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明細書 :人工超格子粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5463582号 (P5463582)
公開番号 特開2010-208923 (P2010-208923A)
登録日 平成26年1月31日(2014.1.31)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 人工超格子粒子
国際特許分類 C30B  29/68        (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
C30B  29/32        (2006.01)
C30B  29/66        (2006.01)
FI C30B 29/68
C01G 23/00 C
C30B 29/32 C
C30B 29/66
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2009-059753 (P2009-059753)
出願日 平成21年3月12日(2009.3.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 研究集会名 平成20年度 山梨大学工学部応用化学科 卒業論文発表会 主催者名 国立大学法人山梨大学 公開場所 山梨大学 総合情報センター・多目的ホール 公開日時 平成21年3月2日
審査請求日 平成24年3月12日(2012.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】和田 智志
【氏名】後藤 隆幸
審査官 【審査官】若土 雅之
参考文献・文献 特開2005-279633(JP,A)
特開昭64-037462(JP,A)
特開平05-319808(JP,A)
国際公開第2007/107574(WO,A1)
特開2007-018891(JP,A)
特開2003-261329(JP,A)
特開2001-220300(JP,A)
特開2005-281092(JP,A)
特開2003-026423(JP,A)
特開2004-339040(JP,A)
特開2005-314190(JP,A)
特開2005-289737(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
C01B 13/00-13/36
C01G 1/00-23/08
特許請求の範囲 【請求項1】
核となる粒子の表面に、前記核となる粒子とは化学組成の異なる化合物を積層し、
前記核となる粒子及び前記化合物は、ともにBa,Sr,Ca,Pbの中から選ばれる少なくとも1種以上の第一の金属と、Ti,Zrの中から選ばれる少なくとも1種以上の第2の金属とを含む金属酸化物であることを特徴とする人工超格子粒子。
【請求項2】
前記核となる粒子と、前記化合物は、一方がチタン酸バリウムを含み、他方がチタン酸ストロンチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の人工超格子粒子。
【請求項3】
前記核となる粒子はチタン酸バリウムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかにに記載の人工超格子粒子。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれかに記載の人工超格子粒子を備えたことを特徴とするフィルムキャパシタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工超格子誘電体ナノ粒子の作製方法に関するものであり、大容量密度のフィルムキャパシタに用いられる誘電体ナノ粒子として利用できるものである。

【背景技術】
【0002】
化学組成の異なる2種類以上の単位格子を自然界に存在しない周期構造で積層した人工超格子は、現在は単結晶を基板とし、超高真空下で超格子薄膜として作製される。しかし、薄膜では変調構造が膜厚方向にしか存在せず、従って変調構造より期待できる巨大物性は1次元のみに留まる。また、人工超格子薄膜の作製には500℃以上の高温が必要であり、その結果、化学組成の急峻な界面を保つことが困難であった。特許文献1には、酸化物人工超格子薄膜とその製造方法について開示されているが、薄膜の製造であり、本発明である球状粒子の製造に関しては、記載も示唆もされていない。特許文献2には、正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法が開示されているが、本発明のナノ粒子の積層化に関しては、記載も示唆もされていない。特許文献3には、カルシウムドープチタン酸バリウムの製造方法が開示されているが、ナノ粒子の積層化に関しては記載も示唆もされていない。

【先行技術文献】
【0003】


【特許文献1】特開2000-154100
【特許文献2】特開2005-272295
【特許文献2】特開2005-281092
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、現在、将来の超高速大容量通信を実現するための高周波回路素子として、電子基板内にL、C、R素子を3次元で実装するシステムインパッケージ(SIP)の実現が期待されているが、その課題となっているのが、C(キャパシタ)であり、10nF/mm2以上の容量密度を持つフィルムキャパシタが必要とされている。しかし、現時点でその容量密度は1桁小さく、その向上が求められている。3次元の変調構造を持つ人工超格子ナノ粒子を300℃以下の低温で作製することができれば、あらゆる方向に変調構造を持ち、その結果、すべての方位に対して巨大物性を持つ新材料を創生できる。一般にフィルムキャパシタは、高誘電率のセラミックス粒子と低誘電率のポリマーで構成されているが、セラミックス粒子の比誘電率には限界があり、どうしても必要となる容量密度を達成できない。しかし、このセラミックス粒子の代わりに、比誘電率が1桁以上も高いことが予測できる新規な構造の人工超格子ナノ粒子を用いることができれば、上記容量密度を超えるフィルムキャパシタの提供が可能となる。

【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明による人工超格子粒子は、核となる粒子の表面に、前記核となる粒子とは化学組成の異なる化合物を積層し、前記核となる粒子及び前記化合物は、ともにBa,Sr,Ca,Pbの中から選ばれる少なくとも1種以上の第一の金属と、Ti,Zrの中から選ばれる少なくとも1種以上の第2の金属とを含む金属酸化物であることを特徴とする。

【0006】
本願発明の別な側面による人工超格子粒子は、前記核となる粒子と、前記化合物は、一方がチタン酸バリウムを含み、他方がチタン酸ストロンチウムを含むことを特徴とする。

【0007】
本願発明の別な側面による人工超格子粒子は、前記核となる粒子はチタン酸バリウムであることを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
化学組成の異なる2種類以上の単位格子を自然界に存在しない周期構造で積層した人工超格子は、現在は単結晶を基板とし、超高真空下で薄膜として作製される。従って、変調構造より期待できる巨大物性は1次元のみに留まり、また高温での成膜の結果、化学組成の急峻な界面を保つことが困難であった。そこで、3次元の変調構造を持つ人工超格子ナノ粒子を300℃以下で作製することができれば、あらゆる方向に巨大物性を持つ新材料を創生できる。従って、3次元の人工超格子ナノ粒子ができれば、これまでにない巨大な物性や多機能を併せ持った夢の新材料を創生することができ、本発明はその根幹をなすものである。
【0009】
本発明では、誘電体ナノ粒子に注目したが、誘電体以外に磁性体や半導体でも歪み変調構造による巨大特性を期待することができる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】人工超格子ナノ粒子の概念図
【図2】オートクレーブ装置
【図3】BTのXRDの水/エタノール比依存性
【図4】BTのXRDの反応温度依存性
【図5】BTのXRDのBa/Ti比依存性
【図6】BTの生成領域
【図7】STのXRDの水/エタノール比依存性
【図8】BTのXRDの反応温度比依存性
【図9】STのXRDのSr/Ti比依存性
【図10】STの生成領域
【図11】ST/BT複合粒子の第1段階のXRD結果
【図12】ST/BT複合粒子の1段階のSEM写真
【図13】ST/BT複合粒子の第1段階のTEM写真
【図14】ST/BT複合粒子の第2段階のXRD結果
【図15】ST/BT複合粒子の第2段階のSEM写真

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本発明の構造の概念図を示す。本発明の人工超格子ナノ粒子を構成する酸化物であるBaTiO3、SrTiO3についての条件検討結果を示すが、酸化物として、他にCaTiO3、PbTiO3、PbZrO3、CaZrO3、SrZrO3、BaZrO3についても用いることができ、またこれらに限定されるものではない。
(1)出発原料の選択
本発明における出発原料として、Ba源、Sr源、Ti源、O源の4種類の元素を含む原料が必要である。この中でO(酸素)については、アルコールや水などのOHから得ることができるため、検討から除外する。また、Ba、Srは溶解度が高いものから低いものまで様々な原料形態が存在する。本発明では、BaTiO3(BT)、SrTiO3(ST)をそれぞれ独立に合成するため、Ba、Sr原料については一般的な原料である無水水酸化バリウム(Ba(OH)2)、無水水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)を使用し、その代わりに、両方の合成反応に共通するTi源について制御することで、反応全体の制御を試みた。
【0012】
一般に、Tiは溶液中で不安定であり、水酸化チタン(ゲル状)のような形で存在する。また、酸化チタンナノ粒子のような形態での使用も報告され、この場合は塩基性が高い場合にTiイオンとして溶解することが知られている。しかし、理想的には溶液に溶けた錯体形状で安定に存在していることが、反応の均一性からも望ましい。一般にはアルコキシドであるチタンテトライソプロポキシド(Ti(iPrO)4、TP)がアルコールを溶媒として用いられるが、反応性が高いため室温でも僅かな水分で反応、分解し、最終的に水酸化チタンゲルを生成する。セラミックス粒子の合成には、核生成とそれに続く核成長という2つの過程が存在し、核生成速度、各成長速度ともに温度に対して正規分布を示す。また、それぞれの最大速度を示す温度は、核生成の方が核成長よりも一般的に低くなることが知られている。従って、溶液中に錯体の形で安定に存在するものの、高温まで反応せず、核成長がより支配的になる温度で、不安定になるようなTi源が存在すれば、核生成を起こさず、核成長のみを起こすのに最適なTi源となることができる。
【0013】
そこで、TPのイソプロキシル基の一部をキレート配位子で置換し、高温まで安定に配位している化合物について検討し、TPの4つのイソプロキシル基の内、2つをアセチルアセトンというキレート配位子で置換したチタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(iPrO)2(AcAc)2、TPA)をTi源として使用することにした。以下にTPAを用いたBTやSTの生成機構について示す。
【0014】
(2)TPAを用いたBTの核生成をせずに、ヘテロ核成長のみがおこる条件
(ア)水‐エタノール溶媒混合比依存性
まず、ソルボサーマル法によるBTの合成を、溶媒混合比を0~1.0まで変えて行った。 Ba/Ti仕込み比を1.5とし、Ba(OH)2 2.570 g(0.015 mol)と TPA 4.820ml(0.010 mol) を、混合比を変えた水-エタノール混合溶液(250 ml) に入れ5分程度攪拌を行った。できた溶液を500 ml のオートクレーブ内に移し変えた。(図2)のような装置に取り付け、密閉状態で260℃、18時間保持し、昇温速度は120℃/hとした。オートクレーブ内は、密閉中は常時、300 rpmで攪拌した。その後、容器内が室温まで冷めるまで空冷し、反応物を取り出して高速遠心分離機を用いてろ過採集を行い、採取した沈殿物を20時間程度乾燥した。得られた試料は乳鉢で軽く粉砕し、X線回折測定 (XRD)、または56走査型電子顕微鏡(FE-SEM) および透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。電子顕微鏡観察用の試料はエタノールに混ぜ、超音波によって分散処理を行った。また、不純物である炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)が多く含まれている粉体は、薄い酢酸溶液により10分程度洗浄を行い、高速遠心分離機でろ過採集した後、乾燥機内で乾燥した。

【0015】
水‐エタノール溶媒混合比をエタノールの割合0~100%(以下、Et0~Et1.0)をEt0、Et0.3、Et0.5、Et0.7、Et1.0の6点に決め、合成したもののXRD測定を行った。(図3)この結果からEt0.3、Et0.5、Et0.7の3点においてBTの生成が確認できた。Et0、Et1.0においてはBTの生成はみられず、Et0ではXRDのプロファイルからBa4Ti12O27、Ba6Ti17O40等のTiリッチのバリウムチタン酸化物が含まれており、それ以外の4点においては、不純物である炭酸バリウム(BaCO3)が含まれていた。
(イ)反応温度依存性
溶媒混合比を0.5水:0.5エタノール、Ba/Ti仕込み比を1.5、Ti濃度を0.04mol/lに固定し、反応温度を170~260℃で変化させ実験を行った。反応温度を170~260℃で合成した7点のXRD測定を行った結果、180℃以上の反応温度においてBTが生成し、175℃以下ではBTの生成が確認できなかった。(図4)また、BTが生成した5点では、高温になるにつれてX線の回折強度が強くなった。
(ウ)Ba/Ti仕込み比依存性
溶媒混合比を0.5水:0.5エタノール、反応温度を240℃、Ba濃度を0.06mol/lに固定し、Ba/Ti仕込み比を0.75~15で変化させ、実験を行った。Ba/Ti仕込み比を0.75 ~15まで変化させて合成した4点のXRD測定を行った結果、Ba/Ti=1.5~15においてBTの生成が確認できた。(図5)Ba/Ti=3のメインピークが最も高くなっており、不純物であるBaCO3のメインピークがBa/Ti=15と比較して3分の1程度になっていることがわかる。Ba/Ti=0.75ではBTは生成されず、非晶質がほとんどであった。
(エ)BT生成反応におけるまとめ
図6は3軸のそれぞれを水-エタノール比、Ba/Ti比、反応温度とし、BTが生成した領域を示した3次元図である。BT生成はBTの核生成、核成長が実際に起きたことを意味する。従って、BTが生成しなかった領域では、BTの核生成が起らなかったことを示唆する。
(3)TPAを用いたSTの核生成をせずに、ヘテロ核成長のみがおこる条件
(ア)水‐エタノール溶媒混合比依存性
STにおいてもBTと同様の実験を行った。反応温度240℃、Sr/Ti仕込み比を1.5に固定し、Sr(OH)2 1.825 g(0.015 mol)と TPA 4.820ml(0.010 mol)として、
水‐エタノール溶媒混合比を0~1.0まで変化させた。STでは、Et0、Et0.5、Et1.0の3点の合成を行った。このXRD測定結果を図7に示す。この結果から、BTとは異なりEt0.5だけでなく、Et0、Et1.0の点においてもSTの合成が確認できた。また、BTと比較して全体的にX線の回折強度がはるかに強くなっていることがわかった。
(イ)反応温度依存性
溶媒混合比を0.5水:0.5エタノール、Sr/Ti仕込み比を1.5、Ti濃度を0.04mol/lに固定し、反応温度を180~260℃で変化させた。反応温度180~260℃の7点で変化させた合成のXRD測定結果を図8に示す。この結果から190℃以上の温度でSTが生成し、185℃以下の温度では不純物であるSrCO3のみの生成であることがわかった。
(ウ)Ba/Ti仕込み比依存性
溶媒混合比を0.5水:0.5エタノール、反応温度を240℃、Sr濃度を0.06mol/lに固定し、Sr/Ti仕込み比を0.75~3で変化させた。Sr/Ti仕込み比を0.75~3で変化させ合成した4点のXRD測定結果を図9に示す。この測定結果からSr/Ti=1.5、3においてSTの生成し、Sr/Ti=0.75では酸化チタン(TiO2(Anatase))が生成することが確認できた。さらにSTの生成ポイントとTiO2のそれとの間のSr/Ti=1.0においても実験を行ったところ、大部分が非晶質で、少量のSrCO3が生成していた。
(エ)ST生成反応におけるまとめ
図10は3軸のそれぞれを水-エタノール比、Sr/Ti比、反応温度とし、STが生成した領域を示した3次元図である。ST生成はSTの核生成、核成長が実際におこったことを意味する。従って、STが生成しなかった領域が、STの核生成が起らなかったことを示唆する。
(4) BTとST生成機構
反応温度を変化させる実験において、BTでは180℃以上、STでは190℃以上でそれぞれの生成が確認できた。これはBa(OH)2、Sr(OH)2の溶解度を考慮すると、どちらも水に対してよく溶け、密閉容器内の温度が180℃になる前に溶解していると考えられるので、TPAからTiが溶解し始める温度とほぼ同じと考えられる。また、BT とSTのどちらにおいても生成し始める温度は5℃以内の差であることは、実験結果から明白であるのでTi濃度がBTでは175~180℃、STでは185~190℃の間で急激に高くなっていると考えられる。

【0016】
このBTとSTにおけるTiの溶解開始温度の違いは、Ba(OH)2とSr(OH)2の溶解度の違いが関係していると考えられる。Ba(OH)2の溶解度はSr(OH)2のそれと比べ80℃において5倍以上の差がある。また、反応温度を変化させる実験では、0.5水‐0.5エタノール混合溶液を溶媒として用いているので、Ba(OH)2、Sr(OH)2ともに溶解度は低下する。これにより、溶解度は溶媒に水のみを用いる条件より温度依存性が高くなり、それに伴いBa(OH)2とSr(OH)2の溶解度の違いが溶媒中のpHの違いとして現れると考えられる。したがって、このpHの差により、通常では溶け出しにくいTiの溶解を補助し、pH値が高いBa(OH)2を含む溶液の方が若干、BTの生成が低温側で起こったと考えられる。このTiの溶解反応を以下に示す。
【0017】
Ti(i-PrO)2(AcAc)2 + 4H2O → Ti(OH)4 + 2i-PrOH + 2AcAc …(※)
これ以下の反応として、TiO2が生成される場合の反応は、
Ti(OH)4 → TiO2 + 2H2O
となり、BT生成の反応としては以下のようになると考えられる。
【0018】
Ti(OH)4 + Ba(OH)2 → BaTiO3 + 3H2O
TiO2 + Ba(OH)2 → BaTiO3 + H2O
Ti仕込み比を変化させる実験以外では、Ba/Ti=1.5を基本とし、STの合成においても同様にSr/Ti=1.5で実験を行ったが、BTとSTの回折強度を比較すると非常に大きな差があることがわかる。溶媒混合比がEt0とEt1.0においても比較すると、BTの実験においてはBTの生成がみられなかったのに対し、STの合成ではどちらの点においてもSTが生成している。これにより、BTとSTではその生成に適したTi仕込み比が異なっており、実験結果よりBa/Ti=3、STにおいてはSr/Ti=1.5が効率よく生成していると考えられる。ここで、BT およびSTの生成において仕込み原料比が1ではないということについて、BTを例に次のように考えた。
【0019】
nAcAc + Ba(OH)2 → Ba(OH)2(AcAc)n
このような反応が(※)式に示した反応とともに起こったとすると仮定すると、AcAc(アセチルアセトン)に攻撃されたBaイオンは不活性となり、BT生成反応に使われなくなる。また、ST生成の反応においても、Sr イオン1つに対してAcAcが3ないし4配位することにより、BTの生成と同様のことがいえる。

【実施例】
【0020】
以下に、市販のBT球状ナノ粒子の上に、ST層をエピタキシャルに成長させることを目的としたBT/ST複合ナノ粒子の作製方法について、説明する。
まず、第1段階(低温)において、Sr/Ti仕込み比を1.1とし、Sr(OH)2 1.338 g(0.011 mol)と TPA 4.820ml(0.010 mol) を、0.5水-0.5エタノール混合溶液(250 ml) に入れ5分程度攪拌した溶液に結晶核となる市販のBT球状ナノ粒子BT-01(堺化学工業、100nm)2.33g (0.010mol:STの理論生成量と同mol)とともに500 ml の密閉容器内に移し変えた。オートクレーブ装置に入れ、密閉状態で190℃、18時間加熱保持した。昇温速度は120℃/hとした。オートクレーブ内は、常時300 rpmで撹拌した。その後、容器内が室温になるまで放冷し、反応物を取り出して高速遠心分離機を用いてろ過採集を行い、採取した沈殿物を20時間程度乾燥した。得られた試料は乳鉢で軽く粉砕し、X線回折測定 (XRD)、または走査型電子顕微鏡(FE-SEM) および透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。
【0021】
次に、第2段階として、そのままの装置状態で、190℃から、冷却せず、そのまま加熱温度を240℃まで120℃/hで昇温し、18時間保持した後、空冷により室温まで冷却した。
低温において合成された複合粒子のXRD測定結果およびSEMおよびTEM観察写真を(図11、12、13)に示す。まず、SEM観察によりBT-01の周囲を層が覆っていることがわかる。(図12)BT-01の周囲を覆う層から、キューブ状で30から40nmの粒子が部分的に生成されている粒子も見られた。このキューブ状の粒子はXRD測定結果(図11)よりSTであることを確認した。さらにTEMによる観察(図13)を行った。このTEM観察の結果から、内側に見られる100nm程度の球状粒子はBa元素とTi元素が同一の座標に存在することから、BT-01であることが確認できたが、表面にみられる層状の物質はSr元素のみ存在していることから、ストロンチウム酸化物等のSrを含むアモルファス物質、つまりSTの前駆体であることを確認した。

【0022】
高温において合成された複合粒子のXRD測定結果およびSEM観察写真を図14、15に示す。高温で合成されたため、XRDプロファイルにはSTのX線回折強度がBT-01と同程度検出され、高い結晶性のSTが含まれることが分かった。また、SEM写真による観察においては、STの粒子がBT-01に付着するものもみられるが、同程度の頻度でSTの結晶がBT-01の周囲を覆い、多層を形成している。これにより、BT- ST系の多層構造を持つ複合粒子であることを確認した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
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【図14】
13
【図15】
14