxigenin-UTP (Roche社 1209256)、0.3 mM UTP、0.4 mM CTP、GTP、ATP (Roche 1277057)、8 U T7 RNA polymerase (Roche社 881775) 、40 U RNasin (Rnase inhibitor, Promega)の組成を有する反応溶液で120分、37℃で反応させた。
11)Hybridization緩衝液(2 x SSC, 1 % SDS, 1 mg/mL salmon sperm DNA, 1 mg/mL tRNA、50 % Formamaide)で、37℃、一晩、ハイブリダイゼーションを行った。
12)NTE緩衝液(0.5 M NaCl, 10 mM Tris-HCl pH 8.0 and 1 mM EDTA)に37℃、5分間浸して洗浄した。
13)10 μg/mL RNaseA溶液中に、37℃、30分間浸して処理した。
14)NTE 緩衝液にて37℃、5分間洗浄した。
15)0.1 x SSCにて、37℃、20分間、2回洗浄を行った。
16)PBSにて洗浄後、5 % Normal Goat Serum (Invitrogen社)にてブロッキングした。
17)アルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(Roche社)を、250倍希釈した混合溶液を標本上に滴下し、60分間、インキュベートした。
18)PBSで5分間、3回洗浄を行った。
19)NTM 緩衝液(100 mM NaCl, 100 mM Tris-HCl pH 9.5, 50 mM MgCl2)に5分間浸した。
20)アルカリホスファターゼの発色基質として450μg/mL NBT(Nitrotetrazolium Blue Choride )および175μg/mL BCIP(5-Bromo-4-Chloro-3-indolyl-phosphate disodium salt)の混合溶液中で発色を行った。
21)顕微鏡下で観察しながら、適当な時点で、PBSで洗浄して発色を停止させた。
22)反応停止後のサンプルスライドは水洗後、水溶性封入剤で封入した。
【0037】
{結果}
結果を図1に示す。
本発明のISRH法を用いても、従来のISH法で得られたシグナルと同じ領域にシグナルが得られた。
【0038】
<実施例2>
本実施例では、プローブ作製過程で、PCRを用いてcDNAを増幅し、センスcDNAに対するアンチセンスcRNAプローブを作製して検出に用いた。
【0039】
{実験手順}
1)成獣ブタ脳を灌流固定し、シランコートスライドグラス(MJ Research社)を用いて、パラフィン切片を作製した。
2)パラフィン切片を60℃で30分間加温した。
3)キシレンで10分間、2回、攪拌し、脱パラフィン操作を行った。
4)100 %エタノールで5分間3回、続いて90%エタノール、80%エタノール、70%エタノールおよび50%エタノールで各5分間づつ行い再水和を行った。
5)25 mM MgCl2/TBSで10分間洗浄した。
6)400 μg/ml サーモリジン (protease type X, P-1512, Sigma-Aldrich社)で10分、37℃にてタンパク質分解処理を行った。
7)室温で、25 mM MgCl2/TBSを用いて5分間、3回洗浄した。
8)1 x RT Buffer、0.16 mM dNTP、2.4 μM プライマー(配列番号2:ブタTubulin-antisense)、4 U 逆転写酵素Transcriptor (Roche社, 03531295)、40 U RNasin (Promega社)の組成を有する反応溶液で50℃、60分間、逆転写反応を行った。
プライマー配列:CACATGCGTTTTATTAGGATAGG(配列番号2)
9)25 mM MgCl2/TBSで5分、2回洗浄した。
10)1 x rTaq Reaction Buffer, 200 μM dNTP, 2.5 mM MgCl2, 0.24μM各プライマー(配列番号2:ブタTubulin-antisense及び配列番号3:T7-ブタTubulin-sense)、3U rTaq DNA polymerase (TOYOBO社)の組成を有する溶液を用い、94 ℃、1分後、94 ℃、45秒、55 ℃、15秒、60 ℃、1分を15 サイクル行い、最後に60 ℃、5分間伸長反応を行った。
プライマー配列:TAATACGACTCACTATAGGGCGTACACGATGGTGCTCAGT(配列番号3)
11)25 mM MgCl2/TBSで5分、2回洗浄した。
12)1 x Labeling Buffer、 0.1 mM Digoxigenin-UTP (Roche社 1209256)、0.3 mM UTP、0.4 mM CTP、GTP、ATP (Roche社 1277057)、8 U T7 RNA polymerase (Roche社 881775) 、40U RNasin (Rnase inhibitor, Promega社)の組成を有する反応溶液で120分、37℃で反応させた。
13)Hybridization緩衝液(2x SSC, 1% SDS, 1 mg/mL salmon sperm DNA, 1 mg/mL tRNA、50% Formamaide)で、37℃、一晩、ハイブリダイゼーションを行った。
14)NTE緩衝液(0.5 M NaCl, 10 mM Tris-HCl pH8.0 and 1mM EDTA)に37℃、5分間浸して洗浄した。
15)10 μg/mL RNaseA溶液中に、37℃、30分間浸して処理した。
16)NTE 緩衝液にて37℃、5分間洗浄した。
17)0.1 x SSCにて、37℃、20分間、2回洗浄を行った。
18)PBSにて洗浄後、5 % Normal Goat Serum (Invitrogen社)にてブロッキングした。
19)アルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(Roche社)を、250倍希釈した混合溶液を標本上に滴下し、60分間、インキュベートした。
20)PBSで5分間、3回洗浄を行った。
21)NTM 緩衝液(100 mM NaCl, 100 mM Tris-HCl pH 9.5, 50 mM MgCl2)に5分間浸した。
22)アルカリホスファターゼの発色基質として450μg/mL NBT(Nitrotetrazolium Blue Choride )および175μg/mL BCIP(5-Bromo-4-Chloro-3-indolyl-phosphate disodium salt)の混合溶液中で発色を行った。
23)顕微鏡下で観察しながら、適当な時点で、PBSで洗浄して発色を停止させた。
22)反応停止後のサンプルスライドは水洗後、水溶性封入剤で封入した。
【0040】
{結果}
結果を図2Cに示す。コントロールとして、逆転写酵素(-)(A、ネガティブコントロール)、PCRを行わない実施例1によるISRH法(B)、ハイブリダイゼーション工程のないIn situ RT-PCR法(D)も行い、結果を比較した。この条件では、Cが最もコントラストの高い結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のin situ hybridization法の一実施例において、成獣ブタ脳細胞でβ-チューブリンの発現を検出したことを示す写真である。
【図2】本発明のin situ hybridization法の別の一実施例において、プローブ作製過程で、PCRを用いてcDNAを増幅し、センスcDNAに対するアンチセンスcRNAプローブを作製して検出に用い、成獣ブタ脳細胞でβ-チューブリンの発現を検出したことを示す写真である
図面
【図1】
0
【図2】
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