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明細書 :平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ及びそれを用いた非破壊検査用装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4635199号 (P4635199)
公開番号 特開2006-322886 (P2006-322886A)
登録日 平成22年12月3日(2010.12.3)
発行日 平成23年2月16日(2011.2.16)
公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
発明の名称または考案の名称 平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ及びそれを用いた非破壊検査用装置
国際特許分類 G01N  27/72        (2006.01)
G01R  33/035       (2006.01)
FI G01N 27/72
G01R 33/035 ZAA
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2005-148052 (P2005-148052)
出願日 平成17年5月20日(2005.5.20)
審査請求日 平成20年4月24日(2008.4.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】廿日出 好
【氏名】田中 三郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】中村 祐一
参考文献・文献 特開2004-296677(JP,A)
特開2003-218414(JP,A)
特開2001-141799(JP,A)
特開2001-033455(JP,A)
特開平11-312830(JP,A)
特開平08-313609(JP,A)
特開平05-072308(JP,A)
調査した分野 G01N27/72-27/90
G01R33/00-33/26
特許請求の範囲 【請求項1】
磁界微分を計測する一次以上の微分型磁束検出コイルを有する平面薄膜型SQUID微分型磁束センサにおいて、励磁磁場の方向と、SQUIDリング中のジョセフソン接合部に流れるバイアス電流の方向が平行になるようにSQUIDリング部と磁束検出コイルを直接結合させることを特徴とする平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ。
【請求項2】
請求項1記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサにおいて、前記バイアス電流を供給するリード線薄膜パターンの、中央部リード線薄膜パターンの方向を励磁磁場の方向と一致させるように配線することを特徴とする平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置において、前記励磁磁場を印加する逆向きの極性を持つ2個の電磁石を具備することを特徴とする平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置において、前記検出対象物が板状の検出対象物であり、前記励磁磁場を印加する二対の逆向きの極性を持つ4個の電磁石を具備することを特徴とする平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置において、前記励磁磁場を印加する逆向きの極性を持つ2個のソレノイドコイルを具備することを特徴とする平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ及びそれを用いた非破壊検査用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、本願発明者らが、SQUID磁束センサを用いた抗原抗体反応装置を提案している(下記特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、測定対象を励磁するために強い磁場を印加し、その磁場中で行うSQUID磁気センサを用いた磁気計測技術において、従来から用いられている一般的な平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いる場合、その検出原理上、センサのコイル微分方向に対して印加磁場は垂直に印加しなければならない。しかしながら、従来のセンサでは磁場印加方向が必然的にSQUIDのジョセフソン接合に流れるバイアス電流の向きと垂直になり、接合に流れる電流にローレンツ力が作用し、磁束ノイズが増大するという不都合があった。大きな磁場を印加したほうが大きな検出信号を得ることができ都合がよいが、磁場増加に伴いこの磁束ノイズが増大するため、大きな磁場を印加することができず、SQUID磁気センサの高感度能力を十分に活かすことができていなかった。

【特許文献1】特開2001-133458号公報
【特許文献2】特開2004-061144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、従来型の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いる場合、ジョセフソン接合を流れるバイアス電流の向きに対して印加磁場方向が垂直となり、電流にローレンツ力が働く。このローレンツ力によりジョセフソン接合で磁束トラップが生じやすくなり、磁束ノイズ増大の原因となる。このため、印加可能な励磁磁場強度に限界があり、信号・雑音比を向上することが困難であった。
【0005】
図5はかかる従来型の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを示す模式図であり、図5(a)はその全体図、図5(b)はSQUIDリング部〔図5(a)のA部〕の拡大図である。なお、図5(a)は3個のSQUIDリングを並列に設置したパターンを示しているが、SQUIDを複数個設けたのは歩留まりを増加させるためであり、3個であることに重要な意味はない。実際にSQUIDを動作させる場合、そのうちの一つのみを使用する。図5(b)では、3個のSQUIDリングのうちの一つを例として示している。
【0006】
これらの図に示すように、従来型の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサでは、太い二つの矩形コイルからなる微分型磁束検出コイル101に対して同量の印加磁界107が鎖交するように、図の左から右(もしくは右から左)方向へ印加磁界(印加磁場)107を印加する必要がある。この場合、SQUIDリング部Aのジョセフソン接合部105に流れるバイアス電流IB と、印加した印加磁界107の方向が垂直となるため電流IB に対してローレンツ力が働く。このため、印加磁界107の強度を増大していくと、SQUIDリング102に存在するジョセフソン接合部105で磁束のトラップが発生しやすい構造となっている。このため、磁場強度の増大に従い、磁束ノイズも増加してしまう。なお、図5において、106はグレインバウンダリーである。
【0007】
このような、現在最も一般的な構造を有する平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを作製し、バイアス電流IB の向きに対して垂直方向に印加した印加磁界強度を増大させていった場合、磁場強度が約25μTでSQUIDリングが磁束トラップを生じ、磁束ノイズが急激に増加するといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みて、ジョセフソン接合での磁束トラップが発生しにくい特殊な構造を有する平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ及びそれを用いた非破壊検査用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕平面薄膜型SQUID微分型磁束センサにおいて、磁界微分を計測する一次以上の微分型磁束検出コイルを有する平面薄膜型SQUID微分型磁束センサにおいて、励磁磁場の方向と、SQUIDリング中のジョセフソン接合部に流れるバイアス電流の方向が平行になるようにSQUIDリング部と磁束検出コイルを直接結合させることを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサにおいて、前記バイアス電流を供給するリード線薄膜パターンの、中央部リード線薄膜パターンの方向を励磁磁場の方向と一致させるように配線することを特徴とする。
【0011】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置において、前記励磁磁場を印加する逆向きの極性を持つ2個の電磁石を具備することを特徴とする。
【0012】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置において、前記検出対象物が板状の検出対象物であり、前記励磁磁場を印加する二対の逆向きの極性を持つ4個の電磁石を具備することを特徴とする。
【0013】
〔5〕上記〔1〕又は〔2〕記載の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いた非破壊検査用装置において、前記励磁磁場を印加する逆向きの極性を持つ2個のソレノイドコイルを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを用いることにより、数pT程度の極微弱磁場計測を必要とする非破壊検査、食品中異物検出装置、バイオ活動計測などにおいて、計測する印加磁場強度を従来の約10倍以上に増大できることが見込まれる。また、本発明によれば、従来技術を大きく上回る高い信号・雑音比を得ることが可能となる。したがって、上記技術の高度化、実用化が促進されるだけでなく、これまで計測ができなかった微小な対象からの磁気信号が計測可能となり、微小磁気計測応用分野のさらなる開拓が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、平面薄膜型SQUID微分型磁束センサにおいて、印加磁界の方向と、SQUIDリング中のジョセフソン接合部に流れるバイアス電流の方向が平行になるようにSQUIDリング部と磁束検出コイルを直接結合させた特殊な構造とする。これにより、SQUIDリングでの磁束トラップ発生が抑制され、SQUIDに対して強い磁場の印加が可能となる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施例を示す平面薄膜型SQUID微分型磁束センサの模式図であり、図1(a)はその全体図、図1(b)はSQUIDリング部〔図1(a)のB部〕の拡大図である。
【0018】
これらの図に示すように、1は微分型磁束検出コイル、2はSQUIDリング、3はジョセフソン接合部へバイアス電流IB を供給するための垂直方向に延びる上部リード線薄膜パターン、4はその上部リード線薄膜パターン3に接続され、水平方向へ延びる中央部リード線薄膜パターン、5はその中央部リード線薄膜パターン4に接続され、垂直方向に延びる下部リード線薄膜パターン、6はジョセフソン接合部、7はグレインバウンダリー、8は中央部リード線薄膜パターン4と平行な方向に印加される印加磁界(印加磁場)である。
【0019】
このように、本発明のSQUIDリング2のジョセフソン接合部6に流れるバイアス電流IB と、外部から印加した印加磁界(印加磁場)8の向きが平行となる構造となるようにした。このため、印加磁界8に対するローレンツ力がゼロとなる。この構造により、励磁磁場の強度を増大しても、ジョセフソン接合部で磁束トラップが発生しにくく、磁束ノイズの増加無しに検出信号を増大できる。
【0020】
このように、特殊な構造を有する図1に示すような平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを作製し、上記と同じ設定で印加磁場8を増大させていった場合、印加磁場強度が約250μTになっても磁束ノイズの増加は見られなかった。
【0021】
このように、微分型SQUIDにおいて、印加磁場8の方向と、SQUIDリング中のジョセフソン接合部6に流れるバイアス電流の方向が平行になるようにSQUIDリング2と微分型磁束検出コイル1を直接接合させると、磁場と電流の間に働くローレンツ力がゼロとなる。このため、感度に何ら影響を与えることなく、強い磁場中でもSQUIDリング2での磁束トラップ発生を抑制することができ、結果的に磁束ノイズの増大を抑制することができる。これにより、印加する励磁磁場強度を従来の一桁以上増大させることができる。この結果、励磁信号強度が増加して、微小磁場計測において高い信号・雑音比を達成することができる。
【0022】
図2は上記した本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサとこの微分磁束センサの微分方向と垂直な方向から励磁磁場を印加することができる励磁用磁場印加機構を備えたSQUID非破壊検査用装置を示す図である。
【0023】
この図において、10は上記した本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ、11,12は電磁石、13は検出対象物、14はクライオスタット(低温冷媒保持容器)、15は励磁磁場、16はバイアス電流IB である。
【0024】
この図に示すように、SQUID微分型磁束センサ10の下にある検出対象物13を励磁するために、逆向きの極性をもつ2個の電磁石11,12を用いて、平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ10のコイル微分方向に対して垂直に磁場を印加するように設置している、この場合、本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ10を用いると、励磁磁場15の方向と、ジョセフソン接合部を流れるバイアス電流IB の方向が平行となり、強い強度の磁場を印加して、大きな検査信号を得ることができる。
【0025】
図3は図2と同じ原理で4個の電磁石を用いて、板状の検査対象物の傷検出に適用したSQUID非破壊検査用装置を示す図である。
【0026】
この図において、10は上記した本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ、21,22;23,24は電磁石、25は板状の検査対象物、26はその板状の検査対象物25の欠陥部、27はクライオスタット(低温冷媒保持容器)、28は励磁磁場、29はバイアス電流IB である。
【0027】
この図に示すように、本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ10を用いて板状の検査対象物25の傷(欠陥部26の有無)の検査を行うことができる。
【0028】
図4は図2と同じ原理で電磁石に代えて、ソレノイドコイル2個を用いた場合のSQUID非破壊検査用装置を示す図である。
【0029】
この図において、10は上記した本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ、31,32は励磁用ソレノイドコイル、33は検出対象物、34はクライオスタット(低温冷媒保持容器)、35は励磁磁場、36はバイアス電流IB である。
【0030】
このように、2個の対向する励磁用ソレノイドコイル31,32を配置して、簡便に検出対象物33の非破壊検査を行うことができる。
【0031】
上記したように、微分型SQUIDにおいて、励磁用磁場の方向と、SQUIDリング中のジョセフソン接合部に流れるバイアス電流の方向が平行になるようにSQUIDリング部と磁束検出コイルを直接結合させると、磁場と電流の間に働くローレンツ力がゼロとなる。このため、感度になんら影響を与えることなく、強い磁場中でもSQUIDリング部での磁束トラップ発生を抑制することができ、結果的に磁束ノイズの増大を抑制することができる。これにより、印加する励磁磁場強度を従来の一桁以上増大することが見込まれる。この結果、励磁信号強度が増加して、微小磁場計測において高い信号・雑音比を達成することができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ及びそれを用いた装置は、SQUID磁気センサを用いた非破壊検査や、異物検査装置や、バイオ計測(DNA検査や抗原抗体反応検査など)に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例を示す平面薄膜型SQUID微分型磁束センサの模式図である。
【図2】本発明の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサとこの微分磁束センサの微分方向と垂直な方向から励磁磁場を印加することができる励磁用磁場印加機構を備えたSQUID非破壊検査用装置を示す図である。
【図3】図2と同じ原理で4個の電磁石を用いて、板状の検査対象物の傷検出に適用したSQUID非破壊検査用装置を示す図である。
【図4】図2と同じ原理で励磁コイル(電磁石)に代えて、ソレノイドコイル2個を用いた場合のSQUID非破壊検査用装置を示す図である。
【図5】従来の平面薄膜型SQUID微分型磁束センサを示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 微分型磁束検出コイル
2 SQUIDリング
3 上部リード線薄膜パターン
4 中央部リード線薄膜パターン
5 下部リード線薄膜パターン
6 ジョセフソン接合部
7 グレインバウンダリー
8 印加磁界(印加磁場)
10 平面薄膜型SQUID微分型磁束センサ
11,12,21,22;23,24 電磁石
13,33 検出対象物
14,27,34 クライオスタット(低温冷媒保持容器)
15,28,35 励磁磁場
16,29,36 バイアス電流IB
25 板状の検査対象物
26 板状の検査対象物の欠陥部
31,32 励磁用ソレノイドコイル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4