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明細書 :良渋皮剥皮系ニホングリ品種の冷凍渋皮剥皮法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5429874号 (P5429874)
登録日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
発明の名称または考案の名称 良渋皮剥皮系ニホングリ品種の冷凍渋皮剥皮法
国際特許分類 A23N   5/08        (2006.01)
A23L   1/212       (2006.01)
FI A23N 5/08 A
A23L 1/212 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2010-9666 (P2010-9666)
出願日 平成22年1月20日(2010.1.20)
審査請求日 平成24年8月20日(2012.8.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】591202155
【氏名又は名称】熊本県
発明者または考案者 【氏名】齋藤 寿広
【氏名】澤村 豊
【氏名】高田 教臣
【氏名】西尾 聡悟
【氏名】岩谷 章生
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
特許請求の範囲 【請求項1】
凍結後のニホングリ品種ぽろたん(品種登録第15658号)又はその系統品種の完熟果実に傷を付けて鬼皮と渋皮を同時に剥皮することを特徴とする、クリの渋皮剥皮方法。
【請求項2】
傷を付けたニホングリ品種ぽろたん(品種登録第15658号)又はその系統品種の完熟果実を凍結処理に供した後、鬼皮と渋皮を同時に剥皮することを特徴とする、クリの渋皮剥皮方法。
【請求項3】
傷入れ部位が果実の頂部から座の中心を通り一周する線上であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば良渋皮剥皮系ニホングリ品種の渋皮剥皮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニホングリは、チュウゴクグリに比べ渋皮剥皮性が悪いため、家庭での消費が伸び悩んでいる。また、ニホングリは、加工時に渋皮の剥皮に要する時間とコストが大きく問題となっている。このため、これまでにニホングリの渋皮剥皮方法がいくつも検討されてきた。
【0003】
現在、ニホングリの渋皮の除去法として、主に刃物で果肉表層ごと渋皮を削り取る方法が用いられている。しかしながら、この方法では人件費等のコストが高く、また、果肉の歩留まりが5~6割とかなり低くなってしまう点が問題となっている。
【0004】
また、ニホングリの渋皮剥皮方法としては、以下の方法が知られている。
特許文献1には、鬼皮を剥離した渋皮付栗果を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することを含む渋皮剥離整形方法が開示されている。
【0005】
特許文献2及び3には、水蒸気の断熱膨張力を利用した方法が開示されている。具体的には、特許文献2には、栗を密閉容器に入れ、水蒸気等の気体により加圧加熱した後、瞬間的に常圧下の緩衝装置に放出することで、鬼皮及び渋皮を剥皮することを含む、栗の剥皮方法が開示されている。特許文献3には、栗を密閉容器に入れ、水蒸気等の気体により加圧加熱した後、瞬間的に常圧下の緩衝装置に放出し、鬼皮を分離除去した後、高速の水蒸気を吹き付けて栗の表面から渋皮を分離除去することを特徴とする栗の剥皮方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、渋皮付きの生栗を50℃~80℃の温水に浸漬若しくは温水でシャワーを行い、渋皮の表面温度50℃~80℃に昇温し、この栗に50℃~80℃の高圧水のジェットを噴射し、渋皮を剥皮することを特徴とする、生栗の渋皮の剥皮方法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、栗を、熱風を流動させながら加熱処理を行う流体加熱に供することを特徴とする栗の皮遊離方法が開示されている。
【0008】
特許文献6には、鬼皮付きのままの栗或いは鬼皮を完全に又は不完全に除いた栗を薬液(塩酸水溶液等)処理した後、マイクロ波照射処理することを特徴とする栗の剥皮処理法が開示されている。
【0009】
特許文献7には、栗の座部に切り込みを入れる切り込み工程と、切り込みの形成された栗を、酵素剤を含む水溶液に浸漬する工程とを含むことを特徴とする栗の剥皮方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、これら従来の方法は、いずれも大がかりで、特殊な設備や機械を必要とするか、或いは、長時間の薬品処理や加熱時間等を必要とし、実用に耐える方法ではない。また、酸やアルカリ等の薬品処理は、果実が変色するといった欠点を有する。さらに、これら従来の方法は、ニホングリの渋皮を完全に剥皮することが困難であったり、果肉表層が渋皮側に付着してしまうという欠点を有する。
【0011】
特許文献8には、渋皮にナイフ等で傷を付けた後に、マイクロ波照射装置等でマイクロ波照射処理に供するか又はオーブン等で加熱処理に供することを特徴とするクリの渋皮剥皮方法が開示されている。しかしながら、当該方法では、加熱処理すると果実表面が硬くなる等の果実の品質が変化してしまう問題がある。
【0012】
また、特許文献9には、完熟前の栗を冷凍・解凍し、鬼皮と渋皮とを同時に剥離する方法が開示されている。しかしながら、当該方法では、木から落ちる前の完熟前のイガ栗を採集し、イガから果実を取り出した後に冷凍する必要があるため、多大な労力を要する。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開昭54-80450号公報
【特許文献2】特開昭54-119077号公報
【特許文献3】特開昭57-12988号公報
【特許文献4】特開2001-238654号公報
【特許文献5】特開2000-125832号公報
【特許文献6】特開平4-112779号公報
【特許文献7】特開平10-84928号公報
【特許文献8】特開2008-54548号公報
【特許文献9】特開2002-238526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した実情に鑑み、良渋皮剥皮系ニホングリ品種の果実の渋皮を、果実の品質を変化させることなく、簡便に、且つ短時間で剥皮することを可能とする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、凍結後の良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実に傷を付けるか、又は傷を付けた当該完熟果実を凍結に供することで、鬼皮と渋皮を同時に剥皮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は以下を包含する。
(1)凍結後の良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実に傷を付けて鬼皮と渋皮を同時に剥皮することを特徴とする、クリの渋皮剥皮方法。
(2)傷を付けた良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実を凍結処理に供した後、鬼皮と渋皮を同時に剥皮することを特徴とする、クリの渋皮剥皮方法。
(3)良渋皮剥皮系ニホングリ品種がニホングリ品種ぽろたん(品種登録第15658号)又はその系統品種であることを特徴とする、(1)又は(2)記載の方法。
(4)傷入れ部位が果実の頂部から座の中心を通り一周する線上であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良渋皮剥皮系ニホングリ品種の果実の渋皮を、果実の品質を変化させることなく、簡便に且つ短時間で剥皮でき、クリの加工分野において渋皮剥皮の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ぽろたんの系統図である。
【図2】果実の傷入れ部位を示す図である。
【図3】凍結後の果実の写真である。
【図4】実施例1における鬼皮と渋皮の剥皮後の果実の写真である。
【図5】実施例2における傷入れ後の凍結前の果実(a)及び凍結後の果実(b)の写真である。
【図6】実施例2における鬼皮と渋皮を剥皮した果実(ぽろたん)(a)及び実施例2に記載の方法と同様の方法で鬼皮と渋皮を剥皮した品種「筑波」の果実(b)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るクリの渋皮剥皮方法は、凍結後の良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実に傷を付けて鬼皮と渋皮を同時に剥皮する方法である(以下、「第一方法」という)。また、本発明に係るクリの渋皮剥皮方法は、傷を付けた良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実を凍結に供した後、鬼皮と渋皮を同時に剥皮する方法である(以下、「第二方法」という)。なお、以下では、第一方法と第二方法とを合わせて「本方法」という場合がある。

【0020】
本方法では、良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実を凍結させることで、渋皮が果肉ではなく鬼皮の方に接着するため、鬼皮と渋皮を同時に剥がすようにして剥皮することで、きれいに渋皮を剥がすことができる。

【0021】
ここで、良渋皮剥皮系ニホングリ品種とは、ニホングリ品種のうち渋皮剥皮性に優れた品種を意味する。良渋皮剥皮系ニホングリ品種としては、例えば、ニホングリ品種「ぽろたん」及びその親系統である「550-40」の後代品種又はそれらの系統品種が挙げられる。「ぽろたん」は、種苗法によって、2007年10月22日に登録番号:第15658号として品種登録されている。その特性は、以下の通りである。(1)渋皮剥皮性がよい、(2)大果である、(3)粉質で食味が優れる、(4)早生である、(5)裂果が少ない、(6)場所により虫害果率が高い。図1は、「ぽろたん」の系統図を示す。図1に示すように、「ぽろたん」は、早生の大果系統である「550-40」と早生の主要品種である「丹沢」との交雑品種である。なお、「ぽろたん」は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所より提供される。

【0022】
また、「ぽろたん」の系統品種としては、例えば、図1に示す品種と「ぽろたん」との交雑品種が挙げられる。

【0023】
さらに、ここで「完熟果実」とは、毬が開裂した状態で収穫される果実を意味する。一般に、完熟果実の鬼皮と座は茶色に着色する。

【0024】
第一方法では、先ず良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実を凍結処理に供する。例えば、当該完熟果実をビニール袋に入れてフリーザー内で、-80~-10℃(好ましくは-30~-20℃)下で1日~48週間(好ましくは1~2週間)貯蔵する。貯蔵後、凍結した完熟果実を、例えば常温(例えば15~25℃)で傷を付けることができる程度まで(例えば30分~1時間)融解させる。融解後、完熟果実に傷を付けて鬼皮と渋皮を同時に剥がすように剥皮を行う。傷の付け方としては、例えば、図2に示すように、ナイフ等の刃物で、傷入れ部位を果実の頂部から座の中心を通り一周する線上で最長となる線とし、鬼皮及び渋皮を通して果肉に達する程度まで傷(切り口)を付ける。

【0025】
一方、第二方法では、先ず良渋皮剥皮系ニホングリ品種の完熟果実に傷を付ける。傷を付けた後、傷を付けた完熟果実を凍結処理に供する。凍結が終了し、融解後、鬼皮と渋皮を同時に剥がすように剥皮を行う。傷の付け方、凍結処理条件及び融解条件は、上述の第一方法に準じたものとすることができる。

【0026】
以上に説明した本方法によれば、良渋皮剥皮系ニホングリ品種の果実の渋皮を、特殊な機械を用いずに完全に且つ短時間で剥皮でき、労力・コストを大きく削減することができる。

【0027】
本方法適用後には、素手でも簡単に渋皮の剥皮を行うことができる。また、渋皮のみを除去できるため、剥皮後の果肉表面が非常に綺麗であり、果肉の歩留まりも高い。

【0028】
さらに、本方法によれば、果実の品質を変化させることなく、果実(又は果肉)を提供することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〕凍結後の完熟果実に傷を付けることによる鬼皮と渋皮の同時剥皮
果樹研究所に植栽されている「ぽろたん」から適期に収穫された完熟した果実を供試した。
【0031】
果実をビニール袋に入れてフリーザー(テイオン社)内に-20℃で1週間貯蔵した。図3は、凍結後の果実の様子を示す写真である。
【0032】
1週間の貯蔵後、フリーザーから取り出した果実を常温で30分程度融解させた後、鬼皮に、果肉に達する程度(およそ3mm)の傷を入れた。傷入れ部位は、果実の頂部から座の中心を通り、一周する線上で最長となる線とした(図2)。剥皮は、道具等を用いずに徒手で鬼皮と渋皮を同時に剥がすようにして行った。
【0033】
〔実施例2〕凍結前の完熟果実に傷を付け、その後凍結させることによる鬼皮と渋皮の同時剥皮
果樹研究所に植栽されている「ぽろたん」から適期に収穫された完熟した果実を供試した。
【0034】
凍結させる前に、果実の鬼皮に、果肉に達する程度(およそ3mm)の傷を入れた。傷入れ部位は、果実の頂部から座の中心を通り、一周する線上で最長となる線とした。傷入れ後、果実をビニール袋に入れてフリーザー(テイオン社)内に-20℃で1週間貯蔵した。
【0035】
1週間の貯蔵後、果実を常温で30分程度融解させ、徒手で鬼皮と渋皮を同時に剥がすようにして鬼皮と渋皮を剥皮した。
【0036】
実施例1及び2における鬼皮と渋皮の剥皮結果を図4~6に示す。
図4は、実施例1における鬼皮と渋皮の剥皮後の果実の写真である。実施例1においては、凍結させると、鬼皮が硬くなるので、ある程度融解するまでは果実に傷をいれることはできなかった。「ぽろたん」の果実においては、渋皮が鬼皮の方に吸着するため、鬼皮を剥がすと同時に渋皮も剥がすことができた。
【0037】
一方、「筑波」や「丹沢」の系統の果実を実施例1に記載の剥皮方法に供した場合には、果肉の方にも渋皮が吸着してしまうので、果実から渋皮を取り除くことはできなかった。
【0038】
図5は、実施例2における傷入れ後の凍結前の果実(a)及び凍結後の果実(b)の写真である。
実施例2では、傷入れ果実を凍結させると、わずかながら傷をいれた部分が開き果肉がみえるようになった(図5(b))。実施例2においては、30分程度融解させた後、「ぽろたん」の果実の傷入れ部分から鬼皮と渋皮を剥がすと、渋皮をきれいに取り除くことができた。
【0039】
図6は、実施例2における鬼皮と渋皮を剥皮した果実(ぽろたん)(a)及び実施例2に記載の剥皮方法と同様の方法で鬼皮と渋皮を剥皮した品種「筑波」の果実(b)の写真である。また、下記の表1は、実施例2に記載の剥皮方法で鬼皮と渋皮を剥皮した各品種の果実における平均渋皮剥皮率を示す。なお、平均渋皮剥皮率は、1果実当たりの渋皮が果肉に接着せずにきれいに剥がれた面積の割合を算出し、10果実の平均をとって算出された。
【0040】
【表1】
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【0041】
図6及び表1から判るように、実施例2に記載の剥皮方法を適用しても、「筑波」、「利平」、「丹沢」、「国見」等の品種では、果肉に渋皮が接着してしまい、きれいに渋皮を取り除くことができなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図6】
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