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明細書 :触覚の解析方法および触覚の解析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5205864号 (P5205864)
公開番号 特開2009-045682 (P2009-045682A)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月5日(2013.6.5)
公開日 平成21年3月5日(2009.3.5)
発明の名称または考案の名称 触覚の解析方法および触覚の解析装置
国際特許分類 B25J  13/08        (2006.01)
B25J   5/00        (2006.01)
B25J  19/02        (2006.01)
FI B25J 13/08 Z
B25J 5/00 A
B25J 19/02
請求項の数または発明の数 24
全頁数 29
出願番号 特願2007-212698 (P2007-212698)
出願日 平成19年8月17日(2007.8.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2007年3月6日~2007年3月7日に開催された社団法人電気学会主催の電気学会研究会
審査請求日 平成22年8月3日(2010.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】大石 潔
【氏名】桂 誠一郎
【氏名】横倉 勇希
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100119312、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 栄松
審査官 【審査官】稲垣 浩司
参考文献・文献 特開2006-281347(JP,A)
調査した分野 B25J 13/08
B25J 5/00
B25J 19/02
特許請求の範囲 【請求項1】
移動体を移動させ、
この移動体の移動中に、当該移動体が受ける時系列な力と位置の触覚情報を取得し、
前記取得した前記触覚情報を時間領域と位置領域で解析処理し、
前記解析処理結果である前記移動体の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、前記移動体の状況を位置空間でマッピングするマッピング情報を生成し、
どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、前記マッピング情報を表示させることを特徴とする触覚の解析方法。
【請求項2】
前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を評価することを特徴とする請求項1記載の触覚の解析方法。
【請求項3】
前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を制御することを特徴とする請求項1記載の触覚の視覚的解析方法。
【請求項4】
前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータから抽出した力によって、前記触覚情報を取得することを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の触覚の解析方法。
【請求項5】
前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータが制御手段により制御されているシステムから抽出した力によって、前記触覚情報を取得することを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の触覚の解析方法。
【請求項6】
前記アクチュエータからの力が、位置センサ,速度センサ,加速度センサ,電流センサ,力センサ,トルクセンサ,または歪みゲージを用いて抽出されることを特徴とする請求項4または5記載の触覚の解析方法。
【請求項7】
前記アクチュエータからの力が、外乱オブザーバにより抽出されることを特徴とする請求項4または5記載の触覚の解析方法。
【請求項8】
前記解析処理結果と前記移動体の動作または反応とを関連付けた関連付けデータを、当該移動体の動作毎または反応毎に記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1~7の何れか一つに記載の触覚の解析方法。
【請求項9】
前記取得した触覚情報をフーリエ変換またはウェーブレット変換またはコサイン変換により時間領域で解析処理することを特徴とする請求項1~8の何れか一つに記載の触覚の解析方法。
【請求項10】
前記位置領域の解析処理が、有限要素法により行なわれることを特徴とする請求項1~9の何れか一つに記載の触覚の解析方法。
【請求項11】
前記位置領域の解析処理が、離散的な各位置の前記触覚情報を連続して補間する機能を有することを特徴とする請求項1~9の何れか一つに記載の触覚の解析方法。
【請求項12】
前記記憶手段に記憶される関連付けデータから、前記解析処理結果を検索対象として前記移動体の動作または反応を特定する逆引き機能を備えたことを特徴とする請求項8記載の触覚の解析方法。
【請求項13】
移動体と、
この移動体の移動中に、当該移動体が受ける時系列な力と位置の触覚情報を取得する手段と、
前記取得した前記触覚情報を時間領域と位置領域で解析処理する処理手段と、
前記解析処理結果である前記移動体の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、前記移動体の状況を位置空間でマッピングするマッピング情報を生成するマッピング手段と、
どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、前記マッピング情報を表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする触覚の解析装置。
【請求項14】
前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を評価する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項13記載の触覚の解析装置。
【請求項15】
前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を制御する移動体制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項13記載の触覚の解析装置。
【請求項16】
前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータから抽出した力によって、前記触覚情報を取得する構成としたことを特徴とする請求項13~15の何れか一つに記載の触覚の解析装置。
【請求項17】
前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータが制御手段により制御されているシステムから抽出した力によって、前記触覚情報を取得する構成としたことを特徴とする請求項13~15の何れか一つに記載の触覚の解析装置。
【請求項18】
前記アクチュエータからの力を、位置センサ,速度センサ,加速度センサ,電流センサ,力センサ,トルクセンサ,または歪みゲージを用いて抽出する構成としたことを特徴とする請求項16または17記載の触覚の解析装置。
【請求項19】
前記アクチュエータからの力を抽出する外乱オブザーバを備えたことを特徴とする請求項16または17記載の触覚の解析装置。
【請求項20】
前記解析処理結果と前記移動体の動作または反応とを関連付けた関連付けデータを、当該移動体の動作毎または反応毎に記憶手段に記憶させる構成としたことを特徴とする請求項13~19の何れか一つに記載の触覚の解析装置。
【請求項21】
前記処理手段は、前記取得した触覚情報をフーリエ変換またはウェーブレット変換またはコサイン変換により時間領域で解析処理するものであることを特徴とする請求項13~20の何れか一つに記載の触覚の解析装置。
【請求項22】
前記位置領域の解析処理が、有限要素法により行なわれることを特徴とする請求項13~21の何れか一つに記載の触覚の解析装置。
【請求項23】
前記位置領域の解析処理が、離散的な各位置の前記触覚情報を連続して補間する機能を有することを特徴とする請求項13~21の何れか一つに記載の触覚の解析装置。
【請求項24】
前記記憶手段に記憶される関連付けデータから、前記解析処理結果を検索対象として前記移動体の動作または反応を特定する逆引き手段を備えたことを特徴とする請求項20記載の触覚の解析装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が受ける力の触覚情報を、視覚的に解析し得る触覚の解析方法および触覚の解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の持つ感覚のなかで、機械と人間、若しくは遠隔地に存在する人間と人間との間を結ぶ重要な感覚として、視覚,聴覚,触覚が挙げられる。視覚や聴覚に対応する画像や音声の処理技術は、情報通信工学の発展とともにインターフェースとして急速に広まり、産業の基盤技術として欠かせないものとなっている。例えば、写真,テレビ,電話,蓄音機等の発明により、視覚や聴覚に関する情報の伝送や、保存や、再生が可能となり、さらにはビデオカメラやテレビにより、視覚および聴覚情報の放送も可能になった。これは、あたかも人間が持つ視覚や聴覚が、時間と空間を越えたように感じさせることと等価であるといえる。現在では、そうした視覚や聴覚情報の解析や加工を取り扱うディジタル信号処理技術の開発も、日々進歩している。
【0003】
一方、感覚情報の一つを担う触覚情報は、視覚や聴覚の情報に次ぐ新たなマルチメディア情報として、これを伝送して保存し、人工的に再現する技術の開発が求められている。そのため、マスターシステムとスレーブシステムとによるロボットシステム間の遠隔操作や、動かしている位置とその位置での各種情報を触覚を介して表示するようなハプティック(触覚)ディスプレイは、触覚情報を扱う技術として多くの研究が行なわれている。
【0004】
しかしながら、上述した視覚や聴覚に関する情報は受動的で、単方向性の感覚情報であるのに対し、触覚情報は実世界における「作用・反作用の法則」に束縛される双方向性の感覚情報であり、しかも接触対象である環境に能動的に接触することで、初めてその情報が得られるので、モデルベースやヴァーチャルリアリティを応用した触覚情報の再現は行なわれているものの、実世界における触覚情報の取得は困難である。
【0005】
一方、将来の知的機械や人間支援のロボットの安全な動作の実現にあたっては、時々刻々と変化する環境をいかに認識し、その環境にロボットを適応させるのかが重要な鍵となっている。これまでに、移動体としての移動ロボットなどを用いた環境適応動作に関する研究は、例えば非特許文献1や非特許文献2などに開示されるように多く行なわれてきたものの、その多くはCCDカメラや超音波センサなどからの様々なセンサ情報を統合して、周囲の障害物を回避することや、最短距離で目的地に達する手法を開発するものであった。これはすなわち移動ロボットに視覚と聴覚を発現させ、空間環境認識と適応を行なうことと等価である。
【0006】
しかしながら、実際の環境に移動ロボットを走行させる際には、周囲の人間や環境に衝突した際の安全性も考慮に入れて開発を行なう必要がある。とりわけ接触動作は、接触が起きて初めて認識される感覚情報であるため、従来のような視覚ベースや聴覚ベースでのアプローチでは対応することができない。したがって、ロボット自身が接触を瞬時に認識し、これをフィードバックするような能力が実際の環境を走行させるときに求められる。こうした能力をハプティック(触覚)能力といい、ロボットに触覚を発現させることが必要不可欠である。
【0007】
従来の触覚を扱う学問分野(ハプティクス)では、主に力覚センサを使用したものがほとんどであった。しかしながら、力覚センサはそれを搭載した箇所でしか力を検出することができないため、あらかじめ環境との接触点を限定するか、ロボットの表面全てを力覚センサで覆わなければならず、非現実的である。

【非特許文献1】井上 明子,桂 誠一郎,村上 俊之(A.Inoue,S.Katsura,T.Murakami)、「人間のパラメータ推定と路面状態による自律移動ロボットの乗り心地向上のための制御法(Autonomous Mobile Robot Control for Ride Quality Improvement by Estimated Human Parameter and Road Condition)」、第6回日仏メカトロニクス会議およびメカトロニクス-埼玉 第4回アジア-欧州メカトロニクス会議(6th Japan-France Congress on Mechatronics& 4th Asia-Europe Congress on Mechatronics Mechatronics-SAITAMA)、pp.459-464、2003年9月9~12日(September 9-12,2003)
【非特許文献2】関 弘和,杉本 武明,多田隅 進(H.Seki,T.Sugimoto,S.Tadakuma)、「左右車輪の推定外乱に基づくパワーアシスト車椅子の新規な直線道路運転制御法(Novel Straight Road Driving Control of Power Assisted Wheelchair Based on Disturbance Estimation of Right and Left Wheels)、電気学会 産業応用部門誌(IEEJ Transactions on Industrial Applications)、第126巻D 第6号(Vol.126-D,No.6)、pp.764-770、2006年6月(June,2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来は移動体に取付けられた力覚センサからの検知信号に基づいて、走行する移動体が周囲の障害物に接触しているか否かを判断しているに過ぎなかったため、例えば任意位置における走行路面の凹凸や摩擦の影響など、移動体に接触する路面や障害物などの周囲状況を定量的に把握することができなかった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、ある場所での移動体に接触する状況を、定量的に把握することができる触覚の解析方法および触覚の解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明における触覚の解析方法は、移動体を移動させ、この移動体の移動中に、当該移動体が受ける時系列な力と位置の触覚情報を取得し、前記取得した前記触覚情報を時間領域と位置領域で解析処理し、前記解析処理結果である前記移動体の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、前記移動体の状況を位置空間でマッピングするマッピング情報を生成し、どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、前記マッピング情報を表示させることを特徴とする。
【0011】
上記各方法においては、前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を評価するのが好ましい。
【0012】
また、前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を制御するのが好ましい。
【0013】
上記各方法においては、前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータから抽出した力によって、前記触覚情報を取得するのが好ましい。
【0014】
代わりに、前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータが制御手段により制御されているシステムから抽出した力によって、前記触覚情報を取得するのが好ましい。
【0015】
また、前記アクチュエータからの力が、位置センサ,速度センサ,加速度センサ,電流センサ,力センサ,トルクセンサ,または歪みゲージを用いて抽出される。
【0016】
代わりに、前記アクチュエータからの力が、外乱オブザーバにより抽出されてもよい。
【0017】
上記各方法において、前記解析処理結果と前記移動体の動作または反応とを関連付けた関連付けデータを、当該移動体の動作毎または反応毎に記憶手段に記憶させるのが好ましい。
【0018】
また、前記取得した触覚情報をフーリエ変換またはウェーブレット変換またはコサイン変換により時間領域で解析処理するのが好ましい。
【0019】
さらに、前記位置領域の解析処理が、有限要素法により行なわれることが好ましい。
【0020】
また、前記位置領域の解析処理が、離散的な各位置の前記触覚情報を連続して補間する機能を有してもよい。
【0021】
さらに、前記記憶手段に記憶される関連付けデータから、前記解析処理結果を検索対象として前記移動体の動作または反応を特定する逆引き機能を備えるのが好ましい。
【0022】
上記方法に対応するように、本発明における触覚の解析装置は、移動体と、この移動体の移動中に、当該移動体が受ける時系列な力と位置の触覚情報を取得する手段と、前記取得した前記触覚情報を時間領域と位置領域で解析処理する処理手段と、前記解析処理結果である前記移動体の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、前記移動体の状況を位置空間でマッピングするマッピング情報を生成するマッピング手段と、どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、前記マッピング情報を表示させる表示制御手段と、を備えている。
【0023】
上記各装置においては、前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を評価する手段をさらに備えるのが好ましい。
【0024】
また、前記マッピング情報に基づいて、前記移動体の動作または反応を制御する移動体制御手段をさらに備えるのが好ましい。
【0025】
上記各装置においては、前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータから抽出した力によって、前記触覚情報を取得する構成とするのが好ましい。
【0026】
代わりに、前記移動体を駆動するアクチュエータを備え、このアクチュエータが制御手段により制御されているシステムから抽出した力によって、前記触覚情報を取得する構成とするのが好ましい。
【0027】
また、前記アクチュエータからの力を、位置センサ,速度センサ,加速度センサ,電流センサ,力センサ,トルクセンサ,または歪みゲージを用いて抽出する構成とするのが好ましい。
【0028】
代わりに、前記アクチュエータからの力を抽出する外乱オブザーバを備えてもよい。
【0029】
上記各装置において、前記解析処理結果と前記移動体の動作または反応とを関連付けた関連付けデータを、当該移動体の動作毎または反応毎に記憶手段に記憶させる構成とするのが好ましい。
【0030】
また前記処理手段は、前記取得した触覚情報をフーリエ変換またはウェーブレット変換またはコサイン変換により時間領域で解析処理するのが好ましい。
【0031】
さらに、前記位置領域の解析処理が、有限要素法により行なわれることが好ましい。
【0032】
また、前記位置領域の解析処理が、離散的な各位置の前記触覚情報を連続して補間する機能を有していてもよい。
【0033】
さらに、前記記憶手段に記憶される関連付けデータから、前記解析処理結果を検索対象として前記移動体の動作または反応を特定する逆引き手段を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
上記請求項1の方法および請求項13の装置によれば、移動体の移動中に、この移動体が受ける時系列的な力と位置の触覚情報を取得し、この触覚情報を時間領域と位置領域で解析処理を施している。そのため、当該解析処理結果である移動体の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、移動体の状況を位置空間でマッピングしたマッピング情報を作成し、どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、前記マッピング情報を表示させるようにすれば、移動体が移動した空間上の位置で、移動体の状況に関する特徴的な周波数を、例えば色や濃淡により可視化表現させることができ、各場所での移動体に接触する状況を、定量的に把握することが可能になる。
【0035】
上記請求項2の方法および請求項14の装置によれば、マッピング情報には、ある位置における移動体が受ける力の周波数的な特徴が含まれることから、これを分析することによって、移動体がその箇所を移動したときの動作または反応を正しく評価することができる。
【0036】
上記請求項3の方法および請求項15の装置によれば、マッピング情報に基づいて移動体の動作または反応を制御することにより、例えば障害物だけでなく泥道や砂利道などの乗り心地の悪い路面を回避して、移動体を動作させることができ、周囲環境を考慮した最適な経路に沿って、移動体を制御することが可能になる。
【0037】
上記請求項4の方法および請求項16の装置によれば、アクチュエータを利用して、そこから抽出される力に基づき、触覚情報を取得することが可能になる。
【0038】
上記請求項5の方法および請求項17の装置によれば、制御手段によりアクチュエータの例えば位置,速度,加速度,トルク,または力を制御しつつ、これらの制御手段とアクチュエータとを組み合わせたシステムから抽出される力に基づき、触覚情報を取得することが可能になる。
【0039】
上記請求項6の方法および請求項18の装置によれば、位置センサ,速度センサ,加速度センサ,電流センサ,力センサ,トルクセンサ,または歪みゲージの検知出力を利用して、アクチュエータからの力を抽出できる。また、特に力センサで取得した力には、例えば路面との摩擦や、路面の凹凸や、障害物の接触時における衝撃力の程度などの諸情報を全て含んでいるため、それらを統合したインテリジェント化を実現できる。
【0040】
上記請求項7の方法および請求項19の装置によれば、外乱オブザーバによってアクチュエータからの力を抽出することで、移動体が受ける時系列な力の触覚情報を取得できるので、力覚センサを用いることなく触覚情報の取得が可能になる。また、外乱オブザーバで取得した力には、例えば路面との摩擦や、路面の凹凸や、障害物の接触時における衝撃力の程度などの諸情報を全て含んでいるため、それらを統合したインテリジェント化を実現できる。
【0041】
上記請求項8の方法および請求項20の装置によれば、前記解析処理結果が移動体の動作または反応と関連付けられて、記憶手段に関連付けデータとして記憶されるので、移動体が動作する際に受けた力から、移動体の動作または反応に関する特徴を直感的且つ定量的に評価できるような触覚情報の解析処理結果を、触覚ベースで移動体の各動作毎または各反応毎にデータベース化することが可能になる。
【0042】
上記請求項9の方法および請求項21の装置によれば、画像や音声信号処理などの分野で研究開発が進んでいるフーリエ変換やウェーブレット変換やコサイン変換を採用することで、触覚情報の時間領域における解析処理を容易に行なうことが可能になる。
【0043】
上記請求項10の方法および請求項22の装置によれば、広く知られている有限要素法を用いることで、触覚情報の位置領域における解析処理を容易に行なうことが可能になる。
【0044】
上記請求項11の方法および請求項23の装置によれば、離散的な各位置の触覚情報から、連続した位置での移動体の動作や反応に関する特徴を取得することが可能になる。
【0045】
上記請求項12の方法および請求項24の装置によれば、関連付けデータに含まれる解析処理結果を検索対象として、特定の移動体における動作や反応を正しく特定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0047】
図1は、本発明の好適な一実施例を示す装置の機能的構成を示している。同図において、1は外部から取得した触覚情報を視覚情報化する装置本体であって、これは演算処理機能を有する例えばコンピュータなどにより構成される。装置本体1は、ある時間における力と位置の触覚情報を取得する手段である入力手段2と、入力手段2で取得した触覚情報を時間領域と位置領域すなわち空間領域でそれぞれ解析処理する処理手段3と、処理手段3で得られた空間位置毎の周波数分析データを記憶する記憶手段4と、画面(ディスプレイ)やプリンタなどの視覚的な表示手段5と、後述する移動体11の駆動を制御するモータ制御手段6と、を備えて構成される。
【0048】
移動ロボットとして設けられた移動体11は、接触環境である路面に当接する駆動輪としての左右の車輪12A,12Bと、この車輪12A,12Bにそれぞれ回転力を付与する駆動源としてのモータ13A,13Bとを備え、これらの車輪12A,12Bとモータ13A,13Bにより、移動体11を路面上に走行駆動させるアクチュエータ14を構成している。本実施例で使用するモータ13A,13Bは、モータドライバ15からの数値制御信号により作動し、減速機構を設けることなく車輪12A,12Bを直接駆動するダイレクトドライブ形式のサーボモータであるが、他の形式の駆動源を用いてもよい。モータドライバ15は、モータ制御手段6から出力される左右のトルク指令信号を、それぞれ電流制御信号に変換してモータ13A,13Bに供給するドライバ本来の機能の他に、各モータ13A,13Bひいては各車輪12A,12Bの各回転位置を監視し、それぞれの位置応答信号をモータ制御手段6に出力する検知手段16としての機能をも備えている。
【0049】
前記モータ制御手段6は、移動体11を速度制御するもので、より具体的には、後述する第1の変換部21と、第2の変換部22とにより、移動体11の並進モードと回転モードにおける速度を制御するものである。第1の変換部21は、前記検知手段16から出力される左右の車輪12A,12Bの各位置応答信号から、並進モードと回転モードの各速度応答値を算出するもので、各車輪12A,12Bの位置応答信号をそれぞれの速度応答値に変換する手段として擬似微分器を採用し、また左右の各速度応答値を並進モードと回転モードの各速度応答値に変換する手段として、あらゆる物理的なパラメータにおける実世界の関節空間から仮想的な態様空間への変換を可能にする2次のクオリー(Quarry)行列を用いた変換器を採用している。
【0050】
第2の変換部22は、アクチュエータ14への指令値として与えられる並進モードの速度指令値から、第1の変換部21で算出された並進モードの速度応答値を差し引いた値に、並進モードの速度制御比例ゲインを掛け合わせることで、並進モードの加速度参照値を求め、また同じくアクチュエータ14への指令値として与えられる回転モードの速度指令値から、第1の変換部21で算出された回転モードの速度応答値を差し引いた値に、回転モードの速度制御比例ゲインを掛け合わせることで、回転モードの加速度参照値を求め、これらの並進モードと回転モードの各加速度参照値から、左右のモータ12A,12Bに対するトルク参照値を算出するもので、並進モードと回転モードの各加速度参照値を、左右のモータ12A,12Bに対するトルク参照値に変換する手段として、前記第1の変換部21で用いられたクオリー行列の逆行列を用いた逆変換器を採用している。このクオリー行列の逆行列は、仮想的な態様空間から実世界の関節空間への変換を可能にするものである。
【0051】
そして、これらの第1の変換部21と第2の変換部22により、指令値として与えられた並進モードと回転モードの各速度指令値に、並進モードと回転モードの各速度応答値がそれぞれ追従するような速度制御が、移動体11に対して行なわれる。なお、モータ制御手段6によってアクチュエータ14を速度制御するのではなく、アクチュエータ14を位置制御,加速度制御,トルク制御,または力制御する構成であってもよい。
【0052】
モータ制御手段6は、上記第1の変換部21および第2の変換部22以外に、左右の車輪12A,12Bに加わる外乱トルクを推定する外乱オブザーバ23,24と、これらの外乱オブザーバ23,24で算出された各推定外乱トルク値から、並進モードと回転モードの各推定外乱値を算出する第3の変換部25と、を備えている。
【0053】
外乱オブザーバ23,24は、左右のモータ13A,13Bに対応してそれぞれ組み込まれており、外乱オブザーバ23は、モータ制御手段6からモータ13Aへのトルク指令信号と、前記検知手段16からモータ制御手段6へのモータ13Aの位置応答信号とを入力として、一側すなわち右側のモータ13Aひいては車輪12Aに加わる外乱トルクを推定すると共に、別な外乱オブザーバ24は、モータ制御手段6からモータ13Bへのトルク指令信号と、前記検知手段16からモータ制御手段6へのモータ13Bの位置応答信号とを入力として、他側すなわち左側のモータ13Bひいては車輪12Bに加わる外乱トルクを推定する。これにより、力覚センサを設けることなく、モータ13A,13Bが受ける外乱を検出することができる。
【0054】
一方、第3の変換部25は、外乱オブザーバ23,24で得られた各推定外乱トルク値を、並進モードと回転モードの各推定外乱値に変換する手段として、ここでも実世界の関節空間から仮想的な態様空間への変換を可能にする2次のクオリー行列を用いた変換器を採用している。ここで用いるクオリー行列は、前記第1の変換部21に組み込んだクオリー行列と同一のものであり、移動体11自体が路面や障害物などから受ける力を、力覚センサなしで得ることができる。
【0055】
モータ制御手段6は、外乱オブザーバ23で得られた推定外乱トルク値を、前記第2の変換部22で得られた右側のモータ12Aへのトルク参照値と加算することで、当該右側のモータ12Aにトルク指令信号を出力すると共に、別な外乱オブザーバ24で得られた推定外乱トルク値を、第2の変換部22で得られた左側のモータ12Bへのトルク参照値と加算することで、当該左側のモータ12Bにトルク指令信号を出力するようになっている。
【0056】
こうして、本実施例におけるモータ制御手段6は、何れの物理的なパラメータでも、クオリー行列による変換機能によって、並進モードと回転モードのそれぞれで独立した速度制御系を構成することができる。また、外乱についても同様のクオリー行列を用いることで、移動体に加わる並進モードの外乱と回転モードの外乱にそれぞれ分解することが可能になる。
【0057】
図2は、図1に示す移動体11のモデルをあらわしたもので、前述した車輪12A,12Bは、移動体11の本体18の右側および左側にそれぞれ設けられる。前述した並進モードの速度x(以下、明細書中では、1階の微分をあらわす「」を、対応する記号の後に併記する。)は、移動体11が路面Rに沿って移動する速度を意味し、回転モードの速度φは、路面Rと垂直な軸を中心として、移動体11が路面R上で回転する速度を意味する。ここでは、左右の車輪12A,12Bの速度θ,θ、および並進モードと回転モードの速度x,φを定め、これらを制御することを考慮している。また、^Fdisは並進モードの推定外乱(以下、明細書中では、推定値をあらわす「^」を、対応する記号の前に併記する。)であり、^Tdisは回転モードの推定外乱である。
【0058】
前記入力手段2は、移動体11の走行時に、ある時間でどのような反作用力が生じているのかという触覚情報を最終的に取得し、後段の処理手段3に出力できれば、どのような構成であってもよい。上述したモータ制御手段6による速度制御系では、路面Rと各車輪12A,12Bとの摩擦や、路面Rの凹凸や、障害物との接触時における衝撃力などを全て含む移動体11への反作用力を、各外乱オブザーバ23,24からの推定外乱値として取り込むと共に、移動体11の位置情報を、モータドライバ15からの位置応答信号により入力手段2が算出している。この場合、入力手段2に備えた計時手段2Aの時間カウントを利用して、ある時間における力と位置を特定する触覚情報を取得する構成であってもよい。また、各外乱オブザーバ23,24からの推定外乱値に代わって、移動体11に取付けられた力覚センサからの検知出力により、反作用力を取り込んでもよい。
【0059】
また、別な例として、キーボードやマウスなどの操作手段17を入力手段2に接続し、この操作手段17から操作入力された任意の周囲環境に接触したときの時系列な反作用力のデータと、位置のデータを、そのまま触覚情報として入力手段2が取り込んでもよく、さらに別な例として、時系列な少なくとも反作用力と、位置の触覚情報を記憶した外部媒体18を入力手段2に接続し、外部媒体18から読み出した触覚情報を入力手段2が取り込む構成であってもよい。この場合、上述した計時手段2Aを入力手段2に組み込む必要はない。
【0060】
ここで、処理手段3が必要とする触覚情報は、同じ時間における力と位置の各情報を含んでいて、時間的に同期しているものであってもよいし、違う時間における力と位置の各情報を含んでいて、時間的に非同期なものであってもよい。
【0061】
処理手段3は、入力手段2で取得した触覚情報を時間領域で解析する時間領域解析部31と、当該触覚情報を空間領域で解析する空間領域解析部32と、を備えて構成される。時間領域解析部31は、入力手段2で取得した触覚情報を時間領域で周波数解析して、触覚情報に含まれる時間と力との関係を、周波数と振幅(振動レベル)との関係を示す周波数分析データに変換できれば、どのような構成であってもよい。こうした周波数解析は、画像や音声信号処理などの分野で研究開発が進んでおり、高速フーリエ変換(FFT)やウェーブレット変換を用いた手法が例として挙げられる。
【0062】
一方、空間領域解析部32は、空間領域を小空間に分割して数値解析を行なうもので、これを実現する手法としては、有限要素法がよく知られている。そこで本実施例の空間領域解析部32は、内蔵する有限要素法の変換機能によって、実世界空間を小空間に分割して抽出された触覚情報を時間領域で解析し、その結果を2次元空間に投影できるように、実世界空間上の位置と関連付けできるようになっている。この場合、時間領域解析部31による周波数解析に続いて、空間領域解析部32による空間解析を行なう構成としてもよいし、逆に空間解析に続いて周波数解析を行なう構成としてもよい。或いは、周波数解析と空間解析を並行して行なう構成としてもよいし、周波数解析だけを行なってもよい。
【0063】
本実施例では、周波数解析と空間解析を並行して行なうために、時間領域解析部31と空間領域解析部32に共通して、一定の大きさの窓関数を用いて信号を切り出し、その結果をフーリエ変換してスペクトルを計算する短時間フーリエ変換による演算部33を備えている。この演算部33により、ある任意位置において、移動体11が周囲環境から受ける力の周波数成分を得ることができる。この演算部33による解析処理結果は、周囲環境によって異なるものとなり、触覚の特徴を捉えることができる。
【0064】
処理手段3は、時間領域解析部31による解析結果と、空間領域解析部32による解析結果とを統合することで、環境表面のある任意の位置における周波数分析データを、処理手段3の解析処理結果として取得すると、この解析処理結果から移動体11の周囲状況をN次元の空間上に加えてなるマッピング情報を生成するマッピング手段35を備えている。このマッピング手段35は、時間領域解析部31と空間領域解析部32により得られた位置毎の周波数分析データを、その位置を含む空間上に可視化できるように重ね合わせることで、前述のマッピング情報を生成しており、このマッピング情報または移動体の動作毎または反応毎の周波数分析データが、時々刻々記憶手段4に記憶される。
【0065】
マッピング手段35は、移動体11が受ける時系列な力の触覚情報を、時間領域解析部31が時間領域で解析処理して、周波数分析データを生成した場合、この周波数分析データから移動体11の状況を時間の経過に対応させたいわゆる時間空間でのマッピングにより、前述のマッピング情報を作成する。一方、移動体11が受ける時系列な力と、それに対応する位置の触覚情報を、時間領域解析部31と空間領域解析部32が時間領域と空間領域でそれぞれ解析処理して、位置毎の周波数分析データを生成した場合、マッピング手段35は、この周波数分析データから移動体11の状況を位置に対応させたいわゆる位置空間でのマッピングにより、マッピング情報を作成する。何れの場合も、可視化した周波数分析データを処理手段3が生成することで、移動体の状況に関する特徴的な周波数を、例えば色や濃淡により可視化表現させることが可能になる。
【0066】
記憶手段4には、前記可視化若しくは可視化されていない周波数分析データが、移動体11の動作や反応を示す識別データ毎に、データベース化されて保存される。ここでは移動体11の動作や反応毎に割り当てられた識別データと、その移動体11の動作や反応に対して触覚情報から得られた例えば周波数とスペクトル強度の可視化情報を記憶した周波数分析データが、一つの関連付けデータとして記憶手段4に記憶保存される。識別データの入力は、例えば装置本体1に接続する操作手段17から行なえるようにすればよい。また、同じ移動体11の動作や反応に対して複数の周波数分析データが存在する場合には、それらを纏めて同じ関連付けデータ内に保存するのが好ましい。これにより、同じ移動体11の動作や反応に対する触覚情報に関し、様々な状況での周波数分析データの特徴を直ちに把握することができる。
【0067】
処理手段3は、入力手段2からの触覚情報を解析して、周波数分析データを取得する毎に、この比較対象となる周波数分析データと、記憶手段4から読み出される各関連付けデータ内の周波数分析データとを比較し、前記比較対象となる周波数分析データと同一または類似している周波数分析データが検索されれば、その周波数分析データに関連付けられた識別データを特定して、どのような移動体11の動作や反応に対応するものなのかを表示手段5に出力する判別手段を備えている。さらに判別手段は、記憶手段4に記憶される関連付けデータから、解析処理結果を検索対象として移動体11の動作または反応を特定する逆引き機能を行なえるようになっている。
【0068】
なお、ここに提示され、またはここに提示されていない周知の各種変換機能を単独または複数組み合わせて、同様の処理手段3を実現してもよい。例えば時間領域解析部31に内蔵する変換機能として、例えばFFT以外のフーリエ変換や、ウェーブレット変換や、コサイン変換を採用してもよい。ここでいうフーリエ変換とは、離散フーリエ変換や、短時間フーリエ変換などを含み、コサイン変換は、特殊な離散フーリエ変換である離散コサイン変換や、離散コサイン変換の一手法である変形離散コサイン変換などを含む。また、ウェーブレット変換とは、連続ウェーブレット変換や、離散ウェーブレット変換などを含む。
【0069】
また、上記処理手段3は、記憶手段4に保存される各位置に対応した周波数分析データを読み出して、触覚情報を写真のように可視化して表示手段5で表示できるように、当該表示手段5を制御する表示制御手段としての機能を備えている。
【0070】
ここで、処理手段3に備えたマッピング手段35や表示制御手段により、触覚情報を可視化する新たな表現技術を、ここでは「ハプトグラフ(Haptograph)」と表現して以後説明する。「ハプトグラフ」は、入力手段2で取得した触覚情報に対し、処理手段3でフーリエ変換やウェーブレット変換のような周波数解析を施し、これを移動体11に接触する環境(路面Rや障害物)の表面形状に基づき空間的に配置することで、どの位置にどのような周波数成分の振幅レベル(スペクトル)が存在するのかを、振幅レベルの強弱に応じた異なる色や濃淡(グラデーション)で、可視化表現させるものである。
【0071】
因みに「Hapto」とは、ギリシャ語で「触れる」の意味であり、触覚を写真のように視覚化することから「Haptograph」と命名している。本実施例でのハプトグラフは、接触する環境Eの表面から受ける触覚情報を、2次元空間上に配置したものとして定義する。勿論この配置は、1次元または3次元以上であっても構わない。ハプトグラフを用いることで、触覚情報を写真や図のように視覚的に捉えることが可能になるので、より直感的に触覚を認識できるようになる。また、触覚情報を時間領域解析部31で周波数解析し、それによりスペクトルの大きさを例えば色の違いや濃淡で可視化するため、触覚の定量的な評価や比較を行なうことも可能である。
【0072】
前記空間領域解析部32で分割した空間の数は、画像でいえばピクセル(画素)に相当し、分割数は触覚情報の分解能となる。当然、分割数が多ければ詳細な触覚情報を埋め込むことができるが、後述する記憶手段4で保存すべきデータ量も増加する。さらに、空間領域解析部32で分割した小空間を、離散的な点列で構成したハプトグラフだけでなく、小空間を連続的な線と捉えることで、なで動作によるハプトグラフの作成も可能である。
【0073】
処理手段3はその他に、マッピング手段35からの可視化表現されたマッピング情報に基づいて、任意の位置に沿って走行する移動体11が受ける力の周波数成分を分析し、その分析結果から移動体11の動作または反応ひいては乗り心地の良し悪しを評価する乗り心地評価手段36を備えている。この乗り心地評価手段36による評価は、必要に応じて表示手段5に表示させることができる。
【0074】
また前記モータ制御手段6は、マッピング手段35から出力されるマッピング情報に基づき、障害物や凹凸の大きい路面Rを避けた経路を設定し、その設定経路に沿って移動体11が走行できるように、当該移動体11の動作や反応を制御する移動体制御手段としての機能をも備えている。
【0075】
次に、上記構成に基づき、本実施例における触覚の視覚的表現方法の各手順を、図3のフローチャートを参照して説明する。装置本体1を起動させ、処理動作を開始させると、入力手段2はステップS2において、後段の処理手段3に送出するための触覚情報を取得する。この触覚情報の取得には、ステップS1の接触動作が先に行なわれる。
【0076】
具体的には、モータ制御手段6から移動体11のモータドライバ15に左右のトルク指令信号が出力されると、モータドライバ15はこの左右のトルク指令信号を電流制御信号に変換してモータ13A,13Bに供給する。これにより各モータ13A,13Bの駆動力が対応する車輪12A,12Bに直接伝達し、移動体11が路面R上を走行する。移動体11の速度は、上述したようにモータ制御手段6によって制御され、検知手段16からはモータ13A,13Bの位置応答信号がモータ制御手段6に時々刻々と送出される。
【0077】
モータ制御手段6は、それぞれの外乱オブザーバ23,24によって、モータ13A,13Bが受ける外乱トルク値が推定される。この推定外乱トルク値は、第3の変換部25によって並進モードと回転モードの各推定外乱値に変換され、移動体11が受ける力の情報として入力手段2に取り込まれる。一方、前記検知手段16からの各位置応答信号は、そのまま入力手段2にも送出され、入力手段2はこの位置応答信号から、移動体11がどの位置にいるのかという位置の情報を算出する。なお、当該位置の情報は、モータ制御手段6で算出してもよい。
【0078】
ステップS2において、入力手段2は取り込まれた力と位置の情報の経時的な変化を触覚情報として取得するために、内蔵する計時手段2Aの時計カウントを用いて、時間と力および時間と位置とを関連付ける。因みに、入力手段2に取り込まれる力や位置の情報に、予め時間情報が関連付けられている場合は、これをそのまま触覚情報として取得することができる。また、検知手段16に代わり操作手段17や外部媒体18から直接触覚情報を取得する場合には、ステップS1の手順を省略することも可能である。
【0079】
こうして、ステップS2において触覚情報が得られると、処理手段3の時間領域解析部31と空間領域解析部32は、ある任意位置において移動体11が受ける力の周波数成分を得るために、これを例えば短時間フーリエ変換やGaborウェーブレット変換などの時間情報を残した周波数解析手法で信号処理し、触覚情報の時間領域および空間領域としての解析を行なう(ステップS3)。これにより、移動体11が走行した位置に沿った任意の位置毎の周波数解析データを得ることができる。
【0080】
こうして時間領域解析部31と空間領域解析部32が、実空間の任意の位置に対応した周波数解析データを処理手段3の解析処理結果として生成すると、次のステップS4でマッピング手段35がマッピング情報を生成し、このマッピング情報および/または解析処理結果を記憶手段4に保存する。さらには必要に応じて、この記憶手段4からマッピング情報および/または解析処理結果を読み出し、処理手段3に備えた表示制御手段が、前述した「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報を表示手段5に表示させ、一連の処理を終了する。
【0081】
ここでのマッピング情報は、「ハプトグラフ」の概念を逸脱しない限り、どのようなものであっても構わない。例えば、移動体11の移動に沿った任意の位置上に、所定範囲の周波数におけるスペクトルの度合を、線,色,濃淡などで可視化させてもよい。また、点在する固定した位置の周波数解析データ間を直線などで補間し、メッシュ状に繋いで連続的に表示させてもよい。
【0082】
いて、上記実施例に基づく実験例について、その装置構成と実験結果を説明する。
【0083】
先ず実験環境として、図4(a)に示すように凹凸の少ないコンクリート路面と、図4(b)に示すように凹凸付きの鉄板とを、連続する路面Rとしてそれぞれ用意し、その上に移動体11としてのパワーアシスト車椅子ロボットを走行させた。ここでは、各外乱オブザーバ23,24によって取得した路面Rからの並進モードと回転モードの推定外乱情報を、Gaborウェーブレット変換を用いて信号処理を行ない、走行路面に対応した空間上に配置することにより、触覚情報を可視化して表現する「ハプトグラフ」のマッピング情報を作成した。
【0084】
「ハプトグラフ」は、人間の動作や環境との接触によって生じる反作用力信号をフーリエ変換やウェーブレット変換を用いて周波数解析し、これを空間情報として統合することで生成が行なわれるものであるが、特に本実施例では、「ハプトグラフ」に基づいた触覚スキャン機能を、移動体11であるパワーアシスト車椅子ロボットに埋め込み、走行路面における触覚ベースでの環境マップ(マッピング情報)を作成している。
【0085】
図5および図6は、何れも走行後の実験結果を示している。図5は直進方向(並進モード)の成分、図6は回転方向(回転モード)の成分を示しており、それぞれの図において上段の波形は、外乱オブザーバ23,24と第3の変換部25で取得した推定外乱値と位置との関係を示し、下段はこれを「ハプトグラフ」に変換して得たマッピング情報を示している。「ハプトグラフ」によるマッピング情報では、走行位置毎に周波数成分の違いが色やグラデーションの濃淡で定量的に表現されているため、0.9m付近の位置で、路面Rがコンクリートから凹凸付きの鉄板に変化しているのを直感的に把握することができる。さらに、凹凸付きの鉄板上の走行時には、10Hz付近の成分のスペクトルが強く表れていることから、これらのマッピング情報に基づいて、乗り心地評価手段36が移動体11の乗り心地を定量的に評価することも可能である。このような凹凸付きの鉄板の走行に際しては、モータ制御手段6に備えた移動体制御手段の機能により、例えば速度を変更するか、或いは凹凸付きの鉄板を回避して走行を行なうかなどの対応をとることで、これまでの視覚ベースや聴覚ベースのアプローチでは実現できなかった触覚ベースでの安全で安心な動作を実現することが可能である。このように、「ハプトグラフ」に基づく走行路面のマッピング情報が得られれば、パワーアシスト車椅子ロボットだけでなく、今後の人間支援ロボットの安全な動作計画や適応動作の実現に対して有用である。
【0086】
この実験例では、パワーアシスト車椅子ロボットの安全で安心な動作を実現させるための手法として触覚機能を付与し、時々刻々と変化する走行路面環境を認識させることができた。特に、外乱オブザーバ23,24で得た推定外乱情報を、走行路面に対応した空間上に「ハプトグラフ」により可視化することで、触覚ベースでの環境マップの作成が可能になる。これにより、凸凹の路面を走行する際には速度を変更したり、或いは乗り心地の悪い路面ならば、その路面の走行を回避したりすることで、安全且つ安心な動作を実現することが可能である。
【0087】
図7は、本実施例で実現できる「ハプトグラフ」に基づいた環境マップによる軌道計画の概要を示したものである。移動体11として安全且つ安心な動作を実現する最適な経路は、マッピング手段35により作成されたマッピング情報に基づき計画される。また、ここでは特別なセンサを付加する必要がなく、従来の全ての電動車椅子へ適用が可能であるため、高齢化社会における福祉機器開発などにも大きく貢献できると考えられる。
【0088】
次に、別な実験例について説明する。ここで使用する実験システムも、図1に基づいており、移動体11には駆動源たるモータ13A,13Bとして、本体18内の左右に2台のダイレクトドライブ方式のサーボモータが搭載される。なお、外乱オブザーバ23,24を組み込んでいる関係で、移動体11には力センサなどを必要とせず、搭載していない。
【0089】
ここでの実験例では、制御周期を100μsとしている。また、実験で設定した各パラメータは表1の通りである。
【0090】
【表1】
JP0005205864B2_000002t.gif

【0091】
実験で用いた移動体11の全長は1000mmであり、全幅は600mmとなっている。また、並進モード速度指令値xcmdを0.3m/s,回転モード速度指令値φcmdを0rad/sとして実験を行った。「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報を取得する対象となる路面Rは、前述の実験例と同じくコンクリートと滑り止めための凹凸が付けられた鉄板を使用した。また、空転時においての「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報も取得した。
【0092】
図8~図13は、何れも走行後の実験結果を示している。図8,図10および図12の各図において、上段の波形は外乱オブザーバ23,24と第3の変換部25で取得した並進モードの推定外乱^Fdisと位置との関係を示し、下段はこれを短時間フーリエ変換した解析結果、すなわち「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報を示している。また、図9,図11および図13の各図において、上段の波形は外乱オブザーバ23,24と第3の変換部25で取得した回転モードの推定外乱^Tdisと位置との関係を示し、下段はこれを短時間フーリエ変換した解析結果、すなわち「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報を示している。
【0093】
前記演算部33による短時間フーリエ変換に用いた窓関数はハミング窓であり、その窓幅は0.15mである。また、短時間フーリエ変換は移動体1の存在位置を基準として行なわれる。従って処理手段3の解析処理により得られる「ハプトグラフは、ある任意位置において移動体11が受けた力の周波数特性を示すことができる。
【0094】
図8および図9に示すのは、空転時における実験結果を示している。ここでは各車輪12A,12Bが空転状態,すなわち空気だけが路面Rに接触している状態である。このときの「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報は、ほぼ全ての位置と周波数において、振幅が10dbよりも低い色や濃淡(例えば、青色)で表されているが、150Hz付近の周波数では、それよりも振幅が若干高い別な色や濃淡(例えば、水色)の部分が存在する。これは、システムがもつ固有の周波数成分である。並進モードと回転モードにおける「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報の間には、直流成分を除いて違いが見られないことが確認できる。すなわち、どちらの環境モードに対しても同じような状況であることがわかる。
【0095】
一方、図10と図11は、移動体11がコンクリート路面を走行した時の実験結果を示している。各図における「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報では、空転時に比べて前述した振幅が若干高い色や濃淡(例えば、水色)の部分が多いことがわかる。これは、路面Rの凹凸や摩擦の影響によって、低周波成分が強く表れているのが原因である。また、図10と図11の下段のマッピング情報をそれぞれ比較すると、並進モードと回転モードでは、「ハプトグラフ」の表れ方に大きな違いはみられない。これは、路面Rがコンクリートである場合には殆ど凹凸がなく、移動体11の走行時に、並進方向及び回転方向の路面Rから受ける力に違いがないためである。
【0096】
図12と図13は、移動体11が滑り止め付鉄板を走行した時の実験結果を示している。ここでは、各図における「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報から明らかなように、路面Rが凹凸であることの状況が強く表れている。また、移動体11がコンクリート路面を走行する時の場合に比べて、並進モードと回転モードにおける「ハプトグラフ」の表れ方が異なることも把握できる。さらに、得られたマッピング情報から、並進モードと回転モードそれぞれにおいて、移動体11の走行状況や乗り心地を可視化できていることが確認できる。
【0097】
このように上記実施例では、移動体11である移動ロボットに路面環境の認識を実行させることを提案し、具体的には第1の変換部21におけるクオリー行列を用いて、モータ制御手段6により並進モードと回転モードの2つの環境モードに分解して、移動体11に対する制御を行った。その結果、並進モードの速度と、回転モードの速度について独立に制御が可能となる。
【0098】
また、移動体11の左右の車輪12A,12Bに加わる外乱トルクは、外乱オブザーバ23,24を用いることで力覚センサなしで推定できる。なお、外乱オブザーバ23,24は装置本体1に組み込まれたモータ制御手段6と一体であっても、また独立した構成の別体であっても構わない。この外乱オブザーバ23,24で得られた関節空間における外乱トルクも、第3の変換部25におけるクオリー行列によって、並進モードと回転モードの2つの環境モードに分解することができる。分解されたそれぞれの環境モードについて、「ハプトグラフ」を空間上に重ね合わせたマッピング情報を作成することで、走行状況や乗り心地の可視化を実現できる。さらに実験では、並進モードと回転モードの「ハプトグラフ」に基づくマッピング情報では、路面Rによって同等な場合と異なる場合があることも確認された。
【0099】
マッピング情報に含まれる「ハプトグラフ」は、処理手段3による周波数解析が施されているため、任意位置における凹凸や摩擦の影響などを表現することが可能である。従って、ある場所での路面状況の把握を行なうことができる。作成された「ハプトグラフ」を空間に配置した触覚地図すなわちマッピング情報が作成できれば、このマッピング情報に基づきモータ制御手段6に組み込まれた移動体制御手段が移動体11の最適な経路を判断して、移動体11は障害物だけでなく泥道や砂利道などの悪路を回避することができるようになる。また、走行路面のセンシングにも応用可能である。
【0100】
ここでは、本来ロボットの移動を行なうための「脚」としてしか用いられていなかった車輪12A,12Bを、路面Rに対するセンサとして使うことができるようになる。さらに、路面環境の「ハプトグラフ」を記憶手段4に記憶蓄積して、これを環境情報として時々刻々データベース化しておけば、移動体11が未知の路面Rを走行したときに、記憶手段4から環境情報を適宜読み出して、似たような路面環境を探し出したり、環境の推測を行なったりすることも可能となる。
【0101】
以上のように本実施例では、移動体11を移動させ、この移動体11の移動中に、当該移動体11が受ける時系列な力の触覚情報を入力手段2により取得し、この入力手段2で取得した触覚情報を、処理手段3によって時間領域で解析処理し、この解析処理結果に基づく移動体11の周囲の状況を時間と対応付けて、時間空間でマッピングするマッピング情報を、マッピング手段35で生成する方法と装置を提供している。
【0102】
ここでは、移動体11の移動中に、この移動体11が受ける時系列的な力の触覚情報を取得し、この触覚情報を時間領域で解析処理を施している。そのため、当該解析処理結果から移動体の状況を時間空間でマッピングしたマッピング情報を作成すれば、移動体11の状況に関する特徴的な周波数を表現させることができ、ある場所での移動体11に接触する状況を、定量的に把握することが可能になる。
【0103】
また本実施例では、移動体11を移動させ、この移動体11の移動中に、当該移動体11が受ける時系列な力の触覚情報を入力手段2により取得し、この入力手段2で取得した触覚情報を、処理手段3によって時間領域で解析処理して可視化し、この可視化した解析処理結果から移動体11の状況を時間空間でマッピングするマッピング情報を、マッピング手段35で生成する方法と装置を提供している。
【0104】
この場合は、移動体11の移動中に、この移動体11が受ける時系列的な力の触覚情報を取得し、この触覚情報を時間領域で可視化できるように解析処理を施している。そのため、当該解析処理結果から移動体11の状況を時間空間でマッピングしたマッピング情報を作成すれば、移動体11の状況に関する特徴的な周波数を、例えば色や濃淡により可視化表現させることができ、ある場所での移動体11に接触する状況を、定量的に把握することが可能になる。
【0105】
また実施例では、移動体11を移動させ、この移動体11の移動中に、当該移動体11が受ける時系列な力と位置の触覚情報を入力手段2により取得し、この入力手段2で取得した触覚情報を、処理手段3によって時間領域と位置領域で移動体11が移動する位置毎に解析処理し、この解析処理結果である移動体11の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、移動体11の周囲の状況を、位置空間でマッピングするマッピング情報を、マッピング手段35で生成し、どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、表示制御手段がマッピング情報を表示させる方法と装置を提供している。
【0106】
この場合は、移動体11の移動中に、この移動体11が受ける時系列的な力と位置の触覚情報を取得し、この触覚情報を時間領域と位置領域で解析処理を施している。そのため、当該解析処理結果である移動体の位置毎の周波数分析データを、当該位置を含む空間上に可視化できるように重ね合せて、移動体の状況を位置空間でマッピングしたマッピング情報を作成し、どの位置にどのような周波数成分の振幅レベルが存在するのかを可視化表現できるように、前記マッピング情報を表示させるようにすれば、移動体11の状況に関する特徴的な周波数を、例えば色や濃淡により可視化表現させることができ、各場所での移動体11に接触する状況を、定量的に把握することが可能になる。
【0107】
さらに実施例では、移動体11を移動させ、この移動体11の移動中に、当該移動体11が受ける時系列な力と位置の触覚情報を入力手段2により取得し、この入力手段2で取得した触覚情報を、処理手段3によって時間領域と位置領域で移動体11が移動する位置毎に解析処理して可視化し、この可視化した解析処理結果に基づく移動体11の周囲の状況を、位置空間でマッピングするマッピング情報を、マッピング手段35で生成する方法と装置を提供している。
【0108】
この場合は、移動体11の移動中に、この移動体11が受ける時系列的な力と位置の触覚情報を取得し、この触覚情報を時間領域と位置領域で可視化できるように解析処理を施している。そのため、当該解析処理結果から移動体の状況を位置空間でマッピングしたマッピング情報を作成すれば、移動体11の状況に関する特徴的な周波数を、例えば色や濃淡により可視化表現させることができ、各場所での移動体11に接触する状況を、定量的に把握することが可能になる。
【0109】
そして本実施例では、前記マッピング情報に基づいて、移動体11の乗り心地を評価するために、移動体11の動作または反応を評価する手段としての乗り心地評価手段36をさらに備えている。処理手段3により得られたマッピング情報には、ある位置における移動体が受ける力の周波数的な特徴が含まれることから、これを分析することによって、移動体11がその箇所を移動したときの動作または反応を、その移動体11の乗り心地として正しく評価することができる。
【0110】
また本実施例では、前記マッピング情報に基づいて、移動体11の動作または反応を制御するために、これを実現する移動体制御手段を例えばモータ制御手段6としてさらに備えている。マッピング情報に基づいて移動体11の動作または反応を制御することにより、例えば障害物だけでなく泥道や砂利道などの乗り心地の悪い路面を回避して、移動体11を動作させることができ、周囲環境を考慮した最適な経路に沿って、移動体11を制御することが可能になる。
【0111】
この場合、移動体11を駆動するためのアクチュエータ14を備え、このアクチュエータ14から抽出した力によって、触覚情報を取得する。こうすれば、アクチュエータ14を利用して、そこから抽出される力に基づき、触覚情報を取得することが可能になる。
【0112】
また代わりに、移動体11を駆動するためのアクチュエータ14を備え、このアクチュエータ14が制御手段であるモータ制御手段6により制御されているシステムから抽出した力によって、触覚情報を取得してもよい。当該モータ制御手段6によりアクチュエータ14の例えば位置,速度,加速度,トルク,または力を制御しつつ、これらのモータ制御手段6とアクチュエータ14とを組み合わせたシステムから抽出される力に基づき、触覚情報を取得することが可能になる。
【0113】
また上記アクチュエータ14からの力が、位置センサ,速度センサ,加速度センサ,電流センサ,力センサ,トルクセンサ,または歪みゲージを用いて抽出される場合、これらのセンサやゲージの検知出力を利用して、アクチュエータ14からの力を抽出できる。さらに、特に力センサで取得した力には、例えば路面Rとの摩擦や、路面Rの凹凸や、障害物の接触時における衝撃力の程度などの諸情報を全て含んでいるため、それらを統合したインテリジェント化を実現できる。
【0114】
また、アクチュエータ14からの力を、外乱オブザーバ23,24により抽出する構成であってもよい。外乱オブザーバ23,24によってアクチュエータ14からの力を抽出することで、移動体11が受ける時系列な力の触覚情報を取得できるので、力覚センサを用いることなく触覚情報の取得が可能になる。さらに、外乱オブザーバ23,24で取得した力には、例えば路面Rとの摩擦や、路面Rの凹凸や、障害物の接触時における衝撃力の程度などの諸情報を全て含んでいるため、それらを統合したインテリジェント化を実現できる。
【0115】
本実施例では、前記解析処理結果と移動体11の動作または反応とを関連付けた関連付けデータを、当該移動体11の動作毎または反応毎に記憶手段4に記憶させる方法と装置を提供している。
【0116】
前記解析処理結果が移動体11の動作または反応と関連付けられて、記憶手段4に関連付けデータとして記憶されるので、移動体11が動作する際に受けた力から、移動体11の動作または反応に関する特徴を直感的且つ定量的に評価できるような触覚情報の解析処理結果を、触覚ベースで移動体11の各動作毎または各反応毎にデータベース化することが可能になる。
【0117】
さらに本実施例の処理手段3は、入力手段2で取得した触覚情報をフーリエ変換またはウェーブレット変換またはコサイン変換により時間領域または空間領域で解析処理し、また有限要素法を用いた変換により空間領域で解析処理している。つまり、画像や音声信号処理などの分野で研究開発が進んでいるフーリエ変換またはウェーブレット変換またはコサイン変換や、空間領域を小空間に分割して数値解析を行なう手法としてよく知られている有限要素法を採用することで、触覚情報の時間領域や空間領域における解析処理を容易に行なうことが可能になる。
【0118】
また、前記位置領域の解析処理が、離散的な各位置の触覚情報を連続して補間する機能を有する場合、この離散的な各位置の触覚情報から、連続した位置での移動体11の動作や反応に関する特徴を取得することが可能になる。
【0119】
さらに、前記処理手段3として、記憶手段4に記憶される関連付けデータから、この関連付けデータに含まれる解析処理結果を検索対象として、移動体11の動作や反応を特定する逆引き手段を備えるのが好ましい。こうした逆引き機能によって、関連付けデータに含まれる解析処理結果を検索対象として、特定の移動体11における動作や反応を正しく特定することが可能になる。
【0120】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。実施例では、路面R上を走行する移動体11について説明したが、空間を移動する移動体についても、本発明の概念を同様に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
上記実施例で提示した「ハプトグラフ」により、触覚情報を可視化することが可能になったため、実世界における触覚をより直感的且つ定量的に表現することができる。とりわけ本発明では、移動体による走行路面(経路)の「ハプトグラフ」を作成することで、周囲状況の違いを周波数解析により可視化した触覚情報ベースでの環境マップを、マッピング情報として作成することが可能である。また、本実施例で提案する装置や方法により、例えば凹凸付きの鉄板が路面の一部に存在する場合は、その鉄板上を走行する際に速度を変更するか、さもなければ鉄板を回避して走行を行なうかなどの対応を、上述した移動体制御手段で判断させることで、これまでの触覚ベースや聴覚ベースのアプローチでは実現できなかった触覚ベースでの安全且つ安心な移動体の動作制御を実現することが可能になる。したがって、その産業上の応用は計り知れないものとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の一実施例における触覚の解析装置に関し、その全体構成を示すブロック図である。
【図2】同上、移動体のモデルを模式的に示した斜視図である。
【図3】同上、図1における触覚の解析装置が実行する処理手順をあらわしたフローチャートである。
【図4】同上、実験走行環境の一例を示す路面の概略説明図である。
【図5】同上、図4における路面上に移動体を走行させたときの直進方向の実験結果を示すグラフである。
【図6】同上、図4における路面上に移動体を走行させたときの回転方向の実験結果を示すグラフである。
【図7】同上、移動体の最適な軌道計画の概要を示す斜視図である。
【図8】同上、空転時における並進モードの実験結果を示すグラフである。
【図9】同上、空転時における回転モードの実験結果を示すグラフである。
【図10】同上、移動体がコンクリート路面を走行した時の並進モードの実験結果を示すグラフである。
【図11】同上、移動体がコンクリート路面を走行した時の回転モードの実験結果を示すグラフである。
【図12】同上、移動体が滑り止め付鉄板を走行した時の並進モードの実験結果を示すグラフである。
【図13】同上、移動体が滑り止め付鉄板を走行した時の回転モードの実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0123】
2 入力手段
3 処理手段(逆引き手段)
6 モータ制御手段(移動体制御手段)
11 移動体
14 アクチュエータ
23,24 外乱オブザーバ
25 第3の変換部(変換手段)
35 マッピング手段
36 乗り心地評価手段(移動体の動作または反応を評価する手段)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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