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明細書 :静電紡糸装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5237712号 (P5237712)
公開番号 特開2010-031398 (P2010-031398A)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月17日(2013.7.17)
公開日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発明の名称または考案の名称 静電紡糸装置
国際特許分類 D01D   5/04        (2006.01)
D01D   5/08        (2006.01)
D04H   1/728       (2012.01)
FI D01D 5/04
D01D 5/08 D
D04H 1/728
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2008-191864 (P2008-191864)
出願日 平成20年7月25日(2008.7.25)
審査請求日 平成23年7月25日(2011.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
発明者または考案者 【氏名】山下 義裕
【氏名】三宅 肇
個別代理人の代理人 【識別番号】100094248、【弁理士】、【氏名又は名称】楠本 高義
【識別番号】100129207、【弁理士】、【氏名又は名称】中越 貴宣
審査官 【審査官】菊地 則義
参考文献・文献 特表2005-534828(JP,A)
特開2006-152479(JP,A)
特開2008-038312(JP,A)
特開2008-088600(JP,A)
調査した分野 D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
特許請求の範囲 【請求項1】
紡糸用原液を、ノズルを備えた紡糸ヘッドに導入して前記ノズルから吐出させ、吐出された紡糸用原液に電界を作用させて延伸し繊維化し、捕集面で捕集する静電紡糸装置であって、
前記紡糸ヘッドにエラストマーからなる連結管を介して導通する原液貯留槽を備え、
前記紡糸ヘッドの素材が絶縁材からなり、
前記紡糸ヘッドが液槽と、該液槽に直結し紡糸用原液を該液槽に導入する導入口と、該液槽に導通する前記ノズルとを含んでなり、
前記紡糸ヘッドに前記導入口となる管先が設けられ、
該管先に前記連結管が差し込まれて前記原液貯留槽と前記紡糸ヘッドとが連結され、
前記管先と前記連結管との間を通って針金状あるいはリボン状の導電性物の先端部が前記液槽内部に導入され、該導電性物を介して前記紡糸用原液と前記捕集面との間に直流高電圧印加されることを特徴とする静電紡糸装置
【請求項2】
紡糸用原液を、ノズルを備えた紡糸ヘッドに導入して前記ノズルから吐出させ、吐出された紡糸用原液に電界を作用させて延伸し繊維化し、捕集面で捕集する静電紡糸装置であって、
前記紡糸ヘッドにエラストマーからなる連結管を介して導通する原液貯留槽を備え、
前記紡糸ヘッドの素材が絶縁材からなり、
前記紡糸ヘッドが液槽と、該液槽に直結し紡糸用原液を該液槽に導入する導入口と、該液槽に導通する前記ノズルとを含んでなり、
前記紡糸ヘッドが液槽上部と液槽下部とに着脱自在に分割され、前記液槽上部に前記導入口となる管先が設けられ、前記液槽下部に前記ノズル接続部が設けられ、
該管先に前記連結管が差し込まれて前記原液貯留槽と前記紡糸ヘッドとが連結され、
前記液槽上部と液槽下部との間を通って針金状あるいはリボン状の導電性物の先端部が前記液槽内部に導入され、該導電性物を介して前記紡糸用原液と前記捕集面との間に直流高電圧が印加されることを特徴とする静電紡糸装置
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、静電紡糸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電紡糸は、ノズルのノズル孔から吐出させた紡糸用の溶液に電界を作用させて繊維化する紡糸である。静電紡糸は、繊維径がサブミクロンあるいはナノオーダーの繊維を得ることが可能であり、また溶融紡糸が困難な樹脂でも繊維化が可能なので、従来の繊維を用いては実現できなかった用途分野への展開が期待されている。
【0003】
静電紡糸による繊維ウエブの製造は、例えば図7に示すように、分配整流ブロック202へ計量ポンプ201で送られた、紡糸原液であるポリマー溶液を、口金部204へ送り、微細なノズル孔208を通して押出しながら同時に直流高圧電源206により電場をかけて繊維化し、捕集コンベアからなる集積装置207上に集積させることにより行われる。この繊維は、3次元のネットワーク構造を成しており、集積装置207で集積されて繊維ウエブ210となる。(例えば、特許文献1参照)

【特許文献1】特開昭63-145465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に示すような静電紡糸においては、直流高圧電源206の電極をノズル孔208に接続することによりポリマー溶液が印加される。従って、ノズル孔208は金属のような導電性の素材からなる。また、口金部204も金属製であり導電性を有する。
【0005】
ノズル孔208が導電性であることによりノズル孔208の外周壁面も高電位にあるので、繊維化し空中に放出されたポリマーがその外周壁面に引きつけられて堆積し、ノズル孔208の外周壁面が汚れノズル孔の出口近傍にもはみだして紡出の障害になることがある。また、口金部204も金属製であり導電性を有するので直流高圧電源206の電極に接続された、ノズル孔208や口金部204のような導電性物質の表面積が大きくなり、その導電性物質の表面から漏洩する電流が多く、直流高圧電源206の消費電力が多くなるという問題も生ずる。
【0006】
本発明の目的は、ノズル孔の外表面が汚れず、直流高圧電源の消費電力の少ない静電紡糸装置を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、紡糸用原液を、ノズルを備えた紡糸ヘッドに導入して前記ノズルから吐出させ、吐出された紡糸用原液に電界を作用させて延伸し繊維化し、捕集面で捕集する静電紡糸装置であって、
前記紡糸ヘッドにエラストマーからなる連結管を介して導通する原液貯留槽を備え、
前記紡糸ヘッドの素材が絶縁材からなり、
前記紡糸ヘッドが液槽と、該液槽に直結し紡糸用原液を該液槽に導入する導入口と、該液槽に導通する前記ノズルとを含んでなり、
前記紡糸ヘッドに前記導入口となる管先が設けられ、
該管先に前記連結管が差し込まれて前記原液貯留槽と前記紡糸ヘッドとが連結され、
前記管先と前記連結管との間を通って針金状あるいはリボン状の導電性物の先端部が前記液槽内部に導入され、該導電性物を介して前記紡糸用原液と前記捕集面との間に直流高電圧印加されることを特徴とする静電紡糸装置であることにある。
【0008】
また、本発明の要旨とするところは、紡糸用原液を、ノズルを備えた紡糸ヘッドに導入して前記ノズルから吐出させ、吐出された紡糸用原液に電界を作用させて延伸し繊維化し、捕集面で捕集する静電紡糸装置であって、
前記紡糸ヘッドにエラストマーからなる連結管を介して導通する原液貯留槽を備え、
前記紡糸ヘッドの素材が絶縁材からなり、
前記紡糸ヘッドが液槽と、該液槽に直結し紡糸用原液を該液槽に導入する導入口と、該液槽に導通する前記ノズルとを含んでなり、
前記紡糸ヘッドが液槽上部と液槽下部とに着脱自在に分割され、前記液槽上部に前記導入口となる管先が設けられ、前記液槽下部に前記ノズル接続部が設けられ、
該管先に前記連結管が差し込まれて前記原液貯留槽と前記紡糸ヘッドとが連結され、
前記液槽上部と液槽下部との間を通って針金状あるいはリボン状の導電性物の先端部が前記液槽内部に導入され、該導電性物を介して前記紡糸用原液と前記捕集面との間に直流高電圧が印加されることを特徴とする静電紡糸装置であることにある。


【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ノズル孔の外表面が汚れず、直流高圧電源の消費電力の少ない静電紡糸方法及び静電紡糸用紡糸ヘッドが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においては、図1に示す紡糸ヘッド2が用いられる。紡糸ヘッド2は、液槽4と、液槽4に直結し紡糸用原液を液槽4に導入する導入口6と、液槽4に導通する複数のノズル8を備える。導入口6には管先11が取りつけられている。
【0011】
図2に示すように、紡糸用原液が原液貯留槽12から連結管14を介して紡糸ヘッド2の管先11を経由して液槽4に導入される。原液槽12には複数の連結管14が接続されていてそれぞれが各紡糸ヘッド2に連結されている。連結管14には本態様にあってはシリコーンゴムのようなエラストマーからなるフレキシブルなチューブ15が用いられ、管先11がそのチューブ15の一端部に指し込まれている。紡糸用原液はノズル8から吐出され、繊維化して捕集面10に捕集される。ノズル8における紡糸用原液の吐出圧の付与は、原液槽12の水頭ヘッド圧によるものであってもよい。あるいは原液槽12の下流に不図示の液送ポンプを設けてその液送圧によるものであってもよい。その他、ノズル8に吐出圧を発生させる手段であればとくに制限はない。
【0012】
図2の図の拡大部に示すように、金属製の、径0.05~1mmほどの細い導線14の一端部17が管先11の外周と、その外周に接するチューブ15の内周との間を通って液槽4の内部に導入されて、液槽4内の紡糸用原液と接触状態にある。導線14の他端部19は液槽4の外部にあって、直流高圧電源20の正極22に不図示のリード線を介して接続されている。ノズル8の、ノズル孔の貫通方向の延長方向に捕集面24が設置され、捕集面24が直流高圧電源20のアース極26に不図示のリード線を介して接続されている。これにより、紡糸ヘッド2内の紡糸用原液と捕集面24との間に直流高電圧が印加される。図2に示す態様においては捕集面24は捕集コンベアからなる集積装置27の捕集面であり、紡出された繊維は、3次元のネットワーク構造を成しており、捕集面24で集積されて繊維ウエブ29となる。
【0013】
紡糸ヘッド2の素材は、絶縁材からなる。絶縁材は、比抵抗が1×1010Ω・cm以上の材料をいう。絶縁材としてはポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ABS(アクリル-スチレン-ブタジエン共重合物)などの樹脂が挙げられる。陶磁器のようなセラミックやガラスであってもよい。これらの複合物であってもよい。
【0014】
本発明のかかる構成により、ノズル8の外周壁面に直流高圧電源20の電圧が印加されることがないので、ノズル8の外周壁面へのポリマーの堆積やノズルつまりが防止される。さらに、針金状あるいはリボン状の細い導電性物の先端を紡糸用原液に接触させることにより紡糸用原液を印加しているので、導電部分の表面積が極めて小さく、これにより、電流の空中へのリークが少なくなり直流高圧電源20の消費電力が極めて小さい。
【0015】
本発明においては、図3に示す紡糸ヘッド2aの要部断面図のように、ノズル8aが液槽の底壁4aに着脱自在に取りつけられてもよい。図3においては、ノズル8aの根元部が円筒状であり、液槽4aの円筒状のノズル接続部30が、ノズル8aの円筒状の根元部32に着脱自在に嵌入されている。
【0016】
本発明においては、図4に示すように、液槽を、液槽上部34と液槽下部36とに2つ割にして液槽上部34と液槽下部36とが着脱自在に嵌着する構成とすることができる。液槽上部34には管先11が一体的に取りつけられている。液槽下部36にはノズル接続部30が一体的に取りつけられている。図4は、液槽上部34の上がわ外壁に補強リブ15が設けられた態様である。
【0017】
このような2つ割の液槽を用いる場合、図5に示すように、紡糸用原液に電圧を印加するための細長い導線(または薄いリボン状金属箔)40を液槽上部34aと液槽下部36aとの嵌合部41を通して液槽内部と挿通状態とし、導線40の一端部44を液槽内部の紡糸用原液と接触させ、他端部を直流高圧電源20の極に不図示のリード線を介して接続してもよい。
【0018】
本発明の他の態様においては、図6に示すように、原液貯留槽12(図2)と管先11(図1など)とを連結する、エラストマーを素材とする絶縁性の連結管14の少なくとも一部を短い金属管50に置き換えて、金属管50と直流高圧電源20の電極とをリード線52を介して電気的に接続して、紡糸用原液に電圧を印加してもよい。
【0019】
本発明のさらに他の態様においては、原液貯留槽12(図2)内の紡糸用原液に電極小片を投入し、電極小片をリード線を介して直流高圧電源20の極に接続して紡糸用原液に電圧を印加してもよい。
【実施例】
【0020】
ポリエチレンを素材とする、図4に示す形状の液槽上部34と液槽下部36とからなる液槽と、図3に示すポリエチレンを素材とするノズル8aを用い、図2に示す構成で紡出を行った。
【0021】
液槽の下底に10個のノズルを10mm間隔で配した。各ノズルの出口の内径は0.6mm、長さは40mmである。ノズルと紡糸用原液との印加電圧を10kVとして紡出を行った。紡出開始時に吐出量が1cc/min/ノズルとなるように原液槽12の水頭高さを調整した。
【0022】
捕集された繊維ウエブ29の目付けが0.2g/mになるように紡出開始時に捕集面24の速度を調整し、連続紡出を行った。30分間の紡出後も、ノズルの外周壁面へのポリマーの付着はごく僅かであり、吐出量の減少もごく僅かであった。
【比較例】
【0023】
実施例と同様にして紡出を行った。ただし、ノズルの素材をステンレスとし、導線14を用いず、ノズルと直流高圧電源の極とを接続することにより紡糸用原液に電圧を印加した。
【符号の説明】
【0024】
10分間後に、ノズルの外周壁面へポリマーの付着が認められ吐出量の減少やノズル先端から液だれを生ずるなど紡出に支障をきたした。
【0025】
表1に実施例、比較例それぞれにおける繊維ウエブの目付けの経時変化を示す。
【0026】
【表1】
JP0005237712B2_000002t.gif
【0027】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の静電紡糸方法において用いられる紡糸ヘッドの態様の一例を示す構造説明図である。
【図2】本発明の静電紡糸方法における紡糸の態様の一例を示す装置レイアウトの説明図である。
【図3】本発明の静電紡糸方法において用いられる紡糸ヘッドの態様の他の一例を示す要部断面図である。
【図4】本発明の静電紡糸方法において用いられる紡糸ヘッドの態様のさらに他の一例を示し、図4(a)は斜視図、図4(b)は要部正面図、図4(c)は図4(b)のA-A方向の断面図である。
【図5】本発明の静電紡糸方法における紡糸用原液に電圧を印加する態様の一例を示す要部断面模式図である。
【図6】本発明の静電紡糸方法における紡糸用原液に電圧を印加する態様の他の一例を示す要部断面模式図である。
【図7】従来の静電紡糸装置の態様を示す模式図である。
【0029】
2:紡糸ヘッド
4:液槽
6:導入口
8:ノズル
11:管先
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6