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明細書 :光分解を利用した高分子ナノ粒子の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5243738号 (P5243738)
公開番号 特開2009-007403 (P2009-007403A)
登録日 平成25年4月12日(2013.4.12)
発行日 平成25年7月24日(2013.7.24)
公開日 平成21年1月15日(2009.1.15)
発明の名称または考案の名称 光分解を利用した高分子ナノ粒子の製造法
国際特許分類 C08J   3/28        (2006.01)
G03G   9/087       (2006.01)
C09J 153/00        (2006.01)
C08J   3/12        (2006.01)
C09J 125/02        (2006.01)
FI C08J 3/28 CER
G03G 9/08 381
C09J 153/00
C08J 3/12 Z
C09J 125/02
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2007-167648 (P2007-167648)
出願日 平成19年6月26日(2007.6.26)
審査請求日 平成22年6月17日(2010.6.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
発明者または考案者 【氏名】吉田 絵里
【氏名】桑山 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107733、【弁理士】、【氏名又は名称】流 良広
【識別番号】100115347、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 奈緒子
審査官 【審査官】長谷川 大輔
参考文献・文献 特開2002-145973(JP,A)
調査した分野 C08J 3/00-3/28
99/00
C09J 1/00-5/10
9/00-201/10
G03G 9/00-9/09
9/097-9/113
9/16
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で示されるジブロック共重合体に、光酸発生剤存在下で光照射することによりナノ粒子を製造する方法。
一般式(1)
【化1】
JP0005243738B2_000006t.gif
一般式(1)中、
:開始剤断片
:停止剤断片またはラジカル重合制御剤
:-OC(CHまたは-OC(=O)OC(CH
:水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、及びエチル基のいずれかを表す
m:重合度、50~120の整数
n:重合度、40~2000の整数
m/n:0.05~1.2
【請求項2】
請求項1における光酸発生剤が下記一般式(2)もしくは(3)で示される化合物である請求項1に記載のナノ粒子を製造する方法。
一般式(2)
【化2】
JP0005243738B2_000007t.gif
一般式()中、
:水素原子または-(CHH(nは10~14の整数)
【化3】
JP0005243738B2_000008t.gif
一般式(3)中、R:水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、及びtert-ブチル基のいずれかを表す
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)で示されるブロック共重合体が請求項2に記載の一般式(2)もしくは(3)で示される光酸発生剤存在下での光分解により、下記一般式(4)で示されるジブロック共重合体に変換されることにより、請求項1に記載のナノ粒子を製造する方法。
【化4】
JP0005243738B2_000009t.gif
一般式(4)中、
:開始剤断片
:停止剤断片またはラジカル重合制御剤
:水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、及びエチル基のいずれかを表す
m:重合度、50~120の整数
n:重合度、40~2000の整数
m/n:0.05~1.2
【請求項4】
粒径が10~200ナノメートルの範囲にある請求項1に記載のナノ粒子を製造する方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のナノ粒子を製造する方法を用いることを特徴とする電子写真用組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のナノ粒子を製造する方法を用いることを特徴とする接着用組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のナノ粒子を製造する方法を用いることを特徴とする光記憶材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光分解によって形成される高分子ナノ粒子の製造法に関する。該ナノ粒子は電子写真の現像材、印刷用インク、建築用塗料、抽出・分離剤、薬物運搬剤等の構成材料としての用途が見込まれる。また、該製造技術は光記憶材料や光センサーなどへの応用展開が見込まれる。
【背景技術】
【0002】
以前から、光刺激をナノ粒子形成の原動力とする技術には、光異性化反応が用いられてきた。すなわち、分子中に含まれる二重結合が光照射によってトランス体からシス体、あるいはシス体からトランス体に異性化し、その異性化により分子の相極子モーメントや溶解性が変化しナノ粒子が形成される方法である。
【0003】
しかし、従来の光刺激によるナノ粒子の製造法では、光異性化に特殊な構造の化合物を用いるため高価である上、これらの化合物が低分子量体であるために材料としての使用には強度や脆性の点で耐えられないなどの難点が生じる。これらの点を改善するための高分子化技術には熟練した合成技術が必要であるばかりでなく、材料としての使用に耐えうる程度の高分子量体の形成が困難であるといった問題点を含んでいる。

【特許文献1】特開平8-1669号公報
【特許文献2】特開2005-181489号公報
【非特許文献1】新高分子実験化学2;高分子の合成—反応(1);付加系高分子の合成、高分子学会編—共立出版1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明で解決しようとする課題の第1は、従来の製造法で問題となっていた特殊な化合物を用いずに、安価な汎用高分子を使用してこの技術を達成すること、そのための方法として課題の第2は、光異性化反応を用いない技術を開発すること、さらに課題の第3は、材料として耐えうる強度と脆性をもつナノ粒子の製造技術を提供することである。
【0005】
上記課題の第1は、コストの低減を目的とし、課題の第2は、光刺激を利用した新規な技術を提供することを目的としており、さらに課題の第3は、材料として利用するために不可欠な性能をナノ粒子に付与するための製造方法を提供することを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、汎用高分子同士のジブロック共重合体に、光酸発生剤存在下で光照射することで、該共重合体の一部が光によって加水分解されて、数十ナノメートルのナノ粒子が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるジブロック共重合体に、下記一般式(2)または(3)で示される光酸発生剤の存在下で光照射することにより、高分子のナノ集合体が形成されることにより達成される。
【化1】
JP0005243738B2_000002t.gif
一般式(1)中、
:開始剤断片
:停止剤断片またはラジカル重合制御剤
:-OC(CHまたは-OC(=O)OC(CH
:水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基のいずれかを表す
m:重合度、50~120の整数
n:重合度、40~2000の整数
m/n:0.05~1.2

【化2】
JP0005243738B2_000003t.gif
一般式(1)中、
:水素原子または-(CHH(nは10~14の整数)



【化3】
JP0005243738B2_000004t.gif
一般式(3)中、R:水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、tert-ブチル基のいずれかを表す

【0008】
また本発明のさらに好ましい態様は、前記一般式(1)で示される共重合体中のセグメントの重合度であるmとnの割合が、m/n=0.05~1.2であるジブロック共重合体に、光酸発生剤存在下で光照射することにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な汎用高分子からなるジブロック共重合体を用いて、比較的粒径分布の揃った数十ナノメートルの高分子の集合体からなるナノ粒子を製造することができる。また汎用高分子を用いるため、強度や脆性と分子量との関係が確立しており、これらの物性を分子量で調節しやすい。その結果、目的の使用の性質にかなったナノ材料を開発しやすい。さらに、光分解による副生成物は、極めて揮発性が高く反応系中に残存し難いため、材料としての性質に影響を及ぼさない。
【0010】
さらに本発明は、可逆的な光異性化反応ではなく、不可逆的な光分解反応を用いているため、光記憶材料に応用した場合には記憶が消失するといった心配がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
反応容器に溶媒を入れ、該溶媒に上記一般式(1)で示されるジブロック共重合体を一定量添加すると該共重合体の溶液が得られる。ここでの溶媒は、ジクロロメタンかクロロホルムのいずれかの溶媒、もしくはいずれかを構成成分とする混合溶媒が使われる。
【0012】
上記共重合体の溶液に適当な光酸発生剤を添加し、高圧水銀ランプにより光照射すると、下記一般式(4)で表せるブロック共重合体が生成するが、該ブロック共重合体は自己組織化して図1に示すようなミセル、すなわち高分子ナノ粒子を形成する。ここで上記光酸発生剤としては、上記一般式(2)、(3)のうちのいずれか、もしくはいずれかを含む組成物が使われる。
【化4】
JP0005243738B2_000005t.gif
一般式(4)中、
:開始剤断片
:停止剤断片またはラジカル重合制御剤
:水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基のいずれかを表す
m:重合度、50~120の整数
n:重合度、40~2000の整数
m/n:0.05~1.2

【0013】
該高分子ナノ粒子の粒径は、このナノ粒子を構成するブロック共重合体の組成比、分子量を変えることにより10~200ナノメートルの間で調節することが可能である。
【実施例】
【0014】
ポリ(tert-ブトキシスチレン)(数平均分子量15,000)とポリスチレン(数平均分子量97,000)からなるブロック共重合体(分子量分布1.17)の363mgを110mLのジクロロメタンに溶解した。その溶液を室温で1時間撹拌後、シリンジを用いてミクロポーラスフィルターを通した。一方で、アルミホイルで覆った100mLのナスフラスコに、ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネート溶液(50wt%)、146mgを計り取った。この酸発生剤の入ったフラスコに、上記で調整したブロック共重合体のジクロロメタン溶液、97.3mLを注ぎ込み、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら500Wの超高圧水銀ランプを5.5時間照射した。その結果、図2にしたがって反応し、流体力学的直径63nmの球状ナノ粒子が生成した。反応後の溶液を20°C、角度90°の条件で光散乱測定を行った結果得られた散乱強度分布図を図3に示した。また、反応溶液から光酸発生剤を除くために、反応後の溶液をエバポレーターで濃縮後、ヘキサンに沈澱させ生成した高分子を単離し、真空乾燥した。その高分子について核磁気共鳴測定を行った結果、tert-ブトキシ基が分解しビニルフェノール基に変換されたことを確認した。その核磁気共鳴スペクトルを図4に示した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に基づくナノ粒子形成の説明
【図2】本発明に基づく反応の説明
【図3】実施例1に関わるナノ粒子の光散乱強度分布図
【図4】実施例1に関わるナノ粒子の核磁気共鳴スペクトル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3