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明細書 :無接触搬送装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4168149号 (P4168149)
公開番号 特開2006-076690 (P2006-076690A)
登録日 平成20年8月15日(2008.8.15)
発行日 平成20年10月22日(2008.10.22)
公開日 平成18年3月23日(2006.3.23)
発明の名称または考案の名称 無接触搬送装置
国際特許分類 B65G  49/06        (2006.01)
B06B   1/02        (2006.01)
B65G  27/16        (2006.01)
B65G  49/07        (2006.01)
B65G  51/03        (2006.01)
H01L  21/677       (2006.01)
G02F   1/13        (2006.01)
FI B65G 49/06 Z
B06B 1/02 Z
B65G 27/16
B65G 49/07 J
B65G 51/03 C
H01L 21/68 A
G02F 1/13 101
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2004-260801 (P2004-260801)
出願日 平成16年9月8日(2004.9.8)
審査請求日 平成16年9月8日(2004.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】磯部 浩已
個別代理人の代理人 【識別番号】100069578、【弁理士】、【氏名又は名称】藤川 忠司
審査官 【審査官】岡澤 洋
参考文献・文献 特公平01-017353(JP,B2)
特開平07-137824(JP,A)
[製造技術分野],平成16年度 第1回「産業技術研究助成事業」採択課題一覧 別紙,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,2004年 6月15日,8,URL,http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/160615_1/besshi.pdf
調査した分野 B65G 49/06
B06B 1/02
B65G 27/16
B65G 49/07
B65G 51/03
H01L 21/677
G02F 1/13
特許請求の範囲 【請求項1】
搬送路上で搬送品を下方から放出する流体の圧力によって浮揚させる流体圧浮揚手段と、該搬送路に沿って配設される環状の弾性振動板とこ環状の弾性振動板に超音波振動を与えて撓み進行波を励起させる励振アクチュエータとからなる複数のドライブユニットと、を備え、
撓み進行波を励起している前記弾性振動板と、この振動板に対向した搬送品表面との間に発生する音響粘性流により、搬送路上で浮揚している当該搬送品を所定方向へ搬送するように構成されてなる無接触搬送装置。
【請求項2】
環状の弾性振動板の一部の弧状部が搬送路上の搬送品表面に対向するように配置されてなる請求項記載の無接触搬送装置。
【請求項3】
複数のドライブユニットにおける撓み進行波伝播方向及び振動状態の調整により、搬送品の加減速及び発停と方向変換を可能とした請求項又はに記載の無接触搬送装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ用のマザーガラス基板や半導体ウエハ等の平板状物品を始めとする種々の搬送品を完全な無接触状態で搬送する無接触搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイの生産台数の増大に伴い、これらディスプレイに用いるマザーガラス基板の大型化が急速に進んでいる。これは、一枚のマザーガラス基板からできるだけ多くのディスプレイパネルを面取りできるようにし、もってディスプレイ一台当たりの単価を低減するためである。しかるに、マザーガラス基板は、精密精緻なディスプレイのフラットパネル原材として、微小な損傷は言うまでもなく、僅かな汚れの付着やストレスの発生をも嫌うものであるから、大型になればなるほど搬送が難しくなる。
【0003】
例えば、マザーガラス基板の搬送手段として従来より汎用される搬送ローラやフォークリフトでは、基板が大型になれば、それに対応して当該基板にかかる応力を緩和するためにローラ個数やフォーク本数を増やす必要があるが、多数のローラやフォークの高さを厳密に揃えるための調整操作ならびに保守管理に非常に手間がかかる上、本来的に高度な清澄状態を保って搬送することは不可能であった。
【0004】
そこで、近年において、基板をエアーの吹き上げ圧力で浮上させつつ、該基板の両端を送りローラで支持して搬送する方式(特許文献1)、可動部上に起立させた基板を静電吸引力で非接触状態を保って搬送する方式(特許文献2)、やや傾いた縦姿としたガラス基板を下縁で支持ローラ上にて支承すると共に、該ガラス基板の上部側を気体膜を介して非接触状態で搬送台に支持させて搬送する方式(特許文献3)、振動体を超音波振動させた際の音波の放射圧により、該振動体の表面上で搬送品を浮上させ、この搬送品を非接触状態で所定方向へ送る方式(特許文献4~6)等が提案されている。

【特許文献1】特許公開2003-300618
【特許文献2】特開平10-271862
【特許文献3】特許公開2002-308422
【特許文献4】特開平7-24415
【特許文献5】特開平7-187388
【特許文献6】特開平9-202425
【0005】
しかしながら、前記従来のエアー圧で浮上させて送りローラによる搬送を行う方式では、送りローラとの接触による基板の汚損が避けられない。また、前記従来の静電吸引力や気体膜によって非接触状態に保つ搬送方式では、基板の板面は非接触であっても、周縁下部が可動部や支持ローラに支承されているから、その支承部分の接触による汚染粒子発生の問題を根本的には対決できない。なお、静電吸引力による浮揚は機構的に不安定であるから、安定化用の制御システムが不可欠であり、そのために設備コストが高く付く。
【0006】
一方、前記した振動体の超音波振動による音波の放射圧で搬送品を浮上させる搬送方式では、音波放射圧で搬送品を浮揚させる負荷容量及び支持剛性が流体圧や静電吸引力等による浮揚に比較して一桁以上も小さいため、外乱に対する感受性(ロバスト性)が高く、何らかの要因で外乱を受けた際の音波放射圧の低下や変動によって搬送品が振動体に接触する懸念があり、信頼性に乏しいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の情況に鑑み、フラットパネルディスプレイ用のマザーガラス基板や半導体ウエハ等の平板状物品を始めとする種々の搬送品を、完全に無接触として高度な清澄状態を保って搬送でき、しかも浮揚の負荷容量が大きく搬送手段としての信頼性に優れ、搬送速度や方向の制御が容易で設計自由度も大きい無接触搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る無接触搬送装置は、搬送路上で搬送品を下方から放出する流体Fの圧力によって浮揚させる流体圧浮揚手段と、該搬送路に沿って配設される環状の弾性振動板とこ環状の弾性振動板に超音波振動を与えて撓み進行波を励起させる励振アクチュエータとからなる複数のドライブユニットと、を備え、撓み進行波を励起している前記弾性振動板と、この振動板に対向した搬送品表面との間に発生する音響粘性流により、搬送路上で浮揚している当該搬送品を所定方向へ搬送するように構成されてなる。
【0009】
請求項2の発明は、上記請求項1の無接触搬送装置において、環状の弾性振動板の一部の弧状部が搬送路上の搬送品表面に対向するように配置されてなるものとしている。更に、請求項3の発明は、請求項1又は2の無接触搬送装置において、複数のドライブユニットにおける撓み進行波W伝播方向及び振動状態の調整により、搬送品の加減速及び発停と方向変換を可能とした構成を採用している
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る無接触搬送装置によれば、搬送路上の搬送品は、下方から放出する流体の圧力で浮揚し、撓み進行波を励起している弾性振動板と搬送品表面との間に発生する音響粘性流によって推進され、完全に無接触の状態で搬送されるから、搬送過程で損傷を生じたりストレスを受けたりすることがないと共に、搬送機構としての可動部がなく、搬送路全体を高度な清澄状態に保ち得るから、搬送中に塵埃等で汚染される懸念もない。しかして、この無接触搬送装置では、搬送品の浮揚力は放出口の密度及び口径と放出圧力によって調整できるから、理論的には適用する搬送品のサイズと重量に制約がなく、搬送手段としての信頼性に優れ、しかも弾性振動板に超音波振動を付与する空間的位置と駆動信号の時間的位相差の設定によって搬送速度や方向の制御を容易に行え、また可動部がないために高耐久性が得られる。
【0011】
また本発明によれば、環状の弾性振動板と励振アクチュエータとからなる複数のドライブユニットが搬送路に沿って配置される構成であるから、これらドライブユニットの配置仕様と、各ドライブユニットによる推進力の調整により、搬送品の搬送状態を種々設定できると共に、搬送路の設計の自由度も大きくなり、搬送ラインの延長、短縮、分岐、組み替え、拡張等にも容易に対処できる。また、ドライブユニット自体は極めてシンプルな形態であるため、低コストで容易に製作できると共に、推進機構部のユニット化で搬送装置全体の製作コストも低減される。さらにまた本発明によれば、ドライブユニットが環状の弾性振動板と励振アクチュエータとからなることによって、これらの複数のドライブユニットの配置数と配置構成を異ならしめることによって、搬送品を搬送路上で無接触でコーナリングを行わせることができる。
なお、弾性振動板4に有限長さの平板(例えば帯状板)を用い、これに長手方向に沿う撓み進行波Wを発生させる場合は、端部で弾性反射波を吸収する必要があり、環状のものに比較して効率も落ちることになるが、本発明によれば、上述のように、弾性振動板は環状のものからなり、撓み進行波Wを環状にエンドレスに発生させることになるから、撓み進行波Wの発生効率も良好である。
【0012】
請求項の発明によれば、ドライブユニットにおける環状の弾性振動板が、その一部の弧状部を搬送路上の搬送品表面に対向して配置することから、該弧状部における撓み進行波に伴う音響粘性流により、搬送品に対してスラスト方向の推進力を効率よく伝達できる。
【0013】
請求項の発明によれば、近接した複数のドライブユニットにおける撓み進行波伝播方向及び振動状態の調整により、搬送品の加減速及び発停と方向変換を可能としているから、各別な加減速装置や停止装置を付設する必要がなく、流体圧浮揚手段を備えた搬送路とドライブユニットとの組み合わせのみで極めて多様な搬送ラインを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に係る無接触搬送装置の作動原理を示す。図中、Pはフラットパネルディスプレイ用のマザーガラス基板や半導体ウエハ等の平板状の搬送品であり、水平方向に沿う搬送路1に設けた多数の放出口2…から上方へ放出されるエアー等の流体Fの圧力により、当該搬送路1上で浮揚されている。しかして、3は搬送路1の上方に配置したドライブユニットであり、弾性振動板4と一対の励振アクチュエータ5,5とで構成され、励振アクチュエータ5,5にて弾性振動板4に超音波振動を与えて撓み進行波Wを励起させるようになっている。
【0015】
この撓み進行波Wとは、弾性振動板4自体は回転せず、撓み形状のみが該弾性振動板4の周方向へ伝搬してゆくものであり、例えて言えば、一端を柱に括り付けたロープの他端を持って波打たせた際に波形が柱に向かって走って行くような現象である。しかして、弾性振動板4に撓み進行波Wが励起されると、これに対向する搬送品Pの表面との間に存在する流体Fに撓み進行波Wと同じ方向の音響粘性流Sが生起し、この音響粘性流Sによって搬送品Pに対して無接触でスラスト力が伝達され、もって搬送品Pは完全な無接触状態で搬送方向Tへ搬送される。
【0016】
なお、音響粘性流Sは、音波の伝搬経路内で媒質流体の粘性等による音響エネルギーの散逸があった場合に、音響エネルギー密度の違いに基づく圧力差を駆動力として、媒質である流体が音波の伝搬方向へ押し流されて生じるものである。そして、本発明においては、弾性振動板4の撓み進行波Wと同じ方向に流れる媒質流体Fの動粘性により、搬送品Pの推進力が得られることになる。
【0017】
次に、撓み進行波Wの発生原理について、簡単化のために、円管の面内曲げ振動によって周方向に伝搬する撓み進行波を例として説明する。すなわち、管径に対して肉厚が十分に小さく軸方向に一定の断面を持つ円管において、i:円周に沿う撓み振動の波数、E:円管のヤング率、ρ:密度、R:円管の内半径、b:円管の肉厚、h:円管の高さ(軸方向長さ)とすれば、高次モードの振動数fは次式で求められる。
【0018】
【数1】
JP0004168149B2_000002t.gif

【0019】
8次共振モード(i=8)で撓み進行波Wを発生させる場合、図2(A)(B)に示すように、円管Cの一直径方向であるx軸方向に沿って配置した一対の圧電素子(励振アクチュエータ)5a,5aに対して、該x軸に直交する直径方向であるy軸から波長の1/4に相当する角度θ(8次共振では11.25°)だけ空間的位相をずらせて配置した一対の圧電素子5b,5bの駆動信号の位相差φを調整すればよい。具体的にはφ=90°のときは反時計回り、φ=-90°のときは時計回り、に撓み進行波Wが伝搬することになる。また、圧電素子5a,5aを励振し、圧電素子5b,5bを停止しておくことで、円管Cに定在波を発生させることもできる。
【0020】
従って、図1における弾性振動板4が環状である場合、その一部の弧状部が搬送路1上で搬送品Pの表面と対向し得るように配置しておけば、撓み進行波Wの励起状態では該弧状部における該撓み進行波Wの伝搬方向つまり音響粘性流Sの向きにより、搬送中の搬送品Pに対して加速作用と減速作用のいずれかを及ぼせる一方、定在波の励起状態では推進力を生起しない。しかして、励振アクチュエータ5,5の駆動パターンを調整して、撓み進行波に対する定在波の存在比(一般に、定在波比)を制御することにより、推進力を変化させることができる。なお、弾性振動板4に有限長さの平板(例えば帯状板)を用い、これに長手方向に沿う撓み進行波Wを発生させる場合は、端部で弾性反射波を吸収する必要があり、環状のものに比較して効率も落ちる。
【0021】
図3は、本発明に係る無接触搬送装置の第一実施形態を示す。この場合、表面に多数のエアー放出孔2…が配列された搬送路1の両側に沿って、水平姿勢にした弾性振動板4Aと一対の励振アクチュエータ5,5とで構成された多数のドライブユニット3A…が、当該搬送路1上を搬送される平板状の搬送品Pの両側部に対し、弾性振動板4Aの約半周弱の弧状領域が被さり得る位置に配置されている。
【0022】
ここで、ドライブユニット3Aの弾性振動板4Aは、アルミ平板よりドーナツ状に打ち抜き形成されたものである。また、各励振アクチュエータ5は、ボルト締めランジュバン振動子(BLT)50をアルミ丸棒をホーン51として弾性振動板4Aに接合固着したものであり、BLTへの電圧印加に伴う超音波振動がホーン51を介して弾性振動板4Aに伝わるようになっている。
【0023】
しかして、搬送品Pは、搬送路1の多数の放出口2…から上方へ放出されるエアー等の流体Fの圧力によって浮揚した状態で、各ドライブユニット3Aの弾性振動板4Aに励起された撓み進行波に伴う音響粘性流により、当該搬送路1上を無接触で搬送される。ただし、実際の搬送では搬送路1上で浮揚した搬送品Pに対し、無接触で加速、等速、減速、停止の各動作を行わせる必要があり、また搬送路1に曲がり部や分岐部がある場合には無接触でコーナリングを行うことになる。
【0024】
搬送品Pを加速するには、図3及び図4(A)に示すように、各ドライブユニット3A…の弾性振動板4Aに黒矢印で示す伝搬方向、つまり搬送路1の一側では反時計回り(左回り)、他側では時計回り(右回り)の撓み進行波Wを励起させ、もって音響粘性流Sの合力が搬送方向Tに一致するように設定すればよい。また、減速するには、図4(B)に示すように、各ドライブユニット3A…の弾性振動板4Aの撓み進行波Wの伝搬方向を前記の加速時とは反対にし、もって音響粘性流Sの合力が搬送方向Tと逆向きになるように設定すればよい。更に、加減速後の慣性によって一定速度を維持したり、静止状態とする場合は、図4(C)に示すように各ドライブユニット3A…の弾性振動板4Aに定在波を励起させるか、もしくは図4(D)に示すようにドライブユニット3A…相互の駆動パターンの組み合わせによって搬送品Pに作用する音響粘性流Sの合力が相殺されてゼロになるように設定すればよい。
【0025】
一方、コーナリングを行うには、例えば図5に示すようにアウト側とイン側のドライブユニット3Aの配置数を異ならせること等で、アウト側の推進力をイン側よりも大きく設定すればよい。図中の矢印Tは搬送方向を示す。また、ドライブユニット3A…の配置構成により、浮揚した搬送品Pを定位置で自転させたり、所要半径で周回運動させることも可能である。
【0026】
図6は、直方体形状の搬送品Bを搬送対象とする第二実施形態の無接触搬送装置を示す。この無接触搬送装置では、搬送路1は前記第一実施形態と同様に表面に多数のエアー放出孔2…が配列され、また該搬送路1の両側に沿って配置するドライブユニット3A…もドーナツ状の弾性振動板4Aと一対の励振アクチュエータ5,5とで構成されているが、各ドライブユニット3Aの弾性振動板4Aが垂直姿勢となり、搬送路1上を搬送される搬送品Pの両側面に対し、弾性振動板4Aの下部側約半周弱の弧状領域が対向するように配置されている。
【0027】
この第二実施形態では、やはり搬送品Bは放出口2…から上方へ放出されるエアー等の流体の圧力で浮揚するが、ドライブユニット3A…の弾性振動板4Aに図の黒矢印で示す伝搬方向の撓み進行波Wを励起させることにより、浮揚した搬送品Bの側面とこれに対向する各弾性振動板4Aの弧状領域との間に音響粘性流が発生し、これら音響粘性流による推進力で該搬送品Bが無接触搬送されることになる。なお、この場合でも、ドライブユニット3A…の配置構成と駆動パターンの設定により、前記第一実施形態と同様に搬送品Bの加速、等速、減速、停止、コーナリングを自在に行える。
【0028】
上記第一及び第二実施形態の無接触搬送装置によれば、搬送品P,Bは、搬送路1上で浮揚して完全に無接触の状態で搬送されるから、搬送過程で損傷を生じたりストレスを受けたりすることがない上、搬送用ローラのような自身の回転動作や搬送品P,Bとの接触で汚染粒子を発生させる可動部が存在しないため、搬送路1全体が高度な清澄状態に保たれて搬送中の汚染を生じる懸念もない。しかも、この無接触搬送装置では、浮揚力を放出口2…の密度及び口径と放出圧力によって調整可能であるから、理論的には適用する搬送品P,Bのサイズと重量に制約がなく、外乱等によって搬送途上で接触状態になることがないように浮揚の負荷容量を大きく設定でき、また磁界の発生は極めて小さく、且つ磁界の影響を受けないことから、搬送手段としての高い信頼性を確保できる。
【0029】
また、本構成では、ドライブユニット3A…の配置仕様と、各ドライブユニット3Aによる推進力の調整により、搬送品P,Bの搬送状態を種々設定でき、加減速及び発停と方向変換も可能であるから、各別な加減速装置や停止装置、方向変換装置等を付設する必要がなく、静粛性も高く、搬送路1の設計の自由度が大きくなり、搬送路1とドライブユニット3A…との組み合わせのみで極めて多様な搬送ラインを構築できると共に、搬送ラインの延長、短縮、分岐、拡張、組み替え等にも容易に対処でき、従来の手法では実現困難であったフレキシブルな搬送路設計を行え、少量多品種生産ラインにも好ましく適用できる。更に、ドライブユニット3Aは極めてシンプルな形態であるから、低コストで容易に製作できると共に、可動部がないために高耐久性が得られる上、推進機構部のユニット化で搬送装置全体の製作コストも低減される。
【0030】
なお、本発明の無接触搬送装置におけるドライブユニット3の弾性振動板4としては、上記第一及び第二実施形態で用いたドライブユニット3Aにおける平坦なドーナツ状の弾性振動板4Aに限らず、例えば図7に示す第三実施形態におけるトライブユニット3Bのようにドーナツ状の板を径方向で直角に折り曲げた形の弾性振動板4Bや、図8に示す第四実施形態におけるトライブユニット3Cのようにドーナツ状の板を径方向で直角に折り曲げた弾性振動板4Cのように無限軌道帯形(キャタビラ形)の弾性振動板4C等、種々の環状形態のものを使用できる。
【0031】
しかして、搬送対象が平板状の搬送品Pである場合、ドライブユニット3Aでは、弾性振動板4Aの半周部を該搬送品Pの側縁部に対向させ、撓み進行波Wが逆向きになる残る半周部を該搬送品Pの側縁よりも外側へ張出させるため、それだけ左右方向に広い設置空間が必要になり、搬送装置全体の大型化に繋がる。これに対し、第三及び第四実施形態のトライブユニット3B,3Cでは、弾性振動板4B,4Cの半周部を搬送品Pに対向させれば、残る半周部は当該搬送品Pに対向しない形になるから、設置空間の左右幅が狭くて済み、それだけ搬送装置全体を小型化できる上、搬送品Pとの対向位置に制約がないから、搬送路1の長手方向のみならず左右方向にも集積度を高くし、もって搬送速度や搬送加速度をより高めることが可能となる。
【0032】
搬送路1の放出口2…から上方へ放出されるエアー等の流体Fは、エアーや窒素ガス等の圧縮性流体(一般的に気体)に限らず、水やオイル等の非圧縮性流体(一般的に液体)であってもよい。これは、流体圧による搬送品の浮揚作用と音響粘性流による推力付与作用が、共に流体の圧縮性に関わらず発現することによる。従って、本発明の無接触搬送装置では、搬送路の途中に液体を用いた洗浄槽等を介在させることが可能であり、例えば、フラットパネルディスプレイ用のマザーガラス基板の加工工程において、上下面からメガソニック洗浄を行いつつ当該基板を次工程へ搬送する場合にも支障なく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の無接触搬送装置の作動原理を示す概略縦断側面図である。
【図2】円管における撓み進行波の発生原理を示し、(A)は発生前の円管の横断面図、(B)は発生中の円管の横断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る無接触搬送装置の要部の斜視図である。
【図4】同無接触搬送装置による搬送制御を示し、(A)は加速時、(B)は減速時、(C)及び(D)は停止時、のそれぞれ斜視図である。
【図5】同無接触搬送装置による搬送品のコーナリングを示す斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る無接触搬送装置の要部の斜視図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る無接触搬送装置に用いるドライブユニットの斜視図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る無接触搬送装置に用いるドライブユニットの斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 搬送路
2 放出口
3 ドライブユニット
3A~3C ドライブユニット
4 弾性振動板
4A~4C 弾性振動板
5 励振アクチュエータ
B 搬送品
F 流体
P 搬送品
S 音響粘性流
W 撓み進行波
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7