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明細書 :導電性高分子薄膜複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4639336号 (P4639336)
登録日 平成22年12月10日(2010.12.10)
発行日 平成23年2月23日(2011.2.23)
発明の名称または考案の名称 導電性高分子薄膜複合体
国際特許分類 H01B   5/14        (2006.01)
B32B   7/02        (2006.01)
B32B   9/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
H01L  31/02        (2006.01)
FI H01B 5/14 A
B32B 7/02 104
B32B 9/00 A
H01L 31/04 F
H01L 31/02 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2005-513639 (P2005-513639)
出願日 平成16年8月31日(2004.8.31)
国際出願番号 PCT/JP2004/012566
国際公開番号 WO2005/024852
国際公開日 平成17年3月17日(2005.3.17)
優先権出願番号 2003310187
優先日 平成15年9月2日(2003.9.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年7月3日(2007.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 栄次
【氏名】宮入 圭一
【氏名】遠藤 守信
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
審査官 【審査官】前田 寛之
参考文献・文献 特開2002-335004(JP,A)
特開2003-177682(JP,A)
特開2003-218361(JP,A)
特開2003-060181(JP,A)
特開2003-115255(JP,A)
調査した分野 H01B 5/14
B32B 7/02
B32B 9/00
H01L 31/02
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性高分子にカーボンナノチューブ(CNT)が配合された導電性高分子薄膜と、
該導電性高分子薄膜の一方の面に形成された透明金属酸化物半導体膜と、
該透明金属酸化物半導体膜上に形成された第1の電極と、
前記導電性高分子薄膜の他方の面に形成された第2の電極とを具備し、
前記導電性高分子薄膜がp型半導体の性質を有し、前記透明金属酸化物半導体膜がn型半導体の性質を有して、導電性高分子薄膜と透明金属酸化物半導体膜とがpn接合し、前記カーボンナノチューブの一方の端部が、前記透明金属酸化物半導体膜の厚さ分だけ隔てて前記第1の電極と対峙し、前記カーボンナノチューブの他方の端部が前記第2の電極と接触していることを特徴とする導電性高分子薄膜複合体。
【請求項2】
前記金属酸化物半導体膜がTiO2膜であることを特徴とする請求項1記載の導電性高分子薄膜複合体。
【請求項3】
前記導電性高分子薄膜の厚さが10nm~10μm、前記金属酸化物半導体膜の厚さが10nm~10μmであることを特徴とする請求項1または2項記載の導電性高分子薄膜複合体。
【請求項4】
前記導電性高分子に対するCNTの配合割合が10wt%以下であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の導電性高分子薄膜複合体。
【請求項5】
前記CNTが直径100nm以下のMWCNTもしくはSWCNTであることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の導電性高分子薄膜複合体。
【請求項6】
前記導電性高分子が、ポリフェニレンビニレンまたはポリチオフェンの誘導体から構成された可視光域に強い光吸収性を有する材料であることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の導電性高分子薄膜複合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電界電子放出体、太陽電池、光センサ等に好適に用いることのできる導電性高分子薄膜複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、可視光を効率よく吸収して発光したり、また耐久性、耐熱性等にも優れることから、有機EL素子、有機太陽電池、光デバイス等への応用が検討されている。導電性高分子の多くはP型半導体的性質を有し、電子受容性分子(ドーパント)がドーピングされることで、P型半導体的性質は一層強められる。
また、近年、これら導電性高分子にフラーレンやCNT(カーボンナノチューブ)などのナノカーボンを混合して特性の向上を図ることが検討されている(例えば、1)E.Kymakis and G.A.J.Amaratunga,Applied Physics Letters,Vol.80,pp.112-114(2002)(ポリチオフェンにCNTドープして光電変換向上),2)G.Yu,J.Gao,J.C.Hummelaen,F.Wudl and A.H.Heeger,Science,Vol.270,pp.1789-1791(1995)(ポリフェニレンビニレン誘導体とフラーレン誘導体を混合して初めて2%を超える高い光電変換効率を達成),3)F.Padinger,R.S.Rittiberger,and N.S.Sariciftci,Advanced Functional Material,Vol.13,pp.85-88(2003)(ポリチオフェンとフラーレンの誘導体の混合膜を成膜後処理して3.6%の効率達成))。

【非特許文献1】E.Kymakis andG.A.J.Amaratunga,Applied Physics Letters,Vol.80,pp.112-114(2002)(ポリチオフェンにCNTドープして光電変換向上)
【発明の開示】
【0003】
ところで、発明者が検討したところ、導電性高分子にフラーレンを混入させた複合体の場合には、光センサなどに用いた場合のセンサ感度が却って低下してしまうなどの課題が生じた。
また、CNTは、アスペクト比が大きく、長さが数μmのものが存在することから、導電性高分子に混入して薄膜状にした場合には、薄膜からCNTが突き出てしまうので、薄膜の形成が困難になるという課題が生じた。
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、薄膜状に形成でき、電界電子放出体、太陽電池、光センサ等に好適に用いることのできる導電性高分子薄膜複合体を提供するにある。
本発明に係る導電性高分子薄膜複合体は、導電性高分子にカーボンナノチューブ(CNT)が配合された導電性高分子薄膜と、該導電性高分子薄膜の一方の面に形成された透明金属酸化物半導体膜と、該透明金属酸化物半導体膜上に形成された第1の電極と、前記導電性高分子薄膜の他方の面に形成された第2の電極とを具備し、前記導電性高分子薄膜がp型半導体の性質を有し、前記透明金属酸化物半導体膜がn型半導体の性質を有して、導電性高分子薄膜と透明金属酸化物半導体膜とがpn接合し、前記カーボンナノチューブの一方の端部が、前記透明金属酸化物半導体膜の厚さ分だけ隔てて前記第1の電極と対峙し、前記カーボンナノチューブの他方の端部が前記第2の電極と接触していることを特徴とする。
前記金属酸化物半導体膜にTiO2膜などのn型半導体を用いると好適である。
また、前記導電性高分子薄膜および前記金属酸化物半導体膜の厚さは10nm~10μmにすると好適である。
前記導電性高分子に対するCNTの配合割合は10wt%以下が好適である。
また、前記CNTは直径が100nm以下のMWCNTやSWCNTを用いるのが好ましい。
上記p型半導体の性質を有する導電性高分子には、ポリフェニレンビニレンまたはポリチオフェンの誘導体が好適である。
【0004】
[発明の効果]
以上のように、本発明によれば、薄膜状に形成でき、電界電子放出体、太陽電池、光センサ等に好適に用いることのできる導電性高分子薄膜複合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】導電性高分子膜の光吸収特性を示すグラフである。
【図2】光素子の構造の一例を示す説明図である。
【図3】導電性高分子にCNTを添加した光素子の電圧-電流特性を示すグラフである。
【図4】導電性高分子にCNTを添加した光素子に白色光を照射した場合の電圧-電流特性を示すグラフである。
【図5】導電性高分子にSWCNTを添加した光素子に白色光を照射した場合の電圧-電流特性を示すグラフである。
【図6】導電性高分子にフラーレンを添加した光素子に白色光を照射した場合の電圧-電流特性を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、導電性高分子膜の光吸収特性を示すグラフである。
導電性高分子に、電子受容体がドーピングされたポリフェニレンビニレン(MEH-PPV)を用い、この導電性高分子そのものの光吸収特性と、この導電性高分子にカーボンナノチューブ(CNT)を0.5wt%混合した複合体の光吸収特性を示す。
図から明らかなように、この導電性高分子は、波長500nm付近の青から緑色に対する顕著な吸収特性を有している。一方、この導電性高分子にCNTを添加した場合には、より長波長の近赤外に至るまでの光の吸収特性も示され(図の破線)、導電性高分子にCNTを添加した場合に、光センサ等に使用可能であることが示唆される。
図2は、光センサや太陽電池用セルとして形成した光素子10の構造を示す説明図である。
12は透明なガラス基板である。
このガラス基板12上に、ITO(インジウム-錫-オキサイド)等から成る第1の電極14が形成されている。第1の電極14はITOには限定されない。
第1の電極14を覆って、(可視光、もしくは近赤外光に対して)透明または半透明の金属酸化物半導体膜16が形成されている。金属酸化物半導体膜16は、TiO2が好適であるが、これに限定されず、例えば酸化ニオブや酸化亜鉛なども用いることができる。
TiO2はn型半導体的性質を有している。
この金属酸化物半導体膜16を覆って、導電性高分子薄膜18が形成されている。
さらにこの導電性高分子薄膜18に金(Au)等からなる第2の電極20が取り付けられている。
上記導電性高分子薄膜18は厚さが10nm~10μmに形成され、また上記金属酸化物半導体膜16もその厚さが10nm~10μmに形成されることで、光素子10全体の厚さは極めて薄いものに構成される。
導電性高分子薄膜18は、電子受容体がドーピングされた高分子、特にポリフェニレンビニレン誘導体(MEH-PPV等)またはポリチオフェン誘導体(P3OT等)を好適に用いることができる。電子受容体がドーピングされた導電性高分子はp型半導体的性質を有し、これにより導電性を有する。
導電性高分子薄膜18には、カーボンナノチューブ(CNT)が配合される。
この導電性高分子に対するCNTの配合割合は10wt%以下、好適には1wt%前後が望ましい。10wt%以上であると、導電性高分子に対する均一な混合が困難となるからである。
また用いるCNTは直径が100nm以下のMWCNT(マルチウォールCNT)でもよいが、薄膜の導電性高分子中に混合しやすくするために、極めて小径(数nm)なSWCNT(シングルウォールCNT)や小径のMWCNTを用いるのが好適である。SWCNTは尖鋭な先端を有して良好な電子放出性を有することからも好適である。
CNTはアスペクト比が約10000にも及ぶ、長さが数μmもの長いものが存在する。このように大きな長さを有するCNTを、導電性高分子に混入させると、CNTが薄い導電性高分子層から外部に突き出してしまう。このことが、CNTを混入させた場合に導電性高分子層を薄くできない要因となっていた。
しかるに、前記金属酸化物半導体膜16は、固体膜であることから、第1の電極14を覆ってこの個体膜である金属酸化物半導体膜16をスパッタリング等によって形成した後、この金属酸化物半導体膜16上に、CNTを分散させた導電性高分子を薄く塗布するようにして導電性高分子薄膜18を形成するようにすれば、導電性高分子薄膜18中のCNTは、金属酸化物半導体膜16に遮られ、第1の電極14方向へは突出しないことになる。
すなわち、CNTの一方の端部は、第1の電極14方向に向くが、第1の電極14とは、金属酸化物半導体膜16の僅かな厚さ分(数nm~10μm)だけ隔てて(ギャップ)第1の電極と対峙することとなり、これにより電子放出特性が向上する。
CNTの他方の端部は導電性高分子薄膜18表面から突出するが、こちら側には第2の電極20が形成され、突出したCNTと第2の電極20とが接触することとなり、電気電導性の点から却って好ましい。
図3は、導電性高分子薄膜18に、CNTを混入させた場合(導電性高分子に対して0.5wt%、1wt%)と混入させない場合における電圧-電流特性を示すグラフである。なお、光は照射していない。
図3から明らかなように、負電圧側において、例えば-1V付近の印加電圧では、CNTを混入させない場合に比して、0.5wt%混入したものでは約1000倍、1wt%混入したものでは約1万倍もの高い電流値が検出される。
図4は、図3のものにおいて、白色光を照射した場合(光の強度:100mW/cm2)の電圧-電流特性を示すグラフである。
印加電圧0Vにおける電流値(絶対値)が、光センサや太陽電池の場合の感度といえる。電流値が大きいほど感度が良好となる。図4から明らかなように、CNTの添加量が0.5wt%の場合には、CNTを添加しないものとほとんど差異がないが、CNTを1wt%添加したものにあっては、感度が大幅に向上することがわかる。このことは、光の量が少なくとも、感度が良好となることを示唆している。
また、図4において、電流値がゼロとなる印加電圧を太陽電池における起電力とみることができるが、起電力の大きさはCNTを添加してもしなくともそれ程大きな変動は見られなかった。
図5は、導電性高分子膜18に混入させるSWCNTをさらに増加していったサンプル(0.5wt%、1wt%、2wt%)の、かつ光を照射した場合(光の強度:100mW/cm2)の電圧-電流特性を示すグラフである。図5中に挿入したグラフは、-1Vの電圧を印加した場合における、各サンプルの電流値であり、SWCNTを増加していった場合に、電流値は電圧値にほぼ比例して増加することがわかる。すなわち、流れる電流はCNTの量に依存しており、このことはSWCNTを介して電子の放出が行われることを示唆している。
なお、図6は、導電性高分子薄膜18にフラーレンを、0.5wt%、1wt%、1.5wt%混入して形成した光素子の、白色光を照射した場合(光の強度:100mW/cm2)の電圧-電流特性を示すグラフである。図6から明らかなように、フラーレンを混入した場合には、混入しないものに比し、却って感度が低下してしまった。
上記のように、図2に示した光素子10は、感度の良好な光センサあるいは太陽電池として用いることができる。太陽電池に用いる場合には、図2に示す構造の光素子を多数併設するようにするとよい。
上記のように感度が良好となるのは、導電性高分子薄膜18中に分散されたCNTが、金属酸化物半導体膜16をギャップとして第1の電極14と対峙すること、また、導電性高分子薄膜18と金属酸化物半導体膜16とがpn接合構造となるからと考えられる。
上記実施の形態では、導電性高分子薄膜18の側に第2の電極20を形成したが、電界電子放出体(エミッタ)として用いる場合には、第2の電極20を形成しない。また、酸化物半導体を金属に置き換えても良い。
この場合、CNTの一端が薄い金属酸化物半導体膜16を介して(ギャップ)第1の電極14に対峙し、CNTの他端が導電性高分子薄膜18表面から突出するので、第1の電極14に電圧を印加することにより、CNTの先端から高い電流密度の電界電子が放出される。
この場合には、金属酸化物半導体膜16は必ずしも透明もしくは半透明でなくともよい。この電界電子放出体は各種ディスプレイの冷陰極として用いることができる。また、電界電子放出特性に優れることから、帯電防止材として有効に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5