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明細書 :緊急地震警報を発するための方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5470632号 (P5470632)
公開番号 特開2010-085294 (P2010-085294A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成22年4月15日(2010.4.15)
発明の名称または考案の名称 緊急地震警報を発するための方法および装置
国際特許分類 G01V   1/00        (2006.01)
G08B  31/00        (2006.01)
FI G01V 1/00 D
G08B 31/00 B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 7
出願番号 特願2008-255919 (P2008-255919)
出願日 平成20年10月1日(2008.10.1)
審査請求日 平成23年9月28日(2011.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
発明者または考案者 【氏名】大久保 寛
【氏名】竹内 伸直
【氏名】笹井 洋一
個別代理人の代理人 【識別番号】100116517、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 邦雄
審査官 【審査官】阿部 知
参考文献・文献 特開2001-083257(JP,A)
特開平09-090051(JP,A)
特開2004-157094(JP,A)
特開平09-133777(JP,A)
特開平08-002485(JP,A)
特開平10-082864(JP,A)
特開昭57-048679(JP,A)
再公表特許第2005/022198(JP,A1)
竹内伸直 他,地中観測室での地震発生時の電磁変動観測信号 ,電気学会電磁環境研究会資料 ,2008年 6月 5日,Vol.EMC-08 No.1-11 ,Page.41-46
調査した分野 G01V 1/00-99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
緊急地震警報を発するための方法であって、地磁気とピエゾ磁気とを合成した磁場強度が通常の地磁気強度から10秒間以内に次第に増加または減少し、0.1ナノ・テスラ・オーダーの変動があった場合、地震が発生したと認識して、地震の到来を速報することを特徴とする緊急地震警報を発するための方法。
【請求項2】
上記磁場変動の観測は、該磁場強度が通常の地磁気強度より次第に増加又は減少する信号を観測するものであることを特徴とする請求項1に記載の緊急地震警報を発するための方法。
【請求項3】
磁場変動を計測する装置を複数個設置し、該複数個の装置の信号に基づいて震源地を特定することを特徴とする請求項1に記載の緊急地震警報を発するための方法。
【請求項4】
地磁気とピエゾ磁気とを合成した磁場強度が通常の地磁気強度から10秒間以内に次第に増加または減少し、0.1ナノ・テスラ・オーダーの変動をしたことを観測すると共に地震のP波を観測することにより、地震の発生を検知し、地震の到来を速報することを特徴とする緊急地震警報を発するための方法。
【請求項5】
地震のP波が測定点に到達する前に、磁場変動の観測により震源地および強度を推定し、該P波が到達した際には、該P波の観測を加味して、震源地および強度を速報することを特徴とする請求項4に記載の緊急地震警報を発するための方法。
【請求項6】
緊急地震警報装置であって、地磁気とピエゾ磁気とを合成した磁場強度が通常の地磁気強度から10秒間以内に次第に増加または減少し、0.1ナノ・テスラ・オーダーの変動をしたことを測定する磁場変動測定装置、該磁場変動の強度が通常の強度よりも次第に増加することを判断する装置および該判断に基づき地震の生じたことを報告する装置を有することを特徴とする緊急地震警報装置。
【請求項7】
上記磁場変動測定装置は、直交する3軸方向の磁場を測定することが可能であることを特徴とする請求項6に記載の緊急地震警報装置。
【請求項8】
上記磁場変動測定装置が複数個配置されていることを特徴とする請求項6に記載の緊急地震警報装置。
【請求項9】
緊急地震警報装置であって、地磁気とピエゾ磁気とを合成した磁場強度が通常の地磁気強度から10秒間以内に次第に増加または減少し、0.1ナノ・テスラ・オーダーの変動をしたことを観測する磁場変動観測装置および地震のP波観測装置を有し、両装置の観測結果に基づいて、地震の発生を検知し、地震の到来を速報することを特徴とする緊急地震警報装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、緊急地震警報、特に磁場変動を検知することにより地震の発生を確認し、地震の到来を迅速に伝達するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の緊急地震警報は、断層の破壊に伴って発生した弾性波(一般には地震波)のうち、速度の速いP波を利用して、被害をもたらすS波の到来を予測するものである。これは、速度の速い縦波と速度の遅い横波の特徴を利用している。しかし、直下型の地震においては、P波とS波の到達時間に大きな差がない場合もあり、十分な精度の到達予測はできていないのが現状である。
【0003】
従来、地震発生時には膨大なエネルギーが放出されるため、その一部が電磁エネルギーに変換され、何らかの電磁気的な信号が観測されるのではないかという考えが多くの研究者の中にあった。しかし、実際には地震発生時に電磁気的な信号は、国の内外において、これまで全く得られておらず、大きな謎とされてきた。
【0004】
地震発生に伴う電磁気現象については、例えば、アメリカ合衆国地質調査所のJohnston等により30年以上前に断層近くでは地震発生前後に地磁気が変化する可能性があることが理論的に指摘され、カリフォルニアで発生した大きな地震発生の前後で地磁気の値が変化したと報告されている(非特許文献1参照)。しかし、この報告は、地震の数ヶ月前からの地磁気の変化であり、地震の速報に関するものではない。
【0005】
また、地震の前兆電磁気現象を測定して、地震発生の予測を行うものは以前にも考えられていたが(特許文献1参照)、地震が発生したことを電磁気的に検出したものではない。
【0006】
以上のように、地磁気の変動と地震の関連を疑問の余地なく明確に示すような実時間での観測例が存在しない状況が続いたため、この分野での理論的及び実験観測的研究は、ほとんど進展しない状況であった。

【非特許文献1】JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH、 VOL. 81、 NO.20、 JULY 10, 1976
【特許文献1】特開2003-43153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の課題は、地震の発生をP波の観測前に磁場の変化により検知し、地震の到達を速報することである。また、従来のP波の観測と組み合わせてより精度の高い速報を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震M7.2に際して、震源に近い「細倉鉱山」の地下壕で、この地震のP波到達以前から微弱な地磁気変化が観測された。細倉観測点(以下H点と略す)では鉱山の坑道内の地中と地上にフラックスゲート型3成分磁力計が設置されていた。
【0009】
このH点で観測された記録のうち、典型的な記録例として、地磁気3成分のうち鉛直成分(Z)と地震計(加速度計)の同時記録を図1に示す。P波がH点に到達する約6秒前が本震の発生時刻であり、その頃からZ成分の変化が始まっている。P波到達と共に磁力計は、大きく揺れ動いて、見かけ上大きな磁場変化を示している。注目すべきは、本震発生からP波到着時点までの地磁気変化で、その変化量は0.2nT(ナノ・テスラ)程度に過ぎないが、磁力計の測定精度(0.03nT)からして十分有意義な変化であるといえる。ちなみに地磁気の強さは、大体50,000nTであるから、変化量は、その1千万分の1のオーダーである。
【0010】
一般に、地震は、断層が周囲の圧力に耐え切れなくなって、断層面を境に食い違いを起こし、この断層面のずれが次々と拡大してゆくことで、そのずれに伴う地面の振動が遠方まで伝わる現象である。断層面の食い違いは、S波より少し遅い速さで拡大して、ある所で停止する。
【0011】
この破壊した面の面積とすべり量を掛けたものが地震のモーメントと呼ばれ、モーメントから地震のマグニチュードが定義される。
【0012】
破壊された断層面から次々と地震波(P波とS波)が放出されて行くが、それによって断層の周囲の岩盤はゆがみ、強い応力を受ける。岩石には微小な磁鉄鉱が含まれていて、応力を受けるとその磁化が変化する。これをピエゾ磁気効果と呼んでいる。
【0013】
従って地震の断層運動と共に応力を受けた岩盤の領域が次々と広がって行き、その部分が弱い磁石になる。
【0014】
この磁石の作る磁気は光の速さ(地中を進む場合は真空中の30万km/sより遅くなるが、いずれにしても20万km/sよりは速い)で周囲に伝わるので、上記のH点ではP波(約4~5km/s)よりも先に、本震発生とほとんど同時に磁場変化が始まっていたと考えられる。
【0015】
これらの関係を示したものが図2である。
本震発生と同時に、震源(この場合は最初に断層が動き出した場所)のまわりに応力の高まった領域が出来て、これがピエゾ磁気効果によって、弱い磁気を持つ。
【0016】
この磁化した領域の作る磁場は光の速さで直ちにH観測点に届く。一方この領域からP波とS波が発生して観測点に向かって、それぞれの速さで進んで行く。
【0017】
このP波がH点に到達するのは、岩手・宮城内陸地震の場合、本震の約6秒後であった。その間にも断層面のすべりは拡大し、移動して行く(その速さはS波の速さと同程度)ので、応力の変化した領域は楕円状に拡大してゆく。
【0018】
応力の増大した領域で作られたピエゾ磁気による磁場も、ほとんど瞬時にH点に届くので、H点の磁場は増加してゆく。応力変化=ピエゾ磁気を生じた体積はどんどん広がるのでH点の磁場は成長を続けるが、そこに最初に震源で発生したP波が到着して、磁力計が大きくゆれるために、それ以降はまともに磁場を測れなくなってしまう。
【0019】
H点が断層に近すぎれば、磁場が変化したすぐ後にP波が到達してしまう。
【0020】
一方H点が断層から離れていると、P波が到達するまでに時間がかかるので、磁場の成長は十分見届けられるはずなのであるが、磁場は距離と共に急速に減衰するので、磁場の変化量そのものが小さくなってしまう。
【0021】
どのくらい離れた場所でも観測できるような磁場変化を生ずるのかは、今後理論的に解明しなければならない課題であるが、今回の観測例では、震源から20-30km程度離れた観測点で、P波到着が本震発生から10秒後くらいの場合には、磁場変化が検出できると考えられる。
【発明の効果】
【0022】
地震波(P波およびS波)信号は、地震発生から観測地点に地震波が到達するまでの間は全く得られないが、本願発明は、大地中をほぼ光速で伝搬する磁場変動を利用するので、P波に基づく従来の方法に比べて、さらに早い地震の検知が可能であり、緊急地震警報の更なる迅速化を図ることが可能となる。
特に、原子力発電所等の一刻も早い緊急地震速報が必要な機関においては、極めて有効な手段である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下においては、本願発明を実施するための最良の形態を示す。
【実施例1】
【0024】
従来の「緊急地震速報」は、多数点でP波初動を観測して、十分大きな振幅であるならば震源とマグニチュードを算出し、主要動であるS波到着時刻を予想して警報を出す、という仕組みである。P波のみを測定するやり方なので、ここではP方式と呼ぶ。
【0025】
これに対し、本願発明においては、地磁気と上記ピエゾ磁気の合成により、磁力計3成分の内の少なくとも1成分が地磁気の通常値から次第に増加または減少していることにより、地震のP波の到来を待たずして、地震の発生を検知し、警報を発令することが出来る。上記細倉観測点の場合においては、地上および地中の磁力計のZ成分が増加した。このように、磁力計の変動により、地震の発生および震源地を求める方法をここではM方式と呼ぶ。
【0026】
M方式は、一観測点であっても、大地震に対してP方式より先に警報を発することが出来る。
【0027】
磁力計は、地磁気の3成分を計測可能なものが好ましい。また、ボーリング孔を利用して、複数の磁力計と地震計を地中に埋めておいて、磁場の検出精度を高めることが望ましい。
【0028】
また、ピエゾ磁気は、距離の3乗に逆比例して減衰するので、震源と観測点の距離により磁気の強さがことなること、および磁力計の3成分の強さと符号を勘案することにより、震源地を求めることが可能である。
【実施例2】
【0029】
ある程度大きなP波初動を観測した時、それ以前に磁場がある程度成長しているならば、十分大きな断層運動が起こっていると判断できる。その時点で警報を発令する。ここではM-P方式と呼ぶ。
【0030】
このM-P方式は、磁場の到達時刻が数10km-100km間隔の観測点分布であってもほとんど同時と考えられるので、複数のボーリング孔システムで地域防災(Zone Defense)の体制を作ることもできる。
【0031】
人工的な電磁気擾乱の小さい地域(例えば新潟県中越沖地震の柏崎・刈羽原子力発電所の場合など)では、M方式のみ、あるいは、M-P方式で、P波到達と同時に「緊急炉心停止」操作に入ることが出来たであろう。これがどれほど原子力発電所の被害を軽減できたかは、検証すべき課題である。
【0032】
一方、人工的電磁気ノイズが非常に大きい首都圏では、地震に伴う磁場シグナルを検出する手法を開発する研究が不可欠である。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】地震断層運動に伴う磁場変動とP波の振動波形。破線はそれぞれ地震発生時刻及び観測点におけるP波到達時刻を示している。
【図2】本震発生と共に応力による磁気変化領域が拡大して、その磁場(M)はP波よりも早く観測点に到達する。P波が観測点に着くまで磁場(M)は増加を続ける。
図面
【図1】
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【図2】
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