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明細書 :カラーマーキング方法とカラーマークが形成された糖衣製品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5280046号 (P5280046)
公開番号 特開2009-149539 (P2009-149539A)
登録日 平成25年5月31日(2013.5.31)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
公開日 平成21年7月9日(2009.7.9)
発明の名称または考案の名称 カラーマーキング方法とカラーマークが形成された糖衣製品
国際特許分類 A61K   9/44        (2006.01)
A23G   3/34        (2006.01)
B41M   5/26        (2006.01)
FI A61K 9/44
A23G 3/00 101
B41M 5/26 S
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2007-327159 (P2007-327159)
出願日 平成19年12月19日(2007.12.19)
審査請求日 平成22年12月20日(2010.12.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】池野 順一
個別代理人の代理人 【識別番号】100100918、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 公治
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
審査官 【審査官】野田 定文
参考文献・文献 特開2002-370457(JP,A)
特開平04-344285(JP,A)
特開2003-175672(JP,A)
特開2002-292754(JP,A)
特開2003-208103(JP,A)
特開2007-237221(JP,A)
特開2006-198634(JP,A)
特開2004-351513(JP,A)
特開2008-000996(JP,A)
国際公開第2006/126561(WO,A1)
特開平04-122688(JP,A)
調査した分野 B41M 5/26
A61K 9/44
A61J 3/06
A23G 3/34
特許請求の範囲 【請求項1】
色の異なる複数の糖衣層の積層が形成されたマーキング対象物にフェムト秒レーザまたはピコ秒レーザを照射して、前記積層の中の選択した糖衣層の色が露出した1または複数の窪みを形成することを特徴とするカラーマーキング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーマーキング方法であって、マーキング対象物に形成する前記積層に、三原色の各色の糖衣層を含め、前記窪みから露出する三原色の組合せによって各種の色のカラーマークを形成することを特徴とするカラーマーキング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーマーキング方法であって、前記窪みに対する前記フェムト秒レーザまたはピコ秒レーザの照射回数を制御して、前記窪みから露出する色を選択することを特徴とするカラーマーキング方法。
【請求項4】
色の異なる複数の糖衣層の積層で被覆され、前記積層にフェムト秒レーザまたはピコ秒レーザを照射して形成された1または複数の窪みを有し、前記窪みから露出するいずれかの前記糖衣層の色によってカラーマークが構成されていることを特徴とするカラーマーク付き錠剤。
【請求項5】
前記積層に三原色の各色の糖衣層が含まれており、前記窪みから露出する三原色の組合せにより前記カラーマークの色が設定されていることを特徴とする請求項に記載のカラーマーク付き錠剤。
【請求項6】
色の異なる複数の糖衣層の積層で被覆され、前記積層にフェムト秒レーザまたはピコ秒レーザを照射して形成された1または複数の窪みを有し、前記窪みから露出するいずれかの前記糖衣層の色によってカラーマークが構成されていることを特徴とするカラーマーク付き糖衣菓子。
【請求項7】
前記積層に三原色の各色の糖衣層が含まれており、前記窪みから露出する三原色の組合せにより前記カラーマークの色が設定されていることを特徴とする請求項に記載のカラーマーク付き糖衣菓子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング対象物にカラーマークを形成する方法と、カラーマークを付した錠剤及び糖衣菓子に関し、特に、種々の色のマークを付与することで、他の商品との差別化を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
レーザを用いて錠剤や菓子などに直接、商品名や商標等の識別情報を画くことは、従来から行われている。
例えば、下記特許文献1には、カプセル製剤や錠剤、糖衣錠、飲食用粒状物などに対してレーザを照射し、文字や数字、識別コードなどを刻印(溝形成)することが記載されている。
また、下記特許文献2には、レーザの照射で変色する物質を錠剤や食品、菓子などにコーティングし、レーザでロット番号や品質保証期限などをモノクロで画く方法が開示されている。

【特許文献1】特開2003-144063号公報
【特許文献2】特開2004-524188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
商品への識別情報のマーキングは、他の商品との差別化を可能にする。特に、その識別情報の形成に高度な技術とノウハウが必要である場合は、他の人が、その識別情報を真似ることができないため、セキュリティーマークとしての機能を持つことができる。
近年、医薬品の偽物がアジア諸国で氾濫し、偽造防止策が求められているが、レーザで識別情報を刻印したり、モノクロのマークを形成したりすることは、現在では容易に真似できるため、錠剤にそれらの加工を施しても、偽造防止の効果は期待できない。
【0004】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、他の商品との差別化が可能であり、また、セキュリティーマークとしても使用することができるカラーマークの形成方法を提供し、また、このカラーマークが付された錠剤や糖衣菓子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカラーマーキング方法は、色の異なる複数の糖衣層の積層が形成されたマーキング対象物にフェムト秒レーザまたはピコ秒レーザを照射して、前記積層の中の選択した糖衣層の色が露出した1または複数の窪みを形成することを特徴とする。
フェムト秒レーザやピコ秒レーザは、1パルスの照射時間が極めて短いため、レーザ集光位置以外に熱的影響を与えない加工(非熱加工)が可能である。この非熱加工により、糖衣層の積層に形成される窪みの深さ(加工深さ)をサブミクロン(10000分の1mm)単位で制御することができ、窪みから所望の糖衣層の色を露出させることができる。
【0006】
また、本発明のカラーマーキング方法では、マーキング対象物に形成する前記積層に、三原色の各色の糖衣層を含め、前記窪みから露出する三原色の組合せによって各種の色のカラーマークを形成することを特徴とする。
この方法では、三原色の小さなドットの寄せ集めで各種の色を表示するカラー印刷と同じ要領で、フルカラーのカラーマークを形成することができる。
【0007】
また、本発明のカラーマーキング方法では、前記窪みに対する前記フェムト秒レーザまたはピコ秒レーザの照射回数を制御して、前記窪みから露出する色を選択する。
糖衣層の積層に対する加工深さは、フェムト秒レーザまたはピコ秒レーザの照射回数によって変わる。従って、窪みから露出する色は、フェムト秒レーザまたはピコ秒レーザの照射回数を制御して変えることができる。
【0009】
また、本発明のカラーマーク付き錠剤は、色の異なる複数の糖衣層の積層で被覆され、前記積層にフェムト秒レーザまたはピコ秒レーザを照射して形成された1または複数の窪みを有し、前記窪みから露出するいずれかの前記糖衣層の色によってカラーマークが構成されていることを特徴とする。
錠剤に形成したカラーマークは、セキュリティーマークとして利用することができ、錠剤の偽造を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明のカラーマーク付き錠剤は、前記積層に三原色の各色の糖衣層を含めることで、前記窪みから露出する三原色の組合せにより各種の色のカラーマークを設定することができる。
カラーマークのフルカラー化により、セキュリティはさらに高度化する。
【0011】
また、本発明のカラーマーク付き糖衣菓子は、色の異なる複数の糖衣層の積層で被覆され、前記積層にフェムト秒レーザまたはピコ秒レーザを照射して形成された1または複数の窪みを有し、前記窪みから露出するいずれかの前記糖衣層の色によってカラーマークが構成されていることを特徴とする。
糖衣菓子に形成したカラーマークは、他の菓子との違いを際立たせ、消費者に高級感を印象付けることができる。また、包装された多数の糖衣菓子の中から、このカラーマークが付された糖衣菓子を見つけた場合に何らかの特典を与える、と言った販売方法にも利用することができる。
【0012】
また、本発明のカラーマーク付き糖衣菓子は、前記積層に三原色の各色の糖衣層を含めることで、前記窪みから露出する三原色の組合せにより各種の色のカラーマークを設定することができる。
この糖衣菓子では、多くの色素を使わずに、三原色だけでフルカラーが表示できるため、口に入れても安全である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、錠剤や糖衣菓子などのマーキング対象物に対して、他の商品との差別化を図るカラーマークを形成することができる。このカラーマークは、セキュリティーマークとしても使用することが可能であり、これを錠剤などに付与して、偽造防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を基に説明する。
図1は、本発明の実施形態において使用したフェムト秒レーザを示し、図2は、糖衣の色が露出する窪みを模式的に示している。図3は、糖衣錠の糖衣層の断面を示している。図4は、糖衣に窪みを形成するためのレーザの走査軌跡を示し、図5は、窪みの加工深さとレーザ照射回数との関係を示している。図6は、窪みから露出する色のレーザ照射回数による変化を示し、図7は、レーザ照射で形成された窪みの断面を示している。また、図8は、二色が露出した窪みを示し、図9及び図10は、多数の窪みによりカラーマークを構成する例を示している。
【0015】
図1に示すように、フェムト秒レーザは、パルス幅200fs(フェムト秒)のレーザ光を繰り返し出力するレーザ出力装置10と、λ/2板11と、入射光が同一光路を通って反射するのを防止するGlanレーザープリズム12と、光量を調節するNDフィルタ13と、シャッター14と、ミラー15、16と、撮影用のCCDカメラ19と、カメラ位置に焦点を合わせる結像レンズ18と、可視光のBRG成分を分岐するディクロイックミラー17と、レーザを集光する集光レンズ20と、マーキング対象物である糖衣錠30を載置した状態でX、Y、Z方向に移動できる自動3軸ステージ21と、シャッター14及び自動3軸ステージ21を制御するコントローラ22とを備えている。レーザ出力装置10は、繰り返し周波数1kHzでレーザ光を繰り返し出力する。
【0016】
マーキング対象物の糖衣錠30は、図2(a)に示すように、中身31の周囲が、色の異なる複数の糖衣層32、33、34、35で被覆されている。
各糖衣層の色は、図3に示すように、中身31に近い側から、黄糖衣32、赤糖衣33、青糖衣34及び黒糖衣35に設定している。これらの色は、カラー印刷で使われる(三原色+黒)の色セットと同じである。なお、これらの各糖衣層には、それぞれの色を呈する着色料が含まれている。また、糖衣錠30の最外面は、湿気に耐えるように、透明のコートで被覆されている。
この四色の糖衣層から成る積層に対して、図2(b)に示すように、フェムト秒レーザを照射して微細な窪み36、37、38を形成する。
【0017】
非熱加工が可能なフェムト秒レーザは、照射位置の糖衣層を除去する際に、その周囲に対して熱影響を与えない。そのため、窪みの壁面に、所謂熱ダレが発生せず、窪みの底が画然と露出し、底にある糖衣層の色がはっきりと現れる。
この窪みを0.5mm×0.5mmの大きさに設定するため、集光レンズ20でフェムト秒レーザのスポット径を10μm以上に調整し、図4に示すように、自動3軸ステージ21の相対移動を制御して、0.5mm×0.5mmの領域を10μmピッチでレーザ走査した。従って、この領域は、全てレーザ光で照射されることになる。このときの走査速度は1mm/秒に設定した。また、レーザ出力は10~40mWの範囲内で変更し、照射回数(0.5mm×0.5mmの領域全てをレーザ光が走査した回数)は、最大5回まで実施した。
【0018】
図5は、レーザ照射回数と窪みの深さ(加工深さ)との関係について測定した結果を示している。ここでは、レーザ出力の大きさを10mW、20mW、30mW及び40mWに設定して測定した。
レーザ出力を20mWに設定した場合、糖衣層の積層への1回の照射(照射回数:1)で黒の糖衣層35が除去され、青の糖衣層34が露出した。この状態を図2(b)で窪み36として示し、また、実際に形成された窪みを図6(a)に示している。
また、2回の照射(照射回数:2)で青の糖衣層34が除去され、赤色の糖衣層33が露出した。この状態を図2(b)で窪み37として示し、また、実際の窪みを図6(b)に示している。
【0019】
また、3回の照射(照射回数:3)で赤色の糖衣層33が除去され、黄色の糖衣層32が露出した。この状態を図2(b)で窪み38として示し、また、実際の窪みを図6(c)に示している。
4回目以降の照射では、加工深さが糖衣層の積層よりも深くなり、中身31が掘れてしまった。
図5のグラフからは、レーザの加工深さが中身31に達しない範囲では、レーザ出力が大きい程、加工深さが深く、また、照射回数が増す程、加工深さが深くなる傾向が見て取れる。
また、図7は、糖衣層の積層にフェムト秒レーザを照射して形成した窪み39の断面を示している。この図には、窪み39の中に、飛散しきれなかった糖衣40が写っているものの、窪み39の側壁は、略垂直に成形されていることが見て取れる。
【0020】
このように、フェムト秒レーザの出力や照射回数を制御することで、糖衣層の積層に対する加工深さをサブミクロン単位で制御することができ、この制御により、窪みの底に露出する糖衣層の色を任意に選択することができる。
図8は、0.5mm×0.5mmの領域の中に、青糖衣34と、赤糖衣33とを露出させた窪み39を示している。この窪み39を2次元的に多数並べると、人間の目には、カラー印刷の場合と同様に、三原色の赤と青とが混合された色として映る。また、この赤と青の面積比を変えると、混合色は変化する。
【0021】
図9は、こうした多色が露出する窪み39の配列で、カラーマーク「A」の文字を構成する例を示している。
糖衣層の積層は、三原色の各色の糖衣を含んでいるから、露出させる色の組合せや、その面積比を変えることでフルカラーのカラーマークを形成することが可能である。
なお、窪みの深さが増す程、窪みの底に露出する色は見にくくなるが、ここでは、三原色の糖衣を、目立つ色の黄色を最下層にして、次に目立つ赤をその上に重ね、さらに、青、黒の順に重ねているため、どの三原色もはっきりと見ることができる。
【0022】
また、図10に示すように、カラー印刷のドットと同様に、三原色の単一の色が露出する小面積の窪み39を多数形成し、その色の組合せや、窪み39の面積を変えることでフルカラーのカラーマークを形成することも可能である。
マークの図形は、適宜設定することができ、糖衣錠の製造月やロッド番号、錠剤の種別、製造場所等をカラー文字やカラー数字で表示したり、色付きのロゴマークを形成したりすることができる。また、1または複数の窪みのみを形成し、それらの色や、色の組合せで、製造月やロッド番号、錠剤の種別、製造場所等の識別情報を表すこともできる。
【0023】
こうしたフルカラーによる識別情報は、高度な技術やノウハウを持たない諸国では真似することができないから、セキュリティーマークとしての利用が可能であり、錠剤の偽造を防ぐ手段に成り得る。
また、この錠剤は、三原色の糖衣を用いてフルカラーを表示しているため、多数の着色剤を使う必要がなく、人体に対する安全性が高い。
【0024】
また、このカラーマークによる識別情報は、糖衣菓子を他社製品から差別化するためにも利用することができる。
この方法でカラーマークが付された糖衣菓子は、消費者に高級感を印象付けることができ、販売の促進が期待できる。
また、包装された多数の糖衣菓子の中に、この識別情報が付された糖衣菓子を幾つか混ぜて、カラーマーク付き糖衣菓子を発見する興味を消費者に与えたり、あるいは、カラーマーク付の糖衣菓子を見つけた消費者に特典を与えたりする販売戦略によって販売の促進を図ることも可能である。
【0025】
いずれにしろ、このカラーマーキング方法は、マーキング対象物に非接触でカラーマークを形成することができるため、衛生的である。また、糖衣の三原色を利用してフルカラーを表示しているため、多数の着色料を使う必要がなく、安全性が高い。
なお、ここでは、カラーマークの形成にフェムト秒レーザを使用したが、フェムト秒レーザとともに超短パルスレーザに分類されるピコ秒レーザを用いても良い。ただし、通常の汎用レーザを使用すると、糖衣が溶けたり焦げたりするため、カラーマークの微細加工はできない。
また、マーキング対象物が経口しない製品であるときは、糖衣層に代えて、他の有機物の層を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、医薬品や食品など、各種の製品を製造する分野において、その製品に直接、識別情報を付与する場合に、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態において使用したフェムト秒レーザの構成を示す図
【図2】本発明の実施形態の方法で色が露出した窪みを形成した糖衣錠を示す図
【図3】本発明の実施形態における糖衣錠の糖衣の色変化を示す図
【図4】本発明の実施形態の方法で窪みを形成する際のレーザの走査軌跡を示す図
【図5】本発明の実施形態の方法におけるレーザ照射と加工深さとの関係を示す図
【図6】本発明の実施形態の方法で形成された窪みの色を示す図
【図7】本発明の実施形態の方法で形成された窪みの断面を示す図
【図8】本発明の実施形態の方法で形成された二色が露出した窪みを示す図
【図9】本発明の実施形態の方法で形成された多色の窪みの集合から成るカラーマークを示す図
【図10】本発明の実施形態の方法で形成された単色の窪みの集合から成るカラーマークを示す図
【符号の説明】
【0028】
10 レーザ出力装置
11 λ/2板
12 Glanレーザープリズム
13 NDフィルタ
14 シャッター
15 ミラー
16 ミラー
17 ディクロイックミラー
18 結像レンズ
19 CCDカメラ
20 集光レンズ
21 自動3軸ステージ
22 コントローラ
30 糖衣錠
31 中身
32 黄糖衣
33 赤糖衣
34 青糖衣
35 黒糖衣
36 窪み
37 窪み
38 窪み
39 窪み
40 飛散しきれなかった糖衣
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9