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明細書 :極細フィラメントの製造方法及び製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5407089号 (P5407089)
登録日 平成25年11月15日(2013.11.15)
発行日 平成26年2月5日(2014.2.5)
発明の名称または考案の名称 極細フィラメントの製造方法及び製造装置
国際特許分類 D02J   1/22        (2006.01)
D02J  13/00        (2006.01)
D04H   3/16        (2006.01)
D04H   3/016       (2012.01)
B32B   5/26        (2006.01)
FI D02J 1/22 ZNMJ
D02J 1/22 ZBPL
D02J 13/00 D
D04H 3/16
D04H 3/016
B32B 5/26
請求項の数または発明の数 21
全頁数 24
出願番号 特願2008-553098 (P2008-553098)
出願日 平成20年1月9日(2008.1.9)
国際出願番号 PCT/JP2008/050103
国際公開番号 WO2008/084797
国際公開日 平成20年7月17日(2008.7.17)
優先権出願番号 2007000964
2007227981
優先日 平成19年1月9日(2007.1.9)
平成19年9月3日(2007.9.3)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成22年12月14日(2010.12.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 章泰
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100116090、【弁理士】、【氏名又は名称】栗原 和彦
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】長谷山 健
参考文献・文献 特開2004-107851(JP,A)
特表2006-506171(JP,A)
特表2005-520068(JP,A)
特開2006-057228(JP,A)
特開2006-225837(JP,A)
調査した分野 D02J 1/00- 13/00
D04H 1/00- 18/04
B32B 1/00- 43/00
特許請求の範囲 【請求項1】
フィラメントの送出手段により送り出された原フィラメントが、P1気圧下でオリフィスに供給され、該オリフィスの前後における気圧の差が、P1≧2P2であるP2気圧下の延伸部に導かれ、該延伸部において赤外線光束により加熱されて延伸されることによる、極細フィラメントの製造方法。
【請求項2】
前記延伸における延伸倍率が10,000倍以上であり、延伸後のフィラメント径が1μm未満である請求1のナノフィラメントの製造方法。
【請求項3】
前記延伸における前記P2気圧が減圧下(101.3kPa未満)である請求1のナノフィラメントの製造方法。
【請求項4】
前記延伸における前記オリフィス内の風速が342m/sec以上である請求1のナノフィラメントの製造方法。
【請求項5】
前記フィラメントの延伸が前記オリフィスの出口より30mm以下の近距離で行われる請求1の極細フィラメントの製造方法。
【請求項6】
前記赤外線光束が、前記原フィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って上下4mm以内の範囲で加熱される請求1の極細フィラメントの製造方法。
【請求項7】
前記オリフィスの出口部における内径がDであり、前記原フィラメントの径がdとした場合、1.2d<D<10dである請求1の極細フィラメントの製造方法。
【請求項8】
前記延伸されたフィラメントが走行するコンベア上に集積されることによる請求1の極細フィラメントからなる不織布の製造方法。
【請求項9】
前記延伸されたフィラメントが走行する布状物上に集積されることによる請求1の極細フィラメントの集積体と該布状物の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記延伸されたフィラメントが連続的に巻き取られていく請求1の極細フィラメントの製造方法。
【請求項11】
原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、
該原フィラメント供給室に配設されており、該原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、
該オリフィスによって該原フィラメント供給室と接続されており、該オリフィスを通過してきた該原フィラメントが赤外線光束により加熱されることによって延伸される該オリフィスの前後におけるP1とP2の気圧の差が、P1≧2P2であるP2気圧下の延伸室と、
該赤外線光束を放射する赤外線照射装置と、
を具備している、極細フィラメントの製造装置。
【請求項12】
前記オリフィス内の風速が342m/sec以上であるように圧力差が設けられている請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項13】
前記原フィラメント供給室が大気下にあり、前記延伸室が減圧下にある請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項14】
前記赤外線光束照射装置から照射される光束の中心が、前記オリフィスの出口より30mm以内で前記原フィラメントに焦点が合うように構成されている請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項15】
前記赤外線光束照射装置から照射される光束が、前記原フィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って上下4mm以内の範囲に焦点が合うように構成されている請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項16】
前記赤外線光束がレーザー光であり、前記赤外線照射装置がレーザー発振装置である請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項17】
前記赤外線照射装置が、同一光束を反射させて、前記原フィラメントに複数箇所から該原フィラメントに照射させるための鏡を有する、請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項18】
前記赤外線照射装置が、複数の箇所から前記原フィラメントに照射させる複数の光源を有する、請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項19】
前記オリフィスの出口における内径がDであり、前記原フィラメントの径がdとした場合、1.2d<D<10dである請求項11の極細フィラメントの製造装置。
【請求項20】
前記延伸室に走行しているコンベアが設けられており、該コンベア上に前記延伸されたフィラメントが集積されるように構成されている請求項11の極細フィラメントからなる不織布の製造装置。
【請求項21】
前記延伸室にフィラメント巻取装置が具備されている請求項11の極細フィラメントの製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、極細フィラメントの製造方法、製造装置およびそれらによって得られるナノフィラメントに関し、特に赤外線光束を照射して超高延伸倍率を行うことにより、ナノフィラメントに至るまでに極細化を可能にした、極細フィラメントの製造手段およびそれによって得られたナノフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維軽が1μm未満、すなわちナノメータ(数ナノメータから数百ナノメータ)範囲のファイバーが、IT、バイオ、環境分野などの幅広い分野で将来の革新的素材になると注目されている。そして、そのナノファイバーの製造手段として、エレクトロスピニング法(以下ES法と略す場合がある)が代表的である(米国特許第1,975,504号、You Y., et, al Journal of Applied Polymer Science、vol.95、p.193-200、2005年)。しかしこのES法は、ポリマーを溶剤に溶解する必要があることや出来た製品も脱溶剤が必要であることから、製法において煩雑であり、また、フィラメントの分子配向がないこと、出来たファイバー集積体にダマやショットと呼ばれる樹脂の小さい固まりが混在するなど、品質的にも問題点が多かった。
本発明人は、赤外線法により、分子配向を伴って、1,000倍以上という超高倍率の延伸倍率で極細フィラメントおよび不織布を得る手段について発明を行った(特開2003-166115、特開2004-107851、国際公開番号WO2005/083165A1、鈴木章泰、他1名 「Journal of Applied Polymer Science」、vol.88、p.3279-3283、2003年、鈴木章泰、他1名 「Journal of Applied Polymer Science」、vol.92、p.1449-1453、2004年、鈴木章泰、他1名 「Journal of Applied Polymer Science」、vol.92、p.1534-1539、2004年)。これらは、簡便な手段で、極細の分子配向したフィラメントおよびそれからなる不織布が得られた。本発明は、これらを発展させ、さらにナノフィラメントの領域までに極細化を可能にした、極細フィラメントを連続して安定した製造を可能にする手段に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記本発明人の従来技術をさらに発展させたものであって、その目的とするところは、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で容易にナノフィラメント領域に至る極細フィラメントからなるフィラメントおよびその集積体である不織布を得ることができるようにすることにある。さらに本発明は、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリ乳酸やポリグリコール酸などの生分解性ポリマー、およびテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素系ポリマーなどからなる太いフィラメントより、本発明の製造手段によって得られるナノフィラメントに関し、それらはメディカル用やフィルターなど多方面の用途に使用される不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、原フィラメントが延伸されることによって、ナノフィラメントの領域までに極細化される延伸方法及び装置を提供するものである。本発明における原フィラメントとは、既にフィラメントとして製造されて、リール等に巻き取られたものである。また紡糸過程において、溶融または溶解フィラメントが冷却や凝固によりフィラメントとなったものを紡糸過程に引き続き使用され、本発明の原フィラメントとなる。ここでフィラメントとは、実質的に連続した繊維であり、数ミリメータから数十ミリメータの長さである短繊維とは区別される。原フィラメントは、単独で存在することが望ましいが、数本ないし数十本に集合されていても使用することができる。
本発明において延伸されたフィラメントは、全てフィラメントと表現するが、延伸された結果、上記ファイバーの領域に属するものも含まれる。本発明における延伸されたフィラメントは、殆どの場合、延伸切れすることなく数分以上延伸されるので、フィラメントの長さも数m以上であり、フィラメント径dが小さいことを考慮すると、実質的の連続フィラメントと見なすことができる場合が殆どである。しかし、条件によっては、上記ファイバーの領域に属する短繊維も製造することができる。
【0005】
本発明におけるフィラメントは、一本のフィラメントからなるシングルフィラメントである場合と、複数のフィラメントからなるマルチフィラメントである場合が含められる。一本のフィラメントにかかる張力等では、「単糸あたり」と表現するが、一本のフィラメントでは、「その一本のフィラメントあたり」を意味し、マルチフィラメントでは、それを構成する「個々のフィラメント一本あたり」を意味する。
本発明における原フィラメントは、複屈折で測定した配向度が30%、あるいは50%以上といった、高度に分子配向したフィラメントでも使用できることに特徴があり、このような高度に配向した原フィラメントからでも、数百倍といった超高延伸倍率が実現できる点においても、他の延伸法と際だって異なる点である。このように原フィラメントが高配向している場合は、延伸開始点において、原フィラメント径以上の膨張部をもって延伸されることが多い。
【0006】
本発明の原フィラメントは、ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステルおよびポリエチレンナフタレートを含むポリエステル、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)を含むポリアミド、ポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを含むフッ素系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオキシメチレン、エーテルエステル系ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなるフィラメントであれば使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)、ポリプロピレンは、延伸性もよく、分子配向性もよく、本発明の極細フィラメントや極細フィラメントからなる不織布の製造に特に適する。また、ポリ乳酸やポリグリコール酸等の生分解性ポリマーや生体内分解吸収性ポリマー等、さらにポリアリレートやアラミド等の高強度、高弾性ポリマーなども本発明の赤外線ビームによる延伸性もよく、本発明による極細フィラメントや極細不織布の製造に特に適する。また原フィラメントには、これらのポリマーからなる芯鞘型フィラメントなどの複合フィラメントも使用することができる。なお、上記ポリマーを85%(重量パーセント)以上含む場合は、ポリエステル「系」やポリエステルを「主成分」とするなどと表現する場合がある。
【0007】
本発明においは、フィラメントの送出手段から送り出された原フィラメントについて延伸が行われる。送出手段は、ニップローラや数段の駆動ローラの組み合わせなどの一定の送出速度でフィラメントを送り出すことが出来るものであれば種々のタイプのものが使用できる。また、一定長さのフィラメントだけを延伸したい場合は、原フィラメントをチャックで把持し、一定速度で下降させてオリフィスに供給してもよい。
フィラメントの送出手段より送り出された原フィラメントは、さらにオリフィスを通して、オリフィス中を原フィラメントの走行方向に流れる気体によって送られる。原フィラメントがこのフィラメント送出手段を経てオリフィスに送り込まれるまでは、P1気圧の雰囲気下で行われ、P1気圧下の状態に保たれている場所を原フィラメント供給室とする。P1が大気圧のときは、特に圧力を一定にする囲いは必要ない。P1が加圧下や減圧下の場合は、その圧力を保つための囲い(部屋)が必要であり、加圧ポンプまたは減圧ポンプも必要となる。なお本発明では、オリフィス入口部がP1であることが必要であるが、原フィラメントの貯蔵部、原フィラメントの送り出し部分は、必ずしもP1気圧である必要はない。しかし、それらを別々の部屋を設けるのは煩雑であるので、それらの部分が同一気圧であることが好ましい。
【0008】
オリフィスの出口以降は、P2気圧下に保たれ、オリフィスから出てきた原フィラメントを赤外線光束によって加熱することによって延伸される延伸室となる。原フィラメントは、P1気圧の原フィラメント供給室とP2気圧下の延伸室との圧力差(P1-P2)によって生じるオリフィス中を流れる空気の流れによってオリフィス中を送られていく。P2が大気圧のときは、特に圧力を一定にする囲いは必要ないが、P2が加圧下や減圧下の場合は、その圧力を保つための囲い(部屋)が必要であり、加圧ポンプまたは減圧ポンプも必要となる。
P1とP2の気圧の差は、P1>P2である。そして、実験の結果、P1≧2P2であることが好ましく、さらに好ましくはP1≧3P2、P1≧5P2であることが最も好ましいことがわかった。
【0009】
本発明は、P2が減圧下(大気圧未満の圧力)で行われることが特に望ましい。そうすることにより、P1を大気圧で実施でき、装置を著しく簡便に出来、また、減圧は比較的簡便な手段であるからである。さらに、オリフィスからエアーが減圧下に噴出されることにより、通常存在する大気圧のエアーに邪魔されることないので、噴出されるエアーも、それに伴うフィラメントも非常に安定し、その結果、延伸性が安定し、ナノフィラメント領域までの延伸が可能になるものと思われる。また、また、通常、ノズルから高速流体が噴出すると、ノズルの周りで多量の随伴流を伴うが、減圧下では、この随伴流も少なくなり、ノズルから出たフィラメントの流れを乱さないために、安定した延伸を可能にするものと思われる。このような簡便な手段で、ナノミクロン領域のフィラメントが得られることに本発明の特徴がある。
なおP1またはP2は、通常室温の空気が使用される。しかし、原フィラメントを予熱したい場合や、延伸したフィラメントを熱処理したい場合は、加熱エアーが使用される。また、フィラメントが、酸化されるのを防ぐ場合は、窒素ガス等の不活性ガスが使用され、水分の飛散を防ぐ場合は、水蒸気や水分を含む気体も使用される。
【0010】
本発明における原フィラメント供給室と延伸室は、オリフィスによってつながっている。オリフィス中では、原フィラメントとオリフィス内径との間の狭い隙間にP1>P2の圧力差で生じた高速気体の流れが生じる。この高速気体の流れを生じるために、オリフィスの内径Dと繊維の径dとは、あまり大きくかけはなれてはいけない。実験結果、D>1.2dであって、D<10d、好ましくはD>1.5dであって、D<7d、さらに好ましくはD<5dであってD>2dであることが最も好ましい。フィラメント径に比較し、あまり大きなノズル径では、ノズルを流れる風速も大きくならず、またP2の気圧もあまり小さくならないためと思われる。また、フィラメント径に比較し、ノズル径があまり近接すると、空気流に抵抗が生じ、ノズルを流れる風速が上がらないためと思われる。また上記の好ましい範囲から外れるにしたがい、延伸されたフィラメント径が大きくなるばかりでなく、フィラメント径のバラツキも大きくなり、ダマも生じやすくなる。
上記におけるオリフィス内径Dは、オリフィスの出口部における径をいう。但し、オリフィス断面が円では無い場合、一番狭い部分の径をDとする。同様に、フィラメントの径も、断面が円ではない場合、一番小さい径の値をdとし、断面の最も小さい箇所を基準に10カ所を測定して算術平均する。なお、オリフィスの出口は、通常、原フィラメントが上から下へ通過するので、縦に配置されたオリフィスの下方が出口となるが、下から上へ原フィラメントが通過する場合は、オリフィスの上方に出口がある。同様に、オリフスが横に配置されて、原フィラメントが横方向に通過する場合は、オリフィスの横方向に出口がある。
【0011】
上記のように、オリフィス内を高速の気体が流れるので、オリフィスの内部は抵抗の少ない構造が望ましい。本発明におけるオリフィスは、必ずしも筒状である必要はない。オリフィスの断面も円形のものが望ましいが、複数のフィラメントを通過させる場合や、フィラメントの形状が楕円やテープ状の場合には、断面が楕円や矩形のものも使用される。また、オリフィス入り口では、原フィラメントを導入しやすいように大きく、出口部分のみ狭い形状が、フィラメントの走行抵抗を小さくし、オリフィスの出口からの風速も大きくできるので好ましい。
【0012】
本発明におけるオリフィスは、本発明人らによる従来の延伸前の送風管とは役割を異にしている。従来の送風管は、レーザーをフィラメントの定位置に当てる役目であり、できるだけ抵抗少なく、定位置に原フィラメントを搬送する役目であった。本発明はそれにプラスすることの、高速の整流気体が原フィラメント供給室の気圧P1と延伸室の気圧P2の気圧差で発生する点で異なる。なお、通常のスパンボンド不織布製造においては、エアーサッカー等によって溶融フィラメントに張力を与えられる。しかし、スパンボンド不織布製造におけるエアーサッカーと本発明におけるオリフィスとは、その作用機構と効果が全く異なる。スパンボンド法では、溶融フィラメントをエアーサッカー内の高速流体で送られ、エアーサッカー内でそのフィラメント径の細化の殆どが完了するに対して、本発明では固体の原フィラメントがオリフィスで送られ、オリフィス内ではフィラメントの細化は始まらない。またスパンボンド法では、エアーサッカー内に高圧エアーを送りこむことにより高速流体を発生させるが、本発明では、オリフィス前後における部屋の気圧差でオリフィス内の高速流体を発生させる点で異なる。またその効果も、スパンボンド法では、せいぜい10μm前後のフィラメント径しか得られないのに対して、本発明では1μm未満のナノフィラメントが得られるという大きな効果が得られる点が異なる。
【0013】
本発明は、延伸が音速域で行われることが好ましい。オリフィスを出たエアーの風速vは、下記の式で表される(Graham’ theorem)。ここで、ρはエアー密度を表す。
v={2(P1-P2)/ρ}1/2
ここで、P1に大気圧とし、P2を変化させて計算させると、第1表となる。このことより、本発明の減圧域P2が30kPa、20kPa、6kPaでは、風速vは音速域(340-400m/sec)にあることがわかる。音速との比(マッハM)を計算した結果も表に示した。Mが0.98以上を音速域とすると、延伸室での風速vを、これらの音速域にすることにより、本発明では延伸して得られたフィラメント径をナノメータ域までの極細フィラメントを得ることができた。
【0014】
【表1】
JP0005407089B2_000002t.gif

【0015】
オリフィスから送り出されてきた原フィラメントは、オリフィスの出口で、赤外線光束によって加熱され、オリフィスからの高速流体によってフィラメントに与えられる張力によって、原フィラメントは延伸される。オリフィスの直下とは、実験結果、赤外線光束の中心がオリフィス先端より30mm以下、好ましくは10mm以下、5mm以下であることが最も好ましい。オリフィスから離れると、原フィラメントが振れ、定位置に収まらず、赤外線光束に安定して捉えられないからである。またオリフィスからの高速気体によってフィラメントに与えられる張力が、オリフィスから離れることによって弱くなり、また安定性も小さくなるからと思われる。
本発明は、原フィラメントが赤外線光束によって加熱されて延伸されることを特徴とする。赤外線は、波長0.78μmから1mmまでとされているが、高分子化合物のC-Cボンドは、3.5μmの吸収を中心としており、0.78μmから20μmが特に好ましい。これらの赤外線は、鏡やレンズにより点状または線状に焦点を絞り、原フィラメントの加熱域を絞り込むスポットヒータやラインヒータと呼ばれる加熱ヒータが使用できる。ラインヒータは、複数本の原フィラメントが並列して走行している場合に好適である。
【0016】
本発明の赤外線光束は、レーザー光であることが特に好ましい。中でも、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザーと、1.06μmの波長のYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット系)レーザーが特に好ましい。レーザーは、放射範囲(光束)を小さく絞り込むことが可能であり、また、特定の波長に集中しているので、無駄なエネルギーも少ない。本発明の炭酸ガスレーザーは、パワー密度が50W/cm2以上、好ましくは100W/cm2以上、最も好ましくは、180W/cm2以上である。狭い延伸領域に高パワー密度のエネルギーを集中することによって、本発明の超高倍率延伸が可能となるからである。
【0017】
なお、この場合の赤外線光束の照射は、複数箇所から照射されることが好ましい。フィラメントの片側のみからの加熱は、そのポリマーの融解温度が高い場合や、溶融が困難な場合、また、もともと延伸が困難なフィラメントの場合は、非対称加熱により、延伸が困難になるからである。このような複数箇所からの照射は、複数個の赤外線光束の光源から照射してもよいが、一つの光源からの光束を鏡によって反射させることにより、複数回、原フィラメントの通路に沿って照射させることによって達成することもできる。鏡は固定型ばかりでなくポリゴンミラーのように回転するタイプも使用することができる。
また、複数箇所からの照射の別な手段として、複数光源からの光源を原フィラメントに複数箇所から照射する手段がある。比較的小規模のレーザー光源で安定してコストの安いレーザー発振装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができる。
【0018】
本発明の原フィラメントは、赤外線加熱手段(レーザーを含む)により照射される赤外線光束により延伸適温に加熱される。本発明では赤外線光束によって原フィラメントは加熱されるが、延伸適温に加熱される範囲がフィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って、上下4mm(長さ8mm)以内であることが好ましく、さらに好ましくは上下3mm以下、最も好ましくは上下2mm以下で加熱される。この光束の径は、走行するフィラメントの軸方向に沿って測定する。原フィラメントが複数本の場合は、スリット状の光束も使用されるが、その場合は一番狭い部分が原フィラメントの軸方向と一致することが好ましい。本発明は、狭い領域で急激に延伸することにより、高度に極細化され、ナノ領域までに細くした延伸を可能にし、しかも超高倍率延伸であっても、延伸切れを少なくすることができた。なお、この赤外線光束が照射されるフィラメントがマルチフィラメントである場合は、上記のフィラメントの中心は、マルチフィラメントのフィラメント束の中心を意味する。
【0019】
本発明によって延伸されたフィラメントは、延伸室内で集積させて取り出すこともできるが、走行するコンベア上に積層されることによって、極細フィラメントの集積体または不織布として巻き取ることもできる。このようにすることにより、ナノフィラメントからなる不織布を製造することができる。本発明のコンベアとして、網状の移動体が通常使用されるが、ベルトやシリンダ上に集積させてもよい。
また、本発明によって延伸された極細フィラメントは、走行している布状物上に集積されることによって、この布状物と積層された積層体を製造することができる。特に、ナノフィラメントからなる集積体または不織布は、構成するフィラメントが非常に細いために取り扱いが困難であるが、このように布状物と積層されることにより取り扱いが安定する。また用途においても、市販のスパンボンド不織布等と積層されることにより、フィルター等の用途にそのまま使用することもできる。布状物として、織物、編物、不織布、フェルトなどが使用される。また、フィルムを走行させてその上に集積させてもよい。
【0020】
本発明によって延伸されたフィラメントは、その後、ガイドローラ等を経てボビン、チーズ、カセなどに連続的に巻き取られ、巻き取られた製品とすることもできる。
本発明は赤外線光束によって、原フィラメントを超高倍率に延伸することによって、極細フィラメントを製造することを目的とする。本発明における極細フィラメントは、原フィラメントが100倍以上に延伸されて極細化されたフィラメントをいう。その極細フィラメントのうち、フィラメント径が1μm未満のものを特にナノフィラメントという。本発明においては、原フィラメントを延伸倍率が10,000倍以上にすることにより、100μm以上の径の原フィラメントからでもナノフィラメントが得ることができる。
本発明における延伸倍率λは、原フィラメントの径doと延伸後のフィラメントの径dより、下記の式で表される。この場合、フィラメントの密度は一定として計算する。繊維径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、原フィラメントは350倍、延伸されたフィラメントは1000倍またはそれ以上の倍率での撮影写真に基づき、100点の平均値で行う。
λ=(do/d)2
本発明における延伸フィラメントは、フィラメント径が揃っていることを特徴とする。フィラメント径分布は、上記SEM写真から測長用ソフトでフィラメント径を100箇測定して求めた。またそれらの測定値より、標準偏差を求め、フィラメント径分布の尺度とした。
【0021】
本発明における延伸フィラメントは延伸されることにより分子配向し、熱的にも安定している。本発明の延伸フィラメントはフィラメント径が非常に小さいので、フィラメントの分子配向を測定することは困難である。本発明の延伸フィラメントは、単に細くなっただけではなく、分子配向も生じていることが、熱分析の結果により示唆されている。原フィラメントや延伸フィラメントの示差熱分析(DSC)測定は、株式会社リガク製THEM PLUS2 DSC8230Cにより、昇温速度10℃/minで測定した。
【発明の効果】
【0022】
従来のナノファイバーの生産方式であるES法は、ポリマーを溶剤に溶かす作業や出来た製品から脱溶剤をする必要があり、製造法において煩雑であり、コストアップである。また出来た製品も、ダマやショットと呼ばれる樹脂の固まりが生じること、フィラメント径の分布が広いなど、フィラメントの品質的にも問題であった。また出来たファイバーも、ショートファイバー(短繊維)で、長さ数ミリメータからせいぜい数10ミリメータと云われているが、本発明では、数メータ以上で実質的に連続フィラメントが得られる。
本発明は、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で容易に分子配向が向上した極細フィラメントが得られる。また、ほとんど全ての熱可塑性ポリマーより、10,000倍以上の延伸倍率を可能にし、1μm未満のナノフィラメントの領域に至る超極細のフィラメントを製造できた。また、出来たフィラメント径の分布も、ナノフィラメント域の平均フィラメント径であるにもかかわらず、標準偏差が0.1以下と非常に狭い極細フィラメントを得ることができた。
本発明における赤外線光束による超延伸法では、延伸張力が与えられる高速気体流の発生手段として、オリフィス前後における圧力差を利用する。そのために高速気体流の流れが非常に安定し、それによって、単にナノフィラメントが得られるばかりでなく、生産性においても安定した連続運転を可能にした。
【0023】
また本発明では、延伸室を減圧下にすることにより、特に安定した延伸を可能にし、ナノフィラメントを安定して生産できる。減圧下では、高速で噴出したエアー流を邪魔しないので、安定したエアーの流れになるものと思われる。
また本発明は、ナノフィラメント領域に至る極細のフィラメントからなる長繊維不織布を提供することができる。また、市場にあるスパンボンド不織布等の不織布と積層された積層体も得ることができる。
さらに本発明は、通常の延伸では延伸性が悪いポリ乳酸やポリグリコール酸などの再生医療用材料として使用される生分解性ポリマーからなるフィラメントからナノフィラメント領域までの極細フィラメントが得られる。従来のナノファイバーの製法であるES法では、クロロホルムなどの溶剤を使用しているので、溶解や脱溶剤が必要なばかりでなく、このような有害溶剤を使用していることで、再生医療分野での使用を困難にしている。
本発明におけるナノフィラメントは、従来のエアーフィルター分野におけるフィルター効率を画期的に向上させるばかりでなく、IT、バイオ、環境分野における幅広い用途に適応できる革新的素材として適応される。また本発明は、紡糸や延伸の条件範囲が狭いために、従来極細化が困難とされている、ポリアリレート系ポリマー、ポリエチレンナフタレート、フッ素系ポリマーなどの高機能フィラメントからも、簡便に極細フィラメントやナノフィラメントが得られることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の例を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の極細フィラメントを製造する原理を示す概念図で、装置の断面図で示す。原フィラメント1は、リール11に巻かれた状態から繰り出され、コーム12を経て、繰出ニップローラ13a、13bより一定速度で送り出され、オリフィス14へと導かれる。ここまでの工程は、原フィラメント供給室15として気圧P1に保たれている。気圧P1は、加圧ポンプ(図示されていない)へ導かれているダクト16と加圧度を調整するバルブ17、および加圧ポンプの回転数等で調整される。なお、原フィラメント供給室15が減圧室である場合は、加圧ポンプの代わりに真空ポンプが使用される。原フィラメント供給室15には、気圧計18が設けられており、気圧の管理が行われている。
【0025】
オリフィス14出口以降は、P2気圧下にある延伸室21となる。オリフィス14を出た原フィラメント1は、原フィラメント供給室15と延伸室との気圧差P1-P2によってもたらされる高速エアーと共に延伸室21に導かれる。送り出された原フィラメント1は、オリフィス直下において、レーザー発振装置5より、走行する原フィラメント1に対して、一定幅の加熱域Mにレーザー光6が照射される。このレーザー光6は、図6、図7に示す複数箇所から照射することもできる。レーザー光6の届く先には、レーザー光のパワーメータ7が設けれ、レーザーパワーを一定に調節されていることが好ましい。レーザー光6により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメントは延伸されて、延伸されたフィラメント22となって下降し、下方で集積される。気圧P2は、真空ポンプ(図示されていない)へ導かれているダクト23、加圧度を調整するバルブ24、および真空ポンプの回転数、バイパスバルブ等で調整される。延伸室21にも、気圧計25が設けられている。なお、延伸室21も加圧室である場合は、真空ポンプの代わりに加圧ポンプが使用される。
【0026】
図2は、原フィラメント供給室の気圧P1が大気圧である場合の例を示す装置の断面図である。オリフィス14を出た原フィラメント1は、延伸室31で図1と同様の工程を経て、延伸されたフィラメント32が得られる。
【0027】
図3は、原フィラメント供給室41が加圧室で、延伸室が大気圧である例を示す装置の側面からみた斜視図である。多数の原フィラメント1が、リール42に巻かれた状態で、架台43に取り付けられている(煩雑さを避けるため3本のみ図示する)。これらの原フィラメント1a、1b、1cは、案内具であるスネイルワイヤ44a、44b、44cを通じて、送出ニップロール45a、45bの回転により送り出され、オリフィス46a、46b、46cに導かれる。オリフィス46の出口以降は、大気圧であるP2気圧下の延伸室であり、特に部屋を設ける必要はない。オリフィス46を出た原フィラメント1は、原フィラメント供給室41と延伸室との気圧差P1-P2によってもたらされる高速エアーと共に延伸室に送り出される。そしてオリフィス直下において、赤外線照射装置47より、走行する原フィラメント1に対して、一定幅の加熱域Nにライン状の赤外線光束48が照射され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメント1は延伸されて、延伸されたフィラメント49a、49b、49cとなって下降する。原フィラメント1の走行過程における赤外線光束による加熱部Nの範囲を斜線で示す。原フィラメント1に吸収されずに通過した光束は、点線で示した凹面鏡50で反射して、加熱部Nに集光するように戻される。赤外線照射装置47側にも凹面鏡を設ける(但し、赤外線照射装置よりの光束の進行部は窓が開いている)が、図では省略してある。延伸されたフィラメント49a、49b、49cは、走行しているコンベア51上に集積し、ウェブ52を形成する。コンベア51の裏面からは、負圧吸引により、矢印pの方向にエアーが吸引され、ウェブ52の走行の安定性に寄与する。コンベア51上のウェブ52は、必要に応じてプレスやエンボスされて、不織布として巻き取られていく。
【0028】
なお、図3におけるオリフィスは、それぞれの原フィラメントに対して、それぞれの筒状のオリフィス46a、46b、46cを設けたが、これらのオリフィスを、多数本の原フィラメントを同時に走行できる図5の(b)図のオリフィスを使用することも出来る。
図3において、架台53に取り付けられているロール状に巻かれた布状物54は、コンベア上に繰り出され、ウェブ52と積層されて、極細フィラメントからなるウェブと布状物との積層体とすることができる。
【0029】
図4は、本発明で使用されるオリフィスの1態様の例をオリフィスの断面図で示す。この図は、フィラメント径がdである原フィラメント1が通過する単純な円筒形オリフィス56を示す。出口部のオリフィス内径はD1である。オリフィスを出たフィラメント1に赤外線光束Mが照射される。そして、オリフィスの出口から赤外線光束Mの中心までの距離Lを出来るだけ小さくなるように配置される。
【0030】
図5に、オリフィスの他の態様の例をオリフィスの断面図で示す。(a)図は、オリフィス入り口部は大きいが、出口部で細くなっており、内径D2になっているタイプのオリフィス57を示す。(b)図は、フィラメントが多数本同時に送り出されるオリフィス58の例を一部断面で示される概念図で示す。(b)図における出口径D3は、一番狭い方向である、厚み方向の径で示される。
【0031】
図6に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の例を示す。A図は平面図であり、B図は側面図である。赤外線光束照射機より照射された赤外線光束61aは、原フィラメント1の通る領域P(図の点線内)を通って、鏡62に達し、鏡62で反射された赤外線光束61bとなり、鏡63で反射されて赤外線光束61cとなる。赤外線光束61cは、領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置から120度後から、原フィラメントを照射する。領域Pを通過した赤外線光束61cは、鏡64で反射されて、赤外線光束6dとなり、鏡65で反射されて、赤外線光束61eとなる。赤外線光束61eは領域Pを通って、最初の原フィラメントの照射位置の赤外線光束61cとは逆の120度後から、原フィラメント1を照射する。このように、原フィラメント1は、3つの赤外線光束61a、61c、61eにより、120度ずつ対称の位置から均等に原フィラメント1を加熱することができる。
【0032】
図7に、本発明で採用されている赤外線光束を、複数箇所から原フィラメントに照射する手段の他の例で、複数の光源を使用する例を平面図で示す。赤外線照射装置から放射された赤外線光束67aは、原フィラメント1へ放射される。また、別の赤外線照射装置から放射された赤外線光束67bも、原フィラメント1へ放射される。さらに別の赤外線照射装置から放射された赤外線光束67cも、原フィラメント1へ放射される。このように、複数の光源からの放射は、比較的小規模の光源で安定したコストの安いレーザー発信装置を複数用いて、高パワーの光源とすることができる。なお、図では光源が3個の場合を示したが、2個でもよいし、4個以上も使用できる。複数本延伸では、このような複数光源による延伸が特に有効である。
【実施例】
【0033】
実施例1
原フィラメントとして未延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィラメント(繊維径182μm)を使用し、図2の延伸装置により延伸を行った。この時のレーザー発振装置は、レーザー出力8Wの炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、ビーム径(光束)は2.0mmであった。オリフィスとして図5の(a)図のタイプを使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。延伸室の真空度は8KPaに調整した。原フィラメントの送出速度を0.1m/分、0.2m/分、0.3m/分、0.4m/分と変化させた場合に得られたフィラメントの繊維径を第2表に示す。またこの表には、レーザー出力を2Wから8Wまで変化させた場合のフィラメントの径を示す。この表より、レーザーパワー8Wで、送出速度0.1m/分の場合には、平均繊維径0.313μm(313ナノメータ)のナノファイバーが得られており、その時のフィラメント径の標準偏差が0.078と、非常に繊維径分布も揃っていることがわかる。この条件で得られたナノフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率10,000)を図8に示す。この写真は、レーザー出力8Wで、原フィラメント送出速度0.1m/min(a)、0.2m/min(b)、0.3m/min(c)、0.4m/min(d)の条件で得られたものである。他の条件でも繊維径1μm未満のナノフィラメントが得られている。原フィラメントが180μmであり、得られたフィラメントが0.313μmであるので、延伸倍率は338,100倍(約34万倍)にも達する。図9に、これらの条件で得られたフィラメント径の分布を示す。いずれもフィラメント径が揃っており、第2表より標準偏差0.3以下であるものが多く、良いものは0.2以下で、0.1以下のものもある。また殆どの条件で、1μm未満のフィラメントが得られているので、3万3千倍以上の延伸倍率となっている。また第3表に、上記により延伸されたフィラメントのDSC測定結果を示す。
【0034】
【表2】
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【0035】
【表3】
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【0036】
実施例2
原フィラメントとして実施例1と同じ未延伸ポリエチレンテレフタレートフラメントを使用した。延伸室およびレーザー発振装置も実施例1と同様である。フィラメントの送出速度0.1m/分で、延伸室の真空度を変えて実験した。真空度が8KPaでは、実施例1で示したように平均繊維径0.31μmである。そして、6KPaでは、平均繊維径0.42μm、24KPaでは、平均繊維径0.82μmであった。これらの条件でも、1μm未満の繊維径のフィラメントが得られていることがわかる。
【0037】
実施例3
原フィラメントとしてポリ乳酸(PLLA)未延伸フィラメント(繊維径75μm)を使用し、図2の延伸装置により延伸を行った。この時のレーザー発振装置は、レーザー出力8Wの炭酸ガスレーザー発振装置を使用し、ビーム径(光束)は2.0mmであった。オリフィスとして図5の(a)図のタイプを使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。延伸室の真空度は8kPaに調整した。原フィラメントの送出速度を0.1m/分から0.8m/分と変化させた場合に得られたフィラメントの繊維径を第4表に示す。また、この表には、レーザー出力を2Wから8Wまで変化させた場合のフィラメントの径を示す。この表より、レーザーパワー8W(ワット密度256.6W/cm2)で、送出速度0.1m/分の場合には、平均繊維径0.13μm(130ナノメータ)のナノファイバーが得られており、その時のフィラメント径の標準偏差が0.0356と、非常に繊維径分布も揃っている。またレーザーパワー密度が大きい場合の殆どの延伸フィラメント径の標準偏差が0.2以下であり、0.1以下のサンプルも多く、非常にフィラメント径が揃っていることがわかる。この条件で得られたナノフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率3,000)を図10に示す。他の条件でも繊維径1μm未満のナノフィラメントが得られている。原フィラメントが75μmであり、得られたフィラメントが0.13μmであるので、延伸倍率は322,830倍(約32万倍)にも達する。図11に、これらの条件で得られたフィラメントの繊維径分布を示す。また殆どの条件で、1μm未満のフィラメントが得られており、0.5μm未満(倍率22,500以上)となっている。
【0038】
【表4】
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【0039】
実施例4
原フィラメントとして未延伸テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)からなるフィラメント(フィラメント径100μm)を使用し、図2の延伸装置により延伸を行い、まず径6μmの延伸フィラメント(1次延伸フィラメント、倍率277.8倍)を得た。この1次延伸フィラメントをもとに、やはり図2の装置を使用して、2次延伸を行った。この際のレーザー発振装置等は実施例1と同じものを使用した。オリフィスとして図5の(a)図のタイプを使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。延伸室の真空度は6KPaに調整した。1次延伸フィラメントの送出速度を0.1m/分、0.2m/分、0.3m/分、0.4m/分と変化させた場合に得られたフィラメントの繊維径およびフィラメント径の分布の標準偏差を第5表に示す。延伸されたフィラメント径は1μ未満のナノファイバーが得られており、フィラメントの標準偏差は0.1以下のものが多く、非常にフィラメント径が揃っていることがわかる。また、2次延伸だけでも100倍以上延伸されており、4,000倍以上に延伸されているものもある。また、トータル延伸倍率(1次延伸倍率×2次延伸倍率)でみると10,000倍(1万倍)以上延伸されており、1,000,000倍(100万倍)以上延伸されているものもある。延伸されたフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率5,000)を図12に示す。また第6表に得られたフィラメントのDSC実験結果を示す。平均フィラメント径が小さくなるに従い、融解熱量は高くなり、融点も多少上がっていることがわかる。
【0040】
【表5】
JP0005407089B2_000006t.gif

【0041】
【表6】
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【0042】
実施例5
実施例4における1次延伸したサンプルを使用し、図1に示す装置を使用した。原フィラメント供給室は加圧ポンプを使用して、気圧P1を120kPaとした。延伸室は真空ポンプを使用し、気圧P2を44kPa、30kPa、26kPaとして実験した。結果を第7表に示す。他の条件は実施例4と同じである。この実験より、平均フィラメント径は1μm未満のナノフィラメントが得られており、フィラメント径の標準偏差も0.2以下であり、P2の真空度が高い場合は、フィラメント径が0.097μm、フィラメント径の標準偏差は0.03であった。
【0043】
【表7】
JP0005407089B2_000008t.gif

【0044】
実施例6
原フィラメントとして未延伸ポリエチレン2、6ナフタレート(PEN)からなるフィラメント(フィラメント径170μm)を使用し、図2の延伸装置により延伸を行った。この際のレーザー発振装置等は実施例1と同じものを使用した。ビーム径2.4mmで、オリフィス直下でビームのエッジが当たる程度に近づけ、ビームの中心がオリフィス直下1.2mmに照射した。なお、第8表のP2が6kPaの条件で、ビームの当てる位置をさらに2mm離すと、平均フィラメント径0.295μm、標準偏差0.075であり、さらに6mm離すと、平均フィラメント径0.410μm、標準偏差0.074となり、オリフィス出口より極めて近距離でビームを原フィラメントに照射することが重要である。オリフィスとして図5の(a)図のタイプを使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。第8表は、P1を大気圧下で、P2を種々変化させた場合について得られた実験結果を示す。P2が30kPa以下で、平均繊維径が1μ未満になり、そのようなナノフィラメントであるにもかかわらず、フィラメントの標準偏差は0.1以下となり、非常にフィラメント径が揃っていることがわかる。延伸倍率もP2が30kPa以下で、1万倍以上で、2万8千倍以上となっていることがわかる。第8表の条件で得られたフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率1500倍)を図13に示す。
【0045】
【表8】
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【0046】
実施例7
原フィラメントとして未延伸ポリグリコール酸(PGA)からなるフィラメント(フィラメント径100μm)を使用し、図2の延伸装置により延伸を行った。この際のレーザー発振装置等は実施例1と同じものを使用した。レーザーワット密度177W/cm2で、ビーム径2.4mmで、オリフィス直下1.2mmに照射した。オリフィスとして図5の(a)図のタイプを使用し、オリフィス径d2は、0.5mmであった。延伸室の真空度は6KPaに調整した。原フィラメントの送出速度を0.1m/分、0.4m/分、0.8m/分、1.2m/分と変化させた場合に得られたフィラメントの繊維径を第9表に示す。この表より、送出速度0.1m/分の場合には、平均繊維径0.388μm(388ナノメータ)のナノファイバーが得られており、その時のフィラメント径の標準偏差が0.096と、非常に繊維径分布も揃っていることがわかる。この条件で得られたナノフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率3,000)を図14に示す。他の条件でも繊維径1μm未満のナノフィラメントが得られている。原フィラメントが100μmであり、得られたフィラメントが0.388μmであるので、延伸倍率は66,418倍(約6万6千倍)にも達する。他の条件でもフィラメント径が揃っており、標準偏差0.2以下である。また全ての条件で、1μm未満のフィラメントが得られているので、1万倍以上で、10万倍以上の延伸倍率となっている。
【0047】
【表9】
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【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明による極細フィラメントは、エアーフィルター等の従来極細フィラメントが使用されてきた分野ばかりでなく、メディカル用フィルター、IT用機能材料などの革新素材として広い分野にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の延伸されたフィラメントを製造するためのプロセス概念図である。
【図2】本発明の原フィラメント供給室が大気圧の場合の装置の概念図である。
【図3】本発明の原フィラメント供給室が加圧室で、延伸室が大気圧である装置の概念図である。
【図4】本発明に使用されるオリフィスの概念図である。
【図5】本発明に使用されるオリフィスの他の例の概念図である。
【図6】本発明の赤外線照射が鏡を用いて反射される場合を示す概念図である。
【図7】本発明の赤外線照射装置を複数使用する場合の光束の状態を示す概念図である。
【図8】本発明によって延伸されたポリエチレンテレフタレートナノフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率:10,000)である。
【図9】図8に示した本発明のナノフィラメントのフィラメント径分布図である。
【図10】本発明によって延伸されたポリ乳酸ナノフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率:3,000)である。
【図11】図10に示した本発明のナノフィラメントのフィラメント径分布図である。
【図12】本発明によって延伸されたPFAフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率:5,000)である。
【図13】本発明によって延伸されたPENフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率:1,500)である。
【図14】本発明によって延伸されたPGAフィラメントの電子顕微鏡写真(倍率:3,000)である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図9】
7
【図11】
8
【図8】
9
【図10】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13