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明細書 :2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5585910号 (P5585910)
公開番号 特開2011-173842 (P2011-173842A)
登録日 平成26年8月1日(2014.8.1)
発行日 平成26年9月10日(2014.9.10)
公開日 平成23年9月8日(2011.9.8)
発明の名称または考案の名称 2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジンの製造方法
国際特許分類 C07D 211/74        (2006.01)
FI C07D 211/74
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2010-040200 (P2010-040200)
出願日 平成22年2月25日(2010.2.25)
審査請求日 平成25年2月1日(2013.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】宝田 恭之
【氏名】曹 景沛
個別代理人の代理人 【識別番号】100085372、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 正義
審査官 【審査官】早川 裕之
参考文献・文献 特開平07-291931(JP,A)
特開2009-262047(JP,A)
特開2005-040671(JP,A)
特開2004-195454(JP,A)
特開2003-103299(JP,A)
特表2004-525081(JP,A)
調査した分野 C07D 211/74
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
嫌気性硝化により堆肥化された下水汚泥を熱分解して少なくともアンモニアを含む熱分解生成物を生成させる工程と、
前記生成させた熱分解生成物をアセトンに通じ、前記熱分解生成物中の少なくともアンモニアを前記アセトンに吸収溶解させる工程と、
前記吸収溶解液を一定時間保持する工程と、
前記保持した吸収溶解液から2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジンを単離する工程とを含む
ことを特徴とする2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジンの製造方法。
【請求項2】
前記熱分解の温度が400℃以上700℃未満である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱分解の温度が450℃以上550℃未満である請求項記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱分解生成物をアセトンに通じる時間が熱分解生成を開始してから10秒以内である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記吸収溶解液の保持が12時間以上室温下で行われる請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記吸収溶液からの単離がカラムクロマトグラフィーによる単離である請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
前記カラムクロマトグラフィーによる単離に用いる溶離液がメタノール、ノルマルヘキサン、酢酸エチルの単独又はこれらの混合溶剤である請求項記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物として処理されている下水汚泥から、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として有用な2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジン(トリアセトンアミン。以下、TAAという。)を簡便にかつ高収率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TAAは、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として利用されているが、その製造方法は従来より数多く知られている。
【0003】
例えば、テトラヒドロピリミジン誘導体を原料に有機酸のアンモニウム塩や有機酸の金属塩を触媒として使用して製造する例が開示されている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、アセトンやアセトンの縮合物と2,2,4,4,6-ペンタメチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリミジンを原料にし、マグネシウムやマンガン、コバルト、ニッケルなどの金属の酢酸塩や活性炭を触媒として製造する方法が開示されている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【0004】
しかし、上記特許文献1~4に示される方法では、ピリミジン誘導体という高価な原料を使用するため、製造されるTAAのコストアップが避けられず、また使用した触媒である金属塩や活性炭の脱離工程が必須であり、工程の煩雑さも避けられない。
【0005】
また、原料に安価なアンモニア又はアンモニア供与体とアセトン又はアセトン化合物を使用する例も多く知られている(例えば、特許文献5,6参照。)。
【0006】
しかし、上記特許文献5,6に開示されている技術では、いずれも触媒としてカルシウムを含有するアルミノシリケートやマグネシウム・アルミニウム複合化合物を使用しており、触媒脱離工程が必要であり、工程の煩雑さは避けられない。
【0007】
また、触媒脱離工程を回避することが可能な有機系の触媒を使用する例も開示されている。例えば、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体のハロゲン化水素酸塩を使用する方法(例えば、特許文献7参照。)、ヒドロキシルアミンのハロゲン化水素塩を触媒に使用する方法(例えば、特許文献8参照。)、硫酸ジメチルを使用する方法(例えば、特許文献9参照。)、オクタクロロシクロテトラホスファゼンを使用する方法(例えば、特許文献10参照。)、ニトロフェノール類やニトロナフトール類を使用する方法(例えば、特許文献11参照。)などがある。
【0008】
しかし、上記特許文献7~11に示される方法では、製造されるTAAの収率が低く、結果的にコストアップが避けられない。
【0009】
また、収率を上げたり純度を高めたりするための方法も開示されている。例えば、TAAの粗生成物をタール分除去後に精留する方法(例えば、特許文献12参照。)や、粗反応液を強アルカリなどで触媒を洗い流した後に油層を蒸留する方法(例えば、特許文献13,14参照。)が開示されている。また、多段の蒸留塔で数工程を経由して高純度のTAAを製造する方法も提案されている(例えば、特許文献15参照。)。
【0010】
しかし、上記特許文献12~15に示される方法のように、アルカリを使用した場合は触媒を回収、再生又は廃棄処分するなどの工程の煩雑さは避けられず、廃棄処分の場合は環境問題を発生させる懸念が残るなどの欠点を有する。また、いずれも高価な設備投資を必要とする蒸留塔や精留塔が必須であり、低コストでの製造方法とは言い難い。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開昭63-10761号公報
【特許文献2】特開平5-86030号公報
【特許文献3】特開昭62-167763号公報
【特許文献4】特開平7-278107号公報
【特許文献5】特表2004-525081号公報
【特許文献6】特開平7-291931号公報
【特許文献7】特公昭59-7701号公報
【特許文献8】特開平5-140104号公報
【特許文献9】特開平10-87620号公報
【特許文献10】特開平5-140105号公報
【特許文献11】特開平2-88556号公報
【特許文献12】特開2000-239257号公報
【特許文献13】特開2003-206277号公報
【特許文献14】特開2001-31651号公報
【特許文献15】特開2003-160561号公報
【0012】

【非特許文献1】Eun-Seuk Park, Bo-Sung Kang, Joo-SukKim, Energy & Fuels 2008, 22, p.1335-1340
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来より数多く知られるTAAの製造方法では、TAAを簡便にかつ高収率、高純度で製造することが困難であるという課題があった。
【0014】
本発明の目的は、廃棄物として処理されている下水汚泥から、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として有用なTAAを簡便にかつ高収率、高純度で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、廃棄物として処理されている下水汚泥を原料として用いることに着目し、この下水汚泥を熱分解することで得られる熱分解生成物をアセトン中に吸収溶解させ、この吸収溶解液を単に室温で一定時間保持することにより、吸収溶解液中にTAAが高い収率で生成されること、更に、この保持した吸収溶解液からTAAを高純度で容易に単離できることを見出し、本発明を完成させた。なお、TAAを高収率で製造する原料として、下水汚泥という廃棄物として処理されている、いわば安価に入手可能なバイオマスを利用する技術は従来知られておらず、また、本発明に比較して低コストで製造できる従来技術も開示されていない。更に、下水汚泥の熱分解物中にTAAが存在することを確認した例(例えば、非特許文献1参照。)が知られているが、単に分解生成物中の組成を明らかにしたものであり、TAAを高収率で製造する方法や、分解生成物から積極的に単離する方法は提案されていない。
【0016】
本発明の第1の観点は、嫌気性硝化により堆肥化された下水汚泥を熱分解して少なくともアンモニアを含む熱分解生成物を生成させる工程と、生成させた熱分解生成物をアセトンに通じ、熱分解生成物中の少なくともアンモニアをアセトンに吸収溶解させる工程と、吸収溶解液を一定時間保持する工程と、保持した吸収溶解液からTAAを単離する工程とを含むことを特徴とするTAAの製造方法である。
【0018】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に熱分解の温度が400℃以上700℃未満であることを特徴とする。
【0019】
本発明の第の観点は、第の観点に基づく発明であって、更に熱分解の温度が450℃以上550℃未満であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に熱分解生成物をアセトンに通じる時間が熱分解生成を開始してから10秒以内であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に吸収溶解液の保持が12時間以上室温下で行われることを特徴とする。
【0022】
本発明の第の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に吸収溶液からの単離が、カラムクロマトグラフィーによる単離であることを特徴とする。
【0023】
本発明の第の観点は、第の観点に基づく発明であって、更にカラムクロマトグラフィーによる単離に用いる溶離液が、メタノール、ノルマルヘキサン、酢酸エチルの単独又はこれらの混合溶剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、下水汚泥を熱分解して少なくともアンモニアを含む熱分解生成物を生成させ、生成させた熱分解生成物をアセトンに通じ、熱分解生成物中の少なくともアンモニアをアセトンに吸収溶解させ、この吸収溶解液を一定時間保持し、更に保持した吸収溶解液からTAAを単離する、といった簡便な工程を経ることにより、廃棄物として処理されている下水汚泥から、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として有用なTAAを、上述した従来より数多く知られる製造方法に比べ、簡便にかつ高収率、高純度で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るTAAを製造する方法の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1における吸収溶解液の保持時間とアセトニン及びTAAの収率並びにTAA転換率との関係を示す図である。
【図3】比較例2におけるアンモニアとアセトンの混合液の保持時間とTAA転換率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。

【0027】
本発明に係るTAAの製造方法に用いる製造装置の一例を図1に示す。この製造装置10は、下水汚泥を熱分解させる熱分解炉11と、生成した熱分解生成物からTAAを合成する反応容器12とを備える。熱分解炉11としては電気炉が用いられる。なお、図1では複数の容器12,12…が直列に接続された構成をとる。

【0028】
熱分解炉11上部には下水汚泥を効率良く供給することが可能な振動式フィーダー13と、熱分解炉11内での熱分解により生成する熱分解生成物を反応容器12に搬送するための搬送ガス手段14が設けられる。

【0029】
熱分解炉11内部には、少量の原料の熱分解に好適な落下式石英製熱分解管16が設置される。この熱分解管16内の中央部には、固体のままの未分解の下水汚泥が落下するのを防ぐための焼結石英板17と、熱分解管16内部の温度を測定するための熱電対18が配置される。熱電対18は熱分解炉11の外に設けられた温度制御器19に電気的に接続され、この温度制御器19によって熱分解管16内部の温度が制御される。

【0030】
反応容器12内には熱分解生成物中の少なくともアンモニア成分を吸収溶解させるためのアセトン21が貯留される。反応容器12はアセトン21の蒸散を避けるために冷却することが好ましい。搬送ガス手段14は、搬送ガスを貯蔵するガス保存容器22と、ガス開閉弁23,24と搬送ガス流量を調整する流量メーター26とを備える。ガス保存容器22に貯えられる搬送ガスとしてはアルゴンガスが用いられる。反応容器12には、反応容器12を通じた後の排ガスを回収するガス捕集袋27が接続される。

【0031】
このように構成された製造装置10を用いた本発明のTAAの製造方法を説明する。

【0032】
先ず、搬送ガス手段14のガス開閉弁23,24を開いて搬送ガスを熱分解炉11側に向かって流すとともに、流量メーター26によりこの搬送ガスの流速を制御する。そして、振動式フィーダー13から下水汚泥を供給する。原料である下水汚泥は、乾燥させた下水汚泥や堆肥化された下水汚泥、これらの混合物を用いることが好ましい。なお、汚泥そのままを使用することは可能であるが、小型の熱分解装置や熱分解炉を用いる場合には、粗砕後、乾燥することが好ましい。使用する下水汚泥は、その水分量は限定されないが30%未満、好ましくは20%未満が良好である。振動式フィーダー13は、粉末状の乾燥した下水汚泥や嫌気性条件で堆肥化された水分の少ない汚泥を原料とする際に効率よく作動する。なお、本実施の形態では振動式フィーダー13としたが、フィーダーの形式は特に制限されない。

【0033】
供給した下水汚泥は、熱分解炉11内部の熱分解管16に運ばれる。なお、本実施の形態では熱分解炉11に電気炉を用いる構成としたが、本発明において熱分解炉の方式は特に限定されるのものではなく、大型のキルンや流動床式を採用することもできる。これらの方式を使用する場合は、原料である下水汚泥は粒状又は塊状でも特に問題にならない。熱分解炉11内部の熱分解管16に運ばれた下水汚泥は、熱分解管16内で加熱され、熱分解する。この熱分解により、少なくともアンモニアを含む熱分解生成物が生成される。ここでの下水汚泥の熱分解は、還元性雰囲気中、400℃以上700℃未満の温度範囲で実施される。400℃未満では熱分解の速度が遅くなり、700℃以上であると発生するアンモニアの量が減少する。このうち、熱分解温度は比較的低温の450℃以上550℃未満が好ましい。なお、本実施の形態では、熱分解管16の温度制御に熱電対18と温度制御器19を用いた構成としたが、温度制御の方法などは特に限定されるものではなく、いかなる方法も採用できる。また、本実施の形態では搬送ガスにアルゴンガスを用いる構成としたが、不活性ガスとして窒素ガスを使用してもよい。また、還元性雰囲気とするための不活性ガスは用いる必要はないが、熱分解の雰囲気中の酸素濃度が12%以上あると酸化分解が進行してTAAの収率低下を招くため好ましくない。より好ましい酸素濃度は2%以内である。

【0034】
熱分解管16内での熱分解により生じた少なくともアンモニアを含む熱分解生成物は、搬送ガスにより熱分解管16の下端から排出され、反応容器12に送られる。そしてこの熱分解生成物を反応容器12中に貯留されたアセトン21に通じることにより、熱分解生成物中の少なくともアンモニアをアセトン21に吸収溶解させる。熱分解生成物のアセトン21への吸収溶解は比較的速やかに行うことが好ましい。熱分解が開始され、熱分解生成物が生成されてから、反応容器12に貯留されたアセトン21に吸収溶解されるまでの時間が長いとTAAの収率が低下してしまう不具合を生じる。熱分解生成物が生成されてから、アセトン21に吸収溶解させるまでの時間は、10秒以内が好ましく、より好ましいのは数秒以内である。

【0035】
本発明者らは本発明の製造方法によりTAAが高収率で製造される理由を、下水汚泥の熱分解により生成する熱分解生成物中のアンモニアが、生成した後、酸化消費されるよりも早くアセトンに接触吸収させられ、同じく熱分解生成物中に存在すると思われる未確認の触媒作用を有する化合物により、アセトン吸収溶解液中で反応が進行して時間の経過とともにTAAの収率が増加するものと推察している。

【0036】
アンモニアを含む熱分解生成物及び搬送ガスを反応容器12中に通じ、吸収溶解させた後、反応容器12から排出された搬送ガスを主成分とする排ガスは、ガス捕集袋27に導かれ、回収される。ガス捕集袋27に回収された排ガスは、排ガスの成分などを測定することもできる。環境汚染物質の排出の危険性を回避する意味において、方式は限定されないが当該排ガス検知施設の設置が望ましい。

【0037】
次に、反応容器12内で吸収溶解液を一定時間保持する。吸収溶解液を一定時間保持することで時間の経過とともに反応が進行し、液中のTAAの収率が上昇していく。吸収溶解液の保持は12時間以上室温下で行われることが好ましい。吸収溶解液の保持温度は特に限定されない。なお、吸収溶解液の保持温度は特別に設定することも可能であるが、エネルギーを使用することなく、単に室温で吸収溶解液を放置するだけで、TAAを高収率で製造することができる。

【0038】
更に、反応容器12内で保持した吸収溶解液からTAAを単離する。この保持した吸収溶解液を、そのまま従来公知の分離技術や単離技術による精製方法に供することも可能であるが、本発明では、容易に高純度でのTAAの単離が可能なカラムクロマトグラフィーを用いる。また、このカラムクロマトグラフィーによる単離では、適切な溶離液を選択することにより、より高純度でのTAAの単離が可能となる。特に、メタノール、ノルマルヘキサン、酢酸エチルの単独又はこれらの混合溶剤による溶離液を使用することが望ましい。

【0039】
以上、上記各工程を経ることにより、廃棄物として処理されている下水汚泥から、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として有用なTAAを、上述した従来より数多く知られる製造方法に比べ、簡便にかつ高収率、高純度で製造することができる。
【実施例】
【0040】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0041】
<実施例1>
先ず、兵庫県赤穂市汚泥管理センターから得られた嫌気性硝化により堆肥化された下水汚泥を、107℃で24時間乾燥させ、乾燥物を粉砕し、60メッシュ篩を通過した粉末(粒子径0.25mm未満)を原料として用いた。原料の水分量を測定したところ、11.2%であった。
【実施例】
【0042】
次いで、図1に示す製造装置10の搬送ガスとしてアルゴンガスを使用し、反応容器12にはアセトン800mlを入れ、反応容器12はアセトンの蒸散を避けるために氷を用いて冷却した。また、搬送ガス手段14のガス開閉弁23,24を開いて上記アルゴンガスを熱分解炉11側に向かって流し、装置内をアルゴンガス雰囲気にするとともに、流量メーター26によりこのアルゴンガスの流速を300ml/分に制御した。また、熱分解炉11内に設置した熱分解管16を、温度制御器19により熱分解温度が500℃になるように制御した。
【実施例】
【0043】
そして、上記用意した原料粉末を0.1g/分の割合で振動式フィーダー13から供給した。供給した原料粉末は熱分解炉11内部の熱分解管16に運ばれ、熱分解管16内での熱分解により熱分解生成物が生成された。この熱分解生成物は、アルゴンガスにより熱分解管16の下端から排出され、アセトンが貯留された反応容器12に送られた。
【実施例】
【0044】
送られた熱分解生成物及びアルゴンガスは、反応容器12中に貯留されたアセトン21に通じられ、吸収溶解させた後、凝結又は吸収されずに反応容器12から排出されたガス状物質は、ガス捕集袋27により回収した。なお、ガス捕集袋27に回収されたガス状物質についてガス検知管によって測定したところ、アンモニアは検出されなかった。
【実施例】
【0045】
なお、熱分解管16内で熱分解生成物が生成されてから、反応容器12内のアセトン21に吸収溶解させるまでの時間は、1.2秒程度であった。
【実施例】
【0046】
次に、反応容器12中の吸収溶解液を室温下にて保持しながら、所定の間隔でサンプリングし、ガスクロマトグラフィー/質量スペクトロメトリー(以下、GC/MSという。:島津製作所製GCMS-QP2010)で成分分析を行い、アセトニン並びにTAA量を測定し、TAAへの転換率を算出した。アセトニンはアセトンとアンモニアの反応によって生じる中間生成物である。なお、標準物質として和光純薬株式会社から市販されているTAAを使用した。保持時間の経過に伴う吸収溶解液中のアセトニン及びTAAの収率並びにTAAへの転換率との関係を図2に示す。
【実施例】
【0047】
図2より明らかなように、保持時間が長くなるほどTAAが増加していくことが確認された。保持時間が175時間で約28%という高収率となり、その後は一定となった。なお、収率は上記原料として用いた乾燥下水汚泥粉末中の有機成分に対するTAAの収率である。
【実施例】
【0048】
一方、TAAの収率増加に伴い、吸収溶解液中に当初存在するアセトンとアンモニアの反応による中間生成物であるアセトニン量が徐々に減少した。これは、吸収溶解液中に存在する熱分解生成物のうち、触媒作用のある何らかの化合物が寄与し、中間生成物であるアセトニンからTAAへの転換反応が進んだことによるものと推察される。そして、保持時間が175時間を超えると、TAAへの転換率がほぼ90%という高い値に達した。
【実施例】
【0049】
<比較例1>
アセトン21の代わりに、反応容器12中にメタノールを貯留した以外は実施例1と同様に試験を行ったが、TAAは全く得られなかった。
【実施例】
【0050】
<比較例2>
原料として乾燥下水汚泥粉末を使用せず、反応容器にアンモニアとアセトンを所定の割合で供給して、これらを混合し、混合液を室温下にて保持しながら、所定の間隔でサンプリングし、上記実施例1と同様にGC/MSで成分分析を行い、TAA量を測定し、TAAへの転換率を算出した。保持時間の経過に伴う吸収溶解液中のTAAへの転換率との関係を図3に示す。なお、図3中の「A20N7」は、アセトン20ml及び28%アンモニア水7μlを混合した例を、「A20N70」はアセトン20ml及び28%アンモニア水70μlを混合した例を、「A20N700」は、アセトン20ml及び28%アンモニア水700μlを混合した例をそれぞれ示す。
【実施例】
【0051】
図3から明らかなように、どの例についても、保持時間が400時間前後を経過してもTAAへの転換率は0.8%にも達せず、アセトンとアンモニアだけでは反応が殆ど進行しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の製造方法によれば、廃棄物として処理されている下水汚泥から、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として有用なTAAを、従来より数多く知られる製造方法に比べ、簡便にかつ高収率、高純度で製造することができる。また、本発明により得られるTAAは、低価格での販売が可能となるため、医薬品や殺虫剤、ポリマーの光安定剤などの中間体として医療分野、農業分野、工業分野などの広い範囲で利用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 製造装置
11 熱分解炉
12 反応容器
13 振動式フィーダー
14 搬送ガス手段
16 落下式石英製熱分解管
17 焼結石英板
18 熱電対
19 温度制御器
21 アセトン
22 ガス保存容器
23,24 ガス開閉弁
26 流量メーター
27 ガス捕集袋
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2