TOP > 国内特許検索 > レーザレーダ装置およびレーザ合成開口レーダ装置 > 明細書

明細書 :レーザレーダ装置およびレーザ合成開口レーダ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5686342号 (P5686342)
公開番号 特開2012-154863 (P2012-154863A)
登録日 平成27年1月30日(2015.1.30)
発行日 平成27年3月18日(2015.3.18)
公開日 平成24年8月16日(2012.8.16)
発明の名称または考案の名称 レーザレーダ装置およびレーザ合成開口レーダ装置
国際特許分類 G01S  17/32        (2006.01)
G01S  17/42        (2006.01)
G01S  17/89        (2006.01)
FI G01S 17/32
G01S 17/42
G01S 17/89
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2011-015915 (P2011-015915)
出願日 平成23年1月28日(2011.1.28)
審査請求日 平成26年1月27日(2014.1.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】犬竹 正明
【氏名】池地 弘行
【氏名】間瀬 淳
【氏名】近木 祐一郎
【氏名】佐藤 源之
個別代理人の代理人 【識別番号】110001210、【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
審査官 【審査官】須中 栄治
参考文献・文献 特開2000-338246(JP,A)
特開2011-017645(JP,A)
特開2006-177979(JP,A)
特表2005-515449(JP,A)
特開平03-075581(JP,A)
特表2008-513145(JP,A)
特開平09-281238(JP,A)
特開2006-090800(JP,A)
調査した分野 G01S7/00-7/51
G01S13/00-13/95
G01S17/00-17/95
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザ光の送信および受信によって目標物の情報を取得するレーザレーダ装置において、
時間変化に対し周波数が変化する検出用信号を生成する検出用信号生成部と、
前記検出用信号によってレーザ光を変調する変調部と、
前記変調部によって変調されたレーザ光を送信する送信部と、
レーザ反射光を受信する受信部と、
前記受信部によって受信されたレーザ反射光に対し復調を行う復調部と、
参照用信号と、前記復調部によって復調された復調信号とのタイミングを、前記レーダ装置の位置に応じて設定する遅延時間設定部と、
前記遅延時間設定部によってタイミングが調整された前記参照用信号を生成する参照用信号生成部と、
前記参照用信号と前記復調信号との差異を示す差異信号を生成する差異信号生成部と、
前記差異信号に基づいて、目標物の情報を取得する情報記録・処理部と、
自らの位置を測定する測位部と、を備え、
前記遅延時間設定部は、
前記測位部によって測定された位置と、予め定められた基準位置との間の距離に応じて、前記参照用信号を遅延させる遅延手段を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザレーダ装置において、
前記検出用信号は、
時間変化に対し周波数が線形に変化するチャープ変調信号であり、
前記差異信号生成部は、
前記遅延時間設定部によってタイミングが調整された前記参照用信号と、前記復調信号との周波数差を信号周波数とする信号を、前記差異信号として生成することを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項3】
飛翔体に搭載される請求項1または請求項2に記載のレーザレーダ装置において、
前記送信部は、
前記目標物が存在する方向にレーザ光が送信されるよう、前記飛翔体の位置に応じてレーザ光の送信方向を調整する送信方向調整手段と、
前記目標物が占有する領域がレーザ光のビームスポット範囲に含まれるよう、レーザ光のビーム発散角を調整するビーム発散角調整手段と、
を備え、
前記情報記録・処理部は、
前記差異信号に対してフーリエ変換処理を施すフーリエ変換手段と、
フーリエ変換処理が施された前記差異信号に基づいて前記目標物の位置情報または2次元画像情報を生成する情報生成手段と、
を備えることを特徴とする合成開口式のレーザレーダ装置。
【請求項4】
飛翔体に搭載される請求項1または請求項2に記載のレーザレーダ装置において、
前記目標物が占有する領域よりもレーザ光のビームスポット範囲が狭くなるようレーザ光のビーム発散角を調整するビーム発散角調整手段と、
レーザ光のビームスポットが前記目標物が占有する領域内を走査するよう、レーザ光の送信方向を変化させるレーザビーム走査手段と、
を備え、
前記情報記録・処理部は、
前記差異信号に対してフーリエ変換処理を施すフーリエ変換手段と、
フーリエ変換処理が施された前記差異信号に基づいて前記目標物の位置および距離情報、または3次元画像を生成する情報生成手段と、
を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレーザレーダ装置において、
前記情報記録・処理部は、
前記差異信号の位相に基づいて前記目標物の速度を求める速度算出手段を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレーザレーダ装置において、
前記変調部は、
前記検出用信号によってレーザ光を振幅変調する振幅変調回路を備え、
前記復調部は、
前記受信したレーザ光に対し包絡線検波を行う包絡線検波回路を備えることを特徴とするレーザレーダ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の送信および受信によって目標物の情報を取得するレーザレーダ装置およびレーザ合成開口レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星、飛行機等の飛翔体に搭載され、地形観測等を行うレーダ装置が広く用いられている。レーダ装置は、電磁波を送信し目標物からの反射電磁波を受信する。そして、送信電磁波および受信された反射電磁波との物理的関係に基づいて目標物までの距離、目標物の画像データ等を求める。
【0003】
レーダ装置には、パルス信号によって振幅変調が施された一定周波数の電磁波を送受信するパルスレーダ装置がある。パルスレーダ装置では、送信電磁波および受信された反射電磁波との時間関係に基づいて目標物までの距離等を求める。パルスレーダ装置の距離測定分解能は、パルス信号のパルス幅時間に依存し、パルス幅時間を短くすることで距離測定分解能を向上させることができる。しかし、パルス幅時間を短くすると受信電力が低下するため、目標物の観測が困難となることがある。
【0004】
そこで、送信する電磁波の周波数を予め定められた規則性を以て変化させる周波数変調波レーダ装置が考え出されている。周波数変調波レーダ装置は、送信している電磁波と、受信される反射電磁波との周波数差を信号周波数とする信号を求める。そして、そのような周波数差信号が目標物までの往復伝搬時間を示すことに基づき、目標物までの距離等を求める。
【0005】
周波数変調波レーダ装置では、同一地点で反射した電磁波の全周波数成分が重ね合わされる。これにより、パルスレーダ装置においてパルス幅時間を短縮した場合と同様の効果(パルス圧縮法)を得ることができる。そのため、周波数変調波レーダ装置によれば、距離測定分解能を向上させることができる。
【0006】
なお、図1(a)には、パルスレーダ装置について、送信パルス100(送信電磁波)と、反射パルス102(反射電磁波)との時間関係が示されている。パルスレーダ装置は、送信パルス100を送信してから時間Tr後に反射パルス102を受信する。そして、時間Trと電磁波の伝搬速度とに基づいて目標物までの距離を求める。図1(b)には、周波数変調波レーダ装置の一つであるマイクロ波周波数変調(チャープ)レーダ装置において扱われる信号の時間関係が示されている。マイクロ波周波数変調レーダ装置は、パルス幅時間がTpであり、時間変化に対して周波数が線形に変化する送信チャープ信号104を送信すると共に、送信開始から時間Tr後に反射チャープ信号106を受信する。マイクロ波周波数変調レーダ装置は、送信チャープ信号104と反射チャープ信号106とが重なる時間帯Tfにおいて、これらの周波数差信号である差異(デチャープ)信号を求める。マイクロ波周波数変調レーダ装置は、差異信号に基づいて目標物までの距離等を求める。
【0007】
レーダ装置では、送受信用の電磁波として、赤外線(波長が0.7μm~1mmの電磁波)の波長よりも長い波長を有する電磁波(以下、電波とする。)や、赤外線波長以下の波長を有する電磁波(以下、光とする。)が用いられる。以下の特許文献1~3には、電波を用いたレーダ装置について記載されている。また、特許文献4には、光を用いたレーダ装置について記載されている。なお、光を用いたレーダ装置は、レーザレーダ装置あるいはライダ装置とも称される。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平09-184880号公報
【特許文献2】特開平11-125673号公報
【特許文献3】特開平10-068774号公報
【特許文献4】特開平07-035857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
周波数変調レーダ装置は、電磁波の送信を開始してから反射電磁波を受信するまでの間、送信電磁波の周波数を変化させ続ける。そのため、送信電磁波の周波数を時間経過と共に単調増加または単調減少させる場合には、周波数変調レーダ装置から目標物までの距離が長い程、送信電磁波と反射電磁波との周波数差が大きくなり、周波数差信号の周波数が高くなる。これによって、例えば、周波数差信号に対する演算処理回路の処理可能周波数の上限が、周波数差信号の周波数よりも低い場合には、距離測定が困難となるという問題が生じる。すなわち、周波数変調レーダ装置には、測定可能な距離が演算処理回路の周波数特性によって制限されるという問題がある。
【0010】
また、周波数変調レーダ装置は、送信電磁波の一定時間内での周波数変化幅を大きくする程、距離測定分解能が向上する。しかし、周波数変化幅を大きくする程、送信電磁波の占有周波数帯域幅が広くなる。従来の周波数変調レーダ装置では、その原理に基づく制約から、送信電磁波として電波を用いている。したがって、周波数変調レーダ装置には、送信電磁波の占有周波数帯域が他システムの使用周波数帯域に重ならないようにするため、送信電磁波の周波数変化幅が制限され、距離測定分解能が制限されるという問題がある。
【0011】
本発明は、レーザレーダ装置において、測定可能距離を長くすると共に、距離測定分解能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、レーザ光の送信および受信によって目標物の情報を取得するレーザレーダ装置において、時間変化に対し周波数が変化する検出用信号を生成する検出用信号生成部と、前記検出用信号によってレーザ光を変調する変調部と、前記変調部によって変調されたレーザ光を送信する送信部と、レーザ反射光を受信する受信部と、前記受信部によって受信されたレーザ反射光に対し復調を行う復調部と、参照用信号と、前記復調部によって復調された復調信号とのタイミングを、前記レーダ装置の位置に応じて調整する遅延時間設定部と、前記遅延時間設定部によってタイミングが調整された前記参照用信号と前記復調信号との差異を示す差異信号を生成する差異信号生成部と、前記差異信号に基づいて、目標物の情報を記録、処理する情報記録・処理部と、自らの位置を測定する測位部と、を備え、前記タイミング調整部は、前記測位部によって測定された位置と、予め定められた基準位置との間の距離に応じて、前記検出用信号を遅延させた参照用信号を生成する手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るレーザレーダ装置においては、前記検出用信号は、時間変化に対し周波数が線形に変化するチャープ変調信号であり、前記差異信号生成部は、前記タイミング調整部によってタイミングが調整された前記参照用信号と、前記復調信号との周波数差を信号周波数とする信号を、前記差異(デチャープ)信号として生成することが好適である。
【0015】
また、本発明に係る、飛翔体に搭載されるレーザ合成開口レーダ装置においては、前記ビーム制御部は、前記目標物が存在する方向にレーザ光が送信されるよう、前記飛翔体の位置に応じてレーザ光の送信方向を調整する送信方向調整手段(ビーム制御部)と、前記目標物が占有する領域がレーザ光のビームスポット範囲に含まれるよう、レーザ光のビーム発散角を調整するビーム発散角調整手段(送信光学系)と、を備え、前記情報記録・処理部は、前記差異信号に対してフーリエ変換処理を施すフーリエ変換手段と、フーリエ変換処理が施された前記差異信号に基づいて前記目標物の位置情報または画像情報を記録し、生成する情報記録・生成手段、を備えることが好適である。
【0016】
また、本発明に係る、飛翔体に搭載されるビームスキャン型レーザレーダ装置においては、前記ビーム制御部は、前記目標物が占有する領域よりもレーザ光のビームスポット範囲が狭くなるようレーザ光のビーム発散角を調整するビーム発散角調整手段(送信光学系)と、レーザ光のビームスポットが前記目標物が占有する領域内を走査するよう、レーザ光の送信方向を変化させるレーザビーム走査手段(ビーム制御部)と、を備え、前記情報記録・処理部は、前記差異信号に対してフーリエ変換処理を施すフーリエ変換手段と、フーリエ変換処理が施された前記差異信号に基づいて前記目標物の位置情報または画像を記録、生成する情報記録・生成手段と、を備えることが好適である。
【0017】
また、本発明に係るレーザレーダ装置においては、前記変調部は、前記検出用信号によってレーザ光を振幅変調する振幅変調回路を備え、前記復調部は、前記受信したレーザ光に対し包絡線検波を行う包絡線検波回路を備えることが好適である。
【0018】
また、本発明に係るレーザレーダ装置においては、前記情報記録・処理部は、前記差異信号の位相変化率に基づいて前記目標物の速度を求める速度算出手段を備えることが好適である。
【0019】
本発明に係るレーザレーダ装置においては、一実施形態として、受信されたレーザ光から位相情報あるいは周波数スペクトラム情報を得ることで、動体の速度測定や合成開口測定が可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザレーダ装置において、測定可能距離を長くすると共に、距離測定分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のパルスレーダ装置、周波数変調マイクロ波レーダ装置、および本発明の実施形態に係るレーザレーダ装置におけるタイムシーケンスの比較を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【図3】検出用信号生成部から出力されるチャープ変調信号、復調部から出力される復調信号、およびタイミング調整部から出力されるチャープ変調信号の時間関係の例を示す図である。
【図4】レーザレーダ装置、観測領域、目標物、および基準位置の位置関係の例を示す図である。
【図5】レーザ合成開口レーダ装置の動作を説明する図である。
【図6】ビームスキャン型レーザレーダ装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2に本発明の実施形態に係るレーザレーダ装置10の構成を示す。このレーザレーダ装置10は、目標物を検出するための検出用信号によってレーザ光に変調処理を施し、変調処理が施されたレーザ光の送受信に基づいて目標物の情報を取得する。目標物の情報の取得は、検出用信号に応じた参照用信号と受信されたレーザ反射光から得られる復調信号との差異に基づいて行われる。レーザレーダ装置10は、後述のレーザ合成開口レーダ装置46、またはビームスキャン型レーザレーダ装置58としても用いられる。以下、具体的な構成および処理について説明する。

【0023】
信号生成部11における検出用信号生成部12は、検出用信号としてチャープ変調信号をレーザ発振・変調部14に出力する。ここで、チャープ変調信号は、パルス幅時間内において時間変化に対して線形に周波数が変化する周波数変調信号である。

【0024】
レーザ発振・変調部14はレーザ発振の原理に基づきレーザ光を生成すると共に、生成したレーザ光にチャープ変調信号によって振幅変調を施し、増幅部16に出力する。レーザ発振・変調部14は、波長が0.7μm~1mmの赤外線、波長が0.38μm~0.7μmの可視光線、または可視光線の波長より短い波長を有するレーザ光を出力してもよい。増幅部16は、レーザ発振・変調部14から出力されたレーザ光を増幅し、送信光学系17は増幅後のレーザ光のビーム発散角を制御し、観測対象の目標物に向けて送信する。

【0025】
受信光学系18は、送信光学系17から送信され目標物で反射したレーザ光を受信する。そして、受信したレーザ光の強度が後段の処理に必要な強度となるよう受信レーザ光を増幅し、復調部20に出力する。復調部20は、受信光学系18から出力されたレーザ光に対する復調処理を行う。復調部20は、包絡線検波回路を備えていてもよい。包絡線検波回路は、受信光学系18から出力されたレーザ光に対し包絡線検波を施し、それによって得られた復調信号を差異信号生成部22に出力する。

【0026】
信号生成部11における参照用信号生成部13は、レーザレーダ装置10の位置に基づいて求められた遅延時間Tdだけ遅れた参照用信号を発生させ、差異信号生成部22に出力する。なお、遅延時間Tdを求める処理については後述する。遅延時間Tdを考慮した処理を情報記録・処理部30が実行するため、遅延時間設定部24から情報記録・処理部30には、遅延時間Tdを示す情報が出力される。

【0027】
差異(デチャープ)信号生成部22は、復調信号と参照用信号生成部13から出力された参照用信号との周波数差を信号周波数とする周波数差信号を生成する。差異信号生成部22は、2つの入力信号を掛け合わせるミキサ回路、および、ミキサ回路よって生じる差周波数成分を抽出するフィルタ回路を備えていてもよい。差異信号生成部22は、周波数差信号を情報記録・処理部30に出力する。

【0028】
周波数差信号の周波数スペクトラムは、レーザ光の送受信方向に対し垂直の方向から見た目標物の像を示す。ただし、この周波数スペクトラムに基づく像は、遅延時間設定部24における遅延時間Tdに対応する周波数fdだけレーザレーダ装置10側に移動した像に相当する。この周波数fdは、チャープ変調信号の周波数変化率に遅延時間Tdを乗じたものである。そこで、情報記録・処理部30は、周波数差信号に対しフーリエ変換処理を施し、周波数差信号の周波数スペクトラムデータを生成する。そして、遅延時間設定部24から出力された遅延時間Tdおよびチャープ変調信号の周波数変化率に基づいて、周波数スペクトラムデータから周波数fdに基づく移動分を補正した目標物イメージデータを求める。情報記録・処理部30は、目標物イメージデータに基づいて、目標物までの距離、または目標物の像を表示部32に表示させる。また、周波数差信号の位相は目標物までの距離に比例して変化する。情報記録・処理部30は、所定の時間間隔で周波数差信号の位相の変化率から、動体である目標物の速度を算出する。

【0029】
図3は、(a)検出用信号生成部12から出力されるチャープ変調信号、(b)観測領域内の近い目標物からの反射波の復調信号、(c)遠い目標物からの反射波の復調信号、および(d)参照用信号生成部13から出力されるチャープ変調信号の時間関係の例を示す。横軸は時間を示し縦軸は信号レベルを示す。ただし、説明の便宜上、時間波形は時間軸方向に引き延ばしたものとしている。

【0030】
図3(a)に示すように、検出用信号生成部12からは、時刻t1から時刻t1+Tp1の間チャープ変調信号が出力される(検出用信号Det)。このチャープ変調信号は、パルス幅時間Tp1の間、時間変化に対し線形に周波数が増加する。また、図3(b)および(c)に示すように、それぞれ、時刻t1から往復伝搬時間Tr2、Tr3が経過した時刻t2、t3に、復調部20から復調信号が出力される(反射復調信号NおよびF)。ここで、往復伝搬時間Tr2およびTr3は、レーザレーダ装置10と、近い目標物および遠い目標物との間をレーザ光が往復する時間である。ただし、この往復伝搬時間Tr2およびTr3には、検出用信号生成部12から送信光学系17に信号が到達するまでの時間、および受信光学系18から差異信号生成部22に信号が到達するまでの時間が含まれる。この復調信号は、目標物の位置および形状に応じてチャープ変調信号の波形が変形した信号となる。さらに、図3(d)に示すように、時刻t1から遅延時間Tdが経過した時刻t4=t1+Tdに、参照用信号生成部13からは遅延処理後のチャープ変調信号が出力される(参照用信号Ref)。このチャープ変調信号のパルス幅時間Tp2は、検出用信号生成部12から出力されるチャープ変調信号と同じTp1か、それ以上である(図1(c)参照)。

【0031】
復調信号および遅延処理後のチャープ変調信号が共に差異信号生成部22に入力される同時入力時間帯Tf(図3(b)、(c)、および(d)において、これらの信号が重なる時間帯)、すなわち、時刻t3から時刻t2+Tp1までの間、差異信号生成部22から情報記録・処理部30に周波数差信号が出力される。

【0032】
図3(b)、(c)、および(d)から明らかなように、遅延処理後の参照用信号Refが、復調信号と重なる部分がない場合には、同時入力時間帯Tfが生じない。この場合、情報記録・処理部30は目標物の観測を行うことが困難となる。そこで、同時入力時間帯Tfを生じさせるための設定項目について以下に説明する。

【0033】
同時入力時間帯Tfが生じるか否かは、復調部20から復調信号が出力される時刻t2、t3、参照用信号Refが出力される時刻t4、および参照用信号Refのパルス幅時間Tp2の時間関係に基づいて定まる。このうち、時刻t2およびt3は、レーザレーダ装置10と目標物との間の距離に応じて定まる時刻であり、観測状況に応じて変化する時刻である。そのため、本実施形態では、時刻t2およびt3は同時入力時間帯Tfを生じさせるための設定項目としないものとする。したがって、時刻t4またはパルス幅時間Tp2が同時入力時間帯Tfを生じさせるための設定項目となり得る。

【0034】
そこで、本実施形態においては、遅延時間設定部24でレーザレーダ装置10の位置に応じて遅延時間Tdを求め、参照用信号生成部13で遅延時間Tdだけ遅延した参照用信号Refを生成する。

【0035】
図4に、レーザレーダ装置10、目標物38、および基準位置40の位置関係の例を示す。観測条件の一つの例として、目標物38は地上に存在し、レーザレーダ装置10は、一定の高度で直進飛行する飛翔体に搭載されるものとする。遅延時間Tdの決定は、これらの位置関係に基づいて行うものとする。ここで、基準位置40は、ユーザの操作等によって予め設定される仮想上の位置である。基準位置40は、目標物38の位置またはその付近に指定する。ここで、目標物38の付近とは、以下の処理に基づいて同時入力時間帯Tfを生じさせることが可能な範囲を指す。基準位置40は、レーザレーダ装置10と目標物38との間の距離が長くなる程、レーザレーダ装置10からの距離が長くなるよう決定することが好ましい。

【0036】
遅延時間設定部24は、レーザレーダ装置10の位置と予め定められた基準位置40との間の距離DOを求め、求められた距離DOの2倍の距離2・DOをレーザ光が伝搬する時間だけ、チャープ変調信号を遅延させる。なお、参照用信号Refの時間幅Tp2は、図3のように、観測領域内の遠近すべての目標物からの反射信号パルスと重なるように、検出用信号パルス幅Tp1に比べて少し長くする。これは、図1(c)に示すように、参照用信号Refの周波数チャープ幅を少し広くすることに対応する。

【0037】
遅延時間Tdを設定するための具体的な構成および処理について説明する。レーザレーダ装置10は測位部26および情報入力部28を備える。測位部26は、全地球測位システム(GPS)と加速度と角度を検知する慣性センサ(IMU)を備え、レーザレーダ装置10の位置情報を取得する。測位部26は、位置情報を遅延時間設定部24に出力する。情報入力部28は、基準位置を示す基準位置情報(デジタル空間位置情報)をユーザの操作に基づいて取得し、基準位置情報を遅延時間設定部24に出力する。なお、情報入力部28は、ユーザの操作に基づいて情報を取得する他、パーソナルコンピュータ等、他の情報処理装置から情報を取得してもよい。

【0038】
遅延時間設定部24は、レーザレーダ装置10の位置情報および基準位置情報に基づいて、レーザレーダ装置10の位置と基準位置との間の距離DOを求め、遅延時間Tdを求め、参照用信号生成部13の遅延時間Tdを設定する。参照用信号生成部13は、検出用信号より遅延時間Tdだけ遅延した参照用信号Refを生成し、差異信号生成部22に出力する。なお、遅延時間設定部24は、遅延時間Tdを示す情報を情報記録・処理部30に出力する。

【0039】
図1(c)には、レーザレーダ装置10において扱われる信号の時間関係が示されている。レーザレーダ装置10は、検出用信号Detを光として送信すると共に、送信開始から時間Tr後に反射復調信号(NまたはF)を受信する。また、レーザレーダ装置10は、検出用信号Detの送信開始から時間Td後に、参照用信号生成部13から参照用信号Refを出力する。レーザレーダ装置10は、反射復調信号と参照用信号Refとが重なる時間帯Tfにおいて、これらの周波数差信号110を求める。レーザレーダ装置10は、周波数差信号110に基づいて目標物に関する情報を取得する。

【0040】
本実施形態によれば、移動するレーザレーダ装置と基準点との距離を時々刻々測定し、遅延時間Tdを高精度に決定できる。このため、比較的短い時間幅Tp2を有する参照用信号Refでも、図1(d)に示すように、遠距離の目標物からの反射信号との同時入力時間帯Tfを正確に設定することができる。

【0041】
したがって、検出用チャープ変調信号の周波数は高くても差異周波数を低く抑えることができ、デジタルサンプリング周波数が低くても高分解能の距離測定・画像生成が可能となる。

【0042】
また、距離測定・画像生成に無効なデータを余分に記録する必要がなくなり、情報記録・処理部30への負担を大幅に軽減できる。

【0043】
さらに、本実施形態では、送信ビームは電波ではなくレーザ光である。したがって、電波を用いる他システムとの干渉を回避することができ、チャープ変調信号の周波数変化幅を広げることで、距離測定分解能を向上させることができる。

【0044】
次に、本発明の応用例について説明する。レーザ合成開口レーダ装置46は、図2に示すレーザレーダ装置10と同様の構成を有する。レーザ合成開口レーダ装置46は、ヘリコプター、飛行機等の飛翔体に搭載され、飛翔体と共に空中を移動しつつ、地上における一つの観測領域にレーザ光を照射し反射光を受信する。図5は、移動する飛翔体52から送信されたレーザ光のビームスポット54が、同一の観測領域56(観測中心位置C、ビームスポット径D)に照射される様子を示す。レーザ合成開口レーダ装置46は、同一の観測領域56について、複数の異なる方向からレーザ光を照射して得られた情報を用い、その観測領域56の2次元画像データを生成する。このような構成では、飛翔体52の飛行軌跡42上に複数の送信光学系17を配列し、これによって受信される反射光を合成した場合と同様の結果が得られる。そのため、このようなレーザレーダ装置は、「合成開口」式のレーザレーダ、あるいはレーザ「合成開口」レーダ装置と称される。

【0045】
レーザ合成開口レーダ装置46の具体的な構成および処理について図2を参照して説明する。レーザ合成開口レーダ装置46は、レーザ発振・変調部14から出力されたレーザ光を増幅する増幅器16とビーム発散角を制御する送信光学系17、および、レーザ光の送信方向を制御するビーム制御部34を備える。

【0046】
情報入力部28は、観測領域56の中心位置を示す観測中心情報、および観測領域56の直径を示す観測径情報をユーザの操作等に基づいて取得する。情報入力部28は、観測中心情報および観測径情報をビーム制御部34に出力する。測位部26は、レーザ合成開口レーダ装置46の位置情報をビーム制御部34に出力する。

【0047】
ビーム制御部34は、レーザ光の送信方向を調整するジンバル機構を備える。ビーム制御部34は、レーザ合成開口レーダ装置46の位置情報および観測中心情報に基づいて、観測中心情報が示す位置にビームスポット54の中心が近づくよう、レーザ光の方向を調整する。また、送信光学系17は、レーザ合成開口レーダ装置46の位置情報、観測中心情報および観測領域の広さ情報に基づいて、観測領域56がビームスポット範囲に含まれるようレーザ光のビーム発散角を調整する。

【0048】
情報入力部28は、ビーム制御部34の他、遅延時間設定部24にも観測中心情報を出力する。遅延時間設定部24は、観測中心情報で示される位置を上述の基準位置として遅延時間Tdを求める。

【0049】
レーザ合成開口レーダ装置46を搭載する飛翔体52が空中を移動し、ビーム制御部34がこのような処理を実行している間、情報記録・処理部30は、同一の観測領域56について複数の目標物イメージデータを取得する。そして、その複数の目標物イメージデータを合成し、観測領域56の2次元画像データを生成する。これによって、一つの観測領域56について、複数の異なる方向からレーザ光を照射して得られた情報に基づく2次元画像データが生成される。情報記録・処理部30は、2次元画像データに基づく画像を表示部32に表示させる。また、情報記録・処理部30は、2次元画像データを所定の時間間隔で生成し、観測領域56の動画像データを生成してもよい。さらに、情報記録・処理部30は、所定の時間間隔で周波数差信号の位相情報を取得し、観測領域56内にある動体の速度を算出してもよい。

【0050】
本応用例に係るレーザ合成開口レーダ装置46によれば、飛翔体52の進行方向に平行な方向(アジマス方向)については、飛翔体52の飛行軌跡42上に複数の送信光学系17を配列した場合と同様の効果が得られる。これによって、アジマス方向についての距離測定分解能を向上させることができる。さらに、飛翔体52の進行方向に垂直な方向(レンジ方向)については、図2に示したレーザレーダ装置と同様のパルス圧縮の原理により、レンジ方向の距離測定分解能を向上させることができる。

【0051】
レーザ合成開口レーダ装置46の具体例を以下に示す。チャープ変調信号としては、パルス幅時間が10マイクロ秒で、周波数が31GHzから39GHzまで変化するマイクロ波信号を用いる。距離(レンジ)1kmにある目標物を、飛翔体52が200m飛行して観測すると、アジマス方向およびレンジ方向の空間分解能が、それぞれ、0.02mおよび0.02mとなる。

【0052】
次に、第2の応用例に係るビームスキャン型レーザレーダ装置について説明する。図2のビーム制御部34の構成を変更することで、図5に示すレーザ合成開口レーダ装置46に基づき、図6に示すビームスキャン型レーザレーダ装置58を構成することができる。

【0053】
本応用例では、図6に示すように、観測領域60に照射されるレーザ光のビームスポット径(D)を、観測領域60よりも狭く絞る。そして、送信するレーザ光のビームが飛翔体52の進行方向(トラック方向)に対して垂直な面内で走査されるよう、レーザ光の送信方向を変化させる。図6の矢印62は、トラック方向を示し、矢印64は、ビームスポット54の走査方向を示す。遅延時間設定部24が遅延時間Tdを設定するために定められる基準位置は、例えば、ビームスキャン型レーザレーダ装置58直下の地上の位置に設定する。

【0054】
情報入力部28は、レーザビームの走査角を示す走査角情報、ビームスポット54の直径を示すスポット径情報をユーザの操作等に基づいて取得する。情報入力部28は、走査角情報およびスポット径情報をビーム制御部34に出力する。また、測位部26は、ビームスキャン型レーザレーダ装置58の位置情報をビーム制御部34に出力する。

【0055】
ビーム制御部34は、走査角情報が示す角度範囲内で、飛翔体52の進行方向に対して垂直な面内でビームが走査されるよう、送信するレーザビームの方向を変化させる。また、ビーム制御部34は、ビームスキャン型レーザレーダ装置58の位置情報およびスポット径情報に基づいて、地上におけるビームスポット54の直径がスポット径情報で示される直径に近づくよう、送信光学系17から送信されるレーザ光のビーム発散角を調整する。

【0056】
ビームスキャン型レーザレーダ装置58を搭載する飛翔体52が空中を移動し、ビーム制御部34が予め定められた回数だけビームスポット54の走査を行う毎に、遅延時間設定部24は、測位部26から出力された位置情報と基準位置に基づいて遅延時間Tdを求め、その遅延時間Tdに基づいて参照用信号Refを発生する。

【0057】
また、情報記録・処理部30は、レーザ光が送受信される毎に目標物の3次元空間位置データを取得する。そして、その複数の目標物の3次元空間データを再構成し、観測領域60の3次元画像データを生成する。情報記録・処理部30は、3次元画像データに基づく画像を表示部32に表示させる。

【0058】
本応用例に係るビームスキャン型レーザレーダ装置58によれば、距離測定分解能を向上させることができる。

【0059】
本応用例に係るビームスキャン型レーザレーダ装置58の具体例を以下に示す。チャープ変調に31GHzから39GHzまで変化するマイクロ波信号を用いると、高さ(レンジ)方向に0.02mの分解能が得られる。また、レーザ発振・変調部14において発振させるレーザ光の波長λは1.5μmとする。直径d=0.09mの集光系を用いた場合、距離(レンジ)R= 500mにおけるレーザビームスポット54径Dは回折限界から次のように決まる。
D=2.44・R・λ/d
=2.44×5×102×1.5×10-6/(9×10-2)=0.02m
したがって、飛翔体52の進行方向に平行な方向(トラック方向)および垂直な方向(クロストラック方向)の空間分解能、および高さ(レンジ)方向の距離測定分解能が0.02mとなる3次元空間データを得ることができる。

【0060】
本装置は移動体の位置および速度検出装置としても使用できる。なお、上記の実施形態および応用例では、送信電磁波としてレーザ光を用いている。送信電磁波としては、光の代わりに電波を用いてもよい。この場合、レーザ発振・変調部14を不使用にし、レーザ増幅器と送信光学系・受信光学系の代わりに、検出用信号を増幅する電波増幅器と送受信アンテナ系を用いればよい。ただし、電波のチャープ周波数幅は電波法の制限条件があるため、空間分解能はその制限条件に応じたものとなる。
【符号の説明】
【0061】
10 レーザレーダ装置、11 信号生成部、12 検出用信号生成部、13 参照用信号生成部、14 レーザ発振・変調部、16 レーザ増幅器、17 送信光学系 18 受信光学系、20 復調部、22 差異信号生成部、24 遅延時間設定部、26 測位部、28 情報入力部、30 情報記録・処理部、32 表示部、34 ビーム制御部、38 目標物、40 基準位置、42 飛行軌跡、44 仮想平面、46 レーザ合成開口レーダ装置、52 飛翔体、54 ビームスポット、56,60 観測領域,58 ビームスキャン型レーザレーダ装置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5