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明細書 :すべり案内及び同すべり案内を備えた工作機械

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4228078号 (P4228078)
公開番号 特開2005-297167 (P2005-297167A)
登録日 平成20年12月12日(2008.12.12)
発行日 平成21年2月25日(2009.2.25)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 すべり案内及び同すべり案内を備えた工作機械
国際特許分類 B23Q   1/42        (2006.01)
F16C  29/02        (2006.01)
FI B23Q 1/42
F16C 29/02
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2004-120793 (P2004-120793)
出願日 平成16年4月15日(2004.4.15)
審査請求日 平成17年2月8日(2005.2.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
発明者または考案者 【氏名】小幡 文雄
【氏名】上原 一剛
【氏名】岡本 尚機
個別代理人の代理人 【識別番号】100078204、【弁理士】、【氏名又は名称】滝本 智之
審査官 【審査官】関 義彦
参考文献・文献 特開平3-149147(JP,A)
特開平4-322930(JP,A)
特開平9-229296(JP,A)
特開2002-130268(JP,A)
特開平11-201156(JP,A)
調査した分野 B23Q 1
F16C 29/02
特許請求の範囲 【請求項1】
表面粗さが最大高さ0.1μm以下である鋼よりなる基台と、上記基台上をすべり移動する表面粗さが最大高さ0.1μm以下である鋼よりなる移動体とよりなり、上記基台と上記移動体との間に40℃における動粘度85~170mm2/sの潤滑油を介在させたことを特徴とするすべり案内。
【請求項2】
請求項1に記載のすべり案内を備えた工作機械。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、特にそのすべり案内に関し、位置決め精度の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられているすべり案内は、高剛性で減衰特性に優れ、重切削に好適で安価という利点をもっている。反面、摺動抵抗に速度依存性があるという欠点を持つため、スティックスリップやロストモーションの発生により位置決め誤差を生じやすい。
【0003】
従来のすべり案内は、基台本体表面と基台本体上を移動する移動体との間に、一般的に潤滑油を供給している。この場合、基台表面は表面粗さが最大高さ1~2μm程度であり、潤滑油の40℃における動粘度は68mm2/s程度であり、潤滑油の保持のため、即
ち油だまりをつくるため、移動体の基台との接触表面にキサゲ加工を施すのが一般的であった。(例えば、非特許文献参照)。

【非特許文献1】田中久一郎著「摩擦のおはなし」財団法人日本規格協会発行、2001年1月25日、P190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のすべり案内は、一般的に上述のとおり、キサゲ加工により潤滑油を保持しようとするものであるが、低速度領域における動摩擦係数が高いゆえ、位置決め精度が低いという欠点がある。さらに、詳しく述べれば、すべり速度に対する動摩擦係数の特性は、図1のようになり、低速度域では動摩擦係数が高く、速度の増加に伴い動摩擦係数が減少する負の勾配のため、スティックスリップを起こす結果、位置決め精度が悪いという欠点がある。
【0005】
本発明は、すべり速度が小さいときにも、即ち低速度域でも動摩擦係数の増加を招くことの無いようなすべり案内及び同案内を備えた工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面粗さが最大高さ0.1μm以下である鋼よりなる基台と、上記基台上をすべり移動する表面粗さが最大高さ0.1μm以下である鋼よりなる移動体とよりなり、上記基台と上記移動体との間に40℃における動粘度85~170mm2/sの潤滑油を介在させたことを特徴とするすべり案内を提供する。その特徴は、基台及び移動体の表面粗さを最大高さ0.1μm以下にすること、つまり従来の基台、移動体よりも鏡面化することと、基台と移動体との間に介在させる潤滑油の40℃における動粘度を85~170mm2/sと、従来の潤滑油よりも高粘度にすることである。このような構成にすることにより、従来のキサゲ加工をすることなく、かつ低速度域での動摩擦係数の低減を図ることができる。尚、上記40℃における動粘度が85mm2/sより小であると油膜切れを起こすことになり、又170mm2/sより大であると粘性によって油を引きずるため抵抗が大きくなり、いずれの場合も好ましくない。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、高剛性のすべり案内の欠点の一つである低速度域での動摩擦係数の増加を抑えることができ、そのことによりすべり案内の位置決め精度の向上が図れる。本発明は又、すべり案内の特徴である耐びびり性(剛性と減衰能の積)が高く、加工時のびびりの発生を抑制することができるので、高精度の位置決めが実現することにより重切削対応型の工作機械を提供し得た。又、本発明は、例えば送り速度を従来の1.5倍に、切り込み深
さを従来の1.5倍にすることが現実的に可能となり、その場合加工能率を2倍強にすることができ、ステンレス鋼などの難削材に対しても有効な工作機械を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例につき、以下図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図2は、工作機械の主要部を示す斜視図であり、その中ですべり案内が採用されることがある。例えば図2において、1が基台であり、2が基台上をすべり移動する移動体である。尚、3はコラム、4は主軸頭、5は主軸、6は主軸受、7はモータ、8は送りねじ、9は工具を示す。
【0010】
更に、基台1と移動体2の接触面10を誇張拡大して模式的に示すと、一般的に図3のようになり、一部において基台1及び移動体2を構成する金属面同志が接触しており、基台1と移動体2間の空隙には潤滑油11が満たされ油膜が形成され、移動体2の基台1上の移動を円滑にしている。
【0011】
本発明のような構成、即ち基台及び移動体の表面粗さを最大高さ0.1μm以下とし、基台と移動体との間に注入する油の40℃における動粘度を85~170mm2/sとすることにより、移動体の速度に対する動摩擦係数の関係は図4のようになる。図4よりわかるように、動摩擦係数は低速度領域においても0.02~0.04程度の低い値ですべり速度に依存しない。この動摩擦係数の値は従来技術における0.1程度(図1参照)と比べ、格段に改善されている。
【0012】
以下、実施例毎に具体的にデータを示して説明する。
【実施例1】
【0013】
図5は、基台として鋼(表面粗さの最大高さが0.10μm)、移動体として鋼(表面粗さの最大高さが0.10μm)を使用し、基台のすべり速度1~6000mm/minにおける動摩擦係数(単位は無次元)の測定結果を示す。図中の鋼/鋼(0.10/0.10)は、移動体として表面粗さの最大高さが0.10μmの鋼、基台として表面粗さの最大高さが0.10μmの鋼を使用したことを示す。また、0.1MPaは本測定において移動体に負荷した垂直荷重による面圧の大きさを示す。また、図中のWAY68(21.5℃)は、インフィニティ株式会社の純植物性潤滑液WAY68(40℃における動粘度は85.9mm2/s、21.5℃におけるそれは215.2mm2/sである)を使用し、測定を21.5℃の雰囲気温度下で行ったことを示す。測定した動摩擦係数の値にばらつきがあるため、一つのすべり速度に対して実験を3~5回繰り返した。各測定で得られた動摩擦係数の値を図5中の白丸印で示す。図中の線は、各すべり速度におけるそれらの動摩擦係数の測定値の平均値を滑らかな曲線で結んだものである。
【0014】
本実施例で使用した基台および移動体は、大同アミスター株式会社の冷間金型鋼(商品番号G04、C0.65%,Si0.3%,Mn2.0%,Cr1.0%,Mo1.4%)であり、焼入れ(650℃で30分保持後、850℃で30分保持し、水冷)と焼戻し(200℃で30分保持した後、空冷)の熱処理を施したものである。この熱処理の後、基台および移動体を研削加工するとともに、ペーパーによる研磨と0.3μmのアルミナによるバフ研磨で所定の表面粗さに仕上げた。基台と接触する移動体の案内面の大きさは10mm×10mmとした。また、研削加工時に基台と移動体に付加される磁力が動摩擦係数に及ぼす影響を小さくするため、いずれの試験片も消磁した。
【0015】
移動体と基台の摺動時の動摩擦係数の測定には、新東科学株式会社の表面性測定機トライボギア(商品記号はType14FW)を使用した。この測定機は、案内面に対して垂
直な荷重P(9.81N)を負荷した状態で、基台と移動体を1~6000mm/minで摺動させ、基台と移動体の摺動に伴って発生する摩擦力Fを検出することにより、FをPで除算した動摩擦係数を測定する装置である。本実施例では、移動体と基台の接触面に作用する単位面積当りの荷重(面圧)は、(9.81N)/(10mm×10mm)≒0.1MPaである。この面圧は、従来の工作機械の案内面にかかる面圧がおよそ0.1MPaであることを参考にして決めた。実験は、基台および移動体を試験機のテーブルおよび平面圧子に固定し、WAY68を基台の摺動面に塗布した状態で移動体と基台を接触させた後、表面性測定機のテーブル移動の指令を与えて行った。
【0016】
図6は、図5の特性図の横軸(すべり速度)のスケールを拡大して示したもので、低すべり速度の領域の状況をより詳細に表している。
【0017】
図5、図6から云えることは、すべり速度が100mm/min程度の低速度の領域でも動摩擦係数が0.02程度の低い値を示している。
【実施例2】
【0018】
図7は、基台として鋼(表面粗さの最大高さが0.10μm)、移動体として鋼(表面粗さの最大高さが0.10μm)を使用し、基台のすべり速度1~6000mm/minにおける動摩擦係数の測定結果を示す。図中の鋼/鋼(0.10/0.10)は、移動体として表面粗さの最大高さが0.10μmの鋼、基台として表面粗さの最大高さが0.10μmの鋼を使用したことを示す。また、0.1MPaは本測定において移動体に負荷した垂直荷重による面圧の大きさを示す。また、図中のWAY120(21.5℃)は、インフィニティ株式会社の純植物性潤滑液WAY120(40℃における動粘度は170.3mm2/s、21.5℃におけるそれは497.1mm2/sである)を使用し、測定を21.5℃の雰囲気温度下で行ったことを示す。測定した動摩擦係数の値にばらつきがあるため、一つのすべり速度に対して実験を3~5回繰り返した。各測定で得られた動摩擦係数の値を図7中の白丸印で示す。図中の線は、各すべり速度におけるそれらの動摩擦係数の測定値の平均値を滑らかな曲線で結んだものである。
【0019】
本実施例で使用した基台および移動体の詳細は実施例1と同様で、図8は図7の特性図の横軸(すべり速度)のスケールを拡大して示したものである。
【0020】
図7、図8から云えることは、すべり速度が10mm/min程度の低速度の領域でも動摩擦係数が0.025程度の低い値を示している。
【0021】
(参考例1)
図9は、基台として鋼(表面粗さの最大高さが0.10μm)、移動体として鋼(表面粗さの最大高さが0.10μm)を使用し、基台のすべり速度1~6000mm/minにおける動摩擦係数の測定結果を示す。図中の鋼/鋼(0.10/0.10)は、移動体として表面粗さの最大高さが0.10μmの鋼、基台として表面粗さの最大高さが0.10μmの鋼を使用したことを示す。また、0.1MPaは本測定において移動体に負荷した垂直荷重による面圧の大きさを示す。また、図中のWAY15(21.5℃)は、インフィニティ株式会社の純植物性潤滑液WAY15(40℃における動粘度は32.0mm2/s、21.5℃におけるそれは60.3mm2/sである)を使用し、測定を21.5℃の雰囲気温度下で行ったことを示す。測定した動摩擦係数の値にばらつきがあるため、一つのすべり速度に対して実験を3~5回繰り返した。各測定で得られた動摩擦係数の値を図9中の白丸印で示す。図中の線は、各すべり速度におけるそれらの動摩擦係数の測定値の平均値を滑らかな曲線で結んだものである。
【0022】
本参考例で使用した基台および移動体の詳細は実施例1と同様で、図10は図9の特性
図の横軸(すべり速度)のスケールを拡大して示したものである。図10のすべり速度10mm/minに対する動摩擦係数は0.1以上の大きな値となったため、それ以下のすべり速度における動摩擦係数については測定していない。図9、図10から云えることは、すべり速度が100mm/min程度はともかく、それ以下の領域で動摩擦係数が大幅に増加しており、本発明の意図する効果が得られない。
【0023】
(参考例2)
図11、図12、図13は、基台としていずれも鋳鉄(表面粗さの最大高さが1.85μm)、移動体として鋳鉄(表面粗さの最大高さが1.63μm)を使用し、基台のすべり速度1~6000mm/minにおける動摩擦係数の測定結果を示す。図中の鋳鉄/鋳鉄(1.63/1.85)は、移動体として表面粗さの最大高さが1.63μmの鋳鉄、基台として表面粗さの最大高さが1.85μmの鋳鉄を使用したことを示す。また、0.1MPaは本測定において移動体に負荷した垂直荷重による面圧の大きさを示す。また、図中のWAY15(21.5℃)は、インフィニティ株式会社の純植物性潤滑液WAY15を使用し、測定を21.5℃の雰囲気温度下で行ったことを示し、WAY68(22.0℃)、WAY120(22.0℃)は、それぞれインフィニティ株式会社の純植物性潤滑液WAY68、WAY120を使用し、測定を22.0℃の雰囲気温度下で行ったことを示す。測定した動摩擦係数の値にばらつきがあるため、一つのすべり速度に対して実験を3~5回繰り返した。各測定で得られた動摩擦係数の値を図11、図12、図13中の白丸印で示す。図中の線は、各すべり速度におけるそれらの動摩擦係数の測定値の平均値を滑らかな曲線で結んだものである。
【0024】
図11、図12、図13から云えることは、すべり速度が1000mm/min以下の領域において、動摩擦係数が0.1程度以上となり、本発明の意図する効果が得られない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のすべり案内において、移動体のすべり速度に対する動摩擦係数の関係を示す図である。
【図2】すべり案内を備えた工作機械の一例を示す斜視図である。
【図3】すべり案内における基台と移動体の接触面の状況を拡大して模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施例におけるすべり案内において、移動体のすべり速度に対する動摩擦係数の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施例となる実験例のすべり速度と動摩擦係数の関係を示す図である。
【図6】図5における横軸のスケールを拡大して示す図である。
【図7】本発明の実施例となる他の実験例のすべり速度と動摩擦係数の関係を示す図である。
【図8】図7における横軸のスケールを拡大して示す図である。
【図9】参考例となる実験例のすべり速度と動摩擦係数の関係を示す図である。
【図10】図9における横軸のスケールを拡大して示す図である。
【図11】参考例となる他の実験例のすべり速度と動摩擦係数の関係を示す図である。
【図12】参考例となる他の実験例のすべり速度と動摩擦係数の関係を示す図である。
【図13】参考例となる他の実験例のすべり速度と動摩擦係数の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 基台
2 移動体
3 コラム
4 主軸頭
5 主軸
6 主軸受
7 モータ
8 送りねじ
9 工具
10 基台と移動体の接触面
11 潤滑油
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12