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明細書 :水系におけるデンドリマー合成法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4257974号 (P4257974)
公開番号 特開2005-075993 (P2005-075993A)
登録日 平成21年2月20日(2009.2.20)
発行日 平成21年4月30日(2009.4.30)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 水系におけるデンドリマー合成法
国際特許分類 C08G  85/00        (2006.01)
FI C08G 85/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2003-310781 (P2003-310781)
出願日 平成15年9月2日(2003.9.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本化学会弟83春季年会 2003年 講演予稿集(平成15年3月3日)に発表
審査請求日 平成18年9月1日(2006.9.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】松永 是
【氏名】中山 秀喜
【氏名】太田 博之
審査官 【審査官】船岡 嘉彦
参考文献・文献 特開2000-086758(JP,A)
特開2001-064383(JP,A)
特開2001-106940(JP,A)
調査した分野 C08G 85/00
特許請求の範囲 【請求項1】
2つの官能基Aとそれと反応し結合することのできる官能基Bを一つもつアミノ酸、これらから構成されるペプチドを、水溶性または水分散性ビルディングブロックとして用い、リン脂質膜を中心核として用いて、水溶液中で官能基AとBの結合反応を水溶性の架橋剤を用いて、行わせることによりデンドリマーを製造する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、官能基Aがアミノ基でありかつ官能基Bがカルボキシル基であることを特徴とする方法
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記リン脂質膜が、磁性細菌由来の磁気微粒子
を被覆するリン脂質の有機薄膜であることを特徴とする方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は水溶液中でのデンドリマー分子の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デンドリマーとは、中心核のまわりにビルディングブロックを順次結合させて枝分かれ構造を形成させることにより得られる樹木状多分岐高分子である。デンドリマー分子の合成方法としては、従来から多くの方法が知られている。しかしながら、従来のデンドリマー合成方法では、有機溶媒中で合成反応を行うため、生体膜等を中心核として用いた場合には、膜構造が破壊されてしまうためにデンドリマーの形成を行うことができなかった。したがって、水溶液中で生体膜が破損されない穏和な条件下でデンドリマーを合成する方法が求められている。
【0003】
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。

【特許文献1】特開2001-106940
【非特許文献1】J.Biotech.94(2002)217-224
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水溶液中においてデンドリマーを形成させる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、水溶性または水分散性のモノマーと、水溶性の架橋剤を用いることにより、水溶液中の穏和な条件下において、生体膜等が破損されずにデンドリマーの合成が可能であることを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、2つの官能基Aとそれと反応し結合することのできる官能基Bを一つもつアミノ酸、これらから構成されるペチドを、水溶性または水分散性ビルディングブロックとして用い、リン脂質膜を中心核として用いて、水溶液中で官能基AとBの結合反応を水溶性の架橋剤を用いて、行わせることによりデンドリマーを製造する方法を提供する。
【0007】
好ましくは、本発明の方法においては、官能基Aがアミノ基でありかつ官能基Bがカルボキシル基であるか、または官能基Aがカルボキシル基でありかつ官能基Bがアミノ基である。また好ましくは、官能基Aがアミノ基でありかつ官能基Bがチオール基であるか、または官能基Aがチオール基でありかつ官能基Bがアミノ基である。
【0008】
また好ましくは、本発明の方法においては、中心核として、リン脂質膜、無機粒子、または有機粒子を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の2つの官能基Aとそれと反応し結合することのできる官能基Bを用い、
リン脂質膜を中心核として用いて、水溶液中で官能基AとBの結合反応を行わせることにより、水溶液中におけるデンドリマーを合成できる方法を発明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法は、2つの官能基Aとそれと反応し結合することのできる官能基Bを1つもつアミノ酸等をビルディングブロックとして用い、リン脂質膜を中心核として用いて、水溶液中で官能基AとBの結合反応を行わせることを特徴とする。このようにして表面に多数の官能基Aを有するデンドリマーを製造することができる、デンドリマー表面の官能基Aは、所望により、さらに他の官能基に変換することができる。
【0011】
本発明の方法においては、官能基Aと官能基Bとの組み合わせは、アミノ基とカルボキシル基との組み合わせ、あるいはアミノ基とチオール基との組み合わせであることが好ましい。このような官能基の組み合わせを有するビルディングブロックとしては、塩基性アミノ酸であるリジン(Lys)、アルギニン(Arg)また、酸性アミノ酸である、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp)また、これらのアミド誘導体であるアスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)を用いることができる。また、これらのアミノ酸から構成されるペブチド、たとえば、—(Lys)-等の単一アミノ酸によるペブチド、および塩基性アミノ酸もしくは、酸性アミノ酸、およびその誘導体を1個以上含むペプチドを用いてもよい。さらに、システインと、塩基性アミノ酸もしくは、酸性アミノ酸、およびその誘導体を1個以上含むペプチドを用いてもよい。本発明において用いるビルディングブロックは、水溶性であることが好ましいが、水に対して難溶性であっても、分散性を有するものであれば、反応溶液中で激しく分散することにより使用することができる。
【0012】
本発明の方法においては、中心核として、リン脂質膜、および各種の無機粒子および有機粒子を用いることができる。本発明の方法は水溶液中で行うため、中心核として使用する粒子は水不溶性であるべきである。好ましい中心核としては、バクテリア由来の磁性体、人工磁性体、金属、プラスチックビーズ、ガラスビーズ、ゲル状物質などが挙げられる。
【0013】
リン脂質膜の例としては、リン脂質の有機薄膜で被覆された磁性細菌由来の磁気微粒子が挙げられる。磁性細菌から得られる磁性細菌粒子は、磁性細菌を培養後、微生物中から抽出することにより調製することができる。抽出方法としては、フレンチプレス等の物理的圧力によって微生物を破砕する方法やアルカリ煮沸、酵素処理、超音波破砕処理といった方法が採用できる。また、無機または有機粒子の表面に、例えばアミノ基、カルボキシル基、水酸基等の結合性官能基を有するリン脂質を結合させたものを用いてもよい。このようなリン脂質としては、例えばホオスファチジルエタノールアミン、ホオスファチジルセリン、ホオスファチジルイノシトール、ホオスファチジル-N-メチルエタノールアミン等を用いることができる。
【0014】
水不溶性の有機粒子の例としては、ポリスチレンビーズ、ナイロンビーズなどの有機ポリマーが挙げられる。
【0015】
無機粒子の例としては、鉄粉や磁性微粒子等の金属粉が挙げられる。磁気微粒子としては、例えば、Fe、γ-Fe、Co・γ-Fe、(NiCuZn)O・Fe、(CuZn)O・Fe、SiOで被覆したFe、各種の高分子材料(ナイロン、ポリアクリルアミド、タンパク質)とフェライトとの複合微粒子等を用いることができる。バクテリア由来の磁性体は、大きさが50-60nmの酸化鉄の単磁区でできており磁気特性が優れているため特に好ましい。磁気感受性微粒子としてのフェライト系の粒子は、公知の方法によって製造できる。また、フェライト系以外の粒子としては、磁性金属粒子やその複合体でもよい。さらに、SiOで被覆したFe粒子、γ-Fe粒子や炭素が共存する液相中で熱プラズマ法により製造される鉄を主成分とし、Ni、Coを含有する微粒子も挙げられる。これらの粒子は、公知の方法で容易に製造可能である。
【0016】
本発明の方法において用いる中心核は、ビルディングブロック中の官能基Bと結合しうる官能基Aを有する。既にその表面に官能基Aを有する粒子を中心核として用いてもよく、あるいは、当該技術分野においてよく知られる方法により二官能性反応基等を用いて中心核上に官能基Aを導入してもよい。例えば、表面にカルボキシル基を有する微粒子であるDynabeads M-270等を好適に用いることができる。
【0017】
本発明の方法においては、水溶液中で官能基AとBの結合反応を行わせることにより、中心核にビルディングブロックを順次結合させて分枝鎖構造を形成し、デンドリマーを製造する。官能基Aと官能基Bとの結合反応は、水溶性の架橋剤を用いて行う。例えば、カルボキシル基とアミノ基を結合させる場合には、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボイミド(EDC)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、もしくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(Sulfo-NHS)の組み合わせを用いることができる。また、チオール基とアミノ基を結合させる場合には、スクシンイミジル4-(マレイドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル4-[マレイミドフェニル]ブチレート(SMPB)、N-(γ—マレイミドブチキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、m-マレイミドベンゾイルーN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)などのヘテロ架橋剤を用いることができる。この反応を数世代行うことにより、中心核上にデンドリマーを成長させることができる。


【0018】
本発明の方法により得られるデンドリマーは、その表面上に多数の官能基、例えば、カルボキシル基またはアミノ基を有している。さらに、これらの表面上の官能基を適当な架橋剤で誘導化することにより、所望の官能基を導入することができる。例えば、エチレンジアミンを用いることにより、カルボキシル基をアミノ基に誘導化することができる。したがって、本発明の方法により得られるデンドリマーは、種々の物質の吸着剤、触媒の担体、遺伝子および蛋白質の分離用担体、および酵素や抗体の固定化担体等として有用である。
【0019】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
実施例1.磁気微粒子デンドリマーの製造
Magnetospirillum magneticum AMB-1は、Appl. Microbiol. Biotechnol.35(2003)651-655に記載されるようにして培養した。菌体を回収し、リン酸緩衝液(PBS)で洗浄した後、フレンチプレスに3回通して破砕した。次に、フレンチプレス破砕試料から磁気を用いて磁気微粒子を回収し、PBSで洗浄した。
【0021】
得られた磁気微粒子(BMP)1mgを、1mlの2.5%グルタルアルデヒドまたは5mM スベリン酸ビス(スルホサクシンイミドイル)(BS)の溶液中に分散させ、室温で2時間インキュベートした。磁気を用いて磁気微粒子を回収し、PBSで3回洗浄し、次に1mlの1mM Asp溶液を加え、室温で2時間インキュベートすることにより、第1世代の磁気微粒子デンドリマーBMP-Aspを製造した。
【0022】
得られたデンドリマーをMESバッファー(0.1M MES、0.5M NaCl(pH6.0))で3回洗浄し、2mM EDCおよび5mM Sulfo-NHSを含む溶液1ml中に分散させ、室温で2時間インキュベートした。次にこれをMESバッファーで3回洗浄し、20mM 2-メルカプトエタノールおよび1mM Aspを含む溶液1ml中に分散させ、室温で4時間インキュベートすることにより、第2世代の磁気微粒子デンドリマーBMP-Asp-Aspを製造した。
【0023】
同様にして、アミノ酸モノマーとしてAspの代わりにGluを用いて、デンドリマーBMP-GluおよびBMP-Glu-Gluを製造した(図1)。
【実施例2】
【0024】
実施例2.デンドリマー表面のカルボキシル基の定量
デンドリマー表面のカルボキシル基は、カルボキシル基にLysをペプチド結合させた後に表面のアミノ基を測定することにより定量した。実施例1で得られた4種類の磁気微粒子デンドリマー1mgを、それぞれMESバッファーで3回洗浄し、2mM EDCおよび5mM Sulfo-NHSを含む溶液1ml中に分散させ、室温で2時間インキュベートした。次にMESバッファーで3回洗浄し、20mM 2-メルカプトエタノールおよび1mM Lysを含む溶液1ml中に分散させ、室温で4時間インキュベートした。次にこれをPBSで洗浄しそれぞれの磁気微粒子デンドリマー100μgに対し、200μlの5mM スルホスクシンイミジルピリジルジチオプロピオンアミドヘキサノエート(Sulfo-LC-SPDP)溶液に懸濁し、室温で30分間インキュベートした。磁気微粒子デンドリマーをPBSで3回洗浄し、次に200μlの20mMジチオスレイトール中で25℃で30分間インキュベートした。上清を回収し、2-スルフィドリルピリジンの343nmの吸収を測定することにより、磁気微粒子デンドリマー表面の1級アミン分子数を定量した。対照としては、アミノ酸を付加させていない磁気微粒子を用いた。結果を図2に示す。磁気微粒子数を算出するために、粒子を直径100nmの球形のマグネタイトとした時の粒子1個の重量、2.72x10-15gを基に、乾燥重量から換算した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の方法により得られるデンドリマーは、種々の物質の吸着剤、触媒の担体、遺伝子および蛋白質の分離用担体、および酵素や抗体の固定化担体等として有用である。また磁気ビーズはタイタープレートのような平板を固相とする方法と比べ、反応効率が良く、磁力によって外部からビーズの回収、離脱が可能であることから核酸抽出・精製や免疫測定などのバイオテクノロジー研究における機能性磁性担体としての汎用性が高い。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にしたがって製造した磁気微粒子デンドリマーの構造図である。
【図2】本発明にしたがって得られたデンドリマーの表面上の官能基の数を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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