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明細書 :内視鏡用局注剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4761921号 (P4761921)
公開番号 特開2007-075569 (P2007-075569A)
登録日 平成23年6月17日(2011.6.17)
発行日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
発明の名称または考案の名称 内視鏡用局注剤
国際特許分類 A61M   5/14        (2006.01)
A61B  19/00        (2006.01)
A61B   1/00        (2006.01)
FI A61M 5/14 B
A61B 19/00 502
A61B 1/00 334D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2005-300903 (P2005-300903)
出願日 平成17年9月13日(2005.9.13)
審査請求日 平成20年9月10日(2008.9.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
発明者または考案者 【氏名】山崎 雅弘
【氏名】久米 恵一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100121371、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 和人
審査官 【審査官】佐藤 智弥
参考文献・文献 特開2003-201257(JP,A)
調査した分野 A61B 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
内視鏡的粘膜下層剥離術又は内視鏡的粘膜切除術において粘膜下層に注入する溶液からなる内視鏡用局注剤であって、
前記溶液は、カルボキシメチルセルロースナトリウムの溶液で、且つ、針径21ゲージの内視鏡用穿刺注入針では粘膜下層に注入することができず、針径18ゲージもしくはこれより太い内視鏡用穿刺注入針により粘膜下層に注入することが可能な濃度に調製され、且つカルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度が1.5~3.5W/V%であることを特徴とする内視鏡用局注剤。
発明の詳細な説明
【発明の詳細な説明】
1 粘膜層
2 粘膜下層
3 筋層
4 内視鏡
5 病変
6 内視鏡用注射針もしくは穿刺注入針(a、b)
7 マーキング
8 生理食塩水
9 内視鏡用局注剤
10 高周波ナイフ
11 切開部
12 (把持)鉗子
【背景技術】
【0002】
近年、食道や胃を含む全消化管の早期癌に対して、開腹せずに内視鏡を用いて病変部を切除する内視鏡的粘膜切除術が行われている。切除を予定する部位の下層に生理食塩水等を注入して病変部を隆起させ、スネアー等によるループワイヤー式の切除処置具を用いて絞扼後、高周波等により通電切除する。この方法には、特許文献1-2に示すような内視鏡の先端に装着されるフードないしキャップに爪部を設け、これにループ状にスネアーを配して吸引切除する方法や、特許文献3に示すようなフードないしキャップの外周にスネアーのワイヤーループを係止させておく方式のもの等がある。
【0003】
また、特許文献4に示すように切除を予定する部位の下層に生理食塩水ではなく、高粘性物質のヒアルロン酸ナトリウムを用いることにより形成された隆起の持続維持が可能となり安定した状態での病変切除ができるようにした発明もある。
【0004】
さらに、平坦でかつ巨大な病変を切除するために、特許文献5-6に示すように切除を予定する部位の下層に膨張可能なバルーンを挿入して、これに流体を注入することにより鈍的に剥離して切除する発明がある。
【0005】

【特許文献1】 実開平6-75402号報
【0006】

【特許文献2】 特開2004-230139号報
【0007】

【特許文献3】 特開平9-66019号報
【0008】

【特許文献4】 特開2001-192336号報
【0009】

【特許文献5】 特開2005-7161号報
【0010】

【特許文献6】 特開2005-177135号報
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1-3の病変部をフードないしキャップ内への吸引による方法は、安全で容易な方法であるが、必ずしも予定する病変部の中心を吸引できるとは限らない点や、経口的に挿入する内視鏡の先端に装着するのでフードないしキャップの口径が制限され切除可能となる病変の大きさに限界を生じていた。少なくとも病変を分割することなく一括に切除する場合には、大きさに限界が生じた。つまり、切除した標本を病理学的に連続した切片にて評価して治癒しているか否かを最終的に判断する必要がある内視鏡的粘膜切除術において、治癒と判断できる病変の大きさに制限があった。
【課題を解決する手段】
【0012】
また、特許文献4では、高粘性物質のヒアルロン酸ナトリウムを用いることにより大きさに制限のない広範な病変の切除を可能にしたが、ヒアルロン酸ナトリウムにより膨張した病変部の下層・粘膜下層を高周波ナイフ等を用いて通電することにより、少しずつ剥離しなければならず、この内視鏡的に粘膜下層を剥離するためには、熟練を要する経内視鏡的な様々なトラクションを掛ける必要である。単に安定した隆起を形成するだけでは、内視鏡的粘膜切除術から新しく発展した内視鏡的粘膜下層剥離術の主要な技術的部分を安全・容易にすることに限界があった。一方、この特許文献4では濃度あるいは分子量が増大するにつれ粘度が高くなり、粘度が高すぎた場合、内視鏡用穿刺注入針からの注入が困難となる反面、粘度が低すぎれば粘膜隆起が不十分になり、平均分子量60-120万のヒアルロン酸ナトリウム溶液では、その濃度は0.2-1.0W/V%が望ましく、特に0.5%前後が最適を主旨とする記載もあり、汎用の内視鏡用穿刺注入針の使用のみによる限界も示されている。
【発明の効果】
【0013】
さらに、特許文献5-6では、内視鏡的粘膜切除術から新しく発展した内視鏡的粘膜下層剥離術を膨張可能なバルーンに流体を注入して鈍的に剥離することにより可能にしたが、バルーンのサイズに従って病変の大きさが制限され、且つバルーンの膨張による剥離では均質な剥離が難しく、剥離されていく部位が病変部位からずれてゆく場合が多い。剥離はされていくが予定した範囲を必ずしも剥離できるとは限らない。一方、病変の下層へのバルーンを挿入する挿入部の作成時に組織や病変を傷つける可能性も高く、予定した範囲を完全に剥離するためには、複数の挿入部を作る必要があり、さらにこの危険度が高くなる。
【符号の説明】
【0014】
本発明は前述した課題に対してなされたものであり、その目的とするところは従来の内視鏡的粘膜切除術では不可能であった大きな病変を一括切除するために発展した内視鏡的粘膜下層剥離術に関するものであり、同術を安全容易に実施するために粘膜下層へ注入する高粘性物質自体の容積により鈍的に剥離され内視鏡的切除が可能となるシステムを提供することにある。高粘性物質を注入すること自体が、隆起を形成させるだけでなく剥離までするための物質の組成とこれを注入するための内視鏡用穿刺注入針とこのシステムを可能にする工夫に関するものである。
【0015】
本発明は、内視鏡的粘膜下層剥離術の切除効率・手技の容易化・安全性を高めるために開発された薬剤の性状、その薬剤と薬剤を注入可能とする穿刺注入針の開発及びそれらを用いて施行する内視鏡的粘膜下層剥離術の手法、およびその薬剤注入をしやすくする工夫から構成される。


【0016】
本発明における薬剤は、病変の下層を剥離させる粘性物質および、その効果を一層高める成分として、止血剤ないし出血抑制のための血管収縮剤、マーキングのための色素を含有する。この中で必須の構成成分は、生体整合性を持つ高粘性物質もしくは親水性高分子、具体的にはカルボキシメチルセルロースもしくはカルメロース、その医薬的に許容される塩、およびその誘導体、類似体、複合体またはその部分単位を含む化合物である。内視鏡的粘膜下層剥離術において最も技術的に困難なのは、剥離操作にあり、危険度の高い部分でもある。現時点での剥離法の主流は、ITナイフ・フックナイフ・フレックスナイフ等の高周波ナイフによる通電切除で、たいへんな熟練を要する。ここに外科手術で通常行われている鈍的剥離の手法を取り入れることを考え、これまで切除を予定する部位の下層に生理食塩水等を注入し病変部を隆起させることに終始していた点に着目し、注入する薬剤のみによって鈍的剥離が完成されないか検討した。生理食塩水等のかわりに、カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルメロースナトリウムのような粘性の高い薬剤を注入して十分に隆起・突出させると、それだけで剥離も完成されることが分った。注入量を増量すれば、長径2cm以上の平坦型腫瘍の一括切除もが安全かつ確実に施行可能となり、取り残しの可能性も減少させられる。したがって、本発明は切除予定部位を隆起・突出させることのみで剥離が完成される、粘膜下に注入する薬剤とその薬剤を注入可能とする穿刺注入針の開発および、これを用いた独特な内視鏡的粘膜下層剥離術の技法を提供する。
【0017】
カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルメロースナトリウムは、膨張性下剤として一般臨床に用いられる商品名バルコーゼ(エーザイ株式会社)に代表されるように生体反応性や毒性を持たない有用な成分である。カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルメロースナトリウム溶液は、その濃度が増大するにしたがって粘度が高くなる。内視鏡的粘膜下層剥離術での使用にあたって優れた効果を示すため、その最適濃度をここに求めた。カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルメロースナトリウム溶液を例にとれば、その濃度は1.5~3.5W/V%が望ましく、特に2.5%前後が最適値である。
【0018】
一般に粘度が高すぎた場合、内視鏡用穿刺注入針からの注入が困難となる反面、粘度が低すぎれば粘膜下層の剥離が不十分となる。市販されている内視鏡用穿刺注入針の最大経は、21G(ゲージ)で、これを用いてカルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルメロースナトリウム溶液を注入したところ、注入可能な濃度は0.5%までで、この濃度では隆起するものの十分な剥離を得られなかった。18G(ゲージ)の穿刺注入針を試作し注入したところ、濃度2.5%溶液により十分な剥離が得られることが分った。18G(ゲージ)もしくはこれより太い内視鏡用穿刺注入針を用いることにより剥離が得られることが分った。
【0019】
病変切除時の出血をコントロールするために、少量の止血・血管収縮作用をもつ成分、例えばエピネフリンをこの薬剤に添加することが有用である。止血・血管収縮成分の最適使用量は、薬物の種類および使用する患者の疾病の状態等により変動するので限定しにくい。
【0020】
粘膜下に注入するこの薬剤に、医薬的に許容される色素成分、例えばインディゴカーマインのようなマーキングのための色素を添加することも有用である。本薬剤を着色することで、それが粘膜下に注入された範囲がよくわかるうえ、薬剤が確実に粘膜下層に注入されていることも容易に視認することが可能となり、内視鏡的粘膜下層剥離術における操作性と安全性の向上をきたすものである。
【0021】
本発明の薬剤の構成成分の一部またはすべてを注射器内に充填した形状で、あるいは使用直前にこれらを希釈・混合できるようなパッケージとして供給することで、内視鏡的粘膜下層剥離術の施行時に内視鏡注射針をこの注射器の先端部に装着して直ちに注射が可能となる注射容器入り注射剤が提供される。色素成分、止血・血管収縮剤などの含有する場合、これらの構成成分がカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液と混合して容器内に充填保存することで化学的安定性に支障が生じうる場合には、該当する成分を施術直前に混合できるようなかたちで供給することで利便性を損なわずに済む。
【0022】
18G(ゲージ)もしくはこれより太い内視鏡用穿刺注入針は、内視鏡本体の鉗子孔に挿入不可能なことも考えられる。この場合、内視鏡本体に外付けのチャンネルを取り付け、そのチャンネルに挿入することにより使用可能とする。また、その外付けチャンネルには、必要に応じた先端フードを接着することにより、より適切な視野による内視鏡的粘膜下層剥離術を実施できることも可能とする。
【実施例】
【0023】
本発明による高粘性物質を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術の実施例。
1)内視鏡観察下に腫瘍などの粘膜病変(5)を確認し、病変部位の周囲に切開予定線を想定し高周波電流(10)などを用いてマーク(7)する(図1)。
2)次に、病変部位の中心(病理学的治癒診断に影響与えず、かつ中心に近い部位)から23G(ゲージ)程度の市販されている内視鏡用穿刺注入針(6a)を用いて生理食塩水3ミリリットル程度(8)を粘膜下に注入して、製剤(9)を確実に注入できるスペースが作られたことを粘膜が挙上したことにより確認する(図2)。
3)引続き同じ穿刺部に、18G(ゲージ)もしくはこれより太い内視鏡用穿刺注入針(6b)を用いて本発明の製剤(9)を粘膜下に注入し、病変部位(5)を含めた前述のマーキング部周囲まで隆起させる(図3)。
4)病変部位(5)の全周にわたって前述のマーキング(7)に沿って高周波ナイフ(10)を用いて切開(11)する(図4-5)。
5)把持鉗子(12)により、病変(5)をつかみあげて(図6)剥離を確認する(図7)。
本発明の製剤を粘膜下に注入した時点で剥離されているので、上記工程により病変の剥離完了である。もし、一部不十分な剥離部がある場合には、その部分をスネアーや高周波ナイフ(10)により切除する。
さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【0024】
本発明は、内視鏡的粘膜下層剥離術の効率・安全性を高め、手技を容易化した。粘膜病変が効果的に剥離されることで周辺の健常組織から有効に分離されるために取り残しの可能性が減ること、従来の最も手技の難易度が高かった高周波ナイフによる通電剥離の過程を無くし、製剤の粘膜下注入のみで剥離を完了してしまうことなどがその主な理由である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】切開予定範囲をマークした説明図である。
【図2】生理食塩水により粘膜の挙上を確認した説明図である。
【図3】製剤を注入し粘膜下層が剥離された説明図である。
【図4】マーキングに沿って切開中の説明図である。
【図5】マーキングに沿って切開終了後の説明図である。
【図6】病変を鉗子でつかみ上げて剥離を確認中の説明図である。
【図7】病変を鉗子でつかみ上げて剥離を確認終了後の説明図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6