TOP > 国内特許検索 > 流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システム > 明細書

明細書 :流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5532220号 (P5532220)
公開番号 特開2011-163774 (P2011-163774A)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年6月25日(2014.6.25)
公開日 平成23年8月25日(2011.8.25)
発明の名称または考案の名称 流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システム
国際特許分類 G01P   5/00        (2006.01)
B63B   1/38        (2006.01)
B63B  49/00        (2006.01)
G01N  29/02        (2006.01)
FI G01P 5/00 A
B63B 1/38
B63B 49/00 B
G01N 29/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2010-023385 (P2010-023385)
出願日 平成22年2月4日(2010.2.4)
審査請求日 平成25年2月1日(2013.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】田坂 裕司
【氏名】村井 祐一
【氏名】武田 靖
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査官 【審査官】森 雅之
参考文献・文献 特開昭51-107872(JP,A)
調査した分野 G01P 5/
G01S 15/
G01N 29/
B63B 1/
B63B 49/

特許請求の範囲 【請求項1】
船舶の底部に取り付けられて前記底部周辺の流体をモニタリングする流体モニタリング装置であって、
超音波の送受信面が前記底部に沿った面に対して斜めになるように固定された複数の圧電式の超音波プローブを含むセンサ部と、
前記超音波プローブによって検出される信号を処理する信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、前記超音波プローブによって送受信された信号に基づいて、超音波エコー信号を解析し、超音波の伝搬路上における気泡の確率分布と、前記底部近傍の流速分布を計測する、
ことを特徴とする流体モニタリング装置。
【請求項2】
前記センサ部は、超音波を吸収する超音波吸収材料が充填された筐体を含む、
ことを特徴とする請求項1記載の流体モニタリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体モニタリング装置と、
前記底部に向けて気泡を噴出する気泡噴出機構とを備え、
前記信号処理部は、前記確率分布と前記流速分布とに基づいて前記気泡噴出機構における気泡の噴出タイミングを制御する、
ことを特徴とする船体摩擦抵抗低減システム。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記気泡噴出機構の気泡の噴出タイミングを所定の周期で所定の継続時間となるように制御する、
ことを特徴とする請求項記載の船体摩擦抵抗低減システム。
【請求項5】
前記流体モニタリング装置が複数個所に設けられている、
ことを特徴とする請求項又は記載の船体摩擦抵抗低減システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の速度を検出する流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶に働く摩擦抵抗を低減することを目的として、船底に気泡を生成するような仕組みが実現されている。特に、タンカーなどの大型船舶では、気泡生成により10%程度の摩擦抵抗低減効果が見込まれている。この場合、船体に特殊な塗装を施す技術に比較して、海洋汚染のおそれがなく環境に悪影響を及ぼすことがない。
【0003】
このような気泡生成にはそのための動力が必要である。例えば、2008年に海上技術安全研究所が行った実船による実験では、気泡生成により最大12%の摩擦抵抗低減効果が得られたものの、これから気泡注入のための動力を差し引いた正味の効果が5%となっている。このことから、この摩擦抵抗低減方法を実用化し普及させるためには、気泡生成に要する動力を低減して効率向上を図ることが必要とされている。
【0004】
気泡による摩擦抵抗低減方法の効率を向上させる技術としては、大きく分けて、気泡生成のための消費電力を低減する技術(第一の技術)と、生成した気泡が効果的に働くようにする技術(第二の技術)の二つがある。これらの技術によれば、気泡生成それ自体による摩擦抵抗低減の効率は上昇するものの、補助装置により船体自体の抵抗が増すため実用的ではない。
【0005】
例えば、上記第一の技術としては、船底に固定翼を取り付け、それを通過する水の流れにより負圧領域を形成し、気泡導入のための動力を低減する技術がある(下記特許文献1参照)。また、船舶推進用のエンジンから排出されるガスをそのまま船底に向けて噴出させることにより、気泡導入のための動力を軽減する技術も知られている(下記特許文献2参照)。また、スクリューを船体前方に取り付け、そこで巻き込まれる気泡を抵抗低減のために用いることも考えられている(下記特許文献3参照)。
【0006】
一方で、上記第二の技術としては、気泡が船体に沿って流れるように船体の形状を最適化することが知られている(下記特許文献4参照)。また、船底に設置したセンサによって気泡を検出して、気泡が最適状態となるように気泡の放出制御を行う技術がある(下記特許文献5参照)。さらには、気泡を船底に沿って流すためのガイドを船底に取り付けるような技術も開示されている(下記特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2008-273493号公報
【特許文献2】特開2001-97276号公報
【特許文献3】特開2008-24279号公報
【特許文献4】特開2007-246041号公報
【特許文献5】特開2004-188993号公報
【特許文献6】特開2008-114710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術においては、固定翼によって船舶全体の抵抗が増加し、摩擦抵抗低減の全体の効率が低下する傾向にある。また、上記特許文献2の技術では、海洋汚染が発生するだけではなく、エンジンそのものの出力を低下させる場合も考えられる。また、下記特許文献3の技術では、スクリューが気泡を巻き込むことにより、船体に与える推進力が低下する傾向にある。
【0009】
一方、上記特許文献4の技術は、既存の船舶に適用できないだけでなく、船舶形状の最適化にも限界があり、上記特許文献5の技術は、センサによる具体的な気泡のモニタ方法や放出制御の方法が明らかにされていないため、両者とも実現性が低い。また、上記特許文献6の技術は、ガイドの取り付けによって船体の抵抗が増加してしまうため、摩擦抵抗低減の効率が低下する傾向にある。
【0010】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、気泡生成の動力の低減と摩擦抵抗低減効果の向上とを両立させることが可能な流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の流体モニタリング装置は、船舶の底部に取り付けられて底部周辺の流体をモニタリングする流体モニタリング装置であって、超音波の送受信面が底部に沿った面に対して斜めになるように固定された複数の圧電式の超音波プローブを含むセンサ部と、超音波プローブによって検出される信号を処理する信号処理部と、を備え、信号処理部は、超音波プローブによって送受信された信号に基づいて、超音波エコー信号を解析し、超音波の伝搬路上における気泡の確率分布と、底部近傍の流速分布を計測する
【0012】
このような流体モニタリング装置によれば、センサ部に含まれる超音波プローブの送受信面が船舶の底部近傍の流体の進行方向に対して斜めに向くことになるので、センサ部によって流体の流れを乱して底部への抵抗を増大させることもなく、流体中の気泡の流れを乱して流体のセンシング結果に影響を及ぼすことも少ない。これにより、センサ部の信号を処理する信号処理部を用いて気泡生成を制御することで、摩擦抵抗低減効果を妨げることなく効率的な気泡生成を実現することができる。また、この場合、底部周囲の気泡の粗密分布および流れの速さに基づいて、適切な気泡の噴出タイミングが制御可能になり、効率的に摩擦抵抗を低減することができる。
【0013】
センサ部は、超音波を吸収する超音波吸収材料が充填された筐体を含む、ことが好適である。こうすれば、センサ部の内部での超音波の多重反射を抑制し、センサ部の検出信号に混入するノイズを低減することができる。その結果、正確な気泡生成の制御が実現される。
【0015】
或いは、本発明の船体摩擦抵抗低減システムは、上述した流体モニタリング装置と、底部に向けて気泡を噴出する気泡噴出機構とを備え、信号処理部は、確率分布と流速分布とに基づいて気泡噴出機構における気泡の噴出タイミングを制御する。
【0016】
このような船体摩擦抵抗低減システムによれば、流体モニタリング装置の処理結果を基に気泡生成を制御することで、摩擦抵抗低減効果を妨げることなく効率的な気泡生成を実現することができる。また、底部周囲の気泡の粗密分布および流れの速さに基づいて、適切な気泡の噴出タイミングが制御可能になり、効率的に摩擦抵抗を低減することができる。
【0017】
信号処理部は、気泡噴出機構の気泡の噴出タイミングを所定の周期で所定の継続時間となるように制御する、ことが好適である。この場合、任意の時間で計測した気泡の分布状態を元に、間欠的な気泡の吹き出しの周期の制御が可能になり、効率的に摩擦抵抗の低減効果を得ることができる。
【0018】
また、流体モニタリング装置を複数個所に設けられている、ことも好適である。こうすれば、船舶底部の広い範囲で気泡の粗密分布および流れの速さをモニタすることができ、その結果、より一層効果的に摩擦抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、気泡生成の動力の低減と摩擦抵抗低減効果の向上とを両立させることが可能な流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る流体モニタリング装置を模式的に示す側面図である。
【図2】図1の流体モニタリング装置を含む船体摩擦抵抗低減システムを模式的に示す側面図である。
【図3】図2の船体摩擦抵抗低減システムによる気泡噴出タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】水平矩形チャネルにおける水流を用いた周期的気泡注入による摩擦抵抗低減効果の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

【0022】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る流体モニタリング装置1を模式的に示す側面図である。この流体モニタリング装置1は、船舶の底部に配置されて底部の周辺における流体の速度分布や気泡の粗密分布をモニタリングするための装置である。

【0023】
同図に示すように、流体モニタリング装置1は、船舶の底部7の面に沿って固定された筐体2、及びその筐体2に挿入された1組の超音波プローブ3を有するセンサ部10と、超音波プローブ3によって検出された信号を処理する信号処理部4とを備えている。

【0024】
筐体2は、船舶の底部7近傍における流体や気泡の流れを乱さないように、底部7の底面7aに対して緩やかに傾斜する傾斜面2aが底部7の前方側端部及び後方側端部に形成されており、内部には超音波吸収材料5が充填されている。この超音波吸収材料5は、筐体2内部に向けて伝搬した超音波を吸収する役割を有し、例えば、ウレタン系合成ゴム等の樹脂材料やコルク等からなる。このような筐体2としては、底部7の形状に合わせて様々な形状及びサイズのものが使用可能であり、例えば、縦180mm、横15mm、高さ10mmのサイズのものが挙げられる。

【0025】
超音波プローブ3は、超音波を発生および検出する圧電素子を内蔵し、先端に形成された送受信面3aからこの送受信面3aにほぼ垂直な伝搬線Aに沿って超音波を送信すると同時に、伝搬線A上の周辺に存在する気泡8又は伝搬線A上の周辺の流体中に含まれる不純物からの超音波エコーを、送受信面3aにおいて受信する。この超音波プローブ3は、信号処理部4から送られた電気信号を圧電素子で機械振動に変換することにより送受信面3aで超音波を発生させるとともに、送受信面3aでの機械振動を圧電素子で電気信号に変換して、超音波エコー信号として信号処理部4に送出する。ここで、2つの超音波プローブ3は、その送受信面3aから伸びる伝搬線Aが、底部7近傍の流体の進行方向の沿った面(図1の紙面に沿った面)上で、底部7の境界線7aに対して斜めになるように、言い換えれば、送受信面3aが境界線7aに対して斜めになるように配置されている。このとき、隣接する2つの超音波プローブ3の伝搬線Aが成す角度は、一定角度となるように配置される。

【0026】
なお、超音波プローブ3の共振周波数および駆動用電気信号の周波数は、超音波ビームの直進性および波長を考慮すると、流体中の気泡存在確率分布の取得に適した500kHz~2MHzに設定されることが好ましい。また、超音波プローブ3の送受信面3aの径としては、流体中に生成する気泡の大きさ程度の5mm~20mm程度に設定することが好ましく、底部7周辺の流速をより正確に捉える観点からは、2つの超音波プローブ3の伝搬線Aの間の成す角は5度程度に設定することが好ましい。

【0027】
信号処理部4は、超音波プローブ3にリード線9を介して接続され、超音波を生成するための電気信号を発生させて超音波プローブ3に送出すると同時に、超音波プローブ3で検出された超音波エコー信号を受け取って処理する。具体的には、信号処理部4は、超音波エコー信号を解析することによって、伝搬線Aに沿った気泡確率分布、及び伝搬線A上の任意の点における伝搬線Aに沿った方向の流速を算出する。さらに、信号処理部4は、2つ以上の超音波プローブ3から得られた流速分布を基に、2成分の速度分布を算出することもでき、この2成分の算出結果から底部7からの所定の水深における底面7aに沿った方向の流速も算出することができる。

【0028】
図2は、上述した流体モニタリング装置1を含む船体摩擦抵抗低減システム20を模式的に示す側面図である。この船体摩擦抵抗低減システム20は、流体モニタリング装置1によるモニタリング結果を利用して気泡の生成を制御する制御システムである。

【0029】
同図に示すように、船体摩擦抵抗低減システム20は、船舶底部7の底面7aに所定の間隔をあけて配置された2つの流体モニタリング装置1と、船舶の船首7bの近傍に設けられて、船首7b側の側面7cから底面7aに向けて気泡を噴出する気泡噴出機構21とによって構成されている。また、2つの流体モニタリング装置1の信号処理部4(図1参照)は、気泡噴出機構21の気泡噴出のタイミング及び気泡噴出量を制御する。

【0030】
気泡噴出機構21は、船舶の船首7b側の側面7cに設けられて底面7aに気泡を噴出可能に配置された気泡噴出口21aと、気泡噴出口21aに空気を供給する気泡生成用ブロア22と、気泡噴出口21aと気泡生成用ブロア22との間に設けられて気泡生成用ブロア22から気泡噴出口21aへの気泡の導入経路を開閉する電磁弁21bとを有している。

【0031】
例えば、船体摩擦抵抗低減システム20の設置対象として、長さ120m、満載喫水約7.2m、幅21mの船舶を対象とした場合、気泡生成用ブロア22の性能としては、吹き出し圧100kPa、大気圧下での吸い込み流量22m3/minのものが使用される。

【0032】
流体モニタリング装置1の信号処理部4は、2つの流体モニタリング装置1で算出された複数方向の気泡確率分布及び複数方向の流速分布を利用して、気泡噴出機構21による気泡噴出を制御する。具体的には、信号処理部4は、複数方向の流速分布に基づいて、気泡を生成すべき底面7aの近傍領域の境界面Bの底面7aからの距離をリアルタイムで算出する。この距離は、底面7aにおける流速が零である層から、船舶の進行速度にまで変化する層までの距離を算出することで得られる。なお、一般的に、底面7aからこの境界面Bまでの領域が底部7に対して摩擦抵抗を生み出す要因となっており、この領域における気泡の流れが摩擦抵抗低減に寄与することになり、この領域を超えて存在する気泡は摩擦抵抗の低減には寄与せず無駄なものとなる。例えば、信号処理部4は、一般的な大型船を対象にした場合、底面7aから境界面Bまでの距離分布を10~30mm程度と算出する。同時に、信号処理部4は、得られた境界面Bまでの距離分布と、複数方向の気泡確率分布と、目標の摩擦抵抗低減値とを基にして、複数の超音波プローブ3の前面を通過する気泡が、底面7aから境界面Bまでの領域に所定の割合で収まるように、気泡の噴出量と気泡噴出タイミングをフィードバック制御する。

【0033】
ここで、図3には、気泡生成用ブロア22による電磁弁21bの開閉タイミングを示すタイミングチャートを示しており、同図におけるパルスがオンの状態が電磁弁21bが開かれた状態を示し、パルスがオフの状態が電磁弁21bが閉じられた状態を示している。このように、信号処理部4は、電磁弁21bの開閉が周期的、かつ断続的に行われるように、繰り返し周期T及び1周期中の開時間tinを所定時間間隔で設定し、その周期T及び開時間tinを示す信号を、リード線等の信号伝達手段23によって気泡生成用ブロア22に伝達する。それによって、気泡噴出機構21による気泡噴出タイミングが周期T、及び継続時間tinで制御される。同時に、信号処理部4は、気泡噴出の瞬時流量Qも所定時間間隔で設定し、その値を示す信号を気泡生成用ブロア22に伝達することによって瞬時流量も制御する。その結果、底部7近傍に気泡が周期的かつ断続的に噴出され、その気泡は底部7に沿って移流して粗密分布を形成する。

【0034】
以上説明した流体モニタリング装置1及び船体摩擦抵抗低減システム20によれば、センサ部10に含まれる超音波プローブ3の送受信面3aが船舶の底部7近傍の流体の進行方向に対して斜めに向くことになるので、センサ部10によって流体の流れを乱して底部7への抵抗を増大させることもなく、流体中の気泡の流れを乱して流体のセンシング結果に影響を及ぼすことも少ない。これにより、センサ部10の信号を処理する信号処理部4を用いて気泡生成を制御することで、摩擦抵抗低減効果を妨げることなく効率的な気泡生成を実現することができる。

【0035】
例えば、図3に示すような気泡噴出タイミングで制御された場合には、連続的な気泡注入に比較して、Q(T-tin)に相当する気泡噴出量を削減することができる。その結果、気泡噴出に関する動力削減量は、水面から気泡噴出口21aまでの深さをh、流体の密度をρ、重力加速度をgとすると、ρghQ(T-tin)と見積もられる。

【0036】
また、一般的に、連続的な気泡生成によって船底に注入された気泡は、船底に沿って移流するにつれて粗密分布を形成し、気泡濃度が小さい部分は摩擦抵抗低減に寄与しなくなるばかりか、摩擦抵抗を増加させる傾向にある。これに対して、本実施形態によれば、連続的な気泡注入のうちで抵抗低減に寄与しない無駄な気泡量を削減することができ、そのために必要な動力を低減することができる。その結果として、気泡注入による船体摩擦抵抗低減の効率を高めることができる。海上技術安全研究所による実験では、気泡生成による摩擦抵抗低減の正味の効果が5%となっているが、本実施形態では8%程度まで向上させることが可能であり、他の船体摩擦抵抗低減技術との組み合わせにより、正味の効果を実現可能な最大効果である12%に近づけることができる。

【0037】
また、本実施形態の船体摩擦抵抗低減システム20を構成するハードウェアは、気泡生成用装置に加えて電磁弁21bと流体モニタリング装置1を付加することで済むので、既存の船舶に対して比較的容易に導入することができる。

【0038】
図4は、全長6mの水平矩形チャネルにおける水流を用いた周期的気泡注入による摩擦抵抗低減効果の実験結果を示すグラフである。横軸は、平均の気泡体積率(ボイド率)α、縦軸は、気泡注入を行った場合の気泡注入を行わない場合に対する摩擦抵抗値の比τ/τであり、この値τ/τが1を下回れば抵抗低減効果があり、値τ/τが小さいほど抵抗低減効果が大きい。ここでの実験では気泡を吹き込む際の瞬時気泡量を常に一定とし、1周期中の気泡注入時間tinを様々変化させて、値τ/τと値αとの関係を測定している。また、気泡注入周期Tはおおよそチャネル内で疎密分布が現れる周期(2秒から5秒程度)である。この結果から分かるように、周期的な気泡注入により、どの条件においても気泡の連続注入の場合に比べて少ない平均ボイド率で同程度の低減効果が実現されている。また、連続注入では平均ボイド率が0.5%を下回った場合には逆に抵抗が増えているのに対して、周期的注入では抵抗が増えることはない。要するに、断続的な気泡注入であっても瞬時の注入気泡量が同じであれば連続注入と同程度の低減効果が保たれ、総気泡注入量を約2/3程度まで減少させることができる。

【0039】
また、センサ部10の筐体2には超音波吸収材料5が充填されているので、センサ部10の内部での超音波の多重反射を抑制し、センサ部10の検出信号に混入するノイズを低減することができる。その結果、正確な気泡生成の制御が実現される。

【0040】
また、船体摩擦抵抗低減システム20では流体モニタリング装置1を複数個所に設けられているので、船舶底部7の広い範囲で気泡の粗密分布および水流の流速をモニタすることができ、その結果、より一層効果的に摩擦抵抗を低減することができる。

【0041】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態の流体モニタリング装置1には、超音波プローブ3が3個以上備えられていてもよい。

【0042】
また、流体モニタリング装置1の設置箇所は特定箇所には限定されず、例えば、船舶の底部7の側面に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、流体の速度を検出する流体モニタリング装置およびそれを用いた船体摩擦抵抗低減システムに関し、気泡を用いた摩擦低減手法の効率を向上させることで、タンカーなど大型船舶に対して燃費の向上をもたらし、二酸化炭素の排出量を削減できる。
【符号の説明】
【0044】
1…流体モニタリング装置、2…筐体、3…超音波プローブ、3a…送受信面、4…信号処理部、5…超音波吸収材料、7…底部、7a…底面、8…気泡、10…センサ部、20…船体摩擦抵抗低減システム、21…気泡噴出機構、A…伝搬線(伝搬路)、T…気泡注入周期、tin…気泡注入時間(継続時間)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3