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明細書 :差動機構による全方向移動機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5228156号 (P5228156)
公開番号 特開2008-279848 (P2008-279848A)
登録日 平成25年3月29日(2013.3.29)
発行日 平成25年7月3日(2013.7.3)
公開日 平成20年11月20日(2008.11.20)
発明の名称または考案の名称 差動機構による全方向移動機構
国際特許分類 B62D   9/00        (2006.01)
B60B  19/00        (2006.01)
FI B62D 9/00
B60B 19/00 H
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2007-124490 (P2007-124490)
出願日 平成19年5月9日(2007.5.9)
審査請求日 平成22年5月6日(2010.5.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】寺嶋 一彦
【氏名】大野 貴
審査官 【審査官】山内 康明
参考文献・文献 特開昭62-128833(JP,A)
実開昭62-145838(JP,U)
特開2004-231043(JP,A)
特開平01-103285(JP,A)
特開2003-127605(JP,A)
特開2005-067334(JP,A)
特開2006-001518(JP,A)
調査した分野 B62D 9/00
B60B 19/00
B62D 7/06
特許請求の範囲 【請求項1】
二つの動力源を備える車体に保持されるプラネタリキャリアと、このプラネタリキャリアに保持されるサンギアユニットおよびプラネタリギアユニットと、前記サンギアユニットに保持されるリングギアユニットと、前記プラネタリギアユニットによって回転駆動される車輪とを備え、
前記プラネタリギアユニットは、前記サンギアユニットのサンギアと前記リングギアユニットのリングギアに挟まれつつ同時に歯合されており、
前記動力源のうち、第一の動力源をサンギアユニットに、第二の動力源をリングギアユニットにそれぞれ入力させ、
前記サンギアユニットとリングギアユニットに入力される二つの動力源の回転速度の差によって、前記プラネタリキャリアに操舵力を出力させることを特徴とする全方向移動車輪。
【請求項2】
前記車輪接地点と、前記プラネタリキャリアの操舵中心点とを、水平方向に異ならせてオフセットしたことを特徴とする請求項1に記載の全方向移動車輪。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水平面内の全方向に移動が可能である車輪の駆動方法及び操舵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に高齢化社会を迎え、介護者の負担軽減及び被介護者の自立を支援するため、移動手段である電動車椅子に関して多くの研究が行われている。
【0003】
電動車椅子の使用される環境は、屋内も含まれるため、狭所でも容易に移動できる高い機動性が求められる。そのため、切り返し動作が不要で、車体の方向を変えずに、二次元平面を任意の方向に移動できる全方向移動機構の研究が行われている。
【0004】
また、全方向移動機構は、工場等の生産現場で使用される自動搬送機など、狭く、込み入った環境で使用される車両全般において注目されている。
【0005】
これまで行われている全方向移動機構の報告には、特殊な形状の車輪を用いるもの(特許文献1、特許文献2)と一般の車輪を用いた全方向移動機構(特許文献3、特許文献4)の二つの方式が見られた。

【特許文献1】特開2003-127605号公報
【特許文献2】特開2005-67334号公報
【特許文献3】特開2004-231043号公報
【特許文献4】特開2006-1518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、二次元平面を任意の方向へ瞬時に移動可能な全方向移動機構に関する多くの機構が考案されている。しかし、それらの機構には多くの問題点がある。
【0007】
全方向移動機構にオムニホイール、メカナムホイールに代表される特殊な形状の車輪を用いた場合は、車輪の構造が複雑なため、車輪製作が困難である。また、構造上ローラの継ぎ目で走行中に振動が発生するなど、運動性能に問題が生じる。(特許文献1、特許文献2)
【0008】
一般の車輪を用いた全方向移動機構の場合は、次のような問題があった。
【0009】
一つのモータを用いて、車輪の駆動及び操舵の切り替えを行う場合は、車体の移動を一旦停止した後でなければ、操舵を行うことができない。また、操舵を行っている間は、車輪の駆動が行えないため、移動を行うことが不可能である。この動作の切り替えには時間遅れが生じるため、運動性能に問題がある。(特許文献3)
【0010】
車輪の駆動用モータ及び操舵用モータの二つのモータを用いて、全方向移動を行う機構では、操舵動作により車輪と進行方向を一致させた後は、駆動用モータのみを使用して移動動作を行うことになり、操舵用モータは使用しないことになる。また、操舵動作中は、駆動用モータを使用しないかまたは駆動用モータの出力を落として使用することになる。このため、車両に搭載する駆動用モータ及び操舵用モータは、それぞれの動作に必要な出力を単独で持つ必要がある。このため、駆動用モータ及び操舵用モータの総出力は、駆動・操舵に必要な総容量に比較して、大きなものになる。このため、駆動操舵機構の小型化が困難である。(特許文献4)
【0011】
また、車輪の駆動用モータ及び操舵用モータの、二つのモータ出力の切り替えに時間遅れが生じるため、運動性能に問題がある。(特許文献4)
【0012】
本発明では、従来の機構では実現が不可能であった、高い運動性能を持ち、小型・軽量・大出力の全方向移動機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、次の発明を完成させるに至った。
【0014】
第1の発明は、二つの動力源の出力を、複数の歯車機構を用いて合成・再分配することにより、通常の車輪を駆動・操舵する機構である。
【0015】
第2の発明は、車輪の接地点と操舵中心点を前後にオフセットすることにより、車輪の駆動力発生地点を二次元平面上で任意の方向に移動することを可能とした全方向移動機構である。
【発明の効果】
【0018】
上記本発明の機構によれば、通常車輪を使用するため,移動中の振動が少なく、高い運動性能を得ることが可能である。
【0019】
上記第1の発明の機構によれば、二つの動力源の出力を、複数の歯車機構を用いて、一度合成し、車輪の駆動動作及び操舵動作に再分配することから、駆動及び操舵の双方の動作に対して、二つの動力源が使用されるため動力源運用率が向上する。これにより、二つの動力源の出力を小型することが可能であり、運動性能を維持しつつ、機構の小型・軽量化が可能となり、低コスト化も期待できる。
【0020】
また、上記第1の発明の機構によれば、二つの動力源の出力の差によって、車輪の駆動及び操舵の制御を行うため、
(1)移動動作から操舵動作への切り替え
(2)または操舵動作から移動動作への切り替え
(3)または移動動作に操舵動作の合成
(4)または操舵動作に移動動作の合成
を行う際に、どちらか一方の動力源の停止及び/または再起動が不要であるため、時間遅れが生じることがなく、高い運動性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について説明するが、本発明の技術範囲は、これらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
【0022】
遊星歯車機構を用いた差動駆動操舵機構の基本構造を図1に示す。
【0023】
遊星歯車機構を用いた差動駆動操舵機構は、中心のサンギアユニットA、A
に保持されているリングギアユニットB、サンギアとリングギアに挟まれたプラネタリギアユニットCおよび、A、Cを保持するプラネタリキャリアD、D を保持する車体Eで構成され,2つのモータはEに取り付けられている。2つのモータからの入力はそれぞれA、Bに入力され、駆動出力はCから、操舵出力はDから出力される。Cはベベルギアにより回転方向を90[deg]変えられ、車輪を回転駆動させる。
【0024】
図2に、上記第2の発明によるオフセット型駆動輪の動作原理を示す。本機構によれば、車輪接地点と操舵中心点に前後オフセットs が付いているため、車輪進行方向と接線方向にs と操舵回転速度ωs に応じた速度V s を発生させることが可能である。また、車輪進行方向に車輪半径r
と車輪の回転速度ωw に応じた速度V w を発生させることが可能である。つまり、二次元平面上で2つの独立した速度ベクトルを発生させることができるため,旋回成分および駆動成分を制御することにより車輪の接触点を二次元動作させることが可能となる。
【0025】
図3に初期状態で上を向いているオフセット型駆動輪が右に向かって移動する動作を示す。移動初期は操舵速度が速く駆動速度は遅いが,機構の向きが変わるに従い,操舵速度を下げ,駆動速度を上げる.これにより,操舵中心点を真横に移動させることが可能である.このユニットを組み合わせることにより,上記したように車両の全方向移動が可能となる.
【実施例】
【0026】
本発明を、実施例にもとづき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0027】
差動駆動操舵機構に遊星歯車機構を用いた第1実施例について、その動作原理を図4に示す。
【0028】
2つのモータの入力は、AおよびBに入力される。そして、Cから駆動成分が、Dから操舵成分が出力される。A、B、C、Dの回転速度をωA、ωB、ωC、ωD とすると、ωC のみが出力されると駆動成分のみが出力され、ωC とωD の関係がωC = ωD
となるとき操舵成分のみが出力される。これは,操舵成分のみを出力するためには、CとDが一体となって回転しなければならないためである。このように、入力A、Bの回転速度を制御することにより、出力C、Dの回転速度が制御することができる。
【0029】
図5にもとづき遊星歯車機構の運動方程式を考える。
【0030】
A,B,C及びDそれぞれの回転速度をω,ω,ω,ωD とし、A,B及びCのそれぞれの歯数をZA,ZB,ZC とする。さらに、Cと車輪の減速比を1とし、車輪回転速度をωD、操舵速度をωとすると、機構の状態ベクトルωP 及び入力ベクトルuP はそれぞれωP = [ωC-ωD
、ωD]T=[ωD 、ω]T、uP
= [ωA, ωB]T と表すことができる。
【0031】
すると、以下のように、運動学モデルを得ることができる。
【数1】
JP0005228156B2_000002t.gif

【0032】
ただし、
【数2】
JP0005228156B2_000003t.gif

である。
【0033】
また、逆運動学モデルは、
【数3】
JP0005228156B2_000004t.gif
となる。
【0034】
ただし、
【数4】
JP0005228156B2_000005t.gif
である。
【0035】
これらの式から、駆動・操舵の双方において二つのモータを使用していることがわかる。
【0036】
差動駆動操舵機構に差動傘歯車機構を用いた第2実施例について、その動作原理を図6に示す。
【0037】
2つのモータからの入力はそれぞれA、Bに入力され、駆動出力はCから、操舵出力はCから出力される。入力A、Bにそれぞれ逆方向に同回転速度を入力すると、Dは回転せず、Cのみ回転する。つまり、駆動成分のみ出力される。一方、入力A、Bにそれぞれ同方向に同回転速度を入力すると、Cは回転せず、Dのみ回転する。つまり、操舵のみ出力される。入力A、Bの回転速度を制御することにより、出力C、Dの回転速度を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、従来の全方向移動機構に比較して、格段に運動性能が向上した全方向移動機構を得ることができた。また、小型化・軽量化が容易であるため、電動車椅子、工場等の生産現場で使用する自動搬送機などに利用することが可能である。
【0039】
また、運動性能が格段に向上するため上記のような低速移動機器のみではなく、高速移動機器にも適応することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】遊星歯車機構を用いた差動駆動操舵機構の基本構造
【図2】オフセット型駆動輪の動作原理
【図3】オフセット型駆動輪の移動動作
【図4】差動駆動操舵機構に遊星歯車機構を用いた動作原理概念図
【図5】差動駆動操舵機構に遊星歯車機構を用いた運動学モデル概念図
【図6】差動駆動操舵機構に差動傘歯車機構を用いた動作原理概念図
【符号の説明】
【0041】
A サンギアユニット
B リングギアユニット
C プラネタリギアユニット
D プラネタリキャリア
E 車体
s 車輪接地点と操舵中心点に前後オフセット
ωs 操舵回転速度
V s 速度
r 車輪半径
ωw 車輪の回転速度
V w 速度
ωA Aの回転速度
ωB Bの回転速度
ωC Cの回転速度
ωD Dの回転速度
ZA Aの歯数
ZB Bの歯数
ZC Cの歯数
ωD 車輪回転速度
ω 操舵速度
ωP 機構の状態ベクトル
uP 入力ベクトル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5