TOP > 国内特許検索 > 熱電変換材料 > 明細書

明細書 :熱電変換材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5070546号 (P5070546)
公開番号 特開2008-218896 (P2008-218896A)
登録日 平成24年8月31日(2012.8.31)
発行日 平成24年11月14日(2012.11.14)
公開日 平成20年9月18日(2008.9.18)
発明の名称または考案の名称 熱電変換材料
国際特許分類 H01L  35/20        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
FI H01L 35/20
H01L 35/34
C22C 38/00 302Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2007-057398 (P2007-057398)
出願日 平成19年3月7日(2007.3.7)
審査請求日 平成22年2月2日(2010.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】西野 洋一
【氏名】井手 直樹
【氏名】中山 博行
個別代理人の代理人 【識別番号】110001117、【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
審査官 【審査官】長谷川 直也
参考文献・文献 特開2004-253618(JP,A)
国際公開第2003/019681(WO,A1)
特開2008-021982(JP,A)
調査した分野 H01L 27/16、35/00-37/04、
C22C 38/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Feに替えて置換する他の元素がCoであり、
Vに替えて置換する他の元素がMである場合には、元素MがTi、Zr及びHfの少なくとも1種であり、
元素Co及び元素Mの置換量が一般式(Fe1-αCoα2(V1-ββ)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。
【請求項2】
元素MはTiであることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料。
【請求項3】
ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Feに替えて置換する他の元素がCoであり、
Vに替えて置換する他の元素がMである場合には、元素MがTi、Zr及びHfの少なくとも1種であり、
元素Co及び元素Mの置換量が一般式(Fe1-αCoα2(V1-ββ)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。
【請求項4】
元素MはTiであることを特徴とする請求項3記載の熱電変換材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は熱電変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する材料として熱電変換材料がある。この熱電変換材料はn型又はp型の二種類に大別される。n型の熱電変換材料とp型の熱電変換材料とを電気的に直列、熱的に並列となるよう交互に配置、結線すれば、熱電変換素子が得られる。この熱電変換素子の両面間に温度差を与えれば、発電を行うことが可能となる。また、熱電変換素子の両端子間に電圧を印加すれば、両面間に温度差が発生する。
【0003】
一般的な熱電変換材料としてBi-Te系金属間化合物があり、これは高いゼーベック係数、つまり比較的良好な発電効率を有することから広く用いられている(非特許文献1)。しかし、Bi-Te系金属間化合物からなる熱電変換材料は、構成元素であるBiやTeが高価な金属であるため、高コストとなる。また、これら金属は毒性を有するため、この熱電変換材料は環境に対する負荷も大きなものとなる。
【0004】
これらの欠点に対し、発明者らは特許文献1記載の熱電変換材料を提案した。この熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造に対し、組成比を調整したり、構成元素の一部を他の元素で置換したりし、化学式当たりの総価電子数を制御したものである。基本構造としては、Fe2VAlを挙げた。
【0005】
また、発明者らは特許文献2記載の熱電変換材料も提案した。この熱電変換材料は、Fe2VAlの基本構造に対し、構成元素の一部を他の元素で置換するとともに、置換する元素の原子量等を制御したものである。
【0006】
これらの提案に係るFe2VAl系熱電変換材料は、比較的安価な元素からなり、また各元素も毒性を有さない。また、この熱電変換材料は、総価電子数が24以上でn型、24以下でp型となる。例えば、総価電子数が24以上となるn型のFe2V(Al1-αα)(M=Si、Ge又はSn、0<α<1)は、ゼーベック係数が約-120μV/Kの高い値を示す(特許文献1、2、非特許文献2)。一方、総価電子数が24以下となるp型のFe2(V1-αα)Al(M=Ti、0<α<1)は、ゼーベック係数が約+80μV/Kである(特許文献1、非特許文献3)。
【0007】

【特許文献1】WO03/019681公報
【特許文献2】特開2004-253618号公報
【非特許文献1】「新教科書シリーズ 熱電変換-基礎と応用-」96~97頁、裳華房(2005)坂田亮編
【非特許文献2】「擬ギャップ系ホイスラー化合物の熱電特性」まてりあ第44巻第8号(2005)648~653頁、西野洋一著
【非特許文献3】「擬ギャップ系Fe2VAl合金の熱電特性に及ぼす元素置換効果」日本金属学会誌第66巻第7号(2002)767~771頁、松浦仁・西野洋一・水谷宇一郎・浅野滋著
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、より良好な発電効率の熱電変換材料が望まれている。このため、発明者らは、PCT/JP2006/323903において、Fe2VAlの基本構造に対し、Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部を他の元素で置換した熱電変換材料を提案した。
【0009】
この熱電変換材料においては、Feに替えて置換する他の元素がM1である場合には、元素M1が周期表における第4~6周期の7~10族からなる群から選ばれ、Vに替えて置換する他の元素がM2である場合には、元素M2が周期表における第4~6周期の4~6族からなる群から選ばれる。また、この熱電変換材料は、元素M1及び元素M2の置換量は、一般式(Fe1-α2(V1-β)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整される。さらに、この熱電変換材料は、化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型に制御され、24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御される。例えば、M1がIr、M2がTiの熱電変換材料は、ゼーベック係数が約+90μV/Kであり、M2をTiとして置換しただけの熱電変換材料よりも、出力因子及び性能指数が向上する。
【0010】
しかしながら、この提案の熱電変換材料は、貴金属であるIrを用いることによる製造コストの上昇が避けられない。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、より良好な発電効率を発揮可能であるとともに、安価で無毒な元素の組み合わせから成るFe2VAl系熱電変換材料を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
今回、発明者らは、Fe2VAlの基本構造に対し、Feの一部を元素Co(コバルト)で置換するとともに、Vの一部を他の元素Mで置換し、化学式当たりの総価電子数を制御することによって、熱電変換材料が正孔を多数キャリアとするp型や電子を多数キャリアとするn型に規則的になることを実証した。こうして、より実用性を向上させて以下の第1、2発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、第1発明の熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Feに替えて置換する他の元素がCoであり、
Vに替えて置換する他の元素がMである場合には、元素MがTi、Zr及びHfの少なくとも1種であり、
元素Co及び元素Mの置換量が一般式(Fe1-αCoα2(V1-ββ)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型に制御されていることを特徴とする。
【0014】
第2発明の熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Feに替えて置換する他の元素がCoであり、
Vに替えて置換する他の元素がMである場合には、元素MがTi、Zr及びHfの少なくとも1種であり、
元素Co及び元素Mの置換量が一般式(Fe1-αCoα2(V1-ββ)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御されていることを特徴とする。
【0017】
発明者らの認識によれば、元素MはTi(チタン)、Zr(ジルコニウム)及びHf(ハフニウム)の少なくとも1種であることが好ましい。この理由は、これら三種の元素はVとの置換が容易であり、置換可能な量も多いからであり、かつ置換後の合金もホイスラー構造を有するからである。これらを表で示すと表2のようになる。
【0018】
【表2】
JP0005070546B2_000002t.gif

【0019】
本発明の熱電変換材料は、金属的性質として、電気抵抗率が小さいという特徴がある。また、この熱電変換材料では、Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部を他の元素で置換すれば、格子振動の散乱が大きくなるため、熱伝導率が低下する。このため、この熱電変換材料を用いて、熱電変換効率の高い熱電変換素子を製造することができる。
【0020】
本発明の熱電変換材料は、従来の熱電変換材料と異なり、金属的性質として、750°C以上かつ融点以下の温度で熱間加工等を行うことができる。このため、熱電変換素子を製造する場合の歩留まりを高くすることができるとともに、製造工程数も少なくなり、ひいては熱電変換素子の製造コストの低廉化も実現できる。
【0021】
発明者らが先の出願(特許文献1)で確認したように、ホイスラー合金型の結晶構造をもつFe2VAlの基本構造は化学式当たりの総価電子数が24である。すなわち原子当たりの平均電子濃度が24/4=6である場合、この熱電変換材料は、フェルミ準位に鋭い擬ギャップをもつ。第1、2発明の熱電変換材料において、この基本構造に対し、基本構造のFeの一部を元素Coで置換するとともに、基本構造のVの一部を元素Mで置換すすることによって化学式当たりの総価電子数を制御すれば、フェルミ準位を擬ギャップの中心からシフトさせることができ、ゼーべック係数の符号や大きさを変化させ得る。
【0022】
発明者らの試験結果によれば、第1、2発明の熱電変換材料は、より良好な発電効率を発揮する。また、これらの熱電変換材料は、貴金属であるIrを用いておらず、安価で無毒な元素の組み合わせからなる。
【0023】
なお、第1、2発明の熱電変換材料は、この基本構造に対し、化学組成比を調整することによって化学式当たりの総価電子数を制御することも可能である。これによってフェルミ準位を擬ギャップの中心からシフトさせることができ、ゼーべック係数の符号や大きさを変化させ得る。この場合、化学組成比を調整量x、y及びzで調整しつつ、基本構造のFeの一部を元素Coで置換するとともに、基本構造のVの一部を元素Mで置換すれば、一般式は(Fe1-αCoα2+x(V1-ββ1+y)Al1+zとなる。
【0024】
本発明の熱電変換材料は以下の製造方法により製造され得る。この製造方法は、上記熱電変換材料を製造可能な元素と構成比率とを有する原料混合物を用意する第1工程と、該原料混合物を真空中又は不活性ガス中において溶融又は気化及び固化し、熱電変換材料を得る第2工程とを有することを特徴とする。
【0025】
この製造方法で上記熱電変換材料を製造すれば、熱電変換効率が高く、環境汚染のおそれも少ない熱電変換材料を低廉に製造することが可能である。
【0026】
第2工程としては、例えば、原料混合物を真空中や不活性ガス中において溶解させた後で冷却する方法を採用することができる。n型の熱電変換材料又はp型の熱電変換材料を可及的に小さな粒径の粉体の集合体とするためには、まず、原料混合物をアーク溶解等により溶解した後に固化することによりインゴットを作製し、これを不活性ガス又は窒素ガス雰囲気中で機械的に粉砕してほぼ均粒の粉体を得る方法、溶湯粉化(アトマイズ)やガスアトマイズ法によってほぼ均粒の粉体を得る方法、メカニカルアロイング法により不活性ガス又は窒素ガス雰囲気中で原料混合物の圧着と破断を繰り返すことによってほぼ均粒の粉体を得る方法等を採用することができる。そして、こうして得られた粉体を真空中のホットプレス法、HIP(熱間等方圧成形)法、放電プラズマ焼結法、パルス通電法等により焼結することが可能である。HIP法により粉体を焼結する場合、例えば800°Cで高圧(150MPa)のアルゴンガスにより圧縮成形と焼結とを同時に進行させ、真密度で固化を行うことができる。また、擬HIP法によれば成形プレスを利用して安価に真密度固化を行うことができる。また、n型の熱電変換材料又はp型の熱電変換材料を可及的に小さな粒径の結晶粒の集合体とするためには、熱間圧延等の歪加工を行ったり、溶融した原料を急冷したりすること等により結晶粒を小さくする方法を採用することができる。
【0027】
本発明の熱電変換材料により熱電変換素子を製造することが可能である。こうして得られる熱電変換素子は、ゼーべック係数の符号が正の上記熱電変換材料がp型としての挙動を示し、ゼーべック係数の符号が負の上記熱電変換材料がn型としての挙動を示す。これらの熱電変換素子は、熱電変換効率が高く、製造コストの低廉化が可能であり、環境汚染のおそれが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
[実施例1]
実施例1の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Feの一部をCoで置換し、Vの一部をTiで置換したものである。Coの置換量αは0.005≦α≦0.050の範囲内で選択されており、Tiの置換量βは0.03≦β≦0.22の範囲内で選択されている。
【0029】
Fe2VAlの基本構造の化学式当たりの総価電子数は、以下の計算により24である。つまり、Feの価電子数は4s軌道の2と3d軌道の6との合計8に係数2を乗じた16である。また、Vの価電子数は4s軌道の2と3d軌道の3との合計5である。また、Alの価電子数は3s軌道の2と3p軌道の1との合計3である。これらFe、V及びAlの価電子数の合計24が基本構造の化学式当たりの総価電子数である。
【0030】
この基本構造に対し、Feの一部をCoで置換し、Vの一部をTiで置換した熱電変換材料は、一般式(Fe1-αCoα2(V1-ββ)Alで表される化合物である。ここで、2α<βとすることで、総価電子数は24未満となり、p型熱電変換材料となる。また、2α>βとすることで、総価電子数は24を超え、n型熱電変換材料となる。
【0031】
この熱電変換材料は以下のように製造される。まず、上記条件を満たすように、Fe、V、Al、Co及びTiの5種類の元素を秤量した。これら元素をアルゴンアークを用いて溶解し、ボタン状のインゴットを作製した。均質なインゴットを得るため、得られたインゴットを再溶解した。この再溶解を2回以上行い、均質なインゴットを得た。溶解前後での重量変化は0.1%以内であるため、溶解による組成の変化は無視できる程度であると仮定した。
【0032】
作製したインゴットに対し、5×10-3Pa以下の高真空中で1273K×48hrの均質化処理を行い、短冊状、粉末及びブロック状の各測定形状に成型した。この後、真空中で1273K×1hrの歪取処理と、673K×4hrの規則化処理とを行った。こうして、実施例1の熱電変換材料を得た。
【0033】
[比較例1]
比較例1は基本構造のFe2VAlである。他の条件は実施例1と同様である。
【0034】
[比較例2]
比較例2の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Feの一部をIrで置換し、Vの一部をTiで置換したものである。他の条件は実施例1と同様とし、比較例2の熱電変換材料を得た。
【0035】
[評価方法]
実施例1及び比較例2の熱電変換材料並びに比較例1の基本構造について、以下の評価を行った。
【0036】
(X線回折)
各材料の構造を決定するため、上記方法で作製した粉末を用い、X線回折を行った。評価にはCuKα線を用いた。これらはFeを含む合金系であるため、バックグラウンドを除去する目的でモノクロメータを用いた。この結果、作製した材料はすべてホイスラー構造を有していた。
【0037】
(ゼーベック係数の測定)
0.5×0.5×5.0mm3の試験片を用い、MMR-Technologies社製「SB-100」にて、ゼーベック係数S(μV/K)を90K~400Kの温度範囲で測定した。
【0038】
(電気抵抗率の測定)
1×1.2×15mm3の短冊状試料を用い、直流四端子法にて電気抵抗率ρ(μΩm)を測定した。測定温度範囲は液体He温度(4.2K)から1273Kまでである。4.2Kから室温までは自然昇温して測定を行った。室温から1273Kまでは、電気炉を用い、5×10-3Pa以下の真空雰囲気中で0.05K/secの昇温速度で測定を行った。
【0039】
(熱伝導率の測定)
室温での熱伝導率k(W/mK)を比較定常法により測定した。試験片のサイズは3×3×3.5mm3であり、標準試料には試験片と同サイズのアルミナを用いた。
【0040】
(出力因子と性能指数)
熱電変換材料を評価する指数として、出力因子:P=S2/ρ及び性能指数:Z=S2/(ρκ)が挙げられる。ここで、Sはゼーベック係数、ρは電気抵抗率、κは熱伝導率である。これらの値は上記の各測定値とし、出力因子P(10-3W/mK2)及び性能指数Z(10-3/K)を求めた。
【0041】
実施例1の熱電変換材料((Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Al(β=0.06、0.10、0.15))について、温度とゼーベック係数との関係を図1に示し、温度と電気抵抗率との関係を図2に示す。
【0042】
実施例1の熱電変換材料((Fe0.965Co0.0352(V1-βTiβ)Al(β=0.10、0.14、0.19))について、温度とゼーベック係数との関係を図3に示し、温度と電気抵抗率との関係を図4に示す。
【0043】
実施例1の熱電変換材料((Fe0.95Co0.052(V1-βTiβ)Al(β=0.13、0.17、0.22))について、温度とゼーベック係数との関係を図5に示し、温度と電気抵抗率との関係を図6に示す。
【0044】
実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V0.97Ti0.03)Al(α=0.030、0.050、0.075))について、温度とゼーベック係数との関係を図7に示し、温度と電気抵抗率との関係を図8に示す。
【0045】
一方、比較例2の熱電変換材料((Fe0.985Ir0.0152(V1-βTiβ)Al(β=0.06、0.08、0.15))について、温度とゼーベック係数との関係を図9に示し、温度と電気抵抗率との関係を図10に示す。
【0046】
以上の結果に基づき、実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)並びに比較例1の基本構造について、300Kでのゼーベック係数の総価電子数依存性を求めた。この結果を図11に示す。
【0047】
また、実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)について、300Kでの熱伝導率の総価電子数依存性を求めた。この結果を図12に示す。
【0048】
実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、0.050、β=0.03))について、300Kでの熱伝導率の総価電子数依存性を求めた。この結果を図13に示す。
【0049】
実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)並びに比較例1の基本構造について、300Kでの電気抵抗率の総価電子数依存性を求めた。この結果を図14に示す。
【0050】
実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe1-αα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、0.050、β=0.03))並びに比較例1の基本構造について、300Kでの電気抵抗率の総価電子数依存性を求めた。この結果を図15に示す。
【0051】
実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)について、300Kでの出力因子及び性能指数の総価電子数依存性を求めた。この結果を図16に示す。
【0052】
実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、β=0.03)及び比較例1の基本構造について、300Kでの出力因子及び性能指数の総価電子数依存性を求めた。出力因子の結果を図17に示し、性能指数の結果を図18に示す。
【0053】
図11等において、実施例1及び比較例2の各熱電変換材料は、βの値が増加するにつれてゼーベック係数のピーク温度が高温側に移動する傾向が見られた。また、実施例1及び比較例2の各熱電変換材料は、総価電子数が23.97付近において、ゼーベック係数が最大を示していることがわかる。総価電子数が23.97以下でのゼーベック係数は、実施例1の熱電変換材料の方が比較例2の熱電変換材料よりも大きな値を示している。
【0054】
すなわち、(Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料のゼーベック係数の最大値は、(Fe0.985Ir0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料と比べ、僅かに小さい。しかし、(Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料は、総価電子数の減少に伴うゼーベック係数の値の低下が緩やかであり、総価電子数23.90から23.97の範囲では(Fe0.985Ir0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料よりも高いゼーベック係数を示した。
【0055】
また、(Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料のゼーベック係数の最大値はα=0.015、β=0.10となる組成では、400Kにおいて、約85μV/Kの値を示した。この値は(Fe1-αIrα2(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料の最大のゼーベック係数90μV/Kに匹敵する。
【0056】
そして、(Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料では約22W/mK程度、(Fe0.985Ir0.0152(V1-βTiβ)Alの熱電変換材料では約14W/mK程度の値を示した。図12、図13等より、実施例1及び比較例2の各熱電変換材料は、構成元素により異なるものの、同一の系統では、熱伝導率が総価電子数に大きく影響されないことがわかる。
【0057】
図14等によれば、実施例1及び比較例2の熱電変換材料並びに比較例1の基本構造は、総価電子数が減少するにつれ、つまりβが増加するにつれて、電気抵抗率が低下することがわかる。実施例1の熱電変換材料では、いずれの組成においても、β及び(β-α)の値が大きくなるにつれ、4.2K~700Kの温度範囲における電気抵抗率が低下している。特に、図2に示すα=0.015、β=0.10である(Fe0.985Co0.015)(V0.90Ti0.10)では、室温における電気抵抗率が約1.8μΩmという低い値を示した。また、この組成の熱電変換材料は、4.2Kから700Kまでは、温度上昇に伴って電気抵抗率も上昇するという金属的な挙動を示した。
【0058】
同様に、図15より、実施例1のn型の各熱電変換材料は、総価電子数が増加するにつれて、電気抵抗率が低下することがわかる。
【0059】
そして、図16、図17等より、出力因子を比較した場合、実施例1の熱電変換材料の最大値が比較例2の熱電変換材料を上回ることがわかる。実施例1の熱電変換材料は、比較例2の熱電変換材料に比べ、25%以上出力因子が大きい。これは、総価電子数が減少するにつれて電気抵抗率が減少し、同時に実施例1の熱電変換材料のゼーベック係数の値が比較例2の熱電変換材料よりも総価電子数23.90~23.97の範囲で大きいためである。
【0060】
また、実施例1の熱電変換材料の出力因子の値2.8×10-3W/mK2は、従来の代表的な熱電変換材料であるBi-Te系p型熱電変換材料の出力因子の値3.0×10-3W/mK2と同程度である。
【0061】
また、図16、図18等より、性能指数を比較した場合、実施例1の熱電変換材料の方が比較例2の熱電変換材料よりも僅かに小さい値を示すが、これは両者の熱伝導率の違いに起因する。
【0062】
そして、実施例1の熱電変換材料は、貴金属であるIrを用いておらず、安価で無毒な元素の組み合わせからなる。
【0063】
したがって、実施例1の熱電変換材料によれば、より良好な発電効率を発揮可能であるとともに、従来の熱電変換材料と比べ、大幅なコスト削減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、パソコンのCPUや自動車のエンジン等、比較的低温の廃熱を利用して発電装置等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1の熱電変換材料((Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Al(β=0.06、0.10、0.15))に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1の熱電変換材料((Fe0.985Co0.0152(V1-βTiβ)Al(β=0.06、0.10、0.15))に係り、温度と電気抵抗率との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の熱電変換材料((Fe0.965Co0.0352(V1-βTiβ)Al(β=0.10、0.14、0.19))に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1の熱電変換材料((Fe0.965Co0.0352(V1-βTiβ)Al(β=0.10、0.14、0.19))に係り、温度と電気抵抗率との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1の熱電変換材料((Fe0.95Co0.052(V1-βTiβ)Al(β=0.13、0.17、0.22))に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1の熱電変換材料((Fe0.95Co0.052(V1-βTiβ)Al(β=0.13、0.17、0.22))に係り、温度と電気抵抗率との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V0.97Ti0.03)Al(α=0.030、0.050、0.075))に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図8】実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V0.97Ti0.03)Al(α=0.030、0.050))に係り、温度と電気抵抗率との関係を示すグラフである。
【図9】比較例2の熱電変換材料((Fe0.985Ir0.0152(V1-βTiβ)Al(β=0.06、0.08、0.15))に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図10】比較例2の熱電変換材料((Fe0.985Ir0.0152(V1-βTiβ)Al(β=0.06、0.08、0.15))に係り、温度と電気抵抗率との関係を示すグラフである。
【図11】実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)並びに比較例1の基本構造に係り、300Kでのゼーベック係数の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図12】実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)に係り、300Kでの熱伝導率の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図13】実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、0.050、β=0.03))に係り、300Kでの熱伝導率の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図14】実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)並びに比較例1の基本構造に係り、300Kでの電気抵抗率の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図15】実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe1-αα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、0.050、β=0.03))並びに比較例1の基本構造に係り、300Kでの電気抵抗率の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図16】実施例1及び比較例2の熱電変換材料((Fe0.9850.0152(V1-βTiβ)Al)に係り、300Kでの出力因子及び性能指数の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図17】実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、β=0.03)及び比較例1の基本構造に係り、300Kでの出力因子の総価電子数依存性を示すグラフである。
【図18】実施例1の熱電変換材料((Fe1-αCoα2(V1-βTiβ)Al(α=0.005、0.015、0.035、β=0.03)及び比較例1の基本構造に係り、300Kでの性能指数の総価電子数依存性を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17