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明細書 :細胞選別方法および細胞選別装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5212989号 (P5212989)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発行日 平成25年6月19日(2013.6.19)
発明の名称または考案の名称 細胞選別方法および細胞選別装置
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
FI C12Q 1/04
C12M 1/34 B
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2009-505245 (P2009-505245)
出願日 平成20年3月19日(2008.3.19)
国際出願番号 PCT/JP2008/055126
国際公開番号 WO2008/114828
国際公開日 平成20年9月25日(2008.9.25)
優先権出願番号 2007073064
優先日 平成19年3月20日(2007.3.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年3月22日(2011.3.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
発明者または考案者 【氏名】櫻井 孝司
【氏名】寺川 進
【氏名】須々木 礼美
【氏名】最上 秀夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 特開2006-276561(JP,A)
特開2006-158611(JP,A)
特開平11-133306(JP,A)
特開平03-295464(JP,A)
調査した分野 C12Q1/00-1/68
C12M1/00—3/10
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いた細胞選別方法であって、
選別の対象とされる対象細胞を含む細胞群を前記ファイバユニットが浸された流体中に散布し、
前記複数のファイバのうちの前記対象細胞が付着している対象ファイバを前記ファイバユニットから分離し、
該分離した前記対象ファイバを用いて前記対象細胞を増殖させることを特徴とする細胞選別方法。
【請求項2】
前記対象細胞を増殖させるときに、前記対象ファイバの周囲に細胞の付着していない別のファイバを配置することを特徴とする請求項1記載の細胞選別方法。
【請求項3】
前記対象ファイバを前記ファイバユニットから分離する前に、前記複数のファイバのうちの選別の対象外とされる対象外細胞が付着または近接している対象外ファイバから前記対象外細胞を取り除くことを特徴とする請求項1または2記載の細胞選別方法。
【請求項4】
前記対象ファイバを前記ファイバユニットから分離する前に、前記ファイバユニットから取り出される光の光学特性を測定し、該測定された光学特性に基づいて、前記対象ファイバを分離することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の細胞選別方法。
【請求項5】
複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いた細胞選別方法であって、
選別の対象とされる対象細胞を含む細胞群を前記ファイバユニットが浸された流体中に散布し、
前記複数のファイバのうちの選別の対象外とされる対象外細胞が付着または近接している対象外ファイバから前記対象外細胞を取り除いた後、
前記ファイバユニットを用いて前記対象細胞を増殖させることを特徴とする細胞選別方法。
【請求項6】
複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いた細胞選別方法であって、
前記ファイバユニットを構成する前記ファイバのそれぞれに座標を割り当て、
選別の対象とされる対象細胞を含む細胞群を前記ファイバユニットが浸された流体中に散布し、
前記複数のファイバのうちの前記対象細胞が付着している対象ファイバに割り当てられた前記座標を指定し、
前記座標を指定した前記対象ファイバを前記ファイバユニットから分離し、該分離した前記対象ファイバを用いて前記対象細胞を増殖させることを特徴とする細胞選別方法。
【請求項7】
前記対象ファイバに割り当てられた前記座標を指定する前に、前記複数のファイバのうちの選別の対象外とされる対象外細胞が付着または近接している対象外ファイバから前記対象外細胞を取り除くことを特徴とする請求項6記載の細胞選別方法。
【請求項8】
前記対象外ファイバから前記対象外細胞を取り除くときに、前記対象外ファイバに光を照射して前記対象外細胞と光ファイバとの接着力低下を誘導させ、前記対象外細胞に障害を発生させ若しくは前記対象外細胞を死滅させることを特徴とする請求項3,5,7のいずれか一項記載の細胞選別方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバユニットを用いた細胞選別方法およびファイバユニットを備えた細胞選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞などの粒子を光ファイバを用いて選別する技術が知られている。この技術に関して、例えば特許文献1には、次のような粒子選別装置が開示されている。この粒子選別装置は、選別対象の粒子を流体中に浮遊させておき、複数の光ファイバをライン状に配列した光ファイバ群を用いてその流体中に集光スポット列を形成し、光ファイバ群を移動させて集光スポット列を移動させたときに粒子が流体から受ける抵抗力の違いに着目して粒子を選別するというものである。
【0003】
ところで、生きた細胞の識別および仕分を行う手法として、FACS(fluorescence activated cell sorting)法が知られている。このFACS法は、蛍光標識したサンプルにおける蛍光強度を測定し、得られた強度分布データから任意のサンプルを指定して、生きた細胞の識別および仕分を行うというものである。

【特許文献1】特開平3-295464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、FACS法を適用した細胞選別装置では、選別しようとする細胞をカラム中へ流し、その細胞が所定位置を通過するタイミングで蛍光強度を測定している。そのため、この種の細胞選別装置では、非常に限られた期間でしか蛍光強度を測定することができないので測定可能な対象は表現形に限定されており、個々の細胞における様々な変化(例えば蛍光や発光における、色の変化、明るさの変化、濃淡の変化、時間的な変化など)を検出することが困難である。
【0005】
また、この種の細胞選別装置は、選別しようとする細胞(サンプルともいう)を流体中に浮遊させた状態で選別を行うので、細胞が死滅等することもあり、サンプルの物理的侵襲度が高い。
【0006】
その一方、サンプルを浮遊状態とせず静置状態で選別する手法として、レーザー走査法を用いた捕捉や切出しなどがあるが、これらの手法は、仕分けの対象となる領域の選択などにおいて人為的な判断に頼る部分が大きく、自動化することが困難であった。
【0007】
また、培養などにより単一(クローン)化したサンプルを増殖させるためには、選別したクローンを適当な場所へ搬送するなど別の操作を追加する必要もある。
【0008】
このように、従来、生きた細胞へのストレスをできるだけ小さくしたまま個々の細胞の様々な変化に着目した選別を行い、その選別した細胞を増殖させるという一連の操作を行える好適な手法は存在していなかった。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、生きた細胞へのストレスをできるだけ小さくしたまま個々の細胞の様々な変化に着目した選別を行え、その選別した細胞を増殖させることができる細胞選別方法および細胞選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いた細胞選別方法であって、選別の対象とされる対象細胞を含む細胞群をファイバユニットが浸された流体中に散布し、複数のファイバのうちの対象細胞が付着している対象ファイバをファイバユニットから分離し、その分離した対象ファイバを用いて対象細胞を増殖させる細胞選別方法を特徴とする。
【0011】
この細胞選別方法では、複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いているから、細胞をファイバに付着させたまま分離でき、しかも細胞がファイバごとにユニット化される。また、ファイバを通じて各細胞の光学特性が測定され、その光学特性にしたがい各細胞が選別される。
【0012】
また、上記細胞選別方法では、対象細胞を増殖させるときに、対象ファイバの周囲に細胞の付着していない別のファイバを配置することが好ましい。
【0013】
こうすると、分離したファイバと別のファイバとで、機能や形態などの特性が単一化した対象細胞の細胞群を得るためのファイバ群が形成される。
【0014】
さらに、上記細胞選別方法では、対象ファイバをファイバユニットから分離する前に、複数のファイバのうちの選別の対象外とされる対象外細胞が付着または近接している対象外ファイバから対象外細胞を取り除くことが好ましい。
【0015】
こうすると、対象外細胞を取り除くことによって、必要なサンプルだけがより多く優位に残るようになる。
【0016】
また、対象ファイバをファイバユニットから分離する前に、ファイバユニットから取り出される光の光学特性を測定し、その測定された光学特性に基づいて、対象ファイバを分離することができる。
【0017】
こうすると、必要な時間をかけて測定した対象細胞の機能な形態に基づいて、細胞が選別されるようになる。
【0018】
そして、本発明は、複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いた細胞選別方法であって、選別の対象とされる対象細胞を含む細胞群をファイバユニットが浸された流体中に散布し、複数のファイバのうちの選別の対象外とされる対象外細胞が付着または近接している対象外ファイバから対象外細胞を取り除いた後、ファイバユニットを用いて対象細胞を増殖させる細胞選別方法を提供する。
【0019】
この細胞選別方法でも、ファイバユニットを用いているから、細胞をファイバに付着させたまま分離でき、しかも細胞がファイバごとにユニット化される。また、ファイバを通じて各細胞の光学特性が測定され、その光学特性にしたがい各細胞が選別される。対象外細胞を取り除いた後、サンプルの一部を直接ピックアップしてもよいが、対象細胞を増殖させる等ファイバユニットを用いた操作を継続させたい場合は光ファイバを分離せずに続けることができる。このように本方法では任意の細胞を増倍するなど、効率高く収穫することができるので、最初のサンプルに含まれている必要な細胞数が極めて微量な場合でも効果を発揮できる。
【0020】
さらに、本発明は、複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いた細胞選別方法であって、ファイバユニットを構成するファイバのそれぞれに座標を割り当て、選別の対象とされる対象細胞を含む細胞群をファイバユニットが浸された流体中に散布し、複数のファイバのうちの対象細胞が付着している対象ファイバに割り当てられた座標を指定し、座標を指定した対象ファイバをファイバユニットから分離し、その分離した対象ファイバを用いて対象細胞を増殖させる細胞選別方法を提供する。
【0021】
この細胞選別方法では、座標の指定によって特定された対象ファイバが分離され、その分離された対象ファイバを用いて対象細胞が増殖される。
【0022】
この細胞選別方法の場合、対象ファイバに割り当てられた座標を指定する前に、複数のファイバのうちの選別の対象外とされる対象外細胞が付着または近接している対象外ファイバから対象外細胞を取り除くことが好ましい。
【0023】
こうすると、対象外細胞を取り除くことによって、必要なサンプルだけがより多く優位に残るようになる。
【0024】
そして、対象外ファイバから対象外細胞を取り除くときに、対象外ファイバに光を照射して対象外細胞と光ファイバとの接着力低下を誘導させ、対象外細胞に障害を発生させ若しくは対象外細胞を死滅させることができる。
【0025】
さらに本発明は、複数のファイバが離合自在に束ねられ、かつファイバのそれぞれに座標が割り当てられているファイバユニットと、ファイバユニットから得られる光の光学特性を測定する測定装置とを有する細胞選別装置を提供する。
【0026】
この細胞選別装置は、複数のファイバが離合自在に束ねられたファイバユニットを用いているから、細胞をファイバに付着させたまま分離でき、しかも細胞がファイバごとにユニット化される。また、測定装置によりファイバを通じて各細胞の光学特性が測定され、その光学特性にしたがい各細胞が選別される。
【0027】
また、上記細胞選別装置は、複数のファイバに割り当てられた座標のうち、選別の対象とされる対象細胞が付着している対象ファイバに割り当てられた座標を特定する座標特定手段を更に有することが好ましい。
【0028】
この細胞選別装置では、座標特定手段により座標が特定された対象ファイバが分離され、その分離された対象ファイバを用いて対象細胞が増殖される。
【発明の効果】
【0029】
以上詳述したように、本発明によれば、生きた細胞へのストレスをできるだけ小さくしたまま個々の細胞の様々な変化に着目した選別を行え、その選別した細胞を増殖させることができる細胞選別方法および細胞選別装置が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る細胞選別方法に用いられる細胞選別装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】ファイバユニットを模式的に示す平面図である。
【図3】細胞が付着している状態のファイバユニットを示す正面図である。
【図4】選別手順Aによる細胞選別手順を模式的に示した図である。
【図5】選別手順Bによる細胞選別手順を模式的に示した図である。
【図6】選別手順Aを示すフローチャートである。
【図7】選別手順Bを示すフローチャートである。
【図8】ファイバユニットを用いた細胞の光学特性の一例を示す模式的に示す図である。
【図9】ファイバユニットを用いた細胞の光学特性の別の一例を模式的に示す図である。
【図10】ファイバユニットを用いた細胞の光学特性のさらに別の一例を模式的に示す図である。
【図11】細胞の光学特性の一例を模式的に示す図で、(A)は特定の波長が強くなったスペクトル分布、(B)は全体的になだらかになったスペクトル分布を示す図である。
【図12】細胞の光学特性の一例を模式的に示す図で、(A)は明るさに時間的な変化がなく一定の場合、(B)は明るさに時間的に変化がある場合を示している。
【図13】格納容器の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 細胞選別装置
2 ファイバユニット
3 収納容器
4 コントローラ
5 測定装置
6 光ファイバ
10 細胞群
11 対象細胞
12 対象外細胞
61,62,63,64,65 光ファイバ
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係る細胞選別方法に用いられる細胞選別装置1の構成を模式的に示した図である。細胞選別装置1は、ファイバユニット2と、収納容器3と、コントローラ4および測定装置5を有している。
ファイバユニット2は、図2に詳しく示すように、複数の光ファイバ6(61,62,63,64,65・・・・)を縦横に規則正しく碁盤の目状(マトリックス状)に配置して構成され、各光ファイバ6の端面が上下を向くようにして収納容器3の中に収納されている。
【0034】
このファイバユニット2は、光感受性樹脂を用いるなどして光ファイバ6(61,62,63,64,65・・・・)を一体化して構成されている。ファイバユニット2は光感受性樹脂の溶解または硬化によって、各光ファイバ61,62,63,64,65・・・・ごとに分割したりまたは一つに統合したりでき、光ファイバ6が離合自在に束ねられている。ファイバユニット2は光ファイバ61,62,63,64,65ごとに分割すると、各光ファイバ6をそれぞれを個別に収納容器3の外に取り出すことができる。また、光感受性樹脂は光ファイバ6と細胞との間のカップル剤としても用いることができる。
【0035】
さらに、ファイバユニット2は、各光ファイバ61,62,63,64,65・・・・に座標が割り当てられている。そして、細胞選別装置1では、コントローラ4を用いて各光ファイバ6の座標を特定することもでき、特定した座標の光ファイバ6を個別に分離して取り出すこともできる(詳しくは後述する)。
なお、光ファイバ6は石英系光ファイバ、プラスチック系光ファイバや多成分系ガラスファイバなどによって構成することができ、材料は特に限定されない。また、光ファイバ6は直径3~10ミクロン程度のコア径を有し、ファイバユニット2を分割し、個別に取り出すなどの際に屈曲などがおきないように適宜な長さに設定されている。
【0036】
収納容器3は、容器本体部3aと蓋部3bとからなり、ファイバユニット2を容器本体部3aの底部に載せた上で細胞を浮遊させるための液体fを収められる大きさを有している。
【0037】
容器本体部3aは樹脂またはガラスなどからなり、少なくとも中央部分の所定範囲が光を透過する透過領域3cとなっている。蓋部3bも容器本体部3aと同様に樹脂またはガラスなどからなり、少なくとも中央部分の所定範囲が光を透過する透過領域3dとなっている。
【0038】
そして、収納容器3は容器本体部3aにファイバユニット2と液体fが収められた状態で蓋部3bが被せられており、ファイバユニット2は液体fに浸された状態になっている(なお、図1では、細胞群10が散布された状態を示している)。
【0039】
コントローラ4は、少なくともCPU,ROMおよびRAMを有し、CPUがROMに記憶されている制御プログラムにしたがい作動する。そして、コントローラ4は測定装置5の測定動作を制御する一方、光ファイバ6の座標の特定を行う。
【0040】
測定装置5は光ファイバ6に付着した細胞の発する蛍光(光源7aなどで光ファイバ6の底面側から励起)や発光、光源7から出力されてファイバユニット2を透過した透過光などを検出して光ファイバ6に付着または近接している細胞の機能や形態を測定する。また、図示はしないが、測定装置5は測定結果を示す画像やグラフを所定の表示装置に表示する。
【0041】
(細胞選別方法の内容)
次に、以上の構成を有する細胞選別装置1を用いた細胞選別方法について、図3~5を参照して説明する。この細胞選別方法は以下に示す選別手順Aで実施することができるが選別手順Bで実施することもできる。
【0042】
詳しくは後述するが、選別手順Aはファイバユニット2を用いた細胞の選別手順であり、選別手順Bは不要な細胞の除去(トリミング)を行ってから細胞を選別する場合の選別手順である。なお、図3は細胞が付着している状態のファイバユニット2を示す正面図である。図4は選別手順Aによる細胞選別手順を模式的に示した図、図5は選別手順Bによる細胞選別手順を模式的に示した図である。さらに、図6は選別手順Aを示すフローチャート、図7は選別手順Bを示すフローチャートである。なお、図6,7では、ステップをSと略記している。
【0043】
(選別手順Aについて)
まず、収納容器3の蓋部3bをはずして容器本体部3aに収められた液体f中に細胞群10を散布する(S1)。この細胞群10は選別の対象とされる対象細胞(または細胞群)11のほか、そのほかの細胞(選別の対象外とされる細胞で、以下「対象外細胞」という)12が含まれている。
【0044】
なお、各細胞は無染色でもよいが、蛍光分子や発光プローブなどを標識に用いてもよく、こうすることで細胞の光学特性や機能の多様な測定を行える。また、標識に用いた蛍光分子の励起と検出はファイバユニット2を用いて行い、その蛍光強度の時間変化等から細胞の形態や機能の変化等を必要な時間をかけて判定することとなる。
【0045】
すると、図3に示すように、ファイバユニット2の各光ファイバ61,62,63,64,65・・・の端面に対象細胞11または対象外細胞12が付着する。この場合、対象細胞11または対象外細胞12は各光ファイバ61,62,63,64,65・・・のそれぞれの上側の端面に付着するが、中には各光ファイバ61,62,63,64,65・・・の端面のごく近傍に位置して(近接して)いるだけの場合もあり、複数の光ファイバにまたがって付着する場合もある。
【0046】
次に、各細胞の形態や機能を必要な時間をかけて測定するため、ファイバユニット2から得られる光を測定装置5に取込み、測定装置5により光学特性を測定する(S2)。詳しくは後述するが、例えば光源7から光を照射し、ファイバユニット2を透過した透過光を測定装置5に取込み透過像を撮影する。また、各細胞が発する発光や蛍光の明るさ、強度などをある程度の時間をかけて測定装置5によって測定する。
【0047】
続いて、図4(A),(B)に示すように、所定の光を照射し光感受性樹脂を溶解させてファイバユニット2を光ファイバ6ごとに分割(各光ファイバ61,62,63,64,65をばらばらに離し)する。その上で、S2で測定される光学特性に基づき、光ファイバ6のうちの対象細胞11が付着している光ファイバ(図4の場合は光ファイバ63,64、対象ファイバともいう)を分離し、収納容器3の外に取り出す(S3)。
【0048】
なお、図4では、ファイバユニット2の光ファイバ6のうち、光ファイバ61,62,63,64,65だけを示している。図4(A)には、対象細胞11または対象外細胞12が付着している光ファイバ61,62,63,64,65が示されている。図4では、光ファイバ63,64に対象細胞11が付着し、光ファイバ61,62,65には対象外細胞12が付着している。また、図4(B)において、取り出す光ファイバ63,64を点線で囲っている。
【0049】
ここで、S3で光ファイバ63,64を分離する際、S2の測定結果に基づき、操作者が光ファイバ63,64の位置(または座標)を指定してもよいが、操作者がS2の測定結果を示す画像を閲覧しながら行った操作入力(例えばキーボードやマウスによる操作入力)に応じて光ファイバ63,64の座標をコントローラ4が特定し、その結果に基づいて座標が指定されるようにしてもよい。
【0050】
この場合、コントローラ4は対象細胞の付着している光ファイバの座標を特定する座標特定手段としての機能を有している。こうすると、光ファイバの分離を人手を介さずに自動的に行う選別の自動化が促進されるから、細胞選別方法が簡易になり、細胞の選別を容易に行えるようになる。
【0051】
続いて、S3で分離した光ファイバ6(光ファイバ63,64)を集め、その周囲に細胞の付着していない別の光ファイバを配置して、図4(C)に示すように1つまとまったファイバ群13を形成する。このファイバ群13は対象細胞11を培養して、機能や形態などの特性が単一(クローン)化した対象細胞11の細胞群を得るために用いられる。ただし、光ファイバ6(光ファイバ63,64)の周囲に細胞の付着していない別の光ファイバを配置した上、光感受性樹脂でまとめて(光感受性樹脂を硬化させて)再びファイバユニット2を構成してもよい。
【0052】
そして、S4で形成したファイバ群13を用いて対象細胞11を培養する(S5)。以上で選別手順Aによる細胞選別方法が終了する。
【0053】
以上のように、選別手順Aによる細胞選別方法では、細胞を単に浮遊させたまま選別を行うのではなく、細胞をファイバユニット2の光ファイバ6に付着させて時間制限のない条件で選別を行っている。そのため、死滅や損傷といった生きた細胞へのストレスが極めて少なく、そのようなストレスを最小限にして細胞を選別することができる。
【0054】
また、ファイバユニット2を用いているから、ファイバユニット2から得られる光の光学特性によって選別しようとする細胞の機能や形態を測定することができ、細胞の機能や形態を必要な時間をかけて測定することができる。
【0055】
そのため、S2で測定装置4により光学特性を測定することにより、続くS3ではその測定した光学特性に基づき光ファイバ6の分離を行うことができる。したがって、選別手順Aによる細胞選別方法では、個々の細胞の機能や形態の様々な変化に着目した選別を行うことができる。
【0056】
すると、細胞を応答性(時系列方向の変化)に基づいて選別することが可能となるから、インスリン含有量が多いだけでなく、グルコース応答性も高い膵β細胞株の精製を期待できるようになる。そのため、選別手順Aによる細胞選別方法は、より高品質な細胞の獲得につながり、人工臓器の開発においても有効である。
【0057】
さらに、抗ガン剤に反応しないガン細胞を形態や機能別で時間をかけて同定・選別することもでき、新たな抗ガン剤を創るときの効果判定にも使用できるなど、より高精度な細胞同定と収集が可能になる。したがって、選別手順Aによる細胞選別方法では、創薬スクリーニングにおける追跡する化合物の選択にも柔軟に対応でき、より多様な細胞機能検索にも対応できるようになる。
【0058】
また、ファイバユニット2は各光ファイバ6が離合自在に束ねられているから、所望の光ファイバ6を他と分離して取り出すこともできる。そのため、選別の対象とされる対象細胞の付着している光ファイバ6だけを分離して取り出し、その光ファイバ6を用いて対象細胞を増殖することもできる。
【0059】
しかも、選別手順Aでは、ファイバユニット2を用いているから、各細胞が光ファイバ6によってユニット化された形になる。したがって、各細胞の識別が容易であるばかりでなく、光ファイバ6の位置によって細胞の位置を特定することができ、細胞の特定および選別が簡易かつ確実に行える。その上、各光ファイバ6にはそれぞれの座標が割り当てられているから、座標を特定すれば所望の光ファイバを特定でき、複数の光ファイバ6の位置の割り出しも容易に行える。
【0060】
(選別手順Bについて)
選別手順Aでは、光ファイバの分離の際に多数の細胞群の中から対象細胞11を選別しなければならず、その選別が困難な場合もある。また、対象細胞11だけを選別したとしても、何らかの理由で対象外細胞12が混じることもある。このような事態に的確に対処するためには、図5に示すようにして選別手順Bにしたがい不要な細胞を除去することが望ましい。選別手順Bによる細胞選別は図7に示すフローチャートにしたがって行われる。なお、図7に示すように、選別手順Bによる細胞選別は選別手順Aによる細胞選別と比較して、S2、S3の間にS6、S7が加わっている点で相違し、そのほかは同じである。
【0061】
そして、選別手順Bによる細胞選別では、図5(A),(B)に示すように、ファイバユニット2について、対象外細胞12の除去を行う(S6)。この場合、例えば、対象外細胞12に対して、光源7から紫外線UVや標識した色素の吸収される光などを照射して対象外細胞12を死滅させるか、または障害を与える。或いは対象外細胞12と光ファイバ6との接着力低下を誘導させる。こうすることによって、対象外細胞12をファイバユニット2の光ファイバ6から除去することができる。なお、紫外線UVなどの照射とは別の手法で対象外細胞12を除去してもよい。
【0062】
次に、図5(C),(D)に示すように、対象外細胞12を除去したファイバユニット2を用いて対象細胞11を増殖し、対象細胞11のサブクローン14を形成する(S7)。この場合、対象外細胞12を除去したことにより、それまで対象外細胞12が付着していた光ファイバ6を対象細胞11の増殖に用いることができる。
【0063】
そして、S7以降は、S3、S4、S5を選別手順Aと同様にして実行することによって、対象細胞11を増殖することができる。
【0064】
このように、選別手順Bによる細胞選別では、S6で不要な対象外細胞12を除去した後、S7で培養を行いサブクローン14を形成しているから必要なサンプルだけがより多く優位に残るようになり、クローンが大多数になった段階で再び培養を行うことができる(S5)。そのため、対象細胞11と対象外細胞12との識別が明確になるため対象細胞11の選別を容易に行えるようになる。したがって、対象細胞11の付着している光ファイバ6(63,64)と、対象細胞12の付着している光ファイバ6(61,62,65)の区別が容易になり、S3における光ファイバ6の分離を確実に行えるようになる。
【0065】
(光学特性の測定)
S3における光学特性の測定は、例えば次のようにして行うことが考えられる。まず、光源7からファイバユニット2に光を照射し、ファイバユニット2を透過した透過光を測定する。こうすると、例えば、図8に示すように、光ファイバ71,72,73の示す透過光について、それぞれの透過光の濃淡に着目して光ファイバ6を分離することができる(光ファイバ71,72,73の中で光ファイバ71の透過光が最も濃く、光ファイバ71,72,73の順に透過光の色が薄くなっている)。
【0066】
そのほか、光源7aを励起光として用いるなどして光ファイバの発する蛍光または発光を測定することも考えられる。すると、例えば、図9に示すように、光ファイバ74,75の発する蛍光や発光の色の違い(光ファイバ74の蛍光は青色で光ファイバ75の蛍光は赤色であるなど)に着目して光ファイバ6を分離することができる。
【0067】
また、光ファイバ76の蛍光は図11(A)に示すように特定の波長が強くなったスペクトル分布を示すのに対し、光ファイバ77の発する蛍光は図11(B)に示すように、全体的になだらかになったスペクトル分布を示すといったスペクトル分布の違いに着目して光ファイバ6を分離することも可能となる。
【0068】
さらに、光ファイバからの光量を測定することも考えられる。すると、この場合、例えば、図10に示すように、光ファイバ78,79の発する発光の時間的な変化に着目して光ファイバ6を分離することもできる。この場合、例えば、光ファイバ78の発光は図12(A)に示すように明るさに時間的な変化がなく一定であるのに対し、図12(B)に示すように光ファイバ79の発光は明るさに時間的に変化がある点などである。
【0069】
(変形例)
上述の実施の形態では、光ファイバ61,62,63,64,65・・・を光感受性樹脂で一体にしてファイバユニット2としているが、光ファイバ61,62,63,64,65・・・・は図13に示すような格納容器20に収めてファイバユニット2としてもよい。
【0070】
この格納容器20は光ファイバ61,62,63,64,65・・・を1本ずつ収められる大きさの格納セル21,22,23,24,25・・・・を有し、高さが光ファイバ6よりも低く、全体を一体として持ち運びできるようになっている。
【0071】
この格納容器20を用いると、光ファイバ61,62,63,64,65・・・を縦横に整列しやすくなるからファイバユニット2の取り扱いが容易になる。しかも、格納セル21,22,23,24,25・・・・に座標を割り当てておくと、格納セルの位置によって座標を特定できるから、各光ファイバ61,62,63,64,65の座標を指定しやすく、各光ファイバ61,62,63,64,65の選別も容易に行える。
【0072】
さらに、例えば、格納セル21,22,23,24,25・・・・に応じた碁盤の目状のマス目の入った座標指定用の操作画面を表示装置に表示するとともに、その操作画面上の対応したマス目に光ファイバ61,62,63,64,65・・・・の発する光の画像を表示する。そして、オペレータがマウスやキーボードを用いた操作入力で所望のマス目を指定することによって、指定されたマス目に対応してコントローラ4が座標の特定を行い、その結果座標が指定されるようにすることもできる。
【0073】
さらに、図7に示した選別手順Bによる細胞選別方法において、S1からS7までを実行した後、S3,4,5を実行しないようにしてもよい。この場合、S6における対象外細胞12の除去をできるだけ正確に行い、可能な限り対象外細胞12を除去すると、ファイバユニット2に付着している細胞をほぼ対象細胞11だけにすることができる。そうすると、対象細胞11の付着している光ファイバ63,64を分離せずにファイバユニット2をそのまま用いて培養を行っても対象細胞11を増殖することもできる。
【0074】
上述したファイバユニット2は、各光ファイバ6に座標が割り当てられているが、各光ファイバ6に座標が割り当てられていなくてもよい。ただし、各光ファイバ6に座標を割り当てると、光ファイバ6の分離を簡易かつ自動的に行ううえで好適である。
【0075】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る細胞選別方法および細胞選別装置によれば、生きた細胞へのストレスをできるだけ小さくしたまま個々の細胞の様々な変化に着目した選別を行え、その選別した細胞を増殖させることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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