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明細書 :絶縁油中PCB(ポリ塩化ビフェニル)の分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4269051号 (P4269051)
公開番号 特開2005-024416 (P2005-024416A)
登録日 平成21年3月6日(2009.3.6)
発行日 平成21年5月27日(2009.5.27)
公開日 平成17年1月27日(2005.1.27)
発明の名称または考案の名称 絶縁油中PCB(ポリ塩化ビフェニル)の分析方法
国際特許分類 G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/12        (2006.01)
G01N  31/16        (2006.01)
G01N  33/26        (2006.01)
FI G01N 31/00 V
G01N 31/00 Y
G01N 31/12 A
G01N 31/12 B
G01N 31/16 Z
G01N 33/26
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2003-190872 (P2003-190872)
出願日 平成15年7月3日(2003.7.3)
審査請求日 平成18年7月3日(2006.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】高田 誠
【氏名】細見 正明
審査官 【審査官】白形 由美子
参考文献・文献 特開昭55-047445(JP,A)
特開平11-281639(JP,A)
特開昭58-153163(JP,A)
特開2002-365273(JP,A)
特開2005-009895(JP,A)
高田 誠,全有機ハロゲン(TOX)を用いた絶縁油中PCBの簡易測定技術,資源環境対策,2006年,Vol.42, No.8,p.67-69
細見 正明,東京農工大研究シーズ集2004 研究領域 環境 微量有害化学物質の迅速分析に関する研究,東京農工大研究シーズ集2004,2004年,p.233-236
調査した分野 G01N 31/00-G01N 31/22
G01N 33/26
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁油に含まれるポリ塩化ビフェニル(PCB)の定量分析方法において、少なくとも前記絶縁油を
非酸化性ガスの流量を、150mlmin 以上250mlmin 以下に設定した非酸化性ガス雰囲気で熱分解させる工程と、
酸素ガスの流量を、50mlmin 以上150mlmin 以下に設定した酸素ガス含有の雰囲気で燃焼させる工程と、
該燃焼により発生した塩化水素の量を電量滴定法で測定する工程と、
得られた塩化水素量からPCBの量を算出する工程と、
を有することを特徴とする絶縁油に含まれるPCBの定量分析方法。
【請求項2】
前記燃焼の温度、及び前記熱分解の温度が、700℃以上1000℃以下であり、前記熱分解における温度が、前記燃焼における温度よりも低く、かつ前記燃焼における温度が、経時で上昇することを特徴とする請求項1に記載のPCBの定量分析方法
【請求項3】
前記絶縁油が、イオン交換樹脂により無機塩素を除去された後、前記燃焼、又は前記熱分解がなされることを特徴とする請求項2に記載のPCBの定量分析方法
【請求項4】
前記算出する工程において、PCB製品の既知塩素含有量を用いることを特徴とする請求項3に記載のPCBの定量分析方法
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル類(PCB)の定量分析方法に関し、特に分析が困難である絶縁油中のポリ塩化ビフェニル類を短時間で、簡便かつ安価に分析すること可能とした分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
絶縁油中PCBの公知の定量分析法は、厚生省告示第222号に規定される高分解能ガスクロクロマトグラフ質量分析器(GC/MS)による方法がある。この方法は、液液抽出工程の後、多層シリカゲルクロマトグラムによる試料の精製を行い、分解能10,000以上の高分解能ガスクロマトグラフ質量分析器による測定を行うものである。また他の方法として日本電気協会JEAC1201に規定される電子捕獲検出器付ガスクロマトグラフ(GC-ECD)による分析方法がある。この方法はシリカゲルクロマトグラムによる試料の精製を行い、電子捕獲検出器付ガスクロマトグラフにより測定する方法である。いずれの分析方法も、妨害物質の除去を目的としたカラム処理による前処理と煩雑な分析装置の操作を必要とし、その分析操作には3日から1週間程度を要する。
PCBの無害化処理において、膨大な油試料の中からPCB濃度に応じて、分別する必要があり、即時の分析が求められている。しかし、絶縁油中に含まれるポリ塩化ビフェニル類の分析法は上記の通り、従来法では多大な時間を要するため、即時の分析は困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとく、公知の定量分析法は多大の時間と費用を要する。しかし、PCB汚染物と疑わしい検体は、膨大な数であり、迅速かつ安価な分析方法が求められている。
本発明は、上記の問題点を解消し、短時間で簡便かつ安価な定量分析方法により、絶縁油中のPCBを行う方法を提供することを課題とする。
【0004】
(1)絶縁油に含まれるポリ塩化ビフェニル(PCB)の定量分析方法において、少なくとも前記絶縁油を非酸化性ガスの流量を、150mlmin 以上250mlmin 以下に設定した非酸化性ガス雰囲気で熱分解させる工程と、
酸素ガスの流量を、50mlmin 以上150mlmin 以下に設定した酸素ガス含有の雰囲気で燃焼させる工程と、
該燃焼により発生した塩化水素の量を電量滴定法で測定する工程と、
得られた塩化水素量からPCBの量を算出する工程と、
を有することを特徴とする絶縁油に含まれるPCBの定量分析方法。
【0005】
(2)前記燃焼の温度、及び前記熱分解の温度が、700℃以上1000℃以下であり、前記熱分解における温度が、前記燃焼における温度よりも低く、かつ前記燃焼における温度が、経時で上昇することを特徴とする(1)に記載のPCBの定量分析方法
【0006】
(3)前記絶縁油が、イオン交換樹脂により無機塩素を除去された後、前記燃焼、又は前記熱分解がなされることを特徴とする(2)に記載のPCBの定量分析方法
【0007】
(4)前記算出する工程において、PCB製品の既知塩素含有量を用いることを特徴とする(3)に記載のPCBの定量分析方法
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における分析方法をさらに詳しく説明する。
【0013】
本発明においては、少なくとも、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む絶縁油を酸素ガス含有の雰囲気で燃焼させる工程と、該燃焼により発生した塩化水素の量を電量滴定法で測定する工程と、を有すれば、その他は特に限定されない。好ましくは、絶縁油を酸素ガス含有の雰囲気で燃焼させる前に、非酸化性ガス雰囲気で熱分解させる工程を有する。非酸化性ガス雰囲気で熱分解することで、絶縁油は液体から気体に変化し、急激な相変化が抑えられ、爆発的な燃焼が抑制される。
燃焼工程に使用するガスは、酸素リッチであれば制限は無いが、100容量%が酸素ガスであることが好ましい。熱分解の工程で使用するガスは、非酸化性ガスであれば制限が無く、還元性ガス及び不活性ガスを使用することができる。好ましくは、アルゴンガスである。
また、これらの燃焼に先立ち、不純物である無機塩素を溶解させるため、試料にアルコール類を添加し、イオン交換樹脂を充填したカラムに通液することが好ましい。無機塩素は、アルコール類側に抽出され、イオン交換樹脂により除去される。
不純物無機塩素を除去した溶液を石英製のボートに載せ、燃焼炉内に挿入し、好ましくは非酸化性ガス雰囲気下で熱分解させた後、酸素ガス雰囲気下で燃焼させ、有機塩素であるPCB中の塩素を塩化水素に変換させる。
発生した塩化水素を吸収液に捕集し、電量滴定法により塩化水素の量を検量線により求める。得られた塩化水素量からポリ塩化ビフェニル製品より求めた塩素含有量を乗じてPCB濃度を算出する。
【0014】
この分析方法による、絶縁油中のポリ塩化ビフェニル類の濃度の定量下限値は、0.5ppmである。上限は100%まで可能である。PCB量の絶対値として、検出可能範囲は、概ね10ng以上20mg以下である。
【0015】
本発明で使用するアルコール類は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール等を使用することができる。
イオン交換樹脂は、特に限定されないが、塩素イオンを除去するための陰イオン交換樹脂であればよい。
分析に使用する燃焼炉、電量滴定装置は、特に限定されないが、一連のシステムを備えた市販の全有機塩素分析装置の他、個別の機器を組み合わせたものでもよい。
【0016】
非酸化性ガスの流量は、150ml/min以上250ml/min以下であることが好ましく、より好ましくは、180ml/min以上220ml/min以下である。150ml/minより低い場合には、
充分な非酸化性ガス雰囲気を保つことができない。。また、250ml/minより多い場合には、試料が飛散してしまうため好ましくない。
酸素ガスの流量は、好ましくは、50ml/min以上150ml/min以下、より好ましくは、90ml/min以上110ml/min以下である。50ml/minより低い場合には、充分な酸素雰囲気とならず、不完全燃焼となる。また、150ml/minより多い場合には、燃焼時間が短くなるため、不完全燃焼が起こりやすくなり好ましくない。
【0017】
熱分解工程での炉内温度は、好ましくは、600℃以上1200℃以下、より好ましくは、700℃以上1000℃以下、更に好ましくは、750℃以上850℃以下である。
燃焼工程では、好ましくは、600℃以上1200℃以下、より好ましくは、700℃以上1000℃以下、更に好ましくは、850℃以上950℃以下である。熱分解温度が600℃より低い場合、充分な熱分解が起こらず、1200℃より高い温度では、爆発的な熱分解が起こり装置の損傷を招き好ましくない。また、燃焼温度が600℃より低い場合、PCBに含まれる塩素原子の全てが、塩化水素に変換されず、測定に誤差を生じ、1200℃より高い温度では、エネルギーが過剰に消費されるだけで、PCB中の塩化水素の変化率に変わりはない。特に、前記熱分解における温度が、前記燃焼における温度よりも低く、かつ、前記燃焼における温度が、経時で上昇することが好ましい。このような温度条件によって、PCB中の塩素原子を効率よく塩化水素に変換させることができる。
【0018】
熱分解工程での処理操作時間は、好ましくは、60秒以上180秒以下、より好ましくは、100秒以上140秒以下であり、燃焼工程では、好ましくは、50秒以上150秒以下、より好ましくは、80秒以上120秒以下である。
【0019】
このように、本発明では測定試料が油であるため、PCBに含まれる全ての塩素原子を塩化水素に効率良く変換させることが重要である、すなわち、ガス状のPCB含有試料を測定する場合に比べて、本発明における塩化水素ガス化の条件を見出すことは、重要な要因であり、かつ従来の方法からは、思いもよらない困難性が存在していた。
発明者らの鋭意研究の結果、PCB中の塩素原子を効果的に変換する条件を見出し、本発明に至った。本発明の方法を用いることで、簡易かつ再現性の良い絶縁油中のPCB定量分析が可能となった。
【0020】
電量滴定により得られた塩化水素の量から、PCBを算出する場合、PCB製品の既知の塩素含有率を用いることができる。PCB製品は、含有塩素濃度により区別されており、主要製品の塩素含有率は、42質量%、48質量%、54質量%と規定されている。PCBの種別に応じ、このような既知の塩素含有率の数値を用いることができる。電量滴定により求められた塩化水素量を、当該既知の塩素含有率で除した値が、PCB濃度となる。
【0021】
この方法によれば、上記の前処理操作に要する時間および燃焼炉、電量滴定による測定時間を合わせても、30分以内に結果を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定するものではない。
(実施例1)
図1に本実施例のフローシートを示す。試験管に絶縁油試料の0.5gを秤量し、エタノール0.1gを添加した。エタノールを含む試料をカートリッジ式の陰イオン交換樹脂(ジーエルサイエンス製ボンドエルート)に通液させた。得られた溶液の20mgを秤量し、全有機塩素分析装置(ダイアインスツルメンツ製TOX100)を用いて測定した。先に求めておいたPCB製品の塩素含有率ら、PCB濃度を算出した。
本発明による1試料当りの前処理時間および測定時間を合わせ、30分であった。
【0023】
(比較例1)
厚生省告示第222号に規定される高分解能ガスクロクロマトグラフ質量分析器(GC/MS)による方法で、実施例1と同一の絶縁油試料に含まれるPCBの量を測定した。この場合には、3日を要した。
【0024】
実施例1で得られた結果と、比較例1で得られた結果とを図2に示した。両者の分析結果を比較したところ、両者には極めて一致する相関関係があり、本発明の分析方法により充分に確からしい測定結果を得ることができた。
【0025】
【発明の効果】
本発明において絶縁油中に含まれるポリ塩化ビフェニルの定量分析方法として、煩雑な前処理を必要とせず、短時間で行う方法を確立することができた。また高価な高分解能ガスクロマトグラフ質量分析器を必要とせず、多量の溶媒も使用せずに分析することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例による分析方法のフローシートを示す図である。
【図2】本発明法とGC/MS法による測定結果の相関を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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