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明細書 :工作機械

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
特許番号 特許第3520344号 (P3520344)
公開番号 特開2004-249434 (P2004-249434A)
公開日 平成16年9月9日(2004.9.9)
発明の名称または考案の名称 工作機械
国際特許分類 B23Q  1/01      
B23Q  1/26      
B23Q 11/12      
FI B23Q 1/02 A
B23Q 1/26
B23Q 11/12 A
B23Q 11/12 B
B23Q 1/08 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2003-044162 (P2003-044162)
出願日 平成15年2月21日(2003.2.21)
発明者または考案者 【氏名】小幡 文雄
【氏名】岡本 尚機
出願人 【識別番号】391012453
【氏名又は名称】鳥取大学長
個別代理人の代理人 【識別番号】100078204、【弁理士】、【氏名又は名称】滝本 智之
審査請求
テーマコード 3C048
Fターム 3C048BB01
3C048BC03
要約 【課題】工作機械は、その運転による熱発生のため、加工精度の低下を招いた。従来、発熱個所近傍を冷却するとか、発熱個所近傍に断熱材を介在させて熱的要因による加工精度の低下を防止していたが、いずれにしてもコスト高でエネルギー節減の面からも課題が多い。
【解決手段】本発明は、熱を閉じこめることによって、例えば機械冷却の動力源として使用するなど、発生熱を積極的に利用するものであり、発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体と、上記熱伝導体により導かれた熱エネルギーを他のエネルギーに変換する熱エネルギー変換体とを備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体とを備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体と、上記熱伝導体により導かれた熱エネルギーを他のエネルギーに変換する熱エネルギー変換体とを備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項3】
発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体と、上記熱伝導体により導かれた熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱・電気エネルギー変換体と上記熱・電気エネルギー変換体により変換された電気エネルギーを動力源とする冷却装置とを備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項4】
構造体が、モータ、切削等の加工部又は回転もしくは摺動する主軸部である請求項1、2、3の何れかに記載の工作機械。
【請求項5】
熱遮蔽体が、エポキシ樹脂などのプラスチック又はジルコニアもしくはアルミナなどのセラミックスの溶射による薄膜体、又は上記プラスチック又はセラミックスからなる板体である請求項1、2、3の何れかに記載の工作機械。
【請求項6】
熱伝導体がヒートパイプである請求項1、2、3の何れかに記載の工作機械。
【請求項7】
熱エネルギー変換体が、ゼーベック効果を利用した金属又は半導体よりなる熱電変換素子である請求項1、2、3の何れかに記載の工作機械。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械に関し、工作機械の切削等に伴なう発熱又は回転部もしくは摺動部で発生する熱による工作機械本体の熱変形を防ぎ、加工精度を向上させ、又はそれらの発生熱を積極的に有効利用することに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、工作機械はその運転により、構成部材であるモータ、回転部分、摺動部分又は切削などの加工部分などが熱の発生源となり、その熱が構成部材に対し熱変形を生じさせ、そのため切削などの加工精度を低下させる問題点がある。
【0003】
そのため、発熱個所近傍を冷却することで熱変形による加工精度の低下を防止したり、又、工作機械の複数個所に変位センサを設け、そのセンサ出力から熱変形量を算出し、機械の制御側でその熱変形を補正することが行われている。
【0004】
又、工作機械の発熱源であるところの送りモータ、ボールねじ、主軸台のモータ、摩擦運動部分等から発生する熱を断熱することによって、熱的要因による加工寸法の時間的変化を防止するため、刃物台を載置したスライダとボールねじとの間、又は上記スライダとスライダベースとの間の相対的に摺動する部分、又はモータを組み込んだ主軸台と工作物を把持するチャックとの間等に断熱材を介在させたものは知られている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11-320211号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
いずれの従来例も、発熱源そのものを冷却するとか、又は発生熱の影響を補正するとか、最小限にするということであって、その発生熱を利用するという観点は全くない。本発明は、熱変形による加工精度の低下を防止することに加え、それら発生熱を積極的に利用することに想到し完成したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明請求項1の発明は、発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体とを備えたことを特徴とする工作機械を提供する。
【0008】
熱を拡散してしまわずに閉じこめることによって、その熱を必要に応じてそのまま放出し、又は積極的に利用しようとするものである。本明細書で構造体とは、モータ、切削等の加工部、回転又は摺動する主軸部等を指す。
【0009】
本発明請求項2の発明は、発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体と、上記熱伝導体により導かれた熱エネルギーを他のエネルギーに変換する熱エネルギー変換体とを備えたことを特徴とする工作機械を提供する。この構成により、熱エネルギーを積極的に他のエネルギー、例えば電気エネルギーに変換するものである。
【0010】
本発明請求項3の発明は、発熱源を有する構造体と、上記構造体の一部又は全部を熱的に遮蔽する熱遮蔽体と、上記熱遮蔽体により閉じこめられた熱エネルギーを導く熱伝導体と、上記熱伝導体により導かれた熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱・電気エネルギー変換体と上記熱・電気エネルギー変換体により変換された電気エネルギーを動力源とする冷却装置とを備えたことを特徴とする工作機械を提供する。この構成により、発熱エネルギーを冷却装置の動力源として利用し、低消費エネルギー、環境保全型の工作機械を提供する。
【0011】
本発明請求項4、5、6、7の発明は、それぞれ構造体、熱遮蔽体、熱伝導体、熱エネルギー変換体につき好適な実施例を特定したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
工作機械は多種多様、多岐にわたり、種々の実施例において、本発明は実現されるが、以下その一実施例について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例におけるビルトインモータ方式の工作機械の構成を示す図である。図1において、1は主軸頭であり、主軸頭1中に回転可能な主軸2があり、その主軸2の先端に工具3が装着されている。4はベアリング、5は工作機械本体のコラム、6、6´はそれぞれモータのステータ及びロータである。7は熱遮蔽体の一例の、エポキシ樹脂などのプラスチック溶射により形成された断熱材、8は熱伝導体の一例のヒートパイプ、9は熱エネルギー変換体である。
【0014】
尚、10は熱エネルギー変換体9より配線13を介して電力供給を受ける排気ポンプ、12は空冷用溝であり主たる部分は螺旋状に主軸2に対し軸対称に配設されている。11は空冷用溝12の吸入口である。
【0015】
上記のような構成において、工具3による加工又は主軸2の回転に伴なう発熱又はモータ部からの発熱は断熱材7によって閉じこめられる。この閉じこめられた熱は熱伝導体であるヒートパイプ8によって導かれ、熱エネルギー変換体9により、熱エネルギーを例えば電気エネルギーに変換する。変換された電気エネルギーは排気ポンプ10を動かし、冷却用の空気を空冷用溝12を通して発熱部を効果的に冷却する。上記において、断熱材7は熱遮蔽体として作用するが、これはその表面にエポキシ樹脂などのプラスチックを溶射して形成されたものに限らず、ジルコニア、アルミナなどのセラミックス他の熱伝導率の低い物質を適宜選択し溶射して形成されたものでも構わない。又、熱遮蔽体として溶射により被覆した断熱材に限らず、熱伝導率の低い物質からなる板、シートなど板体自体も選択し得る。
【0016】
熱伝導体としては、発熱部の熱を奪い、低損失で熱エネルギーを熱エネルギー変換体まで導くものであり、ヒートパイプなどが使用し得る。
【0017】
又、熱エネルギー変換体としては、ゼーベック効果を利用した金属又は半導体よりなる熱電変換体素子が利用し得る。
【0018】
本発明者らは、本発明に至る基礎的研究として断熱材の接触熱抵抗に及ぼす断熱材とその厚さ及び面圧との関係を検討したので、その結果を以下説明する。
【0019】
実験に用いた試験片は、機械構造用炭素鋼(S50C)(縦50mm、横50mm、厚さ62mm)であり、片面にエポキシ樹脂を溶射し、溶射皮膜厚さをt(0、0.05、0.5、1.0mm)とした。その試験片の間にシリコンラバーヒータ(縦80mm、横50mm、厚さ2mm、発熱量0.6W/cm/100V)を挿入したブロックを挟み、マシンバイスで面圧p(1.6~9.7MPa)を加えた。次に、シリコンラバーヒータに一定電圧100Vを加え、測定面の定常温度を赤外線放射温度計で測定した。
【0020】
図2は、溶射皮膜厚さt=0.05mm、面圧p=3.2MPaで得られた試験片表面の定常温度測定結果である。縦軸は表面温度T、横軸はヒータを中心とした距離xである。図2より、温度分布はヒータ設置部に対してほぼ対称となっている。そこで以下では、図2中右側のみの試験片定常表面温度を対象にした。
【0021】
図3は、溶射皮膜厚さt=0.5mm、面圧p=6.5MPaの条件下で得られた、試験片表面定常温度測定結果と、試験片溶射部の接触熱抵抗RをR=0.005mK/Wと仮定し、予備実験で求めた試験片とバイスとの間の接触熱抵抗R´=3.4×10-4K/Wを用いて計算した結果を比較したものである。R=0.005mK/Wとすれば、実験結果と数値計算結果がほぼ一致することがわかる。そこで以下では、このようにして接触熱抵抗Rを決定した。
【0022】
図4は、面圧p=6.5MPaを加えた時の接触熱抵抗Rに及ぼす溶射皮膜厚さtの影響を示す。Rとtは比例関係にあり、t=0mmのRと比較してt=0.05mmでは約7.5倍、t=1.0mmでは約55倍に増大している。
【0023】
図5は、接触熱抵抗Rに及ぼす面圧pの影響を各種tに対して示す。いずれの溶射皮膜厚さでも、本実験範囲内ではRに及ぼす面圧の影響はわずかである。
【0024】
以上より判るように、接触熱抵抗におよぼす面圧の影響はわずかであるが、接触熱抵抗に及ぼす溶射皮膜の影響は顕著で、接触熱抵抗は溶射皮膜厚さ増加とともに増大し、溶射皮膜厚さt=1.0mmでは約55倍にも増大することがわかる。つまり発熱部を断熱材等で覆うことにより工作機械の他の構造体への熱の拡散を防ぐことが十分に出来ることが判る。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、工作機械の運転に伴なう発熱による加工精度の低下を防止することができ工作機械の高精度化が図れることは勿論、運転に伴なう発熱の除去を外部エネルギーを使用せずに行なうことができ、省エネルギー、環境保全に好適な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における工作機械の構成を示す図である。
【図2】本発明に至る基礎的研究の結果を説明するための図で、試験片表面の定常温度の測定結果を示す図である。
【図3】本発明に至る基礎的研究の結果を説明するための図で、試験片表面の定常温度測定結果と計算で得られた結果を比較して示した図である。
【図4】本発明に至る基礎的研究の結果を説明するための図で、接触熱抵抗と断熱材の溶射皮膜の厚さの関係を示す図である。
【図5】本発明に至る基礎的研究の結果を説明するための図で、接触熱抵抗と面圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 主軸頭
2 主軸
3 工具
4 ベアリング
6、6´ モータのステータ及びロータ
7 断熱材
8 ヒートパイプ
9 熱エネルギー変換体
10 排気ポンプ
12 空冷用溝
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4