TOP > 国内特許検索 > 金微粒子を担体に分散・固定化する方法 > 明細書

明細書 :金微粒子を担体に分散・固定化する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5290599号 (P5290599)
公開番号 特開2009-220017 (P2009-220017A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月18日(2013.9.18)
公開日 平成21年10月1日(2009.10.1)
発明の名称または考案の名称 金微粒子を担体に分散・固定化する方法
国際特許分類 B01J  23/66        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
FI B01J 23/66 Z
B01J 37/16
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2008-067090 (P2008-067090)
出願日 平成20年3月17日(2008.3.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 エルセイヤー社(Elsevier Inc.)のホームページ(ScienceDirect)のジャーナル オブ コロイド アンド インターフェース サイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)のページにおいて発表(電気通信回路を通じて発表)。 公開日(掲載日)は平成20年2月29日。 掲載アドレスは以下のとおり。http://www.sciencedirect.com/science/journal/00219797(より詳細にはhttp://www
審査請求日 平成22年3月3日(2010.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
発明者または考案者 【氏名】春田 正毅
【氏名】石田 玉青
【氏名】木下 直人
【氏名】黒田 杏子
【氏名】大勝 裕子
個別代理人の代理人 【識別番号】100108350、【弁理士】、【氏名又は名称】鐘尾 宏紀
審査官 【審査官】大城 公孝
参考文献・文献 特開2005-154302(JP,A)
特開2002-201284(JP,A)
特開平06-124712(JP,A)
SCHRINNER Marc, et al,Mechanism of the Formation of Amorphous Gold Nanoparticles within Spherical Polyelectrolyte Brushes,Macromol. Chem. Phys.,2007年 7月19日,Vol.208, No.14,p.1542-1547,doi:10.1002/macp.200700161
調査した分野 B01J 21/00-38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
極性の高い官能基を表面に有さない高分子材料または該高分子材料と無機物からなり無機物の含有量が50重量%以下の有機・無機ハイブリッド材料に接する金化合物水溶液に還元剤を徐々に添加することを特徴とする高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法であって、
前記高分子材料が、粉末、微粒子、薄膜、中空粒子、多孔体またはデンドリマー形態であるとともに、ビニル系ポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ジエン系ポリマー、メラミン・ベンゾグアナミン系ポリマー、芳香族系ポリマー、ポリイミド、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、硫黄系ポリマーおよび天然高分子から選択される少なくとも1種の高分子材料であることを特徴とする、高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
【請求項2】
前記還元剤が、金イオンを還元することのできる無機または有機還元剤の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
【請求項3】
前記金化合物が、四塩化金酸、四塩化金酸塩、三塩化金、三臭化金、シアン化金、シアン化金カリウム、三塩化ジエチルアミン金酸、エチレンジアミン金錯体、ジメチル金β-ジケトン誘導体金錯体、およびジエチル金β-ジケトン誘導体金錯体から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
【請求項4】
前記還元剤は、前記金化合物水溶液に還元剤が加えられた際に、添加された還元剤により金錯イオンの一部が還元され、形成された金微粒子が高分子材料上に吸着される大きさとなって高分子材料上に移動したのち、さらに還元剤を加えることにより残余の金錯イオンの一部が還元されて上記と同様の移動を起こすという工程を繰り返す速度で添加されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
【請求項5】
前記還元剤の添加開始から添加終了までの時間が、1~20分であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
【請求項6】
前記金化合物水溶液のイオン強度が、1×10-5~0.05であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
【請求項7】
高分子材料上に分散・固定化された金微粒子の平均粒子径が10nm以下であり、金が高分子材料に対し、0.01重量%~50重量%担持されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金微粒子を高分子材料表面に分散・固定化する方法に関する。より詳細には、還元剤で金前駆体を還元して高分子材料表面に分散・固定化する際に、従来法に比べより小さく且つ金微粒子の凝集がなく、粒度のそろったより均一な大きさの金微粒子を高分子材料表面に分散・固定化する方法に関する

【背景技術】
【0002】
貴金属は、種々の装飾材料、歯科用材料、電子回路材料、触媒材料、例えば有機物の酸化あるいは還元反応触媒、自動車排気ガスの浄化触媒や、燃料電池用の触媒などとして広く用いられている。触媒として用いる場合、貴金属は高価なことと、その性能を最大限引き出すため、ナノ粒子(例えば、2~10nm)として露出表面積を大きくする工夫がなされている。具体的には、比表面積が大きく、熱的、化学的安定性の高いシリカやアルミナ、チタニアなどの金属酸化物、あるいは活性炭、カーボンブラックなどの炭素材料を担体に用い、その表面に貴金属がナノ粒子として分散・固定された状態とされて用いられている。
【0003】
貴金属中、金は他の貴金属に比べれば安価であるものの、触媒活性が極めて乏しいと従来考えられていた。これに対し、発明者は、金を好ましくは直径10nm以下の超微粒子として種々の金属酸化物担体上に分散・固定することにより、高い触媒活性が発現されること、さらに金ナノ粒子触媒は、低温CO酸化、プロピレンの気相一段エポキシ化、低温水性ガスシフト反応、酸素と水素からの直接過酸化水素合成、炭化水素類の部分酸化など、多くの反応に対して、他の貴金属より優れた触媒活性を発現することを見出している(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。また、その他にも、金ナノ粒子について、不飽和化合物の水添、アルコールの酸化、NOxの除去、エポキシ化合物、脂肪族アミンのカルボニル化などの触媒活性についての報告もなされている。さらに、本発明者は、金の粒子径が2nm以下、原子数で300個以内のクラスターになると、触媒特性がさらに激変する場合があることも見出した。これら金属酸化物や炭素材料上に金ナノ粒子を分散・固定化する方法としては、従来、共沈法、析出沈殿法、コロイド混合法、気相グラフティング法、液相グラフティング法などの方法が採られている。
【0004】
これに対し、高分子材料を担体とし、その表面に貴金属、例えば白金やパラジウムなど白金族金属をナノ粒子として分散・固定化したものは、これまで材料としてほとんど注目されておらず、関連するものとして高分子電解質膜用白金電極があった。白金は微粒子としてカーボンブラック上に分散・固定化されているが、その担持量が10wt%以上であるので、多くは凝集体となっており、必ずしも金属微粒子が独立分散した構造でない。高分子材料を担体として用いる触媒が実用化されていないのは、高分子材料の耐熱温度が200℃以下と低く、基幹化成品を製造する工業反応プロセスの温度条件や自動車排ガスの温度域では使用できない上に、高分子材料の比表面積が小さく、しかも高分子材料は無機材料に比し高価であることに起因している。これに対し、精密化成品の合成では一般に溶液に溶解した状態で触媒が使用され(均一系触媒)、200℃以下での反応が多く、分子レベルで触媒の設計が可能である反面、反応物と生成物から触媒を分離するプロセスにエネルギーが要せられることが課題となっている。このため、均一系触媒を高分子担体などに固定化することが試みられている。このことは、金ナノ粒子においても同様である。前記したとおり、金は貴金属の中でも寸法によって最も著しく特性が変動することが分かっており、また粒径がナノレベルとなっても空気中で安定であることから、低温反応用触媒などの用途として、高分子材料を担体とし、種々の寸法・形状で分散・固定化された材料が望まれている。
【0005】
近年、高分子材料と金との複合材料に関する技術として、NaAuCl4・2H2Oとピロールとを混合して、超音波をかけることにより、金粒子への還元とピロールの重合とを同時に行い、これにより金ナノ粒子を高分子内部に包み込んだ複合体を製造する方法(非特許文献2参照)、NaOH水溶液で前処理した第四級アンモニウム基を官能基として有するイオン交換樹脂を加熱乾燥後金前駆体水溶液で処理し、150℃で6時間加熱することにより金ナノ粒子を担持させる、いわゆる含浸法によって、イオン交換樹脂に金を担持させる方法(非特許文献3参照)、乾燥した陽イオン交換樹脂にHAuCl4・4H2O水溶液を含浸させ、60℃で3時間乾燥する方法(非特許文献4参照)、陽イオン交換樹脂に金微粒子を担持する方法(非特許文献5参照)が報告されている。
【0006】
しかし、前記NaAuCl4・2H2Oとピロールとを混合して、超音波をかけることにより、金粒子への還元とピロールの重合とを同時に行う方法は、金粒子がピロール重合体により包み込まれた状態となっており、触媒としての利用には適していない。また、イオン交換樹脂を用い、金ナノ粒子をイオン交換樹脂上に担持する方法では、長時間、高温での加熱が必要とされる。さらに、前記方法は、いずれも特殊な樹脂への金ナノ粒子の付着方法であり、しかも後者の方法においては瞬時に反応が終了しないことから、粒度が不揃いとなり、触媒活性の点で問題を有する。さらに、カチオン性の高分子電解質側鎖を高分子粒子表面に導入し、還元剤を徐々に加えることにより、得られる金ナノ粒子が小さくなること(非特許文献6参照)も報告されているが、この方法も側鎖部分に金ナノ粒子が固定化されており、コアの高分子粒子表面に直接担持されているわけではない。
【0007】
一方、還元剤を用いて金属化合物を還元する際、ナノオーダーの金属微粒子を得るため、例えば還元剤としてクエン酸ナトリウムを用い60℃以上で還元するとか、水素化ホウ素ナトリウムを用い0℃で還元するなど、還元剤の種類や還元温度について種々の検討がなされてきた。これら還元剤の選択および温度制御により金属ナノ粒子の形成は可能であるが、還元の際に使用する金属化合物、還元剤、添加剤など使用する材料や濃度などにより最適条件を決める必要があり条件設定が難しく、また温度制御のみでは粒径の制御が難しいのが現状である。
【0008】
このような状況下、本発明者らは、金前駆体である金化合物が溶解した高分子材料粒子分散液に、還元剤を一気に加えることにより、金属ナノ粒子となる核を一度に多数生成させ、且つ核成長を抑えることにより、その表面に金属ナノ粒子を分散・固定化することが難しかった前記の如きアニオンあるいはカチオン基などの官能基を表面に有しない高分子材料表面に金微粒子を付着させることができることを見出した(特許文献2参照)。従来無機酸化物担体に金属イオンを吸着させた後、金属ナノ粒子を還元して担持する場合には還元剤を一気に加えていた。これは、還元剤を徐々に加えると、一度生成した金属ナノ粒子が核となって、核成長を引き起こし、得られる金属ナノ粒子が大きくなるため、一気に還元することによって小さな金属ナノ粒子の核を多数形成させるためである。
【0009】

【特許文献1】特公平5-49338号公報
【特許文献2】特開2007-197591号公報
【非特許文献1】エム ハルタ(M.Haruta)、ケミストリー レコード(Chem. Record)第3巻、第2号、第75-87頁(2003年)
【非特許文献2】ジョン-エン パルク(Jong-En Park)外2名、ケミストリー レターズ(Chemistry Letters)、第34巻、第1号、第96-97頁(2005年)
【非特許文献3】フェング シ(Feng Shi)外4名、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.)コミュニケーションズ(Communications)、第127巻、第21巻、第4182-4183頁(2005年)
【非特許文献4】フェング シ(Feng Shi),ユークワン デング(Youquan Deng)、ジャーナル オブ キャタリシス(J.Catal.)第221巻、第12号、第548-511頁(2002年)
【非特許文献5】ギタンジャニ マジャンダール(Gitanjani Majumdar)外4名、ラングミュアー(Langmuir)、第21巻、第5号、第1663-1667頁(2005年)
【非特許文献6】エム シュライナー(M.Schrinner)他9名.マクロモレキュラー ケミストリー アンド フィジックス(Macromol.Chem.Phys)、第208巻、第1542-1547頁(2007年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、本発明者らの研究により、アニオンあるいはカチオン基など極性の高い官能基を有さない通常の高分子材料(樹脂)にナノオーダーの金微粒子を付着させる方法が見出されたが、上記のとおり金属ナノ粒子となる核を一度に多数生成させ、且つ核成長を抑える必要性から、還元剤を一気に加えることが必要である。しかし、還元剤を一気に加えて金前駆体の還元を行うことによると思われるが、微粒子の凝集体が形成されるという問題、および形成される粒径の大きさおよび均一性の制御が難しいという問題をも有している。さらに、この方法においては、形成される金微粒子の大きさも、10~100nm程度の大きさのものが一般的で、より小さく、かつ凝集粒子の形成がない、粒径のそろった金微粒子を、樹脂をも含めた担体表面に簡便な方法で分散・固定化する方法が求められている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、還元剤を用いてアニオンあるいはカチオン基などの極性の高い官能基を表面に有しない通常の高分子材料の担体材料表面に金ナノ粒子を分散・固定化する方法において、従来の還元法に比べ、より小さい粒径を有すると共に、金微粒子の凝集がない粒度のそろった金微粒子を担体材料上に簡便に形成する方法を提供することである。

【0013】
本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、通常金微粒子の担体材料として用いられている無機酸化物については認められないが、担体材料が極性の高い官能基を表面に有さない高分子材料、または該高分子材料と無機物からなり無機物の含有量が50重量%以下の有機・無機ハイブリッド材料あるいは炭素材料である場合、還元剤をゆっくり加えても核成長よりも核生成が優先して起こり、金属ナノ粒子の凝集・核成長が抑制されて、従来法よりも小さなナノオーダーの金微粒子を還元剤の種類を変えなくても還元剤の添加速度のみによって金属ナノ粒子のサイズをコントロールでき、これによって金微粒子の凝集もなくかつ一気に還元剤を投入する従来法よりも粒径の小さいナノオーダーの金属微粒子を、担体材料上に簡便に分散・固定化できることを見出し、この知見に基づいて本発明がなされたものである。なお、本発明において金微粒子、金ナノ粒子という場合、これらには金クラスターをも包含するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、次の(1)~(7)に記載の高分子材料表面に金微粒子を分散・固定化する方法に関する。

【0015】
(1)極性の高い官能基を表面に有さない高分子材料または該高分子材料と無機物からなり無機物の含有量が50重量%以下の有機・無機ハイブリッド材料に接する金化合物水溶液に還元剤を徐々に添加することを特徴とする高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法であって、前記高分子材料が、粉末、微粒子、薄膜、中空粒子、多孔体またはデンドリマー形態であるとともに、ビニル系ポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ジエン系ポリマー、メラミン・ベンゾグアナミン系ポリマー、芳香族系ポリマー、ポリイミド、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、硫黄系ポリマーおよび天然高分子から選択される少なくとも1種の高分子材料であることを特徴とする、高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。

【0019】
)前記還元剤が、金イオンを還元することのできる無機または有機還元剤の少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。

【0020】
)前記金化合物が、四塩化金酸、四塩化金酸塩、三塩化金、三臭化金、シアン化金、シアン化金カリウム、三塩化ジエチルアミン金酸、エチレンジアミン金錯体、ジメチル金β-ジケトン誘導体金錯体、およびジエチル金β-ジケトン誘導体金錯体から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。

【0021】
(4)前記還元剤は、前記金化合物水溶液に還元剤が加えられた際に、添加された還元剤により金錯イオンの一部が還元され、形成された金微粒子が高分子材料上に吸着される大きさとなって高分子材料上に移動したのち、さらに還元剤を加えることにより残余の金錯イオンの一部が還元されて上記と同様の移動を起こすという工程を繰り返す速度で添加されることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。
(5)前記還元剤の添加開始から添加終了までの時間が、1~20分であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。

【0022】
)前記金化合物水溶液のイオン強度が、1×10-5~0.05であることを特徴とする上記(1)~()のいずれかに記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。

【0023】
(7)高分子材料上に分散・固定化された金微粒子の平均粒子径が10nm以下であり、金が高分子材料に対し、0.01重量%~50重量%担持されることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の高分子材料上に金微粒子を分散・固定化する方法。

【発明の効果】
【0027】
従来の還元剤を用いて金前駆体である金化合物を一気に還元し通常の高分子材料などからなる担体材料上に金微粒子を分散・固定化する方法においては、金微粒子の凝集が見られると共に、形成される金微粒子の粒径およびその均一性に問題を有するものであったが、本発明においては、金微粒子担体材料としてアニオンまたはカチオン基などの官能基を有さない高分子材料を選択し、還元剤の添加速度を制御するという簡単な方法により、金属微粒子の核成長と凝集を抑制することができ、従来法に比べより小さい、粒径のそろった、また凝集粒子のないナノオーダーの金属微粒子を担持する高分子-金ナノ粒子複合材料が提供できる。これにより、例えばグルコース酸化触媒など触媒活性に富んだ金微粒子担持触媒を形成することができるとともに、さらに新しい反応を可能とする固体触媒などとしての用途が期待できる。また、金微粒子の粒径により金微粒子を担持する高分子材料の色調を制御することができることから、本発明の方法で得られた金微粒子が表面に分散・固定された材料は、触媒の他にも塗料用、化粧品用など種々の材料の着色剤としての用途も期待できる。さらに、これらの他、がん治療用マーカー、高感度DNA検出素子、柔軟性のある導電性材料、燃料電池用や化学センサー用の電極、赤外線センサーなどの用途への材料としても期待できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の高分子材料または有機・無機ハイブリッド材料上に金微粒子を分散・固定化する方法においては、高分子材料または有機・無機ハイブリッド材料が金前駆体である金化合物水溶液と接する状態、好ましくは前記材料を分散した状態で、還元剤を一気に加えるのではなく、徐々に加えることを特徴としている。従来無機酸化物に小さな金属ナノ粒子を担持させるには、核生成を瞬時に引き起こし、小さな核をより多く作ることが重要であると考えられてきた。これは、生成する核が少ないと、還元反応が更に進行しても生成した核が成長するのみで、新たな核生成が起こらないためである。事実、金触媒としての担体として通常用いられているシリカ、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物においてはこのような現象が起こり、貴金属水溶液に還元剤を徐々に加えた場合には、生成した核が成長するのみで、新たな核生成が起こらない。このため、従来金属ナノ粒子の粒径を制御するには還元剤の種類や温度、濃度などの条件について種々検討されてきたのであり、貴金属ナノ粒子を形成させるためには、還元剤を一気に加えることが常識となっていたのである。

【0029】
このような従来の技術常識に反し、本発明において、担体材料がアニオンあるいはカチオン基のような極性の高い官能基を表面に有さない高分子材料あるいは該高分子材料と無機物からなり無機物の含有量が50重量%以下の有機・無機ハイブリッド材料に限って、還元剤を徐々に加えることにより、従来の還元剤を一気に加える還元法による金微粒子の分散・固定化法に比べ、金微粒子の凝集がなく、またより小さい粒径で、粒度もよりそろった金微粒子が担体材料上に分散・固定化されるのか、その理由は定かではない。その理由について、本発明者らは次のように考えているが、この説明により本発明が限定されるものではない。図1を参照して説明すると、担体材料が水などの溶液に分散された状態においては、担体材料の周囲に電気二重層が形成される。この電気二重層は、担体材料が溶液に分散されればどの担体表面にも存在するものである。ここに、例えば金錯イオンが存在すると、担体材料が負に荷電されていることから、正に荷電されている金錯イオンが担体の二重層を取り囲むような状態に吸引される。極性の強い官能基を表面に有さない高分子材料においては担体と金錯イオンとの相互作用が弱く、このため金錯イオンが担体材料表面にまでは吸着されない。このとき従来のように還元剤(図中では、NaBH)を一気に加えるとこれら金錯イオンが同時に還元されるが、一度に大量の金ナノ粒子核ができ、凝集が起き易くなり、大きな金粒子ができるとともに、金微粒子の粒度の制御もできない。これに対し、本発明の方法においては、還元剤を滴下により徐々に加えると、電気二重層上の金錯イオンの一部が電気二重層内で金に還元され、ある程度大きくなった段階で担体に移動し、その後さらに還元剤が加えられると、電気二重層にある金錯イオンが新たに還元され、これもある程度大きくなった段階で担体に移動する。これを繰り返すことで、凝集がなく、粒度がそろい、従来の急速還元法に比べより小さい粒径の金微粒子が形成される。
一方、担体材料として金属酸化物を用いた場合には、高分子材料等に比べ担体と金錯イオンとの相互作用が強いために電気二重層ではなく担体表面に金錯イオンが直接吸着すると考えられる。さらに還元剤が加えられると金錯イオンは担体上の核の近傍にあることから核を基に成長し、粒径が小さく粒径のそろったナノ粒子を形成することができものと考えられる。同様のことは、極性の高い官能基を有する重合体材料でも起こっていると考えられる。
前記電気二重層の厚みは、溶液中のイオン強度(イオン濃度×イオンの価数)によっても影響を受ける。このため、溶液中の電解質の濃度についても考慮することが必要である。なお、イオン強度は、溶液中に存在する全てのイオン種について、(イオンのモル濃度×イオンの価数の2乗)を足し合わせ、更にそれに1/2をかけたものをいう。

【0030】
以下、本発明の方法に使用される金前駆体である金化合物、還元剤、金微粒子を担持するために用いられる高分子材料、有機・無機ハイブリッド材料、反応溶液などについて説明し、次いでこれら材料を用いて金微粒子を担持した高分子材料の製造方法について説明する。

【0031】
本発明において、金微粒子を形成するために用いられる金前駆体である金化合物は、反応溶液中に溶解されて用いられることから、反応溶液に溶解するものであればよく、これ以外に特に制限されるものではない。例えば、反応溶液として水が用いられる場合、金化合物は水溶性のものであればよい。水溶性金化合物としては、金の水酸化物、塩化物、臭化物、カルボン酸塩、および硝酸塩、塩化金酸およびその塩、金錯体化合物などが挙げられる。さらに具体的に例示すると、例えば、四塩化金酸(HAuCl4)、四塩化金酸塩(例えば、NaAuCl4)、三塩化金(AuCl3)、三臭化金(AuBr3)、シアン化金(AuCN)、シアン化金カリウム{K〔Au(CN)2〕}、三塩化ジエチルアミン金酸〔(C252NH・AuCl3〕、エチレンジアミン金錯体(例えば、塩化物錯体(Au[C24(NH22]Cl3))などを挙げることができるが、本発明で用いることができる金化合物がこれに限定されるものではない。これらの化合物は単独で用いられてもよいし、必要であれば2種以上を併用してもよい。また反応溶液は水溶性の有機溶剤、例えばエタノールなどであってもよいし、水と該水溶性の有機溶剤の混合液であってもよい。上記金化合物はいずれも水溶性有機溶媒に溶解可能であり、反応溶液として有機溶剤が用いられたとしても、金化合物は上記のごときものから選択されればよい。
【0032】
一方、還元剤としては、従来、金属イオンの還元に用いられている還元剤のいずれをも用いることができる。このような還元剤は、無機系であっても、有機系であってもよい。無機系還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素、二酸化硫黄(SO2)、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)などが挙げられ、有機系還元剤としては、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸およびその塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム)、シュウ酸およびその塩、グルコース、エチレングリコールなどが挙げられる。通常用いられる還元剤は、還元力の強い順に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、ホルムアルデヒド(HCHO)、クエン酸およびその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウムなど)、グルコース(C6126)などがあり、また、エチレングリコールも挙げられる。
【0033】
さらに、金微粒子の担体材料としては、極性の高い官能基を表面に有さない高分子材料が用いられる。本発明で用いられる前記高分子材料としては、アニオンあるいはカチオン基などの極性の高い官能基を表面に有さない、水溶性あるいは水溶性溶剤に溶解しない通常の高分子材料が挙げられる。具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスチレン(PS)などのビニル系ポリマー;ポリオキシメチレン(POM)などのポリエーテル;ポリラクトン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ポリカーボネート(PC);ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;ポリウレタン;ポリブタジエン(PBd)、ポリイソプレン(PIP)などのジエン系ポリマー;メラミン・ベンゾグアナミン系ポリマー;芳香族系ポリマー;ポリイミド;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリシラン;ポリシロキサン;ポリカプロラクトン;ポリ環状チオエーテルなどの硫黄系高分子;セルロース、蛋白質、DNAなどの天然高分子が挙げられる。これらの中では、通常、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、硫黄系高分子などが好適な材料として用いられる。一方、有機・無機ハイブリッド材料としては、前記高分子材料と無機物からなり無機物の含有量が50重量%以下の有機・無機ハイブリッド材料、例えばシリカーアクリル複合物(日本触媒ソリオスター)などが挙げられる。


【0034】
高分子材料は、粉末(例えば、平均粒子径10μm~10mm)、微粒子(例えば、平均粒子径10nm~100μm)、薄膜(例えば、平均膜厚10μm~10mm)、中空粒子(例えば、平均粒子径10nm~10mm)、デンドリマー(樹枝状構造体)、多孔体などの形態を持つものなど、その形態、形状はどのようなものでもよい。触媒、着色剤などを初めとする種々の用途を考えれば、通常粒子形状が好ましく、その粒子径は目的・用途によって異なるものの、一般的には平均粒子径0.2μm~1mm、より好ましくは平均粒子径0.2μm~100μmであることが好ましい。本発明においては、平均粒子径は、球状粒子の場合は直径、楕円形粒子の場合は長径であり、例えば微細な粒径を有する場合、走査型電子顕微鏡(SEM)観察あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)観察から粒子径分布を作り、平均値を求めたものである。また、ミクロンオーダーの粒子の粒径については、コールターカウンターなどにより測定することもできるし、さらに大きい場合には、篩法によることもできる。また、有機・無機ハイブリッド材料の形態も高分子材料と同様のものが挙げられ、通常粉体あるいは微粒子などの粒子形状が好ましい。

【0035】
次に、本発明の金微粒子を分散・固定化する方法について説明する。以下では、金微粒子担体材料が微粒子材料である場合を例に挙げて説明するが、担体材料が薄膜などである場合においては、担体材料が液中に分散されないことを除けば以下に説明する方法と同様の方法でその表面への金微粒子の分散・固定化を行うことができる。
【0036】
以下、反応溶液を構成する溶液として水を用いる場合について説明する。

【0037】
先ず、水に担体材料を分散させ、この担体材料分散液に金前駆体が添加される。金化合物は直接反応溶液である水に加えられてもよいが、予め水溶液とされた後反応溶液を構成する水に加えられることが好ましい。このとき金化合物は一度に加えられてもよいし、複数回に分けて加えられてもよい。反応溶液はゆっくりと攪拌されることが好ましい。また、担体材料を分散させた後に金化合物を加えることが好ましいが、金化合物を水に溶解した後、これに担体材料を分散させてもよい。金化合物の水溶液中の濃度としては、10mol/L以下であることが必要である。10mol/Lを超えると還元剤を添加した際水中で金コロイドが形成される。通常は1mmol/L以下とすることが好ましく、10nm以下のナノ粒子を形成するためには0.1mmol/L程度であることが通常好ましい。なお、あまりにも希薄すぎると金が高分子上に還元析出できなくなるという問題があり、通常は0.01mmol/L以上の濃度とされる。金化合物の水溶液中の濃度は、好ましくは0.01mmol/L~1mmol/L、より好ましくは0.05mmol/L~0.5mmol/L、更に好ましくは0.05mmol/L~0.2mmol/Lである。また金化合物の使用量は、一般的には、還元剤分子/Au原子=1~1000、より好ましくは1~200、さらに好ましくは1~100である。更に、反応溶液中の電解質濃度は、イオン強度で1×10-5~0.05であることが好ましい。
【0038】
また、金化合物の担体材料に対する量は、分散・固定化される金微粒子の大きさ、並びに担体材料表面にどの程度の量の金を分散・固定化するかにより異なる。金の担体材料への担持量は水溶液の濃度と量により、例えば0.01重量%~50重量%までの範囲で調整することができる。したがって、金担持量に応じて、水溶液の金化合物濃度や溶液の使用量を決めればよい。触媒として用いる場合、どのような反応に関与する触媒であるかにより金担持量は異なるが、たとえば、グルコースの酸化触媒として用いられる場合、金の担持量は0.01重量%~5重量%程度が好ましく、より好ましくは、0.1重量%~2.0重量%である。
【0039】
分子材料は通常疎水性であることから、水に対する濡れが悪いが、超音波をかけて分散させることにより、水への分散は可能である。このとき必要であれば、メタノールなどの水溶性有機溶媒を加えるなどの方法を採用してもよいし、溶液中にポリ(N-ビニルピロリドン)などの水溶性高分子を加えるなどしてもよい。金ナノ粒子を固定化するための反応溶液として用いられる水は、水であればどのようなものでもよく特に限定されるものではないが、形成された金微粒子への不純物の混入、付着を防ぐ意味からも、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により有機不純物、金属イオンを除去したものが好ましい。また、反応液のpHは、通常2~13、好ましくは3~9であり、使用する還元剤によって適正な範囲が決まる。温度は、担体として使用される高分子材料の軟化が起こらない範囲で、かつ溶剤の沸点以下、たとえば反応溶液として水を用いる場合、水の沸点(100℃)以下あればよく、特に限定されないが、通常0℃から90℃までの範囲とされ、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合は特に0℃から30℃が望ましく、クエン酸またはその塩を用いるときは30℃から70℃が特に望ましい。

【0040】
また、反応溶液には、担体材料、金化合物のほかに、必要に応じ前記したようにポリ(N-ビニルピロリドン)やポリビニルアルコールなどの水溶性高分子などが加えられてもよい。これらは高分子微粒子の分散や金ナノ粒子の保護剤として添加されるが、その場合には、それらの濃度は金錯イオンに対して、5~30当量であることが好ましい。
【0041】
また、還元剤の添加(滴下)速度は、本発明の目的が達成できる範囲であればよく、特に限定されるものではないが、滴下終了までに1分以上とすることが通常好ましい。また特に上限はないがあまり時間をかけても意味がないことから、通常は20分程度以内とされる。また、添加は連続的でなくてもよく、ある時間をおいて間歇的に添加が行われてもよいが、一度に多量の還元剤を使用することは好ましくないことから、滴下などでの連続的な投入を行い、徐々に還元剤を反応溶液中に供給してやることが好ましい。通常一度に投入する還元剤量は、例えば滴下全量の50~4分の1程度とすることが好ましい。
【0042】
このように、金化合物の種類と濃度、溶液の種類とpH、還元剤の種類と濃度、還元反応の温度、および溶液に添加する添加剤の種類と濃度を適切に選ぶことにより、好ましい結果が得られる。条件設定は、少なくとも高分子の担持体を分離した上澄み液において金コロイドの生成(赤から紫色に発色)が見られないことが必要とされる。
【0043】
高分子材料表面に担持された金微粒子の平均粒子径は、触媒として用いる場合は20nm以下、好ましくは5nm以下であるが、必要であればこれら以外の粒径であってもよい。


【0044】
本発明により得られた金微粒子を担持する材料は、酸化触媒、水添触媒などの触媒として有用である他、担体材料が高分子材料の場合、金の粒子径の違い、担持量、担体となる固体高分子材料の材質の違いにより、ピンク色、赤紫ないし紫色に着色した粒子が得られる。得られた粒子は、耐久性に優れ、また化粧品、各種用途の塗料の着色剤としてすぐれた特性を有している。したがって、本発明において、前記各条件を適宜設定することにより、所望の色をした着色剤を調製することができる。さらに、本発明の金微粒子を担持する材料は、導電性材料、がん治療用マーカー、高感度DNA検出素子、センサーなどとして優れた機能を有することが期待できる。また、還元性官能基の選択により、同一反応での触媒活性や異種反応に対する触媒活性の異なるものを得ることができる。
【0045】
本発明の金微粒子が分散・固定された高分子材料は、グルコースをグルコン酸に酸化する際の酸化触媒として極めて優れた特性を有している。従来グルコースの酸化触媒としてCeO、TiO、活性炭、Rossi活性炭(M.Commotti,C.D.Pina,R.Matarrese,M.Rossi,A.Siani,Appl.Catal.A:General 2005,291,204-209参照)などが優れたものとして知られているが、本発明の材料は、これら従来グルコースの酸化触媒として優れているとして知られたものより、更に特性の良好なものを提供することができる。また、本発明の材料は、特性が幾分落ちてくるものの繰り返し使用が可能である。

【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0047】
参考例1〔カーボンナノホーン(以下CNHと略記する。)への金ナノ粒子の担持(金担持量1.0wt%)〕
CNH(NECエレクトロニクス研究所製)300mgをエタノール溶媒35ml中へ分散させ、金エチレンジアミン錯体6.7mgを加え50℃で撹拌を行った。撹拌を行いながら3.2mMのNaBH水溶液をビュレットで滴下しながら5mlを5分で加えた。分離、洗浄後、100℃で一晩乾燥させた。TEMで観察したところ、金ナノ粒子が均一にCNH上に分散・固定化されており、ほとんど全ての粒子が3~10nmの範囲で存在し、平均粒子径5.7nm、標準偏差1.0nmであった(図2参照;なお、図中の線の長さは50nmである)。

【0048】
参考例2〔ナノポーラスカーボン(以下NPCと略記する。)への金ナノ粒子の担持(金担持量1.0wt%)〕
NPC(Easy Nanotechnology社製)790mgを30%過酸化水素水中に分散させ、24時間室温で撹拌することにより前処理を行った。これを分離、洗浄後室温で真空乾燥させた。前処理したNPCを蒸留水80mLに分散させ、これに金エチレンジアミン錯体17mgを加え室温で2時間撹拌を行った。その後90℃で撹拌しながら、蒸留水20mLに溶解させたNaBH15mgを20分かけてゆっくり滴下した。その後室温で30分撹拌し、濾過、洗浄、真空乾燥させ、金ナノ粒子担持ナノポーラスカーボンを得た。TEMで観察したところ、金ナノ粒子が均一にNPC上に分散・固定化されており、ほとんど全ての金粒子が3~10nmの範囲で存在していた。

【0049】
実施例〔PMMA(ポリメチルメタクリレート)微粒子への金ナノ粒子の担持(金担持量0.5wt%)〕
PMMA微粒子((株)日本触媒製 エポスターMA-1002(粒子径2.6μm))1gを200mLのイオン交換水に加え、よく分散させた。これに金エチレンジアミン錯体10.7mgをイオン交換水54mLと共に加え、0℃で30分間撹拌した。その後、予め0℃に冷却しておいた0.01M NaBH 3.81mLを4分間かけて滴下した。滴下後、濾過、イオン交換水で洗浄、乾燥させ、金ナノ粒子担持高分子微粒子を得た。TEMで観察したところ、金ナノ粒子が高分子微粒子表面にほぼ均一に分散・固定化されており、粒子径3~10nmの金ナノ粒子が多数見られた。平均粒子径は6.9nm、標準偏差は5.5nmであった(図3参照;なお、図中の線の長さは100nmである)。

【0050】
実施例〔メラミン-ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子への金ナノ粒子担持(金担持量0.5wt%)〕
メラミン-ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子((株)日本触媒製 エポスターS(粒子径0.22μm))1gを252mLのイオン交換水に加え、よく分散させた。これに0.01M HAuCl 2.54mLを加え、0℃で30分間撹拌した。その後、予め0℃に冷却しておいた0.01M NaBH 3.81mLを4分間かけて滴下した。滴下後、濾過、イオン交換水で洗浄、乾燥させ、金ナノ粒子担持高分子微粒子を得た。TEMで観察したところ、金ナノ粒子が高分子微粒子表面にほぼ均一に分散・固定化されており、粒子径2~10nmの金ナノ粒子が多数見られた。平均粒子径は4.7nm、標準偏差は4.1nmであった。

【0051】
実施例〔ポリスチレン微粒子への金ナノ粒子担持(金担持量0.5wt%)〕
PMMA微粒子に代えてポリスチレン微粒子(積水化成工業(株)製 テクポリマーSBX-6(粒子径6μm))を用いることを除き実施例と同様にして、金ナノ粒子担持ポリスチレン微粒子を得た。TEMで観察したところ、金ナノ粒子がポリスチレン微粒子表面にほぼ均一に分散・固定化されており、粒子径3~10nmの金ナノ粒子が多数見られた。平均粒子径は13nmであった(図4参照;なお、図中の線の長さは200nmである)。

【0052】
実施例〔ポリビニルクロライド微粒子への金ナノ粒子担持(金担持量0.5wt%)〕
PMMA微粒子に代えてポリビニルクロライド微粒子(ヴイテック(株)製(粒子径0.25μm))を用いることを除き実施例と同様にして、金ナノ粒子担持ポリビニルクロライド微粒子を得た。TEMで観察したところ、金ナノ粒子がポリビニルクロライド微粒子表面にほぼ均一に分散・固定化されており、粒子径3~10nmの金ナノ粒子が多数見られた。平均粒子径は8.4nmであった。

【0053】
比較例1〔PMMA微粒子への金ナノ粒子担持(金担持量0.5wt%)〕
高分子微粒子(粒子径2.6μm)1gを200mLのイオン交換水に加え、よく分散させた。これに金エチレンジアミン錯体10.7mgをイオン交換水54mLと共に加え、0℃で30分間撹拌した。その後、予め0℃に冷却しておいた0.01M NaBH43.81mLをすばやく加えた。添加後、濾過、イオン交換水で洗浄、乾燥させ、金ナノ粒子担持高分子微粒子を得た。TEMで観察したところ、金ナノ粒子が高分子微粒子表面に固定化されており、一部は分散していたが、凝集も多く見られ100nm以上の大きな凝集体もあった。平均粒子径は12.6nm、標準偏差は16.2nmであった(凝集体はカウントせず)(図5参照;なお、図中の線の長さは50nmである)。
【0054】
比較例2〔PMMA微粒子への金ナノ粒子担持(金担持量0.5wt%)〕
高分子微粒子(粒子径2.6μm)1gを0.01M NaCl水溶液(200mL)に分散させた他は実施例3と同様に行った。TEMで観察したところ、金ナノ粒子がPMMA微粒子表面に固定化されていた。比較例1に比べて金ナノ粒子は分散された状態で固定化されていたが、実施例3と比較するとより大きな金ナノ粒子(20~30nm)や凝集体も存在した。平均粒子径は9.5nm標準偏差は7.6nmであった(凝集体はカウントせず)(図6参照;なお、図中の線の長さは50nmである)。
【0055】
実施例〔金ナノ粒子担持高分子微粒子の触媒特性(過酸化水素分解)〕
実施例で調製した試料を用いて、過酸化水素分解反応を行った。5wt%過酸化水素水100mLに試料0.1gを入れ、室温で撹拌した。一定時間毎に反応液5mLを採取し、これに水を加えて200mLとした。撹拌しながらこれに濃硫酸5mLを加え、フェロイン試薬3滴を落とした。この溶液を0.1mol/L硫酸セリウム(IV)水溶液で残存する過酸化水素量を求めることにより、過酸化水素分解率を算出した。実施例の試料を用いた場合においては、60分後に分解率83%であった。なお、比較例1の試料を用いた場合においては、60分後に分解率65%であった。

【0056】
参考〔金ナノ粒子担持カーボンナノホーンの触媒特性(グルコース酸化)〕
参考例1で調製した試料を用いて、水溶液中でのグルコースの酸素酸化を行った。金/グルコースのモル比を1:16000として、グルコース濃度5重量%の水溶液に攪拌下、60℃で、酸素を60mL/minでバブリングした。水溶液のpHを9.5に保つよう、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下し、水酸化ナトリウムの滴下量からグルコン酸の生成量を反応時間の関数として測定した。その結果、100分後に転化率97%となり、上記の金ナノ粒子担持活性炭は比較的低温でグルコースの酸素酸化に高い触媒活性を有することが判明した。

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の方法により製造された表面に貴金属微粒子が分散・固定された固体高分子材料は、酸化触媒、水添触媒、顔料、着色剤、導電剤、その他各種検出素子材料として有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明と先行技術における金微粒子の分散・固定化概念図である。
【図2】図面代用写真であり、参考例1で得られた金ナノ粒子担持カーボンナノホーンのTEM写真である。
【図3】図面代用写真であり、本発明の実施例で得られた金ナノ粒子担持PMMA微粒子のTEM写真である。
【図4】図面代用写真であり、本発明の実施例で得られた金ナノ粒子担持ポリスチレン微粒子のTEM写真である。
【図5】図面代用写真であり、本発明の比較例1で得られた金ナノ粒子担持PMMA微粒子のTEM写真である。
【図6】図面代用写真であり、本発明の比較例2で得られた金ナノ粒子担持PMMA微粒子のTEM写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5