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明細書 :等価容量型アクチュエータの駆動装置及び駆動方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5047153号 (P5047153)
公開番号 特開2010-158128 (P2010-158128A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月10日(2012.10.10)
公開日 平成22年7月15日(2010.7.15)
発明の名称または考案の名称 等価容量型アクチュエータの駆動装置及び駆動方法
国際特許分類 H02N   1/00        (2006.01)
FI H02N 1/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 20
出願番号 特願2008-335598 (P2008-335598)
出願日 平成20年12月28日(2008.12.28)
審査請求日 平成21年1月8日(2009.1.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】水野 毅
個別代理人の代理人 【識別番号】100100918、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 公治
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
審査官 【審査官】尾家 英樹
参考文献・文献 国際公開第2006/082807(WO,A1)
特開2006-034020(JP,A)
特開昭64-015989(JP,A)
特開平05-022960(JP,A)
特開昭63-204673(JP,A)
調査した分野 H02N 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
等価容量型アクチュエータと、
前記等価容量型アクチュエータに直列接続した可変キャパシタと、
直列接続した前記等価容量型アクチュエータ及び可変キャパシタの両端に電圧を印加する定電圧源と、
前記等価容量型アクチュエータの変位量を制御するために、前記可変キャパシタの静電容量を変えて前記等価容量型アクチュエータの印加電圧を調整する制御手段と、を備える等価容量型アクチュエータの駆動装置であって、
前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧であって、前記等価容量型アクチュエータの両端の電位差に相当する電圧前記可変キャパシタの静電容量とから前記等価容量型アクチュエータの変位量を推定する推定手段を備え
前記制御手段が、前記推定手段の推定結果に基づいて前記可変キャパシタの静電容量を制御して、前記等価容量型アクチュエータへの印加電圧を調整することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の等価容量型アクチュエータの駆動装置であって、前記制御手段が、前記推定手段を兼ねることを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の等価容量型アクチュエータの駆動装置であって、前記定電圧源が、直流高電圧を出力する直流定電圧源と、前記直流高電圧に高周波の交流電圧を重畳する交流電圧源とから成り、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧を扱い易い低電圧に変換して前記推定手段に出力する電圧変換手段を有することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
請求項2に記載の等価容量型アクチュエータの駆動装置であって、前記定電圧源が、直流高電圧を出力する直流定電圧源と、前記直流高電圧に高周波の交流電圧を重畳する交流電圧源とから成り、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧を扱い易い低電圧に変換して前記制御手段に出力する電圧変換手段を有することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の等価容量型アクチュエータの駆動装置であって、前記電圧変換手段が、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧から高周波成分を取出すハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタが取出した高周波成分を検波して出力する検波回路とを備えることを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置であって、前記等価容量型アクチュエータが静電アクチュエータであり、前記推定手段が、前記静電アクチュエータの変位量を推定することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置であって、前記等価容量型アクチュエータが圧電アクチュエータであり、前記推定手段が、前記圧電アクチュエータの変位量を推定することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動装置。
【請求項8】
等価容量型アクチュエータに可変キャパシタを直列接続し、
直列接続した前記等価容量型アクチュエータ及び可変キャパシタの両端に定電圧を印加し、
前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧であって、前記等価容量型アクチュエータの両端の電位差に相当する電圧前記可変キャパシタの静電容量とから前記等価容量型アクチュエータの変位量を推定し、
推定結果に基づいて前記可変キャパシタの静電容量を制御して前記等価容量型アクチュエータへの印加電圧を調整することにより前記等価容量型アクチュエータの変位量を制御することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動方法。
【請求項9】
等価容量型アクチュエータに可変キャパシタを直列接続し、
直列接続した前記等価容量型アクチュエータ及び可変キャパシタの両端に高周波の交流電圧を重畳した定電圧を印加し、
前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧であって、前記等価容量型アクチュエータの両端の電位差に相当する電圧を扱い易い低電圧に変換し、
前記低電圧と前記可変キャパシタの静電容量とから前記等価容量型アクチュエータの変位量を推定し、
推定結果に基づいて前記可変キャパシタの静電容量を制御して前記等価容量型アクチュエータへの印加電圧を調整することにより前記等価容量型アクチュエータの変位量を制御することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動方法。
【請求項10】
請求項9に記載の等価容量型アクチュエータの駆動方法であって、前記低電圧を得るために、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧の高周波成分をハイパスフィルタで取出し、前記ハイパスフィルタで取出した高周波成分を検波回路で検波することを特徴とする等価容量型アクチュエータの駆動方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静電力を利用する静電アクチュエータや逆圧電効果を利用する圧電アクチュエータ等の駆動装置及び駆動方法に関し、特に、これらのアクチュエータの駆動制御を低コストで実現するものである。
【背景技術】
【0002】
静電アクチュエータは、従来から、静電力を利用して物体を浮上させる静電浮上装置や静電浮上搬送装置などに用いられている。これらの装置は、対象物を汚さずに非接触で保持・移送することができ、クリーンルームでのシリコンウエハやアルミディスクの保持・移送などに適している。また、静電アクチュエータは、構造が簡単で、小型化するほど重量当たりの出力向上が期待できるため、マイクロマシーン用アクチュエータとしての利用も注目されている。
【0003】
また、圧電アクチュエータは、電界を加えると伸び縮みする圧電素子の性質を利用したアクチュエータであり、物体の精密位置決めなどに使用されている。圧電素子(電歪素子とも呼ばれる。)は、印加電圧に対して素早く応答し、高精度に変位する。圧電アクチュエータは、この圧電素子の高速応答、高精度変位及び高分解能の性質を利用して、半導体製造装置の微細位置制御や高速プリンタの駆動源等に使用されており、また、マイクロ・メカトロニクスのキーデバイスとしても注目されている。
【0004】
しかし、静電力は、磁気力に比べて単位面積当たりの利用可能な力の上限が桁違いに小さいため、静電力を用いて物体の非接触浮上等を行う場合、キロボルトオーダの高電圧を電極に印加する必要があり、浮上物体の安定化や搬送駆動のために、その電圧を素早く変化させる必要がある。
また、圧電素子は、全長の1/1000程度の歪みを生じさせるのに1000V/mm程度の電界の印加を必要とし、大きな変位が得られるように電極で挟んだ圧電層を複数積層した積層型圧電素子では、キロボルトオーダの高電圧を印加する必要があり、その変位を適応的に制御するために、印加した高電圧を素早く変化させる必要がある。
こうした高電圧の変化を可能にする高速応答性能を備えた高電圧増幅器は、大掛かりで高コストである。
【0005】
静電アクチュエータや圧電アクチュエータは、電気回路的にキャパシタと等価なものとして扱うことができ、等価容量型アクチュエータと呼ばれているが、本発明者は、先に、この等価容量型アクチュエータを、高電圧増幅器を用いずに、低コストで駆動することができる駆動装置を提案している(下記特許文献1)。
この等価容量型アクチュエータの駆動装置は、図13の等価回路に示すように、等価容量型アクチュエータ120に直列接続した可変キャパシタ130と、直列接続した等価容量型アクチュエータ120及び可変キャパシタ130の両端に一定の高電圧を印加する定電圧源110とを備えており、可変キャパシタ130の静電容量を変えることで、等価容量型アクチュエータ120への印加電圧を制御している。
【0006】
この場合、定電圧源110の一定の高電圧をE、可変キャパシタ130の静電容量をCv、等価容量型アクチュエータ120の静電容量をCa、等価容量型アクチュエータ120の両端の電位差をVaとすると、Vaは、(数1)に示すように、
a={Cv/(Cv+Ca)}E (数1)
となる。そのため、可変キャパシタ130の静電容量Cvを変えることで、等価容量型アクチュエータ120の両端の電位差Vaを変えることができる。
この駆動装置に用いる定電圧源110は、一定の高電圧を発生するものであれば良く、高電圧増幅器に比べて極めて低コストで入手することができる。
【0007】
図14は、この駆動装置を用いた静電浮上装置を示しており、この装置では、浮上体123を安定的に浮上させるため、静電アクチュエータ120が4対の電極121、122を具備している。
図15は、この静電アクチュエータ120における電極121、122の表示を1対に省略した静電浮上装置を模式的に示している。
【0008】
この装置は、浮上体123を静電力で浮上させる静電アクチュエータ120の電極121、122と、電極122と浮上体123との間隔を検出するギャップセンサ140と、可変キャパシタ130を構成する固定電極132及び可動電極131と、可動電極131を可動するボイスコイルモータ(VCM)133と、ギャップセンサ140の検出結果に基づいてVCM133を制御するコントローラ150と、一定の高電圧を発生する定電圧源110とを備えており、定電圧源110は、直列接続した静電アクチュエータ120及び可変キャパシタ130の両端に一定の高電圧を印加している。
この装置では、静電アクチュエータ120の電極122と浮上体123との間隔が常にギャップセンサ140で検出され、検出結果がコントローラ150に送られる。
コントローラ150は、この間隔が目標値と一致するようにVCM133を駆動して、固定電極132に対する可動電極131の距離を変え、可変キャパシタ130の静電容量Cvを調整する。そのため、静電アクチュエータ120の電極121、122に印加される電圧Vaは、(数1)により変化し、浮上体123を浮上させる静電力が変わり、電極121、122及び浮上体123間の間隔と目標値とのずれが修正される。

【特許文献1】WO2006/082807 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この装置は、静電アクチュエータ120の状態を検知するセンサ140を必要としているため、コストが掛かり、また、このセンサ140の取付けや配線作業に多大の負担を伴う。
【0010】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、センサ無しで等価容量型アクチュエータの駆動が可能な駆動装置を提供し、また、その駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明、等価容量型アクチュエータと、前記等価容量型アクチュエータに直列接続した可変キャパシタと、直列接続した前記等価容量型アクチュエータ及び可変キャパシタの両端に電圧を印加する定電圧源と、前記等価容量型アクチュエータの変位量を制御するために、前記可変キャパシタの静電容量を変えて前記等価容量型アクチュエータの印加電圧を調整する制御手段と、を備える等価容量型アクチュエータの駆動装置であって、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧であって、前記等価容量型アクチュエータの両端の電位差に相当する電圧前記可変キャパシタの静電容量とから前記等価容量型アクチュエータの変位量を推定する推定手段を備え前記制御手段が、前記推定手段の推定結果に基づいて前記可変キャパシタの静電容量を制御して、前記等価容量型アクチュエータへの印加電圧を調整することを特徴とする。
この駆動装置は、等価容量型アクチュエータと可変キャパシタとの接続箇所における電圧と、可変キャパシタの静電容量とから等価容量型アクチュエータの状態を推定しているため、等価容量型アクチュエータの状態を検知するためのセンサを必要としない。
【0012】
また、本発明の駆動装置では、前記制御手段が、前記推定手段を兼ねることができる。
制御手段は、可変キャパシタを自ら制御しているため、その静電容量が既知であり、等価容量型アクチュエータと可変キャパシタとの接続箇所における電圧を知ることで、等価容量型アクチュエータの状態を推定することができる。
【0013】
また、本発明の駆動装置では、前記定電圧源を、直流高電圧を出力する直流定電圧源と、前記直流高電圧に高周波の交流電圧を重畳する交流電圧源とで構成し、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧を扱い易い低電圧に変換して前記推定手段に出力する電圧変換手段を備えるように構成することができる。
この駆動装置では、等価容量型アクチュエータの状態を推定する際に、高電圧を扱う必要が無いため、処理が容易である。
【0014】
また、本発明の駆動装置では、前記定電圧源を、直流高電圧を出力する直流定電圧源と、前記直流高電圧に高周波の交流電圧を重畳する交流電圧源とで構成し、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧を扱い易い低電圧に変換して前記制御手段に出力する電圧変換手段を備えるように構成することができる。
この駆動装置では、等価容量型アクチュエータの状態を推定し、且つ、可変キャパシタの静電容量を制御する制御手段に対して低電圧が入力するため、制御手段における処理が容易となる。
【0015】
また、本発明の駆動装置では、前記電圧変換手段を、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧から高周波成分を取出すハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタが取出した高周波成分を検波して出力する検波回路とで構成することができる。
高周波が重畳された高電圧は、ハイパスフィルタ及び検波回路により、扱い易い電圧に変換される。
【0016】
また、本発明の駆動装置では、前記等価容量型アクチュエータが静電アクチュエータの場合、前記推定手段は、前記静電アクチュエータの変位量を推定する。
制御手段は、静電アクチュエータの変位量が目標値と一致するように可変キャパシタの静電容量を制御する。
【0017】
また、本発明の駆動装置では、前記等価容量型アクチュエータが圧電アクチュエータの場合、前記推定手段は、前記圧電アクチュエータの変位量を推定する。
制御手段は、圧電アクチュエータの変位量が目標値と一致するように可変キャパシタの静電容量を制御する。
【0018】
また、本発明の等価容量型アクチュエータの駆動方法は、等価容量型アクチュエータに可変キャパシタを直列接続し、直列接続した前記等価容量型アクチュエータ及び可変キャパシタの両端に定電圧を印加し、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧であって、前記等価容量型アクチュエータの両端の電位差に相当する電圧前記可変キャパシタの静電容量とから前記等価容量型アクチュエータの変位量を推定し、推定結果に基づいて前記可変キャパシタの静電容量を制御して前記等価容量型アクチュエータへの印加電圧を調整することにより前記等価容量型アクチュエータの変位量を制御することを特徴とする。
この駆動方法では、等価容量型アクチュエータと可変キャパシタとが直列接続された接続箇所の電圧と可変キャパシタの静電容量とから等価容量型アクチュエータの状態を推定しているため、等価容量型アクチュエータの状態を検知するセンサが必要でない。
【0019】
また、本発明の等価容量型アクチュエータの駆動方法は、等価容量型アクチュエータに可変キャパシタを直列接続し、直列接続した前記等価容量型アクチュエータ及び可変キャパシタの両端に高周波の交流電圧を重畳した定電圧を印加し、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧であって、前記等価容量型アクチュエータの両端の電位差に相当する電圧を扱い易い低電圧に変換し、前記低電圧と前記可変キャパシタの静電容量とから前記等価容量型アクチュエータの変位量を推定し、推定結果に基づいて前記可変キャパシタの静電容量を制御して前記等価容量型アクチュエータへの印加電圧を調整することにより前記等価容量型アクチュエータの変位量を制御することを特徴とする。
この駆動方法では、等価容量型アクチュエータの状態を推定する際に、高電圧を扱う必要が無いため、処理が容易である。
【0020】
また、本発明の駆動方法では、前記低電圧を得るために、前記等価容量型アクチュエータと前記可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の電圧の高周波成分をハイパスフィルタで取出し、前記ハイパスフィルタで取出した高周波成分を検波回路で検波することが好ましい。
この駆動方法では、等価容量型アクチュエータと可変キャパシタとを直列接続した接続箇所の高電圧が、ハイパスフィルタ及び検波回路により扱い易い電圧に変換されるため、等価容量型アクチュエータの状態の検知が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、センサ無しで等価容量型アクチュエータを駆動することが可能となり、コストの低減を図ることができる。また、センサの取付けスペースや配線用スペースが不要になり、取付け作業や配線作業の作業負担からも解放される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る静電浮上装置の駆動機構の等価回路、図2は、この駆動機構を備えた静電浮上装置、図3は、静電アクチュエータの電極を1対だけ表示した静電浮上装置の模式図である。
この静電浮上装置は、図1の等価回路に示すように、静電アクチュエータ20と、静電アクチュエータ20に直列接続した可変キャパシタ30と、直列接続した静電アクチュエータ20及び可変キャパシタ30の両端に一定の直流高電圧を印加する定電圧源10と、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30との接続箇所における電圧と可変キャパシタ30の静電容量とから静電アクチュエータ20の状態を推定する推定手段60と、推定手段60の推定結果に基づいて可変キャパシタ30の静電容量を制御するコントローラ(制御手段)50とを有している。
この静電浮上装置は、図2に示すように、浮上体23を安定的に浮上させるため、静電アクチュエータ20が4対の電極21、22を具備しており、各電極対の各々に対して図1の等価回路が構成される。
【0023】
図3は、この静電アクチュエータ20における電極21、22の表示を1対に省略した静電浮上装置を示している。
この装置は、浮上体23を静電力で浮上させる静電アクチュエータ20の電極21、22と、可変キャパシタ30を構成する固定電極32及び可動電極31と、可動電極31を可動するボイスコイルモータ(VCM)33と、一定の高電圧を発生する定電圧源10と、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30との接続箇所における電圧と可変キャパシタ30の静電容量とから静電アクチュエータ20の変位量を推定する推定手段60と、推定手段60から入力する信号に基づいて可変キャパシタ30を制御するコントローラ50とを備えている。
定電圧源10は、静電アクチュエータ20の電極21と可変キャパシタ30の可動電極31との間に一定の高電圧を印加する。
また、コントローラ50は、推定手段60の推定結果に基づいてVCM33を駆動し、可変キャパシタ30の可動電極31を可動して固定電極32との距離を変え、可変キャパシタ30の静電容量Cvを制御する。
【0024】
静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30との接続箇所における電位は、図1の等価回路から明らかなように、静電アクチュエータ20の電極22と同電位であり、これは静電アクチュエータ20の接地された電極21と電極22との間の電位差Vaに相当し、(数1)の関係を有している。
一方、静電アクチュエータ20の静電容量をCa、誘電率(一定)をε0、電極面積(一定)をS、浮上体23と電極21、22とのエアーギャップをdaとすると、
a=ε0S/da (数2)
の関係を有している。そのため、(数1)及び(数2)から、
a=ε0SVa/{Cv(E-Va)} (数3)
となる。
【0025】
ここで、ε0、S、Eは一定であり、Cvは、コントローラ50がVCM33を駆動して設定した可変キャパシタ30の静電容量である。そのため、推定手段60は、可変キャパシタ30の静電容量Cvを知り、また、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30との接続箇所における電位Vaを知ることにより、浮上体23と電極21、22とのエアーギャップdaを推定することが可能になる。
推定手段60は、推定したエアーギャップdaをコントローラ50に出力し、コントローラ50は、このdaが目標値と一致するようにVCM33を駆動し、可変キャパシタ30の静電容量Cvを制御する。可変キャパシタ30の静電容量Cvが変わると、静電アクチュエータ20の電極21と電極22との間の電位差Vaが変化し、浮上体23と電極21、22とのエアーギャップdaが変化する。
【0026】
図4は、図3のVCM33に三角波信号を入力して可変キャパシタ30の可動電極31と固定電極32との距離dvを変えたときの可変キャパシタ30の静電容量Cvの変化(a)と、静電アクチュエータ20の浮上体23に作用する静電力Fの変化(b)とを示している。なお、ここでは、浮上体23と電極21、22との距離の変化を測定する代わりに、測定の容易さから、浮上体23と電極21、22との距離が変わらないように設定して、浮上体23に加わる力の変化を測定している。
図4から明らかなように、可変キャパシタ30の静電容量Cvを制御することにより、静電アクチュエータ20の浮上体23に作用する静電力Fを制御することができ、従って、浮上体23と電極21、22との距離を制御することができる。
【0027】
このように、この装置は、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30とを直列接続した接続箇所の電圧と、可変キャパシタ30の静電容量とに基づいて静電アクチュエータ20の変位量を推定しているため、静電アクチュエータ20の状態を検知するセンサを必要としない。
そのため、センサに要するコストを引き下げることができる。また、センサを使用しないから、センサの取付けや配線のためのスペースが不要であり、取付けや配線の作業負担からも解放される。
【0028】
なお、ここでは、説明の都合上、推定手段60を設けているが、コントローラは、自身が設定した可変キャパシタ30の静電容量Cvについて既知であるため、図5に示すように、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30との接続箇所における電位Vaをコントローラ52に直接入力して、浮上体23と電極21、22とのエアーギャップdaを推定する推定手段60の動作をコントローラ52自身が行うようにしても良い。
また、ここでは、可変キャパシタ20の電極間の距離を変えるためにVCM33を使用しているが、その他の可動手段を用いても良い。また、可変キャパシタの電極間の対向面積を変えることで可変キャパシタの静電容量を制御するようにしても良い。
【0029】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、圧電アクチュエータの駆動装置について説明する。
図6は、圧電アクチュエータを用いた位置決め装置の等価回路である。
この駆動装置は、図6に示すように、圧電アクチュエータ70と、圧電アクチュエータ70に直列接続した可変キャパシタ30と、直列接続した圧電アクチュエータ70及び可変キャパシタ30の両端に一定の直流高電圧を印加する定電圧源10と、圧電アクチュエータ70と可変キャパシタ30との接続箇所における電圧と可変キャパシタ30の静電容量とから圧電アクチュエータ70の状態を推定する推定手段62と、推定手段62の推定結果に基づいて可変キャパシタ30の静電容量を制御するコントローラ54とを有している。
【0030】
圧電アクチュエータ70に印加する電圧を増加させると、圧電アクチュエータ70は伸び、逆に、印加電圧を減少させると縮む。圧電アクチュエータ70の変位量(伸び・縮みの大きさ)は、単調増加または単調減少であるが、同じ電圧を印加しても増加時と減少時とでは変位量が異なる。これはヒステリシスまたは履歴現象と呼ばれており、圧電アクチュエータを使用する場合の大きな問題となっている。
通常の圧電アクチュエータの駆動方法では、レーザ測長器、静電容量型変位センサまたは歪みゲージで圧電アクチュエータの変位を検出し、フィードバックすることによってヒステリシスを低減している。
【0031】
一方、圧電アクチュエータ70の変位Daは、圧電アクチュエータ70への注入電荷Qaに対しては、ヒステリシスがなく、比例する。即ち、
a=Kaa (数4)
の関係がある。Kaは比例定数である。
図6の等価回路では、圧電アクチュエータ70への注入電荷Qaは、直列に接続した可変キャパシタンス30の電極に蓄えられる電荷量Qvと等しくなる。即ち、
a=Qv (数5)
の関係にある。
ここで、電荷量Qvは、
v=Cvv=Cv(E-Va) (数6)
と表される。(数4)~(数6)から、次式が得られる。
a=Kav(E-Va
vは、コントローラ54が設定した可変キャパシタ30の静電容量である。そのため、推定手段62は、Vaを知ることにより、このVaと可変キャパシタ30の静電容量Cvとに基づいて圧電アクチュエータ70の変位量Daを推定することが可能になる。
【0032】
推定手段62は、推定した変位量Daをコントローラ54に出力する。コントローラ54は、変位量Daが目標値と一致するようにVCM33を駆動して、可変キャパシタ30の静電容量Cvを制御する。可変キャパシタ30の静電容量Cvが変わると、圧電アクチュエータ70に印加される電圧Vaが変化し、変位量Daが目標値に一致する。
このように、この駆動装置は、ヒステリシスの影響を受けずに、圧電アクチュエータ70を高精度に駆動することが可能である。
【0033】
また、この駆動装置においても、第1の実施形態(図5)と同様、図7に示すように、コントローラ54が推定手段62を兼ねるように構成することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図1の駆動装置は、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30との接続箇所における電位Vaに基づいて静電アクチュエータ20の変位量を推定しているが、Vaは高電圧であるため、測定が難しい。第3の実施形態の駆動装置は、この点を改良している。
図8は、第3の実施形態に係る静電浮上装置の等価回路、図9は、静電アクチュエータの電極を1対だけ表示した静電浮上装置の模式図、図10は、図9の静電浮上装置の各箇所の信号波形を示す図である。
【0035】
図8に示すように、この装置は、静電アクチュエータ20、可変キャパシタ30、定電圧源10の他に、定電圧源10が発生する直流高電圧に高周波の交流電圧を重畳する交流電圧源11を備え、また、静電アクチュエータ20及び可変キャパシタ30の接続箇所の電圧から高周波成分を取出すハイパスフィルタ41と、ハイパスフィルタ41で取出された高周波成分を検波する検波回路42とから成る電圧変換手段40を備え、さらに、検波回路42から入力する信号に基づいて静電アクチュエータ20の変位量を推定する推定手段61、及び、推定手段61から入力する信号に基づいて可変キャパシタ30の静電容量を制御するコントローラ51を備えている。
【0036】
交流電圧源11は、定電圧源10が発生するキロボルトオーダの高電圧に対して、例えば30Vp-p、5kHzの交流電圧を重畳する。
ハイパスフィルタ41は、静電アクチュエータ20及び可変キャパシタ30の接続箇所の電圧の交流成分だけを通し、直流成分を含む低周波成分の通過を阻止する。
検波回路42は、ダイオード、コンデンサ、抵抗などを用いて構成され、ハイパスフィルタ41を通過した信号を検波する。
図9は、図3に対応するものであり、図3に比べて、交流電圧源11が追加され、さらに、推定手段61の前にハイパスフィルタ41及び検波回路42から成る電圧変換手段40が追加されている。
【0037】
図10に示すように、交流電圧源11は、30Vp-p、5kHzの交流電圧(a)を出力し、この交流電圧が、定電圧源10から発生される直流高電圧に重畳される。
静電アクチュエータ20において浮上体23の変位が(b)のように変動したとすると,電極21、22間の容量Caも変動するので,静電アクチュエータ20及び可変キャパシタ30の接続箇所における“交流電圧が重畳された高電圧”も同様に変動する。
ハイパスフィルタ41は、この静電アクチュエータ20及び可変キャパシタ30の接続箇所における電圧から高周波成分(c)を取出す。
検波回路42では、ダイオードなどを用いてハイパスフィルタ41の出力の+成分を抽出し、その波形をコンデンサなどを用いて平滑化する。そのため、検波回路42からは電圧(d)が出力される。
【0038】
推定手段61は、検波回路42の出力電圧(d)と可変キャパシタ30の静電容量Cvとから浮上体23と電極21、22とのエアーギャップdaを推定し、コントローラ51に出力する。コントローラ51は、推定手段61から入力する信号に基づいて可変キャパシタ30の静電容量を制御する。
このとき、推定手段61が推定に用いる検波回路42の出力電圧(d)は、30Vのレベルであり、ハイパスフィルタ41及び検波回路42により、扱い易い電圧に変換されている。
【0039】
なお、この場合も、第1の実施形態と同様に、コントローラは、自身が設定した可変キャパシタ30の静電容量Cvについて既知であるため、図11に示すように、静電アクチュエータ20及び可変キャパシタ30の接続箇所の電圧から高周波成分を取出すハイパスフィルタ41と、ハイパスフィルタ41で取出された高周波成分を検波する検波回路42とから成る電圧変換手段40を設けて、検波回路42の出力をコントローラ53に直接入力し、推定手段61の動作をコントローラ53自身が行うようにしても良い。
【0040】
図12は、静電アクチュエータ20における浮上体23の変位と検波回路42の出力電圧との関係を測定した結果を示している。図12の縦軸は検波回路42の出力電圧を示し、横軸は、静電アクチュエータ20の電極21、22と浮上体23とのギャップを示している。
【0041】
このように、この装置では、静電アクチュエータ20と可変キャパシタ30とを直列接続した接続箇所の高電圧が、ハイパスフィルタ41及び検波回路42により扱い易い電圧に変換されているため、静電アクチュエータ20の状態(浮上体23の変位)の検知が容易である。
ここでは、静電アクチュエータの駆動について説明したが、第2の実施形態に示す圧電アクチュエータの駆動装置にも適用できる。
【0042】
また、ここでは、高周波を重畳した高電圧を扱い易い低電圧に変換するためにハイパスフィルタ41及び検波回路42を用いているが、その他の変圧手段や整流手段を組み合わせて用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の等価容量型アクチュエータの駆動装置及び駆動方法は、低コスト、高電圧・大電流出力、高速応答性、等の有用性を備えており、半導体製造システム、極微小領域計測システム、超精密加工・組立システム、マイクロマシン等、幅広い分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る静電浮上装置の駆動機構の等価回路
【図2】本発明の第1の実施形態に係る静電浮上装置を示す図
【図3】図2の静電浮上装置における静電アクチュエータの電極を1対だけ表示した模式図
【図4】可変キャパシタの電極間距離dv及び静電容量Cv(a)と、静電アクチュエータの浮上体に作用する静電力(b)との関係を示す図
【図5】本発明の第1の実施形態に係る静電浮上装置の変形例を示す図
【図6】本発明の第2の実施形態に係る圧電位置決め装置の駆動機構の等価回路
【図7】本発明の第2の実施形態に係る圧電位置決め装置の変形例を示す図
【図8】本発明の第3の実施形態に係る静電浮上装置の駆動機構の等価回路
【図9】図8の静電アクチュエータの電極を1対だけ表示した模式図
【図10】図9の静電浮上装置の各箇所の信号波形を示す図
【図11】本発明の第3の実施形態に係る静電浮上装置の変形例を示す図
【図12】静電アクチュエータの変位と検波回路の出力電圧との関係を示す図
【図13】従来の等価容量型アクチュエータの駆動装置の等価回路
【図14】従来の静電浮上装置を示す図
【図15】図14の静電アクチュエータの電極を1対だけ表示した模式図
【符号の説明】
【0045】
10 定電圧源
11 交流電圧源
20 静電アクチュエータ
21 静電アクチュエータの電極
22 静電アクチュエータの電極
23 浮上体
30 可変キャパシタ
31 可変キャパシタの可動電極
32 可変キャパシタの固定電極
33 VCM
40 電圧変換手段
41 ハイパスフィルタ
42 検波回路
50 コントローラ(制御手段)
51 コントローラ
52 コントローラ
53 コントローラ
54 コントローラ
55 コントローラ
60 推定手段
61 推定手段
62 推定手段
70 圧電アクチュエータ
110 定電圧源
120 等価容量型アクチュエータ
121 静電アクチュエータの電極
122 静電アクチュエータの電極
123 浮上体
130 可変キャパシタ
131 可変キャパシタの可動電極
132 可変キャパシタの固定電極
133 ボイスコイルモータ(VCM)
140 ギャップセンサ
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図5】
2
【図13】
3
【図15】
4
【図2】
5
【図4】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図14】
14