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明細書 :磁化曲線の算定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5602100号 (P5602100)
公開番号 特開2013-007648 (P2013-007648A)
登録日 平成26年8月29日(2014.8.29)
発行日 平成26年10月8日(2014.10.8)
公開日 平成25年1月10日(2013.1.10)
発明の名称または考案の名称 磁化曲線の算定方法
国際特許分類 G01R  33/14        (2006.01)
FI G01R 33/14
請求項の数または発明の数 10
全頁数 30
出願番号 特願2011-140509 (P2011-140509)
出願日 平成23年6月24日(2011.6.24)
審査請求日 平成25年6月5日(2013.6.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
【識別番号】503103109
【氏名又は名称】岩通計測株式会社
発明者または考案者 【氏名】清水 敏久
【氏名】高野 耕至
【氏名】齋藤 泰典
【氏名】石井 仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100092624、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴田 準一
【識別番号】100122965、【弁理士】、【氏名又は名称】水谷 好男
【識別番号】100141162、【弁理士】、【氏名又は名称】森 啓
【識別番号】100160716、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 力
審査官 【審査官】吉岡 一也
参考文献・文献 特開平06-249932(JP,A)
特開平03-081677(JP,A)
特開2007-139717(JP,A)
特開2007-012647(JP,A)
調査した分野 G01R 33/02
G01R 33/14
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、及び前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される2次巻線に生じる第1の2次電圧を測定して、第1の磁化曲線、及び第1の最大磁束密度を算定する第1算定ステップと、
前記第1算定ステップで使用した磁性体コアの前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に前記第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、及び前記第2の透磁率を有する磁性体に巻回される2次巻線に生じる第2の2次電圧を測定して、第2の磁化曲線、及び第2の最大磁束密度を算定する第2算定ステップと、
前記第1の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第1のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、前記第1の励磁電流と同一の周波数を有する第2の励磁電流を印加して、該第2の励磁電流、及び前記第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第3の2次電圧を測定して、第3の磁化曲線、及び第3の最大磁束密度を算定する第3算定ステップであって、前記第1の最大磁束密度と、前記第3の最大磁束密度とが同一になるように、前記第2の励磁電流を調整する第3算定ステップと、
前記第2の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第2のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、前記第1の励磁電流と同一の周波数を有する第3の励磁電流を印加して、該第3の励磁電流、及び前記第2のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第4の2次電圧を測定して、第4の磁化曲線、及び第4の最大磁束密度を算定する第4算定ステップであって、前記第2の最大磁束密度と、前記第4の最大磁束密度とが同一になるように、前記第3の励磁電流を調整する第4算定ステップと、
前記第1~第4の磁化曲線及び前記第1~第4の最大磁束密度を使用して、少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの試料定数を算定する第5算定ステップと、
を有し、前記磁性体コアに具備される前記第1の透磁率を有する磁性体の断面積、及び断面形状は、前記磁路に亘り一定であり、
前記磁性体コアに具備される前記第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、前記磁路に亘り一定であることを特徴とする方法。
【請求項2】
演算式
【数1】
JP0005602100B2_000029t.gif
【数2】
JP0005602100B2_000030t.gif
を使用して、前記少なくとも1つのギャップの実効磁路長を算定する第5算定ステップをさらに有する方法であって、
ここで、H1は、前記第1の磁化曲線を算定するときに算定される磁界の強さであり、
2は、前記第2の磁化曲線を算定するときに算定される磁界の強さであり、
αは、前記第1の透磁率を有する磁性体の合計の実効磁路長であり、
βは、前記第2の透磁率を有する磁性体の合計の実効磁路長であり、
αは、前記第3の磁化曲線を算定するときに算定される磁界の強さであり、
βは、前記第4の磁化曲線を算定するときに算定される磁界の強さであり、
nは、前記少なくとも1つのギャップの数であり、
g及びLgはそれぞれ、前記少なくとも1つのギャップの磁界の強さ、及び1つ当たりのギャップの実効磁路長である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
g = μ0g
から前記ギャップの磁束密度Bgを算定する第6算定ステップをさらに有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性体コアが2つ以上のギャップを有するとき、前記2つ以上のギャップそれぞれの磁路長は、互いに等しい請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1算定ステップにおいて、前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される2次巻線の巻数と、前記第3算定ステップにおいて、前記第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線の巻数とが同一であり、
第1の最大磁束密度と、第3の最大磁束密度とが同一になるように、前記第2の励磁電流を調整することは、前記第1の2次電圧の最大電圧と、前記第3の2次電圧の最大電圧とが同一になるように調整することを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のギャップなし磁性体コア、又は前記第2のギャップなし磁性体コアのいずれか1つは、前記第1算定ステップ、又は前記第2算定ステップで使用された前記磁性体コアの前記ギャップを埋めることにより形成される請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第3算定ステップにおいて、第1の最大磁束密度と、第3の最大磁束密度とが同一になるように、前記第2の励磁電流を調整する代わりに、
前記第1算定ステップにおいて、第1の最大磁束密度と、第3の最大磁束密度とが同一になるように、前記第1の励磁電流を調整する請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第4算定ステップにおいて、第2の最大磁束密度と、第4の最大磁束密度とが同一になるように、前記第3の励磁電流を調整する代わりに、
前記第2算定ステップにおいて、第2の最大磁束密度と、第4の最大磁束密度とが同一になるように、前記第1の励磁電流を調整する請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される第1の2次巻線に生じる第1の2次電圧を測定して、第1の磁化曲線、及び第1の最大磁束密度を算定するとともに、前記第2の透磁率を有する磁性体に巻回される第2の2次巻線に生じる第2の2次電圧を測定して、第2の磁化曲線、及び第2の最大磁束密度を算定する第1算定ステップと、
前記第1算定ステップで使用した磁性体コアの前記第1の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第1のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、前記第1の励磁電流と同一の周波数を有する第2の励磁電流を印加して、該第2の励磁電流、及び前記第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第3の2次電圧を測定して、第3の磁化曲線、及び第3の最大磁束密度を算定する第2算定ステップであって、前記第1の最大磁束密度と、前記第3の最大磁束密度とが同一になるように、前記第2の励磁電流を調整する第2算定ステップと、
前記第2の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第2のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、前記第1の励磁電流と同一の周波数を有する第3の励磁電流を印加して、該第3の励磁電流、及び前記第2のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第4の2次電圧を測定して、第4の磁化曲線、及び第4の最大磁束密度を算定する第3算定ステップであって、前記第2の最大磁束密度と、前記第4の最大磁束密度とが同一になるように、前記第3の励磁電流を調整する第3算定ステップと、
前記第1~第4の磁化曲線及び前記第1~第4の最大磁束密度を使用して、少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの試料定数を算定する第4算定ステップと、
を有し、前記磁性体コアに具備される前記第1の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、前記磁路に亘り一定であり、
前記磁性体コアに具備される前記第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、前記磁路に亘り一定であることを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの前記第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、及び前記第1の透磁率を有する磁性体、又は前記第2の透磁率を有する磁性体のいずれか一方に巻回される2次巻線に生じる第1の2次電圧を測定して、第1の磁化曲線、及び第1の最大磁束密度を算定する第1算定ステップと、
前記第1算定ステップで使用した磁性体コアの前記第1の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第1のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、前記第1の励磁電流と同一の周波数を有する第2の励磁電流を印加して、該第2の励磁電流、及び前記第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第2の2次電圧を測定して、第2の磁化曲線、及び第2の最大磁束密度を算定する第2算定ステップであって、前記第1の最大磁束密度と、前記第2の最大磁束密度とが同一になるように、前記第2の励磁電流を調整する第2算定ステップと、
前記第2の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第2のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、前記第1の励磁電流と同一の周波数を有する第3の励磁電流を印加して、該第3の励磁電流、及び前記第2のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第3の2次電圧を測定して、第3の磁化曲線、及び第3の最大磁束密度を算定する第3算定ステップであって、前記第1の最大磁束密度と、前記第3の最大磁束密度とが同一になるように、前記第3の励磁電流を調整する第3算定ステップと、
前記第1~第3の磁化曲線及び前記第1~第3の最大磁束密度を使用して、少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの試料定数を算定する第4算定ステップと、
を有し、前記磁性体コアに具備される前記第1の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、前記磁路に亘り一定であり、
前記磁性体コアに具備される前記第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、前記磁路に亘り一定であり、
前記磁性体コアを形成する前記第1、及び前記第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状はそれぞれ、互いに等しいことを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化曲線の算定方法に関する。より詳細には、本発明は、リアクトルの磁路中にギャップを有する磁性体コアの磁化曲線の算定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバ-タ、及びコンバ-タなどの電気機器は、力率を改善し、高調波を低減し、かつサ-ジを抑制するために、リアクトルを備える。このような用途に使用されるリアクトルに流れる電流は、振幅が比較的大きな直流電流、又は振幅が比較的大きな低周波交流電流に、振幅が比較的小さな高周波リップルが重畳した波形を有する。この結果、比較的大きな電流がリアクトルに印加されるために、リアクトルの磁性体コアには、大きな磁界が印加される。したがって、リアクトルの磁性体コアには、大きな磁界の下でも磁気飽和を起こさないことが要求される。磁気飽和が生じると透磁率が低下し、リアクトルのインダクタンスが低下するために、リアクトルとして動作しなくなるからである。
【0003】
磁性体コアが磁気飽和することを防止するために、一般にリアクトルの磁性体コアの磁路中にギャップ(空隙)が設けられる。磁性体コアの磁路中にギャップが設けられることにより、磁気抵抗が大きくなり、磁性体コアが磁気飽和することを防止できるためである。しかしながら、磁路中のギャップでは、磁束が磁路の外側に漏れ出す現象が生じる。この現象は、一般にフリンジング磁束と称される。フリンジング磁束は、磁性体コアが導体の場合には、ギャップ近傍の磁性体コア側面に渦電流を生じさせ、また、ギャップ近傍に巻線がある場合には、巻線導体に渦電流を生じさせ、いずれの場合も局部損失を増大させるという問題がある。また、フリンジング磁束が周囲に配置される電気閉回路と鎖交し、電気閉回路にノイズが生じる問題がある。
【0004】
また近年は、必要なギャップ長を得るために、複数個のギャップを磁路中に分散して設けることがある。これによって、1つ当たりのギャップ長が狭くなり、1つ当たりのギャップから生じるフリンジング磁束を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ギャップを有する磁性体コアの磁界の強さ、透磁率、及び磁束密度などの磁気特性値、並びに実効磁路長、及び実効断面積などの試料定数を算定するため、ギャップ、及び磁性体それぞれの磁気特性値、及び試料定数を算定する必要がある。しかしながら、従来はこれらを計測し算定することが困難であった。このため、従来は、ギャップ、及び磁性体コア中の磁界の強さ、及び磁束密度を予測するためには、有限要素法等を応用した電磁界解析シミュレ-ションによる予測値を用いることしかできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、磁路中にギャップを有する磁性体コアのギャップ、及び磁性体コア中の磁界の強さと、磁束密度との間の関係を示す磁化曲線を、シミュレ-ションを使用することなく、磁性体コアを励磁することにより取得される計測結果に基づいて算定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る方法は、少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの磁化曲線を算定する方法であって、第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、及び第1の透磁率を有する磁性体に巻回される2次巻線に生じる第1の2次電圧を測定して、第1の磁化曲線、及び第1の最大磁束密度を算定する第1算定ステップと、第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、及び第2の透磁率を有する磁性体に巻回される2次巻線に生じる第2の2次電圧を測定して、第2の磁化曲線、及び第2の最大磁束密度を算定する第2算定ステップと、第1の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第1のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、第1の励磁電流と同一の周波数を有する第2の励磁電流を印加して、該第2の励磁電流、及び第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第3の2次電圧を測定して、第3の磁化曲線、及び第3の最大磁束密度を算定する第3算定ステップであって、第1の最大磁束密度と、第3の最大磁束密度とが同一になるように、第2の励磁電流を調整する第3算定ステップと、第2の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第2のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、第1の励磁電流と同一の周波数を有する第3の励磁電流を印加して、該第3の励磁電流、及び第2のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第4の2次電圧を測定して、第4の磁化曲線、及び第4の最大磁束密度を算定する第4算定ステップであって、第2の最大磁束密度と、第4の最大磁束密度とが同一になるように、第3の励磁電流を調整する第4算定ステップと、を有し、磁性体コアに具備される第1の透磁率を有する磁性体の断面積、及び断面形状は、磁路に亘り一定であり、磁性体コアに具備される第2の透磁率を有する磁性体の断面積、及び断面形状は、磁路に亘り一定であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る他の方法は、少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの磁化曲線を算定する方法であって、第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、第1の透磁率を有する磁性体に巻回される第1の2次巻線に生じる第1の2次電圧を測定して、第1の磁化曲線、及び第1の最大磁束密度を算定するとともに、第2の透磁率を有する磁性体に巻回される第2の2次巻線に生じる第2の2次電圧を測定して、第2の磁化曲線、及び第2の最大磁束密度を算定する第1算定ステップと、第1の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第1のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、第1の励磁電流と同一の周波数を有する第2の励磁電流を印加して、該第2の励磁電流、及び第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第3の2次電圧を測定して、第3の磁化曲線、及び第3の最大磁束密度を算定する第2算定ステップであって、第1の最大磁束密度と、第3の最大磁束密度とが同一になるように、第2の励磁電流を調整する第2算定ステップと、第2の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第2のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、第1の励磁電流と同一の周波数を有する第3の励磁電流を印加して、該第3の励磁電流、及び第2のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第4の2次電圧を測定して、第4の磁化曲線、及び第4の最大磁束密度を算定する第3算定ステップであって、第2の最大磁束密度と、第4の最大磁束密度とが同一になるように、第3の励磁電流を調整する第3算定ステップと、を有し、磁性体コアに具備される第1の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、磁路に亘り一定であり、磁性体コアに具備される前記第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、磁路に亘り一定であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るさらに他の方法は、少なくとも1つのギャップを磁路中に有し、かつ第1、及び第2の透磁率をそれぞれ有する磁性体を具備する磁性体コアの磁化曲線を算定する方法であって、第1の透磁率を有する磁性体に巻回される1次巻線に第1の励磁電流を印加して、該第1の励磁電流、及び第1の透磁率を有する磁性体、又は第2の透磁率を有する磁性体のいずれか一方に巻回される2次巻線に生じる第1の2次電圧を測定して、第1の磁化曲線、及び第1の最大磁束密度を算定する第1算定ステップと、第1の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第1のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、第1の励磁電流と同一の周波数を有する第2の励磁電流を印加して、該第2の励磁電流、及び第1のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第2の2次電圧を測定して、第2の磁化曲線、及び第2の最大磁束密度を算定する第2算定ステップであって、第1の最大磁束密度と、第2の最大磁束密度とが同一になるように、第2の励磁電流を調整する第2算定ステップと、第2の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しない第2のギャップなし磁性体コアの1次巻線に、第1の励磁電流と同一の周波数を有する第3の励磁電流を印加して、該第3の励磁電流、及び第2のギャップなし磁性体コアの2次巻線に生じる第3の2次電圧を測定して、第3の磁化曲線、及び第3の最大磁束密度を算定する第3算定ステップであって、第1の最大磁束密度と、第3の最大磁束密度とが同一になるように、第3の励磁電流を調整する第3算定ステップと、を有し、磁性体コアに具備される第1の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、磁路に亘り一定であり、磁性体コアに具備される第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状は、磁路に亘り一定であり、磁性体コアを形成する第1、及び第2の透磁率を有する磁性体の断面の断面積、及び断面形状はそれぞれ、互いに等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁化曲線の算定方法によれば、磁路中にギャップを有する磁性体コアのギャップ、及び磁性体の各々での磁界の強さと磁束密度との関係を示す磁化曲線を、シミュレ-ションではなく、計測結果に基づいて容易に算定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1(a)】本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理を示す図である。
【図1(b)】本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理を示す図である。
【図1(c)】本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理を示す図である。
【図1(d)】本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理を示す図である。
【図1(e)】本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理を示す図である。
【図1(f)】本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理を示す図である。
【図2】本発明に係る1つの実施形態における磁化曲線算定のフローを示す図である。
【図3】本発明に係る1つの実施形態における第1の測定装置を示す図である。
【図4】本発明に係る1つの実施形態における第1、及び第2の磁化曲線算定のフローを示す図である。
【図5】本発明に係る1つの実施形態における第2の測定装置を示す図である。
【図6】本発明に係る1つの実施形態における第3の測定装置を示す図である。
【図7】本発明に係る1つの実施形態における第3、及び第4の磁化曲線算定のフローを示す図である。
【図8】本発明に係る1つの実施形態における第4の測定装置を示す図である。
【図9】本発明に係る他の実施形態における磁化曲線算定のフローを示す図である。
【図10】本発明に係る他の実施形態における第3の測定装置を示す図である。
【図11】本発明に係る他の実施形態における第3の測定装置を示す図である。
【図12】本発明に係る他の実施形態における第3、及び第4の磁化曲線算定のフローを示す図である。
【図13】本発明に係る他の実施形態における第1の測定装置を示す図である。
【図14】本発明に係る他の実施形態における磁化曲線算定のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る磁化曲線の算定方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の開示において提供される図は、本発明の説明を意図したものであり、適当な縮尺を示すことを意図したものではないことを理解すべきである。また、それぞれの図面において、同一、又は類似する機能を有する構成要素には、同一、又は類似する符号が付される。したがって、先に説明した構成要素と同一、又は類似する機能を有する構成要素に関しては、改めて説明をしないことがある。

【0013】
図1を参照して、本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理について説明する。
図1(a)において、測定対象の磁性体コア10が示される。磁性体コア10は、透磁率がμαである磁性体10α1、及び10α2と、透磁率がμβである磁性体10β1、及び10β2とを有する。磁性体10α1、及び10α2の実効磁路長はそれぞれ、Lα/2であり、合計の実効磁路長は、Lαになる。また、磁性体10β1、及び10β2の実効磁路長はそれぞれ、Lβ/2であり、合計の実効磁路長は、Lβになる。

【0014】
磁性体10α1、及び10α2の磁路に直交する断面(以下、磁路に直交する断面を断面と称する)の実効断面積はそれぞれAαであり、磁性体10α1、及び10α2内の磁路に亘って一定である。また、磁性体10α1、及び10α2の断面の形状は、磁性体10α1、及び10α2内の磁路に亘って一定である。一方、磁性体10β1、及び10β2の断面の実効断面積はそれぞれAβであり、磁性体10β1、及び10β2内の磁路に亘って一定である。また、磁性体10β1、及び10β2の断面の形状は、磁性体10β1、及び10β2内の磁路に亘って一定である。

【0015】
さらに、磁性体コア10に形成される4つのギャップの実効磁路長はそれぞれLgである。また、磁性体コア10に形成される4つのギャップの実効断面積はそれぞれAgとする。なお、本明細書で使用する場合、用語「断面積」、「実効断面積」、及び「断面形状」はそれぞれ、磁路に直交する磁性体コアの断面の面積、実効断面積、及び形状をいう。

【0016】
磁性体10α1には、励磁電流i1を印加する1次巻線11が巻回され、磁性体10α2には、磁束密度を算定するために使用される2次電圧V2を検出する2次巻線12が巻回される。1次巻線11、及び2次巻線12の巻数はそれぞれ、N1、及びN2である。また、励磁電流i1は、適当な振幅、及び周波数を有する正弦波にすることができる。

【0017】
図1(b)において、図1(a)の磁性体コア10を、透磁率がμ1である磁性体により形成され、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定した磁性体コア10´が示される。すなわち、磁性体コア10´は、図1(a)の磁性体コア10を、実効断面積がAαであり、実効磁路長がLαであり、かつ透磁率がμ1であるギャップを有しない磁性体コアと仮定したものである。

【0018】
図1(a)の磁性体コア10、及び図1(b)の磁性体コア10´を参照しながら、図1(a)の磁性体コア10を、透磁率がμ1である磁性体により形成され、ギャップを有しない磁性体コア10´であると仮定して磁界の強さ、及び磁束密度を算定する方法について順に説明する。まず、磁界の強さの算定方法について説明する。

【0019】
図1(a)の磁性体10α1、及び10α2に印加される磁界の強さをHαとし、磁性体10β1、及び10β2に印加される磁界の強さをHβとし、ギャップに印加される磁界の強さをHgとすると、アンペールの法則から以下の式(1)の関係が成り立つ。ここで、nは、ギャップの数であり、図1(a)の磁性体コア10では、nは4である。
【数1】
JP0005602100B2_000002t.gif
式(1)を磁性体10α1、及び10α2の合計の実効磁路長Lαを抜き出すように変形すると、式(1)は、
【数2】
JP0005602100B2_000003t.gif
で示される。

【0020】
一方、図1(b)の磁性体コア10´に印加される磁界の強さをH1とすると、アンペールの法則から以下の式(3)の関係が成り立つ。
【数3】
JP0005602100B2_000004t.gif
ここで、1次電圧V1は、励磁電流i1を抵抗Rsにより電圧に変換した電圧値である。式(2)、及び(3)から、磁界の強さH1は、
【数4】
JP0005602100B2_000005t.gif
で示されることが理解される。

【0021】
次に、図1(b)の磁性体コア10´の磁束密度B1について説明する。磁束密度B1は、磁性体コア10´に生じる磁界の強さH1を使用して、
【数5】
JP0005602100B2_000006t.gif
で示される。ここで、μ1は、磁性体コア10´の透磁率である。磁性体コア10´の透磁率μ1は、透磁率がμαである磁性体10α1、及び10α2の実効断面積Aα、及び合計の実効磁路長Lαと、透磁率がμβである磁性体10β1、及び10β2の実効断面積Aβ、及び合計の実効磁路長Lβと、ギャップの実効断面積Ag、1つ当たりの実効磁路長Lg、透磁率μ0とにより、以下のように算出される。

【0022】
まず、磁性体コア10´に形成される磁路の磁気抵抗Rαは、
【数6】
JP0005602100B2_000007t.gif
で示される。一方、磁性体コア10に形成される磁路の磁気抵抗Rmは、
【数7】
JP0005602100B2_000008t.gif
で示される。さらに、磁気抵抗Rmは、透磁率がμαである磁性体10α1、及び10α2の実効断面積Aα、及び合計の実効磁路長Lαを抜き出すように変形すると、
【数8】
JP0005602100B2_000009t.gif
となる。磁性体コア10´は、磁性体コア10をギャップを有しない磁性体コアであると仮定したものである。したがって、磁性体コア10の磁気抵抗Rmと、磁性体コア10´の磁気抵抗Rαとは等しくなる。すなわち、
α = Rm (9)
が成り立つ。式(9)に式(6)、及び(8)を代入すると、
【数9】
JP0005602100B2_000010t.gif
となる。これから、両辺からLα、及びAαを除することにより、磁性体コア10´の透磁率μ1は、
【数10】
JP0005602100B2_000011t.gif
となる。

【0023】
このように、磁性体コア10を、透磁率がμ1であり、かつギャップを有しない磁性体コア10´であると仮定することによって、磁性体10α1に励磁電流i1を印加し、磁性体10α2に巻回される2次巻線12に生じる2次電圧から算定される磁化曲線の物理的な意味が明確になる。

【0024】
次に、磁性体コア10を、透磁率がμ2であり、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定することにより、磁化曲線の物理的な意味を規定することについて、図1(d)、及び(e)を参照して、説明する。

【0025】
図1(d)において、測定対象の磁性体コア20が示される。磁性体コア20は、2次巻線12が磁性体10α2に巻回されずに、磁性体10β2に巻回されることのみが、図1(a)に示される磁性体コア10と相違する。したがって、磁性体10α1、及び10α2の透磁率は、μαであり、合計の磁路長は、Lαであり、断面積は磁路に亘ってAαであり、断面形状は一定である。また、磁性体10β1、及び10β2の透磁率は、μβであり、合計の磁路長はLβであり、断面積は磁路に亘ってAβであり、断面形状は、一定である。さらに、磁性体コア10に形成される4つのギャップの実効磁路長はそれぞれLgであり、実効断面積はそれぞれAgとする。

【0026】
磁性体10α1には、励磁電流i1を印加する1次巻線11が巻回され、磁性体10β2には、磁束密度を算定するために使用される2次電圧V2を検出する2次巻線12が巻回される。1次巻線11、及び2次巻線12の巻数はそれぞれ、N1、及びN2である。また、1次巻線に印加される励磁電流i1は、図1(a)、及び(b)を参照して説明された磁界H1、及び磁束密度B1を算定するときに印加される励磁電流と同一の振幅、及び周波数を有する電流とする。

【0027】
図1(e)において、図1(d)の磁性体コア20を、透磁率がμ2である磁性体により形成され、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定した磁性体コア20´が示される。すなわち、磁性体コア20´は、図1(d)の磁性体コア20を、断面積がAβであり、磁路長がLβであり、かつ透磁率がμ2であるギャップを有しない磁性体コアと仮定したものである。

【0028】
図1(d)の磁性体コア20、及び図1(e)の磁性体コア20´を参照しながら、図1(d)の磁性体コア20を、ギャップを有しない磁性体コア20´であると仮定して、磁界の強さ、及び磁束密度を算定する方法について順に説明する。まず、磁界の強さの算定方法について説明する。

【0029】
先に、図1(a)、及び(b)を参照して、説明したときと同様に式(1)から磁性体10β1、及び10β2の合計の実効磁路長Lβを抜き出すように変形すると、式(1)は、
【数11】
JP0005602100B2_000012t.gif
で示される。

【0030】
一方、図1(e)の磁性体コア20´に印加される磁界の強さをH2とすると、アンペールの法則から以下の式(13)の関係が成り立つ。
【数12】
JP0005602100B2_000013t.gif
ここで、1次電圧V1は、励磁電流i1を抵抗Rsにより電圧に変換した電圧値である。式(12)、及び(13)から、磁界の強さH2は、
【数13】
JP0005602100B2_000014t.gif
で示されることが理解される。

【0031】
次に、図1(e)の磁性体コア20´の磁束密度B2について説明する。磁束密度B2は、磁性体コア20´に生じる磁界の強さH2を使用して、
【数14】
JP0005602100B2_000015t.gif
で示される。ここで、μ2は、磁性体コア20´の透磁率である。磁性体コア20´の透磁率μ2は、以下のように算出される。

【0032】
まず、磁性体コア20´に形成される磁路の磁気抵抗Rβは、
【数15】
JP0005602100B2_000016t.gif
で示される。また、磁性体コア20と磁気抵抗が同一の磁性体コア10に形成される磁路の磁気抵抗Rmを示す式(7)において、透磁率がμβである磁性体10β1、及び10β2の実効断面積Aβ、及び合計の実効磁路長Lβを抜き出すように変形すると、
【数16】
JP0005602100B2_000017t.gif
となる。磁性体コア20´は、磁性体コア20をギャップを有しない磁性体コアであると仮定したものである。したがって、磁性体コア20の磁気抵抗Rmと、磁性体コア20´の磁気抵抗Rβとは等しくなる。すなわち、
β = Rm (18)
が成り立つ。式(18)に式(16)、及び(17)を代入すると、
【数17】
JP0005602100B2_000018t.gif
となる。これから、両辺からLβ、及びAβを除することにより、磁性体コア20´の透磁率μ2は、
【数18】
JP0005602100B2_000019t.gif
となる。

【0033】
このように、磁性体コア20を、透磁率がμ2であり、かつギャップを有しない磁性体コア20´であると仮定することによって、磁性体10α1に励磁電流i1を印加し、磁性体10β2に巻回される2次巻線12に生じる2次電圧から算定される磁化曲線の物理的な意味が明確になる。

【0034】
次に、図1(c)、及び1(f)を参照して、透磁率μα、及びμβを算定するために使用される磁性体コアについて説明する。図1(c)、及び1(f)には、磁路中にギャップを有しないギャップなし磁性体コア30、及び40がそれぞれ示される。ギャップなし磁性体コア30、及び40は、磁路中にギャップを有しない円環状の形状をそれぞれ有する。

【0035】
磁性体コア30の透磁率は、図1(a)の磁性体10α1、及び10α2と同一の透磁率μαである。また、ギャップなし磁性体コア30の断面は、図1(a)の磁性体10α1、及び10α2の断面の面積及び形状と、同一の面積及び形状を有する。したがって、ギャップなし磁性体コア30の断面の実効断面積は、Aαである。また、ギャップなし磁性体コア30の実効磁路長は、磁性体10α1、及び10α2の合計の実効磁路長と同一であり、Lαである。

【0036】
一方、磁性体コア40の透磁率は、図1(d)の磁性体10β1、及び10β2と同一の透磁率μβである。また、ギャップなし磁性体コア40の断面は、図1(d)の磁性体10β1、及び10β2の断面の面積及び形状と、同一の面積及び形状を有する。したがって、ギャップなし磁性体コア40の断面の実効断面積は、Aβである。また、ギャップなし磁性体コア40の実効磁路長は、磁性体10β1、及び10β2の合計の実効磁路長と同一であり、Lβである。

【0037】
図1(c)、及び1(f)のギャップなし磁性体コア30、40をそれぞれ使用して、透磁率μα、及びμβをそれぞれ算定することができる。このとき、ギャップなし磁性体コア30の磁束密度の最大値、すなわち最大磁束密度Bαmを、図1(b)の磁性体コア10´の最大磁束密度B1mに等しくなるように調整するとともに、ギャップなし磁性体コア40の最大磁束密度Bβmを、図1(e)の磁性体コア20´の最大磁束密度B2mに等しくなるように調整する必要がある。これは、以下の理由による。

【0038】
マックスウェルの方程式に示されるように、他の磁路に漏れる漏れ磁束が無い場合、磁路の磁束は保存される。このため、磁性体コア10に生じる磁束もまた保存される。したがって、磁性体コア10に生じる磁束Φは、
Φ = μααα
= μβββ
= μ0gg
= μ11α
= μ22β (21)
となる。ここで、μαααは、磁性体10α1、及び10α2に生じる磁束である。また、μβββは、磁性体10β1、及び10β2に生じる磁束である。また、μ0ggは、ギャップに生じる磁束である。さらに、μ11αは、磁性体コア10を透磁率がμ1であり、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定した磁性体コア10´に生じる磁束であり、μ22βは、磁性体コア10を透磁率がμ2であり、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定した磁性体コア20´に生じる磁束である。式(21)では、磁性体10α1、及び10α2に生じる磁束μαααと、磁性体コア10´に生じる磁束μ11αが等しいことが示される。ここで、双方の磁束に共通する実効断面積Aαを除すると、
μαα = μ11 (22)
が得られる。ここで、左辺は、図1(c)のギャップなし磁性体コア30の磁束密度Bαであり、右辺は、図1(b)のギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´の磁束密度B1である。これから、ギャップなし磁性体コア30の最大磁束密度Bαmを、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´の磁束密度B1mに等しくなるように調整することによって、図1(b)の磁性体コア10´の磁化曲線から磁気特性値、又は試料定数を算定するときに、図1(c)のギャップなし磁性体コア30の磁化曲線から得られる磁気特性値、及び試料定数を援用することができることが理解される。

【0039】
また、式(21)では、磁性体10β1、及び10β2に生じる磁束μβββと、磁性体コア20´に生じる磁束μ22βが等しいことが示される。ここで、双方の磁束に共通する実効断面積Aβを除すると、
μββ = μ22 (23)
が得られる。ここで、左辺は、図1(f)のギャップなし磁性体コア40の磁束密度Bβであり、右辺は、図1(e)のギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア20´の磁束密度B2である。これから、ギャップなし磁性体コア40の最大磁束密度Bβmを、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア20´の最大磁束密度B2mに等しくなるように調整することによって、図1(e)の磁性体コア20´の磁化曲線から磁気特性値、又は試料定数を算定するときに、図1(f)のギャップなし磁性体コア40の磁化曲線から得られる磁気特性値、及び試料定数を援用することができることが理解される。

【0040】
なお、磁性体10α1、及び10α2、並びに10β1、及び10β2の実効断面積が同一の実効断面積Acであるとき、式(21)は、
Φ = μααc
= μββc
= μ0gc
= μ11c
= μ22c (24)
となる。これから、Acを除すると、
μαα = μββ = μ11 = μ22
= Bc (25)
となる。ここでBcは、磁性体10α1、及び10α2、並びに10β1、及び10β2の実効断面積が同一である場合の磁性体それぞれの磁束密度である。一方、上述のように、μ11は、図1(b)のギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´の磁束密度B1であり、μ22は、図1(e)のギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア20´の磁束密度B2である。したがって、式(25)から、
c = B1 = B2 (26)
が導き出される。式(26)から、磁性体10α1、及び10α2、並びに10β1、及び10β2の実効断面積が同一の実効断面積Acである場合、図1(b)の磁性体コア10´の最大磁束密度B1m、又は図1(e)の磁性体コア20´の最大磁束密度B2mに等しくなるように、ギャップなし磁性体コア30の最大磁束密度Bαm、及び40の最大磁束密度Bβmを調整することによって、ギャップなし磁性体コア30、及び40の磁化曲線から得られる磁気特性値、及び試料定数を援用することができることが理解される。ここで、ギャップなし磁性体コア30の最大磁束密度Bαm、及び40の最大磁束密度Bβmの双方は、式(26)に示されるBcの最大磁束密度に相当する。

【0041】
図1(c)のギャップなし磁性体コア30の磁界の強さHα、及び図1(f)のギャップなし磁性体コア40の磁界の強さHβはそれぞれ、励磁電流i1を、
【数19】
JP0005602100B2_000020t.gif
【数20】
JP0005602100B2_000021t.gif
にそれぞれ代入することにより算出される。ここで、1次電圧V1は、励磁電流i1を抵抗Rsにより電圧に変換した電圧値である。一方、図1(c)のギャップなし磁性体コア30の磁束密度Bα、及び図1(f)のギャップなし磁性体コア40の磁束密度Bβはそれぞれ、2次電圧V2
【数21】
JP0005602100B2_000022t.gif
【数22】
JP0005602100B2_000023t.gif
にそれぞれ代入することにより算出される。このとき、ギャップなし磁性体コア30、及び40の最大磁束密度Bαm、及びBβmはそれぞれ、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´、及び20´の最大磁束密度B1m、及びB2mに等しくなるように調整される。なお、式(29)、及び(30)において、Tは、励磁電流の1周期に相当する。

【0042】
以上、図1(a)~(f)を参照して、本発明に係る磁化曲線の算定方法の原理について説明した。次に図2~8を参照して、本発明に係る1つの実施形態における磁化曲線(B-H曲線)を算定する方法について説明する。図2は、本発明に係る1つの実施形態における磁化曲線算定方法のフローを示す図である。

【0043】
図2に示す方法では、まずステップS101において、測定対象の磁性体コアの透磁率がμαである磁性体にそれぞれ巻回される1次巻線、及び2次巻線の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定する第1の方法で測定して、磁化曲線、及び最大磁束密度を算定する。これは、図1(a)の磁性体コア10に励磁電流を印加して、図1(b)の磁性体コア10´と仮定した磁性体コアの磁化曲線を算定することに対応する。

【0044】
次いで、ステップS102において、測定対象の磁性体コアの透磁率がμαである磁性体に巻回される1次巻線、及び透磁率がμβである磁性体に巻回される2次巻線の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定する第2の方法で測定して、磁化曲線、及び最大磁束密度を算定する。これは、図1(d)の磁性体コア10に励磁電流を印加して、図1(e)の磁性体コア20´と仮定した磁性体コアの磁化曲線を算定することに対応する。

【0045】
次いで、ステップS103において、処理は、透磁率がμαである磁性体で形成され、かつ磁路中にギャップを有しないギャップなし磁性体コアの1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定して、磁化曲線を算定する。これは、図1(c)のギャップなし磁性体コア30の磁化曲線を算定することに対応する。

【0046】
次いで、ステップS104において、処理は、透磁率がμβである磁性体で形成され、かつ磁路中にギャップを有しないギャップなし磁性体コアの1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定して、磁化曲線を算定する。これは、図1(f)のギャップなし磁性体コア40の磁化曲線を算定することに対応する。

【0047】
そして、ステップS105において、処理は、磁性体コア10の試料定数を算定する。具体的には、ステップS101~S104で算定された磁化曲線により、式(4)、(14)、及び(21)などを使用して、磁性体コア10のギャップの実効断面積Agを算定することなどが、ステップS105において実施される。

【0048】
以下、ステップS101~S105のそれぞれのステップについて詳細に説明する。まず、図3、及び4を参照して、ステップS101における磁化曲線、及び最大磁束密度の算定方法を詳細に説明する。

【0049】
図3は、測定対象の磁性体コアの1次電圧V1、及び2次電圧V2を、第1の方法で測定する測定装置1を示す図である。測定装置1は、磁性体10α1、及び10α2、並びに10β1、及び10β2と、磁性体10α1に巻回される1次巻線11と、及び磁性体10α2に巻回される2次巻線12と、1次巻線11に励磁電流i1を印加する信号発生器90と、1次巻線11に印加される励磁電流i1を1次電圧V1として測定する1次電圧計91と、2次巻線12に発生する2次電圧V2を測定する2次電圧計92と、励磁電流i1を1次電圧V1に変換するシャント抵抗93とを有する。

【0050】
磁性体10α1、及び10α2の断面の面積及び形状は、一定である。したがって、磁性体10α1、及び10α2の断面の面積は、磁路中のいずれの部分であっても一定である。また、磁性体10α1、及び10α2の断面の形状は、磁路中のいずれの部分であっても同一である。

【0051】
また、磁性体10β1、及び10β2の断面の面積及び形状は、一定である。したがって、磁性体10β1、及び10β2の断面の面積は、磁路中のいずれの部分であっても一定である。また、磁性体10β1、及び10β2の断面の形状は、磁路中のいずれの部分であっても同一である。

【0052】
また、磁性体10α1、及び10β1の間、磁性体10β1、及び10α2の間、磁性体10α2、及び10β2の間、並びに磁性体10β2、及び10α1の間にそれぞれ形成される4つのギャップの実効磁路長は、互いに等しい。

【0053】
1次巻線11は、磁性体コアに励磁電流i1を印加するために、磁性体10α1に巻回される。また、2次巻線12は、磁性体コアの磁束密度を算定するために使用される2次電圧V2を検出するために、磁性体10α2に巻回される。1次巻線11、及び2次巻線12は、被覆導線とすることができる。

【0054】
信号発生器90は、1次巻線11の口出し線に電気的に接続されて、1次巻線11に励磁電流i1を印加する。信号発生器90として、一般に使用されるファンクションジェネレータを使用することができる。

【0055】
1次電圧計91は、1次巻線11の口出し線と信号発生器90との間に電気的に接続されるシャント抵抗93の両端に生じる電圧を測定する。好適には、1次電圧計91は、シャント抵抗93の両端に生じる電圧を経時的に記憶し、かつ表示する機能を有する。

【0056】
2次電圧計92は、2次巻線12の口出し線に電気的に接続されて、2次巻線12の口出し線の両端に生じる電圧を測定する。好適には、2次電圧計92は、2次巻線12の口出し線の両端に生じる電圧を経時的に記憶し、かつ表示する機能を有する。さらに好適には、2次巻線12の口出し線の両端に経時的に生じる電圧を生じる時間に亘って積分した積分値を記憶し、かつ表示する機能を有する。

【0057】
次に図4を参照して、測定装置1により磁化曲線、及び最大磁束密度を算定する方法について、詳細に説明する。図4は、測定装置1により磁化曲線、及び最大磁束密度を算定するフローを示す図である。

【0058】
まず、ステップS201において、処理は、1次巻線11に信号発生器90から励磁電流i1を印加することにより開始される。励磁電流i1は、適当な振幅、及び周波数を有する正弦波にすることができる。

【0059】
次いで、ステップS202において、処理は、1次電圧計91、及び2次電圧計92でそれぞれ測定される1次電圧V1、及び2次電圧V2から、磁性体コアを、透磁率がμ1であり、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定して、磁界の強さH1、及び磁束密度B1を算定する。

【0060】
磁界の強さH1は、1次電圧計91で測定される1次電圧V1を式(3)に代入することにより算出される。一方、磁束密度B1は、マックスウェルの方程式から導かれる、
【数23】
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に2次電圧計92で測定される2次電圧V2を代入することにより算出される。2次電圧計92が、2次電圧V2の経時変化を積分した積分値を記憶する機能を有する場合は、2次電圧計92は、磁束密度B1を算出するために2次電圧V2の複数の積分値を記憶できる。

【0061】
次いで、処理は、ステップS203において、磁化曲線、及び最大磁束密度B1mを算定する。磁化曲線は、時間の関数である磁界の強さH1と、磁束密度B1とを励磁電流i1の1周期(式(31)のTに相当)に亘って相関させることにより算定される。また、最大磁束密度B1mは、ステップS202において算出された磁束密度B1の中で最大値を算定することにより算定される。

【0062】
ここまで、図3、及び4を参照して、図2に示されるステップS101において、磁性体コアの磁性体10α1に巻回される1次巻線の1次電圧V1、及び磁性体10α2に巻回される2次巻線の2次電圧V2を測定して、磁化曲線、及び最大磁束密度を算定する処理について説明してきた。次に、図4、及び5を参照して、図2のステップS102について説明する。

【0063】
図5は、測定対象の磁性体コアの1次電圧V1、及び2次電圧V2を、図3で示される第1の方法と異なる第2の方法で測定する測定装置2を示す図である。測定装置2において、2次巻線12が磁性体10α2に巻回されずに、磁性体10β2に巻回されることのみが、図3に示される測定装置1と相違する。したがって、測定装置2では、測定装置1と測定対象の磁性体コアの試料定数は同一であり、磁性体10α1、及び10α2の断面積、及び断面形状は、磁路に亘って一定である。また、磁性体10β1、及び10β2の断面積、及び断面形状は、磁路に亘って一定である。さらに、磁性体コア20に形成される4つのギャップの実効磁路長はそれぞれ、互いに等しい。

【0064】
次に図4を再び参照して、測定装置2により磁化曲線、及び最大磁束密度を算定する方法について、説明する。図4は、測定装置1を使用してステップS101の処理を実行するフローであるとともに、測定装置2を使用してステップS102の処理を実行するフローである。

【0065】
まず、ステップS201において、処理は、1次巻線11に信号発生器90から励磁電流i1を印加することにより開始される。1次巻線11に印加される励磁電流i1は、測定装置1で印加される励磁電流と同一の波形を有する電流とする。例えば、測定装置1で印加される励磁電流が正弦波である場合、同一の振幅、及び周波数を有する電流が1次巻線11に印加される。

【0066】
次いで、ステップS202において、処理は、1次電圧計91、及び2次電圧計92でそれぞれ測定される1次電圧V1、及び2次電圧V2から、磁性体コア20を、透磁率がμ2であり、かつギャップを有しない磁性体コアであると仮定して、磁界の強さH2、及び磁束密度B2を算定する。

【0067】
磁界の強さH2は、1次電圧計91で測定される1次電圧V1を式(13)に代入することにより算出される。一方、磁束密度B2は、マックスウェルの方程式から導かれる、
【数24】
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に2次電圧計92で測定される2次電圧V2を代入することにより算出される。2次電圧計92が、2次電圧V2の経時変化を積分した積分値を記憶する機能を有する場合は、2次電圧計92は、磁束密度B2を算出するために2次電圧V2の複数の積分値を記憶できる。

【0068】
次いで、処理は、ステップS203において、磁化曲線、及び最大磁束密度B2mを算定する。磁化曲線は、時間の関数である磁界の強さH2と、磁束密度B2とを励磁電流i1の1周期(式(32)のTに相当)に亘って相関させることにより算定される。また、最大磁束密度B2mは、ステップS202において算出された磁束密度B2の中で最大値を算定することにより算定される。

【0069】
ここまで、図4、及び5を参照して、図2に示されるステップS102において、測定対象の磁性体コアの磁性体10α1に巻回される1次巻線の1次電圧V1、及び磁性体10β2に巻回される2次巻線の2次電圧V2を測定して、磁化曲線、及び最大磁束密度を算定する処理について説明してきた。次に、図2のステップS103について説明する。

【0070】
図2に示すように、ステップS103において、処理は、磁性体10α1、及び10α2と同一の透磁率を有する磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しないギャップなし磁性体コア30の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定して、磁化曲線を算定する。図6、及び7を参照して、ステップS103における磁化曲線の算定方法を説明する。

【0071】
図6は、磁性体10α1、及び10α2と同一の透磁率μαを有する磁性体により形成され、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コア30の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定する測定装置3を示す図である。測定装置3は、ギャップなし磁性体コア30と、ギャップなし磁性体コア30に巻回される1次巻線31、及び2次巻線32と、1次巻線31に励磁電流i1を印加する信号発生器90と、1次巻線31に生じる1次電圧V1を測定する1次電圧計91と、2次巻線32に発生する2次電圧V2を測定する2次電圧計92と、励磁電流i1を1次電圧V1に変換するシャント抵抗93とを有する。

【0072】
ギャップなし磁性体コア30は、磁路中にギャップを有しない円環状の形状を有する。ギャップなし磁性体コア30の実効磁路長は、磁性体10α1、及び10α2の合計の実効磁路長と同一である。また、ギャップなし磁性体コア30の断面は、図3に示される測定装置1の磁性体コアの磁性体10α1、及び10α2の断面の面積及び形状と、同一の面積及び形状を有する。

【0073】
ギャップなし磁性体コア30は、測定装置1の磁性体コアの磁性体10α1、及び10α2と同一の断面を有するように、ギャップを有さないコアとして同一の磁性体により新たに製造することができる。この場合、ギャップなし磁性体コア30は、漏れ磁束がないため、測定確度が向上する。

【0074】
1次巻線31、及び2次巻線32はそれぞれ、図3に示される測定装置1の1次巻線11、及び2次巻線12と同様な構成、及び機能を有する。

【0075】
次に図7を参照して、測定装置3により磁化曲線を算定する方法について、詳細に説明する。図7は、測定装置3により磁化曲線算定のフローを示す図である。

【0076】
まず、ステップS301に示すように、処理は、1次巻線31に信号発生器90から励磁電流を印加することにより開始される。励磁電流は、適当な振幅を有する正弦波にすることができる。ここで、励磁電流の周波数は、測定装置1の1次巻線11に印加される励磁電流の周波数の同一とする必要がある。磁性体コアの磁化曲線は、励磁電流の周波数により変化するためである。

【0077】
次いで、ステップS302において、磁性体コア30に発生する最大磁束密度Bαmを算出する。具体的には、式(29)に2次電圧V2を代入することにより、磁性体コア30の磁束密度Bαを1次電圧V1の1周期に亘り複数の時点で算出して、最大磁束密度Bαmを抽出する。

【0078】
次いで、ステップS303において、ステップS302で算出された最大磁束密度Bαmと、測定装置1を使用してステップS203で算出された最大磁束密度B1mとの差が所定のしきい値以下であるか否かを判定する。最大磁束密度Bαm、及びB1mの差が所定のしきい値より大きい場合、処理は、ステップS304において、最大磁束密度Bαm、及びB1mと差が小さくなるように、励磁電流を調整する。次いで、処理は、ステップS301に戻る。

【0079】
また、最大磁束密度の差が所定のしきい値以下である場合、ステップS305において、処理は、磁界の強さHα、及び磁束密度Bαを算出する。磁界の強さHαは、1次電圧計91で測定される1次電圧V1を、式(27)に代入することにより算出される。また、ステップS302において先に説明したように、磁束密度Bαは、2次電圧計92で測定される2次電圧V2を、式(29)に代入することにより算出される。

【0080】
そして、ステップS306において、処理は、磁化曲線を算定する。ステップS203において先に説明したように、磁化曲線は、時間の関数である磁界の強さHαと、磁束密度Bαとを励磁電流の1周期に亘って相関させることにより算定される。

【0081】
ここまで、図6、及び7を参照して、図2に示されるステップS103において、透磁率がμαであり、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コア30の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定して、磁化曲線を算定する処理について説明してきた。次に、図2のステップS104について説明する。

【0082】
図2に示すように、ステップS104において、処理は、磁性体10β1、及び10β2と同一の透磁率μβである磁性体により形成され、かつ磁路中にギャップを有しないギャップなし磁性体コア40の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定して、磁化曲線を算定する。図7、及び8を参照して、ステップS104における磁化曲線の算定方法を説明する。

【0083】
図8は、透磁率がμβである磁性体により形成され、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コア40の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定する測定装置4を示す図である。測定装置4において、磁性体コアを形成する磁性体が、図6に示される測定装置3と相違する。すなわち、磁性体コア40は、図5に示される測定装置2の磁性体コアの磁性体10β1、及び10β2と同一の透磁率μβを有し、かつ実効磁路長が、磁性体10β1、及び10β2の合計の実効磁路長と同一である。また、磁性体コア40は、磁性体10β1、及び10β2の断面の面積及び形状と、同一の面積及び形状である断面を有する。

【0084】
次に図7を参照して、測定装置4により磁化曲線を算定する方法について、詳細に説明する。図7は、測定装置3を使用してステップS103の処理を実行するフローであるとともに、測定装置4を使用してステップS104の処理を実行するフローである。

【0085】
まず、ステップS301に示すように、処理は、1次巻線31に信号発生器90から励磁電流を印加することにより開始される。励磁電流は、適当な振幅を有する正弦波にすることができる。ここで、励磁電流の周波数は、測定装置2の1次巻線11に印加される励磁電流の周波数の同一とする必要がある。磁性体コアの磁化曲線は、励磁電流の周波数により変化するためである。

【0086】
次いで、ステップS302において、磁性体コア40に発生する最大磁束密度Bβmを算出する。具体的には、式(30)に2次電圧V2を代入することにより、磁性体コア40の磁束密度Bβを1次電圧V1の1周期に亘り複数の時点で算出して、最大磁束密度Bβmを抽出する。

【0087】
次いで、ステップS303において、ステップS302で算出された最大磁束密度Bβmと、測定装置2を使用してステップS203で算出された最大磁束密度B2mとの差が所定のしきい値以下であるか否かを判定する。最大磁束密度Bβm、及びB2mの差が所定のしきい値より大きい場合、処理は、ステップS304において、最大磁束密度Bβm、及びB2mの差が小さくなるように、励磁電流を調整する。次いで、処理は、ステップS301に戻る。

【0088】
また、最大磁束密度の差が所定のしきい値以下である場合、ステップS305において、処理は、磁界の強さHβ、及び磁束密度Bβを算出する。磁界の強さHβは、1次電圧計91で測定される1次電圧V1を、式(28)に代入することにより算出される。また、ステップS302において先に説明したように、磁束密度Bβは、2次電圧計92で測定される2次電圧V2を、式(30)に代入することにより算出される。

【0089】
そして、ステップS306において、処理は、磁化曲線を算定する。ステップS203において先に説明したように、磁化曲線は、時間の関数である磁界の強さHβと、磁束密度Bβとを励磁電流の1周期に亘って相関させることにより算定される。

【0090】
ここまで、図7、及び8を参照して、図2に示されるステップS104において、透磁率がμβである磁性体で形成され、かつ磁路中にギャップを有しないギャップなし磁性体コア40の1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定して、磁化曲線を算定する処理について説明してきた。再び図2を参照して、本発明に係る1つの実施形態における磁化曲線算定のフローの説明を続ける。

【0091】
次に、ステップS105において、処理は、測定対象の磁性体コアの試料定数を算定する。具体的には、ステップS105において、測定対象の磁性体コアのギャップの実効断面積Agを算定する。

【0092】
まず、測定対象の磁性体コアのギャップの実効断面積Agを算定するために、ギャップの磁界の強さHgを算出する。ギャップの磁界の強さHgは、式(4)、及び(14)を変形した式(33)にそれぞれの磁気特性値、及び試料定数を代入することにより算出される。
【数25】
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ここで、磁性体10α1、及び10α2の合計の実効磁路長Lα、磁性体10β1、及び10β2の合計の実効磁路長Lβ、1つ当たりのギャップの実効磁路長Lg、及びギャップの数nは、既知である。また、ギャップを有しない磁性体コアであると仮定した磁性体コア10´の磁界の強さH1、及びギャップなし磁性体コア30の磁界の強さHαはそれぞれ、最大磁束密度B1m、及びBαmが同一になるように測定した時の、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´、及びギャップなし磁性体コア30のそれぞれの磁界の強さである。さらに、ギャップを有しない磁性体コアであると仮定した磁性体コア20´の磁界の強さH2、及びギャップなし磁性体コア40の磁界の強さHβはそれぞれ、最大磁束密度B2m、及びBβmが同一になるように測定した時の、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア20´、及びギャップなし磁性体コア40のそれぞれの磁界の強さである。次いで、ギャップの磁束密度Bgが式(34)から算出される。
【数26】
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そして、式(21)を変形した式(35)にそれぞれの磁気特性値、及び試料定数を代入することにより、ギャップの実効断面積Agが算定される。
【数27】
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ここで、Aαは、磁性体10α1、及び10α2の実効断面積であり、Aβは、磁性体10β1、及び10β2の実効断面積である。また、B1は、例えばステップS101で算定された磁化曲線の最大磁束密度B1mであり、Bαは、例えば最大磁束密度B1mに対応するステップS103で算定された磁化曲線の最大磁束密度Bαmである。さらに、B2は、例えばステップS102で算定された磁化曲線の最大磁束密度B2mであり、Bβは、例えば最大磁束密度B2mに対応するステップS104で算定された磁化曲線の最大磁束密度Bβmである。

【0093】
また、透磁率μ1、及びμ2、並びにμα、及びμβを使用して、実効断面積Agを算出できる。まず、磁性体コアのギャップの実効断面積Agを算定するために、透磁率μ1、及びμ2と、の透磁率μα、及びμβとが算出される。当業者に周知であるように、透磁率は、磁化曲線、すなわちB-H曲線の傾きから算出される。

【0094】
次いで、算出された透磁率μ1、及びμ2、並びにμα、及びμβを式(11)、及び(20)にそれぞれ代入する。式(11)、及び(20)の磁気特性値、及び試料定数の中で、磁性体10α1、及び10α2の実効断面積Aα、及び合計の実効磁路長Lα、磁性体10β1、及び10β2の実効断面積Aβ、及び合計の実効磁路長Lβ、並びに1つ当たりのギャップの実効磁路長Lgはそれぞれ既知である。式(11)、及び(20)にこれらの値を代入することにより、ギャップの実効断面積Agが算出される。

【0095】
以上、図2~8を参照して、本発明の第1の実施形態について説明した。次に、第1の実施形態と異なる種々の実施形態について、説明する。

【0096】
まず、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、磁性体コアを形成する2つの透磁率を有する磁性体の実効断面積がそれぞれ等しい実施形態である。すなわち、第2の実施形態では、透磁率がμαである磁性体の実効断面積Aαが、透磁率がμβである磁性体の実効断面積Aβに等しい。

【0097】
図9を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態に従って、磁化曲線を算定するフローを示す図である。図9に示すように、第2の実施形態の算定フローは、図2に示す第1の実施形態の算定フローと比較して、測定対象の磁性体コアの磁化曲線を1つの方法のみで算定していることが異なる。これは、磁性体コアを形成する異なる透磁率を有する2つの磁性体の実効断面積がそれぞれ等しい場合には、式(25)に示されるように、測定対象の磁性体コアの磁束密度が、磁路に亘って保存されるためである。

【0098】
具体的には、ステップS401において、処理は、ステップS101と同様に、図3の測定装置1を使用して、磁性体10α2に巻回される2次巻線12により2次電圧を測定できる。また、処理は、ステップS102と同様に、図4の測定装置2を使用して、磁性体10β2に巻回される2次巻線12により2次電圧を測定できる。

【0099】
ステップS402~S404はそれぞれ、図2に示すステップS103~S105にそれぞれ対応する。このようにAαとAβとが等しい場合には、第1の実施形態と比較して、処理ステップを1つ省略することができる。

【0100】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、ステップS103において使用される測定装置を形成する方法が第1の実施形態と相違する。すなわち、図2のステップS102において、透磁率がμαであり、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コアの測定を行うために、磁性体10β1、および10β2を除去し、磁性体10α1、および10α2の間に形成されるギャップを詰める。すなわち、磁性体10α1、および10α2の間に形成されていたギャップの実効磁路長をそれぞれ0にすることにより、ギャップなし磁性体コアが形成される。

【0101】
図10は、第3の実施形態において、透磁率がμαであり、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コアを測定する測定装置5を示す図である。図5に示されるように、透磁率がμαである磁性体10α1、および10α2の端面をそれぞれ接触させることにより、ギャップなし磁性体コアが形成される。このため、ギャップなし磁性体コアを新たに製造する必要がなく、算定に必要なコストを低減することができる。

【0102】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、透磁率がμαであり、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コアの実効磁路長が第1の実施形態と異なる。

【0103】
図11は、第4の実施形態において使用される透磁率がμαであり、かつギャップを有しないギャップなし磁性体コアを測定する測定装置6を示す図である。図9に示されるように、ギャップなし磁性体コア60の実効磁路長Lα´は、図3に示す磁性体10α1、及び10α2の合計の実効磁路長Lαよりも長い。本実施形態では、ステップS305において、ギャップなし磁性体コア50の実効磁路長Lc´を使用して磁界の強さが算出される。そして、ステップS306において、ギャップなし磁性体コア50の実効磁路長Lc´を使用して算出された磁界の強さと、磁束密度とを相関させることにより、磁化曲線が算定される。このように、ギャップなし磁性体コアの実効磁路長Lα´は、図11の磁性体コア60のように磁性体10α1、及び10α2の合計の実効磁路長Lαとは異なってもよい。しかしながら、第1のギャップなし磁性体コアの断面積、及び断面形状は、一定でなければならない。

【0104】
さらに、ギャップなし磁性体コア60の実効断面積Aα´、及びギャップなし磁性体コア60に巻回される2次巻線32の巻数N2´はそれぞれ、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´の実効断面積Aα、及びギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´に巻回される2次巻線12の巻数N2と異なってもよい。いずれの場合も、図7のステップS301~S304において、ギャップなし磁性体コア60の最大磁束密度Bαmが、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性コア10´の最大磁束密度B1mに等しくなるように励磁電流i1を調整すれば所望の磁化曲線を取得できる。さらに、ギャップなし磁性体コア60の断面の形状もまた、磁性体10α1、及び10α2の断面の形状と同一でなくてもよい。

【0105】
同様に、図8に示すギャップなし磁性体コア40の実効断面積Aβ´、及びギャップなし磁性体コア40に巻回される2次巻線32の巻数N2´はそれぞれ、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア20´の実効断面積Aβ、及びギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性体コア10´に巻回される2次巻線12の巻数N2と異なってもよい。いずれの場合も、図7のステップS301~S304において、ギャップなし磁性体コア20の最大磁束密度Bβmが、ギャップを有しない磁性体コアと仮定した磁性コア20´の最大磁束密度B2mに等しくなるように励磁電流i1を調整すれば所望の磁化曲線を取得できる。さらに、ギャップなし磁性体コア40の断面の形状もまた、磁性体10α1、及び10α2の断面の形状と同一でなくてもよい。

【0106】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、測定装置3、及び4により、ギャップなし磁性体コア30、及び40の磁化曲線をそれぞれ算定する方法において、第1の実施形態と相違する。以下、図12を参照しながら、第1の実施形態との相違点を簡単に説明する。

【0107】
図12は、第5の実施形態において測定装置2により磁化曲線を算定するフローを示す図である。図12のフローのステップS502、及びS503はそれぞれ、図7のフローのステップS302、及びS303と相違する。すなわち、図7のフローのステップ302では、磁性体コア20に発生する最大磁束密度を算出していたのに対し、図12のフローのステップS502では、2次電圧の最大値を測定する。次いで、ステップS202で測定した2次電圧の最大値と、S502で測定した2次電圧の最大値との差がしきい値以下か否かを判定する。

【0108】
このように、第5の実施形態では、2次電圧の差に基づいて、磁性体コア、及びギャップなし磁性体コアの磁束密度の大きさが同一であるか否かが判断される。このため、第5の実施形態では、最大磁束密度を算出する必要がなく、1次量である2次電圧の測定にのみ基づいて励磁電流を調整できる。この結果、第1の実施形態よりも、処理工程が簡便になる。なお、第5の実施形態では、磁性体10α1、及び10α2の実効断面積と、磁性体コア30の実効断面積とが同一であること、及び測定装置1の2次巻線の巻数と、測定装置3の2次巻線の巻数とは、同一であることが必要である。また、磁性体10β1、及び10β2の実効断面積と、磁性体コア40の実効断面積とが同一であること、及び測定装置2の2次巻線の巻数と、測定装置4の2次巻線の巻数とは、同一であることが必要である。

【0109】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、図2に示すステップS101、及びS102に対応する処理を同時に行うことが第1の実施形態と相違する。以下、図13、及び14を参照しながら、第1の実施形態との相違点を簡単に説明する。

【0110】
図13は、第6の実施形態において測定対象の磁性体コアの1次電圧V1、及び2次電圧V2を測定する測定装置7を示す図である。図13に示される測定装置7は、2次巻線12αが磁性体10α2に巻回されるとともに、2次巻線12βが磁性体10β2に巻回される。このため、1次巻線11に励磁電流i1を印加して、1次電圧計91、並びに2次電圧計92α、及び92βに生じる電圧を測定できる。したがって、磁性体コア10を、透磁率がμ1であり、かつギャップを有しない磁性体コア10´であると仮定した磁界の強さH1、及び磁束密度B1並びに磁性体コア20を、透磁率がμ2であり、かつギャップを有しない磁性体コア20´であると仮定した磁界の強さH2、及び磁束密度B2を同時に測定することができる。このように、測定装置7を使用することにより、図2に示されるステップS101、及びS102の処理を同時に実行することができる。

【0111】
図14は、第6の実施形態において測定装置7により磁化曲線を算定するフローを示す図である。上述のように、ステップS701において、磁性体コア10を、透磁率がμ1であり、かつギャップを有しない磁性体コア10´であると仮定した磁界の強さH1、及び磁束密度B1並びに磁性体コア20を、透磁率がμ2であり、かつギャップを有しない磁性体コア20´であると仮定した磁界の強さH2、及び磁束密度B2を同時に測定する。そして、測定された磁界の強さH1、及び磁束密度B1並びに磁界の強さH2、及び磁束密度B2から、最大磁束密度B1m、及びB2m、並びに対応する磁化曲線をそれぞれ算定する。なお、図14のステップS702~S704はそれぞれ、図2のステップS103~S105に対応する。

【0112】
これまで、図1~14を参照して、本発明の様々な実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に限定して解釈されるものではない。例えば、上述の実施形態では、信号発生器90、1次電圧計91、2次電圧計92、及びシャント抵抗93は、個別の装置である。しかしながら、これらの装置は、岩通計測(株)から入手可能なB-Hアナライザに代替することができる。

【0113】
また、図2に示すステップS101、及びS102の前に、ステップS103、及びS104をそれぞれ実行することができる。この場合、最大磁束密度B1m、及びBαmが同一になるように、ステップS103において励磁電流を調整する代わりに、ステップS101において励磁電流を調整することができる。さらに、最大磁束密度B2m、及びBβmが同一になるように、ステップS104において励磁電流を調整する代わりに、ステップS102において励磁電流を調整することができる。
【符号の説明】
【0114】
10、20 ギャップあり磁性体コア
11、31 1次巻線
12、32 2次巻線
30、40、60 ギャップなし磁性体コア
90 信号発生器
91 1次電圧計
92 2次電圧計
93 シャント抵抗
図面
【図1(a)】
0
【図1(b)】
1
【図1(c)】
2
【図1(d)】
3
【図1(e)】
4
【図1(f)】
5
【図2】
6
【図3】
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【図4】
8
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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