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明細書 :ナノ粒子の集積結合体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4769928号 (P4769928)
登録日 平成23年7月1日(2011.7.1)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
発明の名称または考案の名称 ナノ粒子の集積結合体およびその製造方法
国際特許分類 C01G  23/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
FI C01G 23/00 C
B82B 3/00
B82B 1/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2010-503892 (P2010-503892)
出願日 平成21年3月11日(2009.3.11)
国際出願番号 PCT/JP2009/055225
国際公開番号 WO2009/116551
国際公開日 平成21年9月24日(2009.9.24)
優先権出願番号 2008067761
優先日 平成20年3月17日(2008.3.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年9月2日(2010.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】和田 智志
【氏名】野澤 あい
個別代理人の代理人 【識別番号】100080322、【弁理士】、【氏名又は名称】牛久 健司
【識別番号】100104651、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 正
【識別番号】100114786、【弁理士】、【氏名又は名称】高城 貞晶
審査官 【審査官】佐藤 久則
参考文献・文献 特開平07-060109(JP,A)
特表2001-506931(JP,A)
特表2005-507488(JP,A)
特表2006-517674(JP,A)
野澤あい・桑原哲夫・和田智志・内田寛・森吉千佳子・黒岩芳弘,チタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムナノキューブの合成とその集積化,日本セラミックス協会秋季シンポジウム講演予稿集,日本,2008年 9月17日,Vol.21,Page.372
Bo Hou, Zhijie Li, Yao Xu, Dong Wu, and Yuhan Sun,Solvothermal Synthesis of Single-crystalline BaTiO3 Nanocubes in a Mixed Solution,Chemistry Letters,日本,The Chemical Society of Japan,2005年,Vol.34, No.7,Page.1040-1041
Tao Yan, Xiao-Lin Liu, Nian-Rong Wang, Jian-Feng Chen,Synthesis of monodispersed barium titanate nanocrytals-hydrothermal recrystallization of BaTiO3 nano,Journal of Crystal Growth,NL,Elesevier,2005年 6月 9日,281,Pages.669-677
調査した分野 B22F 9/00-9/30、
B82B 1/00-3/00、
C01G 1/00-23/08
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも2種類の化学組成の異なるナノ粒子を別個に製造し,
これらの少なくとも2種類のナノ粒子に,DNAの4塩基のうちの互いに結合する2つを結合剤としてそれぞれ別個に化学結合により吸着させ,その後これらの少なくとも2種類のナノ粒子を溶媒内において混合することにより,上記結合剤により少なくとも上記2種類のナノ粒子を選択的に引き合わせて集積化しかつ結合させる,
ナノ粒子の集積結合体の製造方法。
【請求項2】
少なくとも2種類の化学組成の異なるナノ粒子に,DNAの4塩基のうちの互いに結合する2つを結合剤としてそれぞれ別個に化学結合により吸着させ,
その後これらの少なくとも2種類のナノ粒子を溶媒内において混合することにより,上記結合剤により少なくとも上記2種類のナノ粒子を選択的に引き合わせて集積化しかつ結合させる,
ナノ粒子の集積結合体の製造方法。
【請求項3】
上記結合剤をナノ粒子に化学結合により吸着させる工程の前に,溶媒内におけるナノ粒子の分散と,対応する上記結合剤の化学結合による吸着とを促進させる分散/架橋剤を加える,請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
少なくとも2種類の化学組成の異なるナノ粒子の表面にそれぞれ,DNAの4塩基のうちの互いに結合する2つが結合剤として化学結合により吸着し,これらの結合剤による選択的結合によって少なくとも2種類のナノ粒子が集積化されかつ結合している,ナノ粒子の集積結合体。
【請求項5】
ナノ粒子が分散/架橋剤によって表面修飾され,上記分散/架橋剤によって結合剤がナノ粒子に化学結合により吸着している,請求項4に記載の集積結合体。
【請求項6】
上記ナノ粒子がナノキューブ粒子である,請求項4に記載の集積結合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明はナノ粒子の集積結合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は誘電体材料,磁性材料,圧電材料,金属材料,半導体材料,有機材料等として飛躍的にすぐれた特性を実現できる可能性があると考えられている。これらの材料を実現するためには,ナノ粒子を集積化することが必要である。特に化学組成の異なる2種類またはそれ以上の種類のナノ粒子を集積化することにより予期せぬ特性が得られることが期待されている。
2種類の異種ナノ粒子からなる構造体の作製に関する次のような報告がある。
Elena V.Shevchenko,Dmitri V.Talapin,Nicholas A.Kotov,Stephen O’Brien,Christopher B.Murray,“Structural diversity in binary nanoparticle superlattices”Nature,Vol.439,No.5,p.55(2006)
Elena V.Shevchenko,Dmitri V.Talapin,Stephen O’Brien,and Christopher B.Murray,“Polymorphism in AB13 Nanoparticle Superl attices:An Example of Semiconductor-Metal Metamaterials”J.Am.Chem.Soc.Vol.127,p.8741-8747(2005)
これらの論文では,粒子径が数nmの金属粒子(Au,Ag,Pd)と,それとは異なる大きさの半導体(PbSe)または金属酸化物(Fe)の混合超微粒子サスペンションを用いて,異種球状粒子からなるナノ粒子構造体を作製することが報告されている。ここでは,一種類の球形状ナノ粒子の配列の間に生じる隙間内に他の種類の球形状ナノ粒子を挿入する構造が開示されている。
これらの報告による異種ナノ粒子構造体では,ナノ粒子の形状が球形状に限られること,一種類の隣接するナノ粒子の間隙に他の種類のナノ粒子を収めるために2種類の球状ナノ粒子の粒子径の比が限られていること,異種ナノ粒子間には結合力が働かないか,または働いているとしても弱いファンデルワールス力程度であるという問題がある。
上記と同様な報告は次の文献にも記載されている。
Aaron E.Saunders,Brian A.Korgel,“Observation of an AB Phase in Bidisperse Nanocrystal Superlattices”Chem.Phys.Chem.,Vol.6,p.61(2005)
A.B.Schofield,P.N.Pusey,and P.Radcliffe“Stability of the binary colloidal crystals AB2 and AB13”Phys.Rev.E,Vol.72,031407(2005)
【発明の開示】
【0003】
この発明は少なくとも2種類のナノ粒子の構造体において,用いるナノ粒子の形状が球形状に限られず,最も望ましくは立方体形状のナノ粒子を使用することができるようにすることを目的とする。
この発明はまた,少なくとも2種類のナノ粒子の構造体において,ナノ粒子の大きさが特定の比率に限られず,最も望ましくは同じ大きさの異種のナノ粒子を配列できるようにすることを目的とする。
この発明はさらに,少なくとも2種類のナノ粒子の構造体において,異種のナノ粒子間の結合力を高めることができるようにすることを目的とする。
この発明によるナノ粒子の集積結合体の製造方法は,少なくとも2種類の化学組成の異なるナノ粒子に,選択的結合性に優れた少なくとも2種類の結合剤をそれぞれ別個に化学結合により吸着させ(化学的に吸着させ)(水素結合をはじめとして共有結合,配位結合,イオン結合,金属結合,分子間結合等による吸着を含む),その後これらの少なくとも2種類のナノ粒子を溶媒内において混合することにより,上記結合剤により少なくとも上記2種類のナノ粒子を選択的に引き合わせて集積化しかつ結合させるものである。
少なくとも2種類の化学組成の異なるナノ粒子は既に存在するものを用いることもできるし,これらを別個に製造してもよい。
ナノ粒子には,酸化物ナノ粒子(セラミックス),金属ナノ粒子,半導体ナノ粒子,ポリマー・ナノ粒子等が含まれる。集積結合体にはこれらの中から異なる2種類以上のナノ粒子を選んで組み合わせればよい。
ナノ粒子は最も好ましくは立方体形状ナノ粒子(ナノキューブ粒子)であるが,直方体,立方体や直方体に近い(類似の)形状,その他の形状のものでもよい。ナノ粒子の大きさは,一辺(最も長い辺)の長さまたは径が概略100ナノメートル以下であることが望ましいが,これよりも大きくてもよい。
集積結合体は多数のナノ粒子が二次元的に配列(集積)されかつ相互に結合しているもの,および多数のナノ粒子が三次元的に配列(集積)され相互に結合しているものを含む。
集積結合体は望ましくは2種類以上のナノ粒子が周期性をもって配列している。特にナノ粒子が立方体形状の場合には集積結合体は強い周期性を持つ。2種類のナノ粒子の集積結合体の場合に,周期性は2種類のナノ粒子が1個ずつ交互に配列されていることのみならず,同じ種類の2個以上のナノ粒子が連続して並び,その隣りに他の種類のナノ粒子が存在するような形態でもよい。2種類以上のナノ粒子の大きさは揃っている(たとえば理想的にはばらつきが5%以内)ことが好ましいが,立方体,直方体形状のような場合には,一のナノ粒子の一辺の長さが他のナノ粒子の一辺の長さの整数倍(または整数分の一)であってもよい。この場合に,ナノ粒子の大きさ(一辺の長さ)のばらつきは,ナノ粒子の結合の強さの許容度に応じて許容されよう。
選択的結合性に優れた結合剤(選択的結合剤)には,分子認識性をもつ物質,たとえばDNA(デオキシリボ核酸)の4つの塩基(アデニン(A),チミン(T),グアニン(G),シトシン(C))や,アミノ基誘導体とハロゲン誘導体等が含まれる。
溶媒は好ましくは有機溶媒であるが,ナノ粒子や結合剤の種類によっては水または水溶液でもよい。
この発明によると,少なくとも2種類のナノ粒子に,それぞれ別個の結合剤を化学結合により吸着(化学的に吸着)させている。そして,これらの結合剤が選択的結合性を有することを利用して選択的に引き合わせてナノ粒子を集積化しかつ結合させている。
選択的結合性に優れた結合剤(選択的結合剤)が特定の結合剤と選択的に結合することを利用して異種のナノ粒子を結合させているから,ナノ粒子の形状が特に限定されなければならないということはない。もっとも異種のナノ粒子が集積化しやすい形状,特に立方体,直方体,これに類する形状が好ましい。また,異種のナノ粒子の大きさやその比も特に限定されなければならないということはない。もちろん,異種のナノ粒子が集積化しやすい大きさ,たとえば同程度の大きさ,整数倍(整数分の一)の大きさであることが好ましい。異種のナノ粒子の結合力は結合剤の結合力に依存するから,結合力の強い結合剤(たとえば水素結合する結合剤)を用いることにより強い力による結合を実現することができる。
結合剤が直接的にナノ粒子に化学結合により吸着(化学的吸着)されない場合には,分散/架橋剤を用いるとよい。すなわち,上記結合剤をナノ粒子に化学結合により吸着させる工程の前に,溶媒内に分散/架橋剤を加え,溶媒内におけるナノ粒子の分散と,対応する上記結合剤の化学結合による吸着とを促進させる。
分散/架橋剤は,分散剤,結合補助剤,表面修飾剤,接合剤などとも呼ばれ,集積化の前にナノ粒子を溶媒中でばらばらに分散させるとともに,結合剤をナノ粒子に化学結合により吸着させる働きをするもので,溶媒,ナノ粒子,結合剤の種類に応じて選択すればよい。一例を挙げれば分散/架橋剤にはトリオクチルホスフィン・オキサイド(Trioctylph osphine oxide)(TOPO),アルキルリン酸誘導体等がある。
ナノ粒子の表面を分散/架橋剤で修飾するので,同じ種類のナノ類が凝集せずに分散し,かつ結合剤がナノ粒子に化学結合により吸着しやすくなる。
この発明はさらにナノ粒子の集積結合体を提供している。この発明によるナノ粒子の集積結合体は,少なくとも2種類の化学組成の異なるナノ粒子の表面にそれぞれ,選択的結合性に優れた少なくとも2種類の対応する結合剤が化学結合により吸着し,これらの結合剤による選択的結合によって少なくとも2種類のナノ粒子が集積化されかつ結合しているものである。
一実施態様では,上記集積結合体は,ナノ粒子が分散/架橋剤によって表面修飾され,上記分散/架橋剤によって結合剤がナノ粒子に化学結合により吸着している。
この発明によるナノ粒子の集積結合体およびその製造方法の好ましい実施態様においては,ナノ粒子が異なる2種類の酸化物ナノ粒子,より好ましくは酸化物ナノキューブ粒子(たとえば後述するBTナノキューブ,STナノキューブ)である。
酸化物ナノ粒子はたとえばソルボサーマル法を使用して製造することができるが,高温高圧の溶媒を用いると立方体形状またはそれに近い形状のナノ粒子(これらを,ナノキューブ粒子または単にナノキューブという)を得ることができる。
結合剤としては分子認識性をもつDNAの塩基のうちの2つを用いる。アデニン(A)とチミン(T)の対は水素結合により結合する。しかしアデニン同志,チミン同志では結合は起こらない。同じようにグアニン(G)とシトシン(C)の対も水素結合により結合する。
一方の種類のナノキューブ粒子(たとえばBTナノキューブ)の溶液に分散/架橋剤(たとえば上述のTOPO)を加えてナノキューブ粒子の表面を分散/架橋剤により修飾する。この溶液にアデニン(A)を加えてナノキューブ粒子にアデニン(A)を化学結合により吸着させる。他方の種類のナノキューブ粒子(たとえばSTナノキューブ)の溶液にも分散/架橋剤(例としてTOPO)を加えてナノキューブ粒子の表面を分散/架橋剤により修飾し,さらにチミン(T)を加えてナノキューブ粒子にチミン(T)を化学結合により吸着させる。これらの溶液の溶媒としては,有機溶媒が好ましく,たとえばヘキサンを用いる。
これらのアデニン(A),チミン(T)が吸着した(アデニン(A),チミン(T)によって表面修飾された)2種類のナノキューブ粒子の溶液を混合すると,アデニン(A)とチミン(T)が結合することにより,異種のナノキューブ粒子が規則性をもって三次元的に集積しかつ結合する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
第1図はBTナノキューブとSTナノキューブが集積結合した様子を示す透過形電子顕微鏡写真である。
第2図は第1図の写真にBT,STの符号を付けて分りやすくした写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
1.ナノ粒子の製造
酸化物ナノ粒子,特に立方体形状のナノ粒子(ナノキューブ粒子)の代表として,セラミック材料であるチタン酸バリウム(BaTiO)ナノキューブ粒子(以下,単に「BTナノキューブ」という)と,チタン酸ストロンチウム(SrTiO)ナノキューブ粒子(以下,単に「STナノキューブ」という)の製造(合成)方法について述べる。ここではソルボサーマル法を用いる。
(1)BTナノキューブ
バリウム源として水酸化バリウム無水和物(Ba(OH))を,チタン源として酸化チタン(TiO)を使用し,それぞれを適切な溶媒(たとえば,Ba(OH)についてはエタノール(COH),TiOについては2-メトキシエタノール(CHOCOH))に溶かした上で混合し,高温で撹拌しながら反応させる。反応温度は200℃~260℃,反応時間は0.5時間~50時間程度である。Ba/Ti仕込み比は0.5~50.0程度,Ti濃度0.002mol/l~1.0mol/lがよい。最も好ましくは,反応温度240℃,Ba/Ti仕込み比1.1,Ti濃度0.04mol/lである。
上記の反応物を遠心分離機で沈殿物と濾液に分け,沈殿物を乾燥機で乾燥させる(たとえば50℃で24時間乾燥)。これにより一辺が5~50ナノメートル程度のBTナノキューブが得られる。
(2)STナノキューブ
ストロンチウム源として水酸化ストロンチウム(Sr(OH))を,チタン源として酸化チタン(TiO)を使用し,それぞれを適切な溶媒(たとえば,Sr(OH)についてはエタノール(COH),TiOについては2-メトキシエタノール(CHOCOH))に溶かした上で混合し,高温で撹拌しながら反応させる。反応温度は200℃~260℃,反応時間は0.5時間~50時間程度である。Sr/Ti仕込み比は0.5~50.0程度,Sr濃度0.002mol/l~1.0mol/lがよい。最も好ましくは,反応温度260℃,Sr/Ti仕込み比1.5,Sr濃度0.04mol/lである。
上記の反応物を遠心分離機で沈殿物と濾液に分け,沈殿物を乾燥機で乾燥させる(たとえば50℃で24時間乾燥)。これにより一辺が5~50ナノメートル程度のSTナノキューブが得られる。
2.ナノキューブの集積化と結合
ナノキューブの集積化と結合は,2種類のBTナノキューブとSTナノキューブの表面に分子認識の性質をもつ結合剤(DNAの塩基であるアデニン(A)とチミン(T)またはグアニン(G)とシトシン(C))をそれぞれ化学結合により吸着させ,溶媒中においてこれらの結合剤により種類の異なるナノキューブ同志を引き合わせることにより実現できる。BTナノキューブとSTナノキューブはそれぞれ凝集しているので,集積化の前に粒子同志をばらばらに分散させる必要がある。分散剤(結合剤のナノキューブへの化学結合による吸着を促進させる作用もあるので,分散/架橋剤という)としてはTOPO(Trioctylphosphine oxide)を用いる。また,DNAがOH基を引き寄せやすいこと,TOPOにおいてTOPO修飾した微粒子が非極性溶媒中で強い分散性を示すことから,溶媒としてヘキサンを用いる。
TOPOが分散機能を果たすかどうかをみるために,ナノキューブとしてBTナノキューブを用いて次の方法により実験した。
初めにヘキサン20mlが入ったバイアル瓶にBaTiO0.03gを加え3分間超音波分散させる。その後1分静置させた後,分散剤となるTOPOを加えさらに3分間超音波分散させ1分間静置,最後に3分間超音波分散を行う。静置の時間を入れているのは超音波分散による温度上昇を防ぐためである。分散しているかどうかについては,24時間静置後の外観とチンダル現象の有無により判断した。
TOPOは融点が約50℃であるから,室温および60℃においてそれぞれBTナノキューブの溶液に対して1,2,4,6mol倍のTOPOを加える実験を行った。さらに70℃においても6,30,60mol倍のTOPOを加える実験を行った。
室温においては,6mol倍のものは操作直後からは若干変化し,24時間静置後も白濁していた。6mol倍のものはTOPO無しのものと比べても違いが分かり,レーザー光を当てると4mol倍,6mol倍のものではっきりとチンダル現象を見ることができた。60℃においては,室温の場合と同様,6mol倍のものはTOPO無しのものと比べて外観の違いが分かり,2mol倍,4mol倍,6mol倍のものでチンダル現象が観察できた。70℃におけるものは,24時間静置後においても外観はどれも白濁しており,30mol倍のものは操作直後と比べてほとんど変化がなかった。レーザー光を当てると,すべてのものにおいてチンダル現象が観察できた。これらの結果からTOPOは分散剤として使用できることが分かった。
BT,STナノキューブの集積化と結合のために,分散/架橋剤としてTOPOを,選択的結合剤としてDNA塩基のアデニン(A)とチミン(T)を用いた。
初めにBTナノキューブ,STナノキューブをヘキサン溶媒内で分散させるため(凝集をとくために),70℃において30mol倍のTOPOを加えて上記と同様の操作を行った。最後の3分間の超音波分散終了後,BTナノキューブ溶液に10mol倍のアデニン(A)を,STナノキューブ溶液に10mol倍のチミン(T)を加え,3分超音波分散,1分静置の操作を2回繰り返し,その後24時間静置した。その後,それぞれの上澄み溶液を5mlはかり取り両者を同じバイアル瓶に入れ,更に3分間超音波分散,1分静置の操作を2回繰り返した。集積化しているかどうかは透過形電子顕微鏡(TEM)により観察し,確認した。
BT,STナノキューブ同志の規則的な結合を確認する事ができた。そのTEM像を第1図に示す。第2図は第1図の写真におけるBTとSTを分りやすく明示したものである。規則性をもって集積結合していることが分る。
図面
【図1】
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【図2】
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