TOP > 国内特許検索 > 含水湿潤ゲルの乾燥方法及び含水湿潤ゲルの乾燥装置 > 明細書

明細書 :含水湿潤ゲルの乾燥方法及び含水湿潤ゲルの乾燥装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4712879号 (P4712879)
公開番号 特開2010-189229 (P2010-189229A)
登録日 平成23年4月1日(2011.4.1)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 含水湿潤ゲルの乾燥方法及び含水湿潤ゲルの乾燥装置
国際特許分類 C01B  33/158       (2006.01)
F26B   3/04        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
FI C01B 33/158
F26B 3/04
B01J 13/00 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 11
出願番号 特願2009-036476 (P2009-036476)
出願日 平成21年2月19日(2009.2.19)
審査請求日 平成22年4月26日(2010.4.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
発明者または考案者 【氏名】梶原 浩一
【氏名】前花 亮平
【氏名】桑谷 俊伍
【氏名】金村 聖志
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100079108、【弁理士】、【氏名又は名称】稲葉 良幸
【識別番号】100109346、【弁理士】、【氏名又は名称】大貫 敏史
【識別番号】100117189、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 昭彦
【識別番号】100134120、【弁理士】、【氏名又は名称】内藤 和彦
【識別番号】100109586、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 徹雄
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開昭59-128205(JP,A)
特開昭55-090414(JP,A)
特開2008-222527(JP,A)
特表2001-518875(JP,A)
化学大辞典編集委員会,化学大辞典6,共立出版株式会社,1979年,p. 70-71
SUDA, S. et al.,Formation mechanism of amorphous Na2O-SiO2 spheres prepared by sol-gel and ion-exchange method,J. Non-Cryst. Solid.,2003年,Vol. 321, No. 1-2,p. 3-9
調査した分野 C01B 33/00-33/193
特許請求の範囲 【請求項1】
含水湿潤ゲルの乾燥方法であって、まず含水湿潤ゲルを収容する含水湿潤ゲル収容部の溶媒蒸気含有気体を脱水剤収容部に送り、溶媒蒸気含有気体を脱水剤と接触させた後、接触後の溶媒蒸気含有気体を再度含水湿潤ゲル収容部に移送することにより、該含水湿潤ゲルから水を除去して含水湿潤ゲルの水含有量を減少させ、次いで、残余の溶媒を除去することにより湿潤ゲルを乾燥することを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【請求項2】
脱水剤がモレキュラーシーブであることを特徴とする請求項1に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【請求項3】
前記含水湿潤ゲルが含水シリカゲルであることを特徴とする請求項1または2に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【請求項4】
前記残余の溶媒が有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、アルコール類、アミド類、炭化水素類、ケトン類、エステル類またはエーテル類を含むことを特徴とする請求項4に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【請求項6】
請求項1に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法に用いる乾燥装置であって、
含水湿潤ゲル収容部、脱水剤収容部、および該含水湿潤ゲル収容部と脱水剤収容部とを結ぶ連通部を有し、
前記連通部が連通管であり、該連通管に気体移送装置が設けられていることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【請求項7】
加熱部がさらに設けられていることを特徴とする請求項6に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置において、前記脱水剤がモレキュラーシーブであることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【請求項9】
請求項6~のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置において、前記含水湿潤ゲルが含水湿潤シリカゲルであることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤ゲルに含有されている水を含む複数の溶媒分子の内、まず表面張力が大きい溶媒である水の含有量を低下し、次いで、湿潤ゲルの乾燥を行う含水湿潤ゲルの乾燥方法及びこの方法に用いる湿潤ゲルの乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル-ゲル法によるゲルの合成は、合成温度が溶融法や気相混合法に比べて低いこと、高濃度のフッ素ドープが行えること、またこの結果導入されたSiF基によってSiOH基を除去し、真空紫外域の光透明性を向上できること、などの利点があることから、機能性ガラス、セラミックス、無機-有機複合体の新しい合成法として、材料分野で注目されている技術である。しかし、湿潤ゲルを乾燥させて乾燥ゲルを得る過程では、溶媒の蒸発に伴ってゲル細孔中に形成された気-液界面(メニスカス)で毛細管力が生じてゲルが収縮するため、乾燥ゲルに亀裂が入りやすいという問題がある。
【0003】
水は、モノマーの重合剤や溶媒として、多くの湿潤ゲルの作製に用いられているが、水はアルコールのような他の汎用溶媒に比べて表面張力が大きく、また沸点も高いため、乾燥の最終段階で濃縮され、大きな毛細管力を生じる。このため、水を含む湿潤ゲルを短時間で乾燥させたり、大きな乾燥ゲルを得ることは極めて困難である。ゲルの割れを抑制しつつ再現性良く乾燥ゲルを得るためには、乾燥中の収縮応力の原因である毛細管力を小さくし、かつゲル全体で均一な溶媒蒸発及び均一な収縮を起こさせることが必要である。
【0004】
亀裂のない乾燥ゲルを得る方法として、化学的方法と物理的方法が従来より知られている。化学的方法とは、ゲルの製造過程において試薬等を添加し、ゲル骨格の化学構造などに手を加えるものであって、(1)高沸点かつ表面張力の小さい溶媒を乾燥制御剤として添加した湿潤ゲルを作製し、乾燥の最終段階での毛細管力を下げる方法(例えば、非特許文献1参照)、(2)毛細管力が細孔径に反比例することに着目し、湿潤ゲルの細孔径を大きくする方法(例えば、非特許文献2参照)、(3)湿潤ゲルに微粒子を加えることで湿潤ゲルの細孔径を増大させ、かつ湿潤ゲルの強度を高める方法(例えば、特許文献1、2参照)、(4)ゲル骨格の化学構造を修飾し、ゲルの柔軟性を高めつつ毛細管力を小さくする方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0005】
一方、物理的方法とは、湿潤ゲルにほとんど手を加えずに亀裂のない乾燥ゲルを得る方法であって、(5)乾燥を極めてゆっくり行ってゲルを均一に収縮させる方法、(6)温度と雰囲気を厳密に制御して乾燥を行う方法(例えば、特許文献3~7、非特許文献3参照)、(7)超臨界状態を経ることによって気-液界面をなくす超臨界乾燥を行い、毛細管力が働かないようにする方法、などが知られている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開昭60-131834号公報
【特許文献2】特開昭64-87523号公報
【特許文献3】特開平6-219726号公報
【特許文献4】米国特許第5243769号明細書
【特許文献5】米国特許第5343633号明細書
【特許文献6】特開2001-158615号公報
【特許文献7】特開2002-28472号公報
【0007】

【非特許文献1】T.Adachi et al.J.Mater.Sci.4407,22(1987)
【非特許文献2】H.Kozuka et al.Chem.Mater.1,398(1989)
【非特許文献3】F.Kirkbir et al.J.Sol-Gel Sci.Technol.6,203(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、化学的方法では、例えば、ゲルの化学組成と作製条件が非常に限定され、また、加える試薬が発ガン性などの毒性を有している場合があり、実用化が難しい場合がある。また、物理的方法の内、上記(5)の方法では乾燥ゲルの作製に非常に時間を要する、上記(6)の方法では湿潤ゲル中の溶媒を乾燥の容易な溶媒に一度置換することが必要であり、また、乾燥のために別途気体が必要である、上記(7)の方法では耐圧容器が必要であり、また湿潤ゲル中の溶媒を超臨界乾燥の容易な溶媒(CO2)に一度置換することが必要なため、ゲルの大きさが耐圧容器に制限される、という問題がある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、上記従来の問題が解決された、具体的には溶媒中に水を含む含水湿潤ゲルを乾燥させる過程で、ゲルに手を加えず、かつ有機溶媒や気体など亀裂の発生を抑制するための試薬を使用することなく、ゲルの亀裂の発生を抑制する新規な乾燥方法およびこの方法に用いられる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究、検討を行ったところ、水を含む有機溶媒を含有する湿潤ゲル、すなわち含水湿潤ゲルを乾燥する際に、まず、溶媒を含む含水湿潤ゲルから表面張力が大きい溶媒である水を除去し、次いで、残る溶媒を取り除いて乾燥することにより、ゲルに亀裂が発生することが大幅に抑制されることを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。
【0011】
本発明は以下の含水湿潤ゲルの乾燥方法および含水湿潤ゲルの乾燥装置に関するものである。
(1)含水湿潤ゲルの乾燥方法であって、まず該含水湿潤ゲルから水を除去して含水湿潤ゲルの水含有量を減少させ、次いで、残余の溶媒を除去することにより湿潤ゲルを乾燥することを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0012】
(2)前記水の除去が、含水湿潤ゲルからの溶媒蒸気を含む気体を脱水剤と接触させることにより行われることを特徴とする上記(1)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0013】
(3)前記水の除去が、含水湿潤ゲルを収容する含水湿潤ゲル収容部の溶媒蒸気含有気体を脱水剤収容部に送り、溶媒蒸気含有気体を脱水剤と接触させた後、接触後の溶媒蒸気含有気体を再度含水湿潤ゲル収容部に移送することにより行われることを特徴とする上記(2)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0014】
(4)前記水の除去が、含水湿潤ゲルを収容する含水湿潤ゲル収容部内の溶媒蒸気を脱水剤収容部に開口された孔を通して脱水剤収容部に拡散させ、前記溶媒蒸気を脱水剤収容部内の脱水剤と接触させることにより行われることを特徴とする上記(2)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0015】
(5)脱水剤がモレキュラーシーブであることを特徴とする上記(2)~(4)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0016】
(6)前記含水湿潤ゲルが含水シリカゲルであることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0017】
(7)水以外の溶媒が、アルコール類、アミド類、炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類などの有機溶媒であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。
【0018】
(8)含水湿潤ゲル収容部、脱水剤収容部、および該含水湿潤ゲル収容部と脱水剤収容部とを結ぶ連通部を有することを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【0019】
(9)前記連通部が連通管であり、該連通管に気体移送装置が設けられていることを特徴とする上記(8)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【0020】
(10)前記連通部が含水湿潤ゲル収容部と脱水剤収容部の境界面に設けられた孔であることを特徴とする上記(8)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【0021】
(11)加熱部がさらに設けられていることを特徴とする上記(8)~(10)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【0022】
(12)上記(8)~(11)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置において、前記脱水剤がモレキュラーシーブであることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【0023】
(13)上記(8)~(12)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置において、前記含水湿潤ゲルが含水湿潤シリカゲルであることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。
【発明の効果】
【0024】
1.本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、含水湿潤ゲルに手を加えることなく乾燥を行う物理的手法であるため、ゲルを構成する化合物の種類に関係することなく亀裂のない乾燥ゲルを得ることができる、汎用性の高い方法および装置である。
【0025】
2.また、本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、含水湿潤ゲル中の水の含有量を低下させる方法として、再生の容易な脱水剤、例えばモレキュラーシーブ(ゼオライトなど)を用いることができることから、脱水剤を繰り返し使用でき、また単純な機構で簡単に含水湿潤ゲルの乾燥を行うことができる。
【0026】
3.さらに本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、水を除去する際の乾燥ゲルにおける亀裂の発生を抑制するために、特別な試薬や特別な気体を用いる必要がなく、また耐圧容器などの特別な容器や装置を用いる必要もないことから、乾燥ゲルを安価に製造することができる。
【0027】
4.また発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、常圧で実施でき、耐圧容器などの特別な装置や超臨界状態を作り出す必要が無い。このため、湿潤ゲルの収容容積の制限がないことから、大きな湿潤ゲル乾燥装置を構成でき、特別な器具を用いることなく大きな乾燥ゲルを作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】含水湿潤ゲルの乾燥装置の一例の模式図である。
【図2】含水湿潤ゲルの乾燥装置の他の例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
前記したように、含水湿潤ゲルを乾燥する際に乾燥ゲルに亀裂が発生する原因の一つは、乾燥時に湿潤ゲル中の細孔が収縮することである。この原因となるのは、湿潤ゲルの細孔に働く溶媒の表面張力である。水は表面張力が他の汎用の溶媒に比べ大きく、また、沸点も高いため、乾燥が進行すると他の溶媒が蒸発した後細孔に水が残り、細孔に大きな表面張力が働いて、孔の収縮を引き起こす。したがって、本発明者らは、含水湿潤ゲルの乾燥時の収縮を抑制するためには、まず含水湿潤ゲルから表面張力の大きな溶媒である水をできるだけ取り除き、次いで、残りの溶媒を乾燥させればよいという従来考えられていなかった考えに至った。このような方法によれば、ゲルの種類を問うことなく、いずれのゲルであっても乾燥時に亀裂の発生なく含水ゲルの乾燥が行える。

【0030】
具体的には、含水湿潤ゲルは、水とアルコール類、アミド類、炭化水素類、フッ素化された炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類などの汎用の他の溶媒を含んでいる。これら溶媒は、含水ゲルが収容されている容器内の空間ではそれぞれの溶媒の蒸気圧に基づく分圧により蒸気として存在している。本発明においては、これら水と他の有機溶媒を含む気体を脱水剤と接触させ、水のみあるいは極力水のみを脱水剤に吸着させ、気体中の水の蒸気圧を下げ、これによって含水ゲルからさらに水を蒸発させ、これを繰り返すことにより含水湿潤ゲル中の水の含有量を減少させ、乾燥の際に亀裂が入らない程度の水の含有量となれば水の除去を終わり、残留する溶媒を蒸発乾燥させることにより乾燥ゲルを得るものである。

【0031】
上記脱水剤として、例えば、モレキュラーシーブ、シリカゲルなどの物理吸着脱水剤や、五酸化リン、濃硫酸、塩化カルシウム、酸化カルシウム(生石灰)などの化学脱水剤が使用でき、機械的脱水器としては、例えばコールドトラップが使用できるが、水のみを高い効率で選択的に吸着でき、かつ安価で再生も容易なモレキュラーシーブを脱水剤として用いることが好ましい。なお、溶媒中に、例えばエタノールのような分子径の小さい溶媒分子が含まれている場合は、水を選択的に除去するために、該溶媒分子を吸着しないモレキュラーシーブを使用する必要がある。このようなモレキュラーシーブとしては、例えば、モレキュラーシーブ3A(カリウム置換A型ゼオライト)や2A(セシウム置換A型ゼオライト)が挙げられる。

【0032】
乾燥する湿潤ゲルとしては、含水湿潤ゲルであればよく、無機ゲルあるいは有機ゲルのいずれであってもよい。無機ゲルとしては、例えば、シリカゲル、アルミナゲル、ジルコニアゲル、チタニアゲル、バナジアゲルなどが挙げられる。また、有機ゲルとしては、例えば、レゾルシノール/ホルムアルデヒドゲル、メラミン/ホルムアルデヒドゲル、イソシアヌレートゲル、ポリウレアゲル、ウレタンゲル、フェノール/フルフラールゲルなどが挙げられる。有機無機複合ゲルとしては、例えば、アルキル置換ケイ素アルコキシドの重合体などが挙げられる。また、本発明を適用する湿潤ゲルとしては、シリカ湿潤ゲルが好ましい。シリカ湿潤ゲルは、水ガラス、テトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランなどのアルコキシシラン、およびこれらのオリゴマー、コロイダルシリカなどを原料とし、ゾル-ゲル法により製造することができる。アルコキシシランを用いる場合は、そのアルコール溶液に水を加え、さらに触媒としてアルカリや酸を加えることによって、アルコキシシランの加水分解と重合を進行させればよい。

【0033】
含水湿潤ゲルから水を除去する工程においては、含水湿潤ゲルは加熱されても加熱されなくてもよい。加熱すれば、溶媒蒸気圧が高くなり、脱水を短時間で行うことができることから、通常加熱することが好ましい。脱水は、含水湿潤ゲルの収容部と脱水剤収容部とを連通し、これら全体が密閉された系を構成するようにして行われる。含水湿潤ゲル収容部の水を含む溶媒含有気体は、拡散により、あるいは送風装置などの気体移送装置を用いて脱水剤収容部に送られ、脱水剤と接触させることができる。例えば拡散により溶媒蒸気含有気体が接触する場合、水が脱水剤により除去されると、水含有濃度が周りの気体と異なることになり、水分子が脱水剤の方向に拡散して、溶媒蒸気含有気体の水濃度が均一に保たれる。これの繰り返しにより徐々に溶媒蒸気含有気体中の水の除去が起こり、ひいては含水湿潤ゲル中の水の濃度が低下することになる。また、単純拡散のみでなく、送風装置を用い、含水湿潤ゲル収容部の溶媒含有気体を脱水剤収容部に移送し、脱水剤と溶媒含有気体を接触させ、気体の脱水を行った後再度この水の除去された気体を含水湿潤ゲル収容部へと移送することにより、より短時間で含水湿潤ゲル中の水分の除去を行うことができる。

【0034】
含水湿潤ゲルの水の除去は、含水湿潤ゲルの全ての水が完全になくなるまで行う必要はなく、湿潤ゲルを乾燥することにより、亀裂の無い乾燥ゲルが得られる程度以下の水の濃度とされればよい。含水湿潤ゲルの水の含有量は、例えば、湿潤ゲル収容部の蒸気含有気体の水の分圧あるいは含有量を測定することにより検知することもできるから、これらの値を検知することにより水の除去工程の終点を検知してもよい。水の含有量、脱水剤の種類、量、強制循環か単純拡散かにより処理時間は異なるが、通常1~2日程度脱水工程を行えば、乾燥により亀裂の無い乾燥ゲルを形成することができる。

【0035】
こうして水が除去された含水湿潤ゲルは、加熱によりゲルから溶媒が蒸発され、乾燥される。加熱温度は、ほぼすべての溶媒の蒸発除去が終わるまでは、比較的低温(例えば、シリカゲルの場合、40~200℃)に保たれる。その後、ゲル中に残留する、微量の溶媒および有機成分を除去するため、比較的高温(例えば、シリカゲルの場合、200~800℃)で加熱が行われる。

【0036】
次に、図1および2を参照しながら、本発明の含水湿潤ゲルの脱水乾燥方法および乾燥装置をさらに具体的に説明する。なお、図1および図2の装置は、本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法に用いられる装置を説明するために例示したものであり、本発明の含水湿潤ゲルの乾燥装置がこれらに限定されるものではない。

【0037】
図1は、本発明を実施するための乾燥装置の一例である。図1において、1は含水湿潤ゲル収容部を構成する湿潤ゲル容器であり、2は図示されていない脱水剤を収容する脱水剤収容部を構成する脱水剤容器である。湿潤ゲル容器1内には、湿潤ゲル3と溶媒4が収容されている。図1の乾燥装置では、脱水剤容器2は湿潤ゲル容器1の上に嵌合または螺合され、湿潤ゲル容器1と脱水剤容器2は密閉された空間を形成している。脱水剤容器2の底面には孔7が開けられており、これにより湿潤ゲル容器1の上部空間8と脱水剤容器2内の脱水剤収容空間とが連通され、湿潤ゲル容器1の上部空間8の溶媒蒸気が脱水剤と接触可能とされている。図1では脱水剤容器2は湿潤ゲル容器1の上部に取り付けられているが、湿潤ゲル容器1の側面などに取り付けられてもよい。

【0038】
この装置を用いての含水湿潤ゲルの乾燥方法を説明すると、まず、脱水剤容器2を取り外した状態で、湿潤ゲル容器1内で湿潤ゲルを形成する。湿潤ゲルの形成は、例えば、湿潤ゲル容器1内にゲル形成材料を入れ、反応させてゲルを形成し、これを熟成してゲルを強化する方法などが挙げられる。なお、他の容器でゲルを形成した後、湿潤ゲル容器1に溶媒と共にそのゲルを入れるようにしてもよい。また、容器内の溶媒を適宜の量除去し、乾燥時間の短縮を図ることもできる。次いで、脱水剤が収納された脱水剤容器2を湿潤ゲル容器1の上部に嵌合あるいは螺合させ、装置全体を密閉状態とする。この状態で、湿潤ゲル容器1を任意の加熱手段で加熱し、この状態を保持する。このとき、加熱により蒸発した含水湿潤ゲルの溶媒は、孔7を通して脱水剤容器2内に拡散する。これにより、溶媒蒸気中の水成分のみが脱水剤により取り除かれる。これにより、気体中の水の蒸気圧が下がり、周りの水分含量の高い気体との濃度不均衡が生じる。この濃度不均衡を是正するために、周りの水分含有量の高い気体から水分が拡散し、順次湿潤ゲル容器1内の溶媒蒸気から水分が除去される。湿潤ゲル容器1内の溶媒蒸気中の水分の蒸気圧が下がると、容器1内の溶媒4から水分が蒸発して、徐々に溶媒中の水分含有量が低くなっていく。1~2日この状態を保持することにより、容器内の溶媒4中の水分はほぼ全てが除去される。このとき、湿潤ゲル容器1に容器内空間の気体中の水分含有量を測定する装置を取り付け、この装置により気体中の水分含有量を計測し、この値が一定値以下となったら、水分除去工程を終了するようにしてもよい。さらに、測定装置を取り付けないでも、容器内空間の気体をサンプリングのため少量取り出し、この気体の分析により、水分除去工程の終点を決めてもよい。

【0039】
水分の除去が終わった後、脱水剤容器2を取り外し、湿潤ゲル容器1を加熱することにより水の除去された溶媒を蒸発除去する。ほぼ完全に溶媒が蒸発除去された後、更に高温に加熱して溶媒を完全に除去する.これにより、亀裂の無い乾燥ゲルが得られる。

【0040】
図2は、本発明を実施するための他の乾燥装置の例を示すものである。図2において、図1と同じ機能を有する装置については同じ番号が付してある。図2の乾燥装置は、湿潤ゲル容器1と脱水剤容器2とこれを連結する連結管9、10と連結管に設けられた送風器6からなっている。また、連結管にはコック5、5が設けられており、コックの切り替えにより湿潤ゲル容器1と脱水剤容器2との連通、湿潤ゲル容器1と外部配管11、12との連通、脱水剤容器2と外部配管11、12との連通がとれるようにされている。図1の乾燥装置と図2の乾燥装置の違いは、湿潤ゲル容器1の上部空間の溶媒蒸気含有気体と脱水剤との接触が、図1では気体の拡散作用によるのに対し、図2の装置では、送風器により機械的に溶媒蒸気含有気体を循環させる点である。

【0041】
図2の乾燥装置による含水湿潤ゲルの乾燥方法を説明すると、コック5、5の切り替えにより、湿潤ゲル容器1と脱水剤容器2とを連通管を通して連通させる。湿潤ゲル容器1を加熱しつつ、送風器6により湿潤ゲル容器1の上部空間の溶媒含有気体を脱水剤容器2を通して循環させる。1~2日程度この状態を保持した後、あるいは溶媒上部空間8の水の蒸気圧あるいは水分含有量から水の除去が終わったことを確認した後、コック5を切り替えて湿潤ゲル容器1と外部配管とを連通させる。これにより、湿潤ゲルから溶媒を除去する。ほぼ完全に溶媒が除去された後、さらに加熱温度を上げ、湿潤ゲルから完全に溶媒を除去して、亀裂の無い乾燥ゲルを形成する。図2の装置では、さらにコックの切り替えにより、脱水剤容器2と外部配管11、12とを連通させ、乾燥空気を外部配管を通して脱水剤容器2に送りつつ、脱水剤容器2を加熱するなどして、容器内に収納された脱水剤の再生を行うことができる。

【0042】
本発明で得られた乾燥ゲルは多孔質であるため、従来の乾燥方法で得られた乾燥ゲルと同様、断熱材、吸着剤、触媒担体、吸音材などとして用いることができる。さらに、乾燥ゲルがシリカゲルの場合、これを焼結処理することによりシリカガラスが得られる。シリカガラスは、各種金属イオンのホストとして蛍光材料、レーザー材料、光磁気光学材料、光・磁気機能材料への応用が期待される。また、透明性にも優れており、修飾元素のドープも可能であるため、光コネクターなどの光素子、光ファイバー材料などへの用途も期待できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例は、いずれも図1に示される形式の乾燥装置により行なわれた。
【実施例】
【0044】
実施例1
テトラエトキシシラン5.21gに、エタノール4.61gおよび硝酸0.032gを含む水4.50gを添加して20℃で10分間攪拌して均一な透明溶液を得た。この溶液の入った容器1を密封し、80℃で2日間静置してゲル化とゲルの熟成を行った。300℃の乾燥空気中で3時間以上乾燥させたモレキュラーシーブ3A 約27gを容器2に詰め、湿潤ゲルの入った容器1と連結して80℃でさらに1日間静置し、湿潤ゲルに含まれる溶媒の脱水を行った。続いて、モレキュラーシーブ3Aの入った容器2を取り外して湿潤ゲルの入った容器を開封し、80℃で乾燥を行ったところ、3日間で乾燥が終了し、亀裂のない乾燥ゲルが得られた。得られた乾燥ゲルを空気中、300℃で熱処理して有機成分を除去した後、窒素吸着測定を行ったところ、全細孔容積、BET比表面積、および両者の値から円筒状細孔を仮定して計算した平均細孔直径は、それぞれ0.53cm3-1、946m-1、2.3nmであった。
【実施例】
【0045】
比較例1
テトラエトキシシラン5.21gに、エタノール4.61gおよび硝酸0.032gを含む水4.50gを添加して20℃で10分間攪拌して均一な透明溶液を得た。この溶液の入った容器1を密封し、80℃で2日間静置してゲル化とゲルの熟成を行った。この容器を密封したまま、この湿潤ゲルに含まれる溶媒の脱水を行わずに80℃でさらに1日間静置し、続いて湿潤ゲルの入った容器を開封して80℃で乾燥を行ったところ、4日間で乾燥が終了し、亀裂が数本入った乾燥ゲルが得られた。得られた乾燥ゲルを空気中、300℃で熱処理して有機成分を除去した後、窒素吸着測定を行ったところ、全細孔容積、BET比表面積、および両者の値から円筒状細孔を仮定して計算した平均細孔直径は、それぞれ0.45cm3-1、808m2-1、2.2nmであり、実施例1で得られた乾燥ゲルと比較して大きな違いはなかった。
【実施例】
【0046】
実施例2
テトラエトキシシラン5.21gに、2-プロパノール4.51gおよびフッ化水素0.051g含む水4.51gを添加して20℃で5分間攪拌し、均一な透明溶液を得た。この溶液の入った容器1を密封して20℃で静置したところ、約25分でゲル化した。この湿潤ゲルの入った容器をモレキュラーシーブ3Aが約27gの入った容器2と連結して60℃で2日間静置し、湿潤ゲルに含まれる溶媒の脱水を行った。続いて、モレキュラーシーブ3Aの入った容器2を取り外して湿潤ゲルの入った容器1を開封し、60℃で乾燥を行ったところ、2日間で乾燥が終了し、亀裂のない乾燥ゲルが得られた。得られた乾燥ゲルを空気中、300℃で熱処理して有機成分を除去した後、窒素吸着測定を行ったところ、全細孔容積、BET比表面積、および両者の値から円筒状細孔を仮定して計算した平均細孔直径は、それぞれ1.52cm3-1、506m2-1、12nmであった。
【実施例】
【0047】
比較例2
テトラエトキシシラン5.21gに、2-プロパノール4.51gおよびフッ化水素0.051gを含む水4.51gを添加して20℃で5分間攪拌し、均一な透明溶液を得た。この溶液の入った容器1を密封して20℃で静置したところ、約25分でゲル化した。この容器を密封したまま、湿潤ゲルに含まれる溶媒の脱水を行わずに60℃で2日間静置し、続いて湿潤ゲルの入った容器を開封して60℃で乾燥を行ったところ、3日間で乾燥が終了し、約十数本の亀裂が入った乾燥ゲルが得られた。得られた乾燥ゲルを空気中で300℃で熱処理して有機成分を除去した後、窒素吸着測定を行ったところ、全細孔容積、BET比表面積、および両者の値から円筒状細孔を仮定して計算した平均細孔直径は、それぞれ1.44cm3-1、357m2-1、16nmであり、実施例1で得られた乾燥ゲルと比較して大きな違いはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明で得られた乾燥ゲルは、断熱材、吸着剤、触媒担体、吸音材として利用することができ、またこれを焼結処理して得られるシリカガラスは、各種金属イオンのホストとして蛍光材料、レーザー材料、光・磁気機能材料などとして利用可能である。本発明は、これらの用途に適する乾燥ゲルを製造するための方法および装置として有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 湿潤ゲル容器
2 脱水剤容器
3 湿潤ゲル
4 溶媒
5 コック
6 送風器
7 孔
8 上部空間
9、10 連結管
11、12 外部配管
図面
【図1】
0
【図2】
1