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明細書 :遺伝子発現検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4538628号 (P4538628)
公開番号 特開2005-261236 (P2005-261236A)
登録日 平成22年7月2日(2010.7.2)
発行日 平成22年9月8日(2010.9.8)
公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
発明の名称または考案の名称 遺伝子発現検出方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
G01N 33/48 P
G01N 33/53 D
G01N 33/53 M
請求項の数または発明の数 8
全頁数 19
出願番号 特願2004-075417 (P2004-075417)
出願日 平成16年3月16日(2004.3.16)
審査請求日 平成19年1月12日(2007.1.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】山田 健人
【氏名】高松 めぐみ
【氏名】藤本 純一郎
【氏名】安江 博
【氏名】近藤 裕道
個別代理人の代理人 【識別番号】110000176、【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 野地澄晴編、「別冊実験医学 ザ・プロトコール シリーズ ポストゲノム研究時代の免疫染色・in situハイブリダイゼーション」,株式会社羊土社, (2002), p.128-157
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
サーモリジンを含有する、in situ hybridization法で用いるためのタンパク質分解剤。
【請求項2】
タンパク質分解剤としてサーモリジンを用いることを特徴とするin situ hybridization法。
【請求項3】
試料を固定する工程と、
固定した試料に対し、サーモリジンを用いて、タンパク質分解処理を行う工程と、
標識を用いてラベルした核酸プローブを、検出対象のmRNAにハイブリダイズさせる工程と、
前記標識を検出する工程と、
を備えるin situ hybridization法。
【請求項4】
前記試料が組織切片であることを特徴とする請求項3に記載のin situ hybridization法。
【請求項5】
前記試料がホールマウントの個体であることを特徴とする請求項3に記載のin situ hybridization法。
【請求項6】
同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出するための同時検出法であって、
タンパク質分解剤としてサーモリジンを用いることを特徴とする同時検出法。
【請求項7】
同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出するための同時検出法であって、
試料を固定する工程と、
固定した試料に対し、サーモリジンを用いて、タンパク質分解処理を行う工程と、
第1の標識を用いてラベルした核酸プローブを、検出対象のmRNAにハイブリダイズさせる工程と、
前記ハイブリダイズさせた試料に対し、検出対象のタンパク質に、一次抗体を結合させる工程と、
前記一次抗体に、第2の標識を用いてラベルした二次抗体を結合させる工程と、
前記第1および第2の標識を検出する工程と、
を備える同時検出法。
【請求項8】
タンパク質分解剤としてサーモリジンを含有する、in situ hybridization用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の発現を解析するための遺伝子発現検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の発現を検出するための方法として、in situ hybridizationや免疫染色法が知られている。In situ hybridizationは、目的の遺伝子から転写されたmRNAを検出するために、免疫染色法は目的の遺伝子の最終産物であるタンパク質を検出するために行われる。mRNAとタンパク質が同じ遺伝子から由来していても、mRNAの不安定性や、転写後調節などのために、mRNAとタンパク質が異なる分布を示すことも多い。しかし、異なるサンプルを用いて、in situ hybridizationと免疫染色法を独立に行った場合、発現検出領域を細胞レベルで比較することは難しい。そこで、これらの手法を同一のサンプルに対して行えるようにできることが望ましい。
【0003】
in situ hybridizationでは、標識を用いてラベルした核酸プローブを、対象となるmRNAにハイブリダイズさせることにより、免疫染色法では、対象となるタンパク質に対する抗体を、そのタンパク質に結合させることによって、mRNA及びタンパク質をそれぞれ検出する。したがって、これら二つの手法は全く異なるため、これらの手法を同一のサンプルに対して行うには、それぞれの手法に対する一連の処理を同時に行うことは難しく、順次行う必要がある。(例えば、非特許文献1参照)
これらの手法を順次同一のサンプルに対して行う時、in situ hybridizationでは、プローブをジコキシゲニン(digoxygenin、DIGと略される)で、免疫染色法では、抗体をアルカリホスファターゼやHRPなどの酵素でラベルすることが多いが、両方とも最終段階でのシグナルの検出に酵素活性を用いた発色反応を行う。しかし、どちらの発色反応によるものであっても、サンプルを一旦発色させると、プローブや抗体の浸透が阻害されるため、プローブのハイブリダイゼーションや一次抗体の結合の段階で先に行う手法をいったん中止し、それから後に行う手法を行った後で、最終段階で同時に発色を行うのが通常である。

【非特許文献1】カレント・トピックス・マイクロバイオロジカル・イミュノロジー(Curr. Top. Microbiol. Immuno.) 1989年143巻9-20頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発色反応だけでなく、一方の処理が、他方の検出を阻害することも多く、特に、in situ hibrydizationで前処理として行われる蛋白質分解処理によって、目的のタンパク質や一次抗体が分解され、免疫染色法における抗原の検出が難しくなる。
【0005】
そこで、本発明は、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出する同時検出法を行う際に、検出結果を改善するための、各手法における処理方法を提供する。なお、各手法においても、同時検出法においても、本発明の処理方法は独立に用いることができ、また、同時検出法においては、本発明の処理方法の一方だけを用いてもよく、両方を用いてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出する同時検出法に適したプロテアーゼを探索し、40種類以上のプロテアーゼに対し、同時検出法に対する適性を検討した結果、サーモリジン(Thermolysin; EC3.4.24.27)を用いることにより、検出結果が大幅に改善されることを見いだした。また、同時検出法に適した処理工程を探索し、従来生化学の分野で用いられてきた架橋剤を適用することによってもまた、検出結果が大幅に改善されることを見いだした。こうして、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明による、in situ hybridization法で用いるためのタンパク質分解剤はサーモリジンを含有する。
【0008】
本発明のin situ hybridization法は、タンパク質分解剤としてサーモリジンを用いる。
【0009】
本発明のin situ hybridization法は、試料を固定する工程と、固定した試料に対し、サーモリジンを用いて、タンパク質分解処理を行う工程と、標識を用いてラベルした核酸プローブを、検出対象のmRNAにハイブリダイズさせる工程と、前記標識を検出する工程と、を備えてもよい。このin situ hybridization法において、前記試料が組織切片であってもホールマウントの個体であってもよい。
【0010】
本発明による、免疫染色法で用いるための架橋剤は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸、4-サクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-α-[2-ピチジルジチオ]トルエン、ビス-マレイミドヘキサン 、 p-アジドベンゾイル ヒドラジド、 N-スクシンイミジル [4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート、N-[g-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミド エステル、スルホ- N-[g-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミド エステル、ジメチルスベルイミデート・2塩酸、ビス(スルホスクシンイミジルスベレート)、スルホ-N-ヒドロキシスルホスクシンイミド、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド、及び4-[p-アジドサリシルアミド]ブチルアミンからなる群より選択される。
【0011】
本発明の免疫染色法は、架橋剤を用いた架橋反応を行う。この免疫染色法において、前記架橋反応を、一次抗体投与と二次抗体投与の間に行ってもよい。
【0012】
本発明の免疫染色法は、試料を固定する工程と、前記固定した試料に対し、検出対象のタンパク質に、一次抗体を結合させる工程と、前記一次抗体を結合させた試料に対し、架橋剤を用いた架橋反応を行う工程と、前記架橋反応を行った試料に対し、前記一次抗体に、標識を用いてラベルした二次抗体を結合させる工程と、前記標識を検出する工程と、を備えてもよい。この免疫染色法において、前記試料が組織切片であってもホールマウントの個体であってもよい。
【0013】
また、上記いずれかの免疫染色法において、上記架橋剤を用いた架橋反応を行ってもよい。
【0014】
本発明の同時検出法は、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出するための同時検出法であって、タンパク質分解剤としてサーモリジンを用いることを特徴とする。
【0015】
本発明の同時検出法は、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出するための同時検出法であって、試料を固定する工程と、固定した試料に対し、サーモリジンを用いて、タンパク質分解処理を行う工程と、第1の標識を用いてラベルした核酸プローブを、検出対象のmRNAにハイブリダイズさせる工程と、前記ハイブリダイズさせた試料に対し、検出対象のタンパク質に、一次抗体を結合させる工程と、前記一次抗体に、第2の標識を用いてラベルした二次抗体を結合させる工程と、前記第1および第2の標識を検出する工程と、を備えてもよい。
【0016】
また、本発明の同時検出法は、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出するための同時検出法であって、架橋剤を用いた架橋反応を行うことを特徴としてよい。
【0017】
本発明の同時検出法は、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出するための同時検出法であって、試料を固定する工程と、前記固定した試料に対し、検出対象のタンパク質に、一次抗体を結合させる工程と、前記一次抗体を結合させた試料に対し、架橋剤を用いた架橋反応を行う工程と、前記架橋した試料に対し、タンパク質分解処理を行う工程と、前記タンパク質分解処理を行った試料に対し、第1の標識を用いてラベルした核酸プローブを、検出対象のmRNAにハイブリダイズさせる工程と、前記タンパク質分解処理を行った試料に対し、前記一次抗体に、第2の標識を用いてラベルした二次抗体を結合させる工程と、前記第1および第2の標識を検出する工程と、を備えてもよい。
【0018】
上記同時検出法において、サーモリジンを用いてタンパク質分解処理を行ってもよい。また、上記架橋剤を用いた架橋反応を行ってもよい。
【0019】
本発明の自動in situ hybridization装置及び自動免疫染色装置は、上記いずれかのin situ hybridization法及び上記いずれかの免疫染色法を自動で行う。また、本発明の自動同時検出装置は、上記いずれかに記載の同時検出法を自動で行う。
【0020】
本発明のin situ hybridization用キットは、タンパク質分解剤としてサーモリジンを含有する。本発明の免疫染色用キットは、架橋剤を含有する。また、本架橋剤が上記架橋剤のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の処理方法によると、in situ hybridization法または免疫染色法における検出結果が改善される。特に、同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出する同時検出法を行う際にも、検出結果を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook & D.W.Russell (Ed.), Molecular Cloning: a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0023】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0024】
特に、本発明で用いられるin situ hybridization法と免疫染色法は、当業者の間では極めて広く用いられている手法であり、特に説明が無い部分であっても、当業者はルーティンに行っている処理を適用することができるのは言うまでもない。また、現在、各研究者の経験などに従って、様々な改良方法が見いだされており、本発明は、そうした全ての方法に適用でき、本発明の特徴部分以外の方法によって本発明が限定されることはない。
【0025】
==試料==
本発明を適用する試料の由来は何でもよく、代表的な生物種として、植物、線虫、ショウジョウバエ、ホヤ、アフリカツメガエル、ニワトリ、ウズラ、ブタ、マウス、ラット、ヒト、等が挙げられるが、これらに限定されない。
試料は、これら生物の一部であってもよく、全部であってもよい。例えば、組織や器官などを取り出して試料にしてもよく、胚をそのまま試料にしてもよい。また、細胞や組織を培養したものでもよい。
また、試料の由来はこれらの生物種の発生段階に関しても特に限定されることはなく、例えば動物の場合、卵割期にある卵(egg)、胚(embryo)、胎仔(fetus)、成体(adult)等のいずれであってもよい。
【0026】
==試料の固定・試料作製==
まず、上記試料を固定する。固定方法は、試料を直接固定液に漬けてもよいし、還流固定してもよい。
固定液は何でもよく、例えば、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液、ホルマリンやそれらの混合液が用いられ、特に4%ホルムアルデヒド水溶液が最もよく用いられる。
試料は、組織の場合、切片でも、ホールマウント(whole-mount)でもよい。切片の場合は、凍結切片、パラフィン切片、レジンなどを包埋剤に用いたプラスティック切片など、いずれでもよい。培養細胞の場合、スライドグラスに細胞を培養し、そのスライドグラスを試料としてもよく、培養皿に培養した細胞をそのまま用いてもよい。
【0027】
==in situ hybridization法==
まず、前処理として、固定した切片あるいはホールマウントの試料に対し、脱パラフィン処理や再水和処理など適宜処理を行う。その後、プローブがアクセスしやすいように、mRNAに結合するタンパク質を分解して、mRNAを露出させるためのタンパク質分解処理が行われる。本発明では、タンパク質分解処理に用いられるタンパク質分解剤として、サーモリジンを用いる。タンパク質分解処理の処理時間は5~30分間、処理温度は37~50℃が好ましいが、これらの数値には限定されず、実際には、予め、濃度を含めたいくつかの条件を試して、最適化するのが好ましい。このタンパク質分解処理には、サーモリジンに加え、proteinaseKやトリプシンなどの他のタンパク質分解酵素を混合して用いてもよい。その後、オプションとして、グリシンを用いたクエンチン化や無水酢酸を用いたアセチル化など、一連の前処理を行ってもよい。
【0028】
試料の前処理後、プレハイブリダイゼーション、及びハイブリダイゼーションを行う。プレハイブリダイゼーションは、例えばSSC、Forimamideを含む溶液中で、37℃、30~60分間行われる。各試薬の濃度は0.1~2 x SSC、1~50 % Forimamideが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。ハイブリダイゼーションは、例えばSSC、SDS、Formamaideを含む溶液中で、37℃、一晩行われる。各試薬の濃度は、0.1~2 x SSC, 0.05~1 % SDS, 1~50 % Formamaideが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、放射性同位元素やビオチンなどの標識でラベルしてもよいが、ジゴキシゲニンでラベルするのが最もよく行われる。プローブは、オリゴヌクレオチドでも、一本鎖DNAでも二本鎖DNAでもよく、RNAでもよい。プローブの合成は、化学合成でもよく、DNA依存性DNAポリメラーゼを用いたプライマー・エクステンションやDNA依存性RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写系を使用して行ってもよく、PCRを使用して行ってもよい。
【0029】
ハイブリダイゼーションの後、試料を洗い、各標識に適した検出反応を行う。例えば、放射線同位元素でラベルされたプローブの場合、エマルジョンを用いて現像する。標識がビオチンやジゴキシゲニンの場合、HRP、アルカリホスファターゼ、β-GALなどの酵素を結合した抗ビオチン抗体や抗ジゴキシゲニン抗体を用い、その酵素に対する基質を用いて発色させることにより検出する。この抗体を用いた検出過程では、ABC法など様々な方法によって、シグナルの増幅をすることができる。
【0030】
==免疫染色法==
まず、前処理として、固定した切片あるいはホールマウントの試料に対し、脱パラフィン処理や再水和処理など適宜処理を行った後、検出対象のタンパク質に対する一次抗体で抗体処理する。一次抗体は、HRPやアルカリホスファターゼに結合したものを用いてもよい。処理条件は、4~37℃で、1時間から数日であることが好ましいが、反応条件はこれに限定されない。
【0031】
一次抗体反応後、試料をPBS等で洗浄し、架橋剤を用いて架橋反応を行う。架橋剤としては、EDC(0.1~10 mg/mL 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸の0.1Mメス(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸1水和物溶液;1-Ethy-3-(3-Dimethylaminopropyl)carbdiimide Hydrochloride in 0.1M MES(2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid monohydrate))、SMPT(0.01~5 mM 4-サクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-α-[2-ピチジルジチオ]トルエンのPBS溶液;4-Succinimidyloxycarbonyl-methl-α-[2-pyridyldithio]toluene in PBS)、BMH(0.5-20mM ビス-マレイミドヘキサンのPBS溶液;Bis-Maleimidohexane in PBS)、ABH(0.1-10mM p-アジドベンゾイル ヒドラジドのPBS溶液;p-Azidobenzoyl hydrazide in PBS)、SIAB(0.1-10mM N-スクシンイミジル [4-ヨードアセチル]アミノベンゾエートのPBS溶液;N-Succinimidyl[4-iodoacetyl]aminobenzoate in PBS)、GMBS(0.1-10mM N-[g-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミド エステルのPBS溶液; N-[g-Maleimidobutyryloxy]succinimide ester in PBS)、Sulfo-GMBS(0.1-10mMスルホ- N-[g-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミド エステルのPBS溶液; sulfo-N-[g-Maleimidobutyryloxy]succinimide ester in PBS)、DMS(1-50 mM ジメチルスベルイミデート・2塩酸のPBS溶液;Dimethyl Suberimidate・2 HCl in PBS)、BS(1-50mM ビス(スルホスクシンイミジルスベレート)のPBS溶液;Bis(sulfosuccinimidyl suberate) in PBS)等のSulfo-NHS(スルホ-N-ヒドロキシスルホスクシンイミド;sulfo-N-hydroxysulfosuccinimide)またはNHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド;N-hydroxysuccinimide)、ASBA(0.1-10mM 4-[p-アジドサリシルアミド]ブチルアミンのPBS溶液;4-[p-Azidosalicylamido]butylamine) in PBS)、等の架橋剤を用いることができる。反応は室温で、1~2時間インキュベートすればよいが、この条件に限定されない。
【0032】
架橋反応後、試料をPBS等で洗浄し、HRP、アルカリホスファターゼ、β-Gal(β-ガラクトシダーゼ)などの酵素を結合した二次抗体で処理する。一次抗体として、HRPやアルカリホスファターゼに結合したものを用いた場合は、二次抗体処理を省略することができる。
【0033】
最後に、抗体に結合した酵素の基質を添加し、発色させることにより、シグナルを検出する。代表的な基質としては、HRPに対してはジアミノベンチジン溶液(DABトリス錠、MUTO PURE CHEMICALS社)、アルカリホスファターゼに対しては、 NBT(Nitrotetrazolium Blue Choride)および BCIP(5-Bromo -4-Chloro-3-indolyl-phosphate disodium salt)、β-Galに対しては、X-gal(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside)溶液がある。
【0034】
なお、ここに記載した方法に加え、ABC法など様々な方法によって、シグナルの増幅をすることができる。
【0035】
==同時検出法 I==
同一試料に対しin situ hybridization法と免疫染色法の両方を行い、mRNAとタンパク質の両方を検出する場合、ハイブリダイゼーション用プローブと免疫染色用一次抗体を添加する順序によって、3通りの方法が考えられる。
【0036】
まず、ハイブリダイゼーション用プローブと免疫染色用一次抗体を同一溶液中に添加して、試料と反応させる方法について述べる。この方法によると、ハイブリダイゼーションと一次抗体反応が同時に行えるため、全工程の所要時間が短縮される。
【0037】
まず、検出対象となる試料にして、脱パラフィン処理や再水和処理、タンパク質分解処理、クエンチン化や無水酢酸を用いたアセチル化など、試料に適した前処理を行う。この前処理は、上述のin situ hybridization法と同じであるので、詳細は省略する。
【0038】
次に、ハイブリダイゼーション及び一次抗体反応を、例えばSSC、SDSを含む一つの溶液中で行う。各試薬の濃度は、0.1~0.5 x SSC, 0.01~0.05 % SDSが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。抗体反応も行うため、この溶液中のSDS濃度は低い方が好ましく、Formamaideは含まない方が好ましい。さらに、この溶液は、1~20 μg/mLのハイブリダイゼーション用標識(第1の標識)でラベルしたプローブと一次抗体を含む。この溶液A中で37~50℃で一晩、試料をインキュベートする。なお、ハイブリダイゼーション用プローブの作製方法は上述のin situ hybridization法と同じであるが、ビオチンやジゴキシゲニンでラベルするのが好ましい。
【0039】
試料を洗浄後、上記プローブに結合した第1の標識に特異的に結合する酵素結合抗体、及び上記一次抗体に対する、酵素(第2の標識)が結合した二次抗体を含んだ溶液を作製し、4~37℃で、1時間から数日、その中で試料をインキュベートするが、反応条件は特に限定されない。なお、mRNAとタンパク質を別々に検出できるようにするため、プローブに対する抗体及び二次抗体のそれぞれに結合している酵素は、異なる種類の酵素にする。また、これら2種の抗体による抗体反応は、同一溶液中で行わなくてもよく、順次、連続的に行ってもよい。
【0040】
抗体反応後、それぞれの酵素に対する基質を加え発色させる。この発色反応は、同一の溶液内で行ってもよいが、順次、連続的に行ってもよい。
【0041】
==同時検出法 II==
次に、ハイブリダイゼーション用プローブを試料に反応させた後、免疫染色用一次抗体を試料と反応させる方法について述べる。
【0042】
試料の前処理は同時検出法Iと同様にする。
前処理後、プレハイブリダイゼーション、及びハイブリダイゼーションを行う。プレハイブリダイゼーションは、例えばSSC、Formamideを含む溶液中で、37℃、30~60分間行われる。各試薬の濃度は0.1~2 x SSC、1~50 % Formamideが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。ハイブリダイゼーションは、例えばSSC、SDS、Formamideを含む溶液中で、37℃、一晩行われる。各試薬の濃度は、0.1~2 x SSC, 0.05~1 % SDS, 1~50 % Formamideが好ましいが、特にこれらの条件に限定されない。なお、ハイブリダイゼーションのための溶液は、第1の標識でラベルしたハイブリダイゼーション用プローブ1~20 μg/mLを含む。プローブの作製方法は上述のin situ hybridization法と同じであるが、ビオチンやジゴキシゲニンでラベルするのが好ましい。
【0043】
試料を洗浄後、上記プローブに結合した標識に特異的に結合する酵素結合抗体、及び上記一次抗体を含んだ溶液を作製し、4~37℃で、1時間から数日、この溶液中で試料をインキュベートするが、反応条件は特に限定されない。また、これら2種の抗体による抗体反応は、同一溶液中で行わなくてもよく、順次、連続的に行ってもよい。
【0044】
次に、上記一次抗体に対する、酵素(第2の標識)が結合した二次抗体を含んだ溶液を作製し、4~37℃で、1時間から数日、この溶液中で試料をインキュベートするが、反応条件は特に限定されない。なお、二次抗体に結合した酵素は、プローブに結合した標識に特異的に結合する抗体に結合した酵素とは、異なるものにする。
【0045】
抗体反応後、それぞれの酵素に対する基質を加え発色させる。この発色反応は、同一の溶液内で行ってもよいが、順次、連続的に行ってもよい。
【0046】
==同時検出法 III==
次に、免疫染色用一次抗体を試料に反応させた後、ハイブリダイゼーション用プローブを試料と反応させる方法について述べる。
【0047】
まず、検出対象となる試料に対して、脱パラフィン処理や再水和処理などを行う。試料を洗浄後、一次抗体反応を行う。ここまでの方法は、上記免疫染色法と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0048】
その後、再び試料を洗浄後、架橋反応を行う。この架橋反応の目的は、この後に行うタンパク質分解処理に対する抵抗力を試料に与えることにある。後述するように、この反応を行うことにより、少なくとも10倍、架橋剤によっては10倍以上の酵素抵抗力が得られる。
【0049】
その後、タンパク質分解処理を行い、オプションとして、グリシンを用いたクエンチン化や無水酢酸を用いたアセチル化などを行ってもよい。このタンパク質分解処理には、サーモリジン、proteinaseK、トリプシン、パパインなどのタンパク質分解酵素を用いてもよく、また、それらの2種以上を混合して用いてもよい。タンパク質分解処理の処理時間は5~30分間、処理温度は37~50℃が好ましいが、これらの数値には限定されず、実際には、予め、濃度を含めたいくつかの条件を試して、最適化するのが好ましい。
【0050】
In situ hybridizationの前処理後、プレハイブリダイゼーション、及びハイブリダイゼーションを行う。詳細は上記in situ hybridization法の記載に準じる。
【0051】
ハイブリダイゼーション後の抗体反応及び検出反応は、同時検出法Iの方法の記載に準じる。
【0052】
==自動in situ hybridization装置、自動免疫染色装置、自動同時検出装置==
現在、自動in situ hybridization装置、自動免疫染色装置の開発が進んでおり、かなり安定した装置として入手可能である。これらの装置に、本発明のタンパク質分解処理や架橋反応を行わせることは、容易に行える。例えば、従来のproteinaseKの代わりにサーモリジンを使用するような仕様にすればよい。また、一つの装置で、in situ hybridizationと免疫染色の両方を行うようにすることも当業者には容易であり、本発明の同時検出方法を適用することにより、自動同時検出装置を作製することができる。
【0053】
==in situ hybridizationキット、免疫染色用キット==
in situ hybridization、免疫染色、あるいは同時検出を行うにあたって、それぞれに必要な試薬をキット化することで、試薬調整の手間が大幅に省くことができ、また、安定した試薬を使用することで安定した結果を得ることができるようになる。
【0054】
本発明のin situ hybridization用キットは、タンパク質分解剤としてサーモリジンを含有する。このキットには、その他、例えば、固定用試薬、プローブ合成用試薬、クエンチン化用グリシン、アセチル化用無水酢酸、プレハイブリダイゼーション用溶液、ハイブリダイゼーション用溶液、各種検出用抗体、検出用酵素基質、各種バッファーなどを含んでいてもよい。
【0055】
また、本発明の免疫染色用キットは、架橋反応に用いる架橋剤を含有する。それは、上記いずれの架橋剤でもよく、それらの混合物でもよい。また、単独の架橋剤が複数含まれていてもよい。このキットには、その他、例えば、固定用試薬、一次抗体、二次抗体、検出用酵素基質、各種バッファーなどを含んでいてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明のin situ hybridization法または組織化学法を用いてmRNAまたはタンパク質の発現を検出した実施例を詳細に記載する。なお、特に記載のない試薬は、SIGMA-ALDRICH社製である。また、特に記載のない場合は、室温で反応を行った。
【0057】
<実施例1・・・サーモリジンの有効性>
本実施例では、ブタ(ランドレース種)成獣及び胎児の脳・脊髄組織に対し、β-チューブリンの発現をin situ hybridizationで検出した。その際、タンパク質分解処理において、2 mg/mL及び2μg/mLのサーモリジンを用い、proteinaseKまたはトリプシンを用いて得られた結果と比較した。以下、実験手順を順を追って記載する。
【0058】
{プローブの作製}
ブタβ-チューブリン遺伝子cDNAを鋳型とし、 3'-UTR領域を、プライマー TGAGACCGTCCCGCGCAAG (配列番号1)およびACACATGCGTTTTATTAGGATA(配列番号2)を用いて、PCRにより増幅した。増幅断片を、SP6プロモーター及びT7プロモーターを有する転写ベクターpGEM-T Easy(Promega社)にサブクローニングし、塩基配列とベクターに断片が挿入された方向とを確認し、正しい塩基配列と方向を有するプラスミドを選択した。
【0059】
制限酵素を用いて、挿入断片を挟んでSP6プロモーターまたはT7プロモーターと逆の側で切断し、1本鎖にしたプラスミド(1 mg)に対し、3.5 mM Dig-UTP, 6.5 mM UTP, 10 mM ATP, CTP, GTP、in vitro 転写緩衝液(40mM Tris pH8.0, 10 mM NaCl, 2mM spermidine, 0.1 U Rnase inhibitor)、5~10uのSP6またはT7 RNA polymerase(Roche社)の反応条件で、37℃、2時間反応させた。最終濃度0.2 M になるようにEDTAを加えて反応を止め、RNAをエタノール沈殿し、適量の水で溶解後、濃度を測定し、アガロース電気泳動にて長さ及び純度をチェックした。このようにして、ブタβ-チューブリン遺伝子に対するDigoxigenin標識アンチセンスcRNAプローブ及びDigoxigenin標識センスcRNAプローブを作製した。
【0060】
{実験手順}
1)成獣ブタ(ランドレース種)脳を4 %ホルムアルデヒド水溶液を用いて灌流固定し、シランコートスライドグラス(MUTO PURE CHEMICALS社)を用いて、パラフィン切片を作製した。
2)パラフィン切片を60℃で30分間加温した。
3)キシレンで10分間、2回、攪拌し、脱パラフィン操作を行った。
4)100 %エタノールで5分間3回、続いて90 %エタノール、80 %エタノール、70 %エタノールおよび50 %エタノールで各5分間づつ行い再水和を行った。
5)PBSで10分間、1回洗浄する。
6)20μg/mlトリプシン、1μg/ml proteinase K(WAKO社 163-18131)または400μg/ml サーモリジン (protease type X, P-1512, Sigma-Aldrich社)で15分、37℃にてタンパク質分解処理を行った。
7)室温で、PBSを用いて10分間洗浄した後、2 mg/mL グリシン水溶液に10分間浸し、クエンチン化を行った。
8)PBSで3分間、2回洗浄した後、0.25%無水酢酸添加0.1 Mトリエタノールアミン緩衝液 pH 8.0(以下、0.1 M TEA )中に15分間浸し、アセチル化を行った。
9)0.1 M TEAで15分間洗浄した。
10)4 x SSC中に10分間浸した後、溶液を変えてさらに5分間、1回浸した。
11)Pre-Hybridization緩衝液 (2 x SSC、50 % Formamide)中で37 ℃、30分間反応させた。
12)Hybridization緩衝液(2 x SSC, 1 % SDS, 1 mg/mLBSA, 10 % Dextran, 1 mg/mL salmon sperm DNA, 1 mg/mL tRNA、50% Formamaide)中にDigoxigenin標識cRNA プローブを8μg/mLの濃度で加え、37℃、一晩、ハイブリダイゼーションを行った。
13)Pre-Hybridization緩衝液で37℃、20分間洗浄を行った。
14)0.2 x SSC中で37℃、20分間洗浄した。
15)NTE緩衝液(0.5 M NaCl, 10 mM Tris-HCl pH 8.0 and 1 mM EDTA)に37℃、5分間浸して洗浄した。
16)20 μg/mL RNaseA溶液中に、37℃、30分間浸して処理した。
17)NTE 緩衝液にて37℃、5分間洗浄した。
18)0.1 x SSCにて、42℃、20分間、3回洗浄を行った。
19)PBSにて洗浄後、5 % Normal Goat Serum (Invitrogen社)にてブロッキングした。
20)アルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(Roche社)を、250倍希釈した混合溶液を標本上に滴下し、60分間、インキュベートした。
21)PBSで5分間、3回洗浄を行った。
22)NTM 緩衝液(100mM NaCl, 100mM Tris-HCl pH9.5, 50mM MgCl2)に5分間浸した。
23)アルカリホスファターゼの発色基質として450μg/mL NBT(Nitrotetrazolium Blue Choride )および175μg/mL BCIP(5-Bromo-4-Chloro-3-indolyl-phosphate disodium salt)の混合溶液中で発色を行った。
24)顕微鏡下で観察しながら、適当な時点で、PBSで洗浄して発色を停止させた。
25)反応停止後のサンプルスライドは水洗後、水溶性封入剤で封入した。
【0061】
{結果}
結果を図1に示す。
タンパク質分解処理をサーモリジンで行った場合、トリプシン およびproteinase Kの場合に比較し、よりコントラストの高いシグナルが得られた。
【0062】
<実施例2・・・架橋反応の有効性>
本実施例では、成獣ブタ(ランドレース種)の脳に対し、β-チューブリンの発現を免疫染色法で検出した。その際、架橋反応の効果を確認するため、一次抗体反応後に架橋反応を行い、その後いくつかの濃度でproteinaseKを用いたタンパク質分解処理を行ってから二次抗体反応を行った。以下、実験手順を順を追って記載する。なお、ポジティブコントロールとして、proteinaseK処理をしない試料、ネガティブコントロールとして、架橋しない試料に対しても、同時に実験を行った。
【0063】
{実験手順}
1)成獣ブタ(ランドレース種)の脳を4%パラホルムアルデヒドを用いて灌流固定し、シランコートスライドグラス(MUTO PURE CHEMICALS社)を用いて、パラフィン切片を作製した。
2)パラフィン切片を60℃で30分間加温した。
3)キシレンで10分間、2回、攪拌し、脱パラフィン操作を行った。
4)100 %エタノールで5分間3回、続いて90 %エタノール、80 %エタノール、70 %エタノールおよび50 %エタノールで各5分間づつ行い再水和を行った。ここで、内因性のペルオキシターゼをブロッキングするため、0.3 %過酸化水素を含むメタノールに30分間浸した。
5)PBSで10分間、1回洗浄した。
6)一次抗体である抗β-Tubulin classII抗体(NOVOCASTRA社) をPBSで100倍希釈し、室温で60分間、インキュベートした。
7)PBSで5分間、3回洗浄する。
8)1.25 mg/mL EDC、または10 mM SMPT (PIERCE Biotechnology社製)を滴下後、室温で1~2時間インキュベートした。
9)PBSで5分間3回洗浄した(EDCを使用時には、PBS洗浄の前に、0.1M MESで5分間1回洗浄した。)。
10)0.5 pg/mL、10 fg/mL、10-2 fg/mLの各濃度のproteinase K(WAKO社 163-18131)で10分間、37℃でインキュベートして蛋白分解酵素処理を行った。
11)PBSにて洗浄後、5 % Normal Goat Serum (Invitroge)にて60分間ブロッキングした。
12)二次抗体(HRP標識抗マウスIgGポリクローナル抗体)を、PBSで100倍に希釈した混合溶液を標本上に滴下し60分間、インキュベートした。
13)PBSで5分間、3回洗浄を行った。
14)HRP発色基質としてジアミノベンチジン(DABトリス錠、MUTO PURE CHEMICALS社)を用い、その水溶液(0.3 mg/ml)中で発色を行った。
15)顕微鏡下で観察しながら、適当な時点で、PBSで洗浄して発色を停止させた。
16)反応停止後のサンプルスライドは水洗後、水溶性封入剤で封入した。
【0064】
{結果}
結果を図2に示す。
架橋しない試料の場合、10-2 fg/mLのproteinase Kで処理をすると、全くシグナルが検出されなくなったが、架橋剤としてEDCを用いた場合、1 pg/mLのproteinase Kで処理をしてもシグナルが観察された。また、架橋剤としてSMTPを用いた場合、10 fg/mLのproteinase K濃度まではっきりシグナルが観察された。このように、EDCを用いると、proteinase K耐性が少なくとも10倍、SMTPを用いるとproteinase K耐性が少なくとも10倍高まった。
同様にして、様々な架橋剤とタンパク質分解酵素の組み合わせを用いて、酵素耐性が何倍上昇するかを調べた結果を表1に示す。このように、用いた全ての架橋剤で、タンパク質分解酵素耐性が少なくとも10倍上昇し、架橋剤によっては、少なくとも10倍上昇した。
【表1】
JP0004538628B2_000002t.gif

【0065】
<実施例3・・・同時検出法の実施例>
本実施例では、同時検出法の実施例を詳細に述べる。なお、プローブは実施例1と同様に作製した。
【0066】
{実験手順}
1)成獣ブタ(ランドレース種)脳を4 %ホルムアルデヒド水溶液を用いて灌流固定し、シランコートスライドグラス(MUTO PURE CHEMICALS社)を用いて、パラフィン切片を作製した。
2)パラフィン切片を60℃で30分間加温した。
3)キシレンで10分間、2回、攪拌し、脱パラフィン操作を行った。
4)100 %エタノールで5分間3回、続いて90 %エタノール、80 %エタノール、70 %エタノールおよび50 %エタノールで各5分間づつ行い再水和を行った。
5)PBSで10分間、1回洗浄する。
6)20μg/mlトリプシン、1μg/ml proteinase K(WAKO社 163-18131)または400μg/ml サーモリジン (protease type X, P-1512, Sigma-Aldrich社)で15分、37℃にてタンパク質分解処理を行った。
7)室温で、PBSを用いて10分間洗浄した後、2 mg/mL グリシン水溶液に10分間浸し、クエンチン化を行った。
8)PBSで3分間、2回洗浄した後、0.25 %無水酢酸添加0.1 M TEA中に15分間浸し、アセチル化を行った。
9)0.1 M TEAで15分間洗浄した。
10)4 x SSC中に10分間浸した後、溶液を変えてさらに5分間、1回浸した。
11)Pre-Hybridization緩衝液 (2 x SSC、50 % Formamide)中で37℃、30分間反応させた。
12)Hybridization緩衝液(2 x SSC, 1 % SDS, 1 mg/mLBSA, 10 % Dextran, 1 mg/mL salmon sperm DNA, 1 mg/mL tRNA、50% Formamaide)中にDigoxigenin標識cRNA プローブを8μg/mLの濃度で加え、37℃、一晩、ハイブリダイゼーションを行った。
13)Pre-Hybridization緩衝液で37℃、20分間洗浄を行った。
14)0.2 x SSC中で37℃、20分間洗浄した。
15)NTE緩衝液(0.5 M NaCl, 10 mM Tris-HCl pH 8.0 and 1 mM EDTA)に37℃、5分間浸して洗浄した。
16)20 μg/mL RNaseA溶液中に、37℃、30分間浸して処理した。
17)NTE 緩衝液にて37℃、5分間洗浄した。
18)0.1 x SSCにて、42℃、20分間、3回洗浄を行った。
19)PBSにて洗浄後、5 % Normal Goat Serum (Invitrogen社)にてブロッキングした。
20)250倍希釈したアルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(Roche社)及び100倍希釈した抗β-Tubulin classII抗体(NOVOCASTRA社)のPBS溶液を標本上に滴下し、室温で60分間、インキュベートした。
21)PBSで5分間、3回洗浄を行った。
22)二次抗体(HRP標識抗マウスIgGポリクローナル抗体)を、PBSで100倍に希釈した混合溶液を標本上に滴下し60分間、インキュベートした。
23)PBSで5分間、3回洗浄を行った。
24)HRP発色基質としてジアミノベンチジン(DABトリス錠、MUTO PURE CHEMICALS社)を用い、その水溶液(0.3 mg/ml)中で発色を行った。
25)顕微鏡下で観察しながら、適当な時点で、PBSで洗浄して発色を停止させた。
26)NTM 緩衝液(100 mM NaCl, 100 mM Tris-HCl pH 9.5, 50 mM MgCl2)に5分間浸した。
27)アルカリホスファターゼの発色基質として450μg/mL NBT(Nitrotetrazolium Blue Choride )および175μg/mL BCIP(5-Bromo-4-Chloro-3-indolyl-phosphate disodium salt)の混合溶液中で発色を行った。
28)顕微鏡下で観察しながら、適当な時点で、PBSで洗浄して発色を停止させた。
29)反応停止後のサンプルスライドは水洗後、水溶性封入剤で封入した。
【0067】
{結果}
結果を図3に示す。左図の写真では、mRNAは紫色で検出されており、タンパク質は茶色で検出されており、点線より上部では紫色と茶色の両方で、点線より下部では紫色のみで組織切片が染色された。このように、点線より上部ではmRNAとタンパク質の両方が検出され、点線より下部で主としてmRNAのみが検出された。右図で両者の拡大図を示す。
【0068】
このように、本発明の同時検出法によると、遺伝子のmRNAとタンパク質の分布が同一試料で容易に検出できるようになり、それらの組織局在の比較が容易にできるようになった。さらに、それらの細胞内分布も比較できる。これらに違いが見いだせれば、この遺伝子の発現に転写後調節が働いていることが示唆される。
【0069】
また、遺伝子発現をデータベース化する際にも、同一画像で、mRNAとタンパク質の分布を表示できるようになるため、データベース構築の際のコストの削減にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のin situ hybridization法の一実施例によるmRNAの検出結果を示す写真であり、サーモリジンのタンパク質分解剤としての有効性を示している。
【図2】本発明の免疫染色法の一実施例によるタンパク質の検出結果を示す写真であり、本発明の架橋剤の有効性を示している。
【図3】本発明の同時染色法の一実施例によるmRNAとタンパク質の同時検出結果である。同一試料上でmRNAとタンパク質が染め分けされている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2