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明細書 :物質排出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5305469号 (P5305469)
公開番号 特開2011-182883 (P2011-182883A)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
公開日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明の名称または考案の名称 物質排出装置
国際特許分類 A61B  17/00        (2006.01)
A61B  18/00        (2006.01)
FI A61B 17/00 310
A61B 17/36 330
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2010-049761 (P2010-049761)
出願日 平成22年3月5日(2010.3.5)
審査請求日 平成24年5月14日(2012.5.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】立野 洋人
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】森林 宏和
参考文献・文献 国際公開第2008/059810(WO,A1)
特開平03-277369(JP,A)
特表2005-534451(JP,A)
特開2007-159950(JP,A)
特表2002-527162(JP,A)
調査した分野 A61B 13/00 - 18/28
A61M 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
被排出体の表面から排出物質を外部へ排出する物質排出装置であって、
前記被排出体の表面に対して、各超音波の振幅を漸減するように変調させた振幅変調超音波群を発振する超音波発振部と、
前記被排出体に対する前記排出物質のドリフト速度に基づいて、前記振幅変調超音波群の各超音波における振幅を制御する制御部と
を有することを特徴とする物質排出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記振幅変調超音波群の発振開始時からの経過時間に対する当該振幅変調超音波群の各超音波における振幅の勾配の絶対値が、前記ドリフト速度以下となるように、当該各超音波の振幅を制御することを特徴とする請求項1に記載の物質排出装置。
【請求項3】
前記制御部は、設定された前記排出物質の排出量に応じて、前記振幅変調超音波群として発振する前記各超音波の数を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の物質排出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記振幅変調超音波群の各超音波の振幅を、当該振幅変調超音波群の発振開始時における最初の超音波から前記決定した発振する超音波の数に係る最後の超音波まで、単調減少させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の物質排出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記振幅変調超音波群の前記最後の超音波における制御を行った後、前記超音波発振部から次の振幅変調超音波群の発振を行う制御を行って、当該振幅変調超音波群の形状が負勾配のノコギリ歯形状となるように制御することを特徴とする請求項4に記載の物質排出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記各振幅変調超音波群の発振順番ごとに振幅が増大するように制御することを特徴とする請求項5に記載の物質排出装置。
【請求項7】
前記超音波発振部は、被排出体の表面との当接部分に環状振動子を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の物質排出装置。
【請求項8】
前記排出物質の種類毎に前記ドリフト速度の値を記憶する記憶部と、
少なくとも、実際に排出する前記排出物質の種類に係る情報の入力を行う情報入力部と
を更に有し、
前記制御部は、前記情報入力部から入力された前記排出物質の種類に応じて前記記憶部から対応するドリフト速度の値を抽出し、当該抽出したドリフト速度の値に基づいて前記振幅変調超音波群の振幅を制御することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の物質排出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記超音波発振部から発振された前記振幅変調超音波群の各超音波を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記各超音波に基づいて、当該振幅変調超音波群の各超音波の位相差を制御して前記超音波発振部を共鳴状態に設定する設定部とを有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の物質排出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の被排出体の表面から当該被排出体の外部に排出物質を排出する物質排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、美容施術として、人体等の表面に超音波による振動を与えて種々の目的を達成する諸技術が案出されている。
例えば、特許文献1には、皮膚に超音波を照射して、毛穴内の洗浄及び角質の除去を同時に行う美容施術方法が開示されている。
また、特許文献2には、皮膚に超音波を照射して、当該照射部位の体毛を除去する美容施術方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2007-159950号公報
【特許文献2】特開2002-527162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
美容分野における、いわゆるスキンケアでは、例えば過剰皮脂(ニキビ)等に対する美容施術として、レーザ等の機器を用いた光治療やケミカルピーリング等が適用されている。
しかしながら、超音波を用いてニキビの治療等を行う超音波機器は未だ開発されていない現況にある。
同様に、膿やうっ血液、滲出液等の体内物質を体外へ排出する外科的施術として、いわゆるドレナージを行う場合でも、そのために用いる超音波機器は未だ開発されていない。
【0005】
本発明は、超音波振動を用いて、人体等の被排出体の表面から当該被排出体の外部に排出物質を排出し、当該排出物質に対応した効率的な排出を実現する物質排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の物質排出装置は、被排出体の表面から排出物質を外部へ排出するものであって、前記被排出体の表面に対して、各超音波の振幅を漸減するように変調させた振幅変調超音波群を発振する超音波発振部と、前記被排出体に対する前記排出物質のドリフト速度に基づいて、前記振幅変調超音波群の各超音波における振幅を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超音波振動を用いて、人体等の被排出体の表面から当該被排出体の外部に排出物質を排出し、当該排出物質に応じた効率的な排出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る物質排出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る物質排出装置の超音波発振部の構成例を模式的に示す斜視図である。
【図3】超音波発振部から被排出体の皮膚に対して発振される振幅変調超音波群及びその調和確率関数を示す特性図である。
【図4】sin波の歪み正振幅における力学モデルの等価回路図である。
【図5】実験1で用いる試料の設置状態を示す模式図である。
【図6】実験2において、実施例及び比較例1,2により排出物質である赤色102号が拡散した各濾紙の写真を示す図である。
【図7】実験2において、試料A,B,Cについて、実験時間と赤色102号の濃度との関係を示す特性図である。
【図8】実施例及び比較例1,2について、実験値と近似データとの差異を示す特性図である。
【図9】実施例及び比較例1,2について、流速Jを示す表である。
【図10】本実施形態の変形例において、振動部から被排出体の皮膚に対して発振される振幅変調超音波群を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る物質排出装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、物質排出装置100は、振動部120と、制御部130と、情報入力部140と、ドリフト速度値記憶部150とを有して構成されている。
被排出体(本実施形態では、例えば人体)200の表面(皮膚201)には、排出物質吸収体110が配設される。排出物質吸収体110は、当該表面から排出される排出物質を吸収するものであって、例えば濾紙等が選ばれる。

【0010】
振動部120は、例えば、PZT等の圧電素子(不図示)を有して構成されており、排出物質吸収体110を介した被排出体200の表面(皮膚201)に対して、各超音波の振幅を変調させた振幅変調超音波群を発振するものである。この振動部120による振幅変調超音波群の発振により、被排出体200内の排出物質が皮膚201から排出され、排出物質吸収体110に吸収される。

【0011】
振動部120において、図2に示すように、その被排出体200の表面との当接部分に環状振動子121を設けても良い。この環状振動子121は、被排出体200との当接部位が環状の平坦面とされている。環状振動子121を設けることにより、排出物質吸収体110を介して被排出体200の表面に当接させた際に、環状振動子121の部分に局所的な応力勾配が発生する。この場合、振動部120の被排出体200の表面との非当接部となる中心部分(環状振動子121で囲まれた領域の中心部分)では応力が低くなり、当該表面における排出物質の排出位置が局在化され、排出効率が増加する。

【0012】
情報入力部140は、例えば、排出対象となる排出物質の種類に係る情報や当該排出物質の排出量に係る情報を含む各種の情報を制御部130のCPU133に入力する。

【0013】
ドリフト速度値記憶部150は、複数のドリフト速度の値を記憶しており、ドリフト速度値記憶部150には、例えば、排出物質の種類毎にドリフト速度の値が記憶されている。

【0014】
制御部130は、被排出体200に対する排出物質のドリフト速度に基づいて、振動部120から発振する振幅変調超音波群の各超音波における振幅を制御する。この制御部130は、発振超音波検出部131と、超音波振幅抽出部132と、CPU133と、超音波振幅調整部134と、位相検波部135と、共鳴周波数調整部136と、交流電圧発信部137と、電圧制御アンプ138と、電力増幅部139とを有して構成されている。

【0015】
発振超音波検出部131は、振動部120から発振された振幅変調超音波群の各超音波を電圧値として検出する。超音波振幅抽出部132は、発振超音波検出部131で検出した各超音波毎に、その振幅を電圧値として抽出する。

【0016】
CPU133は、物質排出装置100における動作を統括的に制御する。例えば、CPU133は、情報入力部140から入力された排出物質の種類に応じてドリフト速度値記憶部150から対応するドリフト速度の値を抽出し、当該抽出したドリフト速度の値に基づいて、振動部120から発振する振幅変調超音波群の振幅を制御するための制御信号を超音波振幅調整部134に送信する。また、例えば、CPU133は、情報入力部140から入力された排出物質の排出量に係る情報に基づいて、振動部120から1つの振幅変調超音波群として発振する各超音波の数を決定し、当該決定に基づく制御信号を超音波振幅調整部134に送信する。

【0017】
具体的に、CPU133は、振幅変調超音波群の振幅を制御するための制御信号及び振幅変調超音波群として発振する各超音波の数に係る制御信号を、図1に示す負勾配のノコギリ歯信号電圧として出力する。ここで、各ノコギリ歯は、単調減少する線形波形である。ノコギリ歯の単調減少部の勾配(傾き)の絶対値は、抽出したドリフト速度の値に相当するものであり、また、ノコギリ歯のオン時間によって1つの振幅変調超音波群として発振する各超音波の数を制御する。

【0018】
超音波振幅調整部134は、超音波振幅抽出部132で抽出した各超音波の振幅に係る電圧値と、CPU133からノコギリ歯信号電圧とを入力とし、振動部120から発振する振幅変調超音波群の各超音波における振幅が前記ドリフト速度以下になるように調整すると共に、当該振幅変調超音波群として発振する各超音波の数を調整する制御電圧を出力する。

【0019】
位相検波部135は、発振超音波検出部131で検出した振幅変調超音波群の各超音波の波形と、交流電圧発信部137から出力する交流電圧の波形との位相を検出する。共鳴周波数調整部136は、位相検波部135で検出された位相に基づいて、交流電圧発信部137から出力する交流電圧の位相を制御し、振動部120が共鳴状態となるように調整する。即ち、この位相検波部135及び共鳴周波数調整部136は、発振超音波検出部131で検出した振幅変調超音波群の各超音波に基づいて、当該振幅変調超音波群の各超音波の位相差を制御して振動部120を共鳴状態に設定する、本発明の「設定部」を構成する。

【0020】
交流電圧発信部137は、交流電圧(例えば、正弦波電圧)を発信するものである。電圧制御アンプ138は、交流電圧発信部137から発信された交流電圧を、超音波振幅調整部134から出力された制御電圧に基づいて変調させる等の制御を行う。電力増幅部139は、電圧制御アンプ138で変調させた交流電圧を電力増幅して振動部120に出力する。

【0021】
振動部120では、電力増幅部139から入力された交流電圧が上述の圧電素子(不図示)に供給され、当該交流電圧に基づく歪みが圧電素子で発生する。これにより、振動部120から、各超音波の振幅を変調させた振幅変調超音波群が発振されることになる。

【0022】
次に、排出物質の被排出体200に対するドリフト速度(以下、このドリフト速度をVdとする)を考慮した、本発明に係る物質排出方法について説明する。
図3は、振動部120から被排出体200の皮膚201に対して発振される振幅変調超音波群及びその調和確率関数を示す特性図である。

【0023】
まず、図3(a)に示す振幅変調超音波群について説明する。
図3(a)に示すように、振動部120から被排出体200の表面(皮膚201)に発振される1つの振幅変調超音波群には、それぞれ振幅が変調された複数の超音波が含まれている。この1つの振幅変調超音波群として発振する超音波の数は、制御部130(CPU133)において、例えば、情報入力部140から入力(設定)された排出物質の排出量に係る情報に基づいて決定される。

【0024】
また、制御部130は、図3(a)に示すように、1つの振幅変調超音波群の発振開始時からの経過時間(t)に対する当該振幅変調超音波群の各超音波における振幅の勾配-Ve(この勾配は、経過時間(t)に対する各超音波の振幅における速度とも言える)の絶対値Veが、ドリフト速度Vd以下となるように、当該各超音波の振幅を制御する。ここで、図3(a)において、各超音波の振幅を結んだ一点破線の線分の勾配(傾き)が-Veとなる。

【0025】
また、制御部130は、図3(a)に示すように、1つの振幅変調超音波群の各超音波の振幅を、当該振幅変調超音波群の発振開始時における最初の超音波から排出物質の排出量に係る情報に基づき決定した発振する超音波の数に係る最後の超音波まで、単調減少させる制御を行う。即ち、各超音波の振幅を勾配-Veで単調減少させている。

【0026】
ここで、振幅変調超音波群の発振開始時における最初の超音波(振幅変調超音波群の各超音波のうちで振幅が最大となる超音波)の振幅により、被排出体200内の超音波による排出深さが決まる。
振動子である振動部120及び被排出体200について、ヤング率をE1,E2とし、歪み振幅をε1,ε2とすると、以下の数式(1)のように、振動部120の超音波の発振により発生する応力は、被排出体200の抗力に等しい。

【0027】
【数1】
JP0005305469B2_000002t.gif

【0028】
従って、排出深さである被排出体200の歪み振幅ε2は、以下の数式(2)のようになる。

【0029】
【数2】
JP0005305469B2_000003t.gif

【0030】
このことから、振幅変調超音波群の発振開始時における最初の超音波の振幅は、必要な排出深さに応じて決定される値である。

【0031】
また、制御部130は、図3(a)に示すように、1つの振幅変調超音波群の前記最後の超音波における制御を行った後、振動部120から次の振幅変調超音波群の発振を行う制御を行って、発振する振幅変調超音波群の形状が、図3(a)の一点破線に示すノコギリ歯形状となるように制御する。

【0032】
続いて、図3(b)に示す調和確率関数に係る一般的な原理について説明する。
外力Fにより均一な系内(固体)に引き起こる流速Jは濃度をCとすると、以下の数式(3)及び数式(4)のように示される。

【0033】
【数3】
JP0005305469B2_000004t.gif

【0034】
また、排出物質の被排出体200に対するドリフト速度Vdは、以下の数式(5)のように示される。

【0035】
【数4】
JP0005305469B2_000005t.gif

【0036】
ここで、下記の数式(6)に示すように、振動応力による排出を有効とし(濃度勾配のみでは排出物質の排出は効率的ではない。)、振動応力の振幅をAとすると、振動応力の振幅Aは、以下の数式(7)のように示される。

【0037】
【数5】
JP0005305469B2_000006t.gif

【0038】
ここで、数式(7)のEはヤング率を示し、εは歪み振幅を示す。そして、歪み振幅εの速度vとすると、歪み振幅εの波頭xとx+Δxの存在時間Δtは、以下の数式(8)及び数式(9)のように示される。

【0039】
【数6】
JP0005305469B2_000007t.gif

【0040】
そして、振動周期をτとすると、歪み振幅εの波頭xの存在確率P(x)は、以下の数式(10)のように示される。

【0041】
【数7】
JP0005305469B2_000008t.gif

【0042】
この数式(10)で示した存在確率P(x)は、図3(b)に示す調和確率関数の特性に相当するものである。

【0043】
一方、拡散物質のジャンピング周波数ωjがドリフト速度Vdを与える。外力周波数ωFが以下の数式(11)に示す条件のとき、外力に追従できず、外圧振幅P(x)MAX点がドリフト速度作用力点として作用する。

【0044】
【数8】
JP0005305469B2_000009t.gif

【0045】
振動部120の圧電素子としてPZTを用いて、当該PZTを排出物質の排出の駆動振動源とした場合について考える。PZTの音響インピーダンスは約34.8×106kg/m2・sであり、また、筋肉の音響インピーダンスは約1.5×106kg/m2・sであり、筋肉の音響インピーダンスはPZTの音響インピーダンスの約20分の1の大きさである。

【0046】
そのうえ、人体の音響振動減衰係数は、実験により、超音波振動周波数80kHzで0.15/cm程度であるので、人体は緩和系と見做される。一方、振動部120の圧電素子が人体(被排出体200)に与える振動振幅は、正弦波(sin波)の振幅圧力関数の正側に限られる。即ち、sin波の正側振幅だけが人体(被排出体200)に打撃力として与えられる。この力学モデルの等価回路図を図4に示す。

【0047】
図4に示すsin波の歪み正振幅A(t)は、以下の数式(12)のように示される。

【0048】
【数9】
JP0005305469B2_000010t.gif

【0049】
これをフーリエ級数展開すると、歪み正振幅A(t)は、以下の数式(13)のように示される。

【0050】
【数10】
JP0005305469B2_000011t.gif

【0051】
ここで、数式(13)のε0は、以下の数式(14)のように示され、また、数式(13)のεnは、以下の数式(15)のように示される。

【0052】
【数11】
JP0005305469B2_000012t.gif

【0053】
数式(15)に示す振幅εnが図4に示す緩和系に入力されると、緩和関数との積になり、εn(out)は、以下の数式(16)のように示される。

【0054】
【数12】
JP0005305469B2_000013t.gif

【0055】
数式(16)は、振動項としてドリフト速度Vdに対する寄与は駆動周波数が低い程、効率的であることを示す。ここで、数式(14)は超音波駆動周波数ωに依存しない静圧振幅を示している。そして、図3(a)に示す振幅変調超音波群のように、ノコギリ歯形状となるように振幅変調をかけると、数式(14)は、以下の数式(17)のように示される。

【0056】
【数13】
JP0005305469B2_000014t.gif

【0057】
ここで、-Veは、上述したように、1つの振幅変調超音波群の発振開始時からの経過時間(t)に対する当該振幅変調超音波群の各超音波の振幅における速度、即ち、図3(a)の一点破線に示すノコギリ歯形状の傾き(勾配)を示し、排出物質の排出条件は、上述したように、以下の数式(18)を満たさなければならない。

【0058】
【数14】
JP0005305469B2_000015t.gif

【0059】
被排出体200内の排出物質の拡散活性化ポテンシャルをU、排出物質の拡散係数をDとする。拡散係数Dは、拡散活性化ポテンシャルUを変えて、被排出体200内で隣接サイト(外力下距離Δx)へ移動する際の移動確率に比例する。
また、外力下距離Δx当たりの力をFとすると、減少ポテンシャルΔU、拡散係数DFは数式(19),(20)のようになる。

【0060】
【数15】
JP0005305469B2_000016t.gif

【0061】
従って、棒状試料に沿った溶質濃度Cの拡散係数DFは、外力が0の拡散係数D0より外力に起因して大きくなる。C0を時間無限大の拡散濃度とすると、外力下のCは、数式(21)のようになる。

【0062】
【数16】
JP0005305469B2_000017t.gif

【0063】
数式(21)を踏まえ、定点による濃度の時間依存は、以下の数式(22),(23)のようになる。

【0064】
【数17】
JP0005305469B2_000018t.gif

【0065】
次に、本発明の実施形態に係る物質排出装置を用いた諸実験結果について説明する。

【0066】
(実験1)
実験1では、排出物質と、被排出体200に対するドリフト速度との関係について調べた。
実験には、図5に示すように、被排出体200として寒天111を用い、排出物質に相当するものとして、分子量の異なる3種を用意した。具体的に、試料1として、寒天111に排出物質として着色料である赤色102号(分子量631.51)を染み込ませたものを用いた。試料2として、寒天111に排出物質として着色料である青色1号(分子量792.86)を染み込ませたものを用いた。試料2として、寒天111に排出物質として薬剤であるインスリン(分子量5807)を染み込ませたものを用いた。

【0067】
寒天111下に、図1の排出物質吸収体110である濾紙を介して振動部120を配置し、寒天111に超音波の振動が伝わり易いように寒天111上に重り112を載置した。この状態で、寒天111に振動部120により超音波を順次発振させた。超音波の発振周波数を変え、当該発振周波数と、各試料から濾紙に吸収された排出物質の濃度との関係を調べた。その結果、各試料では、超音波振幅変調の発振周波数と排出物質の濃度との関係において、それぞれ相異なる曲線を描くことが判った。以上より、各排出物質には、非排出体との関係において、その分子量に対応した固有のドリフト速度が存在することが確認された。

【0068】
(実験2)
実験2では、比較例との比較に基づいて、本実施形態に係る物質排出装置による排出物質の排出の優位性について調べた。
実験には、図5と同様に、被排出体200として、寒天111に排出物質として着色料である赤色102号を染み込ませたものを用いた。寒天111下に、図1の排出物質吸収体110である濾紙を介して振動部120を配置し、寒天111上に重り112を載置した。この状態で、実施例として、寒天111に振動部120により負勾配のノコギリ歯形状の振幅変調超音波を発振させた。また、実施例との比較のため、寒天111下に濾紙を配置し、寒天111上に重り112を載置した状態で、濃度勾配のみにより濾紙へ赤色102号を自然拡散させた比較例1と、図5と同様の状態で寒天111に固定振幅の超音波を発振させた比較例2とを行った。

【0069】
図6は、実験2において、実施例及び比較例1,2により排出物質である赤色102号が拡散した各濾紙の写真を示す図である。
図6において、試料Aは比較例1の自然拡散で3分間放置した濾紙、試料Bは比較例2の固定振幅の超音波を3分間発振した濾紙、試料Cは実施例による負勾配のノコギリ歯形状の振幅変調超音波を振動周期0.1秒で3分間発振した濾紙である。
図6の写真から明らかなように、試料Aと試料Bとでは赤色102号の濃度差は僅かであるが、試料Cでは試料A,Bと比べて赤色102号の濃度が極めて大きい。

【0070】
続いて、試料A,B,Cについて、実験時間と赤色102号の濃度との関係について調べた。実験結果を図7に示す。
図7では、実験時間(試料Aでは放置時間、試料B,Cでは超音波の発振時間)を60秒、120秒、180秒、300秒、600秒とし、赤色102号を吸収した試料A,B,Cの各濾紙を蒸留水に溶かし込み、分光器によってその吸光度(Abs)を計測した。図7の近似データは、数式(22),(23)に基づいて算出した吸光度である。
図7の実験結果より、実施例の試料Cでは、比較例1,2の試料A,Bに比べて高い吸光度を示すことが確認された。

【0071】
実施例及び比較例1,2について、実験値と近似データとの差異を図8に示す。(a)は比較例1であり、近似データは自然拡散の考察から得られた吸光度である。(b)は比較例2であり、近似データは超音波を固定振幅とした場合の考察から得られた吸光度である。(c)は実施例であり、近似データは数式(22),(23)に基づいて算出した吸光度である。
各例における確率誤差は、図8(a)の比較例1では1±0.141、図8(b)の比較例2では1±0.017、図8(c)の実施例では1±0.004である。この結果から、実施例では、比較例1,2に比べて確率誤差が極めて小さいことが確認された。

【0072】
数式(21)を用いて、最小二乗法により、実験2の結果を解析することができる。
上記した実験1の結果に基づいて、非線形最小二乗法を用いることにより、係数aの値を算出することができる。
算出された係数aの値から、濃度勾配のみを用いた比較例1、固定振幅の超音波を用いた比較例2、本実施形態による負勾配のノコギリ歯形状の振幅変調超音波を用いた実施例の夫々について、流速Jの値を算出した。その結果を図9に示す。図9では、濃度勾配のみの場合の流速Jを基準値1として、比較例2及び実施例の流速Jを相対値としている。実施例では、比較例1,2の2倍程度の流速が得られた。このことから、本実施形態による負勾配のノコギリ歯形状の振幅変調超音波を用いた、排出物質の排出の有効性が確認された。
即ち、ドリフト速度(-Vd)を考慮して振幅変調超音波群を供給する方が、濃度勾配により自然拡散させたり、固定振幅の超音波を供給し続けるよりも、排出物質の効率的な排出を実現できることが実証できた。

【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、排出物質の被排出体200に対するドリフト速度-Vdに基づいて、振動部120から発振する振幅変調超音波群の各超音波における振幅を制御するようにしたので、人体等の被排出体の表面から超音波を用いて排出物質を排出する際に、当該排出物質に応じた効率的な排出が実現する。
本発明の物質排出装置は、例えば、ニキビの内容物である皮脂を排出物質として、これを効率的に排出する治療に適用したり、膿やうっ血液、滲出液等の体内物質を体外へ排出する外科的施術として、いわゆるドレナージに適用することができる。

【0074】
本実施形態においては、制御部130において、情報入力部140から入力された排出物質に係る情報に基づいて、振動部120から発振する振幅変調超音波群の各超音波における振幅の制御及び1つの振幅変調超音波群として発振する各超音波の数の制御を行うようにしているが、本発明においてはこれに限定されるわけでなく、例えば、本実施形態で示した排出物質に係る情報に加えて、測定した被排出体200の音響インピーダンスに係る情報を情報入力部140から入力し、排出物質に係る情報に加え、当該音響インピーダンスに係る情報を加味して、振動部120から発振する振幅変調超音波群の各超音波における振幅の制御及び1つの振幅変調超音波群として発振する各超音波の数の制御を行うようにする形態であっても良い。

【0075】
(変形例)
以下、本実施形態の変形例について説明する。本変形例では、本実施形態の図1と同様の装置構成である物質排出装置を開示するが、その振幅変調超音波群の発振状態が若干異なる点で本実施形態と相違する。

【0076】
図10は、超音波発振部から被排出体の皮膚に対して発振される振幅変調超音波群を示す特性図である。排出物質の拡散(被排出体の皮膚から外部への拡散)は、自然拡散と振動部120から振幅変調超音波群として発振する超音波による外力拡散との線形結合となる。自然拡散による濃度勾配のみによる拡散深さは、以下の数式(24)で示される。

【0077】
【数18】
JP0005305469B2_000019t.gif

【0078】
本変形例では、制御部130は、振動部120から振幅変調超音波群として発振する超音波による外力拡散に上記の自然拡散の寄与を加算し、負勾配の各振幅変調超音波群の発振順番ごとに振幅が増大するように発振制御する。
このように、各振幅変調超音波群を発振制御することにより、発振当初では振幅変調超音波群の振幅が小さいため、単位時間当たりのドリフト速度による排出物質の移送回数が増え、被排出体の表面への排出物質の掃引回数が増大する。これにより、排出物質の排出効率が更に向上することになる。

【0079】
なお、本実施形態及び変形例においては、被排出体200として人体を想定して説明したが、本発明においてはこれに限定されるわけでなく、他の動物であっても適用可能である。
更に、被排出体を、生体以外、例えば衣服等とし、衣服等の染みを排出物質として、本発明の物質排出装置を衣服等の染み抜きに適用することも可能である。

【0080】
前述した本実施形態に係る物質排出装置100を構成する図1の制御部130の各手段の機能は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。

【0081】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD-ROMのような記憶媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記憶媒体としては、CD-ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体を用いることができる。また、この際の通信媒体としては、光ファイバ等の有線回線や無線回線などが挙げられる。

【0082】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより本実施形態に係る物質排出装置100の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して本実施形態に係る物質排出装置100の機能が実現される場合や、供給されたプログラムの処理の全て、或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて本実施形態に係る物質排出装置100の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
100 物質排出装置
110 排出物質吸収体
111 寒天
112 重り
120 振動部
121 環状振動子
130 制御部
131 発振超音波検出部
132 超音波振幅抽出部
133 CPU
134 超音波振幅調整部
135 位相検波部
136 共鳴周波数調整部
137 交流電圧発信部
138 電圧制御アンプ
139 電力増幅部
140 情報入力部
150 ドリフト速度値記憶部
200 被排出体(人体)
201 皮膚
202 体内
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9