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明細書 :ガス放射線検出器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4613319号 (P4613319)
公開番号 特開2008-243634 (P2008-243634A)
登録日 平成22年10月29日(2010.10.29)
発行日 平成23年1月19日(2011.1.19)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 ガス放射線検出器
国際特許分類 H01J  47/06        (2006.01)
G01T   1/18        (2006.01)
FI H01J 47/06
G01T 1/18 A
G01T 1/18 D
請求項の数または発明の数 7
全頁数 16
出願番号 特願2007-083191 (P2007-083191)
出願日 平成19年3月28日(2007.3.28)
審査請求日 平成19年3月28日(2007.3.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】宇野 彰二
個別代理人の代理人 【識別番号】100134016、【弁理士】、【氏名又は名称】園部 武雄
審査官 【審査官】佐藤 仁美
参考文献・文献 特開2000-206252(JP,A)
特開2000-321358(JP,A)
特開2001-135268(JP,A)
特開2005-055372(JP,A)
特開2005-055306(JP,A)
特表2001-508935(JP,A)
特開2005-010163(JP,A)
特開2006-302844(JP,A)
調査した分野 G01T 1/00- 7/12、
H01J 40/00-49/48
特許請求の範囲 【請求項1】
気体中で電離放射線によって発生した1次電子を読出し電極にて検出するガス放射線検出器であって、
発生した電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極と、
前記1次電子の1つから前記気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部と、
前記読出し電極は電子雪崩が生じたことを一様に検出できる極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、該絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段と、
を備えたガス放射線検出器。
【請求項2】
気体中で電離放射線によって発生した1次電子を2次元読出し電極にて検出するス放射線検出器であって、
発生した電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極と、
前記1次電子の1つから前記気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部と、
前記2次元読出し電極は、
前記気体電子増幅部に対向して、第1の所定の方向に沿って延びており電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、該絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段とを有する第1の読出し電極と、
該第1の読出し電極の前記気体電子増幅部の反対側に位置し、前記第1の所定の方向を横切って、第2の所定の方向に沿って延びている電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、を有する第2の読出し電極と、
を備えたス放射線検出器。
【請求項3】
前記2次元読み出し電極は、
第1の所定の方向と前記第2の所定の方向の中間の第3の方向に沿って、前記第1の読出し電極と前記第2の読出し電極とを横切って延びている電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、を有する第3の読出し電極と、
をさらに備える請求項2に記載のス放射線検出器。
【請求項4】
前記電極素子は、導電帯板である請求項1から3のいずれか一項に記載のス放射線検出器。
【請求項5】
前記除電手段は、前記絶縁物の気体電子増幅部側に高抵抗体を塗布したものである請求項1から3のいずれか一項に記載のス放射線検出器。
【請求項6】
前記高抵抗体はカーボン塗料である請求項5に記載のス放射線検出器。
【請求項7】
前記除電手段は、前記第1の読出し電極の絶縁物は所定の時間内に蓄積した電荷を電可能な絶縁抵抗を持つ絶縁物である請求項2又は3に記載のス放射線検出器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス放射線検出器に関する。さらに詳しくは、ガス放射線検出器に好適な読出し電極に関する。
【背景技術】
【0002】
素粒子は分子や原子よりもさらに小さく、目で見たりすることはもちろん、電子顕微鏡などを使っても見ることもできない。そこで、素粒子や原子核の研究には素粒子を捕らえるための検出器は重要である。
【0003】
さらに、X線やγ線や中性子を使った物質構造の研究、気球を使った宇宙の観測、さらにはポジトロン断層法(Positron emission tomography 以下「PET」という。)などの医学診療の最前線、あるいは工場で製品の非破壊検査などを行う際にも素粒子の検出技術はきわめて重要である。
【0004】
従来技術としては、1997年、ヨーロッパCERN研究所のサウリ、ファビオ(Sauli Fabio)によって発明されたガス放射線検出器(Gas Electron Multiplier 以下「GEM」という。)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8と図9は、サウリにより提案されたGEMチェンバーの構造の概略図であり、図10は、気体電子増幅部の両面フレキシブル基板の一例と原理を説明する図である。
【0006】
GEMチェンバーは、図8と図9に示すようにドリフト電極10と気体電子増幅部20と読出し基板30とを有する。これらは、密封することができる容器(図示せず)に収納され内部には、検出したい放射線に適合する気体が充填されている。
【0007】
この容器内で入射電離放射線により1次電子が生成されると、ドリフト電極10による電界により、1次電子は気体電子増幅部20に引き寄せられる。気体電子増幅部20は、図10に示すように両面フレキシブル基板で厚さ50μmのカプトン等の絶縁物の両面に5μmの銅箔が張られている。両面フレキシブル基板には径70μmの穴が140μmピッチであけられている。両面の銅箔間に例えば450V程度の電圧を加えると図10の左側に示すように穴の部分で局部的に強い電界が発生する。
【0008】
生成されて気体電子増幅部20に引寄せられた1次電子は穴の中で強い電界により加速され、充填されている気体と衝突して電子雪崩を発生させる。この電子雪崩が発生することにより電子の数が増大して、電子雪崩の発生した位置を読出し基板30が検出する(さらに詳しくは特許文献1を参照)。

【特許文献1】特公表2001-508935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術による読出し基板30の構造を図11に、又その製作工程例を図12に示す。図11に示すように、2次元で読出しをするためには、一様な検出性能を持たせるために等しい短冊形状の導電体を精度良く直角に配置する必要があった。一例では、幅80μm厚さ4μmの短冊形状の銅箔を多数平行に配置しその下にポリイミド等の厚さ50μmの絶縁物で絶縁する。その下に、幅340μm厚さ4μmの短冊形状の銅箔を多数平行に埋め込んだガラスエポキシ基板を置いていた。
【0010】
その製法は、図12に示すように、銅パターンをガラスエポキシ基板に転写する。一方
ポリイミド基板に銅パターンを形成する。両面をポリイミド接着剤等で張り合わせる。上層のポリイミド層を銅パターンをマスクとしてエッチングにより除去する。エッチングは湿式またはレーザエッチングが使われるが、エッチングし過ぎることが多く、一部でも不良となると全体の基板を廃棄しなければならなかった。また、図12の左下に示すような山形の形状になってしまい精度良くエッチングすることができなかった。
【0011】
このように従来技術では、この読出し基板30は、一般の産業用としてあまり使用されない特殊な加工をする必要があった。このため製作するのに多くの工数を要し高価であった。また、上述のようにPET等に応用が広がっているが、コスト上問題であった。また、レントゲンなどのX線検出器等に適用するために必要な微細な読み出しパターンを作ることが非常に難しいという問題もあった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解決し、電子産業界で使用されている技術を用いた読出し基板を採用したガス放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、読出し基板の位置検出が読出し電極に電子雪崩により生じた電子が到達する場合のみならず、電子が移動することによる電磁誘導によっても検出できること、また電磁誘導による検出が絶縁物に蓄積された電荷により悪影響を受けることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
(1) 気体中で電離放射線によって発生した1次電子を読出し電極にて検出するガス放射線検出器であって、発生した電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極と、前記1次電子の1つから前記気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部と、前記読出し電極は電子雪崩が生じたことを一様に検出できる多数の電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、該絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段とを備えたガス放射線検出器。
【0015】
(1)の発明に係るガス放射線検出器は、発生した電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極と、1次電子の1つから気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部と、読出し電極は電子雪崩が生じたことを一様に検出できる多数の電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、該絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段とを備える。
【0016】
気体電子増幅部により、1次電子の1つから気体中で電子雪崩を生じさせることにより増幅する点では従来と同一である。本発明のガス放射線検出器は、読出し電極に絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段を有することにより、電子雪崩により発生した多数の電荷が蓄積することを緩和させることができる。特に多数の電荷が局部的に蓄積すると読出しを一様に検出することが難しくなる。除電手段を設けたことによりこの問題点を解決することができる。
【0017】
除電手段は、絶縁物の気体電子増幅部側に高抵抗体を付加することが望ましい。高抵抗体の付加はカーボン塗料を塗布することが望ましい。なお、カーボン塗料の代わりに同等の絶縁性能並びに抵抗値を有する物質を使用してもよい。例えば、酸化銅または酸化クロムの塗料でもよい。さらに、塗布するかわりに同等の厚さの皮膜を固着しても良い。
【0018】
ガス放射線検出器の具体的な構造、設計仕様により異なるが、絶縁物に高抵抗体を付加した場合の表面抵抗値は経験的に100KΩ/□から10MΩ/□が望ましい。表面抵抗値がこれより小さいと信号が広がり検出に支障をきたす。一方表面抵抗値があまり高いと蓄積した電荷を緩和させるのに時間を要し実用的でないからである。
【0019】
(2) 気体中で電離放射線によって発生した1次電子を2次元読出し電極にて検出する2次元ガス放射線検出器であって、発生した電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極と、前記1次電子の1つから前記気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部と、前記2次元読出し電極は、前記気体電子増幅部に対向して、第1の所定の方向に沿って延びており電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、該絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段とを有する第1の読出し電極と、該第1の読出し電極の反前記気体電子増幅部に位置し、前記第1の所定の方向を横切って、第2の所定の方向に沿って延びている電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、を有する第2の読出し電極と、を備えた2次元ガス放射線検出器。
【0020】
(2)の発明は2次元ガス放射線検出器に関するものである。原理的には(1)の発明を2次元で検出できるように構成したものである。構成上は、発生した電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極と、1次電子の1つから気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部と、を備える点は(1)の発明と同じである。
【0021】
読出し電極が2次元で検出できるように構成されている。すなわち、2次元読出し電極は気体電子増幅部に対向して、第1の所定の方向に沿って延びており電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段とを有する第1の読出し電極と、第1の読出し電極の反気体電子増幅部に位置し、第1の所定の方向を横切って、第2の所定の方向に沿って延びている電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、を有する。
【0022】
(2)の発明では、第1の電極の複数の平行な電極素子が延びている方向を横切って、第2の電極の複数の平行な電極素子が延びている。したがって、網の目状に平行な電極素子が配置される。したがって、個々の電極素子に検出された電気量を測定することにより2次元で電子雪崩が生じた位置を特定することができる。所定の方向を横切る角度は直角に横切ることが望ましいが、別の角度で横切っても電気量を測定する場合に補正をすることにより特定の位置を検出することができる。
【0023】
また、第1の読出し電極に絶縁物に蓄積した電荷を緩和させる除電手段が設けられている。なお、除電手段は第1の読出し電極と第2の読出し電極の両方に設けることもできる。
【0024】
(3) 前記第1の所定の方向と前記第2の所定の方向の中間の第3の方向に沿って、前記第1の読出し電極と前記第2の読出し電極とを横切って延びている電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子と、各電極素子を絶縁する絶縁物と、を有する第3の読出し電極をさらに備える(2)の発明に記載の2次元ガス放射線検出器。
【0025】
(3)の発明は(2)の発明と同じく2次元ガス放射線検出器に関するものである。原理的には(2)の発明で特殊なケースの場合に2次元で位置が特定できなくなる場合があり、これを検出できるように構成したものである。
【0026】
すなわち、網の目状では2つの位置に同時に同じ大きさの電子雪崩が生じた場合に特定することができないが、第3の方向に沿って、第1の読出し電極と第2の読出し電極とを横切って延びている第3の読出し電極をさらに備えることにより、電子雪崩が生じた位置を特定することができる。
【0027】
上記の(1)から(3)の発明に用いられる読出し基板または読出し電極は通常の電子基板技術で製作することができるフレキシブル基板を用いることが望ましい。フレキシブル基板を用いることにより、用途に対応して湾曲した形状のガス放射線検出器を製作することができる。また、読出し精度も上げることができる。さらに、従来のように特殊な製法に依らないので安価で大型のものが製作可能となる。
【0028】
また、上記の(1)から(3)の発明に用いられる読出し基板または読出し電極の電極素子は、導電帯板(Strips)であることが望ましい。導電帯板であればこれらの電極素子に要求される「一様に検出する」ことが、現在市場において確立した技術により実現しやすいからである。
【0029】
さらに、上記の(1)から(3)の発明に用いられる絶縁物は、ポリイミド樹脂によることが望ましい。ただし、目的によっては他の絶縁物を用いることができる。例えば、ガラスエポキシ樹脂でも良いし、他の絶縁物であっても良い。
【0030】
上記の(1)から(3)の発明で絶縁は、電極素子間の絶縁を目的とする。具体的な構成としては(2)の発明では、絶縁物の基板の表面と裏面に導電帯板のパターンを形成することにより、表面に電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な第1の電極素子を、裏面に電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な第2の電極素子を形成することもできる。
【0031】
もっとも、目的によっては、導電帯板が絶縁物で覆われるように構成しても良い。(3)の発明の第3の電極素子は導電帯板が絶縁物に覆われたシート状のものを第2の読出し電極の反気体電子増幅部側に設けることができる。
【0032】
さらに、(2)または(3)の発明の除電手段は、第1の読出し電極の絶縁物は所定の時間内に蓄積した電荷を電可能な絶縁抵抗を持つものを採用した手段であってもよい。ガス放射線検出器の目的によっては、一定の性能があればコストは安いほうが望ましい。このような目的には、製作工数の少ないこの構造が適する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、一般の産業用としてあまり使用されない特殊な加工をすることなく電子産業界で使用されている技術を用いた読出し電極を採用したガス放射線検出器を提供することができる。また、PET等に応用が広がっているが、これに適した大きさで湾曲するガス放射線検出器を提供することができる。また、レントゲンなどのX線検出器等に必要な微細な読み出しパターンの読出し電極を採用したガス放射線検出器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
図1は、本発明に係るガス放射線検出器の構成の概略を示す図である。図2は、本発明に係る2次元の読出し電極のフレキシブル基板により実現した具体的な実施例である。図3は、本発明に係る読出し電極の実施例の概念的な説明図である。
【0036】
図1に示すように、本発明のガス放射線検出器1は、気体中で電離放射線によって発生した1次電子を加速させる電界を発生させるドリフト電極10と、1次電子の1つから前記気体中で電子雪崩を生じさせるために電界強度を局部的に高められた気体電子増幅部20と、読出し電極50とを有する。なお、図1では、気体電子増幅部20は1段であるが、目的に対応して複数段にすることができる。通常は3段を適用することが多い。
ここで、ドリフト電極10と気体電子増幅部20とは、従来技術で説明した図8に示す物と同一であるので、説明を省略する。
【0037】
図1において読出し電極50は、2次元読出し電極の例を示しており、気体電子増幅部20により電子雪崩が生じたことを一様に検出できる第1の読出し電極である多数の電極素子ST1jと、各電極素子ST1jを絶縁する絶縁物51と、該絶縁物51に蓄積した電荷を緩和させるカーボン塗料を塗布した皮膜による除電手段80と、からなる。
【0038】
第1の読出し電極である多数の電極素子ST1jは導電帯板で作られており各々に電極素子ST1jで検出した信号を処理する電子回路A1jが接続されている。また、第1の読出し電極の下側に、第2の読出し電極である多数の電極素子ST2kと、各電極素子ST2kを絶縁する絶縁物61とが設けられている。第2の読出し電極である多数の電極素子ST2kは導電帯板で作られており各々に電極素子ST2kで検出した信号を処理する電子回路A2kが接続されている。第1の電極素子ST1jと第2の電極素子ST2kとは相互に直角に横切っており、気体電子増幅部20により電子雪崩が生じたことを2次元で一様に検出できる構成となっている。なお、後述するように絶縁物51と絶縁物61とは一枚で製作することもできる。
【0039】
本発明に係る2次元の読出し電極をフレキシブル基板により実現した具体的な実施例を
図2を参照して説明をする。図2において、2次元読出し電極50は、第1の読出し電極として、第1の所定の方向に沿って延びており気体電子増幅部20により電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子ST1jと、各電極素子ST1jを絶縁する絶縁物とを一体に製作したフレキシブル基板52により製作されている。フレキシブル基板52の気体電子増幅部20側にはフレキシブル基板52に蓄積した電荷を緩和させるカーボン塗料を塗布した皮膜による除電手段80が設けられている。
【0040】
第2の読出し電極は、フレキシブル基板52の裏側(第1の読出し電極の反対側)に第1の読出し電極を図のように直角に横切って延びている複数の平行な電極素子ST2kを設けている。
【0041】
これらは、図2に示すように第1の読出し電極はフレキシブル基板の引出し部を介してコネクタ53からコネクタ56に接続され、さらに金属製の枠体70に設けられたコネクタ71からコネクタ74を介して読み出し、電子回路A1jに接続されている。同様に第2の読出し電極はフレキシブル基板の引出し部を介してコネクタ63からコネクタ66に接続され、さらに金属製の枠体70に設けられたコネクタ75からコネクタ78を介して読出し電子回路A2kに接続されている。
【0042】
本発明に係る読出し電極の実施例の概念的な説明を図3を参照して以下説明する。図3では、第1の電極素子ST1jと第2の電極素子ST2kは説明の都合で数を大幅に少なくしている。図3のように厚さ50μmフレキシブル基板52の表面には80μmの幅で厚さ5μmの銅箔の導電帯板である第1の電極素子ST1jが400μmピッチで平行に配置されている。その表面にフレキシブル基板52に蓄積した電荷を緩和させるカーボン塗料を塗布した皮膜による除電手段80が設けられている。
【0043】
フレキシブル基板52の裏面には340μmの幅で厚さ5μmの銅箔の導電帯板である第2の電極素子ST2kが400μmピッチで平行に配置されている。第1の電極素子ST1jと第2の電極素子ST2kとは直角に横切って、網の目状に配置されている。さらに、フレキシブル基板52の下側には第2の電極素子ST2kの絶縁と支持とを担う基板58が設けられている。図3のように第1の電極素子ST1jは読出し電子回路A1jに各々接続されており、第2の電極素子ST2kは読出し電子回路A2kに各々接続されている。
【0044】
以上のような構成の2次元ガス放射線検出器の試験結果について以下図を参照しながら説明をする。図4は、除電手段を適用しない両面フレキシブル基板による2次元読出し電極の出力信号を表す図であり、図5は、本発明に係る2次元読出し電極の出力信号を表す図である。図6は、本発明に係るガス放射線検出器により検出した画像を表す図である。
【0045】
試験は、アルゴン(Ar)70%と二酸化炭素(CO)30%の混合気体中で、ドリフト電極10と気体電子増幅部(GEM)20との間の電界を1kV/cmに設定し、気体電子増幅部(GEM)20に450Vの電圧を印加し、気体電子増幅部20と、読出し電極50との間の電界を6kV/cmに設定して行った。
【0046】
発明者は、最初に単純に両面フレキシブル基板による2次元読出しを試みたが、図4に示すような結果であった。図4は、気体電子増幅部20をトリガとして第1の読出し電極と第2の読出し電極の出力信号を表している。図4に示すように、第1の読出し電極の出力信号は妥当な値であるが、第2の読出し電極の出力信号は逆転しており大幅に予想と異なっていた。
【0047】
これは、電子雪崩による大量の電子が両面フレキシブル基板に向かって移動する際の誘電作用によって、表面に負の信号が発生するが、裏面には溜まっていた電荷の移動により
正の電荷が現われたためと推定される。この信号を利用することも考えられるが、この信号は安定しない。また、どれくらいの電荷量が蓄積されるかで信号の形自体も変化すると考えられる。ただし、信号処理に工夫を凝らせば将来検出できる可能性もある。そこで、確実な方法を考察した結果、発明者は次のことを見出した。
【0048】
両面フレキシブル基板の表面に電子雪崩による大量の電子が到達することで絶縁物に電荷が蓄積する。この電荷により裏面の信号検出に支障をきたす。そこで、この絶縁物に蓄積した電荷を除電手段を設けて緩和させることと、電子雪崩による電子の移動を電磁誘導により裏面においても信号検出が可能である。
【0049】
除電手段は、絶縁物の気体電子増幅部側に高抵抗体を付加することが構造的にも適している。そこで、上記のように高抵抗体を付加した物はカーボン塗料を塗布した膜を除電手段80とした。もっとも、除電手段は、第1の読出し電極の絶縁物を所定の時間内に蓄積した電荷を電可能な絶縁抵抗を持つものとすることもできる。
【0050】
このようにして、両面フレキシブル基板52の表面にカーボン塗料を塗布した膜による除電手段80を設けた。この状態で測定した結果を図5に示す。図5も同様に、気体電子増幅部20をトリガとして第1の読出し電極と第2の読出し電極の出力信号を表している。図5に示すように、第1の読出し電極と第2の読出し電極とも予想した信号が得られることが判明し実用化の見通しが得られた。
【0051】
また、図6に、本発明に係るガス放射線検出器により検出したX線による2次元画像をしめす。図6は片側80本の読出し電極での例であり、画像の再生用として使用可能であることが判明した。
【0052】
以上のようにして、電子産業界で一般に使用されているフレキシブル基板の技術を用いた読出し電極を採用したガス放射線検出器を提供することが可能となった。電子産業界で一般に使用されている技術を用いているので製作がしやすい。したがって、コストも安くすることができる。本実施例では400μmピッチで製作したが、さらに従来の方法では製作が困難な微細な読出しパターンを容易に製作できることが可能となった。また、現在気体電子増幅部のピッチが140μmであるので、気体電子増幅部で発生した電子雪崩を検出に十分な精度である100μmピッチの読出し電極を製作することもできる。
【0053】
また、フレキシブル基板の技術を用いているので、PET等の湾曲する2次元ガス放射線検出器の応用において、多数の30cm×30cm程度の検出器を並べることによって検診する人体の全身をおおうように配置することもできる。
【0054】
<実施例2>
実施例2は、実施例1と同じく2次元ガス放射線検出器に関するものである。実施例1の特殊なケースの場合に2次元で位置が特定できなくなる場合に検出できるように構成したものである。
【0055】
図7は、本発明に係る読出し電極の別の実施例の概念的な説明図である。図7に示すように、図3の実施例1の構成にさらに第3の読出し電極92を有する。第3の読出し電極は、図7の一点鎖線で示したような第1の読出し電極素子ST1jと第2の読出し電極素子ST2kとを横切って延びている電子雪崩が生じたことを一様に検出できる複数の平行な電極素子ST3mがフレキシブル基板92に設けられている。フレキシブル基板92は、図7の位置関係になるようにフレキシブル基板52の下側に固着されている。電極素子ST3mには各々信号を検出できる電子回路A3mが接続されている。
【0056】
実施例1の特殊なケースの場合、図7の2つの■の位置(94、95)に同時に電子雪崩が生じた場合に2次元の場合は2つの●の位置(96、96)も該当するので特定することができないが、図7の用に第3の方向に沿って、第1の読出し電極と第2の読出し電極とを横切って延びている第3の読出し電極素子ST3mをさらに備えることにより、電子雪崩が生じた位置を特定することができる。
【0057】
このようにして、2次元の画像をより正確に検出することができる2次元ガス放射線検出器を提供することができる。
【0058】
以上、本発明の実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施例に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。本発明の変更例を下記に例示する。
【0059】
<変更例1>
上記では2次元ガス放射線検出器について主に説明をしたが、同様に1次元ガス放射線検出器に適用することができる。また、より複雑な構造を持つガス放射線検出器についても適用することができる。
【0060】
<変更例2>
実施例1において、フレキシブル基板について主に説明をしたが、通常の電子回路基板にても実現可能である。また、フレキシブル基板と通常の電子回路基板を組み合わせることによっても実現可能である。
【0061】
<変更例3>
実施例1において、両面フレキシブル基板にて金属箔が両面に露出している例について主に説明したが、金属箔が露出しないフレキシブル基板についても適用できる。また、片面のみ露出した基板についても適用可能である。
【0062】
<変更例4>
実施例1において、除電手段であるカーボン塗料の塗布により説明したが、同等の性能を有する他の材料を用いても良い。例えば、酸化銅または酸化クロムの塗料でも良い。さらに、塗布するかわりに同等の厚さの皮膜を固着しても良い。また、第1の読出し電極の絶縁物は所定の時間内に蓄積した電荷を電可能な絶縁抵抗を持つものを採用することもできる。さらに、第1の読出し電極に加えて、他の読出し電極に除電手段を用いてもよい。


【0063】
<変更例5>
実施例1において、主に導電電極として導電帯板(Strips)について説明したが、電子雪崩を検出できる他の手段でも適用することができる。特に、発生した電子雪崩を電磁誘導(電磁波)として検出できる他の手段により代替することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
X線やガンマ線のような透過性が良い放射線を使用して、2次元位置を精度良く検出する非破壊検査用の測定装置や、PET、SPECT(Single Photon Emission Cumputed Tomography:単一光子放射型コンピュータ断層撮影)等のガンマ線を利用する医療機器、さらに中性子の入射位置を2次元的にしかも正確に測定できる装置に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るガス放射線検出器の構成の概略を示す図である。
【図2】本発明に係る2次元の読出し電極のフレキシブル基板により実現した具体的な実施例である。
【図3】本発明に係る読出し電極の実施例の概念的な説明図である。
【図4】除電手段を適用しない両面フレキシブル基板による2次元読出し電極の出力信号を表す図である。
【図5】本発明に係る2次元読出し電極の出力信号を表す図である。
【図6】本発明に係るガス放射線検出器により検出した画像を表す図である。
【図7】本発明に係る読出し電極の別の実施例の概念的な説明図である。
【図8】サウリにより提案されたGEMチェンバーの構造の概略図である。
【図9】GEMチェンバーの構造の概略図である。
【図10】気体電子増幅部の両面フレキシブル基板の一例と原理を説明する図である。
【図11】従来技術による読出し基板の構造を説明する図である。
【図12】従来技術による読出し基板の製作工程例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ガス放射線検出器
10 ドリフト電極
20 気体電子増幅部
30 読出し基板
50 読出し電極
51 絶縁物
52 フレキシブル基板
53~56 コネクタ
58 基板
61 絶縁物
63~66 コネクタ
70 枠体
80 除電手段
92 フレキシブル基板
A1j 電子回路
A2k 電子回路
A3m 電子回路
ST1j 第1の電極素子
ST2k 第2の電極素子
ST3m 第3の電極素子
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図7】
5
【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図6】
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【図10】
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