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明細書 :絹織物表面賦型方法及び絹布

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4041920号 (P4041920)
公開番号 特開2004-277934 (P2004-277934A)
登録日 平成19年11月22日(2007.11.22)
発行日 平成20年2月6日(2008.2.6)
公開日 平成16年10月7日(2004.10.7)
発明の名称または考案の名称 絹織物表面賦型方法及び絹布
国際特許分類 D06C  23/04        (2006.01)
D06C   7/02        (2006.01)
FI D06C 23/04 B
D06C 7/02
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2003-071536 (P2003-071536)
出願日 平成15年3月17日(2003.3.17)
審査請求日 平成16年1月16日(2004.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391048049
【氏名又は名称】滋賀県
発明者または考案者 【氏名】浦島 開
個別代理人の代理人 【識別番号】100094248、【弁理士】、【氏名又は名称】楠本 高義
審査官 【審査官】大島 祥吾
参考文献・文献 特開平06-294068(JP,A)
特開平06-238858(JP,A)
特開昭57-071472(JP,A)
調査した分野 D03D 1/00-27/18
D06B 1/00-23/30
D06C 3/00-29/00
D06G 1/00-5/00
D06H 1/00-7/24
D06J 1/00-1/12
特許請求の範囲 【請求項1】
絹織物の少なくとも一部分の区域に、賦型された表面を付与する絹織物表面賦型方法であって、
絹織物と賦型用型とを準備する工程、
該絹織物を湿潤させ、湿潤状態の絹織物を得る工程、
該湿潤状態の絹織物の表面を前記賦型用型で加圧しつつ加熱する加圧加熱工程、
を含み、
該湿潤状態の絹織物が前記加圧加熱工程中に前記加圧加熱工程の加熱により乾燥されることを特徴とする絹織物表面賦型方法。
【請求項2】
前記賦型用型の賦型面に複数本の互いに平行な溝が形成される請求項1に記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項3】
絹織物の少なくとも一部分の区域に、賦型された表面を付与する絹織物表面賦型方法であって、
絹織物と布とを準備する工程、
該絹織物及び該布の少なくとも一方を湿潤させ、湿潤状態の該布及び/又は湿潤状態の該絹織物を得る工程、
少なくとも一方が湿潤された前記布及び前記絹織物を重畳して重畳物を得る工程、
該重畳物を、両面から加圧しつつ加熱する加圧加熱工程、
を含み、
前記重畳物が前記加圧加熱工程中に前記加圧加熱工程の加熱により乾燥されると共に、前記布の表面が形成する凹凸が前記絹織物の表面に賦型されることを特徴とする絹織物表面賦型方法。
【請求項4】
前記湿潤状態の布の吸水率が140~250重量%である請求項3に記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項5】
前記布がセルロース系繊維又は蛋白系繊維を含んでなる織物である請求項3又は請求項4に記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項6】
前記布が織物であり、前記重畳物が前記絹織物の縦方向と前記布の縦方向とが斜行する状態で前記布と前記絹織物とが重畳されたものである請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項7】
前記加圧加熱工程が、一の熱板及び他の熱板を準備し、該一の熱板、前記重畳物、該他の熱板をこの順に積層し、該一の熱板と該他の熱板とが近づいて前記重畳物を両面から加圧しつつ加熱する工程である請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項8】
前記加圧加熱工程が、一の熱板、他の熱板及び前記重畳物と接する面の輪郭が模様の形状を成す型体を準備し、該一の熱板、前記重畳物、該型体、該他の熱板をこの順に積層し、該一の熱板と該他の熱板とが近づいて前記重畳物を前記型体で加圧しつつ加熱する工程である請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項9】
前記絹織物が縮緬である請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項10】
前記湿潤状態の絹織物の吸水率が140~250重量%である請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の絹織物表面賦型方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の絹織物表面賦型方法により賦型された絹布。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は絹織物のモアレ加工等の表面賦型方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
所定の模様、柄の凹凸を有する賦型面により布を加熱加圧して布をエンボス加工することは従来から行なわれている。特に、綿、羊毛、絹等の天然繊維を主材とする布をエンボス加工するに際しては、布に合成樹脂エマルジョンを含浸させしかるのち熱金型にて所定の模様、柄、記号に熱プレスすることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。これは天然繊維を主材とする布は熱可塑性に乏しく、熱による形態固定がよく出来ないためである。又、天然繊維を主材とする布は湿潤状態でエンボス加工すればその加工による形態固定がなされるが、このようにして得られた形態は、その布を濡らすと崩れ、特に洗濯等で濡らした状態で布に張力をかけるとその形態は容易に消滅することがおおい。そのため、このように合成樹脂エマルジョンを含浸させて熱プレスすることが行なわれる。しかし、このような合成樹脂を用いた形態熱固定は、布を硬化させ風合いが損なわれることがおおい。
【0003】
一方、エンボス加工の一種であるモアレ加工は、織物をその織物の経糸と干渉縞を生ずるような縞模様を賦刻した加熱金属ロールによってエンボスすることによりなされる。この加工は、熱可塑性を有する合成繊維や半合成繊維から成る織物に好適に適用される(例えば、特許文献2参照。)。しかし、上述の理由で天然繊維を主材とする布には適用が難しい。
【0004】
更に、縞模様を賦刻した加熱金属ロールにかえて織物の経糸や緯糸により形成される縞模様を利用して樹脂製シートの表面にモアレ加工を施こすことが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしこの開示の方法は樹脂製シートの柔らかい前駆体に対して適用するものであり、絹織物のモアレ加工にそのまま適用できるものではない。
【0005】
又、モアレ加工は、ブロード、タフタ等比較的プレーンな表面の織物に変化を与えるためになされるが、縮緬のように顕著な表面凹凸のある織物に対しては有効なモアレ加工の方法がなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平9-250078号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭58-23963号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開平6-238858号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら問題点に鑑み、絹織物に、洗濯に耐え、かつ、加工用樹脂を使用せずに加工による風合い変化のほとんどない賦型された表面を付与する表面賦型方法を提供しようとする。又、縮緬に、従来にない優雅で高級感のあるモアレ模様を付与する表面賦型方法を提供しようとする。又、洗濯に耐え、かつ、風合い変化のほとんどない賦型された表面を有する絹布を提供しようとする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、絹織物の少なくとも一部分の区域に、賦型された表面を付与する絹織物表面賦型方法であって、絹織物と賦型用型とを準備する工程、該絹織物を湿潤させ、湿潤状態の絹織物を得る工程、該湿潤状態の絹織物の表面を前記賦型用型で加圧しつつ加熱する加圧加熱工程、を含み、該湿潤状態の絹織物が前記加圧加熱工程中に前記加圧加熱工程の加熱により乾燥されることを特徴とする絹織物表面賦型方法であることにある。
【0009】
前記絹織物表面賦型方法においては、前記絹織物の一部分の区域が加熱加圧され得る。
【0010】
前記絹織物表面賦型方法においては、前記賦型面に複数本の互いに平行な溝が形成され得る。
【0011】
前記絹織物表面賦型方法においては、前記溝の方向と前記絹織物の縦方向とが斜行する状態で前記賦型面と前記絹織物とが重ねられ得る。なお、絹織物の縦方向は、該絹織物の方向であって該絹織物の構成する経糸の方向と同じ方向を意味する。
【0012】
又、本発明の要旨とするところは、絹織物の少なくとも一部分の区域に、賦型された表面を付与する絹織物表面賦型方法であって、絹織物と布とを準備する工程、該絹織物及び該布の少なくとも一方を湿潤させ、湿潤状態の該布及び/又は湿潤状態の該絹織物を得る工程、少なくとも一方が湿潤された前記布及び前記絹織物を重畳して重畳物を得る工程、該重畳物を、両面から加圧しつつ加熱する加圧加熱工程、を含み、前記重畳物が前記加圧加熱工程中に前記加圧加熱工程の加熱により乾燥されると共に、前記布の表面が形成する凹凸が前記絹織物の表面に賦型されることを特徴とする絹織物表面賦型方法であることにある。
【0013】
前記湿潤状態の布の吸水率は、140~250重量%であり得る。
【0014】
前記布は、セルロース系繊維又は蛋白系繊維を含んでなり得る。
【0015】
前記布は織物であり、前記重畳物は前記絹織物の縦方向と前記布の縦方向とが斜行する状態で前記布と前記絹織物とが重畳されたものであり得る。
【0016】
前記絹織物表面賦型方法において、前記加圧加熱工程は、一の熱板及び他の熱板を準備し、該一の熱板、前記重畳物、該他の熱板をこの順に積層し、該一の熱板と該他の熱板とが近づいて前記重畳物を両面から加圧しつつ加熱する工程であり得る。
【0017】
或いは、前記絹織物表面賦型方法において、前記加圧加熱工程は、一の熱板、他の熱板及び前記重畳物と接する面の輪郭が模様の形状を成す型体を準備し、該一の熱板、前記重畳物、該型体、該他の熱板をこの順に積層し、該一の熱板と該他の熱板とが近づいて前記重畳物を前記型体で加圧しつつ加熱する工程であり得る。
【0018】
前記絹織物は、縮緬であり得る。
【0019】
前記湿潤状態の絹織物の吸水率は、140~250重量%であり得る。
【0020】
又、本発明の要旨とするところは、前記絹織物表面賦型方法により賦型された絹布であることにある。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る態様をまず図面に基づいて説明する。図1に本発明の絹織物表面賦型方法を実施する加熱加圧装置の一例である加熱加圧装置2を示す。加熱加圧装置2は、一の熱板4、布6、被加工物である絹織物8、絹織物8の裏面(被加工面と反対側の面)と接する加圧面10が模様の形状を成す型体12、他の熱板5を含んで構成される。布6、絹織物8、型体12、他の熱板5がこの順に積層され、一の熱板4と他の熱板5とが不図示の加圧手段により近づいて絹織物8が加熱加圧される。布6は、ブロード、金巾等の織物から成る。織物の表面が形成する凹凸が賦型用型の賦型面となる。絹織物8の経糸あるいは緯糸の方向と、布6の経糸あるいは緯糸の方向は互いに斜行している。
【0022】
布6は、図1の配置に配されるまえに水に浸漬し次いで搾ること等により湿潤状態とされたものである。この湿潤状態における布6の吸水率Wは140~250重量%であることが好ましい。Wは、布6の絶乾乾燥重量をD、湿潤状態における総重量をNとしたときに、W=((N-D)/D))×100(%)で与えられる。
【0023】
絹織物8は、種類を特に問わないが、縮緬なかでも無地縮緬であることが優雅で高級感のある表面状態が得られて好ましい。又、布6の組織、糸密度に応じて高級感のある各種の表面状態が得られる。
【0024】
図2に型体12の平面図を示す。型体12は凸部14の絹織物8と接する加圧面10が所定の模様、絵柄、文字型、マーク型等の形状となっており、加圧面10絹織物8の区域が加圧され、布6の表面の凹凸が、その表面と接する絹織物8の面に賦型される。
【0025】
図1の配置から一の熱板4と他の熱板5とが不図示の加圧手段により近づいて絹織物8が加熱加圧され、所定の時間加熱加圧された状態が維持される。
【0026】
加熱加圧の初期においては、布6に含まれる水分が搾りだされて絹織物8に移行する。更に、布6に含まれる水分の温度が上昇して水蒸気となり、絹織物8に移行する。これらの現象により絹織物8を構成する絹繊維が水分を吸収して可塑化する。この可塑化により、布6の表面の凹凸が絹織物8の表面に賦型される。賦型は、前述のように絹織物8の加圧面10と接する面と反対がわの面で行なわれる。
【0027】
加熱加圧された状態がある時間経過すると、賦型された絹織物8を構成する絹繊維がこの加熱により水分率(JIS L 2001に準じて測定される値)20%(重量%)以下に乾燥する。水分率はJIS L 2001に準じて測定される値であり、実際は、加圧を解除して取り出した直後の絹織物8の構成繊維について測定する。加熱加圧に次いで加圧を解除して絹織物8を取り出す。取り出された直後の絹織物8の賦型された部分の吸水率は30%(重量%)以下になっていることが好ましい。20%(重量%)以下であることが賦型された形態の安定性のうえで更に好ましい。
【0028】
このようにして得られた絹布8aは図3のように、型体12の加圧面10に対応した加圧面10と同型の区域16にモアレ状の表面凹凸部20が形成されている。モアレは、絹織物8の経糸あるいは緯糸による縞模様と、布6の経糸あるいは緯糸により形成される溝状の凹凸面により絹織物8の表面に賦型された賦型縞模様との干渉により生ずる。絹織物8の経糸あるいは緯糸の方向と、布6の経糸あるいは緯糸の方向との斜行角が2~40度であることがモアレの発現にとって好ましい。5~20度であることが美しいモアレの発現にとって好ましい。又、絹織物8の経糸あるいは緯糸の方向と、布6の経糸あるいは緯糸の方向とがほぼ一致する場合も、両者の織密度が異なる場合は、その密度差に応じてモアレが発現する。
【0029】
絹布8aは耐洗濯性が良好で、洗濯を複数回行っても表面凹凸部20の凹凸が消失しない。又、表面凹凸部20のモアレ状の表面凹凸は、周辺の賦型されていない表面22と調和のとれたコントラストを有し、優雅かつ高級感のあるモアレ模様となる。
【0030】
絹織物8として縮緬を使用すると、モアレ状の表面凹凸は、周辺の賦型されていない表面22と更に調和のとれたコントラストを有し、更に優雅かつ高級感のあるモアレ模様となる。
【0031】
絹織物8として変わり無地縮緬を使用すると、モアレ状の表面凹凸が明瞭に出現し、表面凹凸は、周辺の賦型されていない表面と最も調和のとれたコントラストを有し、最も優雅かつ高級感のあるモアレ模様となる。
【0032】
本発明の他の態様においては、布6を予め湿潤させるかわりに、絹織物8を予め湿潤させてもよい。あるいは、布6及び絹織物8を予め湿潤させてもよい。いずれの場合も、加熱加圧の初期において、絹織物8を構成する絹繊維が水分を吸収して熱可塑性となる。絹織物8を湿潤させてから前記の加熱加圧を行なう場合も、湿潤させた絹織物8の吸水率は140~250重量%であることが、良好な賦型がなされて好ましい。
【0033】
本発明の更に他の態様においては、型体12を使用せずに絹織物8の全域が賦型されてもよい。
【0034】
本発明の又更に他の態様においては、布6を所定の模様の形状に切り取って、絹織物8の上に載置してもよい。布6を所定の模様の形状に切り取って、複数の切り取られた布6を絹織物8の上に分散して載置してもよい。これにより、切り取られた布6の形状に応じた賦型区域が絹織物8の所望の位置に形成される。この場合は、型体12は不要となる。この態様は、高価な型体12の準備を必要とせず、かつ、短時間で多数種の模様の準備ができるので、小回りのきく加工ができて好ましい。
【0035】
あるいは、型体12を併用して、型体12の模様の面と、切り取られた布6との重なる区域が賦型されるようにしてもよい。この態様は、両者の模様がかかわりあって複雑な賦型区域が形成され変化に富んで好ましい。
【0036】
布6にかえて表面に凹凸が形成された賦型用金型が用いられてもよい。この場合は、加工前に絹織物8を予め湿潤させておく。賦型用金型の凹凸が互いに平行な多数の細溝である場合は、絹織物8にモアレを形成できる。この賦型用金型は模様形状の限られた加圧面を有してもよい。この場合は、型体12は不要となる。あるいは、型体12を併用して、型体12の加圧面と、賦型用金型との重なる区域が賦型されるようにしてもよい。この態様も、両者の模様がかかわりあって複雑な賦型区域が形成され変化に富んで好ましい。
【0037】
布6を構成する繊維は、加熱加圧時に著しくは軟化しない繊維であればよい。綿、レーヨン、麻等のセルロース系繊維、あるいは羊毛等の蛋白繊維を主成分とすることが更に好ましい。これらの天然繊維、再生繊維は、吸水性に優れ、かつ、加熱により著しくは軟化しないので、好ましい。布6が吸水性に乏しい繊維から成る場合は、湿潤により水分が構成繊維間に主に保持されるが、これらの天然繊維、再生繊維を主材とする布6は、繊維内部にも湿潤により水分が保持されるので、加熱加圧に際して徐々に水分が放出され絹織物8に移行するので工程が安定し好ましい。
【0038】
加熱加圧における加熱温度は、95~130℃が好ましい。98~112℃であることが、鮮明な賦型形状状態が得られて更に好ましい。130℃をこえる加熱温度は、絹織物8の変色の可能性がある。95℃未満の加熱温度では賦型が不十分である。
【0039】
加熱加圧の圧力は、50~500MPaであることが鮮明な賦型形状状態が得られて好ましい。100MPa以上であることが耐洗濯性に優れる賦型状態のうえで更に好ましい。500MPaをこえる加圧は、被加工布(絹織物8)が扁平化するおそれがある。布(布6)を用いる賦型の場合は、加熱加圧の圧力が350MPa以下であることが鮮明な賦型形状状態が得られて更に好ましい。
【0040】
加熱加圧の時間は、10~1000秒であることが好ましい。10秒未満の加熱加圧は、加熱加圧の初期の前述の水分の移行と、後半の絹織物8の前述の乾燥に要する時間が不足して好ましくない。1000秒をこえる加熱加圧は絹織物8の変色の可能性がある。又、加工の能率が低下する。なお、加熱温度が低い場合は、加熱加圧の時間は長く、加熱温度が高い場合は、加熱加圧の時間は短く、加熱温度、加熱加圧の時間、加熱加圧の圧力は適宜選択される。
【0041】
前述のように一般に天然繊維から成る布は加熱により賦型してもその賦型の形状は、その布を水、特に高温の水に漬けると消失しやすいといわれているが、このような方法で賦型され得られた本発明の絹布は、次いで染色工程を経てもその賦型模様が鮮明に残留する。
【0042】
[実施例1~27]
図1に示す方法により下記条件で絹織物の加熱加圧加工を行ない、賦型された絹布を得た。
絹織物8:変わり無地縮緬(よこ密度23本/cm)
布6:綿金巾(よこ密度26本/cm)
絹織物8の経糸方向と布6の経糸方向とのなす角度:9度
布6の加熱加圧加工前の吸水率:160重量%
加熱:100℃、110℃、120℃の3水準
加圧:100MPa、200MPa、300MPaの3水準
型体12:図5に示す形状の鉄製の型板40を用いた。寸法;L1=50mm、L2=40mm、L3=7mm、L4=6mm、H1=2mm、H2=10mm、L5=150mm
加熱加圧時間:30秒、60秒、120秒の3水準
一の熱板4、他の熱板5:小型プレス機(テクノサプライ(株)社製)の加熱加圧用熱板)
【0043】
得られた絹布の、加圧面10が裏面に当接して賦型された部分の表面には、従来にない優雅で高級感のあるモアレ模様の発現が認められた。表面の賦型された部分の賦型の度合いを、光沢度で評価した。光沢度は、ミノルタ製光沢度により、60度法で絹布のたて、よこそれぞれの方向について測定した。
【0044】
たて方向は、染色前生地については光沢度3.0~4.4が、染色後生地については光沢度0.4~0.8が良好な外観を示す賦型の度合いであり、光沢度3.7~4.2が、染色後生地については光沢度0.5~0.6が最も良好な外観を示す賦型の度合いである。
よこ方向は、染色前生地については光沢度2.0~3.0が、染色後生地については光沢度0.3~0.8が良好な外観を示す賦型の度合いであり、染色前生地については光沢度2.5~2.8が、染色後生地については光沢度0.4~0.5が最も良好な外観を示す賦型の度合いである。
【0045】
賦型加工後の絹布は通常の染色法により無地染色した。
【0046】
加工条件と光沢度の関係を表1に示す。なお、無加工部は加工されてない試料についての実施例と比較のための値である。
【0047】
【表1】
JP0004041920B2_000002t.gif【0048】
表1に示すように、実施例の試料は、賦型された部分がいずれも良好な表面外観を有していた。なかでも、実施例5、6、8、9、12、15、18が最も良好な表面外観を有し型体12の加圧面10の形状に相当する柄模様が鮮明であった。
【0049】
[実施例28]
加熱温度100℃、加圧力140MPa、加熱加圧時間300秒とし、染色を行なわない他は前述の実施例と同様にして加工を行なった。加圧を解除して取り出した直後の絹織物8の構成繊維について測定した水分率は16%であった。加工により得られた絹布につき、JIS L 0844 A-1法に準じた洗濯を5回繰り返し行なった。洗濯によるたて方向に光沢度の変化を表2に示す。表2において、通常部は、型体12の加圧面10で加圧されていない部分の値である。賦型部は賦型された区域の値である。
【0050】
【表2】
JP0004041920B2_000003t.gif【0051】
表2により、洗濯を繰り返しても賦型された表面の賦型形状が保持されていることがわかった。
【0052】
[実施例29]
絹織物8として羽二重を用いた他は実施例28と同様にして加工を行なった。得られた絹布の賦型された部分の表面には、高級感のあるモアレ模様の発現が認められた。得られた試料につき、実施例28と同様にして洗濯を5回繰り返し行なった。洗濯後もモアレ模様は保持されていた。
【0053】
[実施例30]
布8を加工前に湿潤処理せず、絹織物8を加工前に湿潤処理して吸水率200重量%としてから加熱加圧したことをのぞいては、実施例28と同様にして加工を行なった。得られた絹布の賦型された部分の表面には、従来にない優雅で高級感のあるモアレ模様の発現が認められた。得られた試料につき、実施例28と同様にして洗濯を5回繰り返し行なった。洗濯後もモアレ模様は保持されていた。
【0054】
[実施例30]
図4に示すように、一の熱板4、加圧表面36に平行な多数の溝32が形成され、絹織物8の表面(被加工面)を加圧する賦型用金型34、絹織物8、絹織物8の裏面と接する加圧面10aが模様の形状を成す型体12a、他の熱板5を用いて加熱加圧を行なった。賦型用金型34の溝32のピッチPは0.5mm、高さHMは0.3mmである。型体12aの平面図を図5に示す。絹織物8の経糸方向と溝32の方向とのなす角度は9度である。加熱温度100℃、加圧力90MPa、加熱加圧時間100秒とし、絹織物8としては、実施例28と同様のものを用いた。絹織物8は加工前に湿潤処理して吸水率200重量%としてから加熱加圧した。得られた絹布の、加圧面10aが裏面に当接して賦型された部分の表面には、優雅なモアレ模様の発現が認められた。得られた試料につき、実施例28と同様にして洗濯を5回繰り返し行なった。洗濯後もモアレ模様は保持されていた。
【0055】
[実施例31]
賦型用金型34のかわりに加圧表面36が平らな賦型用金型を用いた他は、実施例30と同様にして絹織物8の加工を行なった。得られた絹布の、加圧面10aが裏面に当接して賦型された部分の表面には、加圧面10の形状に相当するプレーンな模様の発現が認められた。得られた試料につき、実施例28と同様にして洗濯を5回繰り返し行なった。洗濯後も模様は保持されていた。
【0056】
なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。
【0057】
以上本発明の絹織物表面賦型方法及び絹布の態様を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の範囲に属するものである。例えば、賦型用金型34の表面の凹凸は溝状に限らない。梨地状であってもよい。その他の形状の微細凹凸であってもよい。型体12、12aのような型体を併用する場合はプレーンであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明の絹織物表面賦型方法により、絹織物に、洗濯に耐え、かつ、加工用樹脂を使用せずに加工による風合い変化のほとんどない賦型された表面を付与することが出来る。又、本発明の絹織物表面賦型方法により、縮緬に、従来にない優雅で高級感のあるモアレ模様を付与することが出来る。更に、本発明の絹織物表面賦型方法により、限られた区域のみモアレ模様等の模様のある絹織物を簡単な方法で得ることが出来る。
【0059】
本発明の絹布は、洗濯に耐え、かつ、加工用樹脂がされず、加工による風合い変化のほとんどない賦型された表面が付与されている。
【0060】
本発明の絹布は、従来にない優雅で高級感のあるモアレ模様を有する。更に、限られた区域のみこのようなモアレ模様等の模様のある優雅で高級感のある絹織物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の絹織物表面賦型方法の実施に用いる加熱加圧装置の構成の態様の一例を示す説明図である。
【図2】 図1に示す加熱加圧装置の構成要素である型体の一例を示す平面図である。
【図3】 本発明の絹織物表面賦型方法の実施により得られた絹布を示す平面図である。
【図4】 本発明の絹織物表面賦型方法の実施に用いる加熱加圧装置の他の態様の構成を示す説明図である。
【図5】 図4に示す加熱加圧装置の構成要素である型体の形状の態様を示す平面図である。
【符号の説明】
2:加熱加圧装置
4:一の熱板
5:他の熱板
6:布
8:絹織物
10:加圧面
12:型体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4