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明細書 :3チャンネル適合整相方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3005680号 (P3005680)
登録日 平成11年11月26日(1999.11.26)
発行日 平成12年1月31日(2000.1.31)
発明の名称または考案の名称 3チャンネル適合整相方法及び装置
国際特許分類 G01S  7/526     
G01S  7/527     
G01S  7/536     
FI G01S 7/52 J
G01S 7/66
請求項の数または発明の数 10
全頁数 6
出願番号 特願平10-341164 (P1998-341164)
出願日 平成10年11月16日(1998.11.16)
審査請求日 平成10年11月16日(1998.11.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】菊池 達夫
【氏名】武捨 貴昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】長浜 義憲
参考文献・文献 特開 昭52-119256(JP,A)
調査した分野 G01S 7/526
G01S 7/527
G01S 7/536
要約 【課題】 雑音源がサイドビーム方向であれば、いずれの距離に存在しても、いずれの方向に存在しても、常に雑音レベルを最小にする最適な整相方法及び装置を得る。
【解決手段】 加算器4は3チャンネルの受波器11,12,13のうちの両端の2つの受波器11,13の出力を加算して両端の2つの受波器が作り出す指向性を取り出す。乗算器5は加算器4の出力に0.5を掛ける。適合処理計算器6は乗算器5の出力に対するタップ重みと中央の受波器出力に対するタップ重みの和が1という拘束条件のもとに、目標からの信号を低減させずにサイドビーム方向の雑音出力が最小となる適合処理計算を行う。
特許請求の範囲 【請求項1】
水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器の出力の整相方法において、等間隔に配置された3チャンネルの受波器を選択し、両端の2つの受波器の加算出力の0.5倍と中央の受波器出力とを用いて適合処理計算を適用し、サイドビームの受信感度を下げて雑音を低減させることを特徴とする3チャンネル適合整相方法。

【請求項2】
前記両端の2つの受波器の加算出力の0.5倍と前記中央の受波器出力とに適合処理計算の個別のタップ重みをそれぞれ掛ける請求項1記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項3】
雑音に対する前記両端の2つの受波器の加算出力の0.5倍と前記中央の受波器出力の和が最小になるように、適合処理計算を行う請求項1又は2記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項4】
前記適合処理計算にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いる請求項3記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項5】
前記LMSアルゴリズムによる適合処理計算において、誤差信号として直前の3チャンネル適合処理出力を用いる請求項4記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項6】
前記LMSアルゴリズムのタップ重みの計算において、タップ重みを全て正の数を採用する請求項4記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項7】
前記LMSアルゴリズムのタップ重みの計算において、タップ重みを正負いずれの場合でも採用する請求項4記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項8】
前記タップ重みの計算において、前記両端の2つの受波器の加算出力に対するタップ重みと前記中央の受波器出力に対するタップ重みの和を常に1に保つことによって、目標からの受信信号に対する利得を常に1に保つ請求項2,6又は7記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項9】
前記両端の2つの受波器の加算出力に対するタップ重みと前記中央の受波器出力に対するタップ重みの和を常に1に保つために、適合処理計算毎に2つのタップ重みの和を求め、それぞれのタップ重みをこの和で割り戻してタップ重みの合計を常に1に保つ請求項8記載の3チャンネル適合整相方法。

【請求項10】
水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器の出力の整相装置において、等間隔に配置された少なくとも3チャンネルの受波器と、各受波器出力を遅延させる遅延器と、選択された3チャンネルの受波器のうち両端の2つの受波器の遅延出力を加算する加算器と、該加算器出力に0.5を乗じる乗算器と、前記選択された3チャンネルの受波器のうち中央の受波器の遅延出力と前記乗算器出力とを受けて適合処理計算を行う適合処理計算器とを備え、該適合処理計算器の適合処理計算によりサイドビームの受信感度を下げて雑音を低減させることを特徴とする3チャンネル適合整相装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器を少なくとも3個有するソーナー等の装置に適用してサイドビーム方向から到来する雑音を低減可能な3チャンネル適合整相方法及び装置に関する。

【0002】

【従来の技術】水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器出力は周囲に存在する雑音に覆われている。このため、目標からの受信信号を見つけるために、受波器出力を整相して雑音レベルを低減させる必要がある。このため、従来の整相方法及び装置は、各受波器出力にシェーディング係数と呼ばれる固定の数値を掛けそれらを加算して行っていた。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】前記シェーディング係数の選択の方法には、メインビーム幅を狭くする方法、サイドビームの感度を下げる方法等種々の方法があり、周囲の雑音を考慮して係数を選択している。しかし、これらの方法はいずれも雑音源は十分遠距離に存在し、しかも全方位にわたって一様に存在することが前提になっていた。このため、近距離にある雑音源、特定の方位に偏っている雑音源及び存在方位や位置が時間とともに変動する雑音源に対しては最適なシェーディング係数になっていないため、最適な整相が行われていなかった。

【0004】
本発明は、上記の点に鑑み、雑音源がサイドビーム方向であれば、いずれの距離に存在しても、いずれの方向に存在しても、常に雑音レベルが最小になるような最適なシェーディング係数の選択が可能な3チャンネル適合整相方法及び装置を提供することを目的とする。

【0005】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。

【0006】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願請求項1の発明に係る3チャンネル適合整相方法は、水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器の出力の整相方法において、等間隔に配置された3チャンネルの受波器を選択し、両端の2つの受波器の加算出力の0.5倍と中央の受波器出力とを用いて適合処理計算を適用し、サイドビームの受信感度を下げて雑音を低減させることを特徴としている。

【0007】
本願請求項2の発明は、前記請求項1の発明において、前記両端の2つの受波器の加算出力の0.5倍と前記中央の受波器出力とに適合処理計算の個別のタップ重みをそれぞれ掛けることを特徴としている。

【0008】
本願請求項3の発明は、前記請求項1又は2の発明において、雑音に対する前記両端の2つの受波器の加算出力の0.5倍と前記中央の受波器出力の和が最小になるように、適合処理計算を行うことを特徴としている。

【0009】
本願請求項4の発明は、前記請求項3の発明において、前記適合処理計算にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いることを特徴としている。

【0010】
本願請求項5の発明は、前記請求項4の発明において、前記LMSアルゴリズムによる適合処理計算の誤差信号として直前の3チャンネル適合処理出力を用いることを特徴としている。

【0011】
本願請求項6の発明は、前記請求項4の発明において、前記LMSアルゴリズムのタップ重みの計算について、タップ重みを全て正の数を採用することを特徴としている。

【0012】
本願請求項7の発明は、前記請求項4の発明において、前記LMSアルゴリズムのタップ重みの計算について、タップ重みを正負いずれの場合でも採用することを特徴としている。

【0013】
本願請求項8の発明は、前記請求項2,6又は7の発明において、前記タップ重みの計算について、前記両端の2つの受波器の加算出力に対するタップ重みと前記中央の受波器出力に対するタップ重みの和を常に1に保つことによって、目標からの受信信号に対する利得を常に1に保つことを特徴としている。

【0014】
本願請求項9の発明は、前記請求項8の発明において、前記両端の2つの受波器の加算出力に対するタップ重みと前記中央の受波器出力に対するタップ重みの和を常に1に保つために、適合処理計算毎に2つのタップ重みの和を求め、それぞれのタップ重みをこの和で割り戻してタップ重みの合計を常に1に保つことを特徴としている。

【0015】
本願請求項10の発明に係る3チャンネル適合整相装置は、水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器の出力の整相装置において、等間隔に配置された少なくとも3チャンネルの受波器と、各受波器出力を遅延させる遅延器と、選択された3チャンネルの受波器のうち両端の2つの受波器の遅延出力を加算する加算器と、該加算器出力を0.5倍する乗算器と、前記選択された3チャンネルの受波器のうち中央の受波器の遅延出力と前記乗算器出力とを受けて適合処理計算を行う適合処理計算器とを備え、該適合処理計算器の適合処理計算によりサイドビームの受信感度を下げて雑音を低減させることを特徴としている。

【0016】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る3チャンネル適合整相方法及び装置の実施の形態を図面に従って説明する。

【0017】
図1は発明の実施の形態であって、受波器11,12,13が等間隔で配列され、受波器11,12,13の出力にそれぞれ遅延をかけるために遅延器21,22,23が設けられており、さらに両端の2つの受波器11,13の遅延出力を加算する加算器4と、この加算器4の加算値を0.5倍する乗算器5と、乗算器5を経た加算器出力と中央の受波器12の遅延器22を経た遅延出力とを受けて適合処理計算を行う適合処理計算器6とが設けられている。

【0018】
前記受波器11,12,13は、水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するもの或いは目標からの放射音を受信するものである。音波1が入射したときの各受波器11,12,13の受波出力に前記遅延器21,22,23はそれぞれ所要量の遅延を加えて所望方向にメインビーム2を形成する。メインビーム2の方向と各遅延器の遅延量との関係は周知であるための省略し、ここでは説明を簡単にするために各遅延器の遅延時間が零の場合について述べる。すなわち、音波入射角度が零の方向(受波器配列方向に直交する向き)をメインビーム2の方向とし、音波入射角度が90度に近づく方向をサイドビーム3の方向とする。

【0019】
前記適合処理計算器6は後述のするLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いた適合処理計算によりサイドビームの受信感度を下げて雑音を低減させる機能を有し、適合処理計算器6の出力として3チャンネル適合処理出力を得るものである。

【0020】
ここで、LMSアルゴリズムについて簡単に説明する。入力ベクトルをXk、タップ重みをWとすると、フィルタ出力Yk
k = WTk (但し、k:サンプリング時期)
となる。瞬時誤差信号εkは希望応答dkとフィルタ出力Ykとの差をとり次式で定義される。
εk = dk-Yk = dk-WTk
次式でk+1番目のタップ重みを求める計算を繰り返し行ってタップ重みの収束値を求める。
k+1 = Wk+2μεkk
μはステップパラメータであり、およそ0.1~0.001程度のオーダになることが多い。

【0021】
今、サイドビーム3方向から音波1が各受波器11,12,13に入射し、各受波器11,12,13よる音波1の受波出力に対して遅延器21,22,23で所要の遅延をかけるが前述したように遅延時間を零としたので、音波入射角度が零の方向がメインビーム2方向、音波入射角度が90度に近づく方向がサイドビーム3方向となる。そして、遅延器21と遅延器23の出力(遅延時間は零であるので両端の受波器11,13の出力と同じ)を加算器4で加算する。加算器出力の受信指向性は周波数によって異なる。図2に指向性の計算例を示す。図2の(ア)は波長が受波器11,13の間隔の2倍の場合であり、図2の(イ)は波長が受波器11,13の間隔に等しい場合である。図2の(ア)はサイドビーム方向の受信感度が低下しており、図2の(イ)はサイドビーム方向の感度は下がってはいないが音波入射角度が30度付近から90度までは位相が反転している。

【0022】
この加算器4による加算値を乗算器5で0.5倍する。乗算器5の出力と遅延器22の出力(遅延時間は零であるので中央の受波器12の出力と同じ)を適合処理計算器6に入力し、適合処理計算器6でLMSアルゴリズムによる適合処理計算を実行する。適合処理計算器6は乗算器5の出力に対するタップ重みと中央の受波器出力に対するタップ重みの和が1という拘束条件のもとに、目標からの信号を低減させずにサイドビーム方向の雑音出力が最小となる適合計算を行う。適合処理計算方法は以下による。

【0023】
遅延器の出力を一般的に式(1)で表せば、
【数1】
JP0003005680B1_000002t.gif遅延器21,22,23の出力はそれぞれx1、x2、x3と表せ、加算器4の出力はxl+x3となり、乗算器5の出力は式(2)となる。
1 = 0.5(x1+x3) …(2)
遅延器22の出力を式(3)で表す。
2 = x2 …(3)
適合処理計算器6の3チャンネル適合処理出力zを式(2)と式(3)を用いて式(4)で表す。
z = w11+w22 …(4)
ここで、w1とw2は適合処理アルゴリズム(LMSアルゴリズムを用いる)におけるタップ重みであり、w1とw2の和が1となるように選択する。

【0024】
適合処理アルゴリズムにおける誤差信号εを適合処理計算器6の出力zが最小になるように設定して式(5)とすれば、
ε = -z …(5)
タップ重みw1,w2は式(6a)又は式(6b)で計算することができる。但し、式(6a)はタップ重みを全て正の数を採用するようにした場合、式(6b)はタップ重みを正負いずれの場合でも採用する場合で、タップ重みw1を求めるときj=1、タップ重みw2を求めるときj=2である。
【数2】
JP0003005680B1_000003t.gif【0025】このように計算したタップ重みw1,w2(LMSアルゴリズムにより求められたそれぞれの収束値)に対して、音波入射角度が零度から到来した目標からの受波信号が低減されないように、w1とw2の和を常に1にするための拘束条件として式(7)を用いて再度タップ重みを計算し直す。
【数3】
JP0003005680B1_000004t.gif【0026】このように、サイドビーム方向の雑音を低減するように最適値に設定したタップ重みw1,w2を用いて適合処理計算器6で3チャンネル適合整相した場合の、図1の実施の形態における特定方位からの音波の入射に対する受信感度の計算例を図3に示す。図3の(ア)は波長が受波器11と13の間隔の2倍の場合であり、図3の(イ)は波長が受波器11と13の間隔に等しい場合である。比較のため、従来の加算整相方法による受信指向性の計算例を示した。従来の加算整相に比べてサイドビーム方向の雑音を低減するように整相されていることが判る。

【0027】
なお、サイドビーム方向からの音波が定常的なものであれば、タップ重みは最適値に設定後一定となるが、定常的でなければタップ重みは最適値を求めて変化する。

【0028】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。

【0029】
(1) 水中又は空中において、音波を発信し目標からの反響音を受信するか或いは目標からの放射音を受信する受波器出力を整相する場合において、等間隔に配置された3チャンネルの受波器11,12,13を選択し、両端の2つの受波器11,13の加算出力と中央の受波器12の出力とを用いて適合処理計算器6による適合処理計算を適用することにより、サイドビームの受信感度を下げて雑音を低減させることが可能である。

【0030】
(2) 両端の2つの受波器11,13の加算出力と中央の受波器12の出力とに、式(4)の如く適合処理計算の個別のタップ重みw1,w2をそれぞれ掛けることで、雑音低減のための適合処理計算が可能である。このとき、両端の2つの受波器11,13の加算出力の受信指向性と中央の受波器12の出力の受信指向性の差並びに両端の2つの受波器11,13の加算出力の位相と中央の受波器12の出力の位相の差に注目して、サイドビーム方向の雑音に対する前記両端の2つの受波器の加算出力と前記中央の受波器出力の和が最小になるように、タップ重みw1,w2を選定して適合処理計算を行えばよい。

【0031】
(3) 前記適合処理計算にLMSアルゴリズムを用いてタップ重みw1,w2の収束値を求めることで、雑音低減のためのタップ重みw1,w2の最適値を容易に得ることができる。その際、タップ重みw1,w2として全て正の数を採用するようにしてもよいし、又はタップ重みw1,w2として正負いずれの場合でも採用するようにしても差し支えない。

【0032】
(4) タップ重みw1,w2の計算において、両端の2つの受波器11,13の加算出力に対するタップ重みw1と中央の受波器12の出力に対するタップ重みw2の和を常に1に保つことによって、目標からの受信信号に対する利得を常に1に保つことが可能である。具体的には、前記両端の2つの受波器の加算出力に対するタップ重みw1と前記中央の受波器出力に対するタップ重みw2の和を常に1に保つために、式(7)のように適合処理計算毎(サンプリング値毎)に2つのタップ重みの和を求め、それぞれのタップ重みをこの和で割り戻してタップ重みの合計を常に1に保つようにすればよい。

【0033】
なお、本発明は音波の反射又は放射を受波するソーナー装置等の整相処理に有用であり、魚群探知機にも適用可能である。

【0034】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

【0035】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る3チャンネル適合整相方法及び装置によれば、雑音源がサイドビーム方向であれば、いずれの距離に存在しても、いずれの方向に存在しても、常に雑音レベルが最小になるような最適なシェーディング係数の選択が可能であり、従来の加算整相に比べてサイドビーム方向の雑音の低減効果が大きい。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2