TOP > 国内特許検索 > 点滴装置及び点滴監視システム、並びに検出装置 > 明細書

明細書 :点滴装置及び点滴監視システム、並びに検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5477788号 (P5477788)
公開番号 特開2011-125470 (P2011-125470A)
登録日 平成26年2月21日(2014.2.21)
発行日 平成26年4月23日(2014.4.23)
公開日 平成23年6月30日(2011.6.30)
発明の名称または考案の名称 点滴装置及び点滴監視システム、並びに検出装置
国際特許分類 A61M   5/00        (2006.01)
FI A61M 5/00 311
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2009-285942 (P2009-285942)
出願日 平成21年12月17日(2009.12.17)
審査請求日 平成24年10月19日(2012.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】阿部 晋
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
審査官 【審査官】佐藤 高弘
参考文献・文献 実開平04-061545(JP,U)
特開平09-043326(JP,A)
特開2000-221069(JP,A)
調査した分野 A61M 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
点滴パックに収容された点滴液を、滴下チャンバを介して点滴針まで流す滴下ラインを含む点滴装置において、
1以上の永久磁石が設けられ、前記滴下ラインを流れる前記点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる移動部材と、
前記滴下チャンバ外に設けられ、前記1以上の永久磁石の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤと、
前記感磁性ワイヤに懸巻した検出コイルであって、前記感磁性ワイヤにおいて発生した前記大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する検出コイルと、
前記検出コイルから出力された前記パルス信号を検出する信号検出部と、
を備え
前記移動部材は、前記滴下チャンバ内に設けられ、滴下する前記点滴液の力で回転するように配置された、複数の先端部を有する羽根車であって、
前記複数の先端部において磁気干渉が起きない間隔毎に、極性を反転させて前記永久磁石がそれぞれ配設されている、
点滴装置。
【請求項2】
前記信号検出部は、フォトカプラを有する
請求項1に記載の点滴装置。
【請求項3】
点滴パックに収容された点滴液を、滴下チャンバを介して点滴針まで流す滴下ラインを含む点滴装置と、前記点滴装置を監視する監視装置とを備える点滴監視システムにおいて、
前記点滴装置は、
1以上の永久磁石が設けられ、前記滴下ラインを流れる前記点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる移動部材と、
前記滴下チャンバ外に設けられ、前記1以上の永久磁石の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤと、
前記感磁性ワイヤに懸巻した検出コイルであって、前記感磁性ワイヤにおいて発生した前記大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する検出コイルと、
前記検出コイルから出力された前記パルス信号を検出する信号検出部と、
を有し、
前記移動部材は、前記滴下チャンバ内に設けられ、滴下する前記点滴液の力で回転するように配置された、複数の先端部を有する羽根車であって、
前記複数の先端部において磁気干渉が起きない間隔毎に、極性を反転させて前記永久磁石がそれぞれ配設されており、
前記監視装置は、
前記点滴装置の前記信号検出部により検出された前記パルス信号に基づいて、前記点滴装置を監視する
点滴監視システム。
【請求項4】
前記監視装置は、
前記点滴装置の前記信号検出部により一定時間に検出された前記パルス信号に含まれるパルスの間隔及び個数のうち少なくとも一方と、規定値とを比較することで、前記点滴装置を監視し、前記規定値を外れる場合には警告信号をさらに出力する
請求項に記載の点滴監視システム。
【請求項5】
滴下チャンバを介して所定のラインを通過する点滴液を検出する検出装置において、
1以上の永久磁石が設けられ、前記ラインを通過する前記点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる移動部材と、
前記滴下チャンバ外に設けられ、前記1以上の永久磁石の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤと、
前記感磁性ワイヤに懸巻した検出コイルであって、前記感磁性ワイヤにおいて発生した前記大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する検出コイルと、
前記検出コイルから出力された前記パルス信号を検出する信号検出部と、
を備え
前記移動部材は、前記滴下チャンバ内に設けられ、滴下する前記点滴液の力で回転するように配置された、複数の先端部を有する羽根車であって、
前記複数の先端部において磁気干渉が起きない間隔毎に、極性を反転させて前記永久磁石がそれぞれ配設されている、
検出装置。
【請求項6】
点滴装置に備えられた滴下ラインに自在に着脱可能な装着部をさらに備え、
前記装着部により前記検出装置が前記滴下ラインに装着されている場合、前記移動部材は、前記滴下ラインを流れる点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる
請求項5に記載の検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や薬液等の点滴液を人体の静脈内に少量ずつ注入するための点滴装置、及び、その監視を行う点滴監視システム、並びに、点滴装置等に適用し得る検出装置に関する。特に、点滴等の微小流量の検出を的確に行うことが可能であり、かつ低コストで提供可能な点滴装置及び点滴監視システム並びに検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液や薬液等の点滴液を人体の静脈内に少量ずつ注入するための点滴装置には、点滴液の流量等を検出するセンサが設けられている場合がある。このような場合には、センサの検出結果を用いて点滴の状態を監視することが可能になる。
【0003】
このような点滴装置に設けられるセンサに関する従来技術や、点滴の状態の監視に関する従来技術は、例えば特許文献1乃至4に開示されている。
【0004】
即ち、特許文献1には、圧力センサにより点滴液の流量を検出する技術が開示されている。特許文献2には、超音波により点滴液の液面位置を検出する技術が開示されている。特許文献3には、滴下センサの検出結果に基づいて点滴状態を監視し、異常の場合にはナースステーションに連絡する技術が開示されている。特許文献4には、マグネットを有する回転式羽根車を用いて点滴液の流量率を電子的に読み込み、その流量率のデータを集中治療室等の遠隔場所に送信する技術が開示されている。
【0005】
なお、特許文献5には、点滴装置の用途としてではなく一般的な用途で使われる流量検出に関する技術であるが、特許文献4と同様に、先端に永久磁石を設けた羽根車を用いる流量検出に関する技術が開示されている。即ち、特許文献5に開示された流量センサは、電磁誘導型の一般的なセンサであって、外部のホール素子に対して羽根車の回転により変化する磁界を与えることで、羽根車を回転させている液体の流量を検出する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-007135号公報
【特許文献2】特開平08-098884号公報
【特許文献3】特開平10-234851号公報
【特許文献4】米国特許4,187,847号明細書
【特許文献5】米国特許3,636,767号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至3に開示されたセンサは何れも、電源回路を必要とし、その分だけ複雑な構成となり、その結果、点滴装置の用途として見た場合は製造コストが高くなってしまう。
【0008】
なお、特許文献4には、上述したように、マグネットを備え電子的に流量率を読取るということのみしか開示されておらず、所望の機能を発揮すべく技術的に完成されたものであるのかが不明のため、製造コストというよりも前に具体的実現性に欠けていると思料する。
【0009】
また、特許文献5のような電磁誘導型の流量センサでは、その性質上、微小流量の検出はできないため、点滴装置の用途としては不適である。
【0010】
即ち、点滴液等の微小流量の検出を的確に行うセンサ(検出装置)や、そのようなセンサを備える点滴装置や監視システムを低コストで提供することが要望されているが、係る要望に十分に応えられていない状況である。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、点滴液等の微小流量の検出を的確に行うことが可能な点滴装置及び点滴監視システム並びに検出装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の点滴装置(例えば実施形態における点滴装置11)は、
点滴パック(例えば実施形態における点滴パック21)に収容された点滴液(例えば実施形態における点滴液71)を点滴針まで流す滴下ライン(例えば実施形態における滴下ライン22)を含む点滴装置であって、
1以上の永久磁石(例えば実施形態における永久磁石61)が設けられ、前記滴下ラインを流れる前記点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる移動部材(例えば実施形態における移動部材53)と、
前記1以上の永久磁石の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤ(例えば実施形態における感磁性ワイヤ54)と、
前記感磁性ワイヤに懸巻した検出コイルであって、前記感磁性ワイヤにおいて発生した前記大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する検出コイル(例えば実施形態における検出コイル55)と、
前記検出コイルから出力された前記パルス信号を検出する信号検出部(例えば実施形態における信号検出部56)と、
を備える点滴装置であることを特徴とする。
【0013】
(1)この発明によれば、大バルクハウゼンジャンプ現象を利用して点滴液を検出するので、その検出信号たるパルス信号を無電源で出力することが可能になる。
【0014】
(2)本発明の点滴装置は、上述のごとく簡素な構成であるため、低コストで実現することが可能になる。当該(2)の効果は、(1)の効果(無電源のため電源回路が不要という効果)と併せると、より一段と顕著なものとなる。
【0015】
(3)検出コイルから出力されるパルス信号は、感磁性ワイヤにおける磁化反転に起因して生成されるが、この磁化反転の速度は、大バルクハウゼンジャンプ現象のみに依存していて、外部磁界の時間変化とは無関係である。従って、検出コイルがパルス信号を出力するためには、大バルクハウゼンジャンプ現象さえ発生すれば足り、外部磁界の時間変化には影響されない。これにより、滴下する点滴液の力により永久磁石が移動して外部磁界さえ変化すれば、その点滴液の流量とは無関係に(たとえ微小流量の点滴液でも)大バルクハウゼンジャンプ現象が発生するので、検出コイルからパルス信号が出力されて、点滴液の検出が可能になる。即ち、本発明の点滴装置は、微小流量の点滴液であっても的確に検出することが可能である。
【0016】
この場合、前記移動部材は、複数の先端部の各々に前記永久磁石がそれぞれ配設された羽根車であって、前記羽根車は、滴下する前記点滴液の力で回転するように配置されているようにしてもよい。
【0017】
また、この場合、前記信号検出部は、フォトカプラを有するようにしてもよい。
【0018】
本発明の点滴監視システムは、
点滴パック(例えば実施形態における点滴パック21)に収容された点滴液(例えば実施形態における点滴液71)を点滴針まで流す滴下ライン(例えば実施形態における滴下ライン22)を含む点滴装置(例えば実施形態における点滴装置11)と、前記点滴装置を監視する監視装置(例えば実施形態における監視装置12)とを備える点滴監視システムであって、
前記点滴装置は、
1以上の永久磁石(例えば実施形態における永久磁石61)が設けられ、前記滴下ラインを流れる前記点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる移動部材(例えば実施形態における移動部材53)と、
前記1以上の永久磁石の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤ(例えば実施形態における感磁性ワイヤ54)と、
前記感磁性ワイヤに懸巻した検出コイルであって、前記感磁性ワイヤにおいて発生した前記大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する検出コイル(例えば実施形態における検出コイル55)と、
前記検出コイルから出力された前記パルス信号を検出する信号検出部(例えば実施形態における信号検出部56)と、
を有し、
前記監視装置は、
前記点滴装置の前記信号検出部により検出された前記パルス信号に基づいて、前記点滴装置を監視する
点滴監視システムであることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、点滴監視システムは、上述した(1)乃至(3)の効果を奏することが可能な点滴装置を構成要素に含んでいる。従って、(1)や(2)の効果に起因して、点滴監視システム全体を低コストで実現することが可能になる。また、(3)の効果に起因して、各種各様の監視手法を採用することが可能になり、点滴装置の異常を迅速かつ的確に判断することが可能になる。特に、微小流量の点滴液を検出可能なことを考慮すれば、この効果は、点滴液の液切の異常を検出する場合により一段と顕著なものとなる。
【0020】
この場合、前記監視装置は、前記点滴装置の前記信号検出部により一定時間に検出された前記パルス信号に含まれるパルスの間隔及び個数のうち少なくとも一方と、規定値とを比較することで、前記点滴装置を監視し、前記規定値を外れる場合には警告信号をさらに出力するようにしてもよい。
【0021】
本発明の検出装置(例えば実施形態における検出装置101)は、
所定のライン(例えば実施形態におけるライン102)を通過する対象物(例えば実施形態における対象物103)を検出する検出装置であって、
1以上の永久磁石(例えば実施形態における永久磁石121)が設けられ、前記ラインを通過する前記対象物の力によって前記1以上の永久磁石を移動させる移動部材(例えば実施形態における移動部材111)と、
前記1以上の永久磁石の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤ(例えば実施形態における感磁性ワイヤ112)と、
前記感磁性ワイヤに懸巻した検出コイルであって、前記感磁性ワイヤにおいて発生した前記大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する検出コイル(例えば実施形態における検出コイル113)と、
前記検出コイルから出力された前記パルス信号を検出する信号検出部(例えば実施形態における信号検出部114)と、
を備える検出装置であることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、点滴装置により滴下される点滴液のみならず、所定のラインを通過する任意の対象物を検出することが可能になり、かかる対象物の検出について、上述した(1)乃至(3)の効果を奏することが可能になる。
【0023】
この場合、点滴装置(例えば実施形態における点滴装置11)に備えられた滴下ライン(例えば実施形態における点滴ライン22)に自在に着脱可能な装着部(例えば実施形態における装着部51)をさらに備え、
前記装着部により前記検出装置が前記滴下ラインに装着されている場合、前記移動部材は、前記滴下ラインを流れる点滴液の力によって前記1以上の永久磁石を移動させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、点滴液等の微小流量の検出を的確に行うことが可能な装置を低コストで提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る点滴監視システムの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の点滴監視システムの滴下センサの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2の滴下センサの概略構成を示す上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る検出装置の機能的構成の概略を示す機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。

【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る点滴監視システムの概略構成を示す側面図である。

【0028】
点滴監視システムは、点滴装置11と、監視装置12と、アンテナ13と、ケーブル14と、架台15とを備える。

【0029】
点滴装置11は、点滴パック21と、滴下ライン22と、滴下センサ23と、コネクタ24とを備える。

【0030】
点滴パック21は、薬液や血液等の点滴液71を収納するパックであって、架台15の掛止片32に吊下げられることによって、点滴液71を滴下する。滴下ライン22は、一端が点滴パック21に接続され、他端がコネクタ24に接続されており、点滴パック21から滴下される点滴液71をコネクタ24まで流す。滴下センサ23は、滴下ライン22の途中に設けられており、滴下ライン22を流れる点滴液71を検出する。滴下センサ23の詳細については、図2以降の図面を参照して後述する。コネクタ24は、図示せぬ点滴針に接続され、滴下ライン22を流れてきた点滴液71を当該点滴針に供給する。

【0031】
監視装置12は、ケーブル14により滴下センサ23と接続し、滴下センサ23の検出結果を取得する。そして、監視装置12は、滴下センサ23の検出結果に基づいて、点滴の状態として、例えば点滴液71の流量や流速を監視する。監視装置12は、その監視の結果、例えば点滴液71の液切のように点滴装置11に異常が発生したと判断した場合、警告信号を生成して、アンテナ13を介してナースステーション等に送信する。なお、ナースステーション等への送信手法は、本実施形態では無線により直接送信する手法が採用されているが、特にこれに限定されず、その他例えば、少なくとも一部に有線を含む手法や、インターネット等の所定のネットワークを介在する手法を採用することができる。

【0032】
架台15は、監視装置12が取り付けられる支柱31と、上述したように点滴パック21が吊下げられる掛止片32とを備える。

【0033】
以下、図2及び図3を参照して、滴下センサ23の詳細について説明する。

【0034】
図2は、滴下センサ23の概略構成を示す斜視図である。図3は、当該滴下センサ23の概略構成を示す上面図である。

【0035】
滴下センサ23は、装着部51と、滴下チャンバ52と、移動部材53と、感磁性ワイヤ54と、検出コイル55と、信号検出部56と、端子57とを備える。

【0036】
滴下センサ23は、装着部51により、滴下ライン22に自在に着脱可能とされている。装着部51により滴下センサ23が滴下ライン22に装着されている場合、点滴パック21から滴下される点滴液71は、滴下チャンバ52を介して滴下ライン22を流れて、コネクタ24に接続された点滴針(図示せぬ)に供給される。

【0037】
移動部材53は、本実施形態では、滴下チャンバ52内に設けられる羽根車として構成されている。移動部材53である羽根車の複数の先端部の各々には永久磁石61が1つずつ、隣接するものとは極性が反転するように配設されている。この移動部材53である羽根車は、いわゆる水車と同様の機能を有しており、滴下される点滴液71の力により図2中反時計方向に回転する。即ち、移動部材53は、複数の永久磁石61を、滴下される点滴液71の力により図2中反時計方向に回転移動させる機能を有している。

【0038】
感磁性ワイヤ54は、複数の永久磁石61の回転移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させるワイヤである。

【0039】
ここで、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる感磁性ワイヤ54の動作原理について説明する。

【0040】
強磁性体が線引きされた結果得られる細いワイヤは、その合金組成とともに独特な磁気的性質を有する。このようなワイヤに対してひねり応力を加えると、当該ワイヤの外周部付近ほど多くひねられ、中心部ほどひねられ方が少なくなり、このため外周部と中心部では磁気特性が異なることとなる。この状態を残留させるような加工を施すと、外周部と中心部で磁気特性が異なる強磁性体の磁性ワイヤができる。かかる磁性ワイヤが、感磁性ワイヤ54である。

【0041】
感磁性ワイヤ54の外周部は、比較的小さな磁界によってその磁化方向を変える、といった磁気特性を有している。これに対して、感磁性ワイヤ54の中心部は、外周部よりも大きな磁界によってその磁化方向を変える、といった磁気特性を有している。即ち、感磁性ワイヤ54には、比較的磁化されやすい外周部と、比較的磁化されにくい中心部といったように、2種類の異なった磁気特性を有する複合磁性体が形成される。

【0042】
感磁性ワイヤ54の中心部及び外周部は何れも、初期的には、磁化方向は特に定まっていない。このような磁化状態で、感磁性ワイヤ54の長手方向、即ち軸線方向と平行に、中心部の磁化方向を反転させるのに十分な外部磁界をかけると、外周部及び中心部は磁化されて、その磁化状態は、両者の磁化方向が同一になる状態となる。次に、外周部だけを磁化できるような外部磁界を、前とは逆方向にかけると、その磁化状態は、外周部と中心部とでは磁化方向が逆になる状態となる。このとき外部磁界を取り去っても、外周部の磁化方向は中心部の磁化に押さえられていて、磁化状態は安定する。なお以下、このようなときの外部磁界を「セット磁界」と称する。

【0043】
次に、セット磁界と反対方向に外部磁界をかけて増加させていき、外部磁界の強さがある臨界強度を越すと、感磁性ワイヤ54の外周部の磁化方向は急激に反転する。なお以下、このような臨界強度の磁界を「臨界磁界」と称する。このときの反転現象は、雪崩をうつような状態で外周部の磁壁が移動して一瞬のうちに磁化反転が起きる。その結果、感磁性ワイヤ54の外周部と中心部の磁化方向は同じとなり、磁化状態は最初の状態に戻る。この雪崩をうつように磁化状態が反転する現象が、「大バルクハウゼンジャンプ現象」である。従って、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させるためには、外部磁界は、臨界磁界よりも大きな磁界である必要があり、このような磁界を以下「リセット磁界」と称する。

【0044】
このように、感磁性ワイヤ54に大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させるために必要となる外部磁界が、本実施形態では、滴下される点滴液71の力により図2中反時計方向に回転移動する複数の永久磁石61により与えられることになる。すなわち、複数の永久磁石61の回転移動により、感磁性ワイヤ54に与えられる外部磁界が変化していき、その結果、上述した動作原理に従って、感磁性ワイヤ54において大バルクハウゼンジャンプ現象が発生する。

【0045】
検出コイル55は、感磁性ワイヤ54に懸巻した電気コイルであって、感磁性ワイヤ54において発生した大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する。

【0046】
信号検出部56は、検出コイル55から出力されたパルス信号を検出する。本実施形態では、信号検出部56は、フォトカプラにより構成されており、フォトカプラの入力端(発光ダイオード側の端)には検出コイル55が接続され、フォトカプラの出力端(フォトトランジスタやフォトダイオード側の端)が端子57に接続されている。即ち、フォトカプラとしての信号検出部56から出力されるパルス信号(電気信号)は、端子57に接続されたケーブル14を介して、図1の監視装置12に供給される。なお、後述するように、信号検出部56は、検出コイル55から出力されたパルス信号を検出する機能を有していれば、その構成は特に限定されず、フォトカプラ以外のもので構成してもよい。

【0047】
なお、移動部材53として図2の構成の羽根車を用いる場合、永久磁石61同士の磁気干渉が起きない程度に各羽根の間隔を設けるとよい。或いは、永久磁石61は、羽根の全てではなく、例えば1つおきや2つおきに配置させるようにしてもよい。要するに、永久磁石61の配置は、他の永久磁石61との間で磁気干渉が起きないような配置が好適である。

【0048】
次に、以上の点滴監視システムの動作について説明する。

【0049】
図1に示すように、点滴パック21から滴下された点滴液71は、滴下ライン22を流れて、コネクタ24に接続された点滴針(図示せず)に供給される。

【0050】
滴下ライン22の途中に設けられた滴下センサ23は、滴下される点滴液71を検出し、その検出信号としてパルス信号を出力する。即ち、図2に示すように、羽根車として構成される移動部材53は、滴下する点滴液71の力で同図中反時計方向に回転する。これに伴い、移動部材53の複数の先端部の各々に配設された永久磁石61も回転移動し、その周囲の磁界が変化する。このように変化する磁界が、外部磁界として感磁性ワイヤ54に与えられる。即ち、このような外部磁界の変化により、上述したように、感磁性ワイヤ54において大バルクハウゼンジャンプ現象が発生し、その結果、検出コイル55において、誘導起電力が生じて、パルス信号が出力される。信号検出部56は、このパルス信号を検出し、端子57に接続されたケーブル14を介して図1の監視装置12に出力する。

【0051】
監視装置12は、点滴装置11から出力されたパルス信号を受信し、当該パルス信号に基づいて点滴装置11を監視する。監視装置12の監視手法は、当該パルス信号を用いる手法であれば特に限定されないが、本実施形態では次のような手法が採用されている。即ち、本実施形態では、監視装置12は、一定時間のパルス信号に含まれるパルスの間隔及び個数のうち少なくとも一方と、規定値とを比較し、その比較結果に基づいて点滴装置11を監視する。換言すると、一定時間のパルス信号に含まれるパルスの間隔及び個数のうち少なくとも一方を用いることによって、点滴液71の流量や流速が容易に算出できる。従って、監視装置12は、点滴液71の流量や流速が規定値を外れているか否かを判定し、外れていない場合には、点滴装置11は正常であると認識することができる。これに対して、監視装置12は、点滴液71の流量や流速が規定値を外れている場合、例えば点滴液71の液切等の異常が点滴装置11に発生していると認識することができる。監視装置12は、このようにして点滴装置11の異常を認識した場合には、警告信号を生成して、アンテナ13を介してナースステーション等に送信する。

【0052】
ここで注目すべき点は、本実施形態の滴下センサ23では、検出コイル55から出力されて監視装置12に供給されるパルス信号は、上述したように感磁性ワイヤ54における磁化反転に起因して生成されるが、この磁化反転の速度は、大バルクハウゼンジャンプ現象のみに依存していて、外部磁界の時間変化とは無関係である点である。

【0053】
即ち、特許文献5等の従来の流量センサでは、検出信号としてのパルス信号を出力するためには、電磁誘導型であるがゆえに、外部磁界の変化速度を一定以上にする必要がある。この外部磁界の変化をつくるために、本実施形態と同様に永久磁石が配設された羽根車を採用した場合、外部磁界の変化速度を一定以上にするためには、羽根車を一定回転速度以上で回転させる必要がある。羽根車を一定回転速度以上にするためには、一定流量以上の液体が流れて羽根車を回転させる必要がある。このことは、従来の電磁誘導型の流量センサでは、一定流量以上の液体が流れないとパルス信号を出力できないこと、換言すると、一定流量未満の液体を検出できないこと、即ち、一般的に微小流量である点滴液71を検出できないことを意味する。

【0054】
これに対して、本実施形態の滴下センサ23においては、検出コイル55がパルス信号を出力するためには、大バルクハウゼンジャンプ現象さえ発生すれば足り、外部磁界の時間変化には影響されない。このことは、図2に示すように、滴下される点滴液71の力により移動部材53が回転して外部磁界さえ変化すれば、点滴液71の流量とは無関係に(たとえ微小流量の点滴液71でも)大バルクハウゼンジャンプ現象が発生するので、検出コイル55からパルス信号が出力されて、点滴液71が検出できることを意味している。即ち、本実施形態の滴下センサ23は、微小流量の点滴液71であっても的確に検出することが可能である。

【0055】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。

【0056】
例えば、本明細書において、システムとは、複数の装置や処理部により構成される装置全体を表すものをいう。従って、点滴監視システムの構成要素として、図1の実施形態では点滴装置11と監視装置12という別々の装置が設けられているが、特にこれに限定されず、例えば点滴装置11の滴下センサ23と監視装置12との両機能を有する1つの装置が設けられるようにしてもよい。

【0057】
また、例えば、図1乃至図3の実施形態では滴下センサ23の検出の対象物は、点滴装置11の滴下ライン22を流れる点滴液71とされていたが、本発明の検出対象物はこれに限定されず、所定のラインを通過する物体であればよい。ここで、物体の状態は、個体、液体、及び気体の三態の何れであっても構わない。また、所定のラインとは、管のように閉じた空間内を意味するのではなく、単に物体が通過する経路を意味し、開空間中の任意の経路であってもよい。

【0058】
以下、図4を参照して、本発明に係る検出装置の一実施形態として、このような所定のラインを通過する任意の対象物を検出する検出装置について説明する。

【0059】
図4は、本発明の一実施形態に係る検出装置101の機能的構成の概略を示す機能構成図である。

【0060】
検出装置101は、所定のライン102を通過する任意の対象物103を検出すべく、移動部材111と、感磁性ワイヤ112と、検出コイル113と、信号検出部114とを備える。

【0061】
移動部材111は、1以上の永久磁石121が設けられ、ライン102を通過する対象物103の力によって1以上の永久磁石121を移動させる。感磁性ワイヤ112は、1以上の永久磁石121の移動に伴い生ずる磁界の変化によって、大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させる。検出コイル113は、感磁性ワイヤ112に懸巻した電気コイルであって、感磁性ワイヤ112において発生した大バルクハウゼンジャンプ現象に伴い、誘導起電力が生じて、パルス信号を出力する。信号検出部114は、検出コイル113から出力されたパルス信号を検出して、外部に出力する。

【0062】
ここで、図1乃至図3の滴下センサ23と、図4の検出装置101とを比較すれば容易にわかることであるが、滴下センサ23の上位概念が検出装置101である。換言すると、ライン102として滴下ライン22を採用し、検出の対象物として点滴液71を採用した場合の検出装置101の好適な実施形態が、滴下センサ23である。

【0063】
移動部材111は、感磁性ワイヤ112において大バルクハウゼンジャンプ現象を発生させるように永久磁石121を移動させる機能を有していれば足り、その構成は特に限定されない。このような構成として羽根車を採用したものが、図2の移動部材53である。その他例えば、移動部材111は、いわゆる「鹿おどし」のような構成を取ることもできる。

【0064】
また、信号検出部114は、検出コイル113から出力されたパルス信号を検出して、外部に出力する機能を有していれば足り、その構成は特に限定されない。このような構成としてフォトカプラを採用したものが、図2の信号検出部56である。その他例えば、信号検出部114は、例えば電磁継電器や、サイリスタ素子を用いるリレー等で構成してもよい。さらに、信号検出部114は、検出コイル113からの信号をケーブル14に直接導くように構成してもよい。

【0065】
なお、図2の滴下センサ23では、図4の感磁性ワイヤ112及び検出コイル113として、感磁性ワイヤ54及び検出コイル55が採用されており、さらに、滴下ライン22に自在に着脱可能な装着部51、及び、ケーブル14と接続される端子57が設けられている。

【0066】
本発明は、このような各種各様の実施形態によらず、例えば次の(1)乃至(4)のような効果を奏することが可能である。

【0067】
(1)本発明に係る検出装置101(図2の滴下センサ23含む。以下同じ)は、大バルクハウゼンジャンプ現象を利用して対象物103を検出することができるので、その検出信号たるパルス信号を無電源で出力することが可能になる。

【0068】
(2)また、本発明に係る検出装置101は、図2乃至図4に示すように簡素な構成であるため、低コストで実現することが可能になる。当該(2)の効果は、(1)の効果(無電源のため電源回路が不要という効果)と併せると、より一段と顕著なものとなる。

【0069】
(3)図2の滴下センサ23を用いて上述したように、本発明に係る検出装置101では、検出コイル113から出力されるパルス信号は、感磁性ワイヤ112における磁化反転に起因して生成される。この磁化反転の速度は、大バルクハウゼンジャンプ現象のみに依存していて、外部磁界の時間変化とは無関係である。従って、検出コイル113がパルス信号を出力するためには、大バルクハウゼンジャンプ現象さえ発生すれば足り、外部磁界の時間変化には影響されない。これにより、所定のライン102を通過する対象物103の力により永久磁石121が移動して外部磁界さえ変化すれば、その対象物103の流量とは無関係に(たとえ微小流量の対象物103でも)大バルクハウゼンジャンプ現象が発生するので、検出コイル113からパルス信号が出力されて、対象物103の検出が可能になる。即ち、本発明に係る検出装置101は、微小流量の対象物103であっても的確に検出することが可能である。

【0070】
(4)大バルクハウゼンジャンプ現象を生じさせるための構成部材は、それ自体非常に微小なものが採用できる。例えば、永久磁石121の寸法は、直径1.0mm乃至2.0mm、長さ5mm乃至10mm程度のオーダであり、感磁性ワイヤ112の直径は0.25mm以下というオーダであることから、本発明に係る検出装置101を点滴装置11の滴下ライン22に設けても、ハンドリングの何らの障害にもならない。
【符号の説明】
【0071】
11 点滴装置
12 監視装置
13 アンテナ
14 ケーブル
15 架台
21 点滴パック
22 滴下ライン
23 滴下センサ
24 コネクタ
51 装着部
52 滴下チャンバ
53 移動部材
54 感磁性ワイヤ
55 検出コイル
56 信号検出部
57 端子
61 永久磁石
71 点滴液
101 検出装置
102 ライン
103 対象物
111 移動部材
112 感磁性ワイヤ
113 検出コイル
114 信号検出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3